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特許拒絶査定不服審判

2018-013058

個人の心理的ストレスを判定するシステム及び方法

審判番号
2018-013058
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2016-050438
請求日
2018年10月01日
審決日
2019年08月19日
公報発行日
2020年02月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド
  • 【請求人代理人】新保 斉
審判長/審判官
  • 審判長 三崎 仁
  • 審判官 渡戸 正義
  • 審判官 ▲高▼見 重雄
分類
P18 .536-Z (A61B) / P18 .537-Z (A61B) / P18 .572-Z (A61B) / P18 .574-Z (A61B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法36条6項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第5項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特願2016- 50438「個人の心理的ストレスを判定するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-190025〕について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 本願は、平成28年3月15日(パリ条約による優先権主張 2015年3月25日 インド)の出願であって、平成29年6月19日付けで拒絶理由が通知され、同年12月18日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成30年5月25日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、これに対して、同年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。 第2 平成30年10月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成30年10月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について (1)本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載について、補正前の 「  【請求項1】 個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するシステムであって、 前記個人に取付けられた複数のセンサであって、そのいずれかが動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサと; 前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を送信するための送信機と; 記憶装置と; メモリに接続され、以下を備えるプロセッサ、 前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し、複数の生理学的パラメータを抽出する前処理モジュール、 前記複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、前記統計的モード分析に基づく前記個人の前記ストレスレベルを判定する決定支援モジュールを備える ことを特徴とするシステム。」 を、 「  【請求項1】 個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するシステムであって、 前記個人に取付けられたセンサであって、動脈拍動触診シグナルのパルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサと; 前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を送信するための送信機と; 記憶装置と; メモリに接続され、以下を備えるプロセッサ、 前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し、複数の生理学的パラメータを抽出する前処理モジュール、 前記複数の生理学的パラメータの分析を行い、前記分析に基づく前記個人の前記ストレスレベルを判定する決定支援モジュールを備える ことを特徴とするシステム。」 と補正することを含むものである。(下線は補正箇所を示す。) (2)上記請求項1に係る補正は、具体的には以下の補正事項1ないし4からなる。 (補正事項1) 「前記個人に取付けられた複数のセンサであって、そのいずれかが動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサ」における「複数の」を削除する。 (補正事項2) 「前記個人に取付けられた複数のセンサであって、そのいずれかが動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサ」における「そのいずれかが」を削除する。 (補正事項3) 「前記個人に取付けられた複数のセンサであって、そのいずれかが動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサ」における「少なくとも1つの」を削除する。 (補正事項4) 「前記複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、前記統計的モード分析に基づく前記個人の前記ストレスレベルを判定する決定支援モジュール」における「統計的モード」(2箇所)を削除する。 2 補正の適否 (1)そこで、次に、上記補正事項1ないし5の補正の目的が、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項に該当するかについて検討する。 ア 補正事項1について (ア)補正前は、「複数のセンサ」であることから、センサが1つの場合を含まなかったのに対し、「複数の」を削除することにより、補正後は、センサが1つの場合を包むものとなるから、補正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 (イ)補正事項1が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことは、明らかである。 (ウ)そうすると、補正事項1は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項のいずれをも目的とするものではない。 イ 補正事項2について 補正前は、「動脈拍動触診シグナルの」「パルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサ」が少なくとも1つあればよいものであったのに対し、「そのいずれかが」を削除することにより、補正後は、センサの数のかかわらず、全てのセンサが「動脈拍動触診シグナルのパルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサ」に限定されるから、補正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 ウ 補正事項3について (ア)「少なくとも1つの」を削除することにより、「1つの」場合が排除されることにはならないし、「1つの」場合に限定されることにもならないから、補正事項3に係る補正前と補正後とで、「パルス列」及び「センサ」について特定される事項に差異があるとは認められない。 よって、補正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 (イ)補正事項3が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないことは、明らかである。 (ウ)そうすると、補正事項3は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項のいずれをも目的とするものではない。 エ 補正事項4について (ア)補正前は、「分析」が「統計的モード分析」に特定されていたのに対し、「統計的モード」を削除することにより、補正後は、「分析」について「統計的モード分析」である特定が排除されることになる。そして、「統計的モード分析」との特定を排除することにより、「分析」に含まれる範囲が限定されるとは認められない。 よって、補正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。 (イ)「統計的モード分析」から「統計的モード」を削除することに伴う、「分析」の内容を特定する補正はなされていない。 また、原査定では、「統計的モード分析」そのものが明瞭でないことも、請求項1に係る発明が明確でないことも拒絶の理由にはしていない。 よって、補正事項4は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものではない。 (ウ)補正事項4が、請求項の削除又は誤記の訂正を目的とするものではないことは、明らかである。 (エ)そうすると、補正事項4は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項のいずれをも目的とするものではない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、本件補正のうち、少なくとも請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項のいずれをも目的としない補正を含んでいる。 3 補正の却下の決定のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年12月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に記載のとおりである。 第4 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要(請求項1に係る部分)は、以下のとおりである。なお、理由1及び2は、それぞれ平成29年6月19日付け拒絶理由通知書に記載した理由2及び3に対応する。 1 理由1 請求項1-11に係る発明が解決しようとする課題は、「個人のストレスをリアルタイムで測定するための方法及び装置を提供する」ことである。 そして、請求項1-10に係る発明は、「前記個人に取付けられた複数のセンサであって、そのいずれかが動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサ」、「前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し、複数の生理学的パラメータを抽出する前処理モジュール」及び「前記複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、前記統計的モード分析に基づく前記個人の前記ストレスレベルを判定する決定支援モジュール」を備えている。 発明の詳細な説明には、抽出される「生理学的パラメータ」として、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」(なお、この最大と最小値の間隔とは技術的にどのような意味のある間隔であるのか不明である。)、「特徴パラメータF(x)」が記載されており([0037])、他にも「生理学的データ」として「脈拍数」([0034])、「脈波伝播速度(PWV)」([0035])が記載されている。 脈波伝播速度(PWV)は、複数のセンサで得られる情報であり、1つのセンサの場合を含む「少なくも1つのセンサ」や「前記個人に取付けられた複数のセンサであって、そのいずれかが動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を所定時間検知するよう構成されているセンサ」で得られる情報とはいえない。そうすると、請求項1-11に係る発明における「複数の生理学的パラメータ」として具体的に開示されているのは、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」、「特徴パラメータF(x)」、「脈拍数」と認められる。しかし、「特徴パラメータF(x)」については、具体的な抽出方法が記載されておらず、そのような生理的シグナルのどのような特徴を示すパラメータであるのかも記載されていない。 そして、この3つのパラメータをどのように「統計的モード分析」するのかについても、その具体的な方法が全く記載されていない。また、これらのデータ又はこれらのデータに関連するデータを統計的モード分析することが、出願時において技術常識であったとも認められない。 そのため、統計的モード分析を行い、どのようにストレスレベルを判定するかが発明の詳細な説明の記載では、当業者が十分に理解できない。 出願人は、上記指摘に対して、平成29年12月18日付け意見書において、明細書段落[0037]及び[0040]の記載を摘記して、「動脈拍動触診シグナルのパルス列から生理学的パラメータを得て、それを統計的モード分析することで、ストレスレベルを判定することが記載され、また、モード解析は、確立された周知の手法であり、当業者にとってこれを用いることは困難ではない。」と主張している。しかし、1つのセンサで脈波伝播速度(PWV)が得られてないことの指摘、特徴パラメータF(x)についての指摘については、全く反論しておらず、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」、「特徴パラメータF(x)」、「脈拍数」をモード解析することが周知であることを裏付ける証拠も示されておらず、特に、技術的意味が不明である「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」の統計的モード分析がどのようにストレスレベルに結びつくのかも示されていない。そのため、出願人の上記主張は採用できない。 したがって、この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-11に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 よって、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 理由2 請求項1-11に係る発明は、「複数の生理学的パラメータ」について具体的には特定されておらず、「動脈拍動触診シグナルのパルス列」から抽出される任意の「生理学的パラメータ」がその範囲に含まれる。しかし、「動脈拍動触診シグナルのパルス列」から抽出される任意の「生理学的パラメータ」すべてがストレスレベルの判定に有用であるという技術常識はない。そのため、任意の「生理学的パラメータ」を「統計的モード分析」を行うことでストレスレベルの判定ができることについて、発明の詳細な説明に十分裏付けられているとは認められない。 よって、出願時の技術常識に照らしても、請求項1-11に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 さらに、発明の詳細な説明に具体的に記載されている「生理学的パラメータ」である、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」、「特徴パラメータF(x)」、「脈拍数」、「脈波伝播速度(PWV)」についても、統計的モード分析を行い、ストレスレベルを判定することについて、発明の詳細な説明に具体的記載がなく、有効にストレスレベルの判定が行えることが裏付けられていない。 なお、出願人提出の平成29年12月18日付けの意見書においては、上記指摘に対して、具体的な反論がなされていない。 したがって、請求項1-11に係る発明は、その範囲全体にわたって、発明の詳細な説明に記載したものではない。 よって、本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 第5 当審の判断 1 発明の詳細な説明の記載 発明の詳細な説明には、以下の記載がある。下線は当審で付加した。 (1)発明が解決しようとする課題について 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかし、従来の手法のいずれも、補完的な単一の検知技法においてリアルタイムで  ストレスレベルを検出することには取り組んでこなかった。また、個人の心理系及び心臓系を管理するシステムは存在しない。従って、個人のストレスをリアルタイムで測定するための方法及び装置を提供する必要がある。」 (2)課題を解決するための手段について 「【課題を解決するための手段】 【0008】 ・・・本概要は、リアルタイムでの個人のストレスレベルの判定に関連するコンセプトを導入するために提供するものであり、そのコンセプトは詳細な説明で以下に更に説明する。・・・ 【0009】 一実施形態では、個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するシステム及び方法を開示している。本発明を使用して個人に関する生理学的データを取得することも可能である。一実施形態では、生理学的データは個人の手首、足首、首又は腰に取付けた単一の又は一群のセンサを使用して取得することも可能である。一態様では、一群のセンサは、センサとして統合した2つ以上の検知素子とすることも可能である。一態様では、動脈拍動触診による脈拍数を測定するため、センサは、腕時計、リストバンド、又はカフとしての布地を使用して個人の手首に取付けてもよい。当該システムは更に送信機、記憶装置及びプロセッサを備える。送信機は脈拍触診シグナルのパルス列をプロセッサに送信する。プロセッサは前処理モジュール及び決定支援システムモジュールを更に備える。処理モジュールは動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し、複数の生理学的パラメータを抽出する。決定支援モジュールは、複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、統計的モード分析に基づいて個人のストレスレベルを判定する。 【0010】 別の実施形態では、本発明は一体化したスマートフォンセンサを用いて生理学的データを取得することが可能である。本発明には1分間の動脈拍動触診による脈拍数の最小値を必要とする場合があることも理解できる。ある状況では、本発明は生理学的データを取得し、決定支援システム(DSS)モジュールをインストールしたスマートフォン又は外部装置に生理学的データを送信することが可能である。生理学的データが送信されると、スマートフォンは生理学的データを受信し、生理学的データを分析し、ストレスレベルを判定し得る。一態様では、DSSアプリケーションにより生理学的データを中央サーバにアップロードすることも可能になり、ここでは更に心臓臨床分析を行うことも可能である。 【0011】 一実施形態では、DSSアプリケーションは、一体化したスマートフォンセンサから起立、着座、走行等の個人に関する状態情報を受信することが可能である。別の状況では、本発明は、一体化したスマートフォンのセンサに基づいた個人のストレスレベルを提供することができる。 【0012】 別の実施形態では、個人のリアルタイムのストレスを測定するための方法も提供している。初めに複数のセンサを使用して動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を所定の時間検知する。動脈拍動触診シグナルの検知したパルス列をプロセッサに送信する。次に動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し、前処理モジュールを使用して複数の生理学的パラメータを抽出する。最後に、プロセッサ内の決定支援モジュールにより複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、個人のストレスレベルを判定する。 【0013】 別の実施形態では、個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するためのコンピュータプログラムが統合された持続的コンピュータ読込み可能媒体も提供されている。初めに、複数のセンサを使用して所定の時間、動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を検知する。動脈拍動触診シグナルの検知されたパルス列をプロセッサに送信する。次に動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し、前処理モジュールを使用して複数の生理学的パラメータを抽出する。最後に、プロセッサ内の決定支援モジュールにより複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、個人のストレスレベルを判定する。」 (3)発明の効果について 「【0044】 いくつかの実施形態では、個人の手首、足首又は腰に取付けたセンサなどの、1か所にある1つ以上の非侵襲性外部センサと一体化することにより、システム及び方法は個人のストレスレベルをリアルタイムで連続的に監視することが可能となる。 【0045】 いくつかの実施形態では、個人の全身又は複数の部位に面倒な電極設置をせずに、システム及び方法は個人によるストレスレベルの測定又は注意喚起を容易にする。 【0046】 いくつかの実施形態では、1分間の動脈拍動触診による脈拍数を得ることにより、システム及び方法は個人が短時間でストレスレベルを判定できるよう支援する。 【0047】 いくつかの実施形態では、ストレステストを受けさせるか、又は弛緩運動をさせることで参加者らにストレスを誘発することはせずに、システム及び方法はオフライン又はリアルタイムでストレスレベルを判定することが可能となる。 【0048】 いくつかの実施形態では、システム及び方法は個人の身体の同じ部位又は位置で複数の電極システムを用いたシステムの脈波伝播速度(PWV)を判定することが可能となる。 【0049】 いくつかの実施形態では、外部又は内部雰囲気又は環境温度も考慮に入れることで、システム及び方法はストレスレベルの判定を向上させることが可能となる。 【0050】 当然ながら、当該装置及び方法は心拍数等の個人の他のパラメータの評価にも使用できる。また当該装置はHrllasikaに基づく装着型ナーディセンサを使用してインプリメントできることも当然である。 【0051】 上記に鑑み、本発明が動脈から得た触診シグナルを用いて血圧を連続的に評価するための方法及び装置を提供することは評価に値する。・・・」 (4)発明を実施するための形態について 「【発明を実施するための形態】 【0017】 ・・・ 【0021】 本発明の1つ以上の構成要素は、本明細書を理解するためのモジュールとして記載されている。例えばモジュールには、論理ゲート、半導体素子、集積回路又は任意の他の個別部品から成るハードウェア回路内の自己完結型構成要素が挙げられる。モジュールはまた、例えばプロセッサの任意のハードウェアエンティティによって実行される任意のソフトウェアプログラムの一部であってもよい。ソフトウェアプログラムとしてのモジュールのインプリメンテーションには、プロセッサ又は任意の他のハードウェアエンティティによって実行される一式の論理命令が含まれてもよい。 【0022】 開示された実施形態は単に本発明の例示にすぎず、多様な形態で統合できる。 【0023】 本発明の方法工程は、コンピュータ読込み可能な媒体に確実に統合されたプログラムを実行する1つ以上のコンピュータプロセッサにより行い、入力操作及び出力発生により本発明の機能を実行する。好適なプロセッサとしては例えば汎用マイクロプロセッサ及び専用マイクロプロセッサの両方が挙げられる。一般に、プロセッサは、メモリ(読み込み専用メモリ及び/又はランダムアクセスメモリなど)から命令及びデータを受信し(読込み)、メモリに命令及びデータを書き込む(記憶する)。コンピュータプログラムの命令及びデータを確実に統合させるために適した記憶装置には例えば、EPROM、EEPROM及びフラッシュメモリ装置などの半導体メモリ装置;内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク;光磁気ディスク、ならびにCD‐ROMなどの全ての不揮発性メモリ形態が挙げられる。上記のものは全て、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)又はFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)に補足されるか、あるいはその中に組み込まれてもよい。コンピュータは一般的に、内蔵ディスク(図示せず)又はリムーバブルディスクなどの持続的なコンピュータ読込み可能記憶媒体からプログラム及びデータを受信し(読込み)、そしてそこへプログラム及びデータを書き込む(記憶する)ことが可能である。 【0024】 一実施形態では、個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するためのシステム及び方法を開示している。本発明を使用し、個人に関する生理学的データを取得することが可能である。一実施形態では、生理学的データは個人の手首、足首、首又は腰に取付けた複数のセンサを使用して取得することも可能である。一態様では、動脈拍動触診による脈拍数を測定するため、センサは、腕時計、リストバンド、又はカフとしての布地を使用して個人の手首に取付けてもよい。当該システムは更に送信機、記憶装置及びプロセッサを備える。送信機は脈拍触診シグナルのパルス列をプロセッサに送信する。プロセッサは前処理モジュール及び決定支援システムモジュールを更に備える。処理モジュールは動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し、複数の生理学的パラメータを抽出する。決定支援モジュールは、複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、統計的モード分析に基づいて個人のストレスレベルを判定する。 【0025】 本発明の実施形態に従って、個人のストレスレベルを判定するためのシステム102のネットワークインプリメンテーション100を図1に示す。一態様では、システム102により個人に関する複数の生理学的データが得られる。一実施形態では、複数のセンサ104を使用することにより複数の生理学的データが得られる。一態様では、複数のセンサ104は非侵襲的な複数のセンサ104である。複数のセンサ104は、個人の手首、足首、首、腰又は股関節に取付ける。例えば、動脈拍動触診による脈拍数又は生物学的パラメータを測定するための腕時計、リストバンド又はカフなどの布地材料。一態様では、所定の超短時間又は短時間で複数のセンサ104から動脈拍動触診による脈拍数を取得する。複数の生理学的パラメータを抽出するため、システム102は生理学的データを更に前処理する。一態様では、前処理には、生理学的データの分析を行うことが含まれてもよい。システム102は更に、複数の生理学的パラメータの統計的モード分析に基づいてリアルタイムで個人のストレスレベルを判定する。 【0026】 本発明の対象はサーバ(図示せず)を演算システムとしてインプリメントすることを考慮して説明しているが、サーバは、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータ、ノートブック、ワークステーション、メインフレームコンピュータ、サーバ、ネットワークサーバ、タブレット、携帯電話等の多様な演算システムとしてインプリメントしてもよいことは理解できる。1つのインプリメンテーションでは、サーバはクラウドベースの環境でインプリメントしてもよい。実施形態に従って、システム102は車両でインプリメントしてもよい。更に、サーバはシステム102の活動を追跡し、システム102はネットワーク100を介してサーバ102に通信可能に接続することも可能である。 【0027】 1つのインプリメンテーションでは、ネットワーク100は、無線ネットワーク、有線ネットワーク又はそれらの組み合わせであってもよい。ネットワーク100は、イントラネット、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、インターネット等の様々なタイプのネットワークの1つとしてインプリメントすることが可能である。ネットワーク100は専用ネットワークでも共有ネットワークでもよい。共有ネットワークは、互いに連絡する多様なプロトコル、例えばハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)、送信制御プロトコル/インターネットプロトコル(TCP/IP)、ワイヤレスアプリケーションプロトコル(WAP)等を使用する様々なタイプのネットワークのアソシエーションを表す。更にネットワーク100には、ルータ、ブリッジ、サーバ、演算装置、記憶装置等の多様なネットワーク装置が挙げられる。 【0028】 本発明の実施形態に従って、個人のストレスを判定するためのシステム102を図2に示す。一実施形態では、システム102は、複数のセンサ104、送信機106、記憶装置108又はメモリ108、及び少なくとも1つのプロセッサ110を備える。システム102は入力/出力(I/O)インターフェース112も備える。プロセッサ110は、1つ以上のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ、中央処理ユニット、状態遷移機、論理回路、及び/又は操作命令に基づくシグナルを操作する任意の装置としてインプリメントしてもよい。他の性能では、プロセッサ110はメモリ108に記憶されたコンピュータ読込み可能な命令を取得し、実行するように構成されている。 【0029】 I/Oインターフェース112には、多様なソフトウェア及びハードウェアインターフェース、例えばウェブインターフェース、グラフィカルユーザインターフェース等が挙げられる。I/Oインターフェース112は直接又は複数のクライアント装置114を介してシステム102とユーザが接触することを可能にする。更にI/Oインターフェース112により、システム102はウェブサーバ及び外部データサーバなどの他の演算装置と通信することが可能になる(図示せず)。I/Oインターフェース112により、例えばLANやケーブル等の有線ネットワーク、及びWLAN、携帯電話又は衛星などの無線ネットワークといった多様なネットワーク及びプロトコルタイプ内で複数の通信が容易になり得る。多数の装置同士で、又は他のサーバと接続させるための1つ以上のポートがI/Oインターフェース112に備えられてもよい。 【0030】 メモリ108は、例えば静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)及び動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)などの揮発性メモリ、ならびに/又は読込み専用メモリ(ROM)などの非揮発性メモリといった当技術分野で公知のコンピュータ読込み可能媒体及びコンピュータプログラム製品であればどのようなものでもよく、これらはROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、光ディスク及び磁気テープをプログラム可能にする。 【0031】 プロセッサ110は更に、前処理モジュール116及び決定支援システム(DSS)モジュール118を備える。モジュールには概して、特定のタスクを実行するか、あるいは特定の抽象データタイプをインプリメントするルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等が組み込まれる。前処理モジュール116及び決定支援システム(DSS)モジュール118には、システム102の用途及び機能を補足するプログラム又はコード化された命令が組み込まれてもよい。本明細書に記載したモジュール116及び118は、システム102のクラウドベース演算環境で実行することが可能なソフトウェアモジュールとしてインプリメントしてもよい。別の実施形態では、プロセッサ110には、システム102の多様な他の機能を実行する他のモジュールも組み込むことが可能である。 【0032】 一実施形態では、個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するシステム及び方法を開示している。本発明を使用し、個人に関する生理学的データを取得することが可能である。一実施形態では、生理学的データは複数のセンサ104を用いて取得することも可能である。複数のセンサ104は手首、足首、首、腰又は股関節などの個人の主要な部位に取付け、動脈拍動触診による脈拍数を検知することが可能である。例えば、動脈拍動触診による脈拍数又は生物学的パラメータを測定するための腕時計、リストバンド又はカフなどの布地材料。一例では、動脈拍動触診による脈拍数を測定するため、外部センサは、腕時計、リストバンド、又はカフとしての布地を使用して個人の手首に取付けてもよい。1つ以上の外部センサの例には圧電センサ又は圧電抵抗センサが挙げられるが、これらに限定されるものではない。外部センサは個人の動脈拍動触診による脈拍数を検知し、それにより個人に関連する生理学的データを取得することは理解できる。 【0033】 実施形態に従って、動脈触診シグナルは個人の側頭動脈、顔面動脈、頚動脈、上腕動脈、橈骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈、膝窩脛骨動脈、及び足背動脈のうちの少なくとも1つから得る。 【0034】 別の実施形態では、本発明は一体化したスマートフォンセンサを用いて生理学的データを取得することも可能である。本発明には最低でも1分間の動脈拍動触診による脈拍数が必要であることは理解できる。ある状況では、本発明はスマートフォン又は外部装置上で、生理学的データ(動脈拍動触診による脈拍数など)を取得し、決定支援システム(DSS)モジュール118を備えるスマートフォン又はその決定支援モジュール118に生理学的データを送信することが可能である。生理学的データが送信されると、スマートフォンは生理学的データを受信し、ストレスレベルを判定するために生理学的データで統計的モード分析を行うことができる。一態様では、ストレスレベルを判定する際、システム100は、個人のストレスレベルを示す分析結果を表示するか、又はその結果を提供する音声アラームを発することが可能である。システム102には更に、ストレスレベルを表示するための表示装置120が備えられる。またDSSモジュールは心臓臨床分析を更に実行することができる中央サーバへ生理学的データをアップロードすることが可能である。 【0035】 一態様では、DSSモジュール118は一体化したスマートフォンセンサから個人に関する状態情報を受信することが可能である。状態情報には起立、着座及び走行が含まれるがこれらに限定されるものではない。一態様では、状態情報の精度を向上させるため、動脈拍動触診による脈拍数を個人の状態情報と併用してもよい。一態様では、主要部位付近に追加されたセンサにより脈波伝播速度(PWV)が容易に判定できるようになる。一態様では、システム102は、動脈又は超短時間シグナル(すなわち1分間の動脈拍動触診による脈拍数)がある場所の同じ部位でPWVを検出することが可能である。一態様では、既存のシステムに加えてPWVの判定は個人の状態情報を判定し、それにより個人のストレスレベルの精度を向上させることに役立つ。 【0036】 更に別の態様、DSSモジュール118は、一体化したスマートフォンセンサ又はスマートウォッチセンサから環境温度情報を受信することができる。一態様では、動脈拍動触診による脈拍数は、ストレス情報の精度を向上させるために温度情報と併用してもよい。 【0037】 更にDSSモジュール118は、抽出された生理学的パラメータを分析し、ストレスレベルを判定するように構成している。一例では、拍動シグナルを個人から取得する。拍動シグナルを以下のように分析する:工程1では、手首の異なる3か所で表面圧電電極(図示せず)を介してmVシグナルの未加工拍動データを取得し、電圧シグナルX(n)にまで高める。未加工シグナルを前処理し、最大‐最小値(PP)間隔PP(X)を抽出した。工程2では:例えばPP間隔PP(X)を補間し、特徴パラメータF(x)を抽出する。データベースに格納されている全ての登録ユーザの特長パラメータF(x)を抽出する。一旦プローブデータが決定すれば、工程1及び工程2を実行することが可能である。更に、プローブデータは統計モデル、分類又は照合技法を用いて特徴パラメータF(x)を含むデータベースと照合してもよい。分類又は照合技法を行う間、表に収載されている1つ以上の特徴を利用してストレスレベルを判定することが可能である。 【0038】 図3は本発明の実施形態に従った手首で動脈拍動触診による脈拍数を監視するための装着型センサ122を示す。個人のストレスを判定するための装着型センサ122の分解図を図3に示す。この図はネジ124、上部カバー126、下部カバー128、及び上部カバー126と下部カバー128との間に装着可能なプロセッサ110を備える装着型センサ122を示している。 【0039】 図3に示すように、ストレスレベルを判定するため、スタンドアロンセンサを個人の手首に取り付けてもよい。動脈拍動触診による脈拍数の監視の他に、装着型検知ユニットを使用して脈波伝播速度(PWV)を判定してもよい。 【0040】 図4は本発明の実施形態に従った個人のストレスレベルを判定するためのフローチャート200を示す。初めにステップ202では、複数のセンサ104を使用して動脈拍動触診シグナルの少なくとも1つのパルス列を検知する。検知は所定時間のみ行い、一例では、シグナルは約1分間検知する。次の工程204では、送信機106を使用し、検知した拍動触診シグナルをプロセッサ110へ送信する。プロセッサ110には更に、前処理モジュール116及び決定支援システム(DSS)モジュール118などの複数のモジュールが備えられる。工程206では、動脈拍動触診シグナルのパルス列は前処理モジュール116を用いて前処理し、複数の生理学的パラメータを抽出する。次の工程208では、DSSモジュール118を使用し、抽出した複数の生理学的パラメータについて統計的モード解析を行う。DSSモジュール118はスマートフォンに、又は外部デバイスに備えることが可能である。そして最後に工程210では、複数の生理学的パラメータの統計的モード分析により個人のストレスレベルを判定する。 【0041】 本発明の別の実施形態に従って、システム102は更に、ストレスレベルが所定の条件から外れる場合に備え、介護者/医師に警報を発することが可能である。当然ながらシステム102は個人のストレスを軽減する複数の特徴を更に提供できる。 【0042】 本発明の別の実施形態に従って、システム102は、車両内の娯楽システムと同期し、拍動触診システム102は車両を運転する運転者のストレスレベルを測定するように構成されている。万が一、ストレスレベルが所定の条件から外れると、システム102は車両の娯楽システムを中断又は開始することが可能である。運転者のストレスレベルを軽減するため、ストレスレベルが所定の条件から外れた直後に個人的な音楽プレイリストが運転者の選択に基づいて再生されるように娯楽システムは個別化できる。別の例では、ユーザの携帯電話も個別化することが可能である。更に別の例では、モバイルゲーム警報も個別化することが可能である。」 2 理由1(特許法第36条第4項第1号違反)について 発明の詳細な説明の記載が、いわゆる実施可能要件を満たしているためには、当業者が請求項に係る発明を実施することができる程度に、発明の詳細な説明に必要な事項が明確かつ十分に記載されていることが必要である。 そこで、当業者が本願発明を実施することができる程度に、発明の詳細な説明に必要な事項が明確かつ十分に記載されているか否か、以下検討する。 (1)生理学的パラメータについて 本願発明の「生理学的パラメータ」は、「前処理モジュール」により「前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し」て「抽出」されるものである。 ア 動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理して抽出する生理学的パラメータの内容に関連する記載として、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 (ア)「拍動シグナルを以下のように分析する:工程1では、手首の異なる3か所で表面圧電電極(図示せず)を介してmVシグナルの未加工拍動データを取得し、電圧シグナルX(n)にまで高める。未加工シグナルを前処理し、最大‐最小値(PP)間隔PP(X)を抽出した。工程2では:例えばPP間隔PP(X)を補間し、特徴パラメータF(x)を抽出する。」(段落【0037】) (イ)検討 段落【0037】の記載から、動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理して抽出する生理学的パラメータとして、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」及び「特徴パラメータF(x)」の2つがあることが理解できる。 ここで、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」については、その定義に関する記載はないものの、その表記から見て、電圧シグナルX(n)の最大値と最小値との間隔を意味するものと認められる。 一方、「特徴パラメータF(x)」は、「PP間隔PP(X)を補間し」て抽出されるものであるところ、「PP間隔PP(X)を補間」する処理がどのような処理であるのかを説明する記載はなく、「特徴パラメータF(x)」を得るためにどのような処理を行えばよいのかは不明であるといわざるを得ない。 (ウ)請求人の主張について 請求人は、審判請求書の【請求の理由】「3.」において、「審査官指摘の『最大‐最小値(PP)間隔PP(X)』については、・・・最大‐最小値(PP)間隔PP(X)(peak-to-peak value (PP) intervals PP(x))は、最大‐最小値(PP)(peak-to-peak value (PP))の間隔PP(X)(intervals PP(x))であり、具体的には第1ピークと第2ピークの間の時間である。そのため、当業者にとっては理解可能と思料する。」、「審査官指摘の『特徴パラメータF(x)』及び『脈拍数』については、・・・脈拍数などの生理学的な値であり、例えば、生信号のピーク間間隔を補間することによって抽出される値でもある。そのため、当業者にとっては理解可能と思料する。」と説明しているが、「脈拍数」は連続ピーク間の時間間隔の逆数をとることにより得られるものであって、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」が「第1ピークと第2ピークの間の時間」であるとしても、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」を補間して得られるものとは認められない。 イ また、「生理学的データ」の内容に関連する記載として、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 (ア)「本発明を使用して個人に関する生理学的データを取得することも可能である。一実施形態では、生理学的データは個人の手首、足首、首又は腰に取付けた単一の又は一群のセンサを使用して取得することも可能である。一態様では、一群のセンサは、センサとして統合した2つ以上の検知素子とすることも可能である。一態様では、動脈拍動触診による脈拍数を測定するため、センサは、腕時計、リストバンド、又はカフとしての布地を使用して個人の手首に取付けてもよい。」(段落【0009】) 「本発明は一体化したスマートフォンセンサを用いて生理学的データを取得することが可能である。本発明には1分間の動脈拍動触診による脈拍数の最小値を必要とする場合があることも理解できる。」(段落【0010】) 「本発明を使用し、個人に関する生理学的データを取得することが可能である。一実施形態では、生理学的データは個人の手首、足首、首又は腰に取付けた複数のセンサを使用して取得することも可能である。一態様では、動脈拍動触診による脈拍数を測定するため、センサは、腕時計、リストバンド、又はカフとしての布地を使用して個人の手首に取付けてもよい。」(段落【0024】) 「一態様では、システム102により個人に関する複数の生理学的データが得られる。一実施形態では、複数のセンサ104を使用することにより複数の生理学的データが得られる。一態様では、複数のセンサ104は非侵襲的な複数のセンサ104である。複数のセンサ104は、個人の手首、足首、首、腰又は股関節に取付ける。例えば、動脈拍動触診による脈拍数又は生物学的パラメータを測定するための腕時計、リストバンド又はカフなどの布地材料。一態様では、所定の超短時間又は短時間で複数のセンサ104から動脈拍動触診による脈拍数を取得する。」(段落【0025】)(段落【0032】にも同旨の記載あり。) 「本発明は一体化したスマートフォンセンサを用いて生理学的データを取得することも可能である。本発明には最低でも1分間の動脈拍動触診による脈拍数が必要であることは理解できる。ある状況では、本発明はスマートフォン又は外部装置上で、生理学的データ(動脈拍動触診による脈拍数など)を取得し、決定支援システム(DSS)モジュール118を備えるスマートフォン又はその決定支援モジュール118に生理学的データを送信することが可能である。生理学的データが送信されると、スマートフォンは生理学的データを受信し、ストレスレベルを判定するために生理学的データで統計的モード分析を行うことができる。」(段落【0034】) 「いくつかの実施形態では、1分間の動脈拍動触診による脈拍数を得ることにより、システム及び方法は個人が短時間でストレスレベルを判定できるよう支援する。」(段落【0046】) (イ)検討 段落【0024】の「本発明を使用し、個人に関する生理学的データを取得することが可能である。」、及び段落【0025】の「動脈拍動触診による脈拍数又は生物学的パラメータを測定するため」との記載によれば、直ちに「脈拍数」が「生物学的パラメータ」に含まれるとはいえないものの、脈拍数が動脈拍動触診により得られるものであることからすると、「脈拍数」は、本願発明の「前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し」て「抽出」される「生理学的パラメータ」に含まれるものと認められる。 ウ さらに、その他の生理学的情報の検出に関連する記載として、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 (ア)「一態様では、主要部位付近に追加されたセンサにより脈波伝播速度(PWV)が容易に判定できるようになる。一態様では、システム102は、動脈又は超短時間シグナル(すなわち1分間の動脈拍動触診による脈拍数)がある場所の同じ部位でPWVを検出することが可能である。一態様では、既存のシステムに加えてPWVの判定は個人の状態情報を判定し、それにより個人のストレスレベルの精度を向上させることに役立つ。」(段落【0035】) 「動脈拍動触診による脈拍数の監視の他に、装着型検知ユニットを使用して脈波伝播速度(PWV)を判定してもよい。」(段落【0039】) 「いくつかの実施形態では、システム及び方法は個人の身体の同じ部位又は位置で複数の電極システムを用いたシステムの脈波伝播速度(PWV)を判定することが可能となる。」(段落【0048】) 「上記に鑑み、本発明が動脈から得た触診シグナルを用いて血圧を連続的に評価するための方法及び装置を提供することは評価に値する。」(段落【0051】) (イ)検討 これらの記載によれば、動脈拍動触診シグナルから検出可能な生理学的情報として、「脈波伝播速度(PWV)」及び「血圧」が記載されていると認められる。 しかしながら、「脈波伝播速度(PWV)」は、動脈拍動を2箇所で測ることにより算出可能な情報であって、動脈拍動触診シグナルを検知するよう構成されているセンサが1つしかない場合を包含する本願発明において、必ずしも「前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し」て「抽出」される「生理学的パラメータ」に含まれるものとは認められない。 また、段落【0051】の記載からは、「血圧」そのものを評価することは理解できるものの、血圧をストレスレベルの判定に用いることが記載されているとは認められない。 エ 小括 以上のことから、無条件で本願発明の「前処理モジュール」により「前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し」て「抽出」される「生理学的パラメータ」に含まれるものとして、発明の詳細な説明に記載されているものは、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」及び「脈拍数」のみである。 (2)決定支援モジュールについて 本願発明の「決定支援モジュール」は、「前記複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、前記統計的モード分析に基づく前記個人の前記ストレスレベルを判定する」ものである。 ア 発明の詳細な説明には、決定支援モジュールが行う「統計的モード分析」の内容を説明する記載は見当たらないが、ストレスレベルの判定の内容に関連する記載として、以下の記載がある。 (ア)「更にDSSモジュール118は、抽出された生理学的パラメータを分析し、ストレスレベルを判定するように構成している。一例では、拍動シグナルを個人から取得する。拍動シグナルを以下のように分析する:工程1では、手首の異なる3か所で表面圧電電極(図示せず)を介してmVシグナルの未加工拍動データを取得し、電圧シグナルX(n)にまで高める。未加工シグナルを前処理し、最大‐最小値(PP)間隔PP(X)を抽出した。工程2では:例えばPP間隔PP(X)を補間し、特徴パラメータF(x)を抽出する。データベースに格納されている全ての登録ユーザの特長パラメータF(x)を抽出する。一旦プローブデータが決定すれば、工程1及び工程2を実行することが可能である。更に、プローブデータは統計モデル、分類又は照合技法を用いて特徴パラメータF(x)を含むデータベースと照合してもよい。分類又は照合技法を行う間、表に収載されている1つ以上の特徴を利用してストレスレベルを判定することが可能である。」(段落【0037】) (イ)判断 段落【0037】の「プローブデータは統計モデル、分類又は照合技法を用いて特徴パラメータF(x)を含むデータベースと照合してもよい。分類又は照合技法を行う間、表に収載されている1つ以上の特徴を利用してストレスレベルを判定することが可能である。」との記載は、前処理モジュールが抽出した生理学的パラメータ(プローブデータ)を、統計モデル、分類又は照合技法を用いて参照データベースの生理学的パラメータ(特徴パラメータF(x)を含むデータベース)と照合し、参照データベース(表)に収載されている1つ以上の生理学的パラメータ(特徴)を利用してストレスレベルを判定することを意味するものと解される。 そうすると、生理学的パラメータとストレスレベルとを関連付ける参照データベースがあれば、生理学的パラメータからストレスレベルを判定することは可能であると認められる。 しかしながら、発明の詳細な説明には、生理学的パラメータとストレスレベルとの対応関係を示す参照データベースの内容に関する具体的な記載はない。 そして、本願発明の生理学的パラメータに含まれる「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」及び「脈拍数」とストレスレベルとの対応関係が、本願優先日当時の技術常識であったとも認められない。 また、ストレスにより脈拍数が変化するという概略的な関係が知られていたとしても、脈拍数は活動状態などストレス以外の影響を大きく受けるものであることが本願優先日当時の技術常識であって、本願発明は動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理して抽出した生理学的パラメータ以外の情報を利用することを特定するものでもないから、脈拍数とストレスレベルとの対応関係は不明であるといわざるを得ない。 なお、発明の詳細な説明には、「脈波伝播速度(PWV)」及び「血圧」とストレスレベルとの対応関係を明らかにする記載もない。 さらに、発明の詳細な説明には、決定支援モジュールで判定したストレスレベルと、実際のストレスレベルとの一致度を示すデータも記載されていない。 そうすると、個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するシステムを構成する決定支援モジュールにおいて、どのような参照データベースを使用し、それをどのように利用してストレスレベルを判定すればよいのかを、発明の詳細な説明の記載から理解することはできない。 新たに生理学的パラメータとストレスレベルとの対応関係を示すデータベースを構築するとしても、ストレス以外の影響を受ける生理学的パラメータとストレスレベルとの対応関係を見いだすためには、当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要するものと認められる。 (3)まとめ 以上のことから、本件出願の発明の詳細な説明は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。 3 理由2(特許法第36条第6項第1号違反)について (1)生理学的パラメータについて 本願発明は、「個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するシステム」が、「前記動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理し、複数の生理学的パラメータを抽出する前処理モジュール」及び「前記複数の生理学的パラメータの分析を行い、前記分析に基づく前記個人の前記ストレスレベルを判定する決定支援モジュール」を備えることを発明特定事項として含んでいるところ、「生理学的パラメータ」の具体的な種類は特定されていない。 これに対し、発明の詳細な説明の記載から、本願発明の生理学的パラメータに含まれうると理解できる具体的な生理学的パラメータの種類は、上記(2)アで説示したように、「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」、「脈拍数」、「脈波伝播速度(PWV)」及び「血圧」の4種のみである。 そして、動脈拍動触診シグナルのパルス列を前処理して抽出される任意の生理学的パラメータの全てが、ストレスレベルの判定に有用であるということが、本願優先日当時の技術常識であったとは認められない。 そのため、任意の「生理学的パラメータ」を用いてストレスレベルの判定を行うことが可能であることが、発明の詳細な説明の記載によって十分に裏付けられているとは認められない。 (2)決定支援モジュールについて 本願発明は、「個人のストレスレベルをリアルタイムで判定するシステム」が、「前記複数の生理学的パラメータの統計的モード分析を行い、前記統計的モード分析に基づく前記個人の前記ストレスレベルを判定する決定支援モジュール」を備えることを発明特定事項として含んでいる。 これに対し、発明の詳細な説明には、「統計的モード分析」の具体的な内容に関する記載は見当たらない。 そして、ストレスレベルの判定についても、発明の詳細な説明には、判定に用いる参照データベースや、判定結果と実際のストレスレベルとの一致度を示すデータに関する記載がないことは、上記(2)イで説示したとおりである。 そのため、「生理学的パラメータ」として、発明の詳細な説明に記載された「最大‐最小値(PP)間隔PP(X)」、「脈拍数」、「脈波伝播速度(PWV)」及び「血圧」を採用したとしても、「統計的モード分析」又は他の分析を行いストレスレベルの判定を行うことが可能であることが、発明の詳細な説明の記載によって十分に裏付けられているとは認められない。 (3)小括 以上のことから、本願発明は、本件出願の発明の詳細な説明に記載されたものでない。 4 補正発明について 上記第2で述べたとおり、本件補正は却下されるべきものであるが、念のため、本件補正が認められる場合について、以下検討する。 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、上記第2[理由]1(1)に記載したとおりである。 補正発明は、本願発明に対して「生理学的パラメータ」の種類を限定するものではないし、「決定支援モジュール」が行う「分析」の内容を限定するものでもない。 そして、決定支援モジュールが統計的モード分析以外の分析を行うものであったとしても、発明の詳細な説明に生理学的パラメータとストレスレベルとの対応関係を示す記載がないことは、上記(2)で説示したとおりである。 そうすると、補正発明が原査定の拒絶の理由を解消するものであるとは認められない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許請求の範囲の記載が同条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2018-013058

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