特許拒絶査定不服審判
2021-015206
格子
- 審判番号
- 2021-015206
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-071202外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年11月08日
- 審決日
- 2023年01月05日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 分類
- P18 .113-WZ (A61F) / P18 .121-WZ (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 71202「格子」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月13日出願公開、特開2020-121158〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)11月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年11月16日 (US)アメリカ合衆国、2012年2月14日 (US)アメリカ合衆国、2012年11月13日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2014-542410号の一部を平成30年3月5日に新たな特許出願とした特願2018-38894号の一部を令和2年4月10日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 3年 1月22日付け:拒絶理由通知書
令和 3年 4月26日提出:意見書、手続補正書
令和 3年 6月29日付け:拒絶査定
令和 3年11月 8日提出:審判請求書、手続補正書
令和 4年 5月12日付け:拒絶理由通知書
令和 4年 8月15日提出:意見書、手続補正書
第2 本願発明
令和4年8月15日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「少なくとも2つの区間を含む一般にチューブ状の格子を備える血管内プロテーゼであって;
前記格子の前記区間で複数の開口を規定し、前記格子がユニット構造を形成し、
ここで、前記区間は、膨張とクリープに抵抗するように構成されており、
1つまたはそれより多い第2の区間、及び、1つまたはそれより多い第1の区間を含み、
前記1つまたはそれより多い第2の区間は、当該区間の長手方向に、延伸した長さを有する拡張された第1の長手方向(区間)サイズまで、延伸するように構成されており、
前記1つまたはそれより多い第1の区間は、当該区間の長手方向へのさらなる延伸に抵抗し、
前記1つまたはそれより多い第1の区間は、第1の長さを有し、
前記延伸した長さは前記第1の長さよりも大きく、
また、ここで、前記格子は、拘束されていないときは第1の直径(格子)サイズまで拡張するよう動作することができ、膨張力が加えられるときは第2の直径(格子)サイズまで、拡張するよう動作することができ、
前記第1の直径(格子)サイズで負荷を受けていて、さらなる長手方向への延伸に抵抗している前記1つまたはそれより多い第1の区間は、前記膨張力に対して、第1のハードストップに到達するとき、塑性変形しその後破断し、
前記1つまたはそれより多い第2の区間は、前記第1のハードストップを越える圧力で前記長手方向に延伸するように構成され、且つ、前記格子が前記第2の直径(格子)サイズまで拡張でき、前記1つまたはそれより多い第2の区間が第2の直径(格子)サイズで負荷を受けるように構成されている、血管内プロテーゼ。」
第3 拒絶の理由
令和4年5月12日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1及び2は、次のとおりのものを含むものである。
理由1
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
理由2
本願発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:米国特許出願公開第2009/0264989号明細書
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1には、以下の事項が記載されている(日本語訳及び下線は、当審で付した。以下同じ。)
(1)「[0002] The present invention relates to prosthetic heart valves. More particularly, it relates to transcatheter implants, methods, and delivery systems.」
([0002] 本発明は人工心臓弁に関する。より具体的には、経カテーテルインプラント、方法、及び送達システムに関する。)
(2)「[0038] FIG. 1 shows an assembly 10 comprising a plurality of circumferential support structures 12 and a valved conduit 14. The valved conduit 14 may comprise any suitable implantable valve conduit such as those utilizing bovine, equine, human, or porcine tissue, or other materials, such as polymeric and/or metallic materials. The conduit 14 may comprise an outer tubular structure within which multiple leaflets 16 are positioned. For example, the component of the valved conduit may comprise the Medtronic Freestyle (or Contegra) Implantable Valved Conduit, which is commercially available from Medtronic, Inc. of Minneapolis, Minn. However, it is also possible with the various embodiments of the invention that a valve having a single leaflet or moveable component is utilized within a valve conduit or other valve structure, including tissue valves or mechanical valves.
[0039] The support structures 12 may be attached to the outside surface of the outer tubular structure of the valved conduit 14 using conventional means, such as sutures, clips, adhesives, molding, weaving, and the like. Alternatively, the support structures 12 can be attached inside or be positioned within the conduit 14, such as can be accomplished with a molded elastomer or woven fabric.」
([0038] 図1は、複数の円周支持構造12及び弁付き導管14を備えるアセンブリ10を示す。弁付き導管14は、ウシ、ウマ、ヒト、又はブタの組織、又はポリマー及び/又は金属材料等の他の材料を利用するもの等、任意の適切な移植可能な弁導管を含み得る。導管14は、内部に複数の小葉16が配置される外側管状構造を備えることができる。例えば、弁付き導管の構成要素は、ミネソタ州ミネアポリスのメドトロニック社から市販されているメドトロニック・フリースタイル(又はコンテグラ)埋込み型弁付き導管を含むことができる。しかし、本発明の様々な実施形態では、単一のリーフレット又は可動構成要素を有する弁が、弁導管又は、組織弁又は機械弁を含む他の弁構造内で利用されることも可能である。
[0039] 支持構造12は、縫合、クリップ、接着剤、成形、織り等の従来の手段を使用して、弁付き導管14の外側管状構造の外面に取り付けることができる。あるいは、支持構造12は、成形エラストマー又は織布で達成できるように、導管14の内部に取り付けるか、又は導管14内に配置することができる。)
(3)「[0048] As referred to herein, the prosthetic heart valves (e.g., valves that utilize a valve structure 40) used in accordance with the devices and methods of the invention may include a wide variety of different configurations, such as a prosthetic heart valve having one or more tissue leaflets, a synthetic heart valve having polymeric leaflets, or a mechanical valve, and can be specifically configured for replacing any heart valve. That is, the prosthetic heart valves of the invention can generally be used for replacement of aortic, mitral, tricuspid, or pulmonic valves, for use as a venous valve, or to replace a failed bioprosthesis, such as in the area of an aortic valve or mitral valve, for example. The replacement prosthetic heart valves of the invention can be employed to functionally replace stentless bioprosthetic heart valves as well.」
([0048] 本明細書で言及されるように、本発明の装置及び方法に従って使用される人工心臓弁(例えば、弁構造40を利用する弁)は、1つ又は複数の組織小葉を有する人工心臓弁、ポリマー小葉を有する合成心臓弁、又は機械弁等、多種多様な異なる構成を含むことができ、任意の心臓弁を置換するために特別に構成することができる。すなわち、例えば、本発明の人工心臓弁は、一般に、大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、又は肺動脈弁の置換に、静脈弁として使用することができ、あるいは、大動脈弁又は僧帽弁の領域等の故障したバイオプロテーゼの置換に使用することができる。本発明の置換人工心臓弁は、ステントレス生体人工心臓弁を機能的に置換するためにも使用することができる。)
(4)「[0052] The valve support structure can also be composed of multiple elements that function together in a similar manner as a single valve support structure of the type previously described. For one example, the valve support structure may include an outer tubular structural piece having a central opening into which a connector can be positioned. Such a connector can be slideable relative to the outer tubular structural piece to allow for expansion of the outer periphery of the support structure. In another embodiment, tracks or rails can be used to allow for enlargement or expansion of the outer perimeter of the support structure.」
([0052] 弁支持構造は、前述のタイプの単一の弁支持構造と同様に一緒に機能する複数の要素から構成することもできる。一例として、弁支持構造は、コネクタを配置できる中央開口部を有する外側管状構造部品を含むことができる。そのようなコネクタは、支持構造の外周の拡張を可能にするために、外側管状構造部品に対してスライド可能であり得る。別の実施形態では、トラック又はレールを使用して、支持構造の外周の拡大又は拡張を可能にすることができる。)
(5)「[0054] FIGS. 8 and 9 illustrate another conduit configuration that can be used with certain aspects of the invention. In particular, a conduit 60 is illustrated in FIG. 8, which may comprise a specially designed expandable structure 62. This conduit 60 may or may not include a valve, depending on the application. In the depicted embodiment, the structure 62 comprises a mesh or woven type of material configuration (e.g., a biocompatible polymer, metal, or combination thereof). The expandable structure 62 may comprise multiple members 66 disposed between adjacent elongated member 68, shown in FIG. 9, which can withstand stresses and tension during expected use of the heart valve assembly. However, the members 66 are designed to permanently deform, stretch, and/or break under the applied load of an expandable balloon member (not shown in FIGS. 8 and 9) or another device that imparts radial force. These members 66 may be fabric fibers, wires, or polymer elements, for example, which can break or stretch when placed under stress. If the members 66 stretch, such a stretching will preferably cause permanent or semi-permanent deformation of the members 66 so that they do not contract all the way back to their original size once the stress or load is removed. Members 64 are longer than members 66 and are curved or bent when the conduit 60 is in its relatively unexpanded condition. In addition, members 64 are more robust and are designed to withstand more stress than members 66. As a result, when a balloon or other expandable member is placed within the structure 62 and expanded, the members 66 will break or stretch and the members 64 will become straighter, thereby affording expansion of the expandable conduit 60. Members 66 can be differently configured at various portions of the conduit (e.g., inflow, outflow, etc.) to allow various shapes upon application of loads.」
([0054] 図8及び9は、本発明の特定の態様で使用できる別の導管構成を示している。特に、図8に示されている導管60は、特別に設計された拡張可能構造62を含むことができる。この導管60は、用途に応じて弁を含んでも含まなくてもよい。図示の実施形態では、構造62は、メッシュ又は織物タイプの材料構成(例えば、生体適合性ポリマー、金属、又はそれらの組み合わせ)を含む。拡張可能構造62は、図9に示されている、隣接する細長い部材68の間に配置された複数の部材66を備えてもよく、心臓弁アセンブリの予期される使用中の応力及び張力に耐えることができる。しかしながら、部材66は、拡張可能なバルーン部材(図8及び9には示されていない)又は半径方向の力を与える別の装置の加えられた負荷の下で永久に変形、伸張、及び/又は破断するように設計されている。これらの部材66は、例えば、応力下に置かれると破断又は伸張する布繊維、ワイヤ、又はポリマー要素であってもよい。部材66が伸張する場合、そのような伸張は好ましくは部材66の永久的又は半永久的な変形を引き起こし、応力又は負荷が除去されると元のサイズに完全に収縮しないようにする。部材64は、部材66よりも長く、導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、湾曲又は屈曲している。さらに、部材64はより頑強であり、部材66よりも大きな応力に耐えるように設計されている。その結果、バルーン又は他の拡張可能な部材が構造62内に配置されて拡張されると、部材66は破断するか又は伸張し、部材64はより真っ直ぐとなり、それによって拡張可能な導管60の拡張を可能にする。部材66は、荷重が加えられると様々な形状を可能にするために、導管の様々な部分(例えば、流入、流出等)で異なる構成にすることができる。)
(6)図1
[図:0001397571000001.jpg]
(7)図8
[図:0001397571000002.jpg]
図9
[図:0001397571000003.jpg]
(8)上記(5)の[0054]の記載及び(7)の図8から、導管60の拡張可能構造62は、チューブ状のメッシュを備えると認められる。
(9)上記(5)の[0054]の記載及び(7)の図9から、導管60の拡張可能構造62は、メッシュの部材64、66、68で複数の開口を規定していることが認められる。
(10)上記(5)の[0054]の記載及び(7)の図8から、導管60の拡張可能構造62のメッシュは、単一の一体的構造体であることが認められる。
(11)上記(5)の[0054]の「拡張可能構造62は、図9に示されている、隣接する細長い部材68の間に配置された複数の部材66を備えてもよく、心臓弁アセンブリの予期される使用中の応力及び張力に耐えることができる。」及び「部材64はより頑強であり、部材66よりも大きな応力に耐えるように設計されている。」という記載から、部材66は一定程度の応力に耐えられるものと認められる。
(12)上記(5)の[0054]の記載及び(7)の図8及び図9から、導管60の拡張可能構造62のメッシュは、導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、第1の直径であり、バルーン又は他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、第2の直径まで拡張することができると認められる。
2 上記1で挙げた記載及び認定事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(1)引用文献1には、部材64、66、68を含む(上記1(5)([0054]))チューブ状のメッシュを備え(上記1(8))、大動脈弁又は肺動脈弁の置換に使用される(上記1(3)[0038])導管60の拡張可能構造62(上記1(5)([0054]))が記載されている。
(2)導管60の拡張可能構造62は、メッシュの部材64、66、68で複数の開口を規定し(上記1(9))、前記メッシュは、単一の一体的構造体である(上記1(10))。
(3)導管60の拡張可能構造62の部材64、66、68は、使用中の応力及び張力に耐えることができる(上記1(5)([0054]))。
(4)導管60の拡張可能構造62は、部材64、及び、複数の部材66を含んでいる(上記1(5)([0054]))。
(5)部材64は、部材66よりも長く、導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、湾曲又は屈曲していて、バルーン又は他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、部材64はより真っ直ぐとなる(上記1(5)([0054]))。
(6)部材66は、一定程度の応力に耐えられる(上記1(11))。
(7)メッシュは、導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、第1の直径であり、バルーン又は他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、第2の直径まで拡張することができる(上記1(12))。
(8)導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、すなわち、第1の直径において、一定程度の応力に耐えられる部材66は、バルーン又は他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると永久に変形、伸張、及び破断する(上記1(5)([0054])、上記1(11)、上記1(12))。
(9)湾曲又は屈曲している部材64は、バルーン又は他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、より真っ直ぐとなり、かつ、メッシュが第2の直径まで拡張できる(上記1(5)([0054])、上記1(12))。
3 上記2から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「部材64、66、68を含むチューブ状のメッシュを備え、大動脈弁又は肺動脈弁の置換に使用される導管60の拡張可能構造62であって、
前記メッシュの前記部材64、66、68で複数の開口を規定し、前記メッシュは、単一の一体的構造体であり、
前記部材64、66、68は、使用中の応力及び張力に耐えることができ、
部材64、及び、複数の部材66を含み、
前記部材64は、前記部材66よりも長く、前記導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、湾曲又は屈曲していて、バルーン又は他の拡張可能な部材が前記拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、前記部材64はより真っ直ぐとなり、
前記部材66は、一定程度の応力に耐えられ、
前記メッシュは、導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、第1の直径であり、前記バルーン又は前記他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、第2の直径まで拡張することができ、
前記第1の直径において、一定程度の応力に耐えられる前記部材66は、前記バルーン又は前記他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると永久に変形、伸張、及び破断し、
湾曲又は屈曲している前記部材64は、前記バルーン又は前記他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、より真っ直ぐとなり、かつ、前記メッシュが前記第2の直径まで拡張できる、大動脈弁又は肺動脈弁の置換に使用される導管60の拡張可能構造62。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
(1)引用発明の「部材64、66、68」は本願発明の「少なくとも2つの区間」に相当し、以下同様に、「メッシュ」は「格子」に、「大動脈弁又は肺動脈弁の置換に使用される導管60の拡張可能構造62」は「血管内プロテーゼ」に、「前記メッシュは、単一の一体的構造体であり」は「前記格子がユニット構造を形成し」に、「前記部材64、66、68は、使用中の応力及び張力に耐えることができ」は「前記区間は、膨張とクリープに抵抗するように構成されており」に、「部材64」は「1つまたはそれより多い第2の区間」に「複数の部材66」及び「部材66」は「1つまたはそれより多い第1の区間」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明の「前記部材64は、前記部材66よりも長く、前記導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、湾曲又は屈曲していて、バルーン又は他の拡張可能な部材が前記拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、前記部材64はより真っ直ぐとなり」は、部材64が湾曲又は屈曲した状態から、より真っ直ぐな状態へと、その長手方向に延伸するように構成されており、その延伸して真っ直ぐとなったときの部材64の長さは、部材66の長さよりも長いことであるから、本願発明の「前記1つまたはそれより多い第2の区間は、当該区間の長手方向に、延伸した長さを有する拡張された第1の長手方向(区間)サイズまで、延伸するように構成されており、前記1つまたはそれより多い第1の区間は、当該区間の長手方向へのさらなる延伸に抵抗し」及び「前記1つまたはそれより多い第1の区間は、第1の長さを有し、前記延伸した長さは前記第1の長さよりも大きく」に相当する。
(3)引用発明の「前記部材66は、一定程度の応力に耐えられ」は本願発明の「前記1つまたはそれより多い第1の区間は、当該区間の長手方向へのさらなる延伸に抵抗し」に相当する。
(4)引用発明の「前記メッシュは、導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、第1の直径であり、前記バルーン又は前記他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、第2の直径まで拡張することができ」と本願発明の「前記格子は、拘束されていないときは第1の直径(格子)サイズまで拡張するよう動作することができ、膨張力が加えられるときは第2の直径(格子)サイズまで、拡張するよう動作することができ」とは、「前記格子は、第1の直径(格子)サイズから、膨張力が加えられるときは第2の直径(格子)サイズまで、拡張するよう動作することができ」という限りにおいて一致する。
(5)引用発明の「前記第1の直径において、一定程度の応力に耐えられる前記部材66は、前記バルーン又は前記他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると永久に変形、伸張、及び破断し」は、第1の直径において、バルーン又は他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されるときに、部材66が一定程度の応力に相当する膨張力には耐えられるものの、膨張力がそれ以上となった場合に永久に変形、伸張、及び破断することであるから、本願発明の「前記第1の直径(格子)サイズで負荷を受けていて、さらなる長手方向への延伸に抵抗している前記1つまたはそれより多い第1の区間は、前記膨張力に対して、第1のハードストップに到達するとき、塑性変形しその後破断し」に相当する。
(6)引用発明の「湾曲又は屈曲している前記部材64は、前記バルーン又は前記他の拡張可能な部材が拡張可能構造62内に配置されて拡張されると、より真っ直ぐとなり、かつ、前記メッシュが前記第2の直径まで拡張できる」は、部材66がバルーン又は他の拡張可能な部材からの膨張力により、永久に変形、伸張、及び破断し、その後、部材64がより真っ直ぐとなり、第2の直径となって、負荷を受けることであるから、本願発明の「前記1つまたはそれより多い第2の区間は、前記第1のハードストップを越える圧力で前記長手方向に延伸するように構成され、且つ、前記格子が前記第2の直径(格子)サイズまで拡張でき、前記1つまたはそれより多い第2の区間が第2の直径(格子)サイズで負荷を受けるように構成されている」に相当する。
2 したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
「少なくとも2つの区間を含む一般にチューブ状の格子を備える血管内プロテーゼであって;
前記格子の前記区間で複数の開口を規定し、前記格子がユニット構造を形成し、
ここで、前記区間は、膨張とクリープに抵抗するように構成されており、
1つまたはそれより多い第2の区間、及び、1つまたはそれより多い第1の区間を含み、
前記1つまたはそれより多い第2の区間は、当該区間の長手方向に、延伸した長さを有する拡張された第1の長手方向(区間)サイズまで、延伸するように構成されており、
前記1つまたはそれより多い第1の区間は、当該区間の長手方向へのさらなる延伸に抵抗し、
前記1つまたはそれより多い第1の区間は、第1の長さを有し、
前記延伸した長さは前記第1の長さよりも大きく、
また、ここで、前記格子は、第1の直径(格子)サイズから、膨張力が加えられるときは第2の直径(格子)サイズまで、拡張するよう動作することができ、
前記第1の直径(格子)サイズで負荷を受けていて、さらなる長手方向への延伸に抵抗している前記1つまたはそれより多い第1の区間は、前記膨張力に対して、第1のハードストップに到達するとき、塑性変形しその後破断し、
前記1つまたはそれより多い第2の区間は、前記第1のハードストップを越える圧力で前記長手方向に延伸するように構成され、且つ、前記格子が前記第2の直径(格子)サイズまで拡張でき、前記1つまたはそれより多い第2の区間が第2の直径(格子)サイズで負荷を受けるように構成されている、血管内プロテーゼ。」
3 そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で一応相違する。
(1)相違点
格子に関し、本願発明は、「拘束されていないときは第1の直径(格子)サイズまで拡張するよう動作することができ」るのに対し、引用発明は、「導管60が比較的拡張していない状態にあるとき、第1の直径であ」る点。
第6 判断
1 相違点について
上記相違点について、以下検討する。
(1)相違点について
引用発明は、上記第4の1(1)に「本発明は人工心臓弁に関する。より具体的には、経カテーテルインプラント、方法、及び送達システムに関する。」と記載されているように、カテーテルを用いて大動脈弁又は肺動脈弁の置換に使用される導管60の拡張可能構造62である。そして、そのようなカテーテルを用いて体内に送達される導管状の拡張可能構造は、径方向に収縮されてカテーテル内に配置され、カテーテルと共に患部に送達され、患部においてカテーテルから排出されて自然径にまで拡張するものであることは、技術常識である。
よって、引用発明も、第1の直径よりも径方向に収縮されてカテーテル内に配置するものであり、すなわち、カテーテル等で拘束されていないときは第1の直径まで拡張するように動作することができるものであるといえるから、相違点は実質的な相違点ではない。
したがって、本願発明と引用発明との間に実質的な相違点はなく、本願発明は引用発明である。
2 令和4年8月15日提出の意見書における審判請求人の主張について
上記意見書において審判請求人は、「引用文献1には、請求項1の特定事項は開示されていません。文献1の段落【0054】は、「...バルーンまたは他の延伸可能な部材が構造体62内に置かれ延伸されると、部材66が破断または伸張する...」と開示しています。文献1は、バルーンが構造内に置かれたときに部材が破断又は伸張することを開示しているだけであり、「格子」が第1のハードストップまで拡張を許容し、その後破断する部材を含むこと、次に第2のハードストップまで拡張を許容する第2の組の部材を含むことは開示していません。」と主張している(上記意見書2頁27行-32行)。
ここで、請求項1に記載された「ハードストップ」という用語について、まず検討する。
ハードストップに関し、本願の発明の詳細な説明には、【0007】に「あるいはプロテーゼは、内蔵された“ハード-ストップ”に到達し、その地点に来ると格子はそれ以上延伸できなくなる。」と記載されており、【0051】に「すなわち図8Aに示してあるように、格子は、その格子に組み込まれた例えば直径12mmの“ハード-ストップ”に到達する。」と記載されている。さらに、図8Aには、以下の図が開示されている。
【図8A】
[図:0001397571000004.jpg]
以上の本願の発明の詳細な説明の記載及び図面によると、本願の発明の詳細な説明に記載された「ハード-ストップ」とは、格子がそれ以上径方向に拡張しないときの直径であると解される。これに対し、本願発明は、「第1のハードストップ」に達して、区画が「塑性変形しその後破断」し、格子がさらに径方向に拡張するから、請求項1に記載された「ハードストップ」は本願の発明の詳細な説明に記載された「ハード-ストップ」と同義とはいえない。
そうすると、上記第5(特に1(4)-(6))及び上記1に記載したとおりであって、審判請求人の上記主張は、当を得たものではない。
3 まとめ
以上より、本願発明と引用発明との間に実質的な相違点はなく、本願発明は引用発明である。
4 予備的見解
上記相違点に関し、仮に、引用発明が第1の直径よりも径方向に収縮されてカテーテル内に配置されるものではないとしても、径方向に収縮されてカテーテル内に配置され、カテーテルと共に患部に送達され、患部においてカテーテルから排出されて自然径にまで拡張する導管状の拡張可能構造体は、文献をあげるまでもなく周知技術であり、引用発明において、カテーテルを用いて大動脈弁又は肺動脈弁の置換に使用する際の具体的態様として、上記周知技術を採用して、本願発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-015206