特許拒絶査定不服審判
2023-020952
胆管ステント
- 審判番号
- 2023-020952
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2021-168282外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2023年12月08日
- 審決日
- 2025年05月27日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 【請求人代理人】本田 淳
- 分類
- P18 .113-Z (A61F) / P18 .121-Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2021-168282「胆管ステント」拒絶査定不服審判事件〔令和 4年 1月 6日出願公開、特開2022- 1318〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年) 6月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年 6月18日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2016-565150号の一部を、平成30年 5月 2日に新たな特許出願とした特願2018-88710号の一部を、令和 2年 7月27日に新たな特許出願とした特願2020-126440 号の一部を、令和 3年10月13日に新たな特許出願としたものであって、その後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 4年10月14日付け:拒絶理由通知書
令和 5年 4月25日提出:手続補正書、意見書
令和 5年 8月 1日付け:拒絶査定
令和 5年12月 8日提出:審判請求書
令和 6年 2月19日提出:手続補正書(方式)
第2 本願発明
本願の請求項1ないし20に係る発明は、令和 5年 4月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「長尺状のチューブ状構成および展開された構成を有する本体を含む、組織管腔ステントであって、
前記展開された構成で組織内に展開されたとき、前記本体の第1の端部および反対側の第2の端部のそれぞれが、第1のフランジ構造および第2のフランジ構造へと半径方向に拡張し、それらの間にほぼ円筒形の鞍状領域を残し、
第1のフランジ構造および第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は、フランジ構造の第1のセグメントおよび第2のセグメントを画定する少なくとも第1の変曲点および第2の変曲点を有し、前記円筒形の鞍状領域の中心側に向き、前記第1のセグメントと前記円筒形の鞍状領域とによって画定される第1の変曲点の角度は、前記中心側とは反対向きの、前記第1のセグメントと前記第2のセグメントとによって画定される第2の変曲点の角度以上の大きさであり、
前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第1のセグメントは、直径が増加する部分を含み、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第2のセグメントは、直径が減少する部分を含む、組織管腔ステント。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含むものである。
1.(新規性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献3に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献3:国際公開第2013/173045号
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献3の記載
(1)引用文献3には、以下の事項が記載されている。(なお、和訳は、引用文献3のファミリー文献である特表2015-158741号公報を参考にして、当審で作成したものである。)
ア [0009]「Methods for advancing a catheter distally through opposed first and second luminal walls of first and second body lumens are disclosed herein. The methods include positioning a catheter with a distal tip proximal to the first luminal wall, the catheter including a stent; providing an electrical current to a conductive portion of the distal tip; advancing distally the distal tip of the catheter through the first and second luminal walls to create a passage therethrough, wherein the conductive portion of the distal tip includes a first cutting feature and one or more projections extending from the first cutting feature towards an outer diameter of the distal tip; deploying a distal flange of the stent in the second body lumen; and drawing proximally on the distal flange to pull the first and second luminal walls towards each other.」
(第1及び第2の身体管腔の対向する第1及び第2の管腔壁を通して、カテーテルを遠位に前進させるための方法が、本明細書に開示される。本方法は、第1の管腔壁に遠位先端を近接させるよう、カテーテルを位置付けることであって、カテーテルは、ステントを含む、ことと、電流を遠位先端の導電性部分に提供することと、カテーテルの遠位先端を第1及び第2の管腔壁を通して遠位に前進させ、それを通して通路を作成することであって、遠位先端の導電性部分は、第1の切除特徴と、第1の切除特徴から遠位先端の外径に向かって延在する1つ以上の突起とを含む、ことと、ステントの遠位フランジを第2の身体管腔内で展開することと、遠位フランジを近位に抜去し、第1及び第2の管腔壁を相互に向かって引張することとを含む。)
イ [00010]「The methods can include releasing a proximal flange of the stent into the first body lumen. The methods can include attaching the catheter to an endoscope prior to positioning the catheter.」
(本方法は、ステントの近位フランジを第1の身体管腔内に解放することを含むことができる。本方法は、カテーテルを位置付けるのに先立って、カテーテルを内視鏡に取り付けることを含むことができる。)
ウ [00051]「The device 10 of FIG. 1 includes a control handle 12 having a body 14 with a first slide actuator 15 with knob 16 and lock 20. A second slide actuator 18 with lock 22, scope locking mechanism 24, electrical plug 23, catheter body 26, a sheath 27, shaft 28, stent lock 30, distal tapered tip 32 and stent or other tissue anchor 34 (FIG. 2A). FIG. 2A is an enlarged portion of the end of the device 10, including the distal tapered tip 32.」
(図1のデバイス10は、ノブ16及びロック20を伴う、第1のスライドアクチュエータ15と、ロック22を伴う、第2のスライドアクチュエータ18とを伴う、本体14を有する、制御ハンドル12と、スコープ係止機構24と、電気プラグ23と、カテーテル本体26と、シース27と、シャフト28と、ステントロック30と、遠位先細先端32と、ステント又は他の組織アンカー34(図2A)とを含む。図2Aは、遠位先細先端32を含む、デバイス10の端部の拡大部分である。)
エ [00060]「FIGS. 5A-5E illustrate steps for accessing adjacent boy(審決注:「body」の誤記と認められる。) lumens, such as lumen LI and lumen L2.」
(図5A~5Eは、隣接する身体管腔、例えば、管腔L1及び管腔L2にアクセスするためのステップを図示する。)
オ [00065]「A distal flange segment 42 of the tissue stent or anchor 34 is now expanded by moving the second slide actuator 18 in the proximal direction to retract sheath 27. The second slide actuator is pulled back to a predetermined position part way along the proximal extension 17 of the first slide actuator 15, after releasing second lock 22 as in FIG. 5C.」
(組織ステント又はアンカー34の遠位フランジセグメント42は、ここで、第2のスライドアクチュエータ18を近位方向に移動させ、シース27を後退させることによって拡張される。第2のスライドアクチュエータは、図5Cにおけるように、第2のロック22を解放後、第1のスライドアクチュエータ15の近位延在部17に沿って、所定の位置まで、部分的に引き戻される。)
カ [00068]「A proximal segment 44 of the tissue anchor stent 34 is now expanded by moving the second slide actuator 18 in the proximal direction to a position at or near the proximal end of the first slide actuator 15, after releasing lock 22 as in FIG. 5E to further retract the sheath 27. The proximal end of the tissue anchor stent 34 releases from stent lock 30 (FIG. 2A) as the second slide actuator 18 reaches the proximal end of its travel. This releases the entire tissue anchor, which in this example has a central lumen 46 allowing fluid communication between lumens L1 and L2. The device 10 is now removed, leaving the tissue anchor 34 with central lumen 46 implanted between lumen L1 and lumen L2 with fluid communication being established. The stent 34 can promote the formation of a healthy anastomosis between lumen Ll and lumen L2 by firmly holding tissues Tl and T2 together while minimizing damage to the tissue walls.」
(組織アンカーステント34の近位セグメント44は、ここで、図5Eのように、ロック22を解除してシース27を更に後退させた後、第2スライドアクチュエータ18を第1スライドアクチュエータ15の近位端又はその近傍の位置まで、近位方向に移動させることによって、拡張される。第2のスライドアクチュエータ18がその移動の近位端に達すると、組織アンカーステント34の近位端がステントロック30(図2A)から解放される。これは、本実施例では、管腔L1とL2との間の流体連通を可能にする中心管腔46を有する、組織アンカー全体を解放させる。デバイス10はここで除去され、流体連通が確立された状態で、管腔L1と管腔L2との間に埋め込まれた、中心管腔46を有する組織アンカー34が残される。ステント34は、組織壁への損傷を最小限に抑えながら、組織Tl及びT2をともにしっかりと保持することにより、管腔Llと管腔L2との間に健常な吻合の形成を促進することができる。)
キ [00069] 「The stent 34 is illustrated with a double walled flange structure.」
(ステント34は、二重壁フランジ構造とともに図示される。)
ク [000116]「Various stent shapes and designs can be delivered using the devices and methods disclosed herein. FIGS. 18A-F, 19A-191, 20A-20B, 21A-21D, and 22A-22B illustrate various stent designs that can be used with the devices disclosed herein. ・・・ The body can have both an elongated tubular configuration (FIG. 2A) and a foreshortened configuration where proximal and distal ends of the body expand radially into flange structures, as illustrated in FIG. 5E. The stents can expand radially to form a pair of adjacent annular rings which define the flange structures. After such foreshortening and deployment of the flange structures, the body will further have a cylindrical saddle region between the flange structures. When the anchor is deployed in tissue, the flange structures engage the outer surfaces of adjacent tissue layers (e.g. tissue Tl and tissue T2 illustrated in FIGS. 5A-5E) and the saddle region typically resides within a penetration through the tissue layers. The flange structures can have various configurations, including one or more inflection points to provide additional structural support to the stent flanges.」
(種々のステント形状及び設計は、本明細書に開示されるデバイス及びび方法を使用して送達されることができる。図18A~F、19A~19I、20A~20B、21A~21D、及び22A~22Bは、本明細書に開示されるデバイスと併用され得る、種々のステント設計を図示する。・・・本体は、伸長管状構成(図2A)及び縮小構成の両方を有することができ、本体の近位端及び遠位端は、図5Eに図示されているように、半径方向に拡張してフランジ構造になる。ステントは、半径方向に拡張して、フランジ構造を画定する、一対の隣接する環状リングを形成することができる。このようなフランジ構造の縮小及び展開の後、本体は更に、フランジ構造の間に円筒形のサドル領域を有する。アンカーが組織内で展開されると、フランジ構造は、隣接する組織層(例えば、図5A~5Eに図示される組織T1及び組織T2)の外側表面に係合し、サドル領域は、典型的には、組織層を通して穿孔内に常駐する。フランジ構造は、ステントフランジに付加的構造支持を与えるための1つ以上の変曲点を含む、種々の構成を有することができる。)
ケ [000119] 「FIGS. 19A-19I illustrate cross sections of a quarter portions of stents with flanges 191 and central saddle regions 192. Each of the quarter portions are paired with a similar shape to form the entire flange 191. Each of the flange structures 191 can be paired with any of the other flange structures disclosed herein to form a stent with two flanges. FIG. 19A illustrates a flange with multiple inflections. FIG. 19B illustrates a flange 191 with multiple inflection including multiple flanges. FIG. 19C illustrates a flange 191 with the stent curved back towards the central saddle region. FIG. 19D illustrates a flange 191 with the stent curved away from the central saddle region 192. FIG. 19E illustrates a flange 191 with multiple inflections. FIG. 19F illustrates a flange 191 with a circular configuration. FIG. 19G illustrates a flange that curves towards the opposing flange and back on itself. FIG. 19H illustrates a flange 191 with notches or ribs in portions of the stent cross-section. FIG. 19I illustrates a flange 191 with a sinusoidal section to provide additional strength.」
(図19A~19Iは、フランジ191及び中心サドル領域192を伴う、ステントの4分の1部分の断面を図示する。4分の1部分はそれぞれ、フランジ191全体を形成するために類似形状と対合される。フランジ構造191はそれぞれ、本明細書に開示される他のフランジ構造のいずれかと対合され、2つのフランジを伴うステントを形成することができる。図19Aは、複数の変曲を伴うフランジを図示する。図19Bは、複数のフランジを含む、複数の変曲を伴うフランジ191を図示する。図19Cは、中心サドル領域に向かって逆湾曲したステントを伴うフランジ191を図示する。図19Dは、中心サドル領域192から離れるように湾曲したステントを伴うフランジ191を図示する。図19Eは、複数の変曲を伴うフランジ191を図示する。図19Fは、円形構成を伴うフランジ191を図示する。図19Gは、対向フランジに向かって湾曲し、その上に逆湾曲するフランジを図示する。図19Hは、ステント断面の一部に切り欠き又はリブを伴うフランジ191を図示する。図19Iは、付加的強度を提供するために、正弦波断面を伴うフランジ191を図示する。)
コ [000121]「The stents disclosed herein provide enough pressure to hold the tissue walls together with the expanded flange structures but not too much force that can cause trauma to the tissue walls.」
(本明細書に開示されるステントは、拡張されたフランジ構造を用いて、組織壁をともに保持するために十分であるが、組織壁に外傷を生じさせ得るほどの力ではない、圧力を提供する。)
サ [000122]「The stents disclosed herein can be used to form an anastomosis between the body lumens. Reducing the damage to the tissue during implantation of the stent and minimizing necrosis of tissue can promote tissue healing and expedite the formation of a healthy anastomosis.」
(本明細書に開示されるステントは、身体管腔間に吻合を形成するために使用されることができる。ステントの埋込の間の組織への損傷を低減し、組織の壊死を最小限にすることは、組織治癒を助長し、健全な吻合の形成を促すことができる。)
シ [000126] 「The stents disclosed herein have additional strength over prior art stent designs. The double walled flange structure and cuff on the stent provide additional strength for the stent to engage the opposing tissue planes. The expanded double-walled flange can form an angle of about 90 degrees with the saddle region.」
(本明細書に開示されるステントは、先行技術ステント設計に優る付加的強度を有する。ステント上の二重壁フランジ構造及びカフは、ステントに対して、対向組織平面に係合するための付加的強度を提供する。拡張された二重壁フランジは、サドル領域と約90度の角度を形成することができる。)
ス 図2A「
[図:0001428560000001.jpg]
」
セ 図5A-E「
[図:0001428560000002.jpg]
[図:0001428560000003.jpg]
[図:0001428560000004.jpg]
[図:0001428560000005.jpg]
[図:0001428560000006.jpg]
」
ソ 図19B「
[図:0001428560000007.jpg]
」
タ 図19E「
[図:0001428560000008.jpg]
」
(2)前記(1)によれば、引用文献3には、以下の事項が記載されている。
チ 図19B及びE(前記ソ及びタ)において、フランジ191及び中心サドル領域192を伴う、ステントの4分の1部分の断面(前記ケ)が図示された態様のステント(以下「図19ステント」という。)は、前記ア、イ、エ、カ、ク及びサによれば、二重壁フランジ構造のステント34(前記キ及びセ)と同様に、デバイス10により、図5A~5Eに図示されたステップを経て、管腔L1及び管腔L2にアクセスされて、両管腔の間に吻合を形成するステントである。
ツ 図19ステントは、前記ク及びチによれば、その本体が伸長管状構成及び縮小構成を有し、展開後の縮小構成は、本体の近位端及び遠位端が半径方向に拡張して、円筒形の中心サドル領域192の両端に、近位及び遠位のフランジ構造を画定する、一対の環状リングを形成するものである。そして、図19ステントの当該フランジ構造の各々は、前記ケによれば、その断面の一部(半分)が、図19B及びEに図示される断面(以下「図19フランジ断面」という。)の形状を呈している。
テ 図19フランジ断面は、複数の変曲を伴うフランジ191であるところ(前記ケ)、図19B及びE(前記ソ及びタ)によれば、フランジ191が、少なくとも、概ね中心線(一点鎖線)と平行に延在する中心サドル領域192から、半径方向外側に向けて変曲して中心線から離れるように延在するとともに、続いて、半径方向内側に向けて変曲して中心線に近づくように延在する、S字状の断面形状を呈していることが看取される(後記第6の2(3)ウの参考図1及び2参照)。
ト 図19ステントは、前記カ及びコによれば、組織壁への損傷を最小限に抑えながら、組織Tl及びT2をしっかりと保持することにより、管腔Llと管腔L2との間の健常な吻合の形成を促進する(前記カ)ものである。そして、図19ステントのフランジ構造は、前記ク、ケ及びシによれば、組織T1及びT2の対向組織平面に係合する付加的強度を提供する(前記シ)、少なくとも2つの変曲点を含む構成である。
2 引用発明
前記1(1)及び(2)を総合すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
「デバイス10により管腔L1及び管腔L2にアクセスされて、両管腔の間に吻合を形成するステントであって、
前記ステントの本体が伸長管状構成及び縮小構成を有するとともに、展開後の縮小構成は、本体の近位端及び遠位端が半径方向に拡張して、円筒形の中心サドル領域192の両端に、近位及び遠位のフランジ構造を画定する、一対の環状リングを形成するものであり、
前記フランジ構造の各々は、断面の4分の1部分が複数の変曲を伴うフランジ191を有するものであり、前記フランジ191は、少なくとも、概ね中心線と平行に延在する中心サドル領域192から、半径方向外側に向けて変曲して中心線から離れるように延在するとともに、続いて、半径方向内側に向けて変曲して中心線に近づくように延在する、S字状の断面形状を呈しており、
前記断面形状を呈するフランジ191を有する前記フランジ構造は、各々が組織T1又はT2の対向組織平面に係合する付加的強度を提供する、少なくとも2つの変曲点を含む構成となり、
組織壁への損傷を最小限に抑えながら、組織Tl及びT2をしっかりと保持することにより、管腔Llと管腔L2との間の健常な吻合の形成を促進する、ステント。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の各構成は、それぞれ、次の本願発明の構成に相当する。
<引用発明> <本願発明>
伸長管状構成 長尺状のチューブ状の構成
展開後の縮小構成 展開された構成
ステントの本体 本体
両管腔の間に吻合を形成するステント 組織管腔ステント
組織T1及びT2、対向組織平面、
組織壁 組織
本体の近位端 本体の第1の端部
本体の遠位端 反対側の第2の端部
近位のフランジ構造 第1のフランジ構造
遠位のフランジ構造 第2のフランジ構造
円筒形の中心サドル領域192 ほぼ円筒形の鞍状領域
2つの変曲点 第1の変曲点及び第2の変曲点
2 引用発明の「前記ステントの本体が伸長管状構成及び縮小構成を有」し、「デバイス10により管腔L1及び管腔L2にアクセスされて、両管腔の間に吻合を形成するステント」は、本願発明の「長尺状のチューブ状構成および展開された構成を有する本体を含む、組織管腔ステント」に相当する。
3 引用発明の「展開後の縮小構成」は、「各々が組織T1又はT2の対向組織平面に係合する」「フランジ構造」であるから、組織T1又はT2内に展開されたときの態様であるのは、自明である。
そうすると、引用発明の「展開後の縮小構成は、本体の近位端及び遠位端が半径方向に拡張して、円筒形の中心サドル領域192の両端に、近位及び遠位のフランジ構造を画定する、一対の環状リングを形成する」構成は、本願発明の「前記展開された構成で組織内に展開されたとき、前記本体の第1の端部および反対側の第2の端部のそれぞれが、第1のフランジ構造および第2のフランジ構造へと半径方向に拡張し、それらの間にほぼ円筒形の鞍状領域を残し」た構成に相当する。
4 引用発明の「前記フランジ構造の各々」が「断面の4分の1部分が複数の変曲を伴うフランジ191を有」して「各々が組織T1又はT2の対向組織平面に係合する付加的強度を提供する、少なくとも2つの変曲点を含む構成とな」る構成と、本願発明の「第1のフランジ構造および第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は、フランジ構造の第1のセグメントおよび第2のセグメントを画定する少なくとも第1の変曲点および第2の変曲点を有」する構成とは、第1のフランジ構造および第2のフランジ構造のうち少なくとも一方が、少なくとも第1の変曲点および第2の変曲点を有する構成の限りにおいて、一致する。
5 そうすると、本願発明と引用発明は、次の点で一致し、一応相違する。
(1)一致点
「長尺状のチューブ状構成および展開された構成を有する本体を含む、組織管腔ステントであって、
前記展開された構成で組織内に展開されたとき、前記本体の第1の端部および反対側の第2の端部のそれぞれが、第1のフランジ構造および第2のフランジ構造へと半径方向に拡張し、それらの間にほぼ円筒形の鞍状領域を残し、
第1のフランジ構造および第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方は、少なくとも第1の変曲点および第2の変曲点を有する、
組織管腔ステント。」
(2)相違点
本願発明は、「少なくとも第1の変曲点および第2の変曲点」が「フランジ構造の第1のセグメントおよび第2のセグメントを画定する」ものであって、フランジ構造が「前記円筒形の鞍状領域の中心側に向き、前記第1のセグメントと前記円筒形の鞍状領域とによって画定される第1の変曲点の角度は、前記中心側とは反対向きの、前記第1のセグメントと前記第2のセグメントとによって画定される第2の変曲点の角度以上の大きさであり」、「前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第1のセグメントは、直径が増加する部分を含み、前記第1のフランジ構造および前記第2のフランジ構造のうちの少なくとも一方の第2のセグメントは、直径が減少する部分を含む」ものであるのに対し、
引用発明は、複数の変曲を伴うフランジ191が「少なくとも2つの変曲点を含」み、「少なくとも、概ね中心線と平行に延在する中心サドル領域192から、半径方向外側に向けて変曲して中心線から離れるように延在するとともに、続いて、半径方向内側に向けて変曲して中心線に近づくように延在する、S字状の断面形状を呈して」いる点。
(以下、相違点に係る本願発明の構成を「本願セグメント構成」という。)
第6 相違点の判断
1 本願セグメント構成について
本願明細書には、次の記載がある。
(1)フランジ形状は、ステントの強度を改善しかつ各組織平面に対抗する十分な量の直線力をもたらすために、最適にされ得る。いくつかの実施形態(図13B、図14B、図14E等)では、端部形状は、複数の構造的な折り目からなり、複数の変曲点を有する。変曲点は、湾曲の方向に変化が生じる曲線の点と考えることができる。(段落【0040】)
(2)ステント150(円筒形鞍状領域151等を備える)の実施形態(図13B等)は、フランジ152、154及び端部153、155が組織壁T1、T2を並列に保持するように構成され、フランジ152、154の先端部分は、組織壁への外傷を低減させるように、曲げられている。ステントの端部153、155は、更に丸められているから、組織に傷付けずに係合し、ステント構造の先端部の強度を増し得る。(段落【0056】)
(3)図14Aのフランジ162の壁(6個の変曲点)は、円筒形鞍状領域161から離れるように突出し(第1の変曲点)、その後、ステント160の縦方向の経路164の中心の方に戻るように曲がる(2つのさらなる変曲点)。曲がりのそれぞれが、変曲点であるとみなされ得る。変曲点は、ステントフランジに追加的な強度を加え得る。追加的な変曲点は、拡張したステントの横強度および引き抜き力を増す。(段落【0059】)
(4)図14Bは、フランジ構造162が7個の変曲点を有するステント160を示す。構造は、図14Aに示すステントと同様である。(段落【0060】)
(5)図14Eは、フランジ162が5個の変曲点を有するステント160を示す。フランジ162は、鞍状領域161の中心から離れるように外向きに突出してから、中央経路164の方に戻るように曲がり、それに続いて、再度、端部163が、円筒形鞍状領域161の縦方向中心164から離れるように突出するように曲がる。(段落【0063】)
(6)図13B、図14B及び図14Eは、次のとおりある。
「図13B
[図:0001428560000009.jpg]
」
「図14B
[図:0001428560000010.jpg]
」
「図14E
[図:0001428560000011.jpg]
」
(7)なお、請求人は、図13B及び図14Eについて、次の参考図を提示している。図13Bの参考図(後記ア)は、令和6年2月19日提出の手続補正書(方式)に、図14Eの参考図(後記イ及びウ)は、令和5年4月25日提出の意見書に、それぞれ記載されたものである。
ア 図13Bの参考図
「
[図:0001428560000012.jpg]
」
イ 図14Eの参考図
「
[図:0001428560000013.jpg]
」
2 本願セグメント構成と図19フランジ断面の構成との対比
(1) 本願セグメント構成
ア セグメント形状
本願セグメント構成において、第1のセグメントは、「第1の変曲点の角度」が「円筒形の鞍状領域の中心側に向き、前記第1のセグメントと前記円筒形の鞍状領域とによって画定され」、かつ「直径が増加する部分を含」むから、円筒形の鞍状領域から直径が増加する方向である。一方、第2のセグメントは、「第2の変曲点の角度」が「第1のセグメントと前記第2のセグメントとによって画定され」「(円筒形の鞍状領域の)中心側とは反対向き」であり、かつ「直径が減少する部分を含む」から、第1のセグメントから連続して、円筒形の鞍状領域から直径が減少する方向である。
また、「第1の変曲点の角度は」「第2の変曲点の角度以上の大きさ」である。
イ 機能
本願セグメント構成は、組織を傷付けずに係合しつつ、ステントの強度を改善しかつ各組織平面に対抗するのに十分な力をもたらす(前記1(1)~(3))。
ここで、前記アを踏まえると、本願セグメント構成は、第1のセグメント及び第2のセグメントの構成とすることで、2つの変曲点がステントフランジに追加的な強度を加えてステントの強度を改善するものであり(前記1(3))、第1のセグメントが、直径が増加する方向に第2の変曲点の角度以上の大きさの第1の変曲点の角度で曲がることで、強化されたフランジが各組織平面に面して組織に係合するように機能し、第2のセグメントが、円筒形の鞍状領域の中心側とは反対方向かつ直径が減少する方向に第2の変曲点の角度で曲がることで、組織を傷付けることなく強化されたステント端部の機能を果たすものであるといえる。
(2)図19フランジ断面の構成
ア フランジ形状
引用発明は、次のとおりである。
「前記フランジ構造の各々は、断面の4分の1部分が複数の変曲を伴うフランジ191を有するものであり、前記フランジ191は、少なくとも、概ね中心線と平行に延在する中心サドル領域192から、半径方向外側に向けて変曲して中心線から離れるように延在するとともに、続いて、半径方向内側に向けて変曲して中心線に近づくように延在する、S字状の断面形状を呈しており、」
イ 機能
(ア)引用発明は、次のとおりである。
「前記断面形状を呈するフランジ191を有する前記フランジ構造は、各々が組織T1又はT2の対向組織平面に係合する付加的強度を提供する、少なくとも2つの変曲点を含む構成となり、組織壁への損傷を最小限に抑えながら、組織Tl及びT2をしっかりと保持することにより、管腔Llと管腔L2との間の健常な吻合の形成を促進する、ステント。」
(イ)ここで、前記アを踏まえると、図19フランジ断面の構成は、少なくとも2つの変曲点が対向組織平面に係合する付加的強度を提供するものであって、「半径方向外側に向けて」「中心線から離れるように延在する」部分が対向組織平面に係合するとともに、「続いて、半径方向内側に向けて変曲して中心線に近づくように延在する」ことで、フランジ191の端部側が組織壁を損傷することを抑えながら強化される機能を実現するものである。
(3)判断
ア フランジ形状
(ア)本願セグメント構成と図19フランジ断面の構成を対比すると、後者の「半径方向外側に向けて」「中心線から離れるように延在する」部分は、前者の「直径が増加する部分」に、後者の「半径方向内側に向けて」「中心線に近づくように延在する」部分は、前者の「直径が減少する部分」に、それぞれ相当する。
また、前記(1)アを踏まえると、後者の「概ね中心線と平行に延在する中心サドル領域192から、半径方向外側に向けて変曲して中心線から離れるように延在する」構成は、前者の「第1の変曲点の角度」が「第1のセグメントと前記円筒形の鞍状領域とによって画定され」、かつ「直径が増加する部分を含」む「第1のセグメント」に相当し、後者の「続いて、半径方向内側に向けて変曲して中心線に近づくように延在する」構成は、前者の「第2の変曲点の角度」が「第1のセグメントと前記第2のセグメントとによって画定され」「(円筒形の鞍状領域の)中心側とは反対向き」であり、かつ「直径が減少する部分を含む」「第2のセグメント」に相当する。
以上のとおり、後者は、実質的には、2つのセグメントを備えている。
(イ)また、図19フランジ断面の構成は、図19B及びE(前記第4の1(1)ソ及びタ)から、「第1のセグメント」に相当する構成が、中心サドル領域192から比較的緩やかに変曲し、「第2のセグメント」に相当する構成が、「第1のセグメント」に相当する構成から比較的急に変曲することが看取できる。
そして、かかる変曲態様を踏まえると、図19フランジ断面の構成は、2つの変曲点の角度の大小関係について、本願セグメント構成と実質的な相違はない。
イ 機能による裏付け
前記(1)イ及び(2)イによれば、両構成は、複数の変曲を伴うフランジ構成とすることによって、当該構成の2つの変曲点がフランジに付加的強度を提供するとともに、強化された第1のセグメントのフランジが組織壁に係合し、第2のセグメントのフランジ(端部側)が組織を傷付けることなく強化される機能を実現するものであり、機能の点で相違はない。
そうすると、両構成の間に実質的な相違点がないことは、その機能によって裏付けられるといえる。
ウ 実施形態による裏付け
(ア)変曲態様が同じであること
本願の図13B、14B及び14Eは、本願セグメント構成の実施形態を図示するところ、各実施形態に共通するものは、少なくとも2つの変曲点を有するフランジ構造であって、フランジ152、154、162の壁は、少なくとも円筒形鞍状領域151、161から離れるように変曲して外向きに延在して突出してから(第1の変曲点)、それに続いて、ステントの中央経路164に戻るように変曲する(第2の変曲点)、S字状の断面形状を呈している構成である(前記1(1)~(6))。
(イ)2つの変曲点の大小関係が同じであること
前記(ア)について、次のとおり、2つの変曲点の大小関係の点で、引用文献3の図19B及びEの態様は、本願の図14B及びEの態様と同じであることが裏付けられる。
a 参考図1(前記第4の1(1)ソの図19Bにおいて、本願の図13Bの参考図(前記1(7)ア)の補助線等を参考に、当審で補助線等を付加した。)
「
[図:0001428560000014.jpg]
」
b 参考図1より、前記(ア)の第1の変曲点に相当する変曲点の角度θ1は、前記(ア)の第2の変曲点に相当する変曲点の角度θ2より大きいことが看取される。
c 参考図2(前記第4の1(1)タの図19Eにおいて、本願の図14Eの参考図(前記1(7)イ)の補助線等を参考に、当審で補助線等を付加した。)
「
[図:0001428560000015.jpg]
」
d 参考図2より、前記(ア)の第1の変曲点に相当する変曲点の角度θ1は、前記(ア)の第2の変曲点に相当する変曲点の角度θ2より大きいことが看取される。
(ウ)断面形状が同じであること
本願の図14B及びE(前記1(6))は、それぞれ、引用文献3の図19B及びE(前記第4の1(1)ソ及びタ)と比較すると、前者と後者の図面は、フランジ構造として、同一の断面形状を図示するものである。
(4)小括
以上のとおりであるから、前記相違点は、実質的な相違点ではない。
また、仮に、前記相違点が実質的な相違点であったとしても、引用発明において、前記2(2)イの機能を目的とするために、本願発明に係る前記相違点の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明である。また、本願発明は、引用発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号及び第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-020952