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特許拒絶査定不服審判

2021-014826

無菌充填方法及び無菌充填機

審判番号
2021-014826
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-076440外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年11月01日
審決日
2023年01月10日
公報発行日
2023年03月31日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B65B) / P18 .55 -Z (B65B) / P18 .572-Z (B65B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-76440「無菌充填方法及び無菌充填機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-177263〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 11項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、2017年(平成29年)4月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和3年1月25日付 拒絶理由通知書

令和3年4月5日 意見書の提出

令和3年7月29日付 拒絶査定

令和3年11月1日 審判請求、同時に手続補正

第2 令和3年11月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年11月1日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。

「プリフォーム及び容器を連続走行させながら、前記プリフォームを殺菌するプリフォーム殺菌工程と、殺菌された前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程と、加熱された前記プリフォームを前記容器に成形する成形工程と、成形された前記容器を殺菌する容器殺菌工程と、殺菌された前記容器に無菌雰囲気で殺菌された内容物を充填する充填工程と、前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により密封する密封工程を備える無菌充填方法において、
前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程を非無菌雰囲気で行い、
前記プリフォーム殺菌工程の殺菌能力をX[LRV]、前記プリフォーム加熱工程から前記容器殺菌工程までの殺菌能力をY[LRV]としたときに、Yは少なくとも前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程で前記プリフォーム及び前記容器を汚染した菌を殺菌し、下記の式を満足することを特徴とする無菌充填方法。
5≦X+Y≦10
(但し、Y≧0)」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、平成29年4月7日にされた出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「プリフォーム及び容器を連続走行させながら、前記プリフォームを殺菌するプリフォーム殺菌工程と、殺菌された前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程と、加熱された前記プリフォームを前記容器に成形する成形工程と、成形された前記容器を殺菌する容器殺菌工程と、殺菌された前記容器に無菌雰囲気で殺菌された内容物を充填する充填工程と、前記内容物が充填された前記容器を殺菌された蓋材により密封する密封工程を備える無菌充填方法において、
前記プリフォーム殺菌工程の殺菌能力をX[LRV]、前記プリフォーム加熱工程から前記容器殺菌工程までの殺菌能力をY[LRV]としたときに、下記の式を満足することを特徴とする無菌充填方法。
5≦X+Y≦10
(但し、Y≧0)」

2 補正の適否

(1)新規事項追加の有無

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「無菌充填方法」について、「前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程を非無菌雰囲気で行」うとの構成を付加限定し、同「殺菌能力Y[LRV]」について「Yは少なくとも前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程で前記プリフォーム及び前記容器を汚染した菌を殺菌」するとの構成を付加限定するものである。

そして、本願明細書の段落【0023】には以下の記載がある。

「容器殺菌部チャンバー31、エアリンス部チャンバー33及び充填部チャンバー38内には、殺菌された後に、除菌フィルタにより無菌化された無菌エアが供給され、各チャンバーの内部が陽圧に保持される。各チャンバー内が無菌エアにより陽圧に保持されることにより、容器殺菌部チャンバー31より下流の無菌充填機内の無菌性が維持される。各チャンバー内を陽圧に保持する圧力は、充填部チャンバー38内が最も高く、エアリンス部チャンバー33、容器殺菌部チャンバー31と上流ほど低く設定される。雰囲気遮断チャンバー27は排気されることで、その内部は大気圧とほぼ同一の圧力に保持される。」

当該記載からは、本件補正前の本願明細書には、殺菌部、エアリンス部、充填部が無菌雰囲気で行われることが理解できる。

さらに、当該段落【0023】の、「容器殺菌部チャンバー31、エアリンス部チャンバー33及び充填部チャンバー38内には、殺菌された後に、除菌フィルタにより無菌化された無菌エアが供給され」(下線は強調のため当審が付した。)るとの記載から、プリフォーム加熱工程及び成形工程を行う加熱部及び成形部には無菌エアが供給されないものを排除していないとも解される。

また、本願明細書の段落【0004】には以下の記載もある。

「容器を殺菌するよりもプリフォームを殺菌する方が、殺菌面積が小さいことから殺菌剤の使用量が少なく、殺菌時間も短く有利である。しかし、殺菌されたプリフォームを成形温度まで加熱するプリフォームの加熱工程、加熱されたプリフォームを容器に成形する成形工程及び成形された容器を検査する検査工程において、殺菌されたプリフォームが菌等により汚染される可能性がある。加熱工程、成形工程及び検査工程に使用される装置や機器は無菌充填機を運転する前に殺菌されなければならないが、殺菌剤により劣化する可能性のあるパッキン類の使用や摺動部のオイルを殺菌することの困難により、加熱工程、成形工程及び検査工程に使用される装置や機器を完全に殺菌することができないためである。・・・」

当該記載から、プリフォーム加熱工程及び成形工程を無菌状態とすることが困難であることが理解できるから、「前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程」は無菌雰囲気ではない、すなわち「非無菌雰囲気」であることが理解できる。

したがって、本件補正のうち「前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程を非無菌雰囲気で行い、」なる記載を追加する補正については、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内でしたものであると認める。

また、本件補正のうち、「Yは少なくとも前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程で前記プリフォーム及び前記容器を汚染した菌を殺菌し、」を追加する補正については、そもそもYは本件補正前の請求項1に記載のように「前記プリフォーム加熱工程から前記容器殺菌工程までの殺菌能力をY[LRV]とした」ものであるところ、上記のとおり「前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程を非無菌雰囲気で行」うから、プリフォーム加熱工程から容器殺菌工程のうち少なくともプリフォーム加熱工程及び成形工程で汚染した菌を殺菌するものであることは明らかであるので、当初明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。

(2)補正の目的

上記2(1)に示したように、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「プリフォーム加熱工程」、「成形工程」、及びプリフォーム加熱工程から容器殺菌工程までの殺菌能力について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

ア 本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

イ 引用文献の記載事項

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(ア)引用文献1

a 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2010-235209号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある(下線は当審が付した。)。

「【請求項1】
プリフォームを連続走行させながら、過酸化水素ミスト又はガスを吹き付けてプリフォームの表面に過酸化水素の凝結皮膜を形成し、この過酸化水素の凝結皮膜の付着した状態でプリフォームを加熱し、乾燥させることによりプリフォームを予備殺菌し、この加熱したプリフォームを同じく連続走行するブロー成形型内でブロー成形して容器を作り、この連続走行するブロー成形型から容器を取り出して連続走行させながら本殺菌した後、この容器に飲料を充填して蓋で密封することを特徴とする飲料充填方法。」
「【請求項5】
プリフォームが容器に成形され、容器に飲料が充填され、容器が蓋で密封されるまでプリフォーム及び容器を連続走行させる搬送路が設けられ、プリフォームに過酸化水素ミスト又はガスを吹き付けるノズルと、過酸化水素ミスト又はガスが吹き付けられたプリフォームを加熱してプリフォームを予備殺菌すると共にブロー成形に適した加熱状態にするヒータと、加熱したプリフォームを容器にブロー成形する成形型と、ブロー成形した容器を本殺菌する本殺菌手段と、本殺菌された容器に飲料を充填するフィラーと、飲料が充填された容器を密封するキャッパーとが上記搬送路に沿って設けられたことを特徴とする飲料充填装置。」
「【背景技術】
【0002】
従来、プリフォームを搬送しながら殺菌剤で殺菌処理し、このプリフォームをブロー成形機によってボトルに成形し、このボトルに飲料を充填し、キャッピングして無菌包装体とするというインラインシステムとしての無菌充填方法が提案されている(例えば、特許文献1,2,3,4,5,6,7参照。)。」
「【0006】
従来技術では、プリフォームに殺菌剤を付けて殺菌した後、高圧エアによるブロー成形時や充填エリアまでのボトル搬送時に、ボトル内に菌が混入する恐れがある。ブロー成形機内の高圧エア回路、延伸ロッド、金型、ボトル搬送エリアの全てをボトル製造前に滅菌し、無菌状態に維持することも不可能なことではないが、その場合は殺菌設備を追加したり、多くの部材を耐薬剤性材料でできたものに交換したりする必要があり、初期投資額が巨額になる。
【0007】
また、ブロー成形機の出口で汚染除去剤によってボトルをすすぐという方法では、ボトル内に混入する菌の除去が不完全になりやすい。汚染除去剤の乾燥も必要になるので、ブロー成形機等の設備が複雑化、大型化するという問題がある。
【0008】
加えて、殺菌剤の付着したプリフォームをマンドレル又はスピンドルに挿入した状態で加熱しても、プリフォームの口部は40℃~50℃までしか昇温させることができないため他の部位と比べて殺菌効果が低く、十分とは言い難い。すなわち、プリフォームの口部を高温にすると口部が変形等してキャップを被せた際にボトル内の密封性が損なわれるおそれがあるので、口部の加熱は上記温度範囲に制限せざるを得ない。
【0009】
本発明は、このような問題点を解消することを課題とする。」
「【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、プリフォーム(1)を連続走行させながら、過酸化水素ミスト又はガス(K)を吹き付けてプリフォーム(1)の表面に過酸化水素の凝結皮膜を形成し、この過酸化水素の凝結皮膜の付着した状態でプリフォーム(1)を加熱し、乾燥させることによりプリフォーム(1)を予備殺菌し、この加熱したプリフォーム(1)を同じく連続走行するブロー成形型(4)内でブロー成形して容器(2)を作り、この連続走行するブロー成形型(4)から容器(2)を取り出して連続走行させながら本殺菌した後、この容器(2)に飲料(a)を充填して蓋(3)で密封するものであるから、予備殺菌を極低濃度の過酸化水素で殺菌するため、成形機は一般の部材で問題はなく、口部(2a)以外の部位で一般細菌、芽胞形成細菌、カビ・酵母等の真菌類などを殺菌することが可能である。従って、酸性飲料、ミネラルウォーター、炭酸飲料等を充填する場合は、本殺菌による殺菌処理を軽減することができる。すなわち、本殺菌を過酸化水素、過酢酸、塩素水、オゾン等の殺菌剤で行う場合はその使用量や薬剤温度、濃度を低減することができ、温水で行う場合はその使用量や温度を低減することができ、UVランプで行う場合はその照射線量を低減することができる。また、本殺菌での過酸化水素の使用量を低減することができることから、ことにプリフォーム(1)及び容器(2)を過酸化水素を吸着しやすいPET製とした場合は、容器(2)への過酸化水素の過度な吸着を防止することができる。」
「【0022】
【図1】本発明に係る充填方法及び装置によって製造される包装体の一例を示す部分切欠正面図である。
【図2】本発明の実施の形態1,2に係る充填方法の前半の各工程を表す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る充填方法の後半の各工程を表す説明図である。
【図4】過酸化水素のガスを生成するためのミスト生成器の一例を示す垂直断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る充填装置の一例の概略を示す平面図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る充填方法の後半の各工程を表す説明図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る充填装置の一例の概略を示す平面図である。」
「【0024】
<実施の形態1>
この実施の形態1におけるインラインシステムによれば、最終製品として図1に示す包装体を製造することができる。」
「【0032】
プリフォーム1の搬送が開始された直後、ノズル24から過酸化水素ミスト又はガスKがプリフォーム1に吹き付けられる。」
「【0036】
図2(B)に示すように、プリフォーム1の搬送路に沿ってヒータ19bがトンネル状に配置され、このヒータ19bによってプリフォーム1は走行しながら加熱される。プリフォーム1は、この加熱によって90℃から120℃程度まで均一に加熱され、ブロー成形に適した加熱状態とされる。」
「【0039】
また、この加熱工程によってプリフォーム1の表面が予備殺菌される。すなわち、過酸化水素の凝結皮膜を付着させた状態でプリフォーム1を加熱しながら乾燥させることで、菌体表面に付着した過酸化水素水の濃度が上昇し、高い殺菌効果が得られ、耐熱性を有するカビや芽胞菌なども容易に殺菌される。これにより、プリフォーム1の表面に付着した一般細菌、芽胞形成細菌、カビ・酵母等の真菌類が、プリフォーム1の口部2aに付着したものを除き、好適に殺菌される。」
「【0042】
プリフォーム1は、図2(B)に示した加熱工程でその全体の温度が成形に好適な温度域に上昇するようにほぼ均一に加熱されており、その加熱状態のままで、図2(C)に示すように、スピンドル43ごと金型4内に装着される。また、ブローノズル5が金型4の上部及びプリフォーム1の口部2a内のスピンドル43を貫通してプリフォーム1内に挿入される。」
「【0058】
図5に示すように、この充填装置は、口部2aを有する有底筒状のプリフォーム1(図2(A)参照)を所定の間隔で順次供給するプリフォーム供給機11と、ブロー成形機12と、成形されたボトル2に飲料aを充填、密封する充填機13とを備える。
【0059】
プリフォーム供給機11から充填機13に至る間には、プリフォーム1(図2(A)参照)を第一の搬送路上で搬送するプリフォーム用搬送手段と、ボトル2の完成品形状のキャビティCを有する金型4(図2(C)参照)を上記第一の搬送路に接続される第二の搬送路上で搬送する金型用搬送手段と、金型4で成形されたボトル2を上記第二の搬送路に接続される第三の搬送路上で搬送するボトル用搬送手段とが設けられる。
【0060】
プリフォーム用搬送手段の第一の搬送路と、金型用搬送手段の第二の搬送路と、ボトル用搬送手段の第三の搬送路は互いに連通し、これらの搬送路上にはプリフォーム1やボトル2を保持しつつ搬送する図示しないグリッパ等が設けられている。
【0061】
プリフォーム用搬送手段は、その第一の搬送路上に、プリフォーム1を所定の間隔で順次供給するプリフォームコンベア14を備える。また、プリフォームコンベア14の終端からプリフォーム1を受け取って搬送するホイール15,16,17,18の列と、ホイール18からプリフォーム1を受け取って走行させるコンベア19とを具備する。
【0062】
プリフォーム供給機11におけるプリフォームコンベア14がホイール15に接続される箇所よりもやや上流側には、過酸化水素ミスト又はガスKを噴霧するノズル24が設けられる。このノズル24から加熱前のプリフォーム1に向かって過酸化水素ミスト又はガスKが吹き付けられる(図2(A)参照)。これにより、プリフォーム1の表面に薄い過酸化水素の凝結皮膜が均一に形成される。」
「【0066】
コンベア19は水平方向に長く伸びる無端搬送チェーンを有し、この無端搬送チェーンに沿って加熱部19aが設けられている。無端搬送チェーンには、図2(B)に示すスピンドル(又はマンドレル)43が一定ピッチで多数取り付けられる。各スピンドル(又はマンドレル)43は無端搬送チェーンの走行と共に走行しながら自転可能である。ホイール18側からコンベア19に送られたプリフォーム1には、図2(B)に示すようにスピンドル(又はマンドレル)43がその開口2aから挿入され、スピンドル(又はマンドレル)43に正立状態で保持される。」
「【0068】
このヒータ19bによる加熱でプリフォーム1の表面に付着した過酸化水素の皮膜も加熱される。この皮膜となった35重量%換算の過酸化水素の付着量は、上述したように望ましくは0.0035μL/cm2~0.35μL/cm2、より望ましくは0.007μL/cm2~0.07μL/cm2であり、その加熱によって菌体表面に付着した過酸化水素水の濃度が上昇し、プリフォーム1の表面に付着した菌のうち、口部2aに付着したものを除き、ほとんどの菌を殺菌することができる。
【0069】
すなわち、プリフォーム1は上記加熱部19aでの加熱により口部以外はおおよそ15秒~30秒の間に90℃~120℃まで昇温する。0.07μL/cm2の過酸化水素が付着した状態でこの温度・時間処理すると、芽胞細菌であるBacillus subtilis sporesに対して3Log減少の殺菌効果を得ることができる。また、耐熱性を有するカビであるChaetomium globosum sporesに対しては6Log減少の殺菌効果を得ることができる。したがって、プリフォーム1が上述の如く加熱部19aで加熱されると、その表面に付着した菌のうち口部2aに付着したものを除き殆どの菌は死滅するということができる。
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【0070】
ブロー成形機12は、上記プリフォーム供給機11の加熱部19aで加熱されたプリフォーム1を受け取ってボトル2に加熱成形する金型4及びブローノズル5(図2(C)参照)を複数セット備える。
【0071】
ブロー成形機12内には、上記金型用搬送手段の第二の搬送路が通っている。この第二の搬送路は、ホイール20,21,22,17,23の列によって構成される。なお、このホイール20,21,22,17,23の列と上記プリフォーム用搬送手段のホイール15,16,17,18の列との間ではホイール17が共用される。
【0072】
金型4及びブローノズル5は、ホイール21の回りに複数個配置され、ホイール21の回転とともにホイール21の周りを一定速度で旋回する。
【0073】
ホイール20の図示しないグリッパがプリフォーム供給機11の加熱部19aで加熱されたプリフォーム1をスピンドル43ごと受け取ってホイール21の回りの金型4に受け渡すと、二つ割りの金型4が閉じてプリフォーム1を図2(C)のごとく把持する。金型4内のプリフォーム1はホイール21の回りを金型4及びブローノズル5と共に旋回しながら、ブローノズル5からブロー成形用の高圧エアでブローされることによりボトル2の完成品に成形される。プリフォーム1は、図2(B)に示したように、上記ヒータ19bによって所定の温度まで均一に加熱されていることから、円滑にブロー成形される。」
「【0084】
ホイール23の外周には、ボトル2について本殺菌を行うための殺菌用ノズル6(図3(E)参照)が配置される。上記金型4で成形されたボトル2に対して、殺菌用ノズル6から過酸化水素のミストM又はガスGが吹き付けられることによって、ボトル2の殺菌が行われ、その表面に生残した菌類が殺菌される。この段階のボトル2はプリフォーム1での加熱及び金型による熱が残留しており、この熱によって過酸化水素のミストM又はガスGによる殺菌効果が高められる。
【0085】
上述したように、図2(B)に示したプリフォーム1の段階でプリフォーム1について予備殺菌が行われ、この予備殺菌によって口部2aに付着したものを除きほとんどの微生物は殺菌される。したがって、この過酸化水素のミストM又はガスGのボトル2に対する吹き付けによって上記プリフォーム1の段階で生残した菌と、ブロー成形工程、搬送工程で混入した僅かな菌等が本殺菌において殺菌処理される。
【0086】
この過酸化水素のミストM又はガスGによる殺菌では、上述したようにプリフォーム1の段階で予備殺菌されているので、過酸化水素の使用量が少なくて済む。」
「【0091】
また、この充填装置はチャンバー41で囲まれており、チャンバー41内は無菌ゾーンとグレーゾーンに仕切られている。そして、プリフォーム供給機11及びブロー成形機12はグレーゾーンに、充填機13は無菌ゾーンにそれぞれ配置されている。
【0092】
グレーゾーンにはHEPAで無菌化されたエアが常時吹き込まれ、これにより、成形時に殺菌されたボトル2が微生物に二次汚染されることなく無菌ゾーンへと搬送される。」
「【0103】
充填機13においてボトル2には、図3(G)のごとく滅菌処理された飲料aがフィラー39の充填ノズル10により充填される。飲料aが充填されたボトル2は、キャッパー40によりキャップ3が施されて密封され(図1、図3(H)参照)、チャンバー41の出口から排出される。」
「【図1】
[図:0001394606000001.jpg]
」
「【図2】
[図:0001394606000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001394606000003.jpg]
」
「【図5】
[図:0001394606000004.jpg]
」

b 上記aで摘記した事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(a)引用文献1には、「容器が蓋で密封されるまでプリフォーム及び容器を連続走行させ」ることが記載されている(【請求項5】)。さらに、「無菌充填方法」(【0002】)を前提としている。

(b)引用文献1には、「予備殺菌」及び「本殺菌」が記載されており(【0032】~【0040】、【0053】~【0054】)、「予備殺菌」として、「プリフォーム1の搬送が開始された直後、ノズル24から過酸化水素ミスト又はガスKがプリフォーム1に吹き付けられ」(【0032】)、「過酸化水素の凝結皮膜を付着させた状態でプリフォーム1を加熱しながら乾燥させることで、菌体表面に付着した過酸化水素水の濃度が上昇し、高い殺菌効果が得られ」(【0039】)ることが記載されている。

(c)引用文献1には、「ヒータ19bによってプリフォーム1は走行しながら加熱され」(【0036】)、「加熱工程でその全体の温度が成形に好適な温度域に上昇するようにほぼ均一に加熱され」(【0042】)、「上記ヒータ19bによって所定の温度まで均一に加熱されていることから、円滑にブロー成形される」(【0073】)ことが記載されているから、ヒータにより前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程、加熱された前記プリフォームを前記ボトルに成形する成形工程が記載されている。

(d)引用文献1には、上記で述べた「本殺菌」(【0053】~【0054】)として、「上記金型4で成形されたボトル2に対して、殺菌用ノズル6から過酸化水素のミストM又はガスGが吹き付けられることによって、ボトル2の殺菌が行われ、その表面に生残した菌類が殺菌される」(【0084】)こと、及び「この過酸化水素のミストM又はガスGのボトル2に対する吹き付けによって上記プリフォーム1の段階で生残した菌と、ブロー成形工程、搬送工程で混入した僅かな菌等が本殺菌において殺菌処理される」こと(【0085】)から、成形された前記ボトルを本殺菌する容器殺菌工程が記載されている。

(e)引用文献1には、「充填機13においてボトル2には、図3(G)のごとく滅菌処理された飲料aがフィラー39の充填ノズル10により充填される。飲料aが充填されたボトル2は、キャッパー40によりキャップ3が施されて密封され」(【0103】)、「充填機13は無菌ゾーンにそれぞれ配置されている」(【0091】)ことが記載されているから、殺菌された前記ボトルに無菌ゾーン内の雰囲気で滅菌処理された飲料を充填する充填工程、無菌ゾーン内の雰囲気で前記飲料が充填された前記ボトルをキャップにより密封する密封工程が記載されている。

(f)引用文献1には、プリフォームを供給する工程及び前記成形工程で用いる「プリフォーム供給機11及びブロー成形機12はグレーゾーンに・・・配置され」(【0091】)、当該グレーゾーンには、「HEPAで無菌化されたエアが常時吹き込まれ」る(【0092】)ことが記載されている。

c 上記a及び上記bを、「本発明の実施の形態1」に着目しつつ総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「プリフォーム及びボトルを連続走行させながら、予備殺菌として前記プリフォームに過酸化水素を吹き付ける工程と、予備殺菌としてヒータにより前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程とを備え、そして、加熱された前記プリフォームを前記ボトルに成形する成形工程と、成形された前記ボトルを本殺菌する容器殺菌工程と、殺菌された前記ボトルに無菌ゾーン内の雰囲気で滅菌処理された飲料を充填する充填工程と、無菌ゾーン内の雰囲気で前記飲料が充填された前記ボトルをキャップにより密封する密封工程を備える無菌充填方法において、
プリフォームを供給する工程及び前記成形工程で用いるプリフォーム供給機及びブロー成形機を、HEPAで無菌化されたエアが常時吹き込まれるグレーゾーンに配置することで、前記成形工程をグレーゾーン内の雰囲気で行い、
予備殺菌と本殺菌により殺菌する無菌充填方法。」

(イ)引用文献3(原査定の「引用文献3」)

a 同じく原査定に引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2009-280222号公報(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。

「【0001】
本発明は、ボトル等の容器を過酸化水素等の殺菌剤で殺菌する方法及び装置に関する。」
「【0008】
したがって、本発明は、ボトルの走行速度を大きくする場合であっても過酸化水素のミストの使用量を増やすことなく、また、過酸化水素のボタ落ちを来たすことなく、一定の殺菌効果を得ることができ、また、過酸化水素のミストを吹き付けても殺菌不良が生じうるボトルを予め排除することができる殺菌方法及び装置を提供することを課題とする。」
「【0040】
この成形後予備加熱温度を維持したボトル2は、引き続き所定の速度で走行しながら、図1(C)に示すように、殺菌剤である過酸化水素の凝結ミストMを吹き付けられることにより殺菌される。所定の予備加熱温度に達しないボトル2は、図1(C)の殺菌工程に至る前に除去されるので、所定の予備加熱温度に達したボトル2だけが殺菌処理されることになる。
【0041】
なお、上記ボトル2の成形工程をこの殺菌工程に接続しないで、あらかじめ成形されたボトル2を用意しておいて、この図1(C)の殺菌工程に供給するようにしてもよい。この場合は、ボトル2を走行させながらボトル2に熱風を吹き付けることにより、ボトル2を上記予備加熱温度まで加熱したうえで殺菌工程へ搬送する必要がある。このボトル2の表面温度も図1(B)に示したと同様にして測定され、所定の温度に達していないボトル2は除去される。
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【0042】
過酸化水素の凝結ミストMは、過酸化水素をガス化させた後に凝縮させることにより生成される。
【0043】
過酸化水素の凝結ミストMは、例えば図3に示すミスト生成装置44により生成される。この生成装置44は、殺菌剤である過酸化水素の水溶液を滴状にして供給する二流体スプレーである過酸化水素供給部45と、この過酸化水素供給部45から供給された過酸化水素の噴霧をその沸点以上、非分解温度以下に加熱して気化させる気化部46とを備える。過酸化水素供給部45は、過酸化水素供給路45a及び圧縮空気供給路45bからそれぞれ過酸化水素の水溶液と圧縮空気を導入して過酸化水素の水溶液を気化部46内に噴霧するようになっている。気化部46は内外壁間にヒータ46aを挟み込んだパイプであり、パイプ内に吹き込まれた過酸化水素の噴霧を加熱し気化させる。気化した過酸化水素のガスは噴霧管3から、ボトル2の口部2aに向かって凝結ミストとなって噴出する。
【0044】
ボトル2はその口部2aを上に向けた状態で走行し、その走行路の上方にはボトル2の口部2aに向かって開口する上記噴霧管3が定位置に配置される。過酸化水素の凝結ミストMは噴霧管3の開口からボトル2の口部2aに向かって連続して吹き出る。そして、吹き出た過酸化水素の凝結ミストMは走行するボトル2の口部2aからボトル2内へ流入してボトル2の内面を殺菌し、他の過酸化水素の凝結ミストMはボトル2外へと流れてボトル2の外面を殺菌する。
【0045】
この噴霧管3から吐出される過酸化水素ミストMがボトル2の内面に付着する量は、望ましくは30μL/bottle~150μL/bottle、より望ましくは50μL/bottle~100μL/bottleである。
【0046】
上述したように、過酸化水素の凝結ミストMの供給時におけるボトル2の表面温度は、予備加熱温度である50℃以上であることが望ましい。そのため、噴霧管3は、ボトル2の走行路中においてボトル2の表面温度が50℃以上に保たれるような位置に配置される。この時のボトル2の表面温度は、ボトル2の熱容量、ボトル2の周囲の雰囲気、金型4から付与された熱量等に応じて定まる。この実施の形態1では、過酸化水素の凝結ミストMの供給時におけるボトル2の表面温度が50℃以上になるように、上記ブロー成形機から噴霧管3までのボトル2の走行速度、ボトル2の成形時における金型4の温度等が設定される。
【0047】
なお、過酸化水素の凝結ミストMの供給時におけるボトル2の表面温度は、例えばボトル2の材質や形状、殺菌剤の種類などに応じて、ボトル2が適切に殺菌されるように適宜設定される。ボトル2の表面温度は、ボトル2の全体が50℃以上でなくてもよい。例えば、ボトル2の成形時に金型4の上部4aの温度を中央部4b及び下部4cよりも低くした場合、ボトル2の口部2aの温度が50℃未満になる可能性がある。この場合でも、図1(C)に示したように口部2aには高濃度の過酸化水素の凝結ミストMが供給されるので、口部2aを適正に殺菌することができる。」
「【0070】
ここで、上記容器の殺菌方法により得ることができる効果を従来の殺菌方法による効果と比較して述べる。
【0071】
【表1】
続きを表示(全21行)
[図:0001394606000005.jpg]
【0072】
表1の「No.」欄中、A1、A2、A3、B1、B2はボトルのサンプル番号を示す。このうち、A1、A2、A3は従来の殺菌方法に対応し、B1、B2は本発明の上記実施の形態1の場合に対応する。
【0073】
「H2O2ミスト付着量」の欄は、過酸化水素ミストがボトルの内面に付着した量を示す。
【0074】
「エア中のH2O2添加量」の欄は、エアリンスの熱風中に添加した過酸化水素のガス濃度を示す。
【0075】
「滅菌効果」の欄は、B.subtilis胞子(芽胞)についてのLRV(Logarithmic reduction value)を示す。
【0076】
「プリフォーム内面付着菌数」の欄は、各ボトルA1、A2、A3、B1、B2の成形前にそれらのプリフォーム内面に付着させた菌数を示し、「○」は滅菌されたことを示し、「●」は殺菌不良であることを示す。
【0077】
「判定」の欄中、「H2O2使用量」の欄は過酸化水素の使用量と、この使用量が適正量であるか否かを示し、「○」は適正な消費量であることを表し、「×」は消費量が多すぎることを表す。
【0078】
また、「滅菌性」の欄は、滅菌効果(LRV)が「6」よりも大きいものを「◎」、「6」を「○」、「6未満」であるものを「×」として表す。「総合」の欄は、過酸化水素の使用量と滅菌性の双方が良好であるものを「○」として表し、いずれか一方でも不良「×」であるものを△として表す。
【0079】
表1から明らかなように、従来法によれば、過酸化水素の使用量を340μL/bottle~510μL/bottleの大容量にしなければ滅菌効果LRV=6を得ることができないが、本発明の方法によれば、過酸化水素の使用量を230μL/bottle~260μL/bottle程度の少量にしても従来法と同程度の滅菌効果LRV=6を得ることができる。すなわち、従来の過酸化水素の使用量を1/2~1/3程度まで低減しても従来と同様な滅菌効果を得ることができる。」

b 上記記載から、引用文献3には、次の事項が記載されている。

「無菌充填方法において、
殺菌工程の滅菌効果を6LRV(Logarithmic reduction value)より大きいものを滅菌性が「◎」、6LRVのものを「〇」とし、6LRV未満を「×」として不良であるものとしたこと。」

ウ 引用発明との対比

(ア)本件補正発明と引用発明とを対比する。

a 引用発明の「プリフォーム」、「ボトル」は、本件補正発明の「プリフォーム」、「容器」にそれぞれ相当する。

b 引用発明の「予備殺菌として前記プリフォームに過酸化水素を吹き付ける工程」及び「予備殺菌としてヒータにより前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程」は、両者を併せて予備殺菌として過酸化水素によりプリフォームが殺菌される工程である。したがって、両者を一体とした工程は、本件補正発明の「前記プリフォームを殺菌するプリフォーム殺菌工程」に相当する。

一方で、引用発明の「予備殺菌として前記プリフォームに過酸化水素を吹き付ける工程」又は「予備殺菌としてヒータにより前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程」もそれ自体としてプリフォームを殺菌することは自明であるから、「予備殺菌として前記プリフォームに過酸化水素を吹き付ける工程」も本件補正発明の「前記プリフォームを殺菌するプリフォーム殺菌工程」に相当し、「予備殺菌としてヒータにより前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程」も本件補正発明の「前記プリフォームを殺菌するプリフォーム殺菌工程」に相当する。

c 引用発明の「予備殺菌としてヒータにより前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程」、「加熱された前記プリフォームを前記ボトルに成形する成形工程」は、本件補正発明の「殺菌された前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程」、「加熱された前記プリフォームを前記容器に成形する成形工程」にそれぞれ相当する。

d 引用発明の「成形された前記ボトルを本殺菌する容器殺菌工程」は、本件補正発明の「成形された前記容器を殺菌する容器殺菌工程」に相当する。

e 引用発明の「無菌ゾーン内の雰囲気」は、本件補正発明の「無菌雰囲気」に相当する。

f 引用発明の「滅菌処理された飲料」、「キャップ」は、本件補正発明の「殺菌された内容物」、「蓋材」のそれぞれに相当する。

(イ)そうすると、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、相違する。

<一致点>

「プリフォーム及び容器を連続走行させながら、前記プリフォームを殺菌するプリフォーム殺菌工程と、殺菌された前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程と、加熱された前記プリフォームを前記容器に成形する成形工程と、成形された前記容器を殺菌する容器殺菌工程と、殺菌された前記容器に無菌雰囲気で殺菌された内容物を充填する充填工程と、前記内容物が充填された前記容器を蓋材により密封する密封工程を備える無菌充填方法」

<相違点1>

蓋材について、本件補正発明は「殺菌された」ものであるのに対し、引用発明の「キャップ」は殺菌されたものであるか不明である点。

<相違点2>

本件補正発明は、「前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程を非無菌雰囲気で行」っており、「前記プリフォーム殺菌工程の殺菌能力をX[LRV]、前記プリフォーム加熱工程から前記容器殺菌工程までの殺菌能力をY[LRV]としたときに、Yは少なくとも前記プリフォーム加熱工程及び前記成形工程で前記プリフォーム及び前記容器を汚染した菌を殺菌し」、「5≦X+Y≦10(但し、Y≧0)」を満足するのに対し、引用発明は、成形工程をHEPAで無菌化されたエアが常時吹き込まれるグレーゾーン内の雰囲気で行っているものの、プリフォーム加熱工程及び成形工程を非無菌雰囲気で行っているかについて明らかでなく、殺菌能力に関しては、予備殺菌として前記プリフォームに過酸化水素を吹き付ける工程、予備殺菌としてヒータにより前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程、及び本殺菌とが、どの程度の殺菌能力であるか明らかではない点。

エ 判断

以下、相違点について検討する。

(ア)相違点1について

引用発明は無菌ゾーンにおいて殺菌されたボトルに滅菌処理された飲料を充填しキャップにて密封するものであるから、充填した飲料が接触するキャップも殺菌すべきであることは自明であって、引用発明において相違点1に係る本件補正発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)相違点2について

a プリフォーム加熱工程及び前記成形工程について

引用発明における充填方法は、プリフォームを供給する工程及び成形工程でそれぞれ用いられるプリフォーム供給機及びブロー成形機を、HEPAで無菌化されたエアが常時吹き込まれるグレーゾーンに配置するものである。この点、引用文献1には、成形工程で僅かな菌等が混入すると記載されているから(【0085】)、グレーゾーンとは、僅かな菌等が混入する可能性のある雰囲気であると理解することができる。

そして、プリフォーム加熱工程はプリフォーム供給機の配置された空間における工程であるところ、引用発明のプリフォーム加熱工程及び成形工程を非無菌雰囲気とすることは、当業者が適宜採用し得たことである。

b 殺菌能力について

(a)本件補正発明の「殺菌能力をX[LRV]」に係る「プリフォーム殺菌工程」(以下「X殺菌」ともいう。)は、X殺菌として引用発明の「予備殺菌として前記プリフォームに過酸化水素を吹き付ける工程」が対応する。

また、本件補正発明の「殺菌能力をY[LRV]」に係る「前記プリフォーム加熱工程から前記容器殺菌工程」(以下「Y殺菌」ともいう。)は、Y殺菌として引用発明の「予備殺菌としてヒータにより前記プリフォームを成形温度まで加熱するプリフォーム加熱工程とを備え、そして、加熱された前記プリフォームを前記ボトルに成形する成形工程と、成形された前記ボトルを本殺菌する容器殺菌工程」が対応する。

そうすると、「予備殺菌」及び「本殺菌」からなる引用発明においても、X殺菌による殺菌能力、及び、Y殺菌による殺菌能力を有しており、2つの殺菌能力を併せたもの、すなわち「X殺菌による殺菌能力」+「Y殺菌による殺菌能力」が引用発明全体としての殺菌能力となる。

(b)そして、引用文献3の記載によれば、無菌充填方法の殺菌において6LRV以上とすることが望ましいところ、引用発明は、予備殺菌により本殺菌の過酸化水素の使用量が少なくて済むものであり(【0086】)、これは、予備殺菌の殺菌能力を考慮して本殺菌の殺菌能力を調整することになるから、引用発明の予備殺菌をその工程順にA及びBとすると、例えば、予備殺菌A+Bを5LRV、本殺菌を1LRVとして、X+Y=6LRVとすることに当業者の格別の創意は要しないといえる。

(c)他方、引用発明の予備殺菌Bは、「過酸化水素が付着した状態でこの温度・時間処理すると、芽胞細菌であるBacillus subtilis sporesに対して3Log減少の殺菌効果を得ることができる。また、耐熱性を有するカビであるChaetomium globosum sporesに対しては6Log減少の殺菌効果得ることができる。」とされており(【0069】)、細菌やカビの種類に応じて殺菌効果は適宜変化するものであるから、例えば、上記(b)の欄において述べた、予備殺菌A+Bを5LRV、本殺菌を1LRVとしていたものを、予備殺菌Bを3LRVから6LRVとして、6≦X+Y≦9とすることも十分に想定される範囲内であるところ、予備殺菌A及び本殺菌についても適宜設定変更して、6≦X+Y≦9の上下限値についてそれぞれ±1の幅をもった数値範囲として、5≦X+Y≦10(但し、Y≧0)とすることについても、当業者の格別の創意は要しないといえる。

(d)以上より、引用発明において相違点2に係る本件補正発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

オ 効果

そして、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明及び引用文献3に記載された事項から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

カ 小括

したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 本件補正についてのむすび

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和3年11月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願特許請求の範囲の請求項に係る発明は、平成29年4月7日にされた出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1-3に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

記

引用文献1:特開2010-235209号公報
引用文献2:特開2010-036973号公報
引用文献3:特開2009-280222号公報

3 引用文献

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された事項は、前記第2の[理由]2(2)イ(ア)及び(イ)に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、本件補正発明から、「プリフォーム加熱工程」、「成形工程」、及びプリフォーム加熱工程から容器殺菌工程までの殺菌能力に係る限定事項を削除したものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)ウ、エ、オ、カに記載したとおり、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献3に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-014826

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