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特許拒絶査定不服審判

2021-014467

リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池

審判番号
2021-014467
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-526047外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年10月26日
審決日
2022年09月27日
公報発行日
2023年01月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特願2020-526047「リチウムイオン二次電池用正極活物質およびリチウムイオン二次電池」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 8月27日国際公開、WO2020/170763〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2020年(令和2年)1月31日(優先権主張 2019年(平成31年)2月19日)を国際出願日とする出願であって、令和3年5月7日付けで拒絶理由が通知され、同年7月8日に意見書が提出され、同年7月27日付けで拒絶査定(原査定)されたところ、同年10月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正書(発明の詳細な説明のみを対象とする。)が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、出願時の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された次の事項により特定されるものであると認める。 「【請求項1】 下記一般式(1)で表わされる複合酸化物を含む粉末粒子と、 前記粉末粒子の表面に付着した有機ケイ素化合物と、を有し、 前記有機ケイ素化合物の有機官能基が、炭素数2~10のアルキル基および炭素数6~14のアリール基からなる群から選択される少なくとも1種を含む、リチウムイオン二次電池用正極活物質。 LiaNibXcBadYeOx (1) ただし、一般式(1)中、 Xは、CoおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、 Yは、Na、K、Si、B、PおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、 a、b、c、d、およびeは、実数であり、以下の関係を充足し、 xは、実数であり、特に数値を定めない。 a/(b+c):0.9~1.1 b/(b+c):0.5~0.95 c/(b+c):0.05~0.5 d/(b+c):0.0001~0.01 e/(b+c):0超0.1以下 b+c=1」 第3 拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由のうち、本願の請求項1に係る発明についての理由は以下のとおりである。 この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された引用文献1ないし3のいずれかと、引用文献4とに記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 1.特開2014-123529号公報 2.特開2004-200161号公報 3.特開2004-200160号公報 4.特開2016-6762号公報 第4 引用発明と公知技術 1 引用文献1の記載内容と引用発明 (1)引用文献1の記載内容 原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に公開された引用文献1(特開2014-123529号公報)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。 「【0001】 本発明は、リチウム含有複合酸化物からなる新規なリチウム二次電池用正極材料およびその製造方法に関する。」 「【0009】 本発明は、安全性が高く容量が大きく、レート特性に優れ、劣化しない、Li-Ni-Co-O系、Li-Ni-Mn-O系、またはLi-Ni-Mn-Co-O系の組成を有する新規なリチウム二次電池の正極活物質に用いられる材料(以下、正極材料という)を提供する。」 「【0018】 ・・・・・・・・・ 一般にニッケルを含むリチウム二次電池用正極材料は、水と二酸化炭素を吸収し易いと言われる。大気中の水分を吸収すると、リチウム水和物が生成し、生成したリチウム水和物が炭酸ガスを吸収した後、炭酸水素リチウムや炭酸リチウムが生成する。 ニッケルを含むリチウム二次電池用正極材料を使用した二次電池において、正極材料が水分を吸収すると一般に用いられる電解質塩であるLiPF6の加水分解が発生し、加水分解によりフッ酸やリン酸などの酸が生成する。生成した酸は、電池の構成材料の一部を分解し種々のガスを放出する。そのため、発生したガスの影響で二次電池に膨れが発生し、安全性の低下を招くことがある。」 「【0033】 (実施例1) 原料のNi源とCo源としてNiおよびCoのモル比を調整して得たNi-Co-(OH)2を湿式溶液合成法によって作製した。その他の出発原料には市販の試薬を使用した。Li源にはリチウム水和物、Al源にはAl2O3、Ba源にはBa(NO3)2を用いた。 これらの出発原料を目的の配合組成になるように秤量後、十分に混合し、焼成用の原料とした。焼成は酸素雰囲気で行い、まず400℃で4時間保持し、主に原料中の水分を除去した後、5℃/分の昇温速度で昇温し、800℃の焼成温度および保持時間4時間で保持し、冷却後炉内から焼成物を取り出した。取り出した焼成物を解砕して正極材料粉末を得た。得られた粉末と水とを混合し攪拌後、脱水、乾燥した。後に記載する条件で、粒度分布測定、化学組成分析、およびその他の評価測定を行った。評価結果を表1に示す。表における「-」は、その項目が未実施であり、測定されていないことを示している。」 「【0043】 【表1】 [図:0001392704000001.jpg] 」 (2)上記(1)の事項から次のことがいえる。 ・段落【0001】によれば、「リチウム含有複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極材料」について記載されている。 ・段落【0033】によれば、正極材料は正極材料粉末として生成されており、また、段落【0009】によれば正極材料はリチウム二次電池の正極活物質に用いられる材料である。 ・段落【0043】の【表1】によれば、実施例1の全体組成はLi1.03Ni0.79Co0.19Al0.02Ba0.003O2である。 (3)引用発明 上記(2)より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「リチウム含有複合酸化物からなるリチウム二次電池用正極材料であって、 当該正極材料は正極材料粉末として生成され、 当該正極材料はリチウム二次電池の正極活物質に用いられる材料であり、 当該正極材料の全体組成はLi1.03Ni0.79Co0.19Al0.02Ba0.003O2であるリチウム二次電池用正極材料。」 2 引用文献4の記載内容と引用技術 (1)引用文献4の記載内容 原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先日前に公開された引用文献4(特開2016-6762号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0011】 本開示は上述の事情に鑑みてなされたものである。本開示の目的は、ニッケル比率の高いリチウム金属複合酸化物を用いた正極活物質について、長期間耐湿性を維持出来る正極活物質を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0012】 上記目的を達成するために本発明者は鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至った。本発明者は、ニッケル比率の高いリチウム金属複合酸化物からリチウム含有水溶性不純物を十分除去したコア粒子をカップリング剤で処理することで、正極活物質の耐湿性を長期間維持させられることを見出した。」 「【0023】 [2.表面処理部] コア粒子をカップリング剤で処理し、表面処理部を得、目的の正極活物質を得る。表面処理部は、カップリング剤の親水基がコア粒子の表面と化学結合し、カップリング剤の疎水基が活物質粒子の表面を覆った形態を採る。カップリング剤は、中心金属元素が珪素であるシランカップリング剤、チタンであるチタンカップリング剤、アルミニウムであるアルミカップリング剤等が選択可能である。カップリング剤は、中心金属元素、親水基、疎水基等が異なる複数種のカップリング剤を併用しても良い。シランカップリング剤は親水基、疎水基等について様々な組み合わせの市販品が存在するので、目的に応じた選択肢が広く便利である。シランカップリング剤としては例えばトリフルオロプロピルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が選択可能である。」 (2)公知技術 上記(1)の記載によれば、以下の事項は公知技術と認められる。 「ニッケル比率の高いリチウム金属複合酸化物を用いた正極活物質において、コア粒子をn-プロピルトリメトキシシランをカップリング剤として処理することで、正極活物質の耐湿性を長期間維持させられること。」 第5 対比・判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 ・引用発明の正極材料は正極活物質に用いられるから、引用発明はリチウム二次電池用正極活物質であるということができる。 ・本願発明は「前記粉末粒子の表面に付着した有機ケイ素化合物と、を有し、前記有機ケイ素化合物の有機官能基が、炭素数2~10のアルキル基および炭素数6~14のアリール基からなる群から選択される少なくとも1種を含」んでいるのに対して、引用発明は粉末粒子の表面に付着した有機ケイ素化合物は有しておらず、有機ケイ素化合物の有機官能基についても特定されていない。 ・引用発明の正極材料の全体組成にはCoとAlが含まれるから、引用発明は本願発明において「X」が「Co」、「Y」が「Al」を選択した場合に相当する。 ・引用発明のリチウム含有複合酸化物の全体組成をLiaNibCocAleBadOxとしてb+c=1となるように計算して係数をそろえると、a=1.05、b=0.81、c=0.19、d=0.003、e=0.02、x=2.04となり、本願発明の「複合酸化物」の以下の関係を充足する。 a/(b+c):0.9~1.1 b/(b+c):0.5~0.95 c/(b+c):0.05~0.5 d/(b+c):0.0001~0.01 e/(b+c):0超0.1以下 b+c=1 そうしてみると、引用発明の「リチウム含有複合酸化物」は、本願発明の「複合酸化物」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「 下記一般式(1)で表わされる複合酸化物を含む粉末粒子を有するリチウムイオン二次電池用正極活物質。 LiaNibXcBadYeOx (1) ただし、一般式(1)中、 Xは、CoおよびMnからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、 Yは、Na、K、Si、B、PおよびAlからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり、 a、b、c、d、およびeは、実数であり、以下の関係を充足し、 xは、実数であり、特に数値を定めない。 a/(b+c):0.9~1.1 b/(b+c):0.5~0.95 c/(b+c):0.05~0.5 d/(b+c):0.0001~0.01 e/(b+c):0超0.1以下 b+c=1」 (相違点) 本願発明は、複合酸化物を含む粉末粒子の表面に付着した有機ケイ素化合物を有し、前記有機ケイ素化合物の有機官能基が、炭素数2~10のアルキル基および炭素数6~14のアリール基からなる群から選択される少なくとも1種を含むのに対して、引用発明は粉末粒子の表面に付着した有機ケイ素化合物は有しておらず、有機ケイ素化合物の有機官能基についても特定されていない点。 2 判断 上記相違点について検討する。 上記「第4 2(2)」のように「ニッケル比率の高いリチウム金属複合酸化物を用いた正極活物質において、コア粒子をn-プロピルトリメトキシシランをカップリング剤として処理することで、正極活物質の耐湿性を長期間維持させられること」は公知技術である。 一方、引用文献1には、段落【0018】に、ニッケルを含むリチウム二次電池用正極材料は水を吸収し易く、当該正極材料を使用した二次電池において、正極材料が水分を吸収すると安全性の低下を招くことが記載されている。 そうしてみると、ニッケルの比重の高いリチウム含有複合酸化物からなる正極活物質である引用発明においても、上述の段落【0018】に記載されているように正極材料が水分を吸収して安全性の低下を招くという課題を有するから、ニッケルを含むリチウム金属複合酸化物において耐湿性を維持する技術である公知技術を適用し、引用発明の正極材料粉末をn-プロピルトリメトキシシランで処理することは当業者が容易に想到し得た事項にすぎない。ここで、n-プロピルトリメトキシシランは炭素数3のアルキル基である有機官能基を有する有機ケイ素化合物であるから、公知技術を引用発明に適用することで相違点に係る構成とすることは当業者が容易になし得た事項である。 第6 請求人の主張について 審判請求人は令和3年10月26日に提出した審判請求書において、『文献4の全実施例のうち、初期粒子の組成が同じである実施例1~5を対比すると、「トリフルオロプロピルトリメトキシシラン」を使用した実施例1~2は、実施例3~5よりも、耐湿性が良好であり、当業者は、文献1~3の耐湿性を良好にするため「トリフルオロプロピルトリメトキシシラン」を使用したはずである。しかしながら「トリフルオロプロピルトリメトキシシラン」は、「炭素数2~10のアルキル基」および「炭素数6~14のアリール基」どちらの基も含まない。そうすると、文献1~3に文献4を適用できたとしても、そのカップリング剤は「トリフルオロプロピルトリメトキシシラン」であるから、本願発明の「有機ケイ素化合物」には該当しない』旨主張している。 そこで上記主張について検討する。 請求人は文献4の初期粒子の組成が同じである実施例1ないし5のみを対比しているが、実施例6ではカップリング剤として「フェニルトリメトキシシラン」を使用して実施例1~2よりも良好な耐湿性を得ていることから、実施例6の「フェニルトリメトキシシラン」も考慮すべきであり、少なくとも実施例1~2の「トリフルオロプロピルトリメトキシシラン」に限定することにはならない。 また、実施例1ないし5のみで検討したとしても、実施例3ないし5は比較例1ないし4に比べて良好な耐湿性を有していることからみて、当業者が実施例1~2の「トリフルオロプロピルトリメトキシシラン」を限定して採用するとまではいえない。 さらに、請求人は「トリフルオロプロピルトリメトキシシラン」は本願発明の「有機ケイ素化合物」には該当しないと述べているが、これは本願明細書の段落【0026】に「有機ケイ素化合物は、炭素数2~10のアルキル基および炭素数6~14のアリール基からなる群から選択される少なくとも1種の有機官能基を有するシランが好ましい。炭素数2~10のアルキル基を有するシランの具体例は、・・・、およびトリフルオロプロピルトリメトキシシランであるが、これらに限定されるものではない。」と記載されており、本願有機ケイ素化合物として「トリフルオロプロピルトリメトキシシラン」が含まれていることと矛盾している。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献4に記載された公知技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-014467

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