2021-012884
レーザー溶接のためのエッジの前処理
- 審判番号
- 2021-012884
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-207860外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月27日
- 審決日
- 2023年05月11日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ・ボーイング・カンパニー
- 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
- 分類
- P18 .121-WZ (B23K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 14項目
第1 手続の経緯
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本願は、平成28年10月24日(パリ条約による優先権主張2015年11月6日、(US)アメリカ合衆国)に出願された特願2016-207860であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1~12に係る発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)の記載は、以下のとおりである。
「 【請求項1】間隙によって互いに完全に分離された第1の構成要素及び第2の構成要素を提供することであって、前記間隙は深さ及び幅を有し、前記第1の構成要素及び前記第2の構成要素のうちの少なくとも1つは犠牲エッジタブを含む、提供することと、前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの少なくとも1つをレーザーエネルギーに曝露することであって、前記レーザーエネルギーは、前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの前記少なくとも1つの少なくとも一部が前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの前記少なくとも1つにおける最大12.7mm(0.5インチ)の侵入深さまで溶融するのに十分なレーザーエネルギーである、曝露することと、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間を往復するように前記レーザーエネルギーを提供するため、前記レーザーエネルギーの方向を制御することと、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間の前記間隙に、溶融溜まりを形成することであって、前記溶融溜まりは、前記犠牲エッジタブの溶融した一部からの材料を含む、形成することと、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とを接合する溶接部を形成するため、前記溶融溜まりを凝固させることと、を含み、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素は、鋼、チタン、軟鋼、アルミニウム、およびこれらの合金のうちの少なくとも1つを含み、前記間隙の前記幅は0.508mm(0.020インチ)と0.762mm(0.030インチ)の間である、レーザー溶接による製造方法。」
第3 当審の拒絶の理由
本願発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明に、請求項3の特定事項の一部を加え、さらに限定したものに相当するところ、本件補正前の請求項1、3に係る発明に対して、当審が令和4年11月9日付けで通知した拒絶の理由のうちの理由3(進歩性)の概要は、以下のとおりである。
この出願の請求項1、3に係る発明は、本願の優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2及び3に記載された技術的事項、並びに引用文献4及び5に係る周知技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
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引用文献1には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同じ。)。
「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、突き合わせ部にギャップを有する2個のアルミニウム又はアルミニウム合金部材をレーザ溶接するアルミニウム又はアルミニウム合金部材のレーザ溶接方法に関し、特に前記ギャップの幅が0.01mm以上の場合であっても適用できるアルミニウム又はアルミニウム合金部材のレーザ溶接方法に関する。」
「【0010】【作用】本発明においては、溶接すべき第1及び第2の部材のいずれか一方の部材の端部にレーザ光の全ビーム面積の50%以上(但し、100%を含まず)を照射して、前記一方の部材の表面側から裏面側に到達する貫通溶込部を形成することにより、ギャップを通過し無駄となるレーザ光のエネルギーを低減する。即ち、本発明においては、レーザ光の半分以上のエネルギーを前記一方の部材に確実に照射して多量の溶湯を形成するので、ギャップが0.01mm以上の場合であっても、第1及び第2の部材間を溶湯が連絡し、この溶湯が凝固することにより第1及び第2の部材を接合することができる。」
「【0013】本発明においては、上述の如く、十分な溶湯を得ることができて、ギャップ裕度が従来に比して大幅に増加すると共に接合強度が向上するが、更にギャップ裕度を増大させるためには、前記一方の部材の突き合わせ部側の端部に凸部又は第3の部材を設けることが好ましい。この凸部又は第3の部材を溶融させることより、溶湯の量をより一層増大させることができて、ギャップ裕度が更に増大すると共に、接合強度が向上する。」
「【0017】次に、部材1の突き合わせ部側の表面端部にレーザ光を照射する。このとき、レーザ光の全ビーム面積の50%以上(但し、100%を含まず)が部材1の表面端部を照射すると共に、残部が部材2の端面を照射するように、レーザ光源の照射位置及び照射角度を調整する。また、部材1の上面側から下面側に到達する溶込部4が形成されるように、レーザ光の出力を調整する。そして、レーザ光を部材1の端部に沿って移動させ、図1に符号3で示す部分を連続的にレーザ照射する。レーザ照射により形成された溶湯により部材1,2間が連絡され、この溶湯が凝固することにより、部材1,2が接合(溶接)される。」
「【0028】図7は、本発明の第2の実施例に係るレーザ溶接方法を示す模式図である。溶接すべき部材11,12はいずれもアルミニウム合金板であり、部材11の突き合わせ部には溶接方向に延びる凸部11aが設けられている。この凸部11aを除いた部分の部材11と部材12との厚さは同一である。部材11,12の下面を揃えて突き合わせることにより、突き合わせ形状とした。そして、ギャップ幅Wを種々変えて、溶込が貫通溶込となるようにレーザ溶接を実施した。溶接条件を下記表3に示す。【0029】【表3】[図:0001403049000001.jpg]【0030】溶接結果を、下記表4に示す。但し、図8(a)に示すように、溶込部15が部材11,12間を連絡し、部材11,12が接合された場合を○、図8(b)に示すように、溶込部15が部材11,12間を連絡しない場合を×で示した。また、比較のために、凸部を有しない部材同士の接合についてもギャップ裕度を調べた。【0031】【表4】[図:0001403049000002.jpg]」
「【0047】【発明の効果】以上説明したように本発明方法によれば、レーザ光の全ビーム面積の50%以上(但し、100%を含まず)を第1又は第2の部材のいずれか一方に照射して前記一方の部材の表面側から裏面側に貫通する貫通溶込部を形成して溶接を行うので、ギャップ裕度が大きく、従来必要とされていた突き合わせ面を高精度に機械加工する工程及び部材を押さえつけるための強力な治具が不要になる。また、本発明方法によれば、ポロシティ欠陥及び溶け落ち欠陥の発生を抑制でき、アルミニウム又はアルミニウム合金製の部材を安定して溶接することが可能になり、高品位なアルミニウム溶接構造物を製造することができる。更に、本発明によれば、溶接部の強度が高く、機械的性能が優れていることから、自動車、鉄道車輌及び船舶等の軽量化による燃費の向上等、各種分野において多大な貢献をなす。」
「【図7】[図:0001403049000003.jpg]」
(2)引用文献1に記載された技術的事項
上記(1)の記載事項から、以下の技術的事項を理解できる。
ア 段落【0028】、【0031】の記載、及び図7から、ギャップによって互いに完全に分離された部材11及び部材12を突き合わせることが理解できる。
また、図7の断面図において、ギャップが上下方向に連続していることから、ギャップは深さを有し、さらに、段落【0028】の記載から、ギャップはギャップ幅Wを有することが理解できる。
さらに、段落【0028】の記載から、部材11には凸部11aが設けられていることが理解できる。
イ 段落【0010】、【0028】~【0029】の記載、及び図7から、部材11、部材12及び凸部11aにレーザ光のエネルギーを照射することが理解できる。
また、段落【0010】、【0013】、【0017】及び【0028】の記載から、レーザ光のエネルギーを、凸部11aを有する部材11が上面側から下面側に到達するまで溶融されるように調整することが理解できる。さらに、段落【0029】に、部材11の板厚が3mmであることが記載されていることから、レーザ光のエネルギーを、凸部11aを有する部材11が上面側から下面側に到達する3mm(部材11の溶接部板厚(T)と同じ長さ)まで溶融されるように調整することが理解できる。
ウ 段落【0010】、【0017】及び【0029】の記載から、部材11の端部に沿ってレーザ光のエネルギーを照射することが理解できる。
エ 段落【0017】及び【0028】の記載から、部材11と部材12との間のギャップに、溶湯を形成することが理解できる。
また、段落【0013】、【0017】及び【0030】の記載から、溶湯は、凸部11aの溶融した一部からの材料を含むことが理解できる。
オ 段落【0017】及び【0030】の記載から、部材11と部材12とを接合する溶込部15を形成するため、溶湯を凝固させることが理解できる。
カ 段落【0001】及び【0028】の記載から、部材11と部材12は、アルミニウム又はアルミニウム合金であることが理解できる。
キ 段落【0031】の記載から、凸部11aがあることにより、凸部11aがない場合に比べて、新たに接合が可能となったギャップ幅は0.5mmと0.9mmの間であることが理解できる。
ク 段落【0047】の記載から、レーザ溶接による製造方法は、上記ア~キの内容を含むことが理解できる。
(3)引用発明
上記(1)~(2)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ギャップによって互いに完全に分離された部材11及び部材12を突き合わせることであって、ギャップは深さ及びギャップ幅Wを有し、部材11には凸部11aが設けられている、突き合わせることと、部材11、部材12及び凸部11aにレーザ光のエネルギーを照射することであって、レーザ光のエネルギーを、凸部11aを有する部材11が上面側から下面側に到達する3mmまで溶融されるように調整する、照射することと、部材11の端部に沿ってレーザ光のエネルギーを照射することと、部材11と部材12との間のギャップに、溶湯を形成することであって、溶湯は、凸部11aの溶融した一部からの材料を含む、形成することと、部材11と部材12とを接合する溶込部15を形成するため、溶湯を凝固させることと、を含み、部材11と部材12は、アルミニウム又はアルミニウム合金であり、ギャップのギャップ幅は0.5mmと0.9mmの間で接合が可能である、レーザ溶接による製造方法。」
2 引用文献4~5について
(1)引用文献4の記載事項
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引用文献4には、以下の事項が記載されている。
「【0009】第2の発明は、熱間連続圧延のための走間接合設備で先行鋼材と後行鋼材の突き合わせ部をレーザー溶接法またはアーク溶接法により接合するに際して、レーザービーム照射またはアーク放電を、先行鋼材と後行鋼材の接合部の一端から5~10mmの領域から開始し、接合部の他端から5~10mmの領域で終了させるとともに前記突き合わせ部の突き合わせ線と直角方向に振幅0.2~3.0mmの範囲でウィービング照射することにより接合部の端部での溶融金属の溶け落ちを防止することを特徴とする熱間連続圧延のための鋼材接合方法である。」
「【0015】第2の発明では、振幅0.2~3.0mmの範囲でレーザーまたはアークをウィービングしてレーザービームまたはアークのエネルギーを拡散させるので、レーザービーム照射またはアーク放電の開始点と終了点を接合部の両端から5~10mmの領域にしても接合部の端部での溶融金属の溶け落ちを防止することができる。」
(2)引用文献5の記載事項
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引用文献5には、以下の事項が記載されている。
「【0014】【作用】本発明のレーザ溶接方法は、上述のように構成したことにより、レーザ光の光軸を薄板側と厚板側との突き合わせ接合部より厚板側から傾斜させた状態でレーザ光を照射すると、薄板側と厚板側との突き合わせ接合部に突き合わせギャップが生じている場合であっても、レーザ光は突き合わせギャップを通過することなく薄板と厚板の端縁を溶融する。そして、特にレーザ光を溶接方向に対して交差する方向に往復動させた場合には、レーザ光の焦点の位置が薄板と厚板との両者に適切なエネルギで照射するように調整される。したがって、厚板側と薄板側は適度に溶融され、突き合わせギャップにおいても溶け落ちることなく両者の間で溶融した金属が流動し、突き合わせ接合部に滑らかで良好な溶接ビードが形成される。」
(3)周知技術
上記(1)~(2)から、次の周知の技術的事項(以下「周知技術」という。)が把握できる。
「レーザー溶接において、溶け落ち防止のため、第1の構成要素と第2の構成要素との間を往復するようにレーザーエネルギーを提供すること(いわゆる「ウィービング」をすること)。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
(1)引用発明の「ギャップ」が、本願発明の「間隙」に相当することは明らかであり、以下同様に、「部材11」が「第1の構成要素」に、「部材12」が「第2の構成要素」に、「深さ」が「深さ」に、「ギャップ幅W」が「幅」に、「凸部11a」が「犠牲エッジタブ」に相当する。
また、引用発明において、第1の構成要素及び第2の構成要素を「突き合わせる」ためには、第1の構成要素及び第2の構成要素を「提供する」必要があるから、引用発明の「突き合わせること」は、本願発明の「提供すること」に相当する。
さらに、引用発明の「部材11には凸部11aが設けられている」ことは、本願発明の「前記第1の構成要素及び前記第2の構成要素のうちの少なくとも1つは犠牲エッジタブを含む」ことに相当する。
(2)引用発明の「レーザ光のエネルギー」が、本願発明の「レーザーエネルギー」に相当することは明らかである。
また、引用発明において、部材11、部材12及び凸部11aにレーザ光のエネルギーを照射すると、部材11、部材12及び凸部11aがレーザ光のエネルギーに曝露されることになるから、引用発明の「部材11、部材12及び凸部11aにレーザ光のエネルギーを照射すること」は、本願発明の「前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの少なくとも1つをレーザーエネルギーに曝露すること」に相当する。
さらに、引用発明では、レーザ光のエネルギーは、凸部11aを有する部材11が上面側から下面側に到達する3mmまで溶融されるように調整されているから、レーザ光のエネルギーは、凸部11aを有する部材11が3mmの侵入深さまで溶融するのに十分なレーザ光のエネルギーであるといえる。そして、侵入深さの数値範囲について、引用発明の3mmまでであることは、本願発明の最大12.7mmであることに包含されるから、引用発明の「レーザ光のエネルギーを、凸部11aを有する部材11が上面側から下面側に到達する3mmまで溶融されるように調整する」ことは、本願発明の「前記レーザーエネルギーは、前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの前記少なくとも1つの少なくとも一部が前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの前記少なくとも1つにおける最大12.7mm(0.5インチ)の侵入深さまで溶融するのに十分なレーザーエネルギーである」ことに相当する。
(3)引用発明では、「部材11の端部に沿ってレーザ光のエネルギーを照射」しており、レーザ光のエネルギーの方向を部材11の端部に沿う方向に「制御」しているといえる。したがって、引用発明の「部材11の端部に沿ってレーザ光のエネルギーを照射すること」と、本願発明の「前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間を往復するように前記レーザーエネルギーを提供するため、前記レーザーエネルギーの方向を制御すること」とは、「前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とに前記レーザーエネルギーを提供するため、前記レーザーエネルギーの方向を制御すること」に限り一致する。
(4)引用発明の「溶湯」が、本願発明の「溶融溜まり」に相当することは明らかである。
また、引用発明の「溶湯は、凸部11aの溶融した一部からの材料を含む」ことは、本願発明の「前記溶融溜まりは、前記犠牲エッジタブの溶融した一部からの材料を含む」に相当する。
(5)引用発明の「溶込部15」が、本願発明の「溶接部」に相当することは明らかである。
(6)引用発明の「部材11と部材12は、アルミニウム又はアルミニウム合金であ」ることは、本願発明の「前記第1の構成要素と前記第2の構成要素は、鋼、チタン、軟鋼、アルミニウム、およびこれらの合金のうちの少なくとも1つを含」むことに相当する。
(7)引用発明の「ギャップのギャップ幅は0.5mmと0.9mmの間で接合が可能である」ことと、本願発明の「前記間隙の前記幅は0.508mm(0.020インチ)と0.762mm(0.030インチ)の間である」こととは、間隙の幅の下限値が0.5mm以上、上限値が0.9mm以下である限りにおいて共通する。
(8)引用発明の「レーザ溶接による製造方法」が、本願発明の「レーザー溶接による製造方法」に相当することは明らかである。
2 一致点及び相違点
以上のことから、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
(1)一致点
「間隙によって互いに完全に分離された第1の構成要素及び第2の構成要素を提供することであって、前記間隙は深さ及び幅を有し、前記第1の構成要素及び前記第2の構成要素のうちの少なくとも1つは犠牲エッジタブを含む、提供することと、前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの少なくとも1つをレーザーエネルギーに曝露することであって、前記レーザーエネルギーは、前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの前記少なくとも1つの少なくとも一部が前記第1の構成要素、前記第2の構成要素及び前記犠牲エッジタブのうちの前記少なくとも1つにおける最大12.7mm(0.5インチ)の侵入深さまで溶融するのに十分なレーザーエネルギーである、曝露することと、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とに前記レーザーエネルギーを提供するため、前記レーザーエネルギーの方向を制御することと、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間の前記間隙に、溶融溜まりを形成することであって、前記溶融溜まりは、前記犠牲エッジタブの溶融した一部からの材料を含む、形成することと、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素とを接合する溶接部を形成するため、前記溶融溜まりを凝固させることと、を含み、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素は、鋼、チタン、軟鋼、アルミニウム、およびこれらの合金のうちの少なくとも1つを含み、前記間隙の前記幅は0.5mmと0.9mmの間である、レーザー溶接による製造方法。」
(2)相違点
ア 相違点1
レーザーエネルギーの方向について、本願発明では、第1の構成要素と第2の構成要素との間を往復するようにレーザーエネルギーを提供するのに対し、引用発明では、部材11の端部に沿ってレーザ光のエネルギーを照射する点。
イ 相違点2
間隙の幅の数値範囲について、本願発明は、0.508mm(0.020インチ)と0.762mm(0.030インチ)の間であるのに対し、引用発明は、0.5mmと0.9mmの間で接合が可能である点。
第6 判断
1 相違点について
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1の段落【0047】に「また、本発明方法によれば、ポロシティ欠陥及び溶け落ち欠陥の発生が抑制でき、・・・」と記載されるように、レーザー溶接において、溶け落ちを防止することは一般的な課題であり、引用発明にも内在する課題と認められる。
してみると、溶け落ちを防止するため、引用発明に、上記第4の2(3)に示す周知技術を適用し、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
引用発明では、ギャップのギャップ幅が0.5mmと0.9mmの間で接合が可能であるところ、間隙の幅を0.508mm(0.020インチ)と0.762mm(0.030インチ)の間と設定することは、以下のとおり、当業者が容易に想到し得たことである。
ア 本願の翻訳文の次の記載から、本願発明の「前記間隙の前記幅は0.508mm(0.020インチ)と0.762mm(0.030インチ)の間である」との発明特定事項は、犠牲エッジタブにより接合が可能となった間隙の数値範囲の一例にすぎないと理解できる。
「【0022】・・・言い換えれば、従来型のレーザー溶接法は、構成要素間により大きな間隙が存在している際には通常、利用可能ではない。しかし、図3B~3Dに示すように、こうしたモジュラーコンポーネントを接合する方法が(構成要素間に大きな間隙が存在する場合であっても)、提供されている。・・・犠牲エッジタブ305は、十分なレーザーエネルギーに曝露されると、少なくとも部分的に溶融して溶融溜まりを形成し、続いて溶融溜まりが凝固して溶接部309が形成される。」
「【0026】・・・間隙の幅は、構成要素301と303との間の距離によって規定され得る。一実施例では、間隙は、約0.030インチと約0.005インチとの間の幅を備え得る。」
イ 他方、引用発明の「ギャップのギャップ幅は0.5mmと0.9mmの間である」との事項は、第4の1(2)キに示すように、凸部11aを設けたことにより、新たに接合が可能となった範囲を示すものである。また、引用文献1の段落【0031】には、ギャップ幅Wを、0.6mm及び0.7mmとした実施例が記載されており、この実施例は、相違点2に係る数値範囲に包含されている。
ウ 上記ア~イを考慮すると、引用発明において、犠牲エッジタブである凸部11aにより接合が可能となった間隙の幅であるギャップ幅Wの数値範囲について、0.5mm~0.9mmの中から適宜設定することは、当業者にとって単なる設計的事項の範疇といえるから、引用発明の間隙の幅を0.508mm(0.020インチ)と0.762mm(0.030インチ)の間に変更することは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明、並びに引用文献4及び5の記載事項に示す周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、付言すると、当審の拒絶の理由(上記第3)は、本件補正前の請求項1、3に係る発明に対して引用文献1~5を引用していたが、引用文献2~3は、本件補正前の請求項1の選択的な特定事項に対して、仮に、当該特定事項を限定する補正をしても、拒絶の理由が解消されないことを予備的に示すために引用したものである。
したがって、引用文献2~3は、上記相違点1及び2の判断では引用していないが、当審の拒絶の理由と異なる判断をしたわけではない。
3 審判請求人の主張について
(1)意見書における主張の概要
審判請求人は、令和5年2月14日提出の意見書(2ページ下から3行~3ページ30行:空白行除く)において、本願発明は特に、第1の構成要素及び第2の構成要素が間隙によって互いに完全に分離されており、間隙の幅は0.508mm(0.020インチ)と0.762mm(0.030インチ)の間である、との特徴を有するものであり、当該特徴を有する本願発明においては、比較的大きい間隙によって分離された構成要素を共に溶融することができ、従来の方法のようにタイトな許容誤差が必要とされることもないという有利な技術的効果が奏されるのに対し、引用文献1には、構成要素を分離する間隙の幅が0.508mm(0.020インチ)と0.762mm(0.030インチ)の間であるとの旨は開示も示唆もされていない旨、主張している。
(2)審判請求人の主張の検討
引用発明は、本願発明で特定する間隙よりも、さらに大きい間隙(0.9mm)であっても接合が可能であるから、引用発明の間隙の範囲を本願発明と同程度に小さくすることは、上記第6の(2)に示すとおり、当業者が容易に想到し得たことと評価するほかない。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、並びに引用文献4及び5の記載事項に示す周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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