2021-011760
飲料充填装置の洗浄・殺菌方法
- 審判番号
- 2021-011760
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-205780外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年09月03日
- 審決日
- 2023年04月18日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人インテクト国際特許事務所
- 【請求人代理人】石橋 良規
- 分類
- P18 .121-WZ (B67C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
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本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成29年10月4日を出願日とする特願2017-194243号の一部を令和元年11月13日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1~3に係る発明は、令和4年9月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「加熱殺菌部を経て充填機内へと製品を送る飲料供給系配管を備えた飲料充填装置内について、前記飲料供給系配管内に付着した製品の残留異物の除去を行うために洗浄液を循環させるCIP処理及び、前記飲料供給系配管内を殺菌するSIP処理を行う飲料充填装置の洗浄・殺菌方法において、前記CIP処理と前記SIP処理の間を停止させることなく、前記CIP処理終了の後、前記CIP処理で用いた前記洗浄液を前記SIP処理を行う121.1℃以上の温度まで昇温し、これらの処理を連続的に行い、前記SIP処理は、前記飲料供給系配管内に循環させた前記洗浄液を用いて前記飲料供給系配管内の殺菌を行い、前記SIP処理における、前記飲料供給系配管内を循環させる前記洗浄液による加熱により昇温した各箇所の温度が121.1℃に達すると、その時点から各箇所のF値がコントローラによって演算され、演算された各F値のうち、最小のF値が目標値に到達したところで、前記SIP処理を完了することを特徴とする飲料充填装置の洗浄・殺菌方法。」
第3 拒絶の理由
令和4年7月22日付けで当審が通知した拒絶の理由は、次のとおりのものである。
本願の請求項1~3に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
第4 引用文献の記載事項及び引用発明
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1 引用文献1
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】 本発明は、PETボトル等の容器に製品である飲料などを充填する装置の殺菌処理の移行方法およびこの殺菌処理の移行方法を行う製品充填装置に関する。【背景技術】 ・・・【0004】 また、無菌飲料充填装置の飲料供給系配管については、定期的にあるいは飲料の種類を切り替える際に、CIP(Cleaning in Place)処理をし、さらに、SIP(Sterilizing in Place)処理をしている(例えば、特許文献3参照)。 ・・・【0006】 CIPは、飲料充填経路の管路内から充填機の充填ノズルに至るまでの流路に、例えば水に苛性ソーダ等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流した後に、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流すことにより行われる。これにより、飲料充填経路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される(例えば、特許文献3参照)。続きを表示(全11行)【0007】 SIPは、飲料の充填作業に入る前に、予め上記飲料供給系配管内を殺菌するための処理であり、例えば、上記CIPで洗浄した飲料充填経路内に加熱蒸気又は熱水を流すことによって行われる。これにより、飲料充填経路内が殺菌処理され無菌状態とされる(例えば、特許文献3参照)。【0008】 これらのCIP、SIP及び製品殺菌処理は、いずれも時間がかかる処理であることから、これらの時間短縮のための方法は種々の方法が知られている。例えば、下記特許文献に記載されているように、殺菌温度と流量から殺菌強度(F値)を求めることで製品殺菌処理を行う方法が知られている。 ・・・【発明が解決しようとする課題】【0010】 上述した方法で製品殺菌処理を行うことで、飲料の品質が保証できるレベルであるか否かを正確かつ迅速に確認することができる。【0011】 しかし、CIP、SIP及び製品殺菌処理と異なる処理を続けて行う場合、各処理毎の設定に非常に時間がかかり、各処理の段取り時間を短縮することが難しいという課題を有していた。 ・・・【0013】 ところが、近年の省エネルギ化の進展に伴い、SIPから製品殺菌処理への移行時の温度安定化工程で消費される熱エネルギの大きさが問題視されるようになってきた。また、各処理への移行に要する時間の長さも飲料の生産効率の面から問題視されるようになってきた。【0014】 本発明はこのような問題点を解決することができる殺菌処理の移行方法及び飲料充填装置を提供することを目的とする。」
イ 「【0025】 図1に示すように、製品充填装置は、製品である飲料の調合装置1と、飲料をボトル4に充填する充填機2とを具備する。調合装置1と充填機2内の充填ノズル2aとの間は、製品供給系配管7で結ばれている。また、充填機2は無菌チャンバ3で囲まれている。【0026】 調合装置1は、例えば茶飲料、果実飲料等の飲料を各々所望の配合割合で調合するためのものであって、公知の装置であるからその詳細な説明は省略する。【0027】 充填機2は、多数の充填ノズル2aを水平面内で高速回転するホイール(図示せず)の回りに配置してなるもので、ホイールの回転と共に充填ノズル2aを旋回運動させつつ、充填ノズル2aの下をホイールの周速度に同調して走行する各ボトル4に、充填ノズル2aから飲料を定量充填するための機械である。この充填機2も公知の装置であるからその詳細な説明は省略する。【0028】 この製品充填装置の製品供給系配管7は、その調合装置1から充填機2に至る管路中に、飲料の流れから見て上流側から下流側へと順に、バランスタンク5、加熱殺菌部(UHT:Ultra High-temperature)18、マニホルドバルブ8、アセプティックサージタンク19、ヘッドタンク11を備える。」
ウ 「【0037】 (1)コントローラ17の図示しないパネル上の操作ボタンが操作されると、製品供給系配管7の上流側配管部7aと下流側配管部7bについてSIPが各々所定の手順で実行される(図2及び図3参照)。SIPの開始に際してはマニホルドバルブ8によって上流側配管部7aと下流側配管部7bとの間が遮断される。【0038】 上流側配管部7aのSIPと下流側配管部7bのSIPは互いに順を追って又は並行して行うことが可能である。【0039】 (2)まず、図示しない水供給源から水がバランスタンク5を経て循環路内に送られ、この水がUHT18により加熱され殺菌されつつ循環路内を循環する。これにより、上流側配管部7a内が殺菌される。【0040】 (3)この上流側配管部7a内を熱水が流れる際、上流側配管部7aの各所に配置された温度センサ10からコントローラ17に温度情報が一定時間間隔で送られる。この実施の形態では、ボトルbに充填する製品液である飲料のpHが4.6以上とされ、基準温度Trが121.1℃、Z値が10℃とされる。【0041】 熱水による加熱により昇温した各箇所の温度が121.1℃に達すると、その時点から各箇所のF値がコントローラ17によって演算される。演算式は次のとおりである。【0042】【数2】[図:0001398660000001.jpg]」
エ 「【0053】 (5)上記上流側配管部7aに対するSIPの開始と同時に、又は先立ってアセプティックサージタンク19も含めて、下流側配管部7bのSIPが開始される。【0054】 まず、カップ9が充填ノズル2aの開口にあてがわれ、充填ノズル2aにドレン管20が接続された後、アセプティックサージタンク19及びヘッドタンク11内へと加熱蒸気が図示しない加熱蒸気供給源から供給される。【0055】 この加熱蒸気は、アセプティックサージタンク19から、下流側配管部7b内を充填ノズル2a側へと流れ、各部を加熱した後にドレン管20から充填機2外へ排出される。また、SIPを上流側配管部7aと同様に水で行う場合には、図示しない水供給源から水がアセプティックサージタンク19を経て循環路内に送られ、この水が加熱装置21により加熱され殺菌されつつ帰還路6aを介して循環路内を循環する。これにより、下流側配管部7b内が温水又は熱水で殺菌される。なお、F値を用いた殺菌方法については、上流側配管部7aと同様の方法で行うため、詳細な説明は省略する。【0056】 (6)この下流側配管部7b内を加熱蒸気が流れる際、下流側配管部7bの各所に配置された温度センサ10からコントローラ17に温度情報が一定時間間隔で送られる。【0057】 加熱蒸気による加熱により昇温した各箇所の温度が121.1℃に達すると、その時点から各箇所のF値がコントローラ17によって上記演算式により演算される。【0058】 演算された各F値のうち、最小のF値が目標値に到達したところで、上記加熱蒸気はアセプティックサージタンク19やの下流側配管部7b内への供給が停止される。下流側配管部7b内のSIP時間についても、従来のSIP時間に比べ大幅に短縮される。【0059】 (7)この後、下流側配管部7b内に無菌エア又は無菌水が送り込まれ、下流側配管部7b内が例えば常温まで冷却される。そして、ドレン管20が遮断される。さらに、図示しないアクチュエータによって各充填ノズル2aの開口からカップ9が外される。無菌水は、SIPが完了し水運転で待機中の製品殺菌機から送液してもよいが、ボトルリンサーの無菌水(図示なし)をマニホルドバルブ8から受け入れ、冷却に用いても構わない。無菌水での冷却を開始するタイミングは、SIPの後のタンク温度が110℃を下回るまで無菌エアで行い、それ以降に行うと良い。無菌水を供給する動作は間歇タイマーを用い、タンクが急冷により減圧しないように無菌エアを供給しながら行う。タンクの温度が30~90℃程度まで冷却され、冷却が完了した後、陽圧を維持したまま無菌エアでタンク及び配管内に溜まった無菌水をブローし、製品を受け入れる。無菌水を加えた冷却は、エアに比べて短時間に冷却することが可能である。【0060】 (8)アセプティックサージタンク19以降、下流側配管部7bのSIPが終了した後、加熱殺菌部18から上流側配管部7aを通ってアセプティックサージタンク19に飲料が貯められ、そこから飲料が下流側配管部7bを通って、ボトル4内への飲料の充填作業が開始される。」
オ 「【0062】 図4中、太線で示したごとく調合装置1で調合された飲料が殺菌処理された製品供給系配管7の上流側配管部7aと下流側配管部7bを通って充填機2内に至り、充填機2の充填ノズル2aから容器であるボトル4に充填される。飲料が充填されたボトル4は、図示しないキャッパによりキャッピングされた後、充填機2の外に送り出される。【0063】 本発明は以上説明したように構成されるが、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々変更可能である。また、マニホルド8を設けず、殺菌機からフィラーまでを同時にCIP及びSIPを施し、上述した温度安定化工程の制御を行ってもよい。あるいは、殺菌温度を満たしたアルカリや酸でCIPすると同時にSIPを行い、次製品の規定の殺菌価以上の無菌水で配管内を洗浄し、次製造へ移行しても良い。さらに、本明細書において、本発明はUHT(加熱殺菌部)の形態は、シェル&チューブ式熱交換器の例を説明したが、UHTの形態はこれに限られず、例えば、プレート式熱交換器を用いても構わない。また、これらの間接加熱法に限らず、直接加熱法を適用しても構わない。またさらに、本発明は、製品として飲料を充填する飲料充填装置について説明を行ったが、製品は飲料に限らず、例えば、医薬品、食品、流動食及び固形物入りの飲料を充填することも可能である。」
「【図1】[図:0001398660000002.jpg]」
「【図2】[図:0001398660000003.jpg]」
「【図3】[図:0001398660000004.jpg]」
「【図4】[図:0001398660000005.jpg]」
(2) 上記(1)は、SIP処理を行う飲料充填装置の殺菌方法を中心に説明するものであるが、段落【0004】~【0006】などに記載されるように、SIP処理に先行して洗浄液を流すことで飲料充填経路内に付着した飲料の残留物等を除去するCIP処理を行うことが想定されていることから、SIP処理のみならずCIP処理も行う飲料充填装置の洗浄・殺菌方法も把握できる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「加熱殺菌部を経て充填機内へと製品を送る製品供給系配管を備えた飲料充填装置内について、前記製品供給系配管内に付着した飲料の残留物等を洗浄液を流して除去するCIP処理及び前記製品供給系配管内を殺菌するSIP処理を行う飲料充填装置の洗浄・殺菌方法において、前記SIP処理は、前記製品供給系配管の上流側配管内に循環させた熱水を用いて製品供給系配管の上流側配管内の殺菌を行い、前記SIP処理における、前記製品供給系配管内を循環させる前記熱水による加熱により昇温した各箇所の温度が121.1℃に達すると、その時点から各箇所のF値がコントローラによって演算され、演算された各F値のうち、最小のF値が目標値に到達したところで、前記SIP処理を完了し、F値の演算は下記の式によって行われ、前記上流側配管部に対するSIPの開始と同時に又は先だってアセプティップサージタンクも含めて下流側配管部のSIPが開始され、上流側配管部と下流側配管部についてSIPが各々所定の手順で実行される、洗浄・殺菌方法。記[図:0001398660000006.jpg]」
2 引用文献2
(1) 引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】 本発明は、無菌充填装置及びこの無菌充填装置を、洗浄、殺菌によって浄化する方法に関する。」
イ 「【0007】 飲料は、その調合装置から内容物充填ステーションの充填ノズルへと、飲料供給系配管を通って供給されるが、この飲料供給系配管内は、定期的にあるいは飲料の種類を切り替える際に、CIP(Cleaning in Place)に付されて残留物や異物が除去され、さらにはSIP(Sterilizing in Place)に付されて無菌化される(例えば、特許文献3,4,5参照。)。【0008】 CIPは、飲料供給系配管の管路内から充填機の充填ノズルに至るまでの流路に、例えば水に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性薬剤や硝酸等の酸性薬剤を添加した洗浄液を流すことにより行われる。これにより、飲料供給系配管路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される(例えば、特許文献3、4、5参照。)。」
ウ 「【0015】 一方、チャンバー内も、内容物充填ステーション等の外面やチャンバー内壁面の浄化のためCOP(Cleaning out of Place)及びSOP(Sterilizing out of Place)が行われる(例えば、特許文献6、7、8、9参照。)。」
エ 「【0056】 本発明によれば、ホイール列の各ホイール(12,13,9,17等)の回転によるプリフォーム又は容器(3)の流れに沿って、その上流側から下流側へと内容物充填ステーション(6)を含む各種ステーションを順に設け、各種ステーションをチャンバー(20,21,56)で覆うことにより無菌充填装置を構成し、内容物充填ステーション(6)内のホイール(9)の回転を停止させたうえで内容物充填ステーション(6)についてCIP(ステップS1)を行い、このCIPの初期から又は途中から洗浄液の温度をCIPに続いて行うSIPに必要な温度へと高め、引き続き内容物充填ステーション(6)内のホイール(9)の回転を停止させたままで内容物充填ステーション(6)についてSIP(ステップS2)を行って殺菌するとともに上記洗浄液を除去し、このSIP(ステップS2)が終わった直後から内容物充填ステーション(6)内のホイール(9)を回転させつつ、内容物充填ステーション(6)についてCOP及びSOP(ステップS3)の一方又は双方を所定の順序で行う無菌充填装置の浄化方法であるから、内容物充填ステーション(6)についてCIP(ステップS1)からSIP(ステップS2)へと移行する時間を短縮することができる。」
オ 「【0114】 そこで、CIP(ステップS1)が開始され、アルカリ洗浄液、水等所定の作業流体が所定の順序で貯留タンク38からポンプ39によって送り出される。洗浄液等は往路管40を通って貯留タンク38から上記サージタンク33へと流れ、飲料供給系配管34を通って、上マニホルド37内に流入した後、各充填ノズル32へと流れ、更に、復路管41を通って貯留タンク38へと戻る。これにより、洗浄液等が循環路内を所定の順序で所定の時間だけ流れ、充填ノズル32の内部を含む飲料供給系配管34内が洗浄される。【0115】 洗浄液等の作業流体は、図5に示すように、例えば80℃程度に加熱されつつ飲料供給系配管34内を例えば20分間循環する。そして、CIPの途中、例えば終盤頃から次のSIPで必要な殺菌温度である例えば95℃まで高められる。温度の使用範囲は80~99℃が望ましい。CIPの途中から用いられる洗浄液は洗浄液のすすぎも兼ねるため水であるのが望ましい。作業流体はCIPの当初から殺菌温度まで高めることも可能である。【0116】 CIP(ステップS1)が終了した後、引き続き内容物充填ステーション6内のホイール9の回転を停止させたままで内容物充填ステーション6についてSIP(ステップS2)が行われる。【0117】 このSIPは、上記CIPで使用された作業流体である例えば水が殺菌に必要な温度を保ちながら飲料供給系配管34内に通されることにより行われる。この作業流体は、図5に示すように、例えば95℃程度に加熱されつつ飲料供給系配管34内を例えば10分間循環する。これにより、飲料供給系配管34内が滅菌処理される。すすぎも兼ねたSIPの場合は、循環させることなくワンウエイで熱水が送られる。【0118】 飲料供給系配管34内が滅菌処理された後、図5に示すように、この配管内を通る水が常温まで徐々に冷却される。」
カ 「【0154】 このように、上記CIP(ステップS1)におけるアルカリ等の薬剤による洗浄工程、または薬剤による洗浄後の熱水によるすすぎ工程から温度を上昇させたうえで、直ちにSIP(ステップS2)が開始されるので、図5と図9との対比からも明らかなように、ある飲料の充填終了から次の飲料の充填開始へと移行するまでの生産間時間が短縮される。【0155】 SIP(ステップS2)を実施する際の熱水の温度と時間の条件は、製品の中身の殺菌に必要な条件に応じて決定される。例えばpH4未満の製品の場合、少なくとも60℃で10分間、pH4.0~4.6の製品の場合、85℃で30分、pHが4.6以上の製品の場合は、120℃で4分以上(一般的には130℃で30分以上)である。SIP(ステップS2)で100℃以上の温度条件が必要な場合は熱水だけでなく蒸気を用いても良い。」
(2) 上記(1)に摘記した事項からみて、引用文献2には、以下の発明(以下「第2引用発明」という。)が記載されていると認める。
「飲料供給系配管を備えた内容物充填ステーションについて、前記飲料供給系配管内の残留物や異物の除去を行うために洗浄液を循環させるCIP処理及び、前記飲料供給系配管内を殺菌するSIP処理を行う内容物充填ステーションの洗浄・殺菌方法であって、前記CIP処理と前記SIP処理の間を停止させることなく、前記CIP処理終了の後、前記CIP処理で用いた前記洗浄液を前記SIP処理を行う温度まで昇温し、これらの処理を連続的に行い、前記SIP処理は、前記飲料供給系配管内に循環させた前記洗浄液を用いて前記飲料供給系配管内の殺菌を行う、洗浄・殺菌方法。」
第5 対比、判断
1 対比
本願発明を引用発明と対比する。
引用発明の「製品供給系配管」は、本願発明の「飲料供給系配管」に相当する。
「SIP処理」における引用発明の「熱水」と本願発明の「洗浄液」とは「液」である限りにおいて一致する。
そうすると、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は、次のとおりである。
<一致点>
加熱殺菌部を経て充填機内へと製品を送る飲料供給系配管を備えた飲料充填装置内について、前記飲料供給系配管内に付着した製品の残留異物の除去を行うために洗浄液を循環させるCIP処理及び、前記飲料供給系配管内を殺菌するSIP処理を行う飲料充填装置の殺菌方法において、
前記SIP処理は、前記飲料供給系配管内に循環させた液を用いて前記飲料供給系配管内の殺菌を行い、
前記SIP処理における、前記飲料供給系配管内を循環させる前記液による加熱により昇温した各箇所の温度が121.1℃に達すると、その時点から各箇所のF値がコントローラによって演算され、演算された各F値のうち、最小のF値が目標値に到達したところで、前記SIP処理を完了する飲料充填装置の洗浄・殺菌方法。
<相違点>
本願発明は、「前記CIP処理と前記SIP処理の間を停止させることなく、前記CIP処理終了の後、前記CIP処理で用いた前記洗浄液を前記SIP処理を行う121.1℃以上の温度まで昇温し、これらの処理を連続的に行い」、SIP処理において「洗浄液」を用いるものであるのに対し、引用発明は、CIP処理について洗浄液を循環させること以上には特定されておらず、SIP処理において熱水を用いる点。
2 判断
(1) 相違点について検討する。
引用発明を開示する引用文献1には、CIP処理とSIP処理が時間を要する処理であって、このことが問題視される旨記載されている(段落【0008】及び【0010】)。そうであるところ、第2引用発明は、CIP処理からSIP処理へと移行する時間を短縮することができるものであるから(段落【0056】及び【0154】)、引用文献1で指摘された問題に応ずるものと評価できる。
そうすると、引用発明に第2引用発明を適用することは、当業者に十分動機付けられることといえる。
そして、引用発明に第2引用発明を適用すれば、CIP処理で用いた洗浄液をSIP処理を行う温度まで昇温させて、その洗浄液を用いてSIP処理を行う構成は容易に得られる。
ここで、引用発明がF値に着目して飲料供給系配管内の各箇所の温度が121.1℃に達するようにして殺菌するものであることから、引用発明に第2引用発明を適用する際にSIPに用いる温度を121.1℃以上にすることは、当業者にとって自明の事項というべきである。
したがって、引用発明において相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が第2引用発明を考慮することで容易になし得たことである。
(2) 請求人は、この121.1℃以上という温度値について、引用文献2の段落【0115】に「SIPで必要な殺菌温度である例えば95℃まで高められる。温度の使用範囲は80~99℃が望ましい。」という記載があることを指摘して、当業者が容易に採用し得ない値である旨主張している。
しかし、同じ引用文献2の段落【0155】には、「SIP(ステップS2)を実施する際の熱水の温度と時間の条件は、製品の中身の殺菌に必要な条件に応じて決定される。」と説明されており、それに続いてさらに「pHが4.6以上の製品の場合は、120℃で4分以上(一般的には130℃で30分以上)である。」とも説明されている。このことを踏まえれば、引用発明に第2引用発明を適用する際にSIPに用いる温度を121.1℃以上にすることは、既に述べたように当業者にとって自明といえるが、そのように工夫することが引用文献2の記載自体から何ら阻害されるものではない。したがって、請求人の上記主張は採用できない。
(3) また、本願発明の構成によって、引用発明及び第2引用発明からみて格別顕著な効果がもたらされるものともいえない。
(4) したがって、本願発明は、引用発明及び第2引用発明に基いて当業者が容易に発明し得たものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-011760