特許拒絶査定不服審判
2023-012922
飲料充填装置の洗浄・殺菌方法及び装置
- 審判番号
- 2023-012922
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2022-067563
- 請求日
- 2023年08月02日
- 審決日
- 2025年05月22日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】大日本印刷株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人インテクト国際特許事務所
- 【請求人代理人】石橋 良規
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 秋山 誠
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P18 .121-Z (B67C)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第44条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2022-67563号「飲料充填装置の洗浄・殺菌方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔令和4年6月21日出願公開、特開2022-92058号〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 出願分割の経緯の概略
本願は、令和4年4月15日にされた特許法第44条第1項の規定による出願であって、平成29年3月28日(優先権主張 平成28年4月7日、平成28年9月29日)に出願した特願2017-63371号を最先の出願とする、いわゆる3次の分割出願であるところ、出願の分割の経緯は次のとおりである。なお、括弧内は当該出願の提出日を示す。
最先出願 特願2017- 63371号(平成29年 3月28日)
1次分割 特願2019-109615号(令和 元年 6月12日)
2次分割 特願2021- 33706号(令和 3年 3月 3日)
本願 特願2022- 67563号(令和 4年 4月15日)
2 本件出願の手続の経緯の概略
本件出願の手続の経緯の概略は次のとおりである。
令和5年 2月22日付け:拒絶理由通知書
令和5年 4月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 5月 9日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(令和5年 5月17日 :原査定の謄本の送達)
令和5年 8月 2日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
令和5年4月5日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「加熱殺菌部を経て充填機内へと製品を送る飲料供給系配管を備えた飲料充填装置内について、前記飲料供給系配管内に付着した製品の残留異物の除去を行うCIP処理及び、前記飲料供給系配管内を殺菌するSIP処理を行う飲料充填装置の洗浄・殺菌方法において、
前記CIP処理と前記SIP処理の間を停止させることなく、前記CIP処理と前記SIP処理を同時に又は連続的に行う飲料充填装置の洗浄・殺菌方法であって、
前記CIP処理で使用する洗浄液の温度を前記SIP処理の殺菌温度を満たした温度として、前記洗浄液により前記SIP処理を行い、
前記SIP処理を完了後、前記洗浄液を水によりすすぎながら、次に製造する製品の殺菌処理を行う状態に前記加熱殺菌部の温度及び流量を設定する温度安定化工程を行うことを特徴とする飲料充填装置の洗浄・殺菌方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1~3に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用文献1 国際公開第2014/098058号(平成26年6月26日公開)
引用文献2 特開昭61-92555号公報(昭和61年5月10日公開;周知技術を示す文献)
引用文献3 実願昭59-135685号(実開昭61-50596号)のマイクロフィルム(昭和61年4月4日公開;周知技術を示す文献)
第4 当審の判断
1 引用文献の記載及び引用発明等
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には次の記載がある。
「技術分野
[0001] 本発明は、予め飲料供給系配管を浄化し、殺菌したうえでPETボトル等の容器への飲料の充填を開始する飲料の充填方法に関する。
背景技術
[0002] 従来、飲料の無菌充填装置の飲料供給系配管内は、定期的にあるいは飲料の種類を切り替える際に、CIP(Cleaning in Place)処理をし、さらにはSIP(Sterilizing in Place)処理をしている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。
[0003] CIPは、飲料充填経路の管路内から充填機の充填ノズルに至るまでの流路に、例えば水に水酸化ナトリウム等のアルカリ性薬剤を添加した洗浄液を流した後に、水に酸性薬剤を添加した洗浄液を流すことにより行われる。これにより、飲料充填経路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去される(例えば、特許文献1、2、3参照。)。
[0004] SIPは、例えば、上記CIPで洗浄した流路内に蒸気や熱水等を流すことによって行われ、蒸気や熱水等による加熱によって、飲料充填経路内が殺菌処理され無菌状態とされる(例えば、特許文献3第0003段落参照。)」
「発明が解決しようとする課題
・・・
[0008] しかし、前者のCIPを洗浄剤で行った後に熱水等でSIPを行う方式は、飲料の充填作業を開始するまでに費やされる手間や時間が多大となる。一方、後者の洗浄剤を濾過して除菌してCIPを行う方法は、SIPを省略することが可能であるが、アルカリ性洗浄液に耐性のある除菌用フィルタが高価であり、また、無菌性を維持・管理するのが困難であるという問題がある。
[0009] 本発明はこのような問題点を解消することができる飲料の充填方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
[0010] 上記課題を解決するべく本発明者が鋭意研究したところ、除菌していないアルカリ性洗浄液を所定の条件でCIP処理に使用すると、SIP処理も同時に達成することができることを見出した。
[0011] 本発明は、上記知見に基づきなされたもので、次のような構成を具備することを特徴とする。
・・・
[0013] すなわち、請求項1に係る発明は、飲料を殺菌部(18)から充填機(2)内へと送る飲料供給系配管(7)にアルカリ性洗浄液を流すことにより、今回の飲料の供給に使用した飲料供給系配管(7)の浄化と殺菌を同時に行い、次回供給する予定の飲料について容認される殺菌効果以上の殺菌効果で処理された水により上記飲料供給系配管(7)内をリンスし、しかる後に上記次回の飲料の供給を開始する飲料の充填方法を採用する。
・・・
[0015] 請求項3に記載されるように、請求項1又は請求項2に記載の飲料の充填方法において、リンスで使用する水の温度を充填する飲料と同等の温度にしてもよい。」
「[0022]・・・
[図5]本発明の他の実施例に係る無菌飲料充填装置のブロック図である。
[図6]無菌飲料充填装置における飲料供給系配管に対しCIPを行っている状態を示すブロック図である。
[図7]飲料のボトル詰め製品を生産している状態を示すブロック図である。」
「[0029] この飲料充填装置の飲料供給系配管7は、その調合装置1から充填機2に至る管路中に、飲料の流れから見て上流側から下流側へと順に、バランスタンク5、加熱殺菌部(UHT)18、マニホルドバルブ13、アセプティックサージタンク19、ヘッドタンク11を備える。」
「[0074]<実施の形態2>
図5に示すように、この飲料充填装置の飲料供給系配管7は、その調合装置1から充填機2に至る管路中に、飲料の流れから見て上流側から下流側へと順に、バランスタンク5、殺菌部(UHT)18、ヘッドタンク11を有し、ヘッドタンク11から充填機2内に至っている。
・・・
[0081] この水で飲料供給系配管7内がリンスされ、浄化されると同時に水への伝熱で飲料供給系配管7内が次の飲料の充填に適した温度まで冷却される。これにより、充填作業に速やかに着手することが可能になる。
[0082] 次に、上記飲料充填装置の浄化方法について、図6及び図7に基づいて説明する。
[0083] (1)図示しないシーケンス制御装置のパネル上の操作ボタンが操作されると、飲料供給系配管7の浄化が所定の手順で実行される。
[0084] (2)各水供給源23から水が飲料供給系配管7内に送られ、飲料供給系配管7内が浄化される。飲料供給系配管7内に供給された水は、循環路内を所定時間だけ循環した後、ドレン管6dから外部に廃液として排出される。
[0085] (3)次に、各アルカリ性洗浄液の供給源15からアルカリ性洗浄液が飲料供給系配管7に送られ、循環路内を所定時間循環する。このアルカリ性洗浄液の供給によってバランスタンク5から充填機2内の充填ノズル2aに至る飲料供給系配管7内が浄化され、同時に殺菌される。
[0086] 飲料供給系配管7内に送られたアルカリ性洗浄液は、循環路内を所定時間循環した後、ドレン管7dから廃液として外部に排出される。
[0087] アルカリ性洗浄液として、水酸化ナトリウムを0.1~10質量%含んだものが使用される場合は、バランスタンク5の出口に設けた図示しないヒータによって50~150℃に加熱されたうえで、循環路内に供給される。この供給が5~120分間行われると、飲料供給系配管7内が適正に浄化処理され、同時に殺菌処理され、従って、従来のSIP処理を別途行うことなく同時にSIP処理が行われることになる。
・・・
[0091] (4)上記浄化処理が完了した後、水によって飲料供給系配管7内を含む循環路内のリンスが行われる。
[0092] 飲料供給系配管7内のすすぎに使用する水は、例えばUHTである殺菌部18に水供給源23からの水を通しながら加熱することによって作られる。このリンス水は、次回飲料供給系配管7内に供給する予定の飲料について容認される殺菌効果以上の殺菌効果で処理されたものであるのが望ましい。
[0093] このリンス水で飲料供給系配管7内に残留した洗浄剤が洗い流されると、バルブ26が開けられ、ドレン管7dからリンス水の廃液が外部に排出される。
[0094] (5)上記浄化が完了した後、バルブ26が閉められ、図示しないアクチュエータによって各充填ノズル2aの開口からカップ9が外される。
[0095]
(6)次回の飲料の充填作業が開始され、図7中、太線で示したごとく調合装置1で新たに調合された飲料が浄化された飲料供給系配管7を通って充填機2内に至り、充填機2の充填ノズル2aから容器であるボトル4に充填される。」
「[図5]
[図:0001425043000001.jpg]
[図6]
[図:0001425043000002.jpg]
[図7]
[図:0001425043000003.jpg]
」
(2)引用文献1の記載から認められる事項
引用文献1の[0029]、[0074]、[0095]、[図7]の記載から、飲料供給系配管7は、加熱殺菌部(UHT)18を経て充填機2内へと製品を送ることが認められる。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)、(2)によると、引用文献1には、特に実施の形態2に着目すると、次の発明が記載されていると認められる。
「加熱殺菌部(UHT)18を経て充填機2内へと製品を送る(上記(2))飲料充填装置の浄化方法において([0029]、[0082])、
飲料充填装置の飲料供給系配管7は、その調合装置1から充填機2に至る管路中に、飲料の流れから見て上流側から下流側へと順に、バランスタンク5、加熱殺菌部(UHT)18、ヘッドタンク11を有し、ヘッドタンク11から充填機2内に至っており([0074])、
飲料充填経路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去されるCIP処理をし([0002]、[0003])、
飲料充填経路内が殺菌処理され無菌状態とされるSIP処理をする([0002]、[0004])飲料充填装置の浄化方法であって、
シーケンス制御装置のパネル上の操作ボタンが操作されると、飲料供給系配管7の浄化が所定の手順で実行され([0083])、
各水供給源23から水が飲料供給系配管7内に送られ、飲料供給系配管7内が浄化され、飲料供給系配管7内に供給された水は、循環路内を所定時間だけ循環した後、ドレン管6dから外部に廃液として排出され([0084])、
次に、各アルカリ性洗浄液の供給源15からアルカリ性洗浄液が飲料供給系配管7に送られ、循環路内を所定時間循環し、このアルカリ性洗浄液の供給によってバランスタンク5から充填機2内の充填ノズル2aに至る飲料供給系配管7内が浄化され、同時に殺菌され([0085])、
飲料供給系配管7内に送られたアルカリ性洗浄液は、循環路内を所定時間循環した後、ドレン管7dから廃液として外部に排出され([0086])、
アルカリ性洗浄液として、水酸化ナトリウムを0.1~10質量%含んだものが使用され、バランスタンク5の出口に設けたヒータによって50~150℃に加熱されたうえで、循環路内に供給され、この供給が5~120分間行われると、飲料供給系配管7内が適正に浄化処理され、同時に殺菌処理され、従って、同時にSIP処理が行われ([0087])、
上記浄化処理が完了した後、水によって飲料供給系配管7内を含む循環路内のリンスが行われ([0091])、
飲料供給系配管7内のすすぎに使用する水は、加熱殺菌部(UHT)18に水供給源23からの水を通しながら加熱することによって作られ、このリンス水は、次回飲料供給系配管7内に供給する予定の飲料について容認される殺菌効果以上の殺菌効果で処理されたものであり([0092])、
この水で飲料供給系配管7内がリンスされ、浄化されると同時に水への伝熱で飲料供給系配管7内が次の飲料の充填に適した温度まで冷却され([0081])、
このリンス水で飲料供給系配管7内に残留した洗浄剤が洗い流されると、バルブ26が開けられ、ドレン管7dからリンス水の廃液が外部に排出される([0093])、
飲料充填装置の浄化方法。」(以下「引用発明」という。)
2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「加熱殺菌部(UHT)18」は本願発明の「加熱殺菌部」に相当し、以下同様に、「充填機2」は「充填機」に、「製品」は「製品」に、「飲料充填装置」は「飲料充填装置」に相当する。
引用発明において「飲料充填経路内に付着した前回の飲料の残留物等が除去されるCIP処理を」することは、本願発明において「前記飲料供給系配管内に付着した製品の残留異物の除去を行うCIP処理」を行うことに相当し、同様に、「飲料充填経路内が殺菌処理され無菌状態とされるSIP処理を」することは、「前記飲料供給系配管内を殺菌するSIP処理を行う」ことに相当する。
引用発明の「飲料充填装置の浄化方法」は、「前記飲料供給系配管内に付着した製品の残留異物の除去を行うCIP処理」と「飲料充填経路内が殺菌処理され無菌状態とされるSIP処理」を行うものであるから、本願発明の「飲料充填装置の洗浄・殺菌方法」に相当する。
引用発明において「アルカリ性洗浄液として、水酸化ナトリウムを0.1~10質量%含んだものが使用され、バランスタンク5の出口に設けたヒータによって50~150℃に加熱されたうえで、循環路内に供給され、この供給が5~120分間行われると、飲料供給系配管7内が適正に浄化処理され、同時に殺菌処理され、従って、同時にSIP処理が行われ」ることは、CIP処理とSIP処理を同時に行っており、また、CIP処理とSIP処理の間に飲料充填装置を停止していないから、本願発明において「前記CIP処理と前記SIP処理の間を停止させることなく、前記CIP処理と前記SIP処理を同時に又は連続的に行う」ことに相当する。
引用発明において「アルカリ性洗浄液として、水酸化ナトリウムを0.1~10質量%含んだものが使用され、バランスタンク5の出口に設けたヒータによって50~150℃に加熱されたうえで、循環路内に供給され、この供給が5~120分間行われると、飲料供給系配管7内が適正に浄化処理され、同時に殺菌処理され、従って、同時にSIP処理が行われ」ることは、CIP処理で使用するアルカリ性洗浄液の温度を50~150℃とすることで、同時にSIP処理をしているから、本願発明において「前記CIP処理で使用する洗浄液の温度を前記SIP処理の殺菌温度を満たした温度として、前記洗浄液により前記SIP処理を行」うことにも相当する。
引用発明において、「上記浄化処理が完了した後」、「加熱殺菌部(UHT)18に水供給源23からの水を通しながら加熱することによって作られ」た「水」によって「飲料供給系配管7内を含む循環路内のリンスが行われ」、「この水で飲料供給系配管7内がリンスされ、浄化されると同時に水への伝熱で飲料供給系配管7内が次の飲料の充填に適した温度まで冷却され」ることと、本願発明において「前記SIP処理を完了後、前記洗浄液を水によりすすぎながら、次に製造する製品の殺菌処理を行う状態に前記加熱殺菌部の温度及び流量を設定する温度安定化工程を行う」こととは、SIP処理を完了後、洗浄液を水によりすすぎながら、次に製造する製品に適した状態に加熱殺菌部を設定する温度安定化工程を行うことの限りで一致する。
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「加熱殺菌部を経て充填機内へと製品を送る飲料供給系配管を備えた飲料充填装置内について、前記飲料供給系配管内に付着した製品の残留異物の除去を行うCIP処理及び、前記飲料供給系配管内を殺菌するSIP処理を行う飲料充填装置の洗浄・殺菌方法において、
前記CIP処理と前記SIP処理の間を停止させることなく、前記CIP処理と前記SIP処理を同時に又は連続的に行う飲料充填装置の洗浄・殺菌方法であって、
前記CIP処理で使用する洗浄液の温度を前記SIP処理の殺菌温度を満たした温度として、前記洗浄液により前記SIP処理を行い、
前記SIP処理を完了後、前記洗浄液を水によりすすぎながら、次に製造する製品に適した状態に前記加熱殺菌部を設定する温度安定化工程を行う飲料充填装置の洗浄・殺菌方法。」
[相違点1]
SIP処理を完了後、洗浄液を水によりすすぎながら、次に製造する製品に適した状態に加熱殺菌部を設定する温度安定化工程を行うことに関して、本願発明は、「前記SIP処理を完了後、前記洗浄液を水によりすすぎながら、次に製造する製品の殺菌処理を行う状態に前記加熱殺菌部の温度及び流量を設定する温度安定化工程を行う」のに対して、引用発明は、「上記浄化処理が完了した後」、「加熱殺菌部(UHT)18に水供給源23からの水を通しながら加熱することによって作られ」た「水」によって「飲料供給系配管7内を含む循環路内のリンスが行われ」、「この水で飲料供給系配管7内がリンスされ、浄化されると同時に水への伝熱で飲料供給系配管7内が次の飲料の充填に適した温度まで冷却され」る点。
3 判断
(1)相違点1について
引用発明は、「製品」である「飲料」を、「加熱殺菌部(UHT)18を経て充填機2内へと」送るものであり、また、「飲料供給系配管7」による配管系は「加熱殺菌部(UHT)18」を含むものであるから、「飲料供給系配管7内が次の飲料の充填に適した温度」とすることは、「加熱殺菌部(UHT)18」についても「次に製造する製品の殺菌処理を行う状態」の温度とすることにほかならない。
また、引用発明の「飲料供給系配管7内を含む循環路内のリンスが行われ」る際の「飲料供給系配管7内」の温度は、「すすぎに使用される水」からの伝熱による加熱・冷却と、「飲料供給系配管7」からの放熱による冷却により変動するものである。そうすると、引用発明において「飲料供給系配管7内が次の飲料の充填に適した温度まで冷却され」るようにするために、「加熱殺菌部(UHT)18」の温度及び流量を設定するようにして、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことにすぎない。
(2)効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
4 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、引用文献1の【0041】には、すすぎに使用される水は、温度及び流量により決定される殺菌条件が、次に製造する飲料の殺菌条件以上ということが記載されており、当該記載によると、すすぎに使用される水の温度を高くして流量を多くしても、温度を低くして流量を少なくしてもよく、すすぎ水の温度及び流量は極めて広い範囲から選択して設定することができるのに対して、本願発明では、温度及び流量は、次に製造する製品の殺菌処理条件に合わせたものである旨主張する。
この主張について検討すると、確かに引用文献1の【0041】には、すすぎに使用される水の殺菌条件を次に製造する飲料の殺菌条件以上とすることが記載されている。
しかし、引用文献1において、すすぎに使用される水の殺菌条件を次に製造する飲料の殺菌条件以上とすることが記載されているのは、殺菌できればよいから「殺菌条件以上」としているものと認められる。そして、殺菌できる限りにおいては殺菌条件を過剰に設定する必要がないことは当業者にとって明らかである。また、「飲料供給系配管7内が次の飲料の充填に適した温度」とすることからみても、その温度を外して高温にしたり低温にするとは考えられない。そうすると、「すすぎ水の温度及び流量は極めて広い範囲から選択して設定することができる」ということにはならない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
5 小括
よって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2023-012922