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特許拒絶査定不服審判

2021-009517

電力変換用回路基板及び電動圧縮機

審判番号
2021-009517
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-146805外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年07月16日
審決日
2022年02月24日
公報発行日
2022年05月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (H02M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-146805「電力変換用回路基板及び電動圧縮機」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月23日出願公開、特開2020- 14374〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1.手続の経緯 本願は,平成27年3月24日に出願した特願2015-60840号の一部を令和1年8月8日に新たな特許出願としたものであって,令和1年10月28日付けで上申書が提出されるとともに手続補正がなされ,令和2年10月19日付けで拒絶理由通知がされ,令和3年2月19日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,令和3年4月23日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,令和3年7月16日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2.令和3年7月16日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和3年7月16日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1.本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,次のとおり補正された。(下線部は,補正箇所を示すために,請求人が付したものである。) 「 【請求項1】 直流を交流に変換する電力変換用回路が搭載された基板であって, 低電圧が印加される低電圧回路と,高電圧が印加される高電圧回路と,が同一の基板表面の異なるエリアにそれぞれ分かれて配置され, 前記高電圧回路は,接地配線に接続され,互いに直列接続された複数のコンデンサ素子がコの字形状を含む2次元的な配置パターン成す直列コンデンサ群を複数有する, 電力変換用回路基板。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の,令和3年2月19日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 直流を交流に変換する電力変換用回路が搭載された基板であって, 低電圧が印加される低電圧回路と,高電圧が印加される高電圧回路と,が同一の基板表面の異なるエリアにそれぞれ分かれて配置され, 前記高電圧回路は,接地配線に接続され,非直線的に配設されて互いに直列接続された複数のコンデンサ素子からなる直列コンデンサ群を有し, 前記直列コンデンサ群は,コの字形状を含む2次元的な配置パターンを有する 電力変換用回路基板。」 2.補正の適否 本件補正は,以下の補正事項を含むものである。 補正事項1:補正前の請求項1の「前記高電圧回路は,接地配線に接続され,非直線的に配設されて互いに直列接続された複数のコンデンサ素子からなる直列コンデンサ群を有し,」「前記直列コンデンサ群は,コの字形状を含む2次元的な配置パターンを有する」との記載を,「前記高電圧回路は,接地配線に接続され,互いに直列接続された複数のコンデンサ素子がコの字形状を含む2次元的な配置パターン成す直列コンデンサ群を複数有する」と補正することで,「接地配線に接続され,互いに直列接続された複数のコンデンサ素子がコの字形状を含む2次元的な配置パターン成す直列コンデンサ群」が「複数」であることを限定する補正。 上記補正事項1は,補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について限定を付加するものであって,補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は,上記1.(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献,引用発明 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願出願前に,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-99480号公報(以下,「引用文献1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審において付加したものである。以下,同じ。) a.「【0017】 以下に,本発明に係る制御基板が適用された車載空気調和機の一実施形態について,図面を参照して説明する。 図1は,本実施形態に係る車載空気調和機1の概略構成を示したブロック図である。 図1に示すように,制御装置2の入力側は,高電圧電源3および低電圧電源4と接続されている。具体的には,高電圧電源3は高圧系統の電力線L1により制御装置2と接続されている。また,低電圧電源4は,低圧系統の電力線L2により制御装置2と接続されている。制御装置2の出力側と圧縮機5とは,3相電力線L3により接続されている。 高圧系統の電力線L1を介して入力される電圧のレベルは,例えば,約300Vであり,低圧系統の電力線L2を介して入力される電圧のレベルは,例えば,約12Vまたは約24Vである。 【0018】 このような構成における車載空気調和機1においては,高電圧電源3から電力線L1を介して直流電力が制御装置2に供給される。この直流電力は,制御装置2内のインバータ装置(図示略)により3相の交流電力に変換され,3相電力線L3を介して圧縮機5へ供給される。なお,インバータ装置の駆動制御等については公知の技術を採用することができる。 【0019】 このような車載空気調和機1の制御装置2においては,図2に示すような制御基板10が利用される。この制御基板10には,1枚の基板内に,電力線L2を介して入力される低電圧に係る電力制御を行うための低電圧系パターン(低電圧用回路のパターン)と,電力線L1を介して入力される高電圧に係る電力制御を行うための高電圧系パターン(高電圧用回路のパターン)とが形成されている。 低電圧系パターンと高電圧系パターンとが形成される領域は分離されている。本実施形態においては,領域A1に低電圧系パターンが形成され,領域A2に高電圧系パターンが形成されている。なお,各領域A1,A2における詳細なパターンについては,図示を省略している。 【0020】 このような制御基板10において,低電圧用回路のグランドが接地可能にパターン形成されている。具体的には,制御基板10には,当該基板を筐体(図示略)にビス止めするための複数のビス孔11a~11dが形成されており,このうちの少なくとも1つのビス孔11aと低電圧用回路のグランドとが接続されている。上記ビス孔をビスが貫通し,筐体に形成されているビス止めに固定されることにより,当該基板が筐体内に固定される。ここで,筐体は取り付け時において車体側のアースに接続されることにより接地されているので,低電圧用回路のグランドと筐体とがビスにより接続されることにより,低電圧回路のグランドを接地することができる。 【0021】 また,制御基板10には,高電圧用回路のグランドを,コンデンサを介して接地するための接地用ランド12a,12bが形成されている。この接地用ランド12a,12bは,例えば,低電圧用回路のグランドが接続されていないビス孔11c,11dと高電圧用回路のグランドとをそれぞれコンデンサにより接続するためのランドである。 このように,接地用ランド12a,12bが形成されることにより,高電圧用回路のグランドをコンデンサを介して接地することが可能となるので,瞬時的な電圧変動をコンデンサの作用により低減させることが可能となり,ノイズを低減させることができる。 【0022】 更に,低電圧用回路のパターン及び高電圧用回路のパターンには,互いのグランドをコンデンサを介して接続するためのグランド接続用ランド13a,13bが設けられている。なお,図2に示されているグランド接続用ランド13a,13bに接続されるコンデンサの数,及び上述した接地用ランド12a,12bに接続されるコンデンサの数は,それぞれ一例であり,これらコンデンサの接続数は設計事項により適宜増減することが可能である。 【0023】 接地用ランド12a,12bおよびグランド接続用ランド13a,13bは,複数のコンデンサを並列に接続するように設けられていてもよいし,複数のコンデンサを直接に接続するように設けられていてもよい。コンデンサを直列に接続するか,並列に接続するかについては,耐圧やノイズレベルに応じて適宜選択することができる。 図2に示した接地用ランド12a,12b,並びにグランド接続用ランド13bは,いずれも複数のコンデンサを並列に接続するための形態とされている。 図3に,複数のコンデンサを直列に接続するためのランドの形態を示す。このように,コンデンサを直列に接続するためには,ランドをもう一つ追加し,追加したランドと各パターンのグランド等とをそれぞれ接続すればよい。 【0024】 上記接地用ランド12a,12b及びグランド接続用ランド13a,13bは,制御基板の特質に応じて複数の箇所に設けられていてもよい。また,これら接地用ランド12a,12b及びグランド接続用ランド13a,13bに接続されるコンデンサの容量や個数は,制御基板10の特性やノイズの規制数値特性に応じて適切に選定することが好ましい。具体的には,低減させたいノイズの周波数帯域に応じた周波数特性を有するコンデンサをそれぞれ接続することが好ましい。」 b.「図1 [図:0001383909000001.jpg] 」 c.「図2 [図:0001383909000002.jpg] 」 d.「図3 [図:0001383909000003.jpg] 」 (イ)上記a.の段落0019の「車載空気調和機1の制御装置2においては,図2に示すような制御基板10が利用される。この制御基板10には,1枚の基板内に,電力線L2を介して入力される低電圧に係る電力制御を行うための低電圧系パターン(低電圧用回路のパターン)と,電力線L1を介して入力される高電圧に係る電力制御を行うための高電圧系パターン(高電圧用回路のパターン)とが形成されている」との記載,及び上記c.で引用した図2の記載から,引用文献1には,“1枚の基板内に,電力線L2を介して入力される低電圧に係る電力制御を行うための低電圧系パターン(低電圧用回路のパターン)と,電力線L1を介して入力される高電圧に係る電力制御を行うための高電圧系パターン(高電圧用回路のパターン)とが形成された,車載空気調和機1の制御装置2において利用される制御基板10”が記載されていると認められる。 (ウ)上記a.の段落0019の「低電圧系パターンと高電圧系パターンとが形成される領域は分離されている。本実施形態においては,領域A1に低電圧系パターンが形成され,領域A2に高電圧系パターンが形成されている」との記載,及び上記c.で引用した図2の記載から,引用文献1には,“低電圧系パターンと高電圧系パターンとが形成される領域は,低電圧系パターンが形成される領域A1と,高電圧系パターンが形成される領域A2とに分離されて”いることが記載されていると認められる。 (エ)上記a.の段落0018の「車載空気調和機1においては,高電圧電源3から電力線L1を介して直流電力が制御装置2に供給される。この直流電力は,制御装置2内のインバータ装置(図示略)により3相の交流電力に変換され,3相電力線L3を介して圧縮機5へ供給される」との記載,及び上記b.で引用した図1の記載から,引用文献1には,“高電圧電源3から電力線L1を介して供給される直流電力は,制御装置2内のインバータ装置により3相の交流電力に変換され,3相電力線L3を介して圧縮機5へ供給され”ることが記載されていると認められる。 (オ)上記a.の段落0021の「制御基板10には,高電圧用回路のグランドを,コンデンサを介して接地するための接地用ランド12a,12bが形成されている」との記載から,引用文献1には,“制御基板10には,高電圧用回路のグランドを,コンデンサを介して接地するための接地用ランド12a,12bが形成されて”いることが記載されていると認められる。 (カ)上記a.の段落0022の「なお,図2に示されているグランド接続用ランド13a,13bに接続されるコンデンサの数,及び上述した接地用ランド12a,12bに接続されるコンデンサの数は,それぞれ一例であり,これらコンデンサの接続数は設計事項により適宜増減することが可能である」との記載,及び上記c.で引用した図2の記載から,引用文献1には,“接地用ランド12a,12bに接続されるコンデンサの数は,適宜増減することが可能であ”ることが記載されていると認められる。 (キ)上記a.の段落0023の「接地用ランド12a,12bおよびグランド接続用ランド13a,13bは,複数のコンデンサを並列に接続するように設けられていてもよいし,複数のコンデンサを直接に(当審注:「直接に」は,「直列に」の明らかな誤記である。)接続するように設けられていてもよい。コンデンサを直列に接続するか,並列に接続するかについては,耐圧やノイズレベルに応じて適宜選択することができる。」,「図3に,複数のコンデンサを直列に接続するためのランドの形態を示す。このように,コンデンサを直列に接続するためには,ランドをもう一つ追加し,追加したランドと各パターンのグランド等とをそれぞれ接続すればよい。」との記載,及び上記d.に引用した図3の記載から,引用文献1には,“接地用ランド12a,12bは,複数のコンデンサを直列に接続するように設けられていてもよ”いことが記載されていると認められる。 (ク)上記a.の段落0024の「上記接地用ランド12a,12b及びグランド接続用ランド13a,13bは,制御基板の特質に応じて複数の箇所に設けられていてもよい」との記載から,引用文献1には,“上記接地用ランド12a,12bは,制御基板の特質に応じて複数の箇所に設けられていてもよい”ことが記載されていると認められる。 (ケ)したがって,引用文献1の上記各記載及び図面の記載を総合すると,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「1枚の基板内に,電力線L2を介して入力される低電圧に係る電力制御を行うための低電圧系パターン(低電圧用回路のパターン)と,電力線L1を介して入力される高電圧に係る電力制御を行うための高電圧系パターン(高電圧用回路のパターン)とが形成された,車載空気調和機1の制御装置2において利用される制御基板10であって, 低電圧系パターンと高電圧系パターンとが形成される領域は,低電圧系パターンが形成される領域A1と,高電圧系パターンが形成される領域A2とに分離されており, 高電圧電源3から電力線L1を介して供給される直流電力は,制御装置2内のインバータ装置により3相の交流電力に変換され,3相電力線L3を介して圧縮機5へ供給され, 前記制御基板10には,高電圧用回路のグランドを,コンデンサを介して接地するための接地用ランド12a,12bが形成されており, 前記接地用ランド12a,12bに接続されるコンデンサの数は,適宜増減することが可能であり, 前記接地用ランド12a,12bは,複数のコンデンサを直列に接続するように設けられていてもよく, 上記接地用ランド12a,12bは,制御基板の特質に応じて複数の箇所に設けられていてもよい, 制御基板10。」 イ 引用文献2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願出願前に,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開平7-283002号公報(以下,「引用文献2」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審において付加したものである。以下,同じ。) e.「【0003】このような表面実装部品5は,たとえば回路部品としての固定抵抗器や固定容量のコンデンサなどがある。上記表面実装部品5の実装構造としては,要部回路のみが示される図11のようなものがある。図11の図(a)の平面図に示されるように,プリント配線板でなる回路基板6上に回路パターン7とその両端部の接続用パターン8,8が銅箔で形成され,接続用パターン8,8間は基板の基材が露出され,ここにはんだレジスト樹脂が塗布されている。」 f.「【0036】この表面実装部品35の回路基板への実装構造について,図5を参照して説明する。図5の図(a)の平面図に示されるように回路基板27面上には回路パターン28,28と,その端部の接続用パターン29,29および,これらの中間部に共通の接続用パターン31,31,さらにはこの共通の接続用パターン31,31に隣接して第2の共通の接続用パターン42,42とが,それぞれ銅箔により形成される。 【0037】ついで,回路パターン28端部の接続用パターン29,29および共通の接続用パターン31,31,42,42上にフラックスを含むクリーム状のはんだを適量供給塗布する。 【0038】図(b)に示されるように,図示左右の接続用パターン29と共通の接続用パターン31との組み合わせに対して,共通の接続用パターン31上に2個の表面実装部品35の凹形の接続用端子37を,接続用パターン29上に凸形の接続用端子38をそれぞれ配置させる。 【0039】つぎに,共通の接続用パターン31,31と隣接の第2の共通の接続用パターン42,42との間に,同様にして表面実装部品35の凸形の接続用端子38と凹形の接続用端子37部分をそれぞれに配置させる。このとき,図から明らかなように,先に配置させた表面実装部品35の凹形の接続用端子37に対して,後の表面実装部品35の凸形の接続用端子38部分が組み合わせられるように位置させることが必要である。 【0040】以上で左右に2個ずつの表面実装部品35が90°(直角)で対称形に配置されたことになる。つづけて,左右の第2の共通の接続用パターン42,42上に両端に凸形の接続用端子38,38の形成された変形の表面実装部品35aの接続用端子を配置させる。このときも,先の表面実装部品35,35の凹形の接続用端子37部分に組み合わせるよう位置させることが必要である。 【0041】このようにして5個の表面実装部品35,35aを直列状態として,4箇所の90°の折れ曲がりによって配置された回路基板27をリフロ式はんだ付け装置に挿入し,はんだを溶融させることにより各接続用端子間ならびに接続用パターンとのはんだ付けを行なうことができる。 【0042】この実施例にあっても,各表面実装部品の電気的な値は異なるか,同一なものとの組み合わせであるから形状寸法などが異なることに合わせて,各共通の接続用パターン間の間隔を設定させることが必要である。 【0043】中間の各共通の接続用パターン31,42上の接続用端子は,はんだが凹凸状に入り込むから確実なはんだ付け状態が得られる。このような表面実装部品の配置ならびに個数はこの実施例に限定されることなく任意形状,任意個数とすることができるものである。 【0044】共通の接続用パターン上で表面実装部品の接続用端子のはんだ付けが行なえることから,回路パターンを最低限度の状態に短縮し得るので従来のような問題点のないものとなり,実装面積も大幅に縮小し得る。」 g.「図5 [図:0001383909000004.jpg] 」 (イ)上記e.の段落0003の「このような表面実装部品5は,たとえば回路部品としての固定抵抗器や固定容量のコンデンサなどがある」との記載から,引用文献2の「表面実装部品」は,例えば「コンデンサ」などの回路部品であると認められる。 (ウ)上記f.の段落0038の「図(b)に示されるように,図示左右の接続用パターン29と共通の接続用パターン31との組み合わせに対して,共通の接続用パターン31上に2個の表面実装部品35の凹形の接続用端子37を,接続用パターン29上に凸形の接続用端子38をそれぞれ配置させる」との記載,同じく上記f.の段落0039の「つぎに,共通の接続用パターン31,31と隣接の第2の共通の接続用パターン42,42との間に,同様にして表面実装部品35の凸形の接続用端子38と凹形の接続用端子37部分をそれぞれに配置させる」との記載,同じく上記f.の段落0040の「つづけて,左右の第2の共通の接続用パターン42,42上に両端に凸形の接続用端子38,38の形成された変形の表面実装部品35aの接続用端子を配置させる」との記載,及び上記g.で引用した図5の記載から,“表面実装部品35及び35aはコの字形状に配置されている”ことが記載されていると認められる。 (エ)上記f.の段落0041の「5個の表面実装部品35,35aを直列状態として,4箇所の90°の折れ曲がりによって配置された回路基板27」との記載,及び上記(イ)(ウ)のことから,引用文献2には,“直列接続された複数のコンデンサを基板上でコの字形状に配置すること”が記載されていると認められる。 (オ)上記f.の段落0044の「共通の接続用パターン上で表面実装部品の接続用端子のはんだ付けが行なえることから,回路パターンを最低限度の状態に短縮し得るので従来のような問題点のないものとなり,実装面積も大幅に縮小し得る」との記載から,引用文献2の部品配置により“実装面積を大幅に縮小し得る”ことが記載されていると認められる。 (カ)したがって,引用文献2には,次の技術(以下,「引用文献2記載技術」という。)が記載されていると認められる。 (引用文献2記載技術) 「直列接続された複数のコンデンサを基板上でコの字形状に配置することにより実装面積を大幅に縮小し得る技術。」 ウ 引用文献3 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された,本願出願前に,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-13832号公報(以下,「引用文献3」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は,当審において付加したものである。以下,同じ。) h.「【0020】 コンデンサ31~33と,接合部材100と,基板40と,モールド樹脂50と,を有する電子装置200を製造するためには,基板40に接合部材100を搭載した後,図11に示すように,コンデンサ31~33を接合部材100に搭載する。次いで,図12に示すように,第1連結部21と共に非搭載領域を除去する。最後に,図13に示すように,非搭載領域の一部が外部に露出されるように,接合部材100,コンデンサ31~33,基板40をモールド樹脂50によって被覆する。以上の工程を経ることで,図13に示す電子装置200が製造され,図14に示すように,回路41に対して,コンデンサ31~33が直列接続される。なお,回路41の具体例としてはDCDCコンバータなどが採用可能である。上記したように,2つではなく3つのコンデンサ31~33を直列接続することで,DCDCコンバータに供給する電圧を高めることができる。 【0021】 以上,示したように,本実施形態に係る接合部材100の場合,2つ,若しくは,3つのコンデンサを直列接続することができる。 【0022】 本実施形態では,搭載部11~14が順次y方向に並ぶ例を示した。しかしながら,図15に示すように,第1搭載部11と第2搭載部12とがx方向に並び,第3搭載部13と第4搭載部14とがx方向に並び,第2搭載部12と第3搭載部13とがy方向に並んだ構成を採用することもできる。この場合,図16に示すように,コンデンサ31,32が搭載部11~14に搭載される。そして,図17に示すように,コンデンサ31~33が搭載部11~14に搭載され,第1連結部21と共に,非搭載領域の一部が除去される。これによれば,3つのコンデンサ31~33を搭載部11~14に搭載する際に,y方向において,3つのコンデンサ31~33がジグザグに並び,コンデンサ31,33の一部及びコンデンサ32,33の一部が,x方向にて対向する。したがって,図9に示すように,コンデンサ31,33の一部及びコンデンサ32,33の一部が,x方向にて対向しない構成と比べて,接合部材100にコンデンサ31~33が搭載されてなる部材のy方向の体格の増大が抑制される。なお,もちろんではあるが,図9に示す構成においても,配置を工夫すれば,コンデンサ31,33の一部及びコンデンサ32,33の一部が,x方向にて対向する。しかしながら,図15に示す接合部材100の方が,コンデンサ31,33の一部及びコンデンサ32.33の一部が,x方向にて対向し易く,その対向面積も増大し易い。そのため,上記した部材のy方向の体格の増大が抑制され易い。」 i.「図14 [図:0001383909000005.jpg] 」 j.「図17 [図:0001383909000006.jpg] 」 (イ)上記h.の段落0020の「基板40に接合部材100を搭載した後,図11に示すように,コンデンサ31~33を接合部材100に搭載する」との記載,同じく上記h.の段落0022の「図15に示すように,第1搭載部11と第2搭載部12とがx方向に並び,第3搭載部13と第4搭載部14とがx方向に並び,第2搭載部12と第3搭載部13とがy方向に並んだ構成を採用することもできる。この場合,図16に示すように,コンデンサ31,32が搭載部11~14に搭載される。そして,図17に示すように,コンデンサ31~33が搭載部11~14に搭載され,第1連結部21と共に,非搭載領域の一部が除去される。これによれば,3つのコンデンサ31~33を搭載部11~14に搭載する際に,y方向において,3つのコンデンサ31~33がジグザグに並び,コンデンサ31,33の一部及びコンデンサ32,33の一部が,x方向にて対向する。したがって,図9に示すように,コンデンサ31,33の一部及びコンデンサ32,33の一部が,x方向にて対向しない構成と比べて,接合部材100にコンデンサ31~33が搭載されてなる部材のy方向の体格の増大が抑制される。」との記載,及び上記j.で引用した図17の記載から,引用文献3には,“3つのコンデンサ31~33を基板40上の搭載部11~14に搭載する際に,y方向において,3つのコンデンサ31~33がジグザグに並び,コンデンサ31,33の一部及びコンデンサ32,33の一部が,x方向にて対向するように配置すること”,すなわち,“3つのコンデンサ31~33を基板上でコの字形状に配置すること”が記載されており,また,そのように配置することにより,“接合部材100にコンデンサ31~33が搭載されてなる部材のy方向の体格の増大を抑制する”ことが記載されていると認められる。 (ウ)上記h.の段落0020の「図14に示すように,回路41に対して,コンデンサ31~33が直列接続される」との記載,上記i.で引用した図14の記載,及び上記j.で引用した図17の記載から,引用文献1には,“直列接続されたコンデンサ31~33”が記載されていると認められる。 (エ)したがって,引用文献3には,次の技術(以下,「引用文献3記載技術」という。)が記載されていると認められる。 (引用文献3記載技術) 「直列接続された3つのコンデンサ31~33を基板上でコの字形状に配置することにより,接合部材100にコンデンサ31~33が搭載されてなる部材のy方向の体格の増大を抑制する技術。」 (3)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 ア(ア)引用発明の「インバータ装置」は,「高電圧電源3から電力線L1を介して供給される直流電力」を「3相の交流電力に変換」するものであるから,本件補正発明の「直流を交流に変換する電力変換用回路」に相当する。 (イ)引用発明の「制御装置2において利用される」「制御基板10」は,「低電圧系パターンが形成される領域A1と,高電圧系パターンが形成される領域A2とに分離されて」いるところ,このうちの「領域A2」には,「電力線L1を介して入力される高電圧に係る電力制御を行うための高電圧系パターン(高電圧用回路のパターン)」が「形成され」ていることから,「領域A2」には,「高電圧用回路」が“搭載され”ているものと認められる。 そして,引用発明の「インバータ装置」は,「制御装置2」内にあって,「電力線L1を介して供給される直流電力」を「3相の交流電力に変換」するものであるから,「領域A2」に“搭載され”た「高電圧用回路」に他ならない。 そうすると,引用発明の「領域A2」に「インバータ装置」が“搭載され”た「制御基板10」は,本件補正発明の「電力変換用回路が搭載された基板」に相当する。 (ウ)上記(ア)(イ)の検討から,引用発明の「制御基板10」は,本件補正発明の「直流を交流に変換する電力変換用回路が搭載された基板」に相当する。 イ(ア)引用発明の「低電圧用回路」には,「電力線L2を介して入力される低電圧」が“印加される”ものであるから,引用発明の「低電圧用回路」は,本件補正発明の「低電圧が印加される低電圧回路」に相当する。 また,引用発明の「高電圧用回路」は,「電力線L1を介して入力される高電圧」が“印加される”ものであるから,本件補正発明の「高電圧が印加される高電圧回路」に相当する。 (イ)引用発明の「低電圧系パターンが形成される領域A1と,高電圧系パターンが形成される領域A2」は,「制御基板10」における“同一の基板表面”の“異なる”領域であるから,本件補正発明の「同一の基板表面の異なるエリア」に相当し,引用発明の「低電圧用回路」と「高電圧用回路」は,「領域A1」と「領域A2」に“分かれて配置され”ている。 (ウ)したがって,引用発明の「制御基板10」と本件補正発明の「基板」とは,“低電圧が印加される低電圧回路と,高電圧が印加される高電圧回路と,が同一の基板表面の異なるエリアにそれぞれ分かれて配置され”ている点で一致する。 ウ 引用発明の「制御基板10」には,「高電圧用回路のグランドを,コンデンサを介して接地するための接地用ランド12a,12bが形成されており」,「前記接地用ランド12a,12bに接続されるコンデンサの数は,適宜増減することが可能であり」,「前記接地用ランド12a,12bは,複数のコンデンサを直列に接続するように設けられていてもよい」ものであるから,「複数のコンデンサ」が「直列に接続」されたものである場合には,引用発明の「高電圧用回路」は,「グランド」に接続され,“互いに直列接続された”「複数のコンデンサ」“素子”からなる“直列コンデンサ群”を“有して”いるといえる。 ここで,引用発明の「グランド」は,本件補正発明の「接地配線」に相当する。 また,引用発明の「制御基板10」には,「高電圧用回路のグランドを,コンデンサを介して接地するため」の“複数の”接地用ランド(接地用ランド12a及び接地用ランド12b)が形成されており,さらに,引用発明の「接地用ランド12a,12b」は,「制御基板の特質に応じて複数の箇所に設けられていてもよい」ものであるから,引用発明の「高電圧用回路」は,“複数の”「接地用ランド12a,12b」のそれぞれに接続される“複数の”“直列コンデンサ群”を有しているといえる。 したがって,引用発明と本件補正発明とは,後記する点で相違するものの,“高電圧回路は,接地配線に接続され,互いに直列接続された複数のコンデンサ素子からなる直列コンデンサ群を複数有する”点で共通しているといえる。 エ 上記アより,引用発明の「制御基板10」は,「直流を交流に変換する電力変換用回路が搭載された基板」であるから,本件補正発明の「電力変換用回路基板」に相当する。 オ したがって,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,相違している。 (一致点) 「直流を交流に変換する電力変換用回路が搭載された基板であって, 低電圧が印加される低電圧回路と,高電圧が印加される高電圧回路と,が同一の基板表面の異なるエリアにそれぞれ分かれて配置され, 前記高電圧回路は,接地配線に接続され,互いに直列接続された複数のコンデンサ素子からなる直列コンデンサ群を複数有する, 電力変換用回路基板。」 (相違点) 互いに直列接続された複数のコンデンサ素子が,本件補正発明では,「コの字形状を含む2次元的な配置パターン」を成すのに対して,引用発明では,そのような構成が特定されていない点。 (4)判断 ア 上記相違点について検討する。 例えば引用文献2に「直列接続された複数のコンデンサを基板上でコの字形状に配置することにより実装面積を大幅に縮小し得る技術。」(引用文献2記載技術)が記載され,引用文献3に「直列接続された3つのコンデンサ31~33を基板上でコの字形状に配置することにより,接合部材100にコンデンサ31~33が搭載されてなる部材のy方向の体格の増大を抑制する技術。」(引用文献3記載技術)が記載されているように,直列接続された複数のコンデンサを基板上でコの字形状に配置することで,実装面積を縮小したり,特定方向の体格の増大を抑制することは,当該技術分野における周知技術であると認められる。 そして,実装面積を縮小したり,特定方向の体格の増大を抑制したりすることは,基板に電子部品を実装するにあたって当業者が考慮すべき一般的な課題であることからすれば,引用発明において,基板上に実装される「直列接続された複数のコンデンサ」の実装面積を縮小し,また,特定方向の体格の増大を抑制するために,上記周知技術を適用し,複数のコンデンサをコの字形状を含む2次元的な配置パターンを成すように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 イ そして,本件補正発明の奏する作用効果は,引用発明及び引用文献2,3に記載の周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。 ウ したがって,本件補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.むすび 以上検討したとおり,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 令和3年7月16日にされた手続補正(本件補正)は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1ないし4に係る発明は,令和3年2月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記第2の[理由]1.(2)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2,3に記載の周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。 3.引用文献,引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明並びに引用文献2及び引用文献3の記載事項は,上記第2の[理由]2.(2)に記載したとおりである。 4.対比・判断 本願発明は,上記第2の[理由]2.で検討した本件補正発明から,上記補正事項1に係る限定を省いたものである。 そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,上記第2の[理由]2.(4)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4.審判請求人の主張について 1.審判請求人は審判請求書において以下の通り主張している。 (1)『詳述すると,補正後の本願請求項1に係る発明は,「各群間で設計者の意図しない容量のズレが生じる」という課題を「コの字形状を含む2次元的な配置パターン成す直列コンデンサ群を複数有する」構成により解決しておりますが,上記課題は,「2次元的な配置パターンの直列コンデンサ群」を「複数」設けることを実際に検討して初めて直面する課題であります。』(審判請求書第7頁下から5行~同頁末行) (2)『従って,コの字形状を含むパターン自体が(引用文献2又は3に示すように)公知であったとしても,<1>引用文献1に示唆がないにもかかわらず「互いに直列接続された複数のコンデンサ素子が2次元的な配置パターン成す直列コンデンサ群」に想到したうえで,<2>これを複数設けることに想到し,さらに,<3>浮遊容量の管理を容易にするために当該「コの字形状」を採用する,といったステップを経ることが当業者にとって容易であるとするのは,論理的飛躍があります。』(審判請求書第8頁18~24行) 2.上記主張について検討する。 (1)請求人の主張する『「各群間で設計者の意図しない容量のズレが生じる」という課題』や当該『課題』を『「コの字形状を含む2次元的な配置パターン成す直列コンデンサ群を複数有する」構成により解決』できることについて,本願明細書の発明の詳細な説明には何の説明もなく,「コの字形状を含む2次元的な配置パターン成す直列コンデンサ群を複数有する」構成とすることによって,どのような作用により,「各群間で設計者の意図しない容量のズレが生じる」という課題を解決することができるのかが全く不明であるから,明細書に記載されていない課題や当該課題を解決できることについて本願明細書に何ら説明されていない構成に基づく審判請求人の上記主張は採用することができない。 (2)引用文献1には,「複数のコンデンサを直列接続した直列コンデンサ群」を「複数」有することが記載されていて,これに引用文献2,3に記載の周知技術を適用して相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たことであることは,上記第2の2.(4)で判断したとおりである。 (3)したがって,審判請求人の審判請求書における上記主張はいずれも採用することができない。 第5.むすび 以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。

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2021-009517

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