特許拒絶査定不服審判
2023-000127
食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置
- 審判番号
- 2023-000127
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-083861
- 請求日
- 2023年01月05日
- 審決日
- 2023年10月24日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ZERO-FORM株式会社
- 【請求人代理人】南條 眞一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 吉田 美彦
- 審判官 須田 勝巳
- 審判官 稲垣 良一
- 分類
- P18 .121-WZ (H02M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018- 83861「食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月31日出願公開、特開2019-193433〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成30年4月25日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 4月26日 :手続補正書の提出
令和 4年 3月17日付け:拒絶理由通知
令和 4年 5月30日 :意見書、手続補正書の提出
令和 4年 9月21日付け:拒絶査定
令和 5年 1月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 5年 6月13日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 5年 8月21日 :意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~4に係る発明は、令和5年8月21日に提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】
食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置であって:
該食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置は、
高電圧変圧器を用いずに直流超高電圧を供給する電源回路、
前記電源回路の高電圧出力端子とGND端子との間に接続される高抵抗値の抵抗器を具えたことを特徴とする、食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置。
【請求項2】
前記抵抗器が、両端で電圧が測定可能である低抵抗値を有する第1の抵抗器と、前記第1の抵抗器に直列に接続された高抵抗値を有する第2の抵抗器とからなることを特徴とする、請求項1の食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置。
【請求項3】
高電圧変圧器を用いずに直流超高電圧を供給する第1の出力端子及び第2の出力端子を有する第1の高圧電源回路、及び
高電圧変圧器を用いずに直流超高電圧を供給する第3の出力端子及び第4の出力端子を有する第2の高圧電源回路からなり、
前記第1の出力端子と前記第3の出力端子が同一極性であり、
前記第2の出力端子と前記第4の出力端子が同一極性であり、
前記第2の出力端子と前記第3の出力端子との間に高抵抗値の抵抗器が接続され、
前記第1の出力端子と前記第4の出力端子から出力されることを特徴とする、請求項1又は請求項2の食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置。
【請求項4】
前記抵抗器が、両端で電圧が測定可能である低抵抗値を有する第1の抵抗器と、前記第1の抵抗器に直列に接続された高抵抗値を有する第2の抵抗器とからなることを特徴とする、請求項3の食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置。」
第3 当審における拒絶の理由
令和5年6月13日付けで当審が通知した拒絶理由は、概略次のとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特開昭62-297677号公報
引用文献2:特開2007-159350号公報
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
当審の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開昭62-297677号公報(昭和62年12月24日公開。以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。(なお、下線は強調のために当審で付したものである。以下、同様。)
(1)「産業上の利用分野
本発明は、産業用または家庭用食品保存装置に関するものであり、特に、食品の長期保存を可能ならしめる防腐防バイ効果の高い冷蔵庫等の食品保存装置に関するものである。」(第1頁左下欄19行~同頁右下欄3行)
(2)「従来の技術
従来、食品の長期保存の目的としては、冷蔵庫や冷凍庫が商品化され普及率も100%近くに達している。これらの基本原理は、食物を低温に保存しておくことにより、バクテリアやカビの増殖を防止することであり、食品の寿命を長くしたり、さらに食品の鮮度を保つ効果がある。
また、断熱構造の庫内を冷却する手段としては、冷媒とコンプレッサーを用いたヒートポンプ方式が主に用いられている。
一方、冷蔵保存の方法以外に、電場処理による保存効果をねらったものとして浅川効果(科学朝日,Jul.1984,P78)が知られている。」(第1頁右下欄4~16行)
(3)「発明が解決しようとする問題点
しかしながら、従来の冷蔵庫や冷凍庫は、庫内を低温にすることによりバクテリアやカビの発生をおさえ方式であり、保存効果を上げようとすればする程、庫内温度を下げねばならず、このためにはコンプレッサーを使用しているためエネルギー(電力)消費が大きくなる欠点があった。また、保存期間も冷蔵庫で数週間、冷凍庫で数ヶ月が限界であった。」(第1頁右下欄17行~第2頁左上欄5行)
(4)「問題点を解決するための手段
そこで、本発明は、冷蔵庫や冷凍庫のような食品保存装置において、より長期間カビやバクテリアの発生を防止し、生鮮食品の鮮度を保ち、さらに、調理穀物類のベータデンプンからアルファデンプンへの転化を促進し味を良くする目的で、食品保存容器、たとえば冷凍庫や冷蔵庫内のたとえば食品受け棚を高圧電場形成用電極として用い、前記電極に高圧の直流又は交流の高圧電場を印加できる機能を付加することにより、保存中の食品に高圧電場が印加できる装置を提供するものである。」(第2頁左上欄6~17行)
(5)「作用
水を含む物質に高電圧の電場を数分程度印加すると、室温保存でも電場をかけた物質におけるカビの発生をおよそ1ヶ月間防止できたり、野菜が果物の水分蒸発を抑制したり、デンプンを含むイモ類や穀類のベータデンプンをアルファデンプンへ転化を促進することが浅川勇吉氏により確認されている。すなわち、食品類を任意に高圧電場処理できる冷蔵庫や冷凍庫を提供することにより食品類の長期保存を可能としたり、味を改良する作用が生じる。」(第2頁左上欄18行~同頁右上欄8行)
(6)「実施例
本発明の実施例を図を用いて説明する。たとえば、図に示すような、庫内に食品用棚を有し、コンプレッサーと吸熱板を備えた冷凍冷蔵庫1において、食品用棚を高圧電場形成用電極として用い、外部キョウ体2および前記棚の一部3をアース電位とし、残りの食品用の棚4を○+(当審注:原文の「丸付きの+記号」を「○+」と表記する。以下、同様。)または○-(当審注:原文の「丸付きの-記号」を「○-」と表記する。以下、同様。)電位にして高圧電源5より高圧直流電圧を印加できる構成の冷凍冷蔵庫を製造する。第1図中、複数の棚は、交互に電位が反転するように電源と結線し、高圧電場処理が容易に行なえる構造としている。
なお、このとき、電場処理時間を調整するための間欠タイマーを付加しても良い。また、ドアを閉める毎に一定時間電場場が印加される構造を採用しても良い。さらにまた、棚4を電極として用いないで専用電極を取り付けたり、ドアと庫内奥との間に電場を印加できる構造を採用しても良い。さらにまた、ドアの棚6にも同様に電極を備えておいた方が良い。一方、高圧電源は、キョウ体と一体構造の方が良い。
ただし、使用上の安全を考慮して、電源には、電流制限機構を付加しておく必要がある。また、生鮮食料品の場合電場処理効果は5kV/cm程度以上あれば交流でも効果があるが、直流の方がより大きな効果が得られる。さらにまた、直流に交流を重乗させればより大きな効果的である。」(第2頁右上欄9行~同頁左下欄15行)
(7)「発明の効果
本発明の食品保存装置を提供することにより、それ程低温に保たなくても保存食品の寿命を効率良く大幅に延長でき、さらに、味を良くする効果も生じる。すなわち、電場処理機構により食品の腐敗やカビの発生を防止し、鮮度を保ち、ベータデンプンからアルファデンプンへの転化を促進し穀物やイモ類の味をよくする効果があり、生活上効果大なるものがある。また、間接的に食中毒の発生を低減できる効果もある。」(第2頁左下欄16行~同頁右下欄5行)
(8)「図面
[図:0001421679000001.jpg]
」
2 引用発明
引用文献1に記載された事項について検討する。
(1)上記1(6)の「図に示すような、庫内に食品用棚を有し、コンプレッサーと吸熱板を備えた冷凍冷蔵庫1において、食品用棚を高圧電場形成用電極として用い、外部キョウ体2および前記棚の一部3をアース電位とし、残りの食品用の棚4を○+または○-電位にして高圧電源5より高圧直流電圧を印加できる構成の冷凍冷蔵庫」との記載、及び上記1(8)の図面の記載から、引用文献1には、“庫内に食品用棚を有し”、“食品用棚を高圧電場形成用電極として用い、外部キョウ体2および前記棚の一部3をアース電位とし、残りの食品用の棚4を○+または○-電位に”する“冷凍冷蔵庫1”が記載されていると認められる。
(2)上記1(4)の「冷凍庫や冷蔵庫内のたとえば食品受け棚を高圧電場形成用電極として用い、前記電極に高圧の直流又は交流の高圧電場を印加できる機能を付加する」との記載、及び上記1(5)の「食品類を任意に高圧電場処理できる冷蔵庫や冷凍庫を提供する」との記載から、引用文献1の「冷凍冷蔵庫」は、“庫内の食品を高圧電場処理できる”ものである。
(3)上記(1)及び(2)より、引用文献1には、“庫内に食品用棚を有し、前記食品用棚を高圧電場形成用電極として用い、外部キョウ体2および前記棚の一部3をアース電位とし、残りの食品用の棚4を○+または○-電位にして庫内の食品を高圧電場処理できる冷凍冷蔵庫1”が記載されているといえる。
(4)上記1(6)の「高圧電源5より高圧直流電圧を印加できる構成の冷凍冷蔵庫」との記載から、「高圧電源5」は、「冷凍冷蔵庫」に「高圧直流電圧を印加できる」ものである。
また、上記1(6)の「生鮮食料品の場合電場処理効果は5kV/cm程度以上あれば交流でも効果があるが、直流の方がより大きな効果が得られる」との記載から、引用文献1の「高圧直流電圧」は、「5kV/cm程度」が想定されているものである。
そうすると、引用文献1には、“冷凍冷蔵庫に5kV/cm程度の高圧直流電圧を印加できる高圧電源5”が記載されているといえる。
(5)まとめ
上記(1)~(4)の検討から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
庫内に食品用棚を有し、前記食品用棚を高圧電場形成用電極として用い、外部キョウ体2および前記棚の一部3をアース電位とし、残りの食品用の棚4を○+または○-電位にして庫内の食品を高圧電場処理できる冷凍冷蔵庫1に5kV/cm程度の高圧直流電圧を印加できる高圧電源5。
3 引用文献2の記載事項
当審の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2007-159350号公報(平成19年6月21日公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、数キロボルトないし数メガボルトの高電圧を発生する高電圧発生方法、及びその装置に関するものであり、更に詳しくは、高真空場を絶縁体(空間)として利用した高電圧発生方法、その高電圧発生装置、及び該装置を高電圧発生部として利用した機器に関するものである。
【0002】
本発明は、高真空場を絶縁体(空間)として利用することにより、高電圧発生装置のコンパクト化、低コスト化を実現するとともに、それにより、例えば、高電圧を必要とする、高エネルギーの電子ビームやイオンビームを発生するための荷電粒子加速器、イオン工学的手法をベースとした成膜装置、電子顕微鏡、及び分析機器類等の機器のコンパクト化、低コスト化を実現することを可能とする高電圧発生手段に関する新技術・新製品を提供するものである。」
(2)「【0022】
図1に示すコッククロフトウォルトン型高電圧発生回路は、RFトランスとRF発振器からなるRF電源を有し、そのトランスの1対の出力端子のそれぞれに互いに並列の2群の縦続回路を形成するようにn段階で直列に接続されているコンデンサC1~Cn-1の回路と、コンデンサC2~Cnの回路と、このコンデンサの両回路同士で互いに1対の接点間を、順次交互に接続する整流素子D1~Dnから構成される回路からなる。このコッククロフトウォルトン回路では、充電用のトランスの出力電圧ピーク値の2N倍の直流電圧が発生する。」
(3)「【0030】
(図1の符号)
C1~Cn:コンデンサ
D1~Dn:整流器
Rh:高電圧測定用高抵抗
Rm:電圧測定用抵抗
Vin:駆動電圧
Vh:出力電圧
A:電流計
V:電圧計
(図2の符号)
C1~C20:コンデンサ
D1~D20:ダイオード」
(4)「【図1】
[図:0001421679000002.jpg]
」
(5)上記(1)、(2)、(4)によれば、引用文献2には次の事項(以下、「引用文献2記載事項1」という。)が記載されているといえる。
「荷電粒子加速器、電子顕微鏡、分析機器類等の高電圧を必要とする機器に用いられるコッククロフトウォルトン型高電圧発生回路は、RFトランスとRF発振器からなるRF電源、複数のコンデンサ、及び複数の整流素子を用いて直流高電圧を発生させること。」
(6)上記(4)の図1の記載から、「電圧測定用抵抗の両端電圧を電圧計で測定する」ことが読み取れる。
そうすると、上記(1)~(4)の記載から、引用文献2には次の事項(以下、「引用文献2記載事項2」という。)が記載されているといえる。
「コッククロフトウォルトン型高電圧発生回路の出力端子と接地電位との間に高電圧測定用高抵抗と電圧測定用抵抗を直列に接続し、電圧測定用抵抗の両端電圧を測定すること。」
4 引用文献3の記載事項
当審の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-073286号公報(平成26年4月24日公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0020】
図2を用いて中性点接地型X線管装置用の高電圧発生装置111について説明する。中性点接地型X線管装置とは、接地電位にある真空外囲器の中に陽極と陰極が配置され、陽極と陰極に絶対値の等しい正負の電位がそれぞれ印加されるX線管装置である。例えば、管電圧が150kVの場合、陽極には75kV、陰極には-75kVが印加される。」
(2)「【0026】
図3を用いて管電圧及び管電流の計測回路の一例について説明する。図3に示した計測回路は、分圧抵抗301と管電圧計測抵抗302と管電流計測抵抗303と中性点電流計測抵抗304とを備えている。
【0027】
分圧抵抗301と管電圧計測抵抗302は直列に接続され、分圧回路を構成する抵抗である。分圧抵抗301と管電圧計測抵抗302の接続点には管電圧を計測するための計測端子Vc、Vaが接続される。分圧回路は、X線管装置101の一方の電極と接地電位に対して、並列に接続される。計測端子Vc、Vaには管電圧に比例した値が出力される。なお、Vcには負の値が、Vaには正の値が出力される。例えば、分圧抵抗301が300MΩ、管電圧計測抵抗302が3Ωであるとすると、X線管装置101の陽極と陰極にそれぞれ75kVと-75kVが印加されたとき、計測端子Vaには約0.75mV(約75kV・3Ω/(300MΩ+3Ω))が、Vcには約-0.75mVが出力される。また分圧回路の抵抗値(300MΩ+3Ω)がX線管装置101の負荷(150kΩ~10MΩ)の30倍以上となるので、分圧回路がX線管装置101の管電流に与える影響は十分に小さい。」
(3)「【図3】
[図:0001421679000003.jpg]
」
(4)上記(1)~(3)によれば、引用文献3には次の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されているといえる。
「高電圧発生装置の出力端子と接地電位との間に300MΩの分圧抵抗と3Ωの管電圧計測抵抗を直列に接続し、3Ωの管電圧計測抵抗の両端電圧を計測して出力すること。」
5 参考文献1の記載事項
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開昭64-5368号公報(昭和64年1月10日公開。以下、「参考文献1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、あるタイミング信号により高抵抗から低抵抗に変化するような負荷、例えば、キセノンフラッシュランプ等に瞬間的に高電圧の直流を通電させる電源装置に係り、特に、一次側低電圧交流を負荷側で高電圧直流に変換する形式のこの種電源装置に関する。」(第1頁右下欄2~8行)
(2)「〔従来の技術〕
一次側低電圧交流を負荷側で高電圧直流に変換する形式の電源装置に関する従来技術として、例えば、「高電圧工学 第90,91頁」(電気学会発行)に記載されたコツククロフト・ウオルトン回路と呼ばれる回路が知られている。」(第1頁右下欄9~14行)
(3)「第1図は本発明の一実施例を示す電源装置と負荷の回路図である。第1図において、1はコツククロフト・ウオルトン回路,2はスイッチ,3は一次側低電圧交流電源,4は充電用コンデンサ,5はスイッチ開閉制御回路,6はキセノンフラッシュランプ,7は発光トリガ回路,8は制限抵抗である。
本発明の一実施例は、あるタイミングで高抵抗から低抵抗に変化する負荷として、キセノンフラッシュランプ6が用いられ、この負荷に印加する直流電圧を発生するために、一次側低電圧交流電源3の電圧を整流昇圧するコツククロフト・ウオルトン回路1が用いられる。(中略)
前述の構成において、一次側低電圧交流電源3の交流電圧は、コツククロフト・ウオルトン回路1により整流昇圧され、充電用コンデンサ4に充電される。このとき、スイッチ2は、閉状態に保持されているものとする。この状態で、充電用コンデンサ4の充電々圧は、制限抵抗8と充電用コンデンサ4の容量とによる時定数に従って、徐々に増加し、最大で一次側低電圧交流電源3の交流電圧のピーク値の3倍となる。なお、この実施例では、制限抵抗8の抵抗値は一定である。スイッチ開閉制御回路5は、充電用コンデンサ4の電圧を監視し、この充電々圧が予め本発明の実施例に定められた値を越えるとスイッチ2を開くように作用する。この値は、零から一次側低電圧交流電源3の交流電圧のピーク値の3倍までの間に設定することが可能である。従って、充電用コンデンサ4の充電々圧は、この設定電圧値に保持されることになる。
その後、発光トリガ回路7よりキセノンフラッシュランプ6の発光のためのトリガ信号が出力されると、これにより、キセノンフラッシュランプ6の電極間抵抗が高抵抗から低抵抗に変化し、充電用コンデンサ4に充電されていた電荷が、キセノンフラッシュランプ6に流れ、キセノンフラッシュランプ6が発光する。」(第2頁左下欄9行~第3頁左上欄12行)
(4)「第1図
[図:0001421679000004.jpg]
」
(5)上記(1)~(4)によれば、参考文献1には次の事項(以下、「参考文献1記載事項」という。)が記載されているといえる。
「キセノンフラッシュランプを発光させるために用いられるコツククロフト・ウオルトン回路は、抵抗、複数のコンデンサ、及び複数のダイオードによって高電圧直流を発生させること。」
6 参考文献2の記載事項
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2000-157162号公報(平成12年6月13日公開。以下、「参考文献2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主として収穫された野菜や果実類等の食用農産物の鮮度保持および/または追熟処理する場合に用いられる食用農産物の処理装置に関するものである。」
(2)「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。図1は本発明に係る食用農産物の処理装置の概略構成図であり、該処理装置は大別して、単発パルス状磁場発生電源7と、円筒形で食用農産物Aをほぼ同軸上に収納保持可能な形態に構成された磁場発生コイル6と、両者6,7を電気的に断続するスイッチ8とからなる。
【0016】図2は上記単発パルス状磁場発生電源7のブロック回路図の一例、図3はそれの具体的な回路構成図の一例である。この単発パルス状磁場発生電源7は、サイリスタによる双方向位相制御方式の入力部1aおよび絶縁トランス1bを有する電力可変型AC入力部1と、多数直列に接続された耐電圧の高い整流器(たとえばシリコン整流体のような半導体整流器)Grの接続点に一つおきに各側にコンデンサCを直列に積み重ねて最終段でnE(n:整流器及びコンデンサの数、E:入力トランス部の二次側高電圧)の直流電圧を発生させるようになされたコッククロフト・ウォルトン回路からなる直流高電圧発生回路2と、複数のコンデンサCとスイッチSWとからなるコンデンサ充放電回路3と、サイリスタSCRを用いたスイッチ回路4と、ダイオードDを用いて正の波形を出力する正クランプ回路からなるクローバー回路5とを備えている。このようなコンデンサ蓄勢方式単発パルス状磁場発生電源7の使用によって、上記コイル6の中心軸上には、図4に示すような波形を持つ単一極性で、強大な磁場強度を持つ単発パルス状磁場(磁界)Puが発生されるように構成されている。」
(3)「【図1】
[図:0001421679000005.jpg]
」
(4)「【図2】
[図:0001421679000006.jpg]
」
(5)「【図3】
[図:0001421679000007.jpg]
」
(6)上記(1)~(5)によれば、参考文献2には次の事項(以下、「参考文献2記載事項」という。)が記載されているといえる。
「野菜や果実類等の食用農産物の鮮度保持や追熟処理に用いられる食用農産物の処理装置に用いられるコッククロフト・ウォルトン回路は、複数の整流器(たとえばシリコン整流体のような半導体整流器)及び複数のコンデンサを用いて直流高電圧を発生させること。」
7 参考文献3の記載事項
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった登録実用新案第3165507号公報(平成23年1月27日公報発行。以下、「参考文献3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本考案は、食用油の酸化抑制のためのマイナス直流電位電極板を備えた大型自動フライヤーに係わり、特に2つの油槽を備える大型自動フライヤー及び大型自動フライヤーの食用油酸化抑制装置に関する。」
(2)「【0017】
(第1の実施形態)
<2つの油槽を備える大型自動フライヤーの構成>
図1~図5を参照して2つの油槽を備える大型自動フライヤー1の構成を説明する。図1は、本考案の第1の実施形態に係る2つの油槽を備える大型自動フライヤー1を示す図である。図1(a)は2つの油槽を備える大型自動フライヤー1の側面図であり、図1(b)は大型自動フライヤー1の第1の油槽のA-A断面図であり、図1(c)は大型自動フライヤーの第2の油槽のB-B断面図である。(中略)
【0018】
2つの油槽を備える大型自動フライヤー1の第1の油槽2は、食材搬送コンベア3と食材押さえコンベア4と加熱ヒータ5とマイナス直流電位発生回路6と電極取付部材一体型絶縁ケーブル7とマイナス直流電位電極板8と絶縁体9と投入口11とを備えて構成される。」
(3)「【0023】
マイナス直流電位発生回路6は、100V交流電源から食用油に印加するためのマイナス直流電位を発生するものである。本実施形態のマイナス直流電位発生回路6は、-1KV~-80KVを発生することができるものであり、電流値は、例えば-120KVで248μAである。マイナス直流電位発生回路6は、出力調整用の電圧可変コントロールスイッチが設けられており、最適な電位を設定できるようになっている。なおマイナス直流電位発生器6の電圧を-1KV~-80KVの範囲で適切に設定することが望ましい。本実施形態において、食用油に印加するマイナス直流電位は、-4000~-12000Vである。また本実施形態では、マイナス直流電位発生回路6は大型自動フライヤー1の第1の油槽2外側の側面に配置されているが、マイナス直流電位発生器6Aとして単独の装置とすることも可能である。
【0024】
なお、マイナス直流電位発生回路6は公知の方法が適用可能である。例えば、図8に示すような、コッククロフト・ウォルトン回路などがある。コッククロフト・ウォルトン回路とは、高圧電源を得るために使用される整流回路(rectifier)の一種であり、コッククロフト・ウォルトン回路は、コンデンサとダイオード ダイオードを多段式に組み合わせることによって、直流あるいは交流の電源を高電圧の交流電源へ変換できるものである。トランスの端子電圧を高くすればするほど、より高い電圧を得ることができるが、高電圧を得るためには、トランス内部での耐圧を確保するための構造が複雑になり、また整流ダイオードも耐圧性の高いものを用意する必要がある。」
(4)「【図1】
[図:0001421679000008.jpg]
」
(5)「【図8】
[図:0001421679000009.jpg]
」
(6)上記(1)~(5)によれば、参考文献3には次の事項(以下、「参考文献3記載事項」という。)が記載されているといえる。
「食用油の酸化抑制のためのマイナス直流電位電極板を備えた大型自動フライヤーに用いられるコッククロフト・ウォルトン回路は、コンデンサとダイオードを多段式に組み合わせることによって、-1KV~-80KVのマイナス直流電位を発生させること。」
8 参考文献4の記載事項
本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2012-186885号公報(平成24年9月27日公開。以下、「参考文献4」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、農業用に高電圧の電気的刺激を与えるのに適した高電圧印加装置に関するものである。」
(2)「【0015】
本発明の第1の実施の形態に係る高電圧印加装置1を、図面にしたがって説明する。
図1に示すように、高電圧印加装置1は、高電圧発生部3、高電圧コントローラ33、高電圧パルス印加部41とから主になっており、装置本体内に高電圧発生部3と高電圧コントローラ33が格納されている。高電圧パルス印加部41には手持ち部43が一体に取り付けられて手動による印加作業が可能となっている。
図2に示すように、高電圧発生部3は低電圧ケーブルXを介して高電圧コントローラ33と接続され、高電圧ケーブルYを介して高電圧パルス印加部41と接続されている。
【0016】
高電圧発生部3は、図1に示すように、設置型ハウジング5で構成され、内部が収容空間となっている。その内部空間に、ユニット化された正極方向に帯電させる正極の高電圧発生装置7と、被印加体(O)を負極方向に帯電させる負極の高電圧発生装置7’と、調整用のコンデンサ8とがそれぞれ出し入れ自在に収容されている。
【0017】
図3に示すのは、正極の高電圧発生装置7であり、入力側には複数の端子9(9a~9g)を有するメタルコネクタ10が備えられている。その右側には昇圧変圧器11が配置されており、昇圧変圧器11の右側にはコッククロフトウォルトン回路13が配置されている。コッククロフトウォルトン回路13は複数のコンデンサ15と複数のダイオード17とから成っている。コッククロフトウォルトン回路13の右側には出力用抵抗19が配置されており、出力用抵抗19の右側には出力端21が配置されている。昇圧変圧器11、コッククロフトウォルトン回路13の下側にはブリーダ抵抗23、25、保護抵抗27が配置されている。符号29は温度センサを示し、この温度センサ29は昇圧変圧器11の近傍に配置されている。」
(3)「【図1】
[図:0001421679000010.jpg]
」
(4)「【図2】
[図:0001421679000011.jpg]
」
(5)「【図3】
[図:0001421679000012.jpg]
」
(6)上記(1)~(5)によれば、参考文献4には次の事項(以下、「参考文献4記載事項」という。)が記載されているといえる。
「農業用に高電圧の電気的刺激を与えるのに適した高電圧印加装置に用いられるコッククロフトウォルトン回路は、複数のコンデンサと複数のダイオードによって高電圧を発生させること。」
第5 対比
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「冷凍冷蔵庫1」は、「庫内に食品用棚を有し、前記食品用棚を高圧電場形成用電極として用い、外部キョウ体2および前記棚の一部3をアース電位とし、残りの食品用の棚4を○+または○-電位にして庫内の食品を高圧電場処理できる」装置であるから、本願発明の「食品電場処理装置」に相当する。
(2)引用発明の「5kV/cm程度の高圧直流電圧」は、本願発明の「直流超高電圧」に相当するといえるから、上記(1)の点を踏まえると、引用発明の「冷凍冷蔵庫1に5kV/cm程度の高圧直流電圧を印加できる高圧電源5」は、本願発明の「食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置」に対応する。
(3)引用発明の「高圧電源5」は、「冷凍冷蔵庫1に5kV/cm程度の高圧直流電圧を印加できる」装置であるから、上記(2)の点を踏まえると“直流超高電圧を供給する電源回路”を具えているといえる。
そうすると、引用発明の「冷凍冷蔵庫1に5kV/cm程度の高圧直流電圧を印加できる高圧電源5」と本願発明の「高電圧変圧器を用いずに直流超高電圧を供給する電源回路」「を具えた」「食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置」とは、後記する点で相違するものの、“直流超高電圧を供給する電源回路を具えた食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置”である点で共通する。
(4)まとめ
上記(1)~(3)の検討から、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次の通りである。
<一致点>
食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置であって:
該食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置は、
直流超高電圧を供給する電源回路
を具えた食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置。
<相違点1>
本願発明の電源回路は、「高電圧変圧器を用いずに」直流超高電圧を供給するのに対して、引用発明の「高圧電源5」が具える“電源回路”は、直流超高電圧を供給するものの、「高電圧変圧器を用いずに」直流超高電圧を供給するか否かは明らかでない点。
<相違点2>
本願発明の食品電場処理装置用直流超高電圧電源装置は、「前記電源回路の高電圧出力端子とGND端子との間に接続される高抵抗値の抵抗器」を具えているのに対して、引用発明の「高圧電源5」は、そのような構成を具えていない点。
第6 判断
上記相違点について検討する。
1 相違点1について
例えば引用文献2には、「荷電粒子加速器、電子顕微鏡、分析機器類等の高電圧を必要とする機器に用いられるコッククロフトウォルトン型高電圧発生回路は、RFトランスとRF発振器からなるRF電源、複数のコンデンサ、及び複数の整流素子を用いて直流高電圧を発生させること。」(引用文献2記載事項1)が記載され、また、参考文献1には、「キセノンフラッシュランプを発光させるために用いられるコツククロフト・ウオルトン回路は、抵抗、複数のコンデンサ、及び複数のダイオードによって高電圧直流を発生させること。」(参考文献1記載事項)が記載され、また、参考文献2には、「野菜や果実類等の食用農産物の鮮度保持や追熟処理に用いられる食用農産物の処理装置に用いられるコッククロフト・ウォルトン回路は、複数の整流器(たとえばシリコン整流体のような半導体整流器)及び複数のコンデンサを用いて直流高電圧を発生させること。」(参考文献2記載事項)が記載され、また、参考文献3には、「食用油の酸化抑制のためのマイナス直流電位電極板を備えた大型自動フライヤーに用いられるコッククロフト・ウォルトン回路は、コンデンサとダイオードを多段式に組み合わせることによって、-1KV~-80KVのマイナス直流電位を発生させること。」(参考文献3記載事項)が記載され、また、参考文献4には、「農業用に高電圧の電気的刺激を与えるのに適した高電圧印加装置に用いられるコッククロフトウォルトン回路は、複数のコンデンサと複数のダイオードによって高電圧を発生させること。」(参考文献4記載事項)が記載されており、これらの記載からすると、直流高電圧を発生させるための電源回路としてコッククロフトウォルトン回路を用いることは周知技術であり、当該コッククロフトウォルトン回路は、直流高電圧を必要とする様々な分野において用いることができるものと認められる。
そして、上記引用文献2記載事項1、及び参考文献1~4の記載事項から明らかなとおり、コッククロフトウォルトン回路は、直流高電圧を発生させる際に、“高電圧変圧器”を用いるものではない。
そうすると、引用発明の「高圧電源5」の直流高電圧を発生させる電源回路として、直流高電圧を必要とする様々な分野において用いることができる周知のコッククロフトウォルトン回路を採用し、“電源回路”を、「高電圧変圧器を用いずに」直流超高電圧を供給する構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
2 相違点2について
請求項2は、請求項1を引用し、請求項1の発明特定事項である「抵抗器」について、「前記抵抗器が、両端で電圧が測定可能である低抵抗値を有する抵抗器と、高抵抗値を有する抵抗器とからなること」に限定するものであることからすると、請求項1の「高抵抗値の抵抗器」は、「高抵抗値の(単一の)抵抗器」の構成(以下、これを「構成A」という。)のほかに、請求項2の「両端で電圧が測定可能である低抵抗値を有する抵抗器と、高抵抗値を有する抵抗器とからなる」抵抗器(電圧測定を目的として高抵抗値の抵抗器と低抵抗値の抵抗器が直列接続された抵抗器)の構成(以下、これを「構成B」という。)を含むものである。
そこで、請求項1に含まれる構成Aと構成Bのうち、構成Bについて以下判断する。
例えば引用文献2には、「コッククロフトウォルトン型高電圧発生回路の出力端子と接地電位との間に高電圧測定用高抵抗と電圧測定用抵抗を直列に接続し、電圧測定用抵抗の両端電圧を測定すること。」(引用文献2記載事項2)が記載され、また、引用文献3には、「高電圧発生装置の出力端子と接地電位との間に300MΩの分圧抵抗と3Ωの管電圧計測抵抗を直列に接続し、3Ωの管電圧計測抵抗の両端電圧を計測して出力すること。」(引用文献3記載事項)が記載されているように、直流高電圧を発生させる電源回路の高電圧出力端子とGND端子との間に、高抵抗値の抵抗器と低抵抗値の抵抗器の直列回路を接続し、低抵抗値の両端の電圧を測定することで直流高電圧の値を求めることは、当該技術分野における周知技術であると認められる。
そして、高電圧を発生する装置において、所期の電圧が発生されているかを測定して確認できるようにすることは一般的な課題であるから、引用発明の高圧電源5にも同様の課題が内在する。
そうすると、引用発明において、直流高電圧を発生させる電源回路の出力電圧を測定して確認できるようにするために、高電圧出力端子とGND端子との間に高抵抗値の抵抗器と低抵抗値の抵抗器の直列回路を接続し、その結果として、高電圧出力端子とGND端子との間に(高抵抗値の抵抗器と低抵抗値の抵抗器の直列回路からなる)高抵抗値の抵抗器が接続されるような構成(構成B)とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
3 作用効果について
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
4 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 請求人の主張について
1 請求人は令和5年8月21日提出の意見書において以下のように主張している。
(1)「ある技術分野において特定の技術が周知技術であるとするためには、複数の先行技術を摘示するか、先行技術が数多存在することを説明する必要があります。
コッククロフトウォルトン型高電圧発生回路を使用することは引用文献2第1頁の[要約][課題]に例示されている荷電粒子加速や成膜装置のような、科学研究分野や工業分野では周知ですが、食品電場処理装置のような民生品分野では全く使用例がありません。したがって、食品電場処理装置のような民生品分野ではコッククロフトウォルトン型高電圧発生回路を使用することが周知であるとすることはできません。
また、拒絶理由で摘示されたコッククロフトウォルトン型高電圧発生回路は僅かに1例のみです。
食品電場処理装置にコッククロフトウォルトン型高電圧発生回路を採用することが周知であるというためには、コッククロフトウォルトン型高電圧発生回路を採用した食品電場処理装置が先行技術として数例示される必要があります。
食品電場処理装置の当業者が科学研究分野等のみで使用されているコッククロフトウォルトン型高電圧発生装置を食品電場処理装置に採用することはあり得ません。現に、引用文献1の発明が1986年になされ、引用文献2の発明が2005年になされていたにもかかわらず、本願発明がなされた2018年に至るまで、このような構成が存在していないということが、コッククロフトウォルトン型高電圧発生装置が食品電場処理装置の分野で周知ではないことを物語っています。
科学研究分野等のみで使用されている技術を、全く無関係な食品電場処理装置で利用することが容易であるとするのは、後知恵といえます。
したがって、引用文献1及び引用文献2に記載された発明から当業者が請求項1に係る発明の構成を容易に得ることはできません。」
(2)「次に、請求項1の発明における、電源回路の高電圧出力端子とGND端子との間に接続された高抵抗値の抵抗器は、感電防止のためのものです。本件出願の実施例においては明細書図3(a)のR100M及び図4(a)のR200Mでは、感電防止のために設けられています。
高電圧が印加される部分が露出しており、機器の操作者が非熟練者であることが多い食品電場処理装置においては感電防止は重要なことです。
これに対して、引用文献2に例示されている荷電粒子加速や成膜装置のような、科学研究分野や工業分野では、高電圧電源や高電圧が印加される部分は筐体内に格納されており、機器の操作者は熟練者ですから感電防止対策は重要なことではありません。
現に、引用文献2には感電防止対策について片言隻句述べられていません。」
2 上記主張について検討する。
(1)の主張について
上記第6の1で検討したとおり、コッククロフトウォルトン回路は、科学研究分野や工業分野に限らず、キセノンフラッシュランプを発光させる用途、野菜や果実類等の食用農産物の鮮度保持や追熟処理に用いられる食用農産物の処理装置の用途、食用油の酸化抑制のためのマイナス直流電位電極板を備えた大型自動フライヤーの用途、農業用に高電圧の電気的刺激を与えるのに適した高電圧印加装置の用途などの様々な用途において広く利用されている周知技術である。
そうすると、これと異なる請求人の「コッククロフトウォルトン型高電圧発生回路を使用することは引用文献2第1頁の[要約][課題]に例示されている荷電粒子加速や成膜装置のような、科学研究分野や工業分野では周知ですが、食品電場処理装置のような民生品分野では全く使用例がありません。したがって、食品電場処理装置のような民生品分野ではコッククロフトウォルトン型高電圧発生回路を使用することが周知であるとすることはできません。」との主張は妥当なものとはいえず、これを採用することはできない。
(2)の主張について
上記第6の2で説示したとおり、請求項1の「高抵抗値の抵抗器」は、「高抵抗値の(単一の)抵抗器」(構成A)と、「電圧測定を目的として高抵抗値の抵抗器と低抵抗値の抵抗器が直列接続された抵抗器」(構成B)を含むものであるところ、令和5年6月13日付けの拒絶理由通知では、構成Bについて、当業者が容易に想到し得たと判断したものである。
これに対して、請求人の「次に、請求項1の発明における、電源回路の高電圧出力端子とGND端子との間に接続された高抵抗値の抵抗器は、感電防止のためのものです。本件出願の実施例においては明細書図3(a)のR100M及び図4(a)のR200Mでは、感電防止のために設けられています。」との主張は、「高抵抗値の(単一の)抵抗器」(構成A)に基づく主張であって、構成Bについての容易性の判断に対する反論となっていない。
そうすると、請求人の上記(2)の主張は、上記拒絶理由通知及び上記第6の2における構成Bについての容易性の判断を左右するものではない。
第8 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-000127