2021-008698
赤色発光燐光体を有するコアシェル材料
- 審判番号
- 2021-008698
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-507950外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年07月01日
- 審決日
- 2022年08月18日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
- 【請求人代理人】市位 嘉宏
- 分類
- P18 .121-Z (C09K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)9月15日を国際出願日とする出願であって、令和2年3月2日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内(2月延長)である同年8月28日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年2月26日付けで拒絶査定され(謄本の発送は3月2日)、これに対し、同年7月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。
第2 本件補正の適否と本願発明について
1.本件補正の適否について
本件補正は、令和2年8月28日提出の手続補正書により補正された(以下「本件補正前」という。)特許請求の範囲の請求項1~22のうち、本件補正前の請求項1~15及び17~22を削除するとともに、本件補正前の請求項16を請求項1にしたものである。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項1号に掲げる、同法36条5項に規定する請求項の削除を目的とする補正であるから、本件補正は適法になされたものである。
2.本願発明について
上記1.のとおり、本件補正は適法になされたものであるから、本願の請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】コーティングされた燐光体(22、122、222)を調製する方法であって、HF溶液中で特定の形態の燐光体材料(22、122、222)の懸濁液を、Mn4+、A+、およびMの源に接触させて、式IAx[MFy]:Mn4+続きを表示(全14行)Iの第1の燐光体(22、122、222)を含み、第2の燐光体(22、122、222)を含むコアに直接配置されたシェル(18)を有するコーティングされた燐光体(22、122、222)であって、前記第2の燐光体(22、122、222)は、式Iまたは式IIAx[MFy]IIの化合物以外の材料であり、Aは、出現ごとに独立して、Li、Na、K、Rb、Cs、またはこれらの組合せである;Mは、出現ごとに独立して、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Hf、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはこれらの組合せであり;xは、前記[MFy]イオンの電荷の絶対値であり;yは、5、6、または7であるコーティングされた燐光体(22、122、222)を形成するステップを含み、前記コーティングされた燐光体(22、122、222)を高温でガス状形態のフッ素含有酸化剤と接触させるステップをさらに含む方法。」
なお、上記請求項1の「シェル(18)」は、本願発明で調製される「コーティングされた燐光体」の「シェル」であって、本願明細書の【0020】の「照明器具10」の「シェル18」とは異なるものであることが明らかであるから、「シェル(18)」は「シェル」と解して、判断を行った。
第3 原査定の理由の概要
原査定の理由は、令和2年3月2日付け拒絶理由通知書に記載された理由2であって、要するに、上記本願発明は、下記の引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
記
第4 当審の判断
当審は、令和3年7月1日提出の審判請求書を斟酌しても、上記した原査定の拒絶の理由が依然として妥当すると判断する。
その理由は以下のとおりである。
1.引用文献の記載事項
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(1)引用文献1:米国特許出願公開第2016/0281962号明細書
原査定で引用された本願出願前に頒布された引用文献1には、次の記載がある。なお、摘記事項の後ろに当審の仮訳を掲載した。
(1a)「1. A core-shell fluorescent material for generating an emitting light with a peak wavelength within 520 and 800 nm after being excited by ultraviolet light and visible light within 370 and 500 nm, comprising:
a core comprising yellow, green or red fluorescent powder; and
a shell coated on the core and comprising manganese (IV)-doped fluoride compound specified by a chemical formula AxMF6-yZy:Mn4+,
wherein A is selected from Li, Na, K, Rb, Cs, Mg, Ca, Sr, Ba, or combinations thereof, M is selected from Si, Ge, Sn, Ti, Zr, Al, Ga, In, Sc, Y, La, Nb, Ta, Bi, Gd, or combinations thereof, F is the fluorine element, Z is the halogen element comprising at least one of Cl, Br, I, or combinations thereof, 0<x≦2, 0≦y≦6, and Mn4+ represents the tetravalent manganese ion.」(特許請求の範囲第1項)
1.370~500nmの紫外光及び可視光により励起された後、520~800nmにピーク波長を有する発光を発生するコアシェル蛍光材料であって、
黄色、緑色または赤色の蛍光粉末を含むコアと、
コア上にコーティングされ、化学式AxMF6-yZy:Mn4+によって特定されるマンガン(IV)ドープフッ化物化合物を含むシェル、
ここで、Aは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、またはそれらの組み合わせから選択され、Mは、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはそれらの組み合わせから選択され、Fはフッ素元素、ZはCl、Br、Iの少なくとも1つまたはそれらの組み合わせを含むハロゲン元素であり、0<x≦2、0≦y ≦6、Mn4+は4価のマンガンイオンを表す。
(1b)「[0047] For example 3, the core-shell fluorescent material 1 is formed of “Y3Al5O12:Ce+3/K2SiF6:Mn+4”. In stoichiometric ratio, 5-10 g SiO2 was dissolved in 100 mL-1 L HF (hydrogen flouride) solution, and then 5-10 g Y3Al5O12:Ce+3powder are added. As 20-50 g KMnO4 was dissolved in solution, the color of solution quickly turned to deep purple. Then 10-60 mL H2O2 was added until core-shell phosphor was formed.
・・・
More specifically, the red light component is generated by K2SiF6:Mn+4 of the shell 20, and has wavelength within 600-700 nm, especially with peak wavelength at 630 nm as narrow red light.
・・・
The green light component is generated by Y3Al5O12:Ce+3 of the core 10, and has wavelength within 480-750 nm, especially with peak wavelength at 560 nm. Thus, Y3Al5O12:Ce+3 is a yellow light material.」
[0047]例3、コアシェル蛍光材料1は、“Y3Al5O12:Ce+3/K2SiF6:Mn+4”から形成される。化学量論比で、5-10gのSiO2を100mL-1LのHF(フッ化水素)溶液に溶解し、次に5-10gのY3Al5O12:Ce+3粉末を加える。20-50gのKMnO4が溶液に溶解すると、溶液の色はすぐに深い紫色に変わった。次に、10-60mLのH2O2を、コアシェル蛍光体が形成されるまで加えた。
・・・
より具体的には、赤色光成分はシェル20のK2SiF6:Mn+4によって生成され、600-700nm内の波長を持ち、特に狭い赤色光として630nmでピーク波長を持つ。
・・・
緑色光成分はコア10のY3Al5O12:Ce+3によって生成され、480-750nmの範囲内の波長を持ち、特に560nmにピーク波長がある。したがって、Y3Al5O12:Ce+3は黄色光素材である。
(1c)「
[図:0001392568000001.jpg]
」
(1)引用文献2:特表2016-534199号公報
原査定で引用された本願出願前に頒布された引用文献2には、次の記載がある。
(2a)「【請求項1】
次の式I
Ax[MFy]:Mn4+ (I)
(式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs、R4又はそれらの組合せであり、MはSi、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はそれらの組合せであり、RはH、低級アルキル又はそれらの組合せであり、xは[MFy]イオンの電荷の絶対値であり、yは5、6又は7である。)のMn4+ドープ蛍光体の色安定性を改善する方法であって、
式Iの蛍光体をヘキサフルオロケイ酸を含む溶液と接触させる工程と、
未処理の蛍光体に比べて色安定性が改善された処理後の蛍光体を単離する工程と
を含む方法。
・・・
【請求項5】
蛍光体を高温でフッ素ガスに曝すことをさらに含む、請求項1記載の方法。」
(2b)「【0003】
Mn4+がドープされたフッ化物ホストを用いた照明システムの効率及びCRIは、きわめて高くすることができるが、こうした材料の多くは、高温高湿の環境において多少の不安定性を示し、このため、動作環境下での長期間の安定性を必要とする商用システムでの使用が制限される場合がある。米国特許第8252613号には、合成後にヘキサフルオロケイ酸塩のフッ化水素酸(HF)水溶液で処理することによってこの低下を軽減することができる方法が記載されている。しかしながら、HFの毒性が重大な問題点であり、処理溶液中のHFの量又は濃度を低減すると同時に、材料の安定性の改善を支援することができる代替法が望まれている。」
(2c)「【0016】
水性酸による処理に加えて、式Iの蛍光体は、フッ素を含む酸化剤を含む雰囲気と接触する間に、アニールすること又は高温に曝すこともできる。蛍光体は、処理の前又は後にアニールすることができ、所望される場合には、複数回処理することができる。蛍光体を処理前にアニールする場合、アニール工程の間に取り込まれた不純物を処理によって除去することができる。フッ素を含む酸化剤は、F2、HF、BrF5、NH4HF2、NH4F、KF、AlF3、SbF5、ClF3、BrF3、SbF5、KrF、XeF2、XeF4、NF3又はそれらの組合せ、特にF2とすることができる。色安定性蛍光体を得るために、雰囲気中の酸化剤の量を、特に時間及び温度の変動に関連付けて変えることができる。フッ素を含む酸化剤がF2である場合、雰囲気は0.5%以上のF2を含むことができるが、いくつかの実施形態では、より低い濃度も有効である。特に雰囲気は、5%以上のF2、より詳細には20%以上のF2、さらに詳細には35%以上のF2を含むことができる。雰囲気は、フッ素ガスとの任意の組合せで、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンをさらに含むことができる。特定の実施形態では、雰囲気は、約20%のF2及び約80%の窒素で構成される。
【0017】
蛍光体をフッ素を含む酸化剤と接触させる温度は、接触の間、約200℃~約530℃、特に約350℃~約500℃の範囲とすることができる。本発明の様々な実施形態では
、温度は、100℃以上、詳細には約400℃、より詳細には約475℃である。蛍光体は、それを色安定性蛍光体に変えるのに十分な時間にわたって酸化剤と接触させる。時間と温度は相互に関係づけることができ、例えば時間を増やし温度を下げる、又は温度を上げ時間を減らすなど、互いに調節することができる。」
(2d)「【0034】
一般的手順
アニーリングの手順
PFS蛍光体を炉チャンバに入れた。機械式ポンプを用いて炉チャンバを排気し、窒素、及び窒素とフッ素の混合物を用いて複数回パージした。複数のポンプ及びパージサイクルの後、炉チャンバを、20%のフッ素ガス及び80%の窒素ガスを含む雰囲気で満たし、約1気圧の圧力にした。次いで、チャンバを所望のアニール温度まで加熱した。約8時間保持した後、チャンバを室温まで冷却した。フッ素と窒素の混合物を排出し、チャンバを窒素で充填し、窒素で複数回パージして、チャンバを開放する前に確実にフッ素ガスを完全除去した。
【0035】
処理溶液の調製
48%HF(w/w)を用いてHFを含む水溶液を調製し、35%H2SiF6(w/w)を用いてH2SiF6を含む溶液を調製した。K2SiF6を用いる場合には、K2SiF6を溶液に加え、加えた後、溶液を30分間攪拌し、次いで、2.7ミクロンの孔径の濾紙によって重力濾過し、溶解していないK2SiF6を除去した。
【0036】
水溶液の処理
蛍光体(3g.)を溶液(26ml)にゆっくりと加え、混合物を20分間攪拌した。蛍光体を1分間にわたって沈殿させ、次いで浮遊物を傾瀉し、処理後の蛍光体を濾過し、アセトンで3回洗浄し、真空下で3時間乾燥させ、ふるい分けた。
【0037】
高温高湿(HTHH)安定性試験
蛍光体の粉末を、二成分系メチルシリコーン結合剤(RTV-615、Momentive Performance Materials)中に蛍光体0.9g対シリコーン(成分A+B)0.825gの割合で混合することによって、高温高湿(HTHH)処理用の試料を作製した。次いで、蛍光体/シリコーン混合物をアルミニウムの試料ホルダ中に注ぎ、90℃で20分間硬化させた。対照試料は窒素下で保管し、HTHH条件に曝す試料は、85℃/85%RHに制御された雰囲気チャンバに入れた。これらのHTHHの試料を300時間後に取り出し、450nm励起におけるルミネセンス強度を対照試料のものと比較した。
【0038】
高光束条件(レーザ損傷)安定性試験
446nmで発光するレーザダイオードを、その他端にコリメータを有する光学ファイバに結合した。出力は310mWであり、試料でのビーム直径は700ミクロンであった。これは、試料表面における80W/cm2のフラックスに相当する。散乱されたレーザからの放射と励起された蛍光体からの発光の組合せである分光分布(SPD)スペクトルを、1メートル(直径)の積分球で収集し、データを分光計のソフトウェア(Specwin)で処理する。レーザ及び蛍光体の発光からの積分出力を(それぞれ400nm~500nm及び550nm~700nmのSPDを積分することによって)2分間隔で記録した。レーザの熱的安定化による影響を避けるために、最初の90分の測定は破棄する。レーザ損傷による強度損失の割合は、以下のように計算する。
【0039】
【数1】
[図:0001392568000002.jpg]
蛍光体からのエミッタ出力のみをプロットすると同時に、実験中にレーザを安定な状態に保つこと(1%未満の変動)を保証するために、レーザ発光からの積分出力及びそのピーク位置をモニタした。
【0040】
比較例1~4
水性の処理に曝していない対照材料は、合成したままのPFS蛍光体、すなわち熱処理していない材料(比較例1)、及びF2アニーリング後のPFS蛍光体(比較例3)を含んでいた。また同じ材料を、米国特許第8252613号に記載されるように、K2SiF6を含むHF溶液で処理した(比較例2及び4)。
【0041】
実施例1~7
実施例1~5では、合成したままのPFS蛍光体(熱処理せず)を、表1に示す水溶液で処理した。実施例6及び7では、PFS蛍光体をフッ素雰囲気下でアニールした後、表1に示すヘキサフルオロケイ酸溶液で処理した。
【0042】
【表1】
[図:0001392568000003.jpg]
実施例1~7及び比較例1~4の蛍光体をHTHH条件に曝し、レーザ損傷について評価した。結果を表2に示す。これらの実験では、粉末のプラーク測定の標準偏差は、吸光度の測定(Abs.)については0.6%、量子効率の測定(QE)については1.7%、高温高湿(HTHH)の測定については2%であった。シリコーン中に混合し、積分球で測定したときのPFSの量子効率及びレーザ損傷の測定(tape QE)に対する標準偏差は0.5%未満であった。
【0043】
【表2】
[図:0001392568000004.jpg]
水性の処理はすべて、未処理の対照に比べて、HTHH又は高光束条件への暴露後の強度低下を防ぐのに有効であった。比較例1は、未処理の蛍光体の安定性試験について特性が失われたことを示している。実施例1~5の試料の安定性試験後のQE及び強度は、HF及びK2SiF6を含み、ヘキサフルオロケイ酸を含まない溶液で処理した比較例2のものと同等又はそれより良好であった。同様に、実施例6及び7の試料の性能も、比較例4の性能と同等又はより良好であった。しかしながら、HFを含まない溶液で処理され、蛍光体を生成した試料が、エージング後の特性のバランスに最も優れていた。実施例4、6及び7は、レーザ損傷の著しい低減と同時に、HTHH性能の維持、及びQEの維持又は改善を示した。
【0044】
処理工程のいずれを用いて生成した試料でも、粒径に有意な変化は測定されなかった。粒径は変化しなかったが、実施例3の試料のタップかさ密度は比較例2の1.6倍であり、H2SiF6で処理した材料がHFで処理した材料より凝集しないことを示している。処理後の試料で測定された吸光度のわずかな低下は、処理後にこれらの試料のマンガン含有量が低下したことを示している。」
2.引用文献1に記載された発明について
引用文献1には、例3として「化学量論比で、5-10gのSiO2を100mL-1LのHF(フッ化水素)溶液に溶解し、次に5~10gのY3Al5O12:Ce+3粉末を加え、20-50gのKMnO4が溶液に溶解すると、溶液の色はすぐに深い紫色に変わり、次に、10-60mLのH2O2を、コアシェル蛍光体が形成されるまで加え、コア10のY3Al5O12:Ce+3/シェル20のK2SiF6:Mn+4から形成されるコアシェル蛍光材料1を形成する方法。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる(摘記1b、1c参照)。
3.対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「K2SiF6:Mn+4」は、コアシェル蛍光材料1のシェルであり、引用発明の「コア10のY3Al5O12:Ce+3」は、コアシェル蛍光材料1のコアであるから、引用発明の「K2SiF6:Mn+4」は、引用発明の「コア10のY3Al5O12:Ce+3」に直接配置されているのは明らかであるから、引用発明の「コア10のY3Al5O12:Ce+3/シェル20のK2SiF6:Mn+4から形成されるコアシェル蛍光材料1を形成する方法。」は、本願発明の「コーティングされた燐光体(22、122、222)を調製する方法」及び「式I
Ax[MFy]:Mn4+
I
の第1の燐光体(22、122、222)を含み、第2の燐光体(22、122、222)を含むコアに直接配置されたシェルを有するコーティングされた燐光体(22、122、222)であって、
前記第2の燐光体(22、122、222)は、式Iまたは式II
Ax[MFy]
II
の化合物以外の材料であり、
Aは、出現ごとに独立して、Li、Na、K、Rb、Cs、またはこれらの組合せである;
Mは、出現ごとに独立して、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Hf、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはこれらの組合せであり;
xは、前記[MFy]イオンの電荷の絶対値であり;
yは、5、6、または7であるコーティングされた燐光体(22、122、222)を形成するステップを含み」に相当する。
引用発明の「SiO2」は、Siの源であり、本願発明の「Mの源」に相当し、引用発明の「Y3Al5O12:Ce+3粉末」は本願発明の「燐光体材料」に相当し、HF(フッ化水素)溶液に加えられた後、その懸濁液となっており、引用発明の「KMnO4」は、KとMnの源であり、本願発明の「Mn4+、A+の源」に相当するから、引用発明の「化学量論比で、5-10gのSiO2を100mL-1LのHF(フッ化水素)溶液に溶解し、次に5-10gのY3Al5O12:Ce+3粉末を加え、20-50gのKMnO4が溶液に溶解すると」は、本願発明の「HF溶液中で特定の形態の燐光体材料(22、122、222)の懸濁液を、Mn4+、A+、およびMの源に接触させて」に相当する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、「コーティングされた燐光体(22、122、222)を調製する方法であって、HF溶液中で特定の形態の燐光体材料(22、122、222)の懸濁液を、Mn4+、A+、およびMの源に接触させて、
式I
Ax[MFy]:Mn4+
I
の第1の燐光体(22、122、222)を含み、第2の燐光体(22、122、222)を含むコアに直接配置されたシェルを有するコーティングされた燐光体(22、122、222)であって、
前記第2の燐光体(22、122、222)は、式Iまたは式II
Ax[MFy]
II
の化合物以外の材料であり、
Aは、出現ごとに独立して、Li、Na、K、Rb、Cs、またはこれらの組合せである;
Mは、出現ごとに独立して、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Hf、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはこれらの組合せであり;
xは、前記[MFy]イオンの電荷の絶対値であり;
yは、5、6、または7であるコーティングされた燐光体(22、122、222)を形成するステップを含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明はコーティングされた燐光体(22、122、222)を高温でガス状形態のフッ素含有酸化剤と接触させるステップをさらに含むのに対し、引用発明はそのようなステップを含まない点。
(2)相違点について検討する。
引用文献2には、「次の式I
Ax[MFy]:Mn4+ (I)
(式中、AはLi、Na、K、Rb、Cs、R4又はそれらの組合せであり、MはSi、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd又はそれらの組合せであり、RはH、低級アルキル又はそれらの組合せであり、xは[MFy]イオンの電荷の絶対値であり、yは5、6又は7である。)のMn4+ドープ蛍光体の色安定性を改善する方法であって、
式Iの蛍光体をヘキサフルオロケイ酸を含む溶液と接触させる工程と、
未処理の蛍光体に比べて色安定性が改善された処理後の蛍光体を単離する工程と
を含む方法」(【請求項1】)であって、「蛍光体を高温でフッ素ガスに曝すことをさらに含む」方法(【請求項5】)が、記載されており(摘記2a参照)、色安定性蛍光体を得るために、式Iの蛍光体を「フッ素を含む酸化剤を含む雰囲気と接触する間に、アニールすること又は高温に曝すこと」、「蛍光体は、それを色安定性蛍光体に変えるのに十分な時間にわたって酸化剤と接触させる」ことが、記載されており(摘記2c参照)、ここで、式Iの蛍光体は引用発明の「シェル20のK2SiF6:Mn+4」に相当する。
そして、引用文献2の「Mn4+がドープされたフッ化物ホストを用いた照明システムの効率及びCRIは、きわめて高くすることができるが、こうした材料の多くは、高温高湿の環境において多少の不安定性を示し、このため、動作環境下での長期間の安定性を必要とする商用システムでの使用が制限される場合がある。」との記載(摘記2b参照)、及び、式Iの蛍光体の安定性を高温高湿(HTHH)安定性試験及び高光束条件(レーザ損傷)安定性試験で確認しており(摘記2d参照)、引用文献2の色安定性とは、高温高湿(HTHH)安定性や高光束条件(レーザ損傷)安定性のことであって、動作環境下での長期間の安定性を必要とする商用システムでの使用で求められるものであるから、そのような色安定性を必要としない蛍光体は想定されず、そのような色安定性は、全ての蛍光体において当然に求められるものであるといえる。
そうすると、引用発明のコアシェル蛍光材料1を形成する方法において、シェル20のK2SiF6:Mn+4を色安定性として、コアシェル蛍光材料1自体を色安定性とするために、コアシェル蛍光材料1のシェル20が高温でフッ素ガスに曝されるように、コアシェル蛍光材料1を高温でフッ素ガスに曝すことをさらに含むものとし、コーティングされた燐光体(22、122、222)を高温でガス状形態のフッ素含有酸化剤と接触させるステップをさらに含むものとすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
4.本願発明の効果について
本願明細書の実施例2では「アニールし」とのみ記載され、コーティングされた燐光体をフッ素含有酸化剤と接触しているか否か不明であるから、本願発明の実施例であると確認できるのは実施例1のみであるところ、本願明細書の【図6】の1~4のいずれが実施例1のものであるか不明であるから、本願発明が、引用発明から当業者であっても予測し得ない顕著な効果を発現していると認めることはできない。
そうすると、本願発明が、コーティングされた燐光体を高温でガス状形態のフッ素含有酸化剤と接触させるステップをさらに含むことにより、引用発明から当業者であっても予測し得ない顕著な効果を奏するとは認められない。
また、本願明細書【0015】には、「コーティングされた燐光体は、コアの燐光体に害を及ぼすことなく式Iの燐光体の色安定性を増大させ得る合成後処理にかけられてもよい。特に、コーティングされた燐光体は、米国特許第8,309,724号に記載されるように、高温でガス状形態のフッ素含有酸化剤と接触させられ得る。」と記載されており、コーティングされた燐光体を高温でガス状形態のフッ素含有酸化剤と接触させるステップをさらに含むことにより、色安定性を増大させ得ることが記載されているところ、そのような効果は、蛍光体を高温でフッ素ガスに曝すことにより蛍光体を色安定性蛍光体に変えることが記載される引用文献2の記載から当業者が予測できる程度のものである。
5.審判請求人の主張
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(1)審判請求人は、審判請求書(4頁2~21行)において、「しかし、引用文献2に記載のあるのは、「式Iの燐光体を高温でガス上形態のフッ素含有酸化剤と接触させる」ことのみであって、新請求項1(補正前の原請求項16)に記載のあるような「式I
Ax[MFy]:Mn4+
I
の第1の燐光体(22、122、222)を含み、第2の燐光体(22、122、222)を含むコアに直接配置されたシェル(18)を有するコーティングされた燐光体(22、122、222)であって、
前記第2の燐光体(22、122、222)は、式Iまたは式II
Ax[MFy]
II
の化合物以外の材料であり、
Aは、出現ごとに独立して、Li、Na、K、Rb、Cs、またはこれらの組合せである;
Mは、出現ごとに独立して、Si、Ge、Sn、Ti、Zr、Al、Ga、In、Sc、Hf、Y、La、Nb、Ta、Bi、Gd、またはこれらの組合せであり;
xは、前記[MFy]イオンの電荷の絶対値であり;
yは、5、6、または7であるコーティングされた燐光体(22、122、222)」ではありません。」と主張する。
しかしながら、引用文献2の式Iの蛍光体は、本願発明のものと異なり、単独で蛍光体となるものの、引用発明は、本願発明と同様にシェル20のK2SiF6:Mn+4及びコア10のY3Al5O12:Ce+3からなるものであって、当該シェル20は引用文献2の蛍光体と同じものであるから、引用発明におけるコアシェル蛍光材料1のシェルに対して引用文献2における蛍光体の色安定性を改善する方法を採用する動機付けがあるといえる。
加えて、高温でフッ素ガスに曝すことにより、引用発明のシェル20のK2SiF6:Mn+4の中にあるコア10のY3Al5O12:Ce+3に何らかの害を及ぼすことがあるという技術常識は認められないから、引用発明におけるコアシェル蛍光材料1において、引用文献2に記載の高温でフッ素ガスに曝すことにより蛍光体を色安定性蛍光体に変える方法を採用する阻害要因があるともいえない。
さらに、審判請求人は、審判請求書(4頁22~24行)において、「また、審査官殿は「引用文献1記載の発明において、Mn4+ドープ蛍光体の色安定性が改善されることを期待して」と指摘されていますが、引用文献1には蛍光体の色安定性を改善するとの課題は明確には開示されていません。」とも主張する。
しかしながら、上記3.(2)で検討したとおり、色安定性は、全ての蛍光体において当然に求められるものであるといえる。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-008698