商標拒絶査定不服審判
2021-008615
カワネチャジカン、カワネチャ、ジカン
- 審判番号
- 2021-008615
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-094712
- 請求日
- 2021年06月30日
- 審決日
- 2022年03月25日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】小籔 久幸
- 【請求人代理人】入江 一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 平澤 芳行
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 須田 亮一
- 分類
- T18 .271-Z (W30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項15号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第15号、商標法第3条第2項、特許法第150条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-94712拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,令和2年7月31日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年12月11日付け:拒絶理由通知書
令和3年1月20日 :意見書の提出
令和3年6月11日付け :拒絶査定
令和3年6月30日 :審判請求書の提出
第2 本願商標
本願商標は,「川根茶時間」の文字を標準文字で表してなり,第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー,ココア,氷,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖(調味料),砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ(調味料),ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,うま味調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,パスタソース,食用酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用グルテン,食用粉類」を指定商品として,登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は,「本願商標は,「川根茶時間」の文字を標準文字で表してなるところ,これは,静岡県に所在する「川根茶業協同組合」が,「静岡県榛原郡川根町及び川根本町(旧・中川根町及び旧・本川根町)で生産される緑茶」に使用した結果,本願の出願前より取引者・需要者間において広く知られている「川根茶」の文字を標準文字で表してなるもの(地域団体商標登録第5053823号,以下「引用商標」という。)と同一の文字を有してなるものである。そうすると,出願人が本願商標をその指定商品に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,該商品が,「川根茶業協同組合」の業務に係る商品,あるいは,当該者と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,商品の出所について混同を生じさせるおそれがある。したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。」旨認定,判断し,本願を拒絶したものである。
第4 当審における証拠調べ
当審において,本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて,職権に基づく証拠調べをした結果,別掲1(1)ないし(7)及び2(1)ないし(11)に示すとおりの事実を発見したので,同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき,請求人に対して,令和3年12月21日付けの証拠調べ通知書によって通知し,期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第5 証拠調べに対する請求人の意見
請求人は,上記第4の証拠調べ通知書に対し,令和4年2月14日受付の意見書を提出し,要旨以下のように述べた。
1 別掲1(1)ないし(7)及び2(1)ないし(11)の事実には,令和2年の資料が1件もなく,本願商標の登録出願時に,本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当する時期的要件を満たしていない。
2 引用商標が,「著名商標」であることを裏付ける客観的事実(商標法第3条第2項に関する商標審査基準の2.(2)及び(3)の「商標の使用態様,使用数量(生産数,販売数等),使用期間及び使用地域」「テレビ,ラジオ,雑誌等のメディアの広告宣伝の方法,期間,地域及び規模」「出願人によるテレビ,ラジオ,雑誌等のメディアの広告物,需要者を対象とした出願商標の認識度調査(アンケート)の結果報告書,市場占有率,販売数量等の使用実績」等)の提示がないこと,「川根茶」はJ-PlatPatの日本国周知・著名商標検索において検索されないこと,「川根茶」及び「川根」の文字は「広辞苑第七版」(株式会社岩波書店)に掲載されていないことからすると,別掲1(1)ないし(7)及び2(1)ないし(11)の事実のみでは,本願商標の登録出願時に,内容的にも本願商標は商標法第4条第1項第15号に該当していたとはいえない。
3 引用商標が著名商標であるとしても,本願商標と引用商標とは,称呼上,明らかに区別し得るもので,本願商標と引用商標とは,その外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない別異の商標であるから,本願商標をその指定商品に使用しても,商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
4 地域団体商標又はそれ以外の著名な商標を含んでなる商標が,当該地域団体商標又は当該著名な商標とは商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断された過去の審決例(甲1,甲16)や,登録例(甲3~甲11)があることからすると,本願商標と引用商標とは別異の商標であるといえる。
第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」には,当該商標をその指定商品又は指定役務に使用したときに,当該商品又は役務が他人の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品又は役務が上記他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品又は役務であると誤信されるおそれがある商標が含まれる。そして,上記の「混同を生じるおそれ」の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品又は指定役務と他人の業務に係る商品又は役務との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品又は役務の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品又は指定役務の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきものである(最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁)。
(2)「川根茶」の文字の周知性について
「「川根茶」は日本三大銘茶や静岡三大銘茶の一つであること」(別掲1(1),(2)等))や,「全国的に名前を知られた有名ブランドであること」(別掲1(6)),「江戸時代にはすでに銘茶として認められていたこと」(別掲2(10))など,「川根茶」が静岡県で生産されるブランド茶の一つとして広く知られていることや生産地である静岡県にある川根本町や川根茶業協同組合が「川根茶」を地域振興に活用している(別掲1(5),2(7)イ)ことから,「川根茶」は,遅くとも平成15年頃から現在に至るまで,一般の全国紙を含む新聞記事やインターネット記事において広く紹介されている事実があるといえる。
また,引用商標は,川根茶業協同組合が,その構成員に使用をさせる商標であって,その商標が使用された結果自己又はその構成員の業務に係る商品である第30類「静岡県榛原郡川根町及び川根本町(旧・中川根町及び旧・本川根町)で生産される緑茶」を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることを理由に,当該商品を指定商品として,平成19年6月15日に地域団体商標の商標登録(登録第5053823号)を受け,現に有効に存続しているものである。
そうすると,引用商標は,「静岡県榛原郡川根町及び川根本町(旧・中川根町及び旧・本川根町)で生産される緑茶」を示すものとして,遅くとも平成15年3月頃から現在まで継続して,我が国における一般需要者の間に広く認識され,周知性を獲得しているものであると判断するのが相当である。
(3)本願商標と引用商標について
ア 本願商標
本願商標は,上記第2のとおり,「川根茶時間」の文字を標準文字で表してなるものである。
イ 引用商標
引用商標は,「川根茶」の文字を標準文字で表してなるものである。
ウ 本願商標と引用商標の類似性の程度
本願商標と引用商標は,それぞれ上記ア及びイのとおりの構成からなるところ,本願商標はその構成中,周知性があり,看者の注意を引きやすい語頭の「川根茶」の文字が引用商標と同一にするものであって,全体の5文字のうち3文字までを引用商標と共通にするものである。また,どちらも標準文字で表されているものである。
そして,両商標に共通する「川根茶」からは,周知性を獲得している川根茶業協同組合及びその構成員の業務に係る「川根茶」の観念が生ずるものである。
そうすると,本願商標は,川根茶業協同組合及びその構成員の業務に係る周知な「川根茶」との関連性を容易に想起させるものであるから,両商標は相当程度高い類似性を有するものといえる。
(4)引用商標の独創性について
引用商標の「川根茶」は,地域の名称である「川根」の文字と引用商標の指定商品の普通名称である「茶」の文字からなる地域団体商標であるから,その構成自体は独創的なものではない。
(5)本願の指定商品と引用商標の商標権者の業務に係る商品の関連性及び需要者の共通性について
本願の指定商品中「茶」は,引用商標の指定商品「静岡県榛原郡川根町及び川根本町(旧・中川根町及び旧・本川根町)で生産される緑茶」を含むものであることは明らかである。
また,本願の指定商品中「茶」以外の商品は,食品,飲料,調味料やこれらに関連する商品であって,引用商標の指定商品と用途,目的,販売場所,販売経路を共通にするものが少なくないから,両商品の関連性は高いといえる。
そして,本願の指定商品と引用商標の指定商品は,上記のとおり,同一又は類似する商品及び,関連性が高い商品であるから,取引者,需要者層が共通するものといえる。
(6)出所の混同を生ずるおそれについて
以上のとおり,本願商標と引用商標とは,相当程度高い類似性を有するものであること,引用商標は「静岡県榛原郡川根町及び川根本町(旧・中川根町及び旧・本川根町)で生産される緑茶」を示すものとして,一般需要者の間に広く認識され,周知性を獲得しているものであること,引用商標の指定商品は本願の指定商品と同一又は類似する商品及び関連性が高い商品であって,取引者,需要者層を共通するものであることから,本願商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断すれば,本願商標は,看者をして,その構成中,語頭の「川根茶」の文字に着目し,引用商標を連想又は想起させることが少なくないものと判断するのが相当である。
そうすると,本願商標をその指定商品にするときは,取引者,需要者をして周知となっている引用商標を連想又は想起し,その商品が他人(引用商標の商標権者又はその構成員)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し,その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
したがって,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)請求人は,「上記第4の証拠調べ通知において示した事実(別掲1(1)ないし(7)及び2(1)ないし(11))には,令和2年の資料が1件もなく,本願商標の登録出願時に,本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当する時期的要件を満たしていない。」旨を主張しているが,上記第4の証拠調べ通知において示した事実には,本願商標の登録出願日である令和2年7月31日時点のものがないとしても,別掲1(8)ないし(11)及び2(12)ないし(15)のとおり,本願商標の登録出願日の直前又は直後といえる令和2年5月ないし9月のものも複数存在することからすれば,上記1(2)のとおり,引用商標は,本願商標の登録出願時はもとより登録査定時においても,「静岡県榛原郡川根町及び川根本町(旧・中川根町及び旧・本川根町)で生産される緑茶」を示すものとして,一般需要者の間に広く認識されていたと判断するのが相当である。
(2)請求人は,「引用商標が,「著名商標」であることを裏付ける客観的事実(商標法第3条第2項に関する商標審査基準の2.(2)及び(3)の「商標の使用態様,使用数量(生産数,販売数等),使用期間及び使用地域」「テレビ,ラジオ,雑誌等のメディアの広告宣伝の方法,期間,地域及び規模」「出願人によるテレビ,ラジオ,雑誌等のメディアの広告物,需要者を対象とした出願商標の認識度調査(アンケート)の結果報告書,市場占有率,販売数量等の使用実績」等)の提示がないから,上記第4の証拠調べ通知において示した事実をもってしては,引用商標の周知性を認めることは妥当ではない」旨を主張しているが,上記商標審査基準に記載の事項は,使用による識別性の周知性を判断する際の考慮事由を例示的に列挙したものであるから,そこに記載された事項に合致する証拠の提示がないとしても,別掲に示した証拠に基づき,上記1のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものというのが相当である。
(3)請求人は,地域団体商標又はそれ以外の著名な商標を含んでなる商標が,当該地域団体商標又は当該著名な商標とは商品の出所について混同を生ずるおそれはないと判断された過去の審決例(甲1,甲16)や,登録例(甲3~甲11)があることを踏まえると,本願商標と引用商標とは別異の商標である旨を主張しているが,請求人が挙げる過去の審決例,登録例と本願商標及び引用商標とは,その構成及び態様が異なり,事案を異にするものであり,かつ,具体的事案の判断においては,過去の審決例や登録例に拘束されることなく判断されるべきであるから,これらの事例の存在が上記1の判断を左右するものではない。
(4)請求人は,J-PlatPatの日本国周知・著名商標検索において,「川根茶」が検索されないこと,「広辞苑第七版」(株式会社岩波書店)に掲載されていないことを挙げて,引用商標は周知性がない旨を主張しているが,J-PlatPatの日本国周知・著名商標検索の対象となっているのは,防護標章として登録されている商標,及び異議決定・審判・判決において周知・著名な商標として認定された登録商標の一部にすぎないものであるし,「広辞苑第七版」に掲載されているか否かは,商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの判断には直接関係がないものであるから,「川根茶」が日本国周知・著名商標検索において検索されないこと,あるいは,「広辞苑第七版」に掲載がないことが上記1の判断を左右するものではない。
(5)請求人は,別掲1(1)ないし(7)は,新聞記者がリップサービス的に記したものであり,また,2(1)ないし(11)は,広告宣伝的に記したものであるから,これらのみでは,本願商標の審決時に,内容的に本願商標が商標法第4条第1項第15号に該当していないことは明らかである旨を主張しているが,上記掲載記事が新聞記者のリップサービスによるものであること又は広告宣伝的なものであることを裏付ける証拠の提出はなく,請求人の独自の主張といわざるを得ない。
(6)したがって,請求人の上記主張は,いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本願商標は,商標法第4条第1項第15号に該当し,登録することができない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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