2021-007931
電動工具のバッテリパックを充電する充電器
- 審判番号
- 2021-007931
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-098120外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年06月16日
- 審決日
- 2022年01月04日
- 公報発行日
- 2022年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社マキタ
- 【請求人代理人】特許業務法人快友国際特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H02J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
本願は,平成29年5月17日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は,令和3年3月8日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであると認められるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。
「電動工具のバッテリパックを充電する充電器であって,吸気ポート及び排気ポートを有するハウジングと,前記ハウジング上に設けられており,前記バッテリパックを着脱可能に受け入れるバッテリインターフェースと,前記ハウジング内に設けられており,前記バッテリインターフェースに取り付けられた前記バッテリパックに充電電力を供給する充電回路と,前記吸気ポートから前記ハウジング内に空気を導入するとともに,前記排気ポートから前記ハウジング外へ空気を排出する送風機と,を備え,前記吸気ポートは,前記ハウジングに形成された複数の吸気穴を有し,前記排気ポートは,前記ハウジングに形成された複数の排気穴を有し,前記複数の吸気穴のそれぞれの内接円は,前記複数の排気穴のいずれの内接円よりも小さい,充電器。」
第3 原査定の拒絶の理由
本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1.国際公開第2017/002519号(以下,「引用文献1」という。)
2.特開2013-168596号公報(以下,「引用文献2」という。)
3.特開2011-199259号公報(以下,「引用文献3」という。)
第4 引用発明
1 引用文献1には,図面とともに以下の事項が記載されている。なお,下線は当審で付与した。
「[0057]本発明の第1の実施の形態による充電装置1は,電池パック3及び33を含む複数種類の電池パック,すなわち,互いに電池種(電池パックの電圧,公称容量)の異なる複数の電池パックを充電可能に構成されている。以下の説明では,充電装置1に電池パック3が装着される場合を主に説明し,適宜,電池パック3の説明と併せて電池パック33についても説明する。[0058]図1から図5を参照すると,充電装置1は,ケース2の内部に,電池パック3を充電するための充電回路部4と,充電回路部4及び電池パック3を冷却するための複数のファンとなる第1ファン5及び第2ファン6とを備える。続きを表示(全14行)[0059]ケース2は,略直方体形状であり,上部としての上面21には前方側に電池パック3が充電のために装着される電池装着部7が設けられている。電池装着部7には,電池パック3を充電するための複数の端子70が設けられると共に,電池パック3を冷却するための風が通過する開口71が設けられている。さらに,ケース2は,上面21を囲む4つの側面22,23,24,25と,上面21とは反対側に位置する底部としての底面27とを有し,互いに隣接する側面22,23は角部26にて連結されている。また,側面22,24は互いに対向し,側面23,25は互いに対向する。ケース2において,底面27から上面21に向かう方向を充電装置1の上方向,すなわち上面と交差する第1方向とする。[0060]第1ファン5は,図4に示すように,ケース2内に,角部26と開口71とに近接するとともに側面22に近接して配置される。第1ファン5は,第1回転軸5aを有する。また,第1ファン5が対向する側面22の部分には,複数の通気窓からなる第1排気口22aが形成される。第1ファン5は,駆動されると,第1回転軸5aの方向に第1冷却風を発生させる。第1冷却風は,第1排気口22aに向かい,第1排気口22aを介してケース2から排気される。[0061]第2ファン6は,図4に示すように,ケース2内に,角部26と開口71とに近接するとともに側面23に近接して配置される。第2ファン6は,第2回転軸6aを有する。また,第2ファン6は,第2回転軸6aの延長方向が第1ファン5の第1回転軸5aの延長方向と交差するように配置される。第2ファン6が対向する側面23の部分には,複数の通気窓からなる第2排気口23aが形成されている。第2ファン6は,駆動されると,第2回転軸6aの方向に第2冷却風を発生させる。第2冷却風は,第2排気口23aに向かい,第2排気口23aを介してケース2から排気される。従って,複数のファン(第1ファン5及び第2ファン6)により充電装置1内の発熱素子の冷却効率を高めることができる。さらに,ファン5及び6をケース2の側面(具体的には側面22及び23)に沿って配置することで,回路基板としての基板40のケース2内での設置スペースを確保でき,基板40を有効活用することができる。特にケース2の側面を連結する角部近傍に設けることが効果的である。[0062]ケース2には,側面22と反対側の側面24に,所定範囲に亘って複数の通気窓が吸気口24aとして形成される。従って,第1ファン5及び第2ファン6が駆動されると,吸気口24aから空気がケース2内に取りこまれ,取りこまれた空気は第1及び第2冷却風としてケース2の内部を冷却風路に沿って通過し,第1及び第2排気口22a,23aを介してケース2の外部に排気される。なお,冷却風路の詳細については後述する。[0063]充電回路部4は,ケース2内で,吸気口24aの近傍に配置された基板40に,主に,ダイオード41と,トランス42と,FET43と,温度検出素子44と,充電制御部45とが実装されて構成される。充電回路部4は,充電制御部45の制御により,例えば商用交流電源Pから供給される電力を用いて端子70を介して電池パック3を充電する。大電流且つ急速充電,いわゆる2C充電のために,単位時間あたり多量の電流を充電回路部4に流すと,ダイオード41,トランス42,FET43は,発熱する傾向がある。これらの部品を発熱から保護して放熱を促すために,ダイオード41及びFET43にそれぞれ放熱部材46,47を取り付けている。」
「[0075]なお,図4,5,6に示す放熱部材46,47によって画成される冷却風路内のダイオード41,トランス42,及びFET43の配置は一例であって,第1冷却風及び第2冷却風が素子の傍らを通過するのであれば適宜の配置を取ることができる。また,冷却風は,第1ファン5及び第2ファン6に近接して設けた排気口22a,23aを吸気口とし,吸気口24aを排気口として,これらファン5,6によって空気をケース2内に取りこむ構成としてもよい。但し,この場合には,冷却風を発熱素子に吹き付ける構成となるため,第1ファン5及び第2ファン6によってケース2外に風を排出する構成よりも冷却効果が低くなってしまうが,吸気口24a(排気口として使用)付近では冷却風が集束されるため高い風量で吸気口24a近傍に配置した発熱素子(トランス42等)を冷却することができる。また,第1ファン5及び第2ファン6によって空気と共に粉塵が吸い込まれ排気口(22a,23a)に詰まってしまう可能性がある。従って,第1ファン5及び第2ファン6によってケース2外に風を排出する構成とすることで,発熱素子の冷却効率を高めることができると共に,排気口(22a,23a)の目詰まりを抑制することができる。」
「[0078]先に,電池パック3の電気的構成について説明する。電池パック3は,ハンマドリル,携帯用丸鋸等の電動工具に着脱可能に構成され,当該電動工具の駆動用電源として用いられる高容量(公称容量5Ah以上)の電池パックである。図9に示されているように,電池パック3は,電池組3Aと,接続端子部3B,保護IC3Cと,電池側電源回路3Dと,電池温度検出回路3Eと,第1遮断素子3Fと,電池側制御部3Gとを備えている。なお,電池容量は定格容量であってもよい。[0079](省略)[0080]接続端子部3Bは,プラス接続端子3b及びマイナス接続端子3cを有している。プラス接続端子3bは,最も電位の高い電池セル3aのプラス端子に第1遮断素子3Fを介して接続されている。マイナス接続端子3cは,最も電位の低い電池セル3aのマイナス端子に接続されている。電池パック3が充電装置1の電池装着部7に装着された場合,プラス接続端子3b及びマイナス接続端子3cのそれぞれは,充電装置1の複数の端子70のうちの所定の端子に接続され,電池組3Aと充電装置1とが接続される。」
「[0131]次に,図12乃至図14を参照しながら充電装置1による充電処理の一例について説明する。図12及び図13は,充電装置1の充電制御部45による充電処理を示すフローチャートである。図14は,充電制御部45が電池パック3を充電する場合に用いる目標電流値を決定するためのテーブルである。[0132]充電装置1を商用交流電源Pに接続すると,図12に示されているように,S1にて,充電制御部45が充電制御を開始し,S2にて,充電待機状態であることを示すため表示回路60を赤色に点灯させる。表示回路60を赤色に点灯させるには,第2出力ポート部45Cの複数のポートのうちの抵抗60Bに接続されているポートからハイ信号を出力し,LED60Aを赤色に点灯させる。[0133]S2において,LED60Aを赤色に点灯させた後に,S3にて,電池装着部7(端子70)に電池パックが装着されているか否かを判断する。電池パックが装着されているか否かの判断は,電池パックの電池側制御部3Gと充電制御部45とが情報通信ポート3H及びデジタル通信ポート部45Dを介して通信を行うことによって判別する。電池パックが装着されていない場合(S3:No),S2に戻る。すなわち,電池パックが装着されるまでS2及びS3を繰り返しながら充電待機状態を維持する。[0134]S3にて,電池装着部7に電池パックが装着されていると判断した場合(S3:Yes),S4において電池種を判別する。電池種の判別は,電池パックとの通信によって行われる。本実施の形態においては,電池パック3が電池装着部7(端子70)に装着された場合,充電制御部45は,電池種としてCを受信し,電池パック33が装着された場合は,電池種としてDを受信する。なお,本実施の形態においては,電池パックとの通信によって電池種を判別したが,電池パックに電池種判別のための判別抵抗が設けられている場合には,充電装置に当該判別抵抗と接続可能な判別端子を設け,当該判別抵抗の抵抗値を読み取ることで電池種を判別する構成であってもよい。[0135]S4にて,電池種を判別した後は,S5において目標電流値をI1に設定し,S6にて,2C以上の充電電流,すなわち,I1で充電を開始する。充電開始は,第2出力ポート部45Cの複数のポートのうちの第2制御信号伝達部62のFET62Bと接続されたポートからハイ信号を出力し,PWM制御IC51Aを稼動状態にすることによって行われる。」
2 前記記載事項から以下のことがいえる。
(1)引用文献1の段落[0057]によれば,「充電装置1」は,「電池パックを充電可能に構成されている」ものである。
ここで,引用文献1の段落[0078]によれば,「電池パック」は,「電動工具の駆動用電源として用いられる」ものである。
してみると,「電動工具の駆動用電源として用いられる」「電池パックを充電可能に構成されている」「充電装置」が記載されている。
(2)引用文献1の段落[0058]によれば,「充電装置」は,「ケース2の内部に,電池パック3を充電するための充電回路部4と,充電回路部4及び電池パック3を冷却するための複数のファン」を備えるものである。
(3)引用文献1の段落[0059]によれば,「ケース2」は「4つの側面22,23,24,25」を有する。
そして,引用文献1の段落[0060]及び[0061]によれば,側面に「複数の通気窓からなる第1排気口22a」及び「複数の通気窓からなる第2排気口23a」が形成されるものである。
また,引用文献1の段落[0062]によれば,側面に「複数の通気窓」からなる「吸気口24a」が形成されるものである。
してみると,「ケース」には,「複数の通気窓」からなる「吸気口」及び「複数の通気窓からなる」「排気口」が形成されるものである。
(4)引用文献1の段落[0059]によれば,「ケース2」の「上面21」には,「電池パック3が充電のために装着される電池装着部7が設けられている」ものである。
(5)引用文献1の段落[0063]によれば,「充電回路部4」は「充電制御部45」などが実装されて構成されるものである。
そして,引用文献1の段落[0131]ないし[0135]によれば,「充電制御部45による充電処理」は,「S3にて,電池装着部7に電池パックが装着されていると判断した場合(S3:Yes),S4において電池種を判別」し,「S4にて,電池種を判別した後は,S5において目標電流値をI1に設定し,S6にて,2C以上の充電電流,すなわち,I1で充電を開始する」ものである。
してみると,「充電回路部」は,「電池装着部7に電池パックが装着されていると判断した場合」に「充電を開始する」ものである。
(6)引用文献1の段落[0062]によれば,「ファン」は,「吸気口」から「ケース」内に空気を取りこみ,「排気口」を介して「ケース2の外部」に空気を「排気」するものである。
3 よって,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「電動工具の駆動用電源として用いられる電池パックを充電可能に構成されている充電装置であって,複数の通気窓からなる吸気口及び複数の通気窓からなる排気口が形成されたケースと,ケースの上面に設けられており,電池パックが装着される電池装着部と,ケースの内部に備えられ,電池装着部に電池パックが装着されていると判断した場合に充電を開始する充電回路部と,吸気口からケース内に空気を取りこみ,排気口を介してケースの外部に空気を排気するファンと,を備えた充電装置。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「電動工具の駆動用電源として用いられる電池パック」は,電動工具を駆動させるための電池パックであるから,本願発明の「電動工具のバッテリパック」に相当する。
してみると,引用発明の「電動工具に着脱可能に構成される電池パックを充電可能に構成されている充電装置」は,本願発明の「電動工具のバッテリパックを充電する充電器」に相当する。
(2)引用発明の「複数の通気窓からなる吸気口」は,本願発明の「ハウジングに形成された複数の吸気穴を有し」た「吸気ポート」に相当する。また,引用発明の「吸気口」「が形成されたケース」は,本願発明の「吸気ポート」「を有するハウジング」に相当する。
そして,引用発明の「複数の通気窓からなる排気口」は,本願発明の「ハウジングに形成された複数の排気穴を有し」た「排気ポート」に相当する。また,引用発明の「排気口」「が形成されたケース」は,本願発明の「排気ポート」「を有するハウジング」に相当する。
但し,引用発明は「複数の吸気穴のそれぞれの内接円は,複数の排気穴のいずれの内接円よりも小さい」ことは特定されていない点で,本願発明と相違する。
(3)引用発明の「ケースの上面に設けられており,電池パックが装着される電池装着部」は,ケース上で電池パックを着脱可能に受け入れ,電池パックの接続端子に接続されるものといえる(引用文献1の段落[0059],[0078],及び[0080]を参照)から,本願発明の「前記ハウジング上に設けられており,前記バッテリパックを着脱可能に受け入れるバッテリインターフェース」に相当する。
(4)引用発明の「ケースの内部に備えられ,電池装着部に電池パックが装着されていると判断した場合に充電を開始する充電回路部」は,ケース内に設けられ,電池装着部に装着されている電池パックに充電するものといえるから,本願発明の「前記ハウジング内に設けられており,前記バッテリインターフェースに取り付けられた前記バッテリパックに充電電力を供給する充電回路」に相当する。
(5)引用発明の「ファン」は,吸気口からケース内に空気を取りこみ,排気口を介してケースの外部に空気を排気するものであるから,本願発明の「前記吸気ポートから前記ハウジング内に空気を導入するとともに,前記排気ポートから前記ハウジング外へ空気を排出する送風機」に相当する。
(6)以上の点より,引用発明の「充電装置」は,本願発明の「ハウジング」,「バッテリインターフェース」,「充電回路」,及び「送風機」に対応する構成を備える点で,本願発明の「充電器」に相当する。
2 一致点・相違点
したがって,本願発明と引用発明とは,
「電動工具のバッテリパックを充電する充電器であって,吸気ポート及び排気ポートを有するハウジングと,前記ハウジング上に設けられており,前記バッテリパックを着脱可能に受け入れるバッテリインターフェースと,前記ハウジング内に設けられており,前記バッテリインターフェースに取り付けられた前記バッテリパックに充電電力を供給する充電回路と,前記吸気ポートから前記ハウジング内に空気を導入するとともに,前記排気ポートから前記ハウジング外へ空気を排出する送風機と,を備え,前記吸気ポートは,前記ハウジングに形成された複数の吸気穴を有し,前記排気ポートは,前記ハウジングに形成された複数の排気穴を有する,充電器。」
である点で一致し,以下の点で相違する。
<相違点>
本願発明は,「複数の吸気穴のそれぞれの内接円は,複数の排気穴のいずれの内接円よりも小さい」のに対して,引用発明は,そのような構成であることは特定されていない点。
3 相違点の判断
ハウジング内に埃が侵入するという課題を解決するために,「複数の吸気穴のそれぞれの内接円は,複数の排気穴のいずれの内接円よりも小さい」構成とし,ハウジング内に侵入した埃を排気ポートからより多く排出する効果を得ることは,引用文献2(段落【0002】,【0006】,【0010】,【0012】ないし【0027】,図1ないし4,及び図7を参照。吸気口7の開き目の最小寸法t1が,排気口8の開き目の最小寸法t3より小さい点。),及び引用文献3(段落【0008】ないし【0010】,【0033】ないし【0038】,及び図7ないし9を参照。吸気口15のスリットの隙間間隔または貫通孔の直径をA,排気口14のスリットの隙間間隔または貫通孔の直径をCとしたとき,A<Cの関係を満足する点。)に記載されているように,周知の技術事項である。
そして,ハウジング内に埃が侵入するという課題は,引用文献3に記載されているように(段落【0008】ないし【0009】,及び【0038】を参照),ファンにより吸気口から吸気して排気口から送風するように構成された装置全般の課題である。
してみると,引用発明も,ファンにより吸気口から空気を取り込み,排気口から排気するように構成されたものであるから,前記課題を有することは当業者には自明である。よって,引用発明の吸気ポート及び排気ポートに,前記課題を解決すべく周知の技術事項を適用して相違点に係る構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。
第6 審判請求人の主張について
1 審判請求人は審判請求書において,要するに以下の2点から,引用発明に周知の技術事項を適用することは当業者が容易に想到し得たことではない旨主張している。
(1)引用文献1の段落0075には,「第1ファン5及び第2ファン6に近接して設けた排気口22a,23aを吸気口とし,吸気口24aを排気口として,これらファン5,6によって空気をケース2内に取りこむ構成としてもよい」こと,及び「第1ファン5及び第2ファン6によって空気と共に粉塵が吸い込まれ排気口(22a,23a)に詰まってしまうおそれがある。従って,第1ファン5及び第2ファン6によってケース2外に風を排出する構成とすることで,発熱素子の冷却効率を高めることができると共に,排気口(22a,23a)の目詰まりを抑制することができる」ことが記載されている。
この記載によれば,排気口22a,23aを吸気口とした場合,第1ファン5及び第2ファン6によって空気と共に吸い込まれる粉塵の一部が,排気口22a,23aを通過することなく,排気口22a,23aを目詰まりさせるものと理解される。してみると,排気口22a,23aを目詰まりさせるのは,ハウジング(ケース)外に存在する粉塵であって,ハウジング内に存在する粉塵ではない。
したがって,引用文献1の段落[0075]の記載は,粉塵がハウジング内に浸入することを問題視するものではなく,ハウジング内に侵入した粉塵の排出を特に必要とするものでもないから,引用発明に周知の技術事項を適用する必要性は生じない。
(2)引用文献2,3に記載された周知の技術事項は,粉塵がハウジング内に侵入することを防止するために,吸気口のサイズを小さくすることによって,目の細かい吸気口をいわばフィルターとして機能させるものであり,このような構成では,粉塵の侵入を防止することができる一方で,吸気口の目詰まりは助長されることになる(例えば,引用文献2の図7参照)。
よって,引用発明に周知の技術事項を適用すれば,吸気口24a(又は吸気口として機能する排気口22a,23a)の目詰まりを助長することになるから,引用文献1に記載された内容,特に引用文献1の段落[0075]に記載された「排気口(22a,23a)の目詰まりを抑制すること」に反する。
2 そこで,前記主張について検討する。
(1)前記「1(1)」の主張について
前記「第5」の「3」のとおり,引用発明がハウジング内に埃が侵入する旨の課題を有することは,ファンにより吸気口から吸気して排気口から送風するように構成された装置全般の課題であるから,引用発明において前記課題を解決すべく周知の技術事項を適用する旨の動機付け(審判請求人のいう「必要性」)が生じるものと認められる。
よって,前記「1(1)」の主張は採用できない。
(2)前記「1(2)」の主張について
ア 引用発明は「吸気口からケース内に空気を取りこみ,排気口を介してケースの外部に取りこまれた空気を排気する」ものであって,引用文献1の段落[0075]に記載されたような「第1ファン5及び第2ファン6に近接して設けた排気口22a,23aを吸気口とし,吸気口24aを排気口として,これらファン5,6によって空気をケース2内に取りこむ構成」とするものではない。
よって,引用発明には,周知の技術事項の適用に際して,「粉塵が吸い込まれ排気口(22a,23a)に詰まってしまう」ことに基づく阻害要因は認められない。
イ 周知の技術事項に係る「複数の吸気穴のそれぞれの内接円は,複数の排気穴のいずれの内接円よりも小さい」という構成は,審判請求人が主張するような,吸気穴のサイズを小さくすることだけでなく,排気穴のサイズを大きくすることによっても達成し得るものである。したがって,周知の技術事項を適用することが,一概に吸気穴の目詰まりを助長するものとはいえない。
よって,仮に引用発明が「吸気口」において目詰まりが発生するものであったとしても,引用発明に周知の技術事項を適用することが,引用文献1に記載された内容,特に目詰まりに係る事項に反するものとはいえない。
ウ 以上の点より,前記「1(2)」の主張は採用できない。
第7 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,引用文献1に記載された発明,並びに,引用文献2及び引用文献3に記載された周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,その余の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2021-007931