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特許拒絶査定不服審判

2025-001850

電力供給システム

審判番号
2025-001850
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2022-092836
請求日
2025年02月06日
審決日
2026年06月23日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】矢崎総業株式会社
  • 【請求人代理人】瀧野 文雄
  • 【請求人代理人】津田 俊明
  • 【請求人代理人】福田 康弘
審判長/審判官
  • 審判長 丸山 高政
  • 審判官 寺谷 大亮
  • 審判官 行武 哲太郎
分類
P18 .121-WZ (H02J)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2022- 92836「電力供給システム」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年12月20日出願公開、特開2023-179911〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和4年6月8日に出願された特願2022-92836号であり、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和6年 7月30日付け:拒絶理由通知書 同年 9月 4日 :意見書、手続補正書 同年12月 9日付け:拒絶査定 令和7年 2月 6日 :審判請求書、手続補正書 同年12月19日付け:拒絶理由通知書 令和8年 2月18日 :意見書 第2 本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年9月4日の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、以下のとおり、A~Fに分説し、分説した発明特定事項を「発明特定事項A」のように参照する。 A 入力された電力を第1の電圧の直流電力に変換し、当該第1の電圧の直流電力を出力する電力変換器と、 B 前記電力変換器と第1の負荷との間に接続された第1の電力供給線と、 C 第2の負荷に接続された第2の電力供給線と、 D 前記第1の電力供給線と前記第2の電力供給線との間に接続され、前記第1の電力供給線の電圧と前記第2の電力供給線の電圧との間の比を一定に保つ変圧器と、 E 前記第2の電力供給線に接続されたバッテリと、を有する F 電力供給システム。 第3 拒絶の理由 令和7年12月19日付けで当審において通知した拒絶理由のうち、本願発明についてのものは、次のとおりである。 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明並びに引用文献2及び3に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1.自動車業界に新しい設計概念を、モジュールを組み合わせてあらゆる電力レベルに対応[online]、EE Times Japan、2020年8月18日、インターネット<URL:https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2008/18/news001.html> 引用文献2.特開2012-115031号公報 引用文献3.特開2020-88965号公報 第4 引用文献の記載、引用発明及び周知技術 1 引用文献1及び引用発明 (1)引用文献1の記載事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下、同じ。)。 ア 「自然な流れだった自動車市場への参入」欄、第5段落 「 自動車に搭載されている電力供給システムのアーキテクチャは、大きく以下の4つに分けられる。 ・超高電圧から低電圧への変換(800Vから48V):エンジン冷却水ポンプやアクティブサスペンション、シャシーシステムといった48V駆動のシステム向け ・高電圧から低電圧への変換(400Vから48V):パワーウィンドウ、シート用温度コントローラー、アクチュエーターなどの48V駆動のシステム向け ・低電圧から低電圧への変換(48Vから12Vなど):60V以下で絶縁が必要ない電圧範囲での変換。マイルドハイブリッドシステムや、DC-DCコンバーター、リニアレギュレーターなど向け ・超高電圧-高電圧の双方向変換(800V-400V):より高い電力での急速充電など」 イ 「4種類で300通りのソリューションを実現」欄、第2段落 「 製品のラインアップ自体はシンプルで、高電圧DC-DCコンバーターモジュール(HV DCM)、低電圧DC-DCコンバーターモジュール(LV DCM)、絶縁型電圧変換比固定DC-DCコンバーター(BCM)、非絶縁型電圧変換比固定DC-DCコンバーター(NBM)の4種類だ。これらを、必要な電力に応じて並列に接続できる。「必要な機能を組み合わせて作るブロックのようなイメージだ。4種類の製品で、あらゆる電力レベルに合わせて約300通りのソリューションを構築できる」(Wadden氏)」 ウ 「4種類で300通りのソリューションを実現」欄、1番目の図 [図:0001438877000001.jpg] (当審訳: [図:0001438877000002.jpg] ) エ 「4種類で300通りのソリューションを実現」欄、2番目の図 [図:0001438877000003.jpg] (当審訳: [図:0001438877000004.jpg] ) オ 「サーバ向けの既存品を生かした新製品も」欄、第1~3段落 「 Wadden氏は、2020~2021年にかけて、自動車向けで中心となるVicorの製品として「BCM6135シリーズ」や「NBM2317シリーズ」を挙げた。 BCM6135シリーズは、2020年5月末に欧州の自動車メーカーにサンプル出荷を始めたばかりの製品だ。800V/400Vから48Vへ降圧するDC-DCコンバーターで、出力電力は2.5kW。パッケージは61×35×7mmと非常に小型だ。効率は98%を実現している。Wadden氏によれば、同自動車メーカーは、BCM6135を並列に接続し、数キロワットの電力を出力しているという。「BCM6135を並列接続することで48Vを生成できるので、48Vバッテリーが完全に不要となった」(Wadden氏) NBM2317シリーズは、既存の12V/48V非絶縁型双方向DC-DCコンバーターモジュールだが、新たに自動車向けバージョンを発表した。出力は1kW(ピーク時)で、外径寸法は23×17×5mm。高い電力密度を実現している。現在、車載規格の認証取得中で、2021年初頭には出荷できる見込みだ。さらに、2kW版も開発を進めている。」 (2)引用発明 ア 前記(1)の記載事項によれば、以下のことがいえる。 (ア)前記(1)ウの図は、「自動車の電力供給」のためのシステムを示したものであると認められる。そのため、同図の実線は、電力供給線と解される。 また、同図の破線で囲まれたボックス(「400-800V」、「48V」及び「バスコンバータ」との記載が付されたボックス)は、電力供給線及びスイッチを介して「400V又は800Vバッテリー」が接続されていること、並びに前記(1)アの「超高電圧から低電圧への変換(800Vから48V)」及び「高電圧から低電圧への変換(400Vから48V)」の記載を踏まえると、400Vを48Vに変換するコンバータ(以下「400/48Vコンバータ」という。その他のコンバータも同様である。)又は800V/48Vコンバータであることを示したものと解される。 同様に、同図の「48V」及び「12V」との記載が付されたボックスは、48V/12Vコンバータを示したものと解される。 以上を踏まえると、前記(1)ウの図からは、「400V又は800Vバッテリー」と400V/48Vコンバータ又は800V/48Vコンバータとが電力供給線(以下、他の電力供給線と区別するため「電力供給線A」という。)を介して接続され、400V/48Vコンバータ又は800V/48Vコンバータと「48V負荷群」とが電力供給線(以下「電力供給線B」という。)を介して接続され、電力供給線Bと48V/12Vコンバータとが電力供給線(以下「電力供給線C」という。)を介して接続され、48V/12Vコンバータと「12V負荷群」とが電力供給線(以下「電力供給線D」という。)を介して接続された「自動車の電力供給」のシステムが見て取れる。 (イ)前記(1)エの図に示された「コンポーネント」の「HV DCM」は、前記(1)イの「高電圧DC-DCコンバーターモジュール(HV DCM)」のことであり、「400Vを48Vに」変換するものであるから、これは、前記(ア)の400V/48Vコンバータの一例であると解される。 同様に、前記(1)エの図に示された「BCM」は、前記(1)イの「絶縁型電圧変換比固定DC-DCコンバーター(BCM)」のことであり、「800Vを48Vに」変換するものであるから、前記(ア)の800V/48Vコンバータの一例であると解される。 (ウ)前記(1)オの「12V/48V非絶縁型双方向DC-DCコンバーターモジュール」である「NBM2317シリーズ」は、前記(1)イの「非絶縁型電圧変換比固定DC-DCコンバーター(NBM)」の製品群であることは明らかであるから、電圧変換比固定であると解され、また、前記(ア)の48V/12Vコンバータの一例であると解される。 イ したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の便宜のために、引用発明をa~hに分説し、「構成a」等として参照する。 [引用発明] a 自動車の電力供給のシステムであって、(前記ア(ア)) b 400V又は800Vバッテリーと400V/48Vコンバータ又は800V/48Vコンバータとが電力供給線Aを介して接続され、(前記ア(ア)) c 400V/48Vコンバータ又は800V/48Vコンバータと48V負荷群とが電力供給線Bを介して接続され、(前記ア(ア)) d 電力供給線Bと48V/12Vコンバータとが電力供給線Cを介して接続され、(前記ア(ア)) e 48V/12Vコンバータと12V負荷群とが電力供給線Dを介して接続され、(前記ア(ア)) f 400V/48Vコンバータは、高電圧DC-DCコンバーターモジュールであり、800V/48Vコンバータは、絶縁型電圧変換比固定DC-DCコンバーターであり、(前記ア(イ)) g 48V/12Vコンバータは、電圧変換比固定である12V/48V非絶縁型双方向DC-DCコンバーターモジュールである、(前記ア(ウ)) h 自動車の電力供給のシステム。(前記ア(ア)) 2 周知技術 (1)引用文献2の記載事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 「【0015】 以下、本発明の各実施形態を、図面を参照しながら説明する。 <第1の実施形態> 図1は、複数の電源系統を使用するハイブリッドシステムを搭載した車両に用いられる、本発明の第1の実施形態に係る車両電源システム1の概略構成を示す図である。図1に示す第1の実施形態に係る車両電源システム1は、高圧電源11と、低圧電源12と、補機用DC-DCコンバータ21と、メイン双方向DC-DCコンバータ22と、サブ双方向DC-DCコンバータ23と、ダイナミックブレーキ回路25と、キャパシタ27とを備える。」 「【0017】 まず、車両電源システム1に用いられる各構成の概要を説明する。 高圧電源11は、高電圧供給ラインAに接続され、ハイブリッドシステムの電気モータ等の装置(図示せず、請求項では第1の装置)に高電圧(この実施例では288V)を供給する電源である。この高圧電源11には、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池が用いられる。 低圧電源12は、低電圧供給ラインCに接続され、補機に低電圧(この実施例では12V)を供給する電源である。この低圧電源12には、鉛蓄電池等の二次電池が用いられる。なお、本実施例では、電子制御ブレーキ装置(図中では「ブレーキ-ECU」と表記)34を補機(請求項では第2の装置)の一例として説明する。 【0018】 補機用DC-DCコンバータ21は、高電圧供給ラインAに印加された高電圧を降圧して低電圧を生成する。この生成された低電圧は、低電圧供給ラインCを通じて低圧電源12に蓄電される。 メイン双方向DC-DCコンバータ22は、高圧電源11の高電圧を降圧して中間電圧(この実施例では42V)を生成する。この生成された中間電圧は、電動パワーステアリング装置31に供給される。また、メイン双方向DC-DCコンバータ22は、中間電圧供給ラインBに発生した回生電力から得られる余剰電圧を昇圧して、高電圧を生成する。この生成された高電圧は、高電圧供給ラインAを通じて高圧電源11に蓄電される。 サブ双方向DC-DCコンバータ23は、低圧電源12の低電圧を昇圧して中間電圧を生成する。この生成された中間電圧は、中間電圧供給ラインBのバックアップ電源として用いられる。また、サブ双方向DC-DCコンバータ23は、中間電圧供給ラインBに発生した回生電力から得られる余剰電圧を降圧して、低電圧を生成する。この生成された低電圧は、低電圧供給ラインCを通じて低圧電源12に蓄電される。」 「【図1】 [図:0001438877000005.jpg] 」 (2)引用文献3の記載事項 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 「【0016】 〔実施形態〕 図面を参照しながら実施形態に係る電源システムとしてのマルチ電源システム1について説明する。図1は、実施形態に係るマルチ電源システム1の構成例を示すブロック図である。マルチ電源システム1は、車両100に搭載され、当該車両100の各種構成要素に電力を供給するものである。車両100は、自動運転機能を有する電気自動車やプラグインハイブリッドカー等を想定しているが、これに限定されない。車両100は、図1に示すように、メイン動力発生源としてのメインM/G(Motor Generator)2と、走行系アクチュエータ3と、サブ動力発生源としてのサブM/G(Motor Generator)4と、複数の電装部品としての複数のECU(電子制御ユニット;Electronic Control Unit)5とを備えている。」 「【0023】 マルチ電源システム1は、車両100に搭載されるメインM/G2、走行系アクチュエータ3、サブM/G4等に電力を供給するものであり、電圧の異なる複数の電源系統を備えている。マルチ電源システム1は、例えば、ソーラーパネル10と、第1電源系統としての高圧バッテリ20と、第2電源系統としての48Vバッテリ(蓄電装置)30と、第3電源系統としての12Vバッテリ40と、DC/DCコンバータ50とを備えている。」 「【0027】 12Vバッテリ40は、電力を充放電する蓄電池であり、高圧バッテリ20及び48Vバッテリ30とは異なる供給電圧である。12Vバッテリ40は、例えば、高圧バッテリ20及び12Vバッテリ40よりも供給電圧が低く、例えば供給電圧が12V程度である。12Vバッテリ40は、各ECU5に接続され、当該各ECU5に電力を供給する。12Vバッテリ40は、ソーラーパネル10に接続され、当該ソーラーパネル10から供給される電力を充電する。12Vバッテリ40は、DC/DCコンバータ50を介して高圧バッテリ20に接続され、当該高圧バッテリ20から供給される電力を充電し且つ高圧バッテリ20に電力を供給する。12Vバッテリ40は、DC/DCコンバータ50を介して48Vバッテリ30に接続され、当該48Vバッテリ30から供給される電力を充電する。」 (3)文献Aの記載事項 当審決において周知技術を示すために引用する特開2018-174625号公報(以下「文献A」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【0012】 (実施形態1) 車両用電源システムに係る実施形態について、図1~図3を参照して説明する。 本実施形態の車両用電源システム1は、車両に搭載された電源システムである。 車両用電源システム1は、図1に示すごとく、メインバッテリ2と、電力変換装置3と、スイッチ4a、4bと、第1DC-DCコンバータ51と、第2DC-DCコンバータ52と、を有する。」 「【0020】 メインバッテリ2とスイッチ4a、4bとの間の電源配線12P、12Nに、メインバッテリ2を監視、制御するバッテリ監視ユニット14が接続されている。 第1DC-DCコンバータ51は、スイッチ4a、4bと電力変換装置3との間の、正負一対の電源配線11P、11Nに接続されている。第1DC-DCコンバータ51における、電源配線11P、11Nと反対側には、サブバッテリ15が接続されている。そして、第1DC-DCコンバータ51は、メインバッテリ2の直流電力を降圧してサブバッテリ15に供給することができる。 【0021】 また、第1DC-DCコンバータ51は、サブバッテリ15の直流電力を昇圧して、電源配線11P、11Nへ供給することもできる。第1DC-DCコンバータ51から電源配線11P、11Nへ供給された電力は、電力変換装置3に供給されて回転電機131の駆動に用いられ、或いは、メインバッテリ2の充電に用いられる。 このように、第1DC-DCコンバータ51は、電源配線11P、11N側からサブバッテリ15側へ降圧することができると共に、サブバッテリ15側から電源配線11P、11N側へ昇圧することができるよう構成された、双方向DC-DCコンバータである。」 「【0024】 サブバッテリ15は、メインバッテリ2よりも低電圧のバッテリである。例えば、メインバッテリ2の電圧は300V程度であり、サブバッテリ15の電圧は12V程度である。サブバッテリ15は、例えば、パワーステアリング、エアコン、ランプ等の補機16に電気的に接続されている。また、サブバッテリ15の電力は、例えば、車両用のECU(電子制御ユニット)の作動、ハイブリッドシステムの起動にも用いられる。」 「【図1】 [図:0001438877000006.jpg] 」 (4)周知技術 引用文献2、引用文献3及び文献Aの前記(1)~(3)の記載事項によれば、以下のことがいえる。 ア 周知技術1 (ア)引用文献2の「高圧電源11」は、「ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の二次電池」である(【0017】)から、高圧バッテリーといえる。また、引用文献2の「低圧電源12」は、「補機」に「12V」を「供給する電源」であって、「鉛蓄電池等の二次電池」である(【0017】)から、12Vの補機用バッテリーといえる。 (イ)引用文献3の「12Vバッテリ40」は、「各ECU5に電力を供給する」(【0027】)ものであり、この「ECU5」は「電装部品としての」(【0016】)もの、すなわち車両の補機であるから、「12Vバッテリ40」は、12Vの補機用バッテリーといえる。 (ウ)文献Aの「メインバッテリ2」は、「電圧」が「300V程度であり」(【0024】)、「電圧」が「12V程度である」「サブバッテリ15」(【0024】)より高圧であるから、高圧バッテリーといえる。また、文献Aの前記「サブバッテリ15」は、「補機16に電気的に接続され」(【0024】)、該「補機16」に電力を供給すると解されるから、12Vの補機用バッテリーといえる。 (エ)そうすると、引用文献2、引用文献3及び文献Aはいずれも、高圧バッテリーとは別に12Vの補機用バッテリーを備える車両の電力供給システムを示しており、かかる車両の電力供給システムは、本願出願前に周知であったと認められる(以下、当該技術を「周知技術1」という。)。 イ 周知技術2 (ア)引用文献2の「車両電源システム1」(【0015】)は、「サブ双方向DC-DCコンバータ23」が、「低圧電源12」の「低電圧を昇圧して中間電圧を生成して」、「中間電圧供給ラインBのバックアップ電源として用い」る(【0018】)、すなわち「中間電圧供給ラインB」に電力を供給するものであり、該「低圧電源12」は、前記ア(ア)のとおり、補機用バッテリーといえるものである。 (イ)文献Aの「車両用電源システム1」(【0012】)は、「双方向DC-DCコンバータである」「第1DC-DCコンバータ51」が、「サブバッテリ15の直流電力を昇圧して、電源配線11P、11Nへ供給することもできる」(【0021】)ものであり、該「サブバッテリ15」は、前記ア(ウ)のとおり、補機用バッテリーといえるものである。 (ウ)以上によれば、引用文献2及び文献Aはいずれも、車両用の電力供給システムにおいて、補機用バッテリーの電力を、双方向コンバータによって昇圧して別の電力供給線に供給する技術を示しており、該技術は、本願出願前に周知であったと認められる(以下、当該技術を「周知技術2」という。)。 第5 対比 本願発明と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。 1 発明特定事項Aについて 発明特定事項Aは、「入力された電力を第1の電圧の直流電力に変換し、当該第1の電圧の直流電力を出力する電力変換器と、」である。 引用発明の「400V/48Vコンバータ」及び「800V/48Vコンバータ」(構成b)は、「電力供給線Aを介して接続され」た「400V又は800Vバッテリー」からの電力を「48V」の電力に変換して、「接続され」た「電力供給線B」(構成c)に出力すると解される。そのため、引用発明の「400V/48Vコンバータ」及び「800V/48Vコンバータ」は、本願発明の「電力変換器」に相当し、引用発明の「400V又は800Vバッテリー」からの「電力」は、本願発明の「入力された電力」に相当する。また、引用発明の「400V/48Vコンバータ」は「高電圧DC-DCコンバーターモジュールであり」(構成f)、「800V/48Vコンバータ」は「絶縁型電圧変換比固定DC-DCコンバーターであ」る(構成f)から、これらの「コンバータ」が出力する前記「48V」の電力が直流(DC)であることは明らかであり、該「48V」の電力は、本願発明の「第1の電圧の直流電力」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明は、「入力された電力を第1の電圧の直流電力に変換し、当該第1の電圧の直流電力を出力する電力変換器」を有する点で一致する。 2 発明特定事項Bについて 発明特定事項Bは、「前記電力変換器と第1の負荷との間に接続された第1の電力供給線と、」である。 引用発明は、「400V/48Vコンバータ又は800V/48Vコンバータと48V負荷群とが電力供給線Bを介して接続され」る(構成c)ものであり、該「48V負荷」は、本願発明の「第1の負荷」に相当し、該「電力供給線B」は、「第1の電力供給線」に相当する。 よって、前記1も踏まえると、本願発明と引用発明は、「前記電力変換器と第1の負荷との間に接続された第1の電力供給線」を有する点で一致する。 3 発明特定事項Cについて 発明特定事項Cは、「第2の負荷に接続された第2の電力供給線と、」である。 引用発明は、「48V/12Vコンバータと12V負荷群とが電力供給線Dを介して接続され」る(構成e)ものであり、該「12V負荷」は、本願発明の「第2の負荷」に相当し、該「電力供給線D」は、本願発明の「第2の電力供給線」に相当する。 よって、本願発明と引用発明は、「第2の負荷に接続された第2の電力供給線」を有する点で一致する。 4 発明特定事項Dについて 発明特定事項Dは、「前記第1の電力供給線と前記第2の電力供給線との間に接続され、前記第1の電力供給線の電圧と前記第2の電力供給線の電圧との間の比を一定に保つ変圧器と、」である。 (1)引用発明は、前記3のとおり「48V/12Vコンバータと12V負荷群とが電力供給線Dを介して接続され」、また、「電力供給線Bと48V/12Vコンバータとが電力供給線Cを介して接続され」る(構成d)ものである。そうすると、該「48V/12Vコンバータ」は、「電力供給線D」と「接続」し、かつ、「電力供給線Cを介して」「電力供給線B」とも「接続」しているから、「電力供給線B」と「電力供給線D」との間に「接続」されているといえる。そして、「48V/12Vコンバータ」は、本願発明の「変圧器」に相当するから、前記2及び3も踏まえると、本願発明と引用発明は、「変圧器」が「前記第1の電力供給線と前記第2の電力供給線との間に接続され」ている点で一致する。 (2)引用発明の「48V/12Vコンバータ」は、「電圧変換比固定である12V/48V非絶縁型双方向DC-DCコンバーターモジュールである」(構成g)から、「48V/12Vコンバータ」に接続された「電力供給線C」と「電力供給線D」(前記(1))との間の「電圧変換比」が「固定」、すなわち「電圧変換比」が一定に保たれると解され、「電力供給線C」が接続された「電力供給線B」の「電圧」と「電力供給線D」の「電圧」との比も一定に保たれると、当然に解される。よって、本願発明と引用発明は、「変圧器」が「前記第1の電力供給線の電圧と前記第2の電力供給線の電圧との間の比を一定に保つ」点で一致する。 (3)したがって、本願発明と引用発明は、「「前記第1の電力供給線と前記第2の電力供給線との間に接続され、前記第1の電力供給線の電圧と前記第2の電力供給線の電圧との間の比を一定に保つ変圧器」を有する点で一致する。 5 発明特定事項Eについて 発明特定事項Eは、「前記第2の電力供給線に接続されたバッテリと、を有する」である。 引用発明は、「48V/12Vコンバータと12V負荷群と」を「接続」する「電力供給線D」にバッテリは接続されていない。 よって、本願発明と引用発明は、本願発明が「前記第2の電力供給線に接続されたバッテリ」を有するのに対し、引用発明はそのようなバッテリを有しない点で相違する。 6 発明特定事項Fについて 発明特定事項Fは、「電力供給システム。」である。 引用発明は、「自動車の電力供給のシステム」(構成a)であるから、本願発明と引用発明は、「電力供給システム」である点で一致する。 7 一致点、相違点 前記1~6によれば、本願発明と引用発明とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点] 入力された電力を第1の電圧の直流電力に変換し、当該第1の電圧の直流電力を出力する電力変換器と、 前記電力変換器と第1の負荷との間に接続された第1の電力供給線と、 第2の負荷に接続された第2の電力供給線と、 前記第1の電力供給線と前記第2の電力供給線との間に接続され、前記第1の電力供給線の電圧と前記第2の電力供給線の電圧との間の比を一定に保つ変圧器と、 を有する電力供給システム。 [相違点] 本願発明は、「前記第2の電力供給線に接続されたバッテリ」を有するのに対し、引用発明は、そのようなバッテリを有しない点。(発明特定事項E) 第6 判断 1 相違点について 引用発明の「48V/12Vコンバータ」が「電圧変換比固定である12V/48V非絶縁型双方向DC-DCコンバーターモジュール」である(構成g)から、引用発明は、該「48V/12Vコンバータ」が、接続された「電力供給線D」(構成e)からの電力(12V)を変換(昇圧)して、接続された「電力供給線C」に電力(48V)を供給することを示唆するものであり、これは、「電力供給線D」に電力(12V)の電源が接続されることを示唆するものといえる。 そして、前記第4、2(4)ア(エ)に周知技術1として示したとおり、高圧バッテリーとは別に12Vの補機用バッテリーを備える車両の電力供給システムは、本願出願前に周知であったことに鑑みれば、引用発明を、「電力供給線D」に12Vの補機用バッテリーを接続した構成にすること、すなわち、相違点に係る発明特定事項Eの構成にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 2 作用効果について 前記第4、2(4)イ(ウ)に周知技術2として示したとおり、車両用の電力供給システムにおいて、補機用バッテリーの電力を、双方向コンバータによって昇圧して別の電力供給線に供給することも、本願出願前に周知であったことに鑑みれば、本願発明が奏する「電力供給が冗長化された電力供給システムを簡易なシステム構成により提供することが可能になる」(【0009】)との作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 3 小括 よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7 請求人の主張について 1 請求人の主張の概要 請求人は、令和8年2月18日の意見書において、概略、以下のとおり主張する。 (1)引用文献1において、「12V負荷」と「48V/12Vコンバータ」(「NBM2317シリーズ」)とを接続するラインは、電源どころか、他の負荷でさえ接続されておらず、バスではないから、「48V/12Vコンバータ」(「NBM2317シリーズ」)にバスを介して「12V負荷」を接続し、このバスに電源を接続することは全く想定されていない。(意見書「2.」第5段落) (2)引用文献1-5のいずれにも、「電力供給源200、電力変換器110の状態に応じた制御を変圧器140に対して行うことなく、電力供給源200、電力変換器110の状態に関わらず、第1の負荷300、第2の負荷400に電力を供給する」との技術的課題が全く認識されていない以上、たとえ引用文献1-5を考慮したとしても、本願発明と同様の構成に引用文献1を変形する動機付けは全く存在しない。(意見書「2.」第6段落) 2 請求人の主張についての検討 (1)前記1(1)の主張について、前記第6、1に示したとおり、引用発明は、「48V/12Vコンバータ」と「12V負荷群」とが接続される「電力供給線D」に、電力(12V)の電源が接続されることを示唆するものである。 そのため、「電力供給線D」がバスか否かについて論じるまでもなく、前記1(1)の主張は理由がない。 (2)前記1(2)の主張について検討する。 本願発明が、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものであることは、前記第6、1及び2で検討したとおりである。 請求人が主張する、電力供給源200、電力変換器110の状態に関わらず、第1の負荷300、第2の負荷400に電力を供給するとの課題は、前記第6、2で検討した、電力供給の冗長化との作用効果に対応するものと解されるところ、該作用効果が何ら格別なものでないことは、前記第6、2に示したとおりである。 また、請求人が主張する、電力供給源200、電力変換器110の状態に応じた制御を変圧器140に対して行わない点については、請求項の記載に基づくものとはいえない。 よって、前記1(2)の主張も理由がない。 (3)小括 以上のとおりであるから、請求人の主張は採用することができない。 第8 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2025-001850

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