特許拒絶査定不服審判
2021-005782
LEDモジュール
- 審判番号
- 2021-005782
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-508385
- 請求日
- 2021年05月06日
- 審決日
- 2022年01月25日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
- 【請求人代理人】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 正文
- 審判官 棚田 一也
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P18 .121-Z (H01L) / P18 .537-Z (H01L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-508385「LEDモジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月21日国際公開、WO2019/034562、令和 2年10月22日国内公表、特表2020-530665〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年8月10日(優先権主張 2017年8月14日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年 9月10日付け:拒絶理由通知
令和 2年12月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年12月22日付け:拒絶査定
令和 3年 5月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
第2 令和3年5月6日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和3年5月6日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正
(1)本件補正による特許請求の範囲の請求項1の記載
本件補正による特許請求の範囲のうち、請求項1は次のとおりである(下線は、補正箇所を示す。以下同じ。)。
「【請求項1】
多層セラミックからなる熱伝導性基板(11)と、
前記基板上の少なくとも1つのLED(1、2)と、
前記基板上に配置された受動SMD部品(4、5、6、8、9)と、
前記基板(11)内部に集積された受動部品(3)と、
廃熱を水平方向(17)および垂直方向(14)に放散する手段と、
硬質フレックス基板、またはフレックス基板(7)との接続を確立する前記基板の底面に配列されている端子(15)と、を有し、
前記硬質フレックス基板、または前記フレックス基板(7)は、可撓性キャリアを構成し、
前記熱伝導性基板(11)は、前記可撓性キャリアに実装されるように構成されていることを特徴とするLEDモジュール。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和2年12月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲のうち、請求項1は次のとおりである。
「【請求項1】
多層セラミックからなる熱伝導性基板(11)と、
前記基板上の少なくとも1つのLED(1、2)と、
前記基板上に配置された受動SMD部品(4、5、6、8、9)と、
前記基板(11)内部に集積された受動部品(3)と、
廃熱を水平方向(17)および垂直方向(14)に放散する手段と、
金属コア基板、硬質フレックス基板、またはフレックス基板(7)との接続を確立する前記基板の底面に配列されている端子(15)と、
を有することを特徴とするLEDモジュール。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「金属コア基板、硬質フレックス基板、またはフレックス基板(7)」から択一的記載の要素である「金属コア基板」を削除すると共に、「可撓性キャリアを構成し」との限定を付加し、「熱伝導性基板(11)」について「前記可撓性キャリアに実装されるように構成されている」との限定を付加するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正における請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)において請求項1に記載したとおりのものである。
(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2015-517740号公報(平成27年6月22日公表、以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0016】
もう1つの実施形態によれば、本発明による発光ダイオード装置は、少なくとも1つの電子デバイスを備える。この電子デバイスは、たとえば光電気的特性を全く有しない、ディスクリートな電子デバイスである。これはこの電子デバイスでは、特に発光も受光も行わない電子デバイスであることを意味する。この電子デバイスは、特に発光ダイオードチップと回路接続されている。好ましくはこの電子デバイスは、基板上に配設されている。」
「【0019】
もう1つの実施形態によれば、この電子デバイスは、表面実装可能な終端部を備える。たとえばこの電子デバイスは、表面実装可能なデバイス(SMD,"surface-mounted device")であってよい。この電子デバイスは、さらにBGAパッケージ形状(BGA,"Ball Grid Array")またはLGAパッケージ形状(BGA,"Land Grid Array")を有してよい。」
「【0020】
もう1つの実施形態によれば、この電子デバイスはサーミスタデバイスである。このサーミスタデバイスは、たとえばいわゆるNTCサーミスタデバイスとして実装されていてよく、ここで"NTC"は「負温度係数」("negative temperature coefficient")を表している。・・・(略)・・・」
「【0025】
もう1つの実施形態によれば、上記の発光ダイオードチップは、上記のキャビティ内に少なくとも部分的に沈み込んで配設されている。たとえばこの発光ダイオードは、この発光ダイオードチップの領域が上記のキャビティの上方に突出できるようにこのキャビティに配設されていてよい。この場合、稼働中に光が発生される、この発光ダイオードチップの活性領域が、このキャビティの上辺縁より低く配設されていると、とりわけ有利となり得る。これによって、たとえばこの発光ダイオードによって発生された光が、上記の基板に配設されたデバイスに直接当たり、これによって遮蔽されてしまうことを防止することができる。」
「【0043】
もう1つの実施形態によれば、上記の基体はビア(複数)を備える。ビアは、「垂直方向相互接続手段」("vertical interconnect access")であり、貫通接続部(Durchkontaktierung)を表している。好ましくは少なくとも1つの熱的ビアとして、すなわち熱伝導用貫通接続部として実装されている。・・・(略)・・・」
「【0045】
もう1つの実施形態によれば、上記の基板は、上記のキャビティに向いていない面にメタライジング部を備える。このメタライジング部は、少なくとも上記の基板のキャビティに向いていない面の全体に渡って延在してよい。代替としてこのメタライジング部は、この少なくとも上記の基板のキャビティに向いていない面の一部に渡って延在してよい。好ましくはこのメタライジング部は、上記の発光ダイオード装置の、たとえば基板または回路基板への接続に用いられる。このようにしてこのメタライジング部は、上記の基板の下面に配設されていてよく、一方上記のキャビティおよびとりわけ上記の発光ダイオードチップは、これと反対側の上面に配設されていてよい。」
「【0052】
本発明による発光ダイオード装置1は、ZnO-Biを含むセラミック基体21を備えた基板2を備える。代替として、この基体21は、たとえばZnO-Pr,SrTiO3または1つ以上のバリスタセラミックを含んでよい。さらに、この基体21は、バリスタセラミックおよびガラスからなる複合体またはバリスタセラミックおよび有機材料からなる複合体を備えてもよい。この基板2は、この基板2の上面特にこの基体21の上面にキャビティ51を備える。
【0053】
本発明による発光ダイオード装置1は、さらに、上記のキャビティ51内に少なくとも部分的に沈み込んで配設されている発光ダイオードチップ3を備える。有利にはこの発光ダイオードチップ3は、図1に示す実施形態例におけるように、上記のキャビティ51内に完全に沈み込んで配設されている。
【0054】
この発光ダイオード装置1は、さらに、上記の基板2の部分領域によって形成されるESD保護素子20を備える。このESD保護素子20は、以下で図5を参照して説明するように、バリスタとして実装されている。代替としてこのESD保護素子20は、上記の基板2に一体化された半導体ダイオードとして形成されていてよい。」
「【0058】
上記のキャビティ51に向いていない上記の基板2の面上には、上記の基体21へのメタライジング部12が取り付けられている。このメタライジング部12は、上記の発光ダイオード装置1への電気的接続に用いられる。上記の基板2およびとりわけ上記の基体21は、さらに貫通接続部および/または上記に示した素子の回路接続のための導電路を備える。これらの導電路はここでは図示し難いため示されていない。」
「【0064】
図3は、もう1つの実施形態例による発光ダイオード装置1を示す。図1に示す実施形態例と異なり、この発光ダイオード装置1は、もう1つのキャビティ52を備え、電子デバイス41がこのキャビティ内に完全に沈み込んで配設されている。こので電子デバイス41は、ここで示す実施形態例においてもNTCサーミスタデバイスとして実装されている。代替としてこの電子デバイス41は、PTCサーミスタ素子として実装されていてよい。
【0065】
上記の基体21は、さらに熱的ビアとして実装されているビア(複数)8を備える。これらのビア8は、上記の発光ダイオードチップ3の接続面10から電気的導通が絶縁されており、稼働中のこの発光ダイオードチップで生成される熱の放散のために機能する。このため、ここで示す実施形態例においては、これらのビア8は、銅を含む。代替として、これらのビア8は、高い熱伝導率を有する他の材料、たとえば銀または銀-パラジウムを含んでよい。これらのビア8は、上記の基体21の表面に対してほぼ垂直方向に延在している。さらに1つ以上のビア、好ましくは少なくとも2つのビアが、電気的ビアとして実装されていてよく、これらの電気的ビアは、上記の発光ダイオードチップ3の接続面10と電気的に導通して接続されており、この発光ダイオードチップ3の電気的接続に用いられる。」
「【0067】
本発明による発光ダイオード装置1の基板2は、有機材料を含む、あるいは有機材料からなる基体21を備える。このための代替として、この基体21は、酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムを含み、あるいは酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムから成っていてよい。」
「【0070】
図5は、1つの実施形態例による、ESD保護素子20の概略図を示す。このESD保護素子20は、ZnO-Prから成るセラミックバリスタ材料を備え、ビア8を用いて電気的に接続される複数の互いに重なった電極13を備える。代替としてこのバリスタ材料は、ZnO-BiまたはSrTiO3を含んでよい。さらに、このESD保護素子20は、ZnO-Prおよびガラスからなる複合体またはZnO-Prおよび有機材料からなる複合体を備えてもよい。この図5に示すESD保護素子20は、好ましくは、図1~4に示すように、1つの発光ダイオード装置1の1つの基板2に一体化されている。たとえばこのESD保護素子20は、この基板2または基体21に埋め込まれていてよい。以上によりESD保護を含む1つの発光ダイオード装置1のコンパクトな設計を実現することができる。」
図3
[図:0001385809000001.jpg]
図5
[図:0001385809000002.jpg]
(イ)上記(ア)によれば、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
a 段落【0052】には「本発明による発光ダイオード装置1は」「基板2を備え」、「この基板2は、この基板2の上面」「にキャビティ51を備える」と記載され、【0053】には「発光ダイオード装置1は」「キャビティ51内に」「発光ダイオードチップ3を備える」と記載されている。
よって、発光ダイオード装置は、基板を備え、基板はこの基板の上面にキャビティを備え、キャビティ内に発光ダイオードチップを備える。
b 段落【0025】には「稼働中に光が発生される、この発光ダイオードチップの活性領域が、このキャビティの上辺縁より低く配設され」と記載されている。
よって、稼働中に光が発生される発光ダイオードチップの活性領域はキャビティの上辺縁より低く配設される。
c 段落【0016】には「本発明による発光ダイオード装置は」「電子デバイスを備え」、「この電子デバイスは、基板上に配設されている」と記載され、段落【0019】には「この電子デバイスは、表面実装可能なデバイス(SMD,"surface-mounted device")であってよい」と記載されている。よって、発光ダイオード装置が備える「電子デバイスは」「表面実装可能なデバイスである」といえる。
段落【0064】には「発光ダイオード装置1は、もう1つのキャビティ52を備え、電子デバイス41がこのキャビティ内に」「配設され」、「電子デバイス41は」「NTCサーミスタデバイスとして実装されている」と記載されている。よって、「電子デバイス41」が「もう1つのキャビティ52」「内に」「配設され」、「電子デバイス41は」「NTCサーミスタデバイスとして実装されている」といえる。
図3から「発光ダイオード装置1」の「基板2」は上面に「キャビティ52」を備えることが見て取れる。
以上のことから、「発光ダイオード装置1」の「基板2」は上面に「キャビティ52」を備え、「電子デバイス41」が「もう1つのキャビティ52」「内に」「配設され」、「電子デバイスは」「NTCサーミスタデバイスとして実装され」、発光ダイオード装置が備える「電子デバイスは」「表面実装可能なデバイスである」といえる。
したがって、発光ダイオード装置の基板は上面にもう1つのキャビティを備え、電子デバイスがもう1つのキャビティ内にNTCサーミスタデバイスとして実装され、この電子デバイスは表面実装可能なデバイスである。
d 段落【0054】には「このESD保護素子20は、以下で図5を参照して説明するように、バリスタとして実装されている」と記載され、段落【0070】には「この図5に示すESD保護素子20は」「基板2に一体化され」、「ESD保護素子20は」「基板2または基体21に埋め込まれていてよい」と記載されている。
よって、ESD保護素子はバリスタとして実装され、基板に一体化され埋め込まれている。
e 段落【0067】には「発光ダイオード装置1の基板2は」「基体21を備え」、「この基体21は」「酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムから成っていてよい。」と記載されている。
よって、発光ダイオード装置の基板は基体を備え、基体は酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムから成る。
f 段落【0065】には「基体21は」「熱的ビアとして実装されているビア(複数)8を備え」、「ビア8は、上記の基体21の表面に対してほぼ垂直方向に延在している」と記載されている。
また、段落【0043】には「熱的ビアとして、すなわち熱伝導用貫通接続部として」と記載されている。
よって、基体は熱的ビアとして、すなわち熱伝導用貫通接続部として実装されているビアを備え、ビアは基体の表面に対してほぼ垂直方向に延在している。
g 段落【0045】には「上記の基板は、上記のキャビティに向いていない面にメタライジング部を備え」、「このメタライジング部は、上記の発光ダイオード装置の」「基板または回路基板への接続に用いられる」と記載されている。
さらに、図3から、キャビティに向いていない基板の下面上にメタライジング部12が取り付けられた構造が見て取れる。
よって、キャビティに向いていない基板の下面上にはメタライジング部が取り付けられ、メタライジング部は発光ダイオード装置の、基板または回路基板への接続に用いられるものである。
(ウ)上記(イ)aないしgによれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「基板を備え、基板はこの基板の上面にキャビティを備え、キャビティ内に発光ダイオードチップを備え、
稼働中に光が発生される発光ダイオードチップの活性領域はキャビティの上辺縁より低く配設され、
基板は上面にもう1つのキャビティを備え、電子デバイスがもう1つのキャビティ内にNTCサーミスタデバイスとして実装され、この電子デバイスは表面実装可能なデバイスであり、
ESD保護素子はバリスタとして実装され、基板に一体化され埋め込まれ、
基板は基体を備え、基体は酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムから成り、
基体は熱的ビアとして、すなわち熱伝導用貫通接続部として実装されているビアを備え、ビアは基体の表面に対してほぼ垂直方向に延在し、
キャビティに向いていない基板の下面上にはメタライジング部が取り付けられ、メタライジング部は発光ダイオード装置の、基板または回路基板への接続に用いられる、
発光ダイオード装置。」
イ 引用文献2
(ア)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-128512号公報(平成18年5月18日公開、以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「【0010】
基板本体1Mの第一主表面側には、搭載される発光素子チップ4の通電端子が電気的に接続される素子搭載用金属パッド16が露出形成されている。・・・・(中略)・・・照明モジュール301の要部をなす発光素子用セラミック基板1は、セラミック層15と金属層24,25,26とが交互に積層された基板本体1Mを有する。セラミック層15は熱伝導率の比較的良好な酸化アルミニウムあるいは窒化アルミニウム等で構成される。・・・(中略)・・・
【0011】
・・・(中略)・・・そして、基板本体1Mの厚さ方向の途中の位置には、基板本体1Mの板面に沿う面状形態をなすとともに、素子搭載用金属パッド16上に搭載された発光素子チップ4の面内放熱路として機能する金属にて構成される放熱用面導体24,25が埋設されている。基板本体1Mはセラミックにて構成されるので熱伝導率が比較的小さいが、金属にて構成される放熱用面導体24,25がその厚さ方向の途中の位置に介在することで複数のセラミック層15に分割され、個々の層15は厚さ方向の熱拡散距離が縮小される。・・・(略)・・・
【0012】
以下、さらに詳細に説明する。
基板本体1Mは、第二主表面を覆う形で裏面側面導体26が配置され、基板本体1Mを厚さ方向に貫通する形で素子搭載用金属パッド16と裏面側面導体26とを電気的に接続するとともに、素子搭載用金属パッド16上に搭載された発光素子チップ4の厚さ方向の放熱路として機能する放熱ビア導体27が形成されている。・・・(略)・・・」
(イ)上記(ア)によれば、引用文献2には、次の技術的事項a、bが記載されていると認められる。
a 段落【0010】には「発光素子用セラミック基板1は、セラミック層15と金属層24,25,26とが交互に積層された基板本体1Mを有する。」及び「セラミック層15は熱伝導率の比較的良好な酸化アルミニウムあるいは窒化アルミニウム等で構成される」と記載されている。よって、発光素子用セラミック基板が基板本体を有し、基板本体はセラミック層と金属層とが交互に積層された構造であり、セラミック層は熱伝導率の比較的良好な酸化アルミニウムあるいは窒化アルミニウム等で構成されるといえる。
段落【0010】には「基板本体1Mの第一主表面側には、搭載される発光素子チップ」と記載され、段落【0012】には「基板本体1Mは」「放熱ビア導体27が形成されている」と記載されている。よって、基板本体は発光素子チップが搭載され、放熱ビア導体が形成されたものといえる。
以上のことから、引用文献2には次の技術的事項aが記載されているといえる。
「発光素子用セラミック基板が、発光素子チップが搭載され、放熱ビア導体が形成された基板本体を有し、基板本体をセラミック層と金属層とが交互に積層された構造とし、セラミック層を熱伝導率の比較的良好な酸化アルミニウムあるいは窒化アルミニウム等で構成する技術。」
b 段落【0011】には「基板本体1Mの厚さ方向の途中の位置には、基板本体1Mの板面に沿う面状形態をなすとともに」「搭載された発光素子チップ4の面内放熱路として機能する金属にて構成される放熱用面導体24,25が埋設」と記載され、段落【0012】には「基板本体1Mは、第二主表面を覆う形で裏面側面導体26が配置され」、「基板本体1Mを厚さ方向に貫通する形で素子搭載用金属パッド16と裏面側面導体26とを電気的に接続するとともに」「発光素子チップ4の厚さ方向の放熱路として機能する放熱ビア導体27が形成されている」と記載されている。
以上のことから、引用文献2には次の技術的事項bが記載されているといえる。
「基板本体の厚さ方向の途中の位置に、基板本体の板面に沿う面状形態をなすとともに発光素子チップの面内放熱路として機能する金属にて構成される放熱用面導体を埋設し、基板本体を厚さ方向に貫通する形で素子搭載用金属パッドと、基板本体の第二主表面を覆う形で配置された裏面側面導体とを電気的に接続するとともに発光素子チップの厚さ方向の放熱路として機能する放熱ビア導体を形成する技術。」
(3)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)本願明細書の段落【0020】には「モジュールの基板は、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、または窒化アルミニウムから選択されるセラミックを含むことができる。これらの材料のうちの最初の2つは、20W/mKを超える熱伝導率を有するが、窒化アルミニウムは、100W/mKを超える熱伝導率を有する、特に良好な熱伝導体と考えることができる。」と記載され、段落【0033】には「LEDモジュールは、多層セラミックからなる基板11を備え」と記載されており、「酸化アルミニウム」及び「窒化アルミニウム」が「熱伝導体」の例としてあげられているから、本件補正発明の「熱伝導性基板(11)」は「酸化アルミニウム」及び「窒化アルミニウム」を含むものである。
よって、引用発明の「基板は基体を備え、基体は酸化アルミニウムまたは窒化アルミニウムから成」ることは、本件補正発明の「熱伝導性基板(11)」「を有」することに相当する。
ただし、本件補正発明が「多層セラミックからなる熱伝導性基板(11)」「を有」するのに対し、引用発明では「基板」が本件補正発明の「多層セラミックからなる」構成を有さない点で相違する。
(イ)引用発明は「発光ダイオードチップ」は、「稼働中に光が発生される」「活性領域」を有するものであるから、本件補正発明の「LED(1、2)」に相当する。
よって、引用発明の「基板を備え、基板はこの基板の上面にキャビティを備え、キャビティ内に発光ダイオードチップを備え、稼働中に光が発生される発光ダイオードチップの活性領域はキャビティの上辺縁より低く配設され」ることは、本件補正発明の「前記基板上の少なくとも1つのLED(1、2)」「を有」することに相当する。
(ウ)引用発明の「NTCサーミスタデバイスとして」の「電子デバイス」は、本件補正発明の「受動」「部品(4、5、6、8、9)」に相当し、引用発明の「基板は上面にもう1つのキャビティを備え、電子デバイスがもう1つのキャビティ内にNTCサーミスタデバイスとして実装され」たことは、本件補正発明の「前記基板上に配置された受動」「部品(4、5、6、8、9)」「を有」することに相当する。さらに、引用発明の「電子デバイスは表面実装可能なデバイスであ」ることは、本件補正発明の「SMD部品(4、5、6、8、9)」であることに相当する。
よって、引用発明の「基板は上面にもう1つのキャビティを備え、電子デバイスがもう1つのキャビティ内にNTCサーミスタデバイスとして配設され、この電子デバイスは表面実装可能なデバイスであ」ることは、本件補正発明の「前記基板上に配置された受動SMD部品(4、5、6、8、9)」「を有」することに相当する。
(エ)引用発明の「ESD保護素子はバリスタとして実装され」ることは、本件補正発明の「受動部品(3)」「を有」することに相当し、引用発明の「基板に一体化され埋め込まれ」ることは、本件補正発明の「前記基板(11)内部に集積され」ることに相当する。
よって、引用発明の「ESD保護素子はバリスタとして実装され、基板に一体化され埋め込まれ」ることは、本件補正発明の「前記基板(11)内部に集積された受動部品(3)」「を有」することに相当する。
(オ)本願明細書の段落【0006】には「モジュールは、水平方向および垂直方向に廃熱を放散するための手段を備える」と記載され、段落【0010】には「廃熱を放散するための手段は、サーマルビアを含む。サーマルビアは、基板を貫通するように設けられる。」と記載され、段落【0011】には「廃熱発生構成部品からの廃熱のより迅速な水平放散を達成するために、金属層を、水平放熱層、すなわちヒートスプレッダとして基板内に形成することができる。」と記載されている。ここで、「サーマルビア」は「基板を貫通するように設けられる」ものであるから、「垂直方向に廃熱を放散するための手段」であり、「水平放熱層」は「水平方向」「に廃熱を放熱するための手段」である。よって、本件補正発明の「廃熱を水平方向(17)および垂直方向(14)に放散する手段」は、「廃熱を水平方向(17)」「に放散する手段」と「廃熱を垂直方向(14)に放散する手段」とからなるものであると認められる。
そして、引用発明の「熱的ビアとして、すなわち熱伝導用貫通接続部として実装されているビア」は、「基体の表面に対してほぼ垂直方向に延在」することを踏まえると、熱を垂直方向に伝導させる機能を有すると認められる。
してみると、引用発明の「基体は熱的ビアとして、すなわち熱伝導用貫通接続部として実装されているビアを備え、ビアは基体の表面に対してほぼ垂直方向に延在し」ていることは、本件補正発明の「廃熱を」「垂直方向(14)に放散する手段」「を有」することに相当する。
ただし、本件補正発明では「廃熱を水平方向(17)」「に放散する手段」を有するのに対し、引用発明ではそのような構成を有さないで点で相違する。
(カ)引用発明の「メタライジング部」が「発光ダイオード装置の、基板または回路基板への接続に用いられ」、「キャビティに向いていない基板の下面上に」「取り付けられ」る構成は、本件補正発明の「基板(7)との接続を確立」する「前記基板の底面に」形成される構成である点で共通する。
しかし、本件補正発明では「硬質フレックス基板、またはフレックス基板(7)との接続を確立する前記基板の底面に配列されている端子(15)」を有するのに対し、引用発明は「メタライジング部」が基板または回路基板との接続を確立するものの「硬質フレックス基板、またはフレックス基板(7)との接続を確立する」「配列されている端子」であることが特定されない点で相違する。
(キ)本件補正発明では「前記硬質フレックス基板、または前記フレックス基板(7)は、可撓性キャリアを構成し、前記熱伝導性基板(11)は、前記可撓性キャリアに実装されるように構成されている」のに対し、引用発明ではそのような構成を有さない点で相違する。
(ク)引用発明の「発光ダイオード装置」は、本件補正発明の「廃熱を水平方向(17)」「に放散する手段」、「端子(15)」、「前記硬質フレックス基板、または前記フレックス基板(7)」が構成する「可撓性キャリア」に相当する構成を有さないものの、「熱伝導性基板(11)」、「LED(1、2)」、「前記基板上に配置された受動SMD部品(4、5、6、8、9)」、「前記基板(11)内部に集積された受動部品(3)」及び「廃熱を垂直方向(14)に放散する手段」に相当する構成を有する点で、本件補正発明の「LEDモジュール」に相当する。
イ したがって、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「熱伝導性基板と、
前記基板上の少なくとも1つのLEDと、
前記基板上に配置された受動SMD部品と、
前記基板内部に集積された受動部品と、
廃熱を垂直方向に放散する手段とを有する、LEDモジュール。」
(相違点1)
本件補正発明では「多層セラミックからなる熱伝導性基板」を有するのに対し、引用発明では「基板」が本件補正発明の「多層セラミックからなる」構成を有さない点。
(相違点2)
本件補正発明では「廃熱を水平方向」「に放散する手段」を有するのに対し、引用発明ではそのような構成を有さない点。
(相違点3)
本件補正発明では「硬質フレックス基板、またはフレックス基板との接続を確立する前記基板の底面に配列されている端子」を有するのに対し、引用発明は「メタライジング部」が基板または回路基板との接続を確立するものの「硬質フレックス基板、またはフレックス基板との接続を確立する」「配列されている端子」であることが特定されない点。
(相違点4)
本件補正発明では「前記硬質フレックス基板、または前記フレックス基板は、可撓性キャリアを構成し、前記熱伝導性基板は、前記可撓性キャリアに実装されるように構成されている」のに対し、引用発明ではそのような構成を有さない点。
(4)判断
ア 相違点1について
上記2(2)イ(イ)aで示したとおり、引用文献2には、発光素子用セラミック基板が、発光素子チップが搭載され、放熱ビア導体が形成された基板本体を有し、基板本体をセラミック層と金属層とが交互に積層された構造とし、セラミック層を熱伝導率の比較的良好な酸化アルミニウムあるいは窒化アルミニウム等で構成する技術である技術的事項aが記載されている。
引用発明と引用文献2に記載された上記技術的事項aはともに、発光素子チップが搭載され、放熱ビアが形成された基板が、酸化アルミニウムあるいは窒化アルミニウムで構成されるものであるから、引用発明に、引用文献2に記載された技術的事項を適用し、基板を多層セラミックからなるものとし、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
イ 相違点2について
上記2(2)イ(イ)bで示したとおり、引用文献2には、基板本体の厚さ方向の途中の位置に、基板本体の板面に沿う面状形態をなすとともに発光素子チップの面内放熱路として機能する金属にて構成される放熱用面導体を埋設し、基板本体を厚さ方向に貫通する形で素子搭載用金属パッドと、基板本体の第二主表面を覆う形で配置された裏面側面導体とを電気的に接続するとともに発光素子チップの厚さ方向の放熱路として機能する放熱ビア導体を形成する技術である技術的事項bが記載されている。
引用発明と引用文献2に記載された上記技術的事項bはともに、発光素子チップが搭載されると共に放熱ビアが形成された基板に係るものであり、また、引用発明と引用文献2に記載された上記技術的事項bはともに、発光素子チップの放熱を課題とするものであるから、引用文献2に記載された技術的事項bの「放熱用面導体」の構成を引用発明に適用し、廃熱を水平方向に放散する手段を設け、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。
ウ 相違点3及び4について
本願明細書の段落【0017】の「LEDモジュールの底面は、モジュールを回路基板に接続することができる外部コンタクトを有する。このような回路基板は、金属コア基板、リジッドフレックス基板、またはフレックス基板の中から選択することができる」との記載、段落【0043】の「図4は、図1に示したものと同様のLEDモジュール11の概略断面図を示す。このLEDモジュール11は、可撓性キャリア7上に実装されている。」との記載、及び図1、図4から端子15が設けられた基板11の底面に可撓性キャリア7が接続されることが見て取れることより、LEDモジュールが実装される可撓性キャリアは、硬質フレックス基板、またはフレックス基板であると認められる。
よって、本件補正発明の「前記硬質フレックス基板、または前記フレックス基板(7)は、可撓性キャリアを構成し、前記熱伝導性基板(11)は、前記可撓性キャリアに実装されるように構成されていること」は、「熱伝導性基板(11)」が「前記硬質フレックス基板、または前記フレックス基板(7)に実装されるように構成されていること」である。
引用発明は「キャビティに向いていない基板の下面上にはメタライジング部が取り付けられ、メタライジング部は発光ダイオード装置の、基板または回路基板への接続に用いられるものである」から、「発光ダイオード装置」は「基板または回路基板」へ「メタライジング部」を用いて「接続」されるものといえる。
そして、絶縁基板の裏面に配列された端子を介して発光ダイオードを搭載した絶縁基板と可撓性のある回路基板であるフレキシブル基板とを接続し、発光ダイオードを搭載した絶縁基板をフレキシブル基板へ実装することは、本願の優先日前において周知技術である(必要ならば、特開2009-267066号公報、段落【0031】、段落【0032】、段落【0044】、図1、図2及び図5、特開2012-94304号公報、段落【0012】、段落【0018】、図4、国際公開第2016/006699号、段落【0021】、図1参照)。してみると、引用発明が接続される回路基板をフレキシブル基板とするとともに、「メタライジング部」を配列された端子とし、相違点3及び4に係る構成とすることは、当業者が周知技術に基づき容易になし得たことである。
エ 本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
オ 審判請求人は審判請求書において、引用文献1には基板2,21の、他の基板や回路基板への実装可能とする構成については、何ら開示も示唆もなく、本件補正発明のキャリアは可撓性を備えているので、可撓性キャリアに実装されたLEDモジュールが他のデバイスに組み込まれたときに、外部からLEDモジュールに作用する衝撃を可撓性キャリアが吸収するので、LEDを衝撃から保護することができる旨主張している。
しかし、上記2(4)ウで検討したとおり、発光ダイオードを搭載した絶縁基板を可撓性のある回路基板へ実装し、絶縁基板の裏面に配列された端子を介して発光ダイオードを搭載した絶縁基板と可撓性のある回路基板とを接続することは周知技術である。そして、外部からの衝撃を吸収する効果は、上記周知技術である可撓性のある回路基板自体が有するものであり、引用発明に上記周知技術を適用することにより、上記効果を奏することは、当業者が予想し得ることである。
カ よって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和2年12月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1(2)」に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定(令和2年12月22日付け拒絶査定)の拒絶の理由は、概略次のとおりである。
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
●理由について
・請求項 1-4
・引用文献等 1,2又は3,5(周知技術を示す文献)
・請求項 5-9
・引用文献等 1-3,5
・請求項 10-14
・引用文献等 1-5
<引用文献等一覧>
1.特表2015-517740号公報
2.国際公開第2008/111408号
3.特開2006-128512号公報
4.特表2005-512317号公報
5.韓国公開特許第10-2016-0080089号公報
3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記第2[理由]2(2)アに記載したとおりである。また、原査定の拒絶の理由で引用された「引用文献3」(上記補正却下の決定における「引用文献2」)の記載事項は、上記第2[理由]2(2)イに記載したとおりである。
4 対比、判断
本願発明は、上記第2[理由]1で検討した本件補正発明から、「前記硬質フレックス基板、または前記フレックス基板(7)」に「金属コア基板」との択一的記載の要素を付加し、「硬質フレックス基板、またはフレックス基板(7)」について「可撓性キャリアを構成し」との限定事項を削除し、「熱伝導性基板(11)」について「前記可撓性キャリアに実装されるように構成されている」との限定事項を削除するものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記「第2[理由]2(4)」に示したとおり、引用発明、引用文献2(原査定で引用された「引用文献3」)に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献2(原査定で引用された「引用文献3」)に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-005782