審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-005776

モノアセチルジアシルグリセロール化合物を含有する肝炎の予防または治療用組成物

審判番号
2021-005776
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-520431外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年05月06日
審決日
2022年11月08日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-520431「モノアセチルジアシルグリセロール化合物を含有する肝炎の予防または治療用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 4月19日国際公開、WO2018/070854、令和 1年11月28日国内公表、特表2019-534273〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

1 手続の経緯

本願は、2017年(平成29年)12月6日を国際出願日とする特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 5月12日付け:拒絶理由通知書
同年11月26日受付:手続補正書及び意見書の提出
同年12月23日付け:拒絶査定
令和3年 5月 6日受付:手続補正書及び審判請求書の提出

2 本願発明

本願の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明は、令和3年5月6日受付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
下記の化学式2で表示される化合物を有効成分として含有する、肝炎の予防または治療における使用のための薬学的組成物。
(化学式2)
[図:0001395619000001.jpg]
」

3 原査定の拒絶の理由

令和2年11月26日受付の手続補正書により補正された請求項1~10に係る発明についての原査定の拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。

本願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である以下の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(なお、上記の請求項3に係る発明が、本願発明に対応するものである。)

引用文献1: Ko E Young et al.,1‐palmitoyl‐2‐linoleoyl‐3‐acetyl‐rac‐glycerol (PLAG) reduces hepatic injury in concanavalin A‐treated mice,Journal of Cellular Biochemistry, First published:

27 July 2017,[令和2年5月12日検索]、インターネット,URL,https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jcb.26299

4 引用文献1に記載された事項及び引用発明

(1)引用文献1に記載された事項

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の記載がある。原文は英文なので当審による和訳を示す(下線は当審による。)。

(摘記1ア)

「要約
1-パルミトイル-2-リノレオイル-3-アセチル-rac-グリセロール(PLAG)は、化学的に合成されたモノアセチルジアシルグリセリドであり、ニホンジカの角に含まれる成分の一つであり、伝統的に免疫調節効果があることが知られている。しかし、PLAGが肝炎動物モデルにおいて、肝障害を引き起こす好中球の遊走を制御するメカニズムは、ほとんど明らかとなっていない。この研究は、インビボ及びインビトロにおける、サイトカイン分泌及び好中球遊走に対するPLAGの免疫調節効果を評価するために設計された。コンカナバリンA(ConA)は、肝臓に白血球浸潤を誘発し、血漿サイトカインレベルを増加させた。PLAGによる前処理は、インターロイキン(IL)-4、IL-6、IL-10、及びCXCL2のレベルを低下させたが、インターフェロン(IFN)-γレベルを維持し、肝臓への好中球動員を調節した。…。肝臓の組織学的分析は、PLAGが白血球浸潤を伴うConA誘発性肝壊死を減少させることを示した。インビトロ研究では、PLAGが、ConA刺激T細胞におけるIL-4分泌を減少させ、…。PLAGは、肝細胞におけるIL-4による非定型プロテインキナーゼC(PKC)/STAT6の活性化を減弱させ、IL-8/血管細胞接着分子(VCAM)発現の抑制により、肝組織への好中球の遊走を阻害した。これらの結果は、PLAGが、肝臓組織への過剰な好中球の遊走を軽減し、免疫介在性肝障害に対して治療効果をもたらす可能性があることを示唆している。」(「Abstract」の項)

(摘記1イ)

「2.3 マウスとコンカナバリンA処置
メスのBalb/cマウス(10週齢で体重約25g)を、Koatech社(平沢市、韓国)から購入した。…マウスは、コントロール群(n=8)、ConA群(n=10)、及び、PLAG前処置群(n=10)の3群に無作為に分けた。ConAとPLAGは、両方ともリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解させた。ConA群とPLAG前処置群には、それぞれ指定したようにPBS又はPLAGを経口投与し、その2時間後に、ConAを20mg/kg体重(BW)の用量で静注した。PLAGは、100mg/kgBWの用量でマウスに経口投与した。血液と肝臓組織は、ConA投与後18時間経過してから採取した。」(「2.3 Mice and concanavalin A treatment」の項)

(摘記1ウ)

「3 結果
3.1 PLAGは、ConA処置マウスにおける肝障害を減少させる。
…。図1に示すように、肝臓部分の組織学的な検査は、ConAの静注が、広汎な肝壊死、肝類洞構造の障害、8時間以内の肝臓への好中球浸潤を生じることを示した。ConA刺激により、壊死面積が40%となった。しかし、図1Dに示すように、PLAG処置マウス(P<0.001)では、壊死面積が約6%まで減少した。…。これらの結果は、PLAGは、ConA誘導による肝炎を減少させることを示す。」(「3 Resuls」の「3.1 PLAG reduces hepatic injury in Con A-treated mice」の項)
「
[図:0001395619000002.jpg]
図1 肝臓の損傷を、PLAGで処置したマウスの肝臓の組織学的観察によって評価した。ConA注射の8時間後に肝臓組織を採取した。肝臓切片は、H&Eで染色した。コントロール(A)、ConA誘導マウス(B)、及びPLAG処置マウス(C)からの拡大(200倍)肝臓切片を光学顕微鏡で観察した。ConA注射の8時間後に、H&E染色切片を壊死(輪郭を描いた領域)の検出について検査した。(D)ImageJソフトウェアを使用して肝臓の壊死領域の割合を定量化し、データを平均±SEMとして表した。…矢印は、動員された好中球を表す。…」(Figure 1)

(摘記1エ)

「
[図:0001395619000003.jpg]
[図:0001395619000004.jpg]
図2 ConA誘導肝炎を有するBalb/cマウスにおける肝組織の肝細胞への白血球遊走に対するPLAGの効果。マウスは、ConA注射の2時間前にPLAG有り又はPLAG無しで処置した。18時間後、全血(A)と肝臓組織(B)を採取し、Mindray BC-5500血液分析装置を使用して白血球、好中球、及びリンパ球の絶対数を測定した。(C)ConA注射の8時間後に、肝臓組織を採取した。免疫組織化学を使用して、肝臓切片の好中球レベルを検出した。(D)肝臓の好中球浸潤は、ImageJソフトウェアを使用して定量化され、データは平均±SEMとして表した。マウスを無作為に三つの群に分けた。:コントロール(n=8)、ConA(n=10)、及びPLAG前処置群(n=10)。…」(Figure 2)

(摘記1オ)

「
[図:0001395619000005.jpg]
図3 PLAGは、ConA誘導肝炎の血漿サイトカインレベルを調節する。Balb/cマウスは、ConA注射の前にPLAG有り又はPLAG無しで2時間処置した。18時間後、全血を後眼窟採血により採取し、サイトカインレベルを測定した。データは平均±SEMとして表した。マウスを無作為に三つの群に分けた。:コントロール(n=8)、ConA(n=10)、及びPLAG前処置群(n=10)。……」(Figure 3)

(摘記1カ)

「
[図:0001395619000006.jpg]
図4 肝臓組織のIL-4とCXCL2は、PLAG処置マウスで減少した。IL-4及びCXCL2のタンパク質レベル(A)、IL-4、CXCL2、CXCL12及びその受容体、ICAM-1及びVCAM(B)のConA誘導肝炎におけるmRNA発現を、ELISA及びRT-PCRによって、それぞれ評価した。マウスは、ConA注射の前にPLAG有り又はPLAG無しで2時間処置した。18時間後、肝臓組織を採取し、サイトカインレベルとmRNA発現を測定した。データは平均±SEMとして表す。マウスを無作為に三つの群に分けた。:コントロール(n=8)、ConA(n=10)、及びPLAG前処置群(n=10)。……」(Figure 4)

(摘記1キ)

「4 討論
肝炎は、T細胞を介した免疫応答と肝臓の炎症を特徴とする病状である。肝炎では、白血球動員が増加し、これらの細胞の肝内局在化が疾患の病因をもたらす。…。現在の研究では、ConAによって誘導される白血球の遊走と関連するサイトカインの分泌がPLAG処置マウスで改善されることを発見し、組織学的所見の分析によってこの改善をさらに確認した。…現在の研究では、ConA誘導マウスにおいて、IL-4、IL-6、IL-10,IFN-γ及びCXCL2が、血漿中に分泌されることを明らかにした。しかし、PLAG処置は、IFN-γを除いて、これらのサイトカイン分泌を減少させた(図3)。我々は、ConA誘導肝炎だけでなく、IFN-γとIL-4の関連を考慮して、PLAGは、IL-4/STAT6シグナルを阻害することにより、好中球の遊走と接着を減少させると推測した。さらに、肝臓におけるIL-4及びCXCL2のタンパク質レベルとmRNAの発現も、血漿レベルと同様に、PLAGにより阻害された(図3及び4)。この観察結果は、PLAGは、ConA誘導肝炎において、炎症反応を阻害する能力があることを示している。」(「4 DISCUSSION」の第1及び第2段落)

(2)引用発明

上記(1)の記載事項によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「1-パルミトイル-2-リノレオイル-3-アセチル-rac-グリセロール(PLAG)を有効成分とする組成物であって、マウスに前処置することにより、コンカナバリンA(ConA)により誘導したマウスの肝炎を減少させるための、組成物。」

5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

本願明細書の「化学式2で表示される化合物は1-パルミトイル(palmitoyl)-2-リノレオイル(linoleoyl)-3-アセチルグリセロール(acetylglycerol)であり、…必要に応じて、「EC-18」または「PLAG」とも命名される。」(【0017】)との記載、及び、本願発明の化学式2の構造によれば、引用発明の「1-パルミトイル-2-リノレオイル-3-アセチル-rac-グリセロール(PLAG)」は、本願発明の「下記の化学式2で表示される化合物」に相当する。

また、本願発明の薬学的組成物はマウスに適用可能であるから(【0022】)、引用発明の「マウスに前処置することにより、コンカナバリンA(ConA)により誘導したマウスの肝炎を減少させるための、組成物」は、本願発明の「肝炎」「における使用のための薬学的組成物」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>

「下記の化学式2で表示される化合物を有効成分として含有する、肝炎における使用のための薬学的組成物。
(化学式2)
[図:0001395619000007.jpg]
」

<相違点>

肝炎における使用のための薬学的組成物が、本願発明においては、「肝炎の予防または治療における使用のための」ものであるのに対し、引用発明においては、対応する事項が特定されていない点。

6 判断

(1)相違点について

引用文献1には、肝炎動物モデルである、ConAを静注することにより肝炎を誘導したマウス(ConA誘導マウス)を用いた実験において、PLAGを経口で前処置することにより、ConA誘導マウスにおける肝炎が減少したこと(図1)、及び、IL-4の血漿及び肝臓におけるレベルが低下し(図3、図4)、肝臓への好中球の遊走が減少したこと(図2)等の結果が得られたことが記載されている(摘記1イ~カ)。

また、引用文献1には、肝炎は、T細胞を介した免疫応答と肝臓の炎症を特徴とし、白血球の肝内局在化が疾患の病因をもたらすものであるところ、上記実験の結果は、PLAGが、免疫介在性肝障害(すなわち肝炎)に対して、治療効果をもたらす可能性があることを示唆していることが記載されている(摘記1ア、キ)。

そうすると、引用文献1の上記記載に接した当業者であれば、ConA以外の原因により生じる通常の肝炎についても、その肝炎が生じる前にPLAGを投与しておけば、肝炎を減少させることができ、PLAGを肝炎の予防に使用できることを予測することができたものといえる。

したがって、引用発明を、相違点に係る発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易に想到することができたことである。

(2)本願明細書に記載された本願発明の効果について

ア 本願明細書の実施例(【0029】~【0048】)には、PLAGの肝炎の予防及び治療効能を確認するために、肝炎の実験モデルである、ConAにより肝炎を誘導したマウスを利用して実験を行った結果(【0029】)、PLAGで前処理(100mg/kgBW口腔投与)することにより、2時間後のConA処理(20mg/kgBW静脈注射)により誘導される肝炎を緩和させたことが記載されている(【0030】、【0038】、図6)。

また、PLAGを前処理することで、ConAが投与されたマウスにおいて、血漿及び肝組織中のIL-4を減少させたこと(【0032】、【0033】、図2、図3)、好中球の肝への移動を減少させたこと(【0035】~【0037】、図4、図5)等も記載されている。

イ 本願明細書における上記実験は、引用文献1にも記載されたものであり、本願明細書の図6、図2、図3、図4、図5は、引用文献1の図1(摘記1ウ)、図3(摘記1オ)、図4(摘記1カ)、図2のA及びB(摘記1エ)、図2のC(摘記1エ)に対応する。

ウ したがって、本願明細書に記載された本願発明の効果は、引用文献1に記載されたものであり、引用文献1の記載から当業者が予測できないものではない。

(3)小括

以上によれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 請求人の主張について

請求人は、審判請求書において、引用文献1はいくつかの初期の研究を提供するものであり、PLAGを肝炎の治療のために使用することについて示していない旨を主張する。

しかしながら、上記6(2)で説示したように、引用文献1に記載された実験結果の内容は、本願明細書に記載されたものと同じであり、引用文献1においても、PLAGが肝炎の治療のために使用できるとする十分な実験結果が示されている。

したがって、請求人の上記主張は採用できない。

8 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-005776

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決2件(エンジーケム ライフサイエンシーズ コーポレーション)
  • 2021-008798拒絶査定不服審判 / 2023-10-31 / 請求不成立モノアセチルジアシルグリセロール化合物を含有する乾癬の予防または治療用組成物
    同じ当事者: エンジーケム ライフサイエンシーズ コーポレーション
  • 2020-004947拒絶査定不服審判 / 2022-02-03 / 請求不成立白血球減少症及び血小板減少症に対する治療方法
    同じ当事者: エンジーケム ライフサイエンシーズ コーポレーション
同じ根拠条文の審決7,656件(特許法29条2項)
  • 2024-012117拒絶査定不服審判 / 2026-05-25 / 請求不成立前処理剤、及び酸化染毛方法又は脱色方法
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-004310拒絶査定不服審判 / 2026-04-28 / 請求不成立皮膚外用クリーム剤
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-006319拒絶査定不服審判 / 2026-04-27 / 請求不成立男性活力用組成物及び組成物
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-008788拒絶査定不服審判 / 2026-04-13 / 請求不成立糖尿病を治療するための方法および試薬
    共通の条文: 特許法29条2項
  • 2024-000901拒絶査定不服審判 / 2026-03-26 / 請求不成立慢性便秘症を治療するための医薬組成物
    共通の条文: 特許法29条2項
検索でもっと見る →
同じ論点・分野の審決(審決分類)4,292件(121・A61K)
  • 2024-009983拒絶査定不服審判 / 2026-08-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)歯科用硬化性組成物
    共通の審決分類: 121・A61K
  • 2023-019302拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)加齢性黄斑変性症(AMD)におけるスタチン療法の機能的バイオマーカー
    共通の審決分類: 121・A61K
  • 2023-018795拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)癌のための予防および治療処置としてのIPSCベースのワクチン
    共通の審決分類: 121・A61K
  • 2024-009350拒絶査定不服審判 / 2026-08-25 / 原査定取消(特許/登録すべき)免疫増強剤
    共通の審決分類: 121・A61K
  • 2024-012557拒絶査定不服審判 / 2026-08-24 / 原査定取消(特許/登録すべき)毛髪洗浄組成物
    共通の審決分類: 121・A61K

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存