特許拒絶査定不服審判
2021-005207
再充電可能エネルギ貯蔵を伴う高温用途のためのパワーシステム
- 審判番号
- 2021-005207
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-238568外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年04月22日
- 審決日
- 2022年09月06日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ファーストキャップ・システムズ・コーポレイション
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】岡部 博史
- 【請求人代理人】柏原 啓伸
- 分類
- P18 .121-WZ (H01G)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2018-238568「再充電可能エネルギ貯蔵を伴う高温用途のためのパワーシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月 9日出願公開、特開2019- 71449〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1.手続の経緯
本願は、2012年5月24日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2012年4月4日 米国 2011年6月3日 米国 2011年6月7日 米国 2011年5月24日 米国 2011年9月21日 米国)を国際出願日とする特願2014-512104号の一部を平成29年6月14日に新たな出願とした特願2017-116948号の一部を平成30年12月20日にさらに新たな出願としたものであって、平成31年1月18日に手続補正がなされ、令和2年2月19日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年8月24日に意見書が提出されたが、同年12月15日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、令和3年4月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審による令和4年4月8日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年7月11日に手続補正がなされたものである。
2.本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、令和4年7月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
高温環境で電力を供給するように調整されたパワーシステムであって、
約-40℃と約210℃の間の温度範囲で動作し、再充電可能エネルギ貯蔵装置から電力を供給することと、再充電可能エネルギ貯蔵装置に充電することのうちの少なくとも一つのための回路に連結する、再充電可能エネルギ貯蔵装置を含み、
前記再充電可能エネルギ貯蔵装置は、約0.1ジュールと約100キロジュールの間のエネルギを貯蔵し、少なくとも充電-放電の2周期の間に約1ワットと約100キロワットの間のピーク電力を供給するように構成されており、
前記再充電可能エネルギ貯蔵装置は、密閉シールされたハウジング内に含まれる電気化学二重層キャパシタを含むウルトラキャパシタを、含み、
前記ウルトラキャパシタは、電解質で湿潤した二つの電極を含み、各々の電極は、電流コレクタに付属し、接触し、若しくは該電流コレクタを覆い、更に各々の電極は、前記電解質に浸透するセパレータにより相互に分離され、
前記電解質は、1000ppmより小さい不純物量を含有し、該不純物はハロゲン化合物イオンと金属種とのうちの少なくとも一方を含み、
前記ウルトラキャパシタは、動作温度の範囲に亘って、定格電圧までの電圧にて、前記再充電可能エネルギ貯蔵装置のリットルの体積毎に1アンペアより小さいリーク電流を示す、
パワーシステム。」
3.拒絶の理由の概要
本願の請求項1に対して令和4年4月8日付けで当審が通知した拒絶理由のうちの理由2(進歩性)の概要は次のとおりである。
本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項(引用文献2、3に記載された技術事項)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1:米国特許出願公開第2011/0080689号明細書
引用文献2:特開2004-207451号公報(周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2003-173936号公報(周知技術を示す文献)
4.引用文献の記載及び引用発明
(1)当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(米国特許出願公開第2011/0080689号明細書)には、「IONIC LIQUIDS FOR USE IN ULTRACAPACITOR AND GRAPHENE-BASED ULTRACAPACITOR」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、当審による仮訳を付記する。下線は当審で付与した。)。
ア.「[0027] The current disclosure relates to ionic liquids and ultracapacitors using ionic liquids. It also relates to ultracapacitors using graphene. According to the embodiment shown in FIG.1 , the ultracapacitor 10 may have two electrodes 20, an electrolyte 30, and a non-conductive or dielectric separator 40. A potential, ΔV, may be applied and maintained across the ultracapacitor. When a potential, ΔV, is applied across the electrodes 20, one electrode becomes positively charged and the other becomes negatively charged. Negatively charged ions in the electrolyte 30 cover the surfaces of the positively charged electrode, while positively charged ions in the electrolyte 30 cover the surfaces of the negatively charged electrode, a result of the aforementioned electrostatic interactions. FIG.1 illustrates the ultracapacitor with the opposing charges creating the double layer. It is often said that the ions “line up” on the respective electrodes.
[0028] Ultracapacitors of the current disclosure may have short charging and discharging cycles, for example of one second or less. They may have a high energy density, for example, at least 10 Wh/kg, or 15 Wh/kg. Some ultracapacitors may have an energy density of over 20 Wh/kg, over 25 Wh/kg, over 33 Wh/kg, or even over 35 Wh/kg or higher. Most ultracapacitors of the current disclosure will have an energy density above 10 Wh/kg. Ultracapacitors of the current disclosure may retain traditional advantage of ultracapacitors, such as high power density. For example, in some embodiments ultracapacitors of the current disclosure may have a power density of 5000 W/kg, 10,000 W/kg, or higher, or between 500 W/kg and 10,000 W/kg. In all of the above measurements, the mass for power density may be either the mass of the carbon electrode(s), or the mass of the ultracapacitor as a whole.」
([0027] 本開示は、イオン性液体およびイオン性液体を用いたウルトラキャパシタに関する。また、グラフェンを用いたウルトラキャパシタに関する。図1に示す実施形態では、ウルトラキャパシタ10は、2つの電極20と、電解質30と、非導電性あるいは誘電体のセパレータ40を有することができる。電位ΔVは、ウルトラキャパシタの両端に印加し、維持することができる。電位ΔVが電極20間に印加された場合、1つの電極が正に帯電し、他の電極が負に帯電する。前述の静電相互作用の結果として、電解質30中の負に帯電したイオンが正に帯電した電極の表面を覆い、電解質30中の正に帯電したイオンが負に帯電した電極の表面を覆う。図1は、二重層を形成する反対の電荷を有するウルトラキャパシタを示す図である。それぞれの電極上の“ラインアップ”イオンとよく言われる。
[0028] 本開示のウルトラキャパシタは、短い充放電サイクル、例えば1秒以下とすることができる。それらは、高いエネルギー密度、例えば少なくとも10Wh/kg、あるいは15Wh/kgを有することができる。いくつかのウルトラキャパシタは、20Wh/kg超、25Wh/kg超、33Wh/kg超、さらには35Wh/kg以上のエネルギー密度を有することができる。本開示のほとんどのウルトラキャパシタは、10Wh/kg以上のエネルギー密度を有する。本開示のウルトラキャパシタは、高い電力密度といった従来のウルトラキャパシタの利点を維持することができる。例えば、いくつかの実施形態において本開示のウルトラキャパシタは、5000W/kg、10,000W/kg、あるいはそれ以上、または500W/kgと10,000W/kgの間の電力密度を有することができる。上記測定の全てにおいて、電力密度に対する質量は、カーボン電極の質量、あるいはウルトラキャパシタ全体の質量であってもよい。)
イ.「[0031] In other embodiments, ultracapacitors of the current disclosure may function over a wide variety of temperatures. For example, ultracapacitors may function at temperatures as low as -20℃. or even -50℃. or at temperatures as high as 45℃., 50℃., 65℃., or even 300℃. or within ranges between these endpoints. The use of ionic liquids in ultracapacitors may facilitate their ability to function at high temperatures.」
([0031] 他の実施形態において、本開示のウルトラキャパシタは、広い範囲の温度にわたって機能することができる。例えば、ウルトラキャパシタは、-20℃、あるいは-50℃位の低い温度、または45℃、50℃、65℃、あるいは300℃位の高い温度、またはこれらの間の範囲内の温度で機能することができる。ウルトラキャパシタにおけるイオン性液体の使用は、高温で機能するそれらの能力を容易にすることができる。)
ウ.「[0034] Ultracapacitors of the current disclosure may be thin. The size (e.g. the mass or quantity of materials) of the ultracapacitor may be larger for large ions and smaller for smaller ions. In some embodiments, the electrode thickness may be between 10 μm and 500 μm. Additional materials, such as a collector or separator in an electrode stack may increase the thickness may add an additional 50 μm to 100 μm. In some embodiments, a complete stack of ultracapacitors may be between 200 μm and 800 μm.」
([0034] 本開示のウルトラキャパシタは薄くすることができる。ウルトラキャパシタのサイズ(例えば材料の質量または量)は、大きいイオンに対してより大きく、小さいイオンに対してより小さくすることができる。いくつかの実施形態では、電極の厚さは、10μmと500μmの間とすることができる。電極スタックにおける集電体(コレクター)やセパレータのような追加の材料は50μmから100μmを追加した厚さに増加させることができる。いくつかの実施形態では、ウルトラキャパシタの完全なスタックは、200μmと800μmの間とすることができる。)
エ.「[0067] In still other embodiments, the ionic liquid may be anhydrous before it is assembled into the ultracapacitor, after it is assembled into the ultracapacitor or both. In embodiments where the ionic liquid is anhydrous after assembly into the ultracapacitor, the residual water content of the graphene used in the electrodes may be sufficiently low to preserve the anhydrous state of the ionic liquid. In particular embodiments, the anhydrous ionic liquid may have a water content of less than 10 ppm. In other embodiments, the anhydrous liquid may have sufficiently low water to avoid detectable hydrolysis products in the ultracapacitor during the life of the ultracapacitor (as defined by factors other than degradation due to hydrolysis).」
([0067] さらに他の実施形態において、イオン性液体は、ウルトラキャパシタに組み込む前、ウルトラキャパシタに組み込んだ後あるいは両方で無水とすることができる。イオン性液体がウルトラキャパシタに組み込んだ後に無水である実施形態では、電極に使用されるグラフェンの残留水量は、イオン性液体の無水状態を保つために十分に低くすることがてきる。特定の実施形態では、無水イオン性液体は10ppmより少ない含水量を有するものとすることができる。他の実施形態では、無水液体は、(加水分解による劣化以外の他の要因によって定義される)ウルトラキャパシタの寿命の間にウルトラキャパシタ内で検出可能な加水分解生成物を避けるために十分に低い水分を有するものとすることができる。)
オ.「[0084] Ultracapacitors of the current disclosure may be used in high temperature applications, particularly applications where the temperature may reach above 65℃. For example, ultracapacitors may be used in downhole tools such as earth boring drill bits or downhole sensors in the petrochemical and mining industries.」
([0084] 本開示のウルトラキャパシタは、高温用途、特に65℃に達するような温度における用途において使用することができる。例えば、ウルトラキャパシタは、石油化学及び鉱業において、地面をボーリングするドリルビットあるいはダウンホールセンサのようなダウンホールツールにおいて使用することができる。)
カ.「[0087] According to a particular embodiment, the ultracapacitor may be located in an electrochemical energy storage device. In specific embodiments, the storage device may be located in a structure to which the storage device supplies power. For example, it may be located in an automobile, an electrical grid, or a power tool or hand held object. The storage device may include other components to allow the ultracapacitor to provide power or to otherwise assist in its function either directly or by providing structural support or protection. For example, the storage device may include a standalone or embedded storage unit in which the capacitor is housed.」
([0087] 特定の実施形態によれば、ウルトラキャパシタは、電気化学的エネルギー貯蔵装置内に配置することができる。特定の実施形態において、貯蔵装置は、その貯蔵装置が電力を供給する構造内に配置することができる。例えば、自動車、電気グリッド、あるいは電動工具、または手持ち式オブジェクト内に配置することができる。貯蔵装置は、ウルトラキャパシタが電力を供給するために、または、直接あるいは構造的支持や保護を提供することによってその機能を支援可能にするために他の構成要素を含むことができる。例えば、貯蔵装置は、キャパシタが収容された独立型あるいは埋め込み型の貯蔵ユニットを含むことができる。)
キ.「[0088] The current disclosure also provides methods of using any of the above ultracapacitors to store energy. In such methods, in general, the ultracapacitor may be coupled to an energy source, then charged. The ultracapacitor may then be coupled to a power consuming device or system and discharged. The properties for charge and discharge may be those described for ultracapacitors above. The charge and discharge cycles may be repeated. According to particular embodiments, they may be repeated at least 200,000, at least 500,000, or at least 1 million times.」
([0088] 本開示はまた、エネルギーを貯蔵するための上述したウルトラキャパシタのいずれかを使用する方法を提供する。そのような方法では、一般的には、ウルトラキャパシタはエネルギー源に結合され、充電することができる。ウルトラキャパシタは電力を消費する装置またはシステムに結合され、放電することができる。充放電特性は、上述したウルトラキャパシタに対して記載されたものとすることができる。充放電サイクルは繰り返すことができる。特定の実施形態によれば、それらは少なくとも200,000、少なくとも500,000、あるいは少なくとも1000,000回繰り返すことができる。)
ク.「
[図:0001393506000001.jpg]
」
(2)上記「ア.」ないし「ク.」から以下のことがいえる。
・引用文献1に記載の「IONIC LIQUIDS FOR USE IN ULTRACAPACITOR AND GRAPHENE-BASED ULTRACAPACITOR」(ウルトラキャパシタで使用するためのイオン性液体およびグラフェン・ベースのウルトラキャパシタ)における「ウルトラキャパシタ」は、上記「ア.」の段落[0027]の記載、及び「ク.」(FIG.1)によれば、2つの電極と、セパレータを有し、さらに、上記「ウ.」の記載によれば、電極スタックには追加の材料として集電体(コレクター)を有するものである。また、上記「エ.」の記載によれば、電極にはグラフェンが使用されてなるものである。
・ウルトラキャパシタは、上記「カ.」の記載によれば、電気化学的エネルギー貯蔵装置内に配置され、そして、上記「キ.」の記載によれば、エネルギー源に結合されて充電され、電力を消費する装置またはシステムに結合されて放電することができるものである。
・上記「ア.」の段落[0028]の記載によれば、ウルトラキャパシタは、高いエネルギー密度(例えば10Wh/kg)を有することができ、また、高い電力密度(例えば500W/kg~10,000W/kg)を有することもできるものである。
・上記「イ.」、「オ.」の記載によれば、ウルトラキャパシタは、広い温度範囲、例えば-50℃位の低い温度から300℃位の高い温度にわたって機能することができ、高温用途、例えばダウンホールツールにおいて使用することができるものである。
・上記「エ.」の記載によれば、ウルトラキャパシタにおけるイオン性液体は、10ppmより少ない含水量を有するものとすることができるものである。
(2)以上のことから、ウルトラキャパシタが配置された電気化学的エネルギー貯蔵装置と、ウルトラキャパシタがエネルギー源に結合されて充電され、電力を消費する装置またはシステムに結合されて放電する際に必要な構成要素(回路)とを含めたものを「システム」の発明として捉え、上記記載事項を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電気化学的エネルギー貯蔵装置内に配置されたウルトラキャパシタを有し、
エネルギー源に結合されて充電され、電力を消費する装置またはシステムに結合されて放電することができる前記ウルトラキャパシタは、-50℃位の低い温度から300℃位の高い温度にわたって機能することができ、高温用途としてダウンホールツールにおいて使用され、
前記ウルトラキャパシタは、高いエネルギー密度(例えば10Wh/kg)を有し、また、高い電力密度(例えば500W/kg~10,000W/kg)を有するものであり、
前記ウルトラキャパシタは、グラフェンを使用した2つの電極と、セパレータと、さらに集電体(コレクター)を有し、前記イオン性液体は、10ppmより少ない含水量を有する、システム。」
5.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「システム」は、当該システムが有するウルトラキャパシタが、高温用途としてダウンホールツールにおいて使用されるものであることから、高温環境で電力を供給するように調整されたものであるといえ、本願発明でいう「パワーシステム」に相当する。
よって、本館発明と引用発明とは、「高温環境で電力を供給するように調整されたパワーシステム」である点で一致する。
(2)ウルトラキャパシタはエネルギー源に結合されて充電され、電力を消費する装置またはシステムに結合されて放電、すなわち電力を供給することができるものであるから、これが配置された引用発明における「電気化学的エネルギー貯蔵装置」は、本願発明でいう「再充電可能エネルギ貯蔵装置」に相当する。ここで、引用発明においても、ウルトラキャパシタがエネルギー源に結合されて充電され、あるいは電力を消費する装置またはシステムに結合されて放電する際、本願発明でいう電力を供給することと、充電することのうちの少なくとも一つのための「回路」に連結されることになるのは自明なことである。
そして、引用発明のウルトラキャパシタは-50℃位の低い温度から300℃位の高い温度にわたって機能することができるところ、この-50℃位から300℃位の温度範囲は、本願発明において再充電可能エネルギ貯蔵装置が動作する温度範囲として特定する「約-40℃と約210℃の間」を含むものである。
したがって、本願発明と引用発明とは、「約-40℃と約210℃の間の温度で動作し、再充電可能エネルギ貯蔵装置から電力を供給することと、再充電可能エネルギ貯蔵装置に充電することのうちの少なくとも一つのための回路に連結する、再充電可能エネルギ貯蔵装置」を含むものである点で一致する。
ただし、再充電可能エネルギ貯蔵装置について、本願発明では「約0.1ジュールと約100キロジュールの間のエネルギを貯蔵し、少なくとも充電-放電の2周期の間に約1ワットと約100キロワットの間のピーク電力を供給するように構成」されていることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
(3)引用発明における電気化学的エネルギー貯蔵装置内に配置された「ウルトラキャパシタ」は、電気二重層を形成することは自明なことであり(引用文献1の段落[0027]、FIG.1も参照)、本願発明でいう「電気化学二重層キャパシタを含むウルトラキャパシタ」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記再充電可能エネルギ貯蔵装置は、電気化学二重層キャパシタを含むウルトラキャパシタ」を含むものである点で共通する。
ただし、ウルトラキャパシタについて、本願発明では「密閉シールされたハウジング内」に含まれることを特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定を有していない点で相違する。
(4)引用発明における「ウルトラキャパシタ」が有するグラフェンを使用した「2つの電極」、「セパレータ」、「集電体(コレクター)」、「セパレータ」は、それぞれ本願発明でいう「二つの電極」、「セパレータ」、「電流コレクタ」に相当する。そして、引用発明におけるグラフェンを使用した「2つの電極」及び「セパレータ」にはイオン性液体が含侵されること、すなわち、「2つの電極」がイオン性液体で湿潤したものとなることや、「セパレータ」の空隙にイオン性液体が浸透することは当業者にとって技術常識といえることである。さらに、各々の電極が「集電体(コレクター)」を覆うように接触して設けられることも当業者にとって自明なことである。
ここで、引用発明の「イオン性液体」は、電解質と解釈できるから、本願発明でいう「電解質」に相当する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「前記ウルトラキャパシタは、電解質で湿潤した二つの電極を含み、各々の電極は、電流コレクタに付属し、接触し、若しくは該電流コレクタを覆い、更に各々の電極は、前記電解質に浸透するセパレータにより相互に分離され」てなるものである点で一致する。
ただし、電解質について、本願発明では「1000ppmより小さい不純物量を含有し、不純物はハロゲン化合物イオンと金属種とのうちの少なくとも一方を含」むことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違する。
(5)ウルトラキャパシタについて、本願発明では「温度動作の範囲に亘って、定格電圧までの電圧にて、前記再充電可能エネルギ貯蔵装置のリットルの体積毎に1アンペアより小さいリーク電流を示す」ことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点で相違している。
よって上記(1)ないし(5)によれば、本願発明と引用発明とは、
「高温環境で電力を供給するように調整されたパワーシステムであって、
約-40℃と約210℃の間の温度で動作し、再充電可能エネルギ貯蔵装置から電力を供給することと、再充電可能エネルギ貯蔵装置に充電することのうちの少なくとも一つのための回路に連結する、再充電可能エネルギ貯蔵装置を含み、
前記再充電可能エネルギ貯蔵装置は、電気化学二重層キャパシタを含むウルトラキャパシタを、含み、
前記ウルトラキャパシタは、電解質で湿潤した二つの電極を含み、各々の電極は、電流コレクタに付属し、接触し、若しくは該電流コレクタを覆い、更に各々の電極は、前記電解質に浸透するセパレータにより相互に分離されてなる、
パワーシステム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
再充電可能エネルギー貯蔵装置について、本願発明では「約0.1ジュールと約100キロジュールの間のエネルギを貯蔵し、少なくとも充電-放電の2周期の間に約1ワットと約100キロワットの間のピーク電力を供給するように構成」されていることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
[相違点2]
ウルトラキャパシタについて、本願発明では「密閉シールされたハウジング内」に含まれることを特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定を有していない点。
[相違点3]
電解質について、本願発明では「1000ppmより小さい不純物量を含有し、不純物はハロゲン化合物イオンと金属種とのうちの少なくとも一方を含」むことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
[相違点4]
ウルトラキャパシタについて、本願発明では「動作温度の範囲に亘って、定格電圧までの電圧にて、前記再充電可能エネルギ貯蔵装置のリットルの体積毎に1アンペアより小さいリーク電流を示す」ことを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定を有していない点。
6.判断
上記相違点について判断する。
(1)[相違点1]について
引用発明においても、電気化学的エネルギー貯蔵装置内にウルトラキャパシタが配置されてなるところ、そのウルトラキャパシタは、高いエネルギー密度(例えば10Wh/kg)を有し、また、高い電力密度(例えば500W/kg~10,000W/kg)を有するものである。ここで、エネルギー密度について、10Wh/kg=36000J/kgの場合、重量が0.1〔J〕/36000〔J/kg〕≒2.8×10-6〔kg〕から100×103〔J〕/36000〔J/kg〕≒2.8〔kg〕の範囲において、本願発明で特定する「約0.1ジュールと約100キロジュールの間」の範囲を満たす。この2.8×10-6〔kg〕~2.8〔kg〕の範囲の重量は、「電力密度に対する質量」の場合と同様に、電極あるいはウルトラキャパシタの重量であり(引用文献1の段落[0028]の記載参照)、システムの質量ではないと解されるが、本願明細書の【表2】(段落【0211】)に記載されたシステム重量「10g~30kg」とは、少なくとも「2.8kg」前後の範囲において重なるといえる。
また、電力密度すなわち出力密度についても、500W/kg~10,000W/kgの場合、重量が上記「2.8kg」前後の範囲において、本願発明で特定する「約1ワットと約100キロワットの間」の範囲を満たす。
そして、本願明細書の記載をみても、貯蔵エネルギーの上限を「約100キロジュール」とし、下限を「約0.1ジュール」とすること、及び充電-放電の2周期の間に供給できるピーク電力の上限を「約100キロワット」とし、下限を「約1ワット」とすることの理由について何ら記載がなく、これら上限・下限の臨界的な意義は認められない。
してみると、引用発明においても通常想定され得るウルトラキャパシタの重量において、その貯蔵エネルギー、充電-放電の2周期の間に供給できるピーク電力を相違点1に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得た設計的事項にすぎない。
(2)[相違点2]について
電解液を有するウルトラキャパシタにあっては、当該電解液が流出するなどして枯渇しないようにするためや、電解液や電極を水分、汚染物から守るために、キャパシタをハウジング(ケース)内に封入することはごく一般的な技術事項にすぎない。例えば当審による拒絶の理由に引用された特開2004-207451号公報の段落【0052】にも「電気化学キャパシタは、電極、集電体、セパレーターを備えるとともに、電気化学キャパシタに通常用いられるケース、ガスケットなどを任意に備え」と記載されている(下線は当審で付与した。)。
したがって、引用発明にあっても、相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(3)[相違点3]について
例えば上記特開2004-207451号公報(特に段落【0053】~【0057】、【0061】、【0063】~【0065】(【表1】)を参照)、当審による拒絶の理由に引用された特開2003-173936号公報(特に段落【0006】、【0008】、【0059】(【表1】)を参照)に記載されているように、漏れ電流の抑制等のために、電気二重層コンデンサにおける電解液中の不純物(塩素、フッ素といったハロゲンの化合物や、リチウム、ナトリウム、カリウムといった金属イオン)を極力除去(例えば1ppm以下、0.1ppm以下)することは周知といえる技術事項である。
そして、引用発明におけるウルトラキャパシタにおいても漏れ電流の抑制等は当然に望まれることであるから、相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
(4)[相違点4]について
本願明細書の段落【0063】、【0070】の記載を参照するに、本願発明において、ウルトラキャパシタが動作温度の範囲に亘って、定格電圧までの電圧にて、再充電可能エネルギ貯蔵装置のリットルの体積毎に1アンペアより小さいリーク電流を示すものとするためには、電解質における不純物量を1000ppmより小さくすることに加えて、含水量を500ppmより小さくする必要があるものと解される。
これに対して、上記(3)で述べたように、引用発明におけるウルトラキャパシタにおいて、漏れ電流の抑制等のために、イオン性液体中の不純物の量を1000ppmより小さくすることは当業者が容易になし得たことであり、さらに、引用文献1の段落[0067]には、イオン性液体に含まれる水分量を10ppm未満とすることも記載されている。そして一般に、キャパシタにおける定格電圧までの電圧で、動作温度の範囲内で測定される単位体積(リットル)当たりの漏れ電流(リーク電流)は小さいほど望ましいのは自明であり、どの程度まで小さくするかは用途等に応じて当業者が適宜定め得る事項であるところ、引用発明においてもダウンホールツールでの使用といった高温用途を踏まえ、イオン性液体における不純物及び水分を極力少なくして相違点4に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。
(5)そして、上記各相違点を総合勘案しても、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。
7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-005207