特許拒絶査定不服審判
2021-003847
モジュール式信号インターフェース装置及び関連する坑井内電力及びデータシステム
- 審判番号
- 2021-003847
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-000643外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月24日
- 審決日
- 2021年11月16日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】ファーストキャップ・システムズ・コーポレイション
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】岡部 博史
- 【請求人代理人】岡部 英隆
- 分類
- P18 .121-WY (H01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019- 643「モジュール式信号インターフェース装置及び関連する坑井内電力及びデータシステム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月 6日出願公開、特開2019- 87753、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2014年3月15日(パリ条約による優先権主張2013年3月15日、米国、2013年10月8日、米国)を国際出願日とする特願2016-503302号の一部を平成31年1月7日に新たな特許出願としたものであって、その手続きの経緯は以下のとおりである。
平成31年 2月 5日 :手続補正書の提出
令和 2年 3月 6日付け:拒絶理由通知
令和 2年 9月 9日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年11月17日付け:拒絶査定
令和 3年 3月24日 :審判請求書の提出
令和 3年 5月 6日 :手続補正書(方式)の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和2年11月17日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし15に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2013/016145号
2.国際公開第2013/010641号
3.特開2012-74541号公報
第3 本願発明
本願の請求項1ないし15に係る発明(以下、「本願発明1」及び「本願発明15」という。)は、令和2年9月9日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
坑井内ツールへ電力を供給するためのモジュール式電力システムであって、
上記モジュール式電力システムは、
高温で再充電可能なエネルギー貯蔵装置(「HTRES」)と、
上記モジュール式電力システムに接続された坑井内ツールに供給される電力と、上記HTRESの充電放電サイクルとの少なくとも一方を制御するモジュール式信号インターフェース装置(「MSID」)モジュールとを備え、
上記MSIDは坑井内電源に接続するように適合され、
上記HTRESは、改良型電解質(「AES」)を含むウルトラキャパシタを備え、上記AESは、以下の化学式を有する塩を含み、
【化1】
[図:0001380812000001.jpg]
R1は、1~4個の炭素原子を備える直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、R2はメチル基もしくはエチル基であり、X-は[B(CN)4]-もしくは[BFn(CN)4-n]-であり、ここで、n=0、1、2、又は3であり、
上記AESは、500ppm未満の塩化物イオンと、50ppm未満のフッ化物イオンと、50ppm未満の水とを含み、
上記ウルトラキャパシタは、エネルギー貯蔵媒体を備える電極を備え、上記エネルギー貯蔵媒体はカーボンナノチューブ及び活性炭を含み、上記エネルギー貯蔵媒体は、少なくとも98質量%の元素状炭素からなり、上記ウルトラキャパシタの性能を改善するように上記AESのサイズに基づいて選択された孔を含み、
上記ウルトラキャパシタは、200ppm未満のハロゲン化物含有量と、100ppm未満の水分含有量とを含み、
上記電極は、350ppm未満の水分含有量と、300ppm未満の塩化物含有量とを含む、
モジュール式電力システム。
【請求項2】
上記AESは、精製された電解質を含む、
請求項1記載の電力システム。
【請求項3】
上記HTRESは正及び負の電極を備える、
請求項1又は2記載の電力システム。
【請求項4】
上記エネルギー貯蔵媒体は、カーボンファイバー、レーヨン、グラフェン、エアロゲル、及びカーボンクロスのうちの少なくとも1つを含む、
請求項1記載の電力システム。
【請求項5】
上記AESは、不純物含有量を減少させるように精製された、
請求項1~4のうちの1つに記載の電力システム。
【請求項6】
上記AESは、1000ppm未満のハロゲン化物イオンの含有量を含む、
請求項1~5のうちの1つに記載の電力システム。
【請求項7】
上記AESは、500ppm未満のハロゲン化物イオンの含有量を含む、
請求項6記載の電力システム。
【請求項8】
上記AESは、100ppm未満のハロゲン化物イオンの含有量を含む、
請求項6記載の電力システム。
【請求項9】
上記AESは、50ppm未満のハロゲン化物イオンの含有量を含む、
請求項6記載の電力システム。
【請求項10】
上記AESは、1000ppm未満の金属種の合計濃度を含む、
請求項1~9のうちの1つに記載の電力システム。
【請求項11】
上記AESは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩をさらに含む、
請求項1~10のうちの1つに記載の電力システム。
【請求項12】
坑井内ツールへ電力を供給するためのモジュール式電力システムであって、
上記モジュール式電力システムは、
高温で再充電可能なエネルギー貯蔵装置(「HTRES」)と、
上記モジュール式電力システムに接続された坑井内ツールに供給される電力と、上記HTRESの充電放電サイクルとの少なくとも一方を制御するモジュール式信号インターフェース装置(「MSID」)モジュールとを備え、
上記MSIDは坑井内電源に接続して上記HTRESを再充電するように電力を供給するように適合され、
上記HTRESは、改良型電解質(「AES」)を含むウルトラキャパシタを備え、
上記改良型電解質(「AES」)は、以下の化学式を有する塩を含み、
【化2】
[図:0001380812000002.jpg]
R1は、1~4個の炭素原子を備える直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、R2はメチル基もしくはエチル基であり、X-は[B(CN)4]-もしくは[BFn(CN)4-n]-であり、ここで、n=0、1、2、又は3であり、
上記AESは、500ppm未満の塩化物イオンと、50ppm未満のフッ化物イオンと、50ppm未満の水とを含み、
上記ウルトラキャパシタは、エネルギー貯蔵媒体を備える電極を備え、上記エネルギー貯蔵媒体はカーボンナノチューブ及び活性炭を含み、上記エネルギー貯蔵媒体は、少なくとも98質量%の元素状炭素からなり、上記ウルトラキャパシタの性能を改善するように上記AESのサイズに基づいて選択された孔を含み、
上記ウルトラキャパシタは、200ppm未満のハロゲン化物含有量と、100ppm未満の水分含有量とを含み、
上記電極は、350ppm未満の水分含有量と、300ppm未満の塩化物含有量とを含む、
モジュール式電力システム。
【請求項13】
上記AESは、1-ブチル-1-メチルピロリジニウムテトラシアノホウ酸塩をさらに含む、
請求項12記載の電力システム。
【請求項14】
坑井内ツールへ電力を供給するためのモジュール式電力システムであって、
上記モジュール式電力システムは、
高温で再充電可能なエネルギー貯蔵装置(「HTRES」)と、
モジュール式信号インターフェース装置(「MSID」)モジュールとを備え、
上記HTRESは少なくとも1つのウルトラキャパシタを備え、上記少なくとも1つのウルトラキャパシタは、炭素材料及び改良型電解質(「AES」)を含むエネルギー貯蔵媒体を含む少なくとも1つの電極を備え、
上記MSIDは、上記モジュール式電力システムに接続された坑井内ツールに供給される電力と、上記HTRESの充電放電サイクルとの少なくとも一方を制御し、上記MSIDは坑井内電源に接続して上記HTRESを再充電するように電力を供給するように適合され、
上記MSIDは、上記少なくとも1つのウルトラキャパシタの充電及び放電を制御するように構成されたウルトラキャパシタ管理システム(UMS)を備え、
上記HTRESは、改良型電解質(「AES」)を含むウルトラキャパシタを備え、上記AESは、以下の化学式を有する塩を含み、
【化3】
[図:0001380812000003.jpg]
R1は、1~4個の炭素原子を備える直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、R2はメチル基もしくはエチル基であり、X-は[B(CN)4]-もしくは[BFn(CN)4-n]-であり、ここで、n=0、1、2、又は3であり、
上記AESは、500ppm未満の塩化物イオンと、50ppm未満のフッ化物イオンと、50ppm未満の水とを含み、
上記ウルトラキャパシタは、エネルギー貯蔵媒体を備える電極を備え、上記エネルギー貯蔵媒体はカーボンナノチューブ及び活性炭を含み、上記エネルギー貯蔵媒体は、少なくとも98質量%の元素状炭素からなり、上記ウルトラキャパシタの性能を改善するように上記AESのサイズに基づいて選択された孔を含み、
上記ウルトラキャパシタは、200ppm未満のハロゲン化物含有量と、100ppm未満の水分含有量とを含み、
上記電極は、350ppm未満の水分含有量と、300ppm未満の塩化物含有量とを含む、
モジュール式電力システム。
【請求項15】
上記HTRESは、摂氏75度から摂氏210度までの温度範囲において動作可能である、
請求項14記載の電力システム。」
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、翻訳文として日本語ファミリーである特表2014-531531号の記載を付記する。また、下線は当審で付与した(以下同様)。)
「CLAIMS
What is claimed is:
・・・
14. The power supply of claim 1, wherein content of halide ions in electrolyte of the energy storage is less than about 50 parts per million.
15. The power supply of claim 1, wherein electrolyte of the energy storage comprises halide ions that comprise at least one of chloride, bromide, fluoride and iodide.
・・・
22. The power supply of claim 1, wherein a total water content in electrolyte of the energy storage is less than about 50 parts per million.」
(【請求項14】
エネルギー貯蔵体の電解質におけるハロゲン化物イオンの含有量が約50ppmより小さい、請求項1に記載の電源。
【請求項15】
エネルギー貯蔵体の電解質が、塩化物、臭化物、フッ化物およびヨウ化物の少なくとも1つを含むハロゲン化物イオンを含む、請求項1に記載の電源。
・・・
【請求項22】
エネルギー貯蔵体の電解質における総含水量が約50ppmより小さい、請求項1に記載の電源。)
「[0007] In one embodiment, a power supply that is adapted for supplying power to a downhole tool is disclosed. The power supply includes an energy source coupled to a control circuit and a rechargeable energy storage that is configured to operate at a temperature within a temperature range between about 80 degrees Celsius to about 210 degrees Celsius.The source may include at least one of a battery, a connection to an external supply of electrical energy and a generator that is configured for translating energy experienced by the downhole tool into the electrical energy. The control circuit may be configured for receiving electrical energy from the source and storing the electrical energy in the energy storage.」
(【0007】
一の実施形態において、ダウンホール工具に電力を供給するようになっている電源が開示される。電源は、制御回路と、約80℃~約210℃の温度範囲内の温度で作動するように構成される再充電可能なエネルギー貯蔵体とに連結されたエネルギー源を含む。エネルギー源は、電池、電気エネルギーの外部供給に対する接続、およびダウンホール工具によって経験されるエネルギーを電気エネルギーに変換するように構成される発生機の少なくとも1つを含んでよい。制御回路は、エネルギー源から電気エネルギーを受け取ってエネルギー貯蔵体において電気エネルギーを貯蔵するように構成されてよい。)
「[0009] In yet another embodiment, a method for providing power with a downhole tool is disclosed. The method includes: selecting a tool that includes a power supply that comprises an energy source coupled to a control circuit and a high temperature rechargeable energy storage configured to operate at a temperature within a temperature range between about 80 degrees Celsius to about 210 degrees Celsius. The source includes at least one of a battery, a connection to an external supply of electrical energy and a generator that is configured for translating energy experienced by the downhole tool into the electrical energy. The control circuit may be configured for receiving electrical energy from the source and storing the electrical energy in the energy storage; and providing power from the power supply to a load with the tool downhole.」
(【0009】
更にもう1つの実施形態において、ダウンホール工具に電力を供給する方法が開示される。方法は、制御回路と、約80℃~約210℃の温度範囲内の温度で作動するように構成される高温で再充電可能なエネルギー貯蔵体とに連結されるエネルギー源を備える電源を含む工具を選択することを含む。エネルギー源は、電池、電気エネルギーの外部供給に対する接続、およびダウンホール工具によって経験されるエネルギーを電気エネルギーに変換するように構成される発生機の少なくとも1つを含む。制御回路は、エネルギー源からの電気エネルギーを受け取ってエネルギー貯蔵体において電気エネルギーを貯蔵するように構成されてよく、電源からの電力を、ダウンホール工具を備える負荷に供給するように構成されてよい。)
「[0046] In this example, the wellbore 101 is drilled into the Earth 102 using a drill string 111 driven by a drilling rig (not shown) which, among other things, provides rotational energy and downward force. The wellbore 101 generally traverses sub-surface materials, which may include various formations 103 (shown as formations 103 A, 103B, 103C). One skilled in the art will recognize that the various geologic features as may be encountered in a subsurface environment may be referred to as "formations," and that the array of materials down the borehole (i.e., downhole) may be referred to as "sub-surface materials." That is, the formations 103 are formed of sub-surface materials. Accordingly, as used herein, it should be considered that while the term "formation" generally refers to geologic formations, and "sub-surface material," includes any materials, and may include materials such as solids, fluids, gases, liquids, and the like.」
(【0014】
この例において、裸孔101は、とりわけ回転エネルギーおよび下方への力を提供するドリリングリグ(または掘削リグ)(図示せず)によって駆動されるドリルストリング111を用いて地中102へと掘削される。裸孔101は一般に、地下の物質を横断し、それは種々の層(または地層)103(層103A、103B、103Cとして示される)を含み得る。当業者は、地下環境において遭遇し得る種々の地質学的特徴を「層(または地層)」と称してよいこと、およびボーリング穴(即ちダウンホール)の下方の物質の配列を「地下物質」と称してよいことを認識するだろう。即ち、層103は地下物質から形成される。従って、本明細書において用いられるように、用語「層」が一般に地質学的層を指す一方で、「地下物質」は任意の物質を含み、固体、流体、気体、液体等の物質を含んでよいことを考慮するべきである。)
「[0054] Generally, the logging instrument 100 includes a power supply 115. The power supply 115 may provide power to downhole electronics 113 (i.e., power consuming devices) as appropriate. Generally, the downhole electronics 113 provide measurements, perform sampling, as well as any other sequences desired to locate, ascertain and qualify a presence of hydrocarbons 105.
[0055] As an overview, the power supply 115 generally includes electrical storage and a generator for generating electrical output. The energy storage may include any type of technology practicable. In various embodiments, the energy storage includes at least one ultracapacitor (which is described below with reference to FIG. 3). Generally, in each instance, the energy storage provides a High Temperature Rechargeable Energy Storage (HTRES). In some embodiments, the HTRES is configured for operation at a temperature that is within a temperature range of between about 80 degrees Celsius to about 210 degrees Celsius.」
(【0022】
一般に、検層機器100は電源115を含む。電源115は、必要に応じてダウンホール電子機器113(即ち、電力を消費するデバイス)に電力を供給してよい。一般に、ダウンホール電子機器113は、測定を提供し、サンプリングを行い、また、炭化水素105の存在を位置決定し、探知し且つ条件付けするのに望ましい他の連続を行う。
【0023】
概観として、電源115は一般に、電気的貯蔵および電気的出力を発生させるための発生機を含む。エネルギー貯蔵は、任意の種類の実行可能な技術を含んでよい。種々の実施形態において、エネルギー貯蔵(またはエネルギー貯蔵体)は少なくとも1つのウルトラキャパシタ(これは図3を参照して以下に説明される)を含む。一般に、各々の場合において、エネルギー貯蔵体は高温で再充電可能なエネルギー貯蔵体(HTRES)を提供する。いくつかの実施形態において、HTRESは、約80℃~約210℃の温度範囲内の温度における操作に対して構成される。)
「[0060] As shown in FIG. 3, an exemplary embodiment of a capacitor is shown. In this case, the capacitor is an "ultracapacitor 10." The exemplary ultracapacitor 10 is an electric double- layer capacitor (EDLC). The EDLC includes at least one pair of electrodes 3 (where the electrodes 3 may be referred to individually as one of a "negative electrode 3" and a "positive electrode 3," however, this is merely for purposes of referencing herein). When assembled into the ultracapacitor 10, each of the electrodes 3 presents a double layer of charge at an electrolyte interface. In some embodiments, a plurality of electrodes 3 is included (for example, in some embodiments, at least two pairs of electrodes 3 are included). For purposes of discussion, only one pair of electrodes 3 are shown. As a matter of convention herein, at least one of the electrodes 3 uses a carbon-based energy storage media 1 (as discussed further herein) to provide energy storage. However, for purposes of discussion herein, it is generally assumed that each of the electrodes includes the carbon-based energy storage media 1. It should be noted that an electrolytic capacitor differs from an ultracapacitor because, in an electrolytic capacitor, the metallic electrodes typically differ greatly (at least an order of magnitude) in area.」
(【0028】
図3に示すように、キャパシタの一の例示的実施形態が示される。この場合において、キャパシタは「ウルトラキャパシタ10」である。例示的ウルトラキャパシタ10は、電気二重層キャパシタ(EDLC)である。EDLCは、少なくとも1対の電極3を含む(電極3は、個別に「負極3」および「正極3」の一方でよんでよいが、これは単に本明細書において言及する目的のためである)。ウルトラキャパシタ10へと組み立てられたとき、電極3の各々は電解質界面における電荷の二重層を示す。いくつかの実施形態において、複数の電極3が含まれる(例えば、いくつかの実施形態において、少なくとも2対の電極3が含まれる)。議論のために、1対の電極3のみが示される。本明細書において、常套的には、電極3の少なくとも1つは、エネルギー貯蔵をもたらすために炭素ベースのエネルギー貯蔵媒体1(本明細書において更に論じられる)を用いる。但し、議論のために、電極の各々は炭素ベースのエネルギー貯蔵媒体1を含むことが一般に想定される。電解コンデンサにおいて、金属電極の面積は通常、非常に(少なくとも1桁)異なるので、電解コンデンサはウルトラキャパシタとは異なることに留意するべきである。)
「[0062] At least one form of electrolyte 6 is included in the ultracapacitor 10. The electrolyte 6 fills void spaces in and between the electrodes 3 and the separator 5. In general, the electrolyte 6 is a substance that disassociates into electrically charged ions. A solvent that dissolves the substance may be included in some embodiments of the electrolyte 6, as appropriate. The electrolyte 6 conducts electricity by ionic transport.」
(【0030】
電解質6の少なくとも1つの形態が、ウルトラキャパシタ10に含まれる。電解質6は、電極3およびセパレータ5における空所(void space)ならびに電極3とセパレータ5との間の空所を満たす。一般に、電解質6は帯電したイオンへと分離する物質である。物質を溶解する溶媒が、電解質6のいくつかの形態において必要に応じて含まれてよい。電解質6は、イオン輸送により電気を伝導する。)
「[0067] In the exemplary ultracapacitor 10, the energy storage media 1 is formed of carbon nanotubes. The energy storage media 1 may include other carbonaceous materials including, for example, activated carbon, carbon fibers, rayon, graphene, aerogel, carbon cloth, and a plurality of forms of carbon nanotubes. Activated carbon electrodes can be manufactured, for example, by producing a carbon base material by carrying out a first activation treatment to a carbon material obtained by carbonization of a carbon compound, producing a formed body by adding a binder to the carbon base material, carbonizing the formed body, and finally producing an active carbon electrode by carrying out a second activation treatment to the carbonized formed body. Carbon fiber electrodes can be produced, for example, by using paper or cloth pre-form with high surface area carbon fibers.」
(【0035】
例示的ウルトラキャパシタ10において、エネルギー貯蔵媒体1はカーボンナノチューブから形成される。エネルギー貯蔵媒体1は、例えば、活性炭、炭素繊維、レーヨン、グラフェン、エアロゲル、炭素布およびカーボンナノチューブの複数の形態を含む他の炭素質材料を含んでよい。活性炭電極は、例えば、炭素化合物の炭化により得られる炭素材料に対して第1の活性化処理を行うことによって炭素系材料を製造すること、炭素消系材料にバインダーを加えることにより成形体(formed body)を製造すること、成形体を炭化すること、および最後に炭化された成形体に第2の活性化処理を行うことにより活性炭電極を製造することによって製造され得る。炭素繊維電極は、例えば、表面積の大きい炭素繊維を有する紙(またはペーパー)または布の予備成形品(またはプレフォーム)を用いることにより製造され得る。)
「[0069] In some embodiments, material used to form the energy storage media 1 may include material other than pure carbon (and the various forms of carbon as may presently exist or be later devised). That is, various formulations of other materials may be included in the energy storage media 1. More specifically, and as a non-limiting example, at least one binder material may be used in the energy storage media 1 , however, this is not to suggest or require addition of other materials (such as the binder material). In general, however, the energy storage media 1 is substantially formed of carbon, and may therefore referred to herein as a "carbonaceous material," as a "carbonaceous layer" and by other similar terms. In short, although formed predominantly of carbon, the energy storage media 1 may include any form of carbon (as well as any additives or impurities as deemed appropriate or acceptable) to provide for desired functionality as energy storage media 1.
[0070] In one set of embodiments, the carbonaceous material includes at least about 60% elemental carbon by mass, and in other embodiments at least about 75%, 85%, 90%, 95% or 98% by mass elemental carbon.」
(【0037】
いくつかの実施形態において、エネルギー貯蔵媒体1を形成するのに用いられる材料は、純炭素(および現在存在する又は後に考案される種々の形態の炭素)以外の材料を含んでよい。即ち、他の材料の種々の配合物がエネルギー貯蔵媒体1に含まれてよい。より具体的には、かつ限定的でない例において、少なくとも1つのバインダー材料がエネルギー貯蔵媒体1において用いられてよいが、このことは、他の材料(バインダー材料等)の添加を示唆する又は必要とするものではない。但し、一般に、エネルギー貯蔵媒体1は実質的に炭素から形成され、従って、本明細書において「炭素質材料」、「炭素質層」または他の同様の用語でよんでよい。手短に言えば、エネルギー貯蔵媒体1は、主に炭素から形成されるが、エネルギー貯蔵媒体1として所望の機能性をもたらす任意の形態の炭素(適切である又は許容可能であると考えられる任意の添加剤または不純物)を含んでよい。
【0038】
一組の実施形態において、炭素質材料は少なくとも約60質量%の炭素元素を含み、他の実施形態において少なくとも約75質量%、85質量%、90質量%、95質量%または98質量%の炭素元素を含む。)
「[0084] The electrolyte 6 includes a pairing of cations 9 and anions 11 and may include a solvent. The electrolyte 6 may be referred to as an "ionic liquid" as appropriate. Various combinations of cations 9, anions 11 and solvent may be used. In the exemplary ultracapacitor 10, the cations 9 may include at least one of l-(3-Cyanopropyl)-3- methylimidazolium, l ,2-Dimethyl-3-propylimidazolium, 1,3-Bis(3- cyanopropyl)imidazolium, 1,3-Diethoxyimidazolium, 1-Butyl-1-methylpiperidinium, 1-Butyl-2,3-dimethylimidazolium, l-Butyl-3-methylimidazolium, 1-Butyl-4-methylpyridinium, 1-Butylpyridinium, l-Decyl-3-methylimidazolium, l-Ethyl-3-methylimidazolium, 3-Methyl-1-propylpyridinium, and combinations thereof as well as other equivalents as deemed appropriate. Additional exemplary cations 9 include imidazolium, pyrazinium, piperidinium, pyridinium, pyrimidinium, and pyrrolidinium (structures of which are depicted in FIG. 4). In the exemplary ultracapacitor 10, the anions 11 may include at least one of bis(trifluoromethanesulfonate)imide, tris(trifluoromethanesulfonate)methide, dicyanamide, tetrafluoroborate, hexafluorophosphate, trifluoromethanesulfonate, bis(pentafluoroethanesulfonate)imide, thiocyanate, trifluoro(trifluoromethyl)borate, and combinations thereof as well as other equivalents as deemed appropriate.」
(【0052】
電解質6は、カチオン9とアニオン11とのペアを含み、溶媒を含んでよい。電解質6は、必要に応じて「イオン液体」とよんでよい。カチオン9、アニオン11および溶媒の種々の組み合わせを用いてよい。例示的ウルトラキャパシタ10において、カチオン9は、1-(3-シアノプロピル)-3-メチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、1,3-ビス(3-シアノプロピル)イミダゾリウム、1,3-ジエトキシイミダゾリウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、3-メチル-1-プロピルピリジニウムおよびこれらの組み合わせならびに適切であると考えられる他の同等物の少なくとも1つを含んでよい。追加の例示的カチオン9は、イミダゾリウム、ピラジニウム、ピペリジニウム、ピリジニウム、ピリミジニウムおよびピロリジニウム(これらの構造は図4に表される)を含む。例示的ウルトラキャパシタ10において、アニオン11は、ビス(トリフルオロメタンスルホナート)イミド、トリス(トリフルオロメタンスルホナート)メチド、ジシアナミド、テトラフルオロボラート、ヘキサフルオロホスファート、トリフルオロメタンスルホナート、ビス(ペンタフルオロエタンスルホナート)イミド、チオシアナート、トリフルオロ(トリフルオロメチル)ボラートおよびこれらの組み合わせならびに適切であると考えられる他の同等物の少なくとも1つを含んでよい。)
「[0099] In some embodiments, the impurity content of the ultracapacitor 10 has been measured using ion selective electrodes and the Karl Fischer titration procedure, which has been applied to electrolyte 6 of the ultracapacitor 10. It has been found that the total halide content in the ultracapacitor 10 according to the teachings herein has been found to be less than about 200 ppm of halides (Cl-and F-) and water content is less than about 100 ppm.」
「【0068】
いくつかの実施形態において、ウルトラキャパシタ10の不純物含有量は、イオン選択電極およびカール・フィッシャー滴定法(ウルトラキャパシタ10の電解質6に適用された)を用いて測定されてきた。本明細書における教示事項によるウルトラキャパシタ10におけるハロゲン化物の総含有量が、約200ppm未満のハロゲン化物(Cl-およびF-)であったことがわかり、含水量が約100ppm未満であったことがわかった。」
(2)上記記載事項より、引用文献1には「ダウンホール工具に電力を供給するようになっている電源」([0007])について次の事項が記載されている。
・電源は検層機器に含まれている([0054])。
・電源は、制御回路と、約80℃~約210℃の温度範囲内の温度で作動するように構成される再充電可能なエネルギー貯蔵体とに連結されたエネルギー源を含み、エネルギー源は、電池を含んでいる([0007])。
・制御回路は、エネルギー源から電気エネルギーを受け取ってエネルギー貯蔵体において電気エネルギーを貯蔵するように構成され、または、電源からの電力を、ダウンホール工具を備える負荷に供給するように構成されている([0007]、[0009])。
・エネルギー貯蔵体はウルトラキャパシタを含む([0055])。
・ウルトラキャパシタ10に含まれる電解質6は、カチオン9とアニオン11とのペアを含み、カチオン9はピロリジニウム、アニオン11はテトラフルオロボラートである([0062]、[0084])。
・電解質6が、塩化物、臭化物、フッ化物およびヨウ化物の少なくとも1つを含むハロゲン化物イオンを含み、ハロゲン化物イオンの含有量が約50ppmより小さく、総含水量が約50ppmより小さい(CLAIMS 14. 15. 22.)。
・ウルトラキャパシタ10は1対の電極3を含み、電極3は炭素ベースのエネルギー貯蔵媒体1を用いる([0060])。
・エネルギー貯蔵媒体1は活性炭およびカーボンナノチューブを含む炭素質材料である([0067]、[0069])。
・炭素質材料は少なくとも98質量%の炭素元素を含む([0070])。
・ウルトラキャパシタ10におけるハロゲン化物の総含有量が、約200ppm未満のハロゲン化物であり、含水量が約100ppm未満である([0099])。
(3)以上によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ダウンホール工具に電力を供給するようになっている、検層機器に含まれる電源であって、
電源は、制御回路と、約80℃~約210℃の温度範囲内の温度で作動するように構成される再充電可能なエネルギー貯蔵体とに連結されたエネルギー源を含み、
エネルギー源は、電池を含み、
制御回路は、エネルギー源から電気エネルギーを受け取ってエネルギー貯蔵体において電気エネルギーを貯蔵するように構成され、または、電源からの電力を、ダウンホール工具を備える負荷に供給するように構成され、
エネルギー貯蔵体はウルトラキャパシタ10を含み、
ウルトラキャパシタ10に含まれる電解質6は、カチオン9とアニオン11とのペアを含み、カチオン9はピロリジニウム、アニオン11はテトラフルオロボラートであり、
電解質6が、塩化物、臭化物、フッ化物およびヨウ化物の少なくとも1つを含むハロゲン化物イオンを含み、ハロゲン化物イオンの含有量が約50ppmより小さく、総含水量が約50ppmより小さく、
ウルトラキャパシタ10は1対の電極3を含み、
電極3は炭素ベースのエネルギー貯蔵媒体1を用い、エネルギー貯蔵媒体1は活性炭およびカーボンナノチューブを含む炭素質材料であり、炭素質材料は少なくとも98質量%の炭素元素を含み、
ウルトラキャパシタ10におけるハロゲン化物の総含有量が、約200ppm未満のハロゲン化物であり、含水量が約100ppm未満である、
電源。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。(なお、翻訳文として日本語ファミリーである特表2014-529335号の記載を付記する。)
「The object of the present invention was to provide alternative compounds which are novel, thermally and electrochemically stable which can be used for the synthesis of ionic liquids or as ionic liquids or as conductive salts, and which are in particular useful for the synthesis of ionic liquids or as ionic liquids or organic salts for application in electrochemical or optoelectronic devices. The object of the present invention was furthermore to provide a method for the preparation of the alternative salts, especially the compounds of formula I, as described below, which can be produced in economical way on industrial scale.」(第2頁第28行-第3頁第4行)
(【0010】
本発明の目的は、新規であり、熱的に、および電気化学的に安定であり、イオン液体の合成のために、またはイオン液体として、もしくは伝導性塩として使用することができ、特にイオン液体の合成のために、または電気化学的もしくは光電子デバイスにおける適用のためのイオン液体もしくは有機塩として有用である代替の化合物を提供することにあった。本発明の目的はさらに、工業的規模で経済的な方法において生産することができる、代替の塩、特に以下に記載する式Iで表される化合物の調製のための方法を提供することにあった。)
「Example 19. Butylmethylpyrrolidinium tricyanomethylborate - [BMPL][CH3B(CN)3]
[図:0001380812000004.jpg]
Butylmethylpyrrolidinium chloride, [BMPLJCI, (190 mg, 1.07 mmol), and potassium methyltricyanoborate (168 mg, 1.18 mmol) are suspended in chloroform (5 ml) and stirred for one hour. The potassium chloride formed and excess potassium methyltricyanoborate are subsequently filtered off. The filtrate is evaporated in vacuo, giving an ionic liquid.」(第73頁第1-12行)
(【0247】
例19。ブチルメチルピロリジニウムトリシアノメチルボレート-[BMPL][CH3B(CN)3]
【化32】
[図:0001380812000005.jpg]
ブチルメチルピロリジニウムクロリド、[BMPL]Cl(190mg、1.07mmol)およびカリウムメチルトリシアノボレート(168mg、1.18mmol)を、クロロホルム(5ml)に懸濁させ、1時間撹拌する。生成した塩化カリウムおよび過剰のカリウムメチルトリシアノボレートを、その後濾別する。濾液を真空中で蒸発させ、イオン液体を得る。)
上記記載より、引用文献2には次の技術事項が記載されている。
「電気化学的もしくは光電子デバイスに適用するためのイオン液体である、ブチルメチルピロリジニウムトリシアノメチルボレート-[BMPL][CH3B(CN)3]。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
本発明は、電気化学デバイスに用いられる電解液及びそれを用いた電気化学デバイスに関する。」
「【0073】
比較例1
N-メトキシメチル-N-メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(MMMP・BF4)(大塚化学製)26重量部、プロピレンカーボネート(PC)74重量部の割合で配合し、実施例1と同様にして電解液を得た。実施例1と同様に、得られた電解液の性能の測定を行った。結果を表1に記載する。」
上記記載より、引用文献3には次の技術事項が記載されている。
「電気化学デバイスに用いられる電解液である、N-メトキシメチル-N-メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(MMMP・BF4)。」
第5 対比、判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用文献1に「ボーリング穴(即ちダウンホール)」([0046])と記載されていることから、引用発明の「ダウンホール工具」は、本願発明1の「坑井内ツール」に相当する。
そうすると、引用発明の「ダウンホール工具に電力を供給するようになっている」「電源」は本願発明1と、「坑井内ツールへ電力を供給するための電力システム」である点で共通する。
但し、電力システムが、本願発明1は「モジュール式」であるのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
イ 引用発明の「約80℃~約210℃の温度範囲内の温度で作動するように構成される再充電可能なエネルギー貯蔵体」は、本願発明1の「高温で再充電可能なエネルギー貯蔵装置(「HTRES」)」に相当する。
ウ 引用発明において「ダウンホール工具」は「電源」に接続されていることは明らかであるから、「電源からの電力を、ダウンホール工具」「に供給するように構成され」た「制御回路」は、本願発明1と、「上記電力システムに接続された坑井内ツールに供給される電力を制御する信号インターフェース装置(「MSID」)」である点で共通する。
また、引用発明の「エネルギー源から電気エネルギーを受け取ってエネルギー貯蔵体において電気エネルギーを貯蔵するように構成され」た「制御回路」と本願発明1とは、「上記HTRESの充電放電サイクルとの少なくとも一方を制御する信号インターフェース装置(「MSID」)」である点で共通する。
但し、信号インターフェース装置(「MSID」)が、本願発明1は「モジュール式」であるのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
エ 引用発明の「電源」は、「検層機器に含まれる」ので、抗井内の「電源」である。
そして、引用発明の「制御回路は、」「電源からの電力を、ダウンホール工具を備える負荷に供給するように構成され」ているので、「制御回路」は抗井内の「電源」に接続されているといえる。このことは、本願発明1の「信号インターフェース装置(「MSID」)」「は坑井内電源に接続するように適合され」ていることに相当する。
オ 引用発明の「電解質6」は、「ハロゲン化物イオンの含有量が約50ppmより小さく、総含水量が約50ppmより小さく」なっているので、改良型電解質であるといえる。
そうすると、引用発明の「エネルギー貯蔵体は」、「電解質6」を含む「ウルトラキャパシタ10を含」むことは、本願発明1の「上記HTRESは、改良型電解質(「AES」)を含むウルトラキャパシタを備え」ていることに相当する。
また、引用発明の「電解質6は、カチオン9とアニオン11とのペアを含」むことと本願発明1とは、「上記AESは、塩を含」む点で共通する。
但し、塩が、本願発明1は、「
[図:0001380812000006.jpg]
R1は、1~4個の炭素原子を備える直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、R2はメチル基もしくはエチル基であり、X-は[B(CN)4]-もしくは[BFn(CN)4-n]-であり、ここで、n=0、1、2、又は3であ」るのに対して、引用発明は「カチオン9はピロリジニウム、アニオン11はテトラフルオロボラートであ」る点で相違する。
カ 引用発明の「電解質6」は、「塩化物、臭化物、フッ化物およびヨウ化物の少なくとも1つを含むハロゲン化物イオンを含み、ハロゲン化物イオンの含有量が約50ppmより小さく、総含水量が約50ppmより小さ」いので、塩化物イオンとフッ化物イオンの含有量は約50ppmより小さいものである。
そうすると、引用発明の「電解質6」は、本願発明1の「500ppm未満の塩化物イオンと、50ppm未満のフッ化物イオンと、50ppm未満の水とを含」む「上記AES」に含まれる。
キ 引用発明の「ウルトラキャパシタ10は1対の電極3を含み、電極3は炭素ベースのエネルギー貯蔵媒体1を用い、エネルギー貯蔵媒体1は活性炭およびカーボンナノチューブを含む炭素質材料であり、炭素質材料は少なくとも98質量%の炭素元素を含」むことは、本願発明1の「上記ウルトラキャパシタは、エネルギー貯蔵媒体を備える電極を備え、上記エネルギー貯蔵媒体はカーボンナノチューブ及び活性炭を含み、上記エネルギー貯蔵媒体は、少なくとも98質量%の元素状炭素からな」ることに相当する。
但し、本願発明1は、エネルギー貯蔵媒体が「上記ウルトラキャパシタの性能を改善するように上記AESのサイズに基づいて選択された孔を含」むのに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
ク 引用発明の「ウルトラキャパシタ10におけるハロゲン化物の総含有量が、約200ppm未満のハロゲン化物であり、含水量が約100ppm未満である」ことは、本願発明1の「上記ウルトラキャパシタは、200ppm未満のハロゲン化物含有量と、100ppm未満の水分含有量とを含」むことに相当する。
ケ 電極について、本願発明1は「350ppm未満の水分含有量と、300ppm未満の塩化物含有量とを含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点で相違する。
コ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるといえる。
(一致点)
「坑井内ツールへ電力を供給するための電力システムであって、
上記電力システムは、
高温で再充電可能なエネルギー貯蔵装置(「HTRES」)と、
上記電力システムに接続された坑井内ツールに供給される電力と、上記HTRESの充電放電サイクルとの少なくとも一方を制御する信号インターフェース装置(「MSID」)とを備え、
上記MSIDは坑井内電源に接続するように適合され、
上記HTRESは、改良型電解質(「AES」)を含むウルトラキャパシタを備え、上記AESは、塩を含み、
上記AESは、500ppm未満の塩化物イオンと、50ppm未満のフッ化物イオンと、50ppm未満の水とを含み、
上記ウルトラキャパシタは、エネルギー貯蔵媒体を備える電極を備え、上記エネルギー貯蔵媒体はカーボンナノチューブ及び活性炭を含み、上記エネルギー貯蔵媒体は、少なくとも98質量%の元素状炭素からなり、
上記ウルトラキャパシタは、200ppm未満のハロゲン化物含有量と、100ppm未満の水分含有量とを含む、
モジュール式電力システム。」
(相違点1)
電力システムが、本願発明1は「モジュール式」であるのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点2)
信号インターフェース装置(「MSID」)が、本願発明1は「モジュール式」であるのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点3)
塩が、本願発明1は、「
[図:0001380812000007.jpg]
R1は、1~4個の炭素原子を備える直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、R2はメチル基もしくはエチル基であり、X-は[B(CN)4]-もしくは[BFn(CN)4-n]-であり、ここで、n=0、1、2、又は3であ」るのに対して、引用発明は「カチオン9はピロリジニウム、アニオン11はテトラフルオロボラートであ」る点。
(相違点4)
本願発明1は、エネルギー貯蔵媒体が「上記ウルトラキャパシタの性能を改善するように上記AESのサイズに基づいて選択された孔を含」むのに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(相違点5)
電極について、本願発明1は「350ppm未満の水分含有量と、300ppm未満の塩化物含有量とを含む」のに対して、引用発明はそのような特定がない点。
(2)相違点についての判断
事案に鑑み、まず、相違点3について検討する。
引用文献2には、電気化学的もしくは光電子デバイスに適用するためのイオン液体である、ブチルメチルピロリジニウムトリシアノメチルボレート-[BMPL][CH3B(CN)3]が記載されいる(上記「第4 2」)。また、引用文献3には、電気化学デバイスに用いられる電解液である、N-メトキシメチル-N-メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート(MMMP・BF4)が記載されている(上記「第4 3」)。
ここで、引用文献2に記載されたイオン液体、及び引用文献3に記載された電解液は、ともに、電気化学デバイスに用いるものであるから、引用発明の「ウルトラキャパシタ10」の電解質に適用することは、当業者であれば適宜試みる試行錯誤の範囲であるといえる。
しかしながら、引用文献2に記載されたイオン液体及び引用文献3に記載された電解液に用いられる塩は、本願発明1の電解質に含まれる「塩」とは異なっているから、たとえ、引用発明にこれらのイオン液体又は電解液を適用しても、上記相違点3に係る
[図:0001380812000008.jpg]
R1は、1~4個の炭素原子を備える直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、R2はメチル基もしくはエチル基であり、X-は[B(CN)4]-もしくは[BFn(CN)4-n]-であり、ここで、n=0、1、2、又は3である塩を含む電解質を得ることができない。
したがって、上記相違点3に係る構成は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
2 本願発明2ないし11について
本願発明2ないし11は、本願発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
3 本願発明12ないし15について
本願発明12ないし15も、本願発明1の「上記AESは、以下の化学式を有する塩を含み、
【化1】
[図:0001380812000009.jpg]
R1は、1~4個の炭素原子を備える直鎖状もしくは分岐状アルキル基であり、R2はメチル基もしくはエチル基であり、X-は[B(CN)4]-もしくは[BFn(CN)4-n]-であり、ここで、n=0、1、2、又は3であり」(上記相違点3に係る構成)と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし15は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-003847