審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許拒絶査定不服審判

2021-004893

ゴム組成物及び空気入りタイヤ

審判番号
2021-004893
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-212210外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年04月15日
審決日
2023年03月13日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .536-WZ (C08L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法36条4項1号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-212210「ゴム組成物及び空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 5月28日出願公開、特開2020- 79336〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 9項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2018年(平成30年)11月12日の出願に係るものであって、令和元年12月25日付けで拒絶理由が通知され、令和2年2月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年10月7日に意見書が提出されたが、令和3年1月29日付けで拒絶査定がされた。

これに対して令和3年4月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、令和4年10月31日付けで当審により拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」ともいう。)が通知され、同年11月24日に意見書が提出され、さらに、同年12月26日付けで審尋がなされ、これに対し令和5年1月27日に回答書が提出されたものである。

第2 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由は、「この出願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」というものである。また、「下記の点」として、概略、下記(1)~(5)を指摘したものである。

(1)

本願発明1は、「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」の水素添加率が60%未満である場合や、「前記共重合体と、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より式(2)を用いて算出したAが4.5未満」ではない場合を包含する発明であると解釈できる。

(2)

本願明細書の段落【0027】の記載によれば、本願発明1の「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」の水素添加率が60%未満である場合には、不飽和結合がより多いことから、再架橋が生じやすく、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しやすくなり、硬度変化を抑制できない可能性があることが理解できる。

また、ゴム成分と相溶性の低い軟化剤である場合も、軟化剤のブルームが抑制できず、経年によるゴムの硬化を防ぐことができないため、硬度変化を抑制できない可能性があると理解できる。

(3)

また、本願明細書の段落【0028】~【0030】の記載によれば、本願発明1の式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とする方法は、ゴム成分、軟化剤、シリカを適宜選択することや、これらの配合量を適宜調整することであり、その好ましい例として、「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体に加えて更に軟化剤を含有し、上記共重合体が水素添加スチレンブタジエンゴムであり、上記共重合体が、好ましくは重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであり、上記水素添加スチレンブタジエンゴムと、上記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)に基づいて下記式(2)を用いて算出したA([(J/cm3)1/2])が4.5未満である場合」(以下、「好ましいゴム組成物」ともいう。)があげられている。

しかし、当該「好ましいゴム組成物」には、「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」の水素添加率が60%未満である場合や、「前記共重合体と、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より式(2)を用いて算出したAが4.5未満」ではない場合は、含まれていない。

(4)

本願明細書には、実施例が16例記載されているが、これらはいずれも、上記「好ましいゴム組成物」に該当するものに限られており、ゴム成分として水素添加率が60モル%未満の水素添加スチレンブタジエンゴムが選択されている場合に対応する実施例や、前記共重合体と、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より式(2)を用いて算出したAが4.5未満ではない場合に対応する実施例は、記載されていない。

さらに、比較例6は、上記「好ましいゴム組成物」に該当する例であるが、式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とすることができない(10.1である)例である。

そうすると、上記「好ましいゴム組成物」に該当するものであっても、必ずしも式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とすることができないことが理解できる。

(5)

以上のとおりであるから、本願発明1のうち、ゴム成分として、水素添加率が60モル%未満の水素添加スチレンブタジエンゴムを用いる場合や、前記共重合体と、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より式(2)を用いて算出したAが4.5未満ではない場合については、当業者といえども本願明細書の記載に基づき「式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」であるゴム組成物を製造することは非常に困難であり、仮に製造することができるとしても、「式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」であるゴム組成物を製造することができるまでやみくもにゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤、軟化剤、シランカップリング剤)の種類や量の組合せを変更するという過度の試行錯誤を要するものと認められる。

また、本願明細書において具体的な記載がなくても、「式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」であるゴム組成物を製造することができるといえる技術常識もない。

第3 本願発明

本願発明は、令和2年2月25日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定される以下のとおりのもの(以下、項番に基づいて「本願発明1」などといい、まとめて本願発明ともいう。)であると認める。

「【請求項1】
芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含むゴム組成物であって、
ゴム成分100質量部に対して、軟化剤を30質量部以上含有し、
下記式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下であることを特徴とするゴム組成物。
続きを表示(全42行)
耐熱老化性指数=(熱処理後のゴム組成物の硬度-熱処理前のゴム組成物の硬度)/熱処理前のゴム組成物の硬度×100 式(1)
ここで、前記硬度は、ゴム組成物の25℃におけるJIS-A硬度であり、前記熱処理は、ゴム組成物を、温度90℃、酸素濃度20%の条件下に336時間静置することにより行う処理である。
【請求項2】
前記耐熱老化性指数が7以下である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記耐熱老化性指数が5以下である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記耐熱老化性指数が3以下である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記耐熱老化性指数が1以下である請求項1記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記共重合体が、重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであり、
前記水素添加スチレンブタジエンゴムと、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より下記式(2)を用いて算出したAが4.5未満である請求項1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
A=√(α2+β2+γ2) 式(2)
α=水素添加スチレンブタジエンゴムのδdと軟化剤のδdの差の絶対値
β=水素添加スチレンブタジエンゴムのδpと軟化剤のδpの差の絶対値
γ=水素添加スチレンブタジエンゴムのδhと軟化剤のδhの差の絶対値
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
【請求項7】
ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以上である請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
ゴム成分100質量部に対して、シリカを50質量部以上含有する請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
ゴム成分100質量部に対して、シリカを70質量部以下含有する請求項1~8のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
ゴム成分100質量部に対するオイルの含有量が5質量部以下である請求項1~9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3質量部以下である請求項1~10のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記軟化剤として、樹脂を含む請求項1~11のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項13】
トレッド用ゴム組成物である請求項1~12のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載のゴム組成物で少なくとも一部が構成されたタイヤ部材を有する空気入りタイヤ。
【請求項15】
前記タイヤ部材がトレッドである請求項14記載の空気入りタイヤ。」

第4 当審の判断

当審は、令和4年11月24日に提出された意見書及び令和5年1月27日に提出された回答書を勘案しても、当審拒絶理由は、依然として解消していないと判断する。その理由は、以下のとおりである。

1 判断手法

特許法第36条第4項第1号は、発明の詳細な説明の記載について、「経済産業省令で定めるところにより、その発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したもの」、でなければならないと定めている。そして、この規定にいう「実施」とは、物の発明においては、その物を作ることができ、かつ、その物を使用できることである。また、明細書の記載が実施可能要件を満たすと言えるためには、明細書にその物を生産する方法及び使用する方法についての具体的な記載が必要であるが、そのような記載がなくても、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、当業者がその物を作ることができ、かつ、その物を使用できるのであれば、上記の実施可能要件を満たすということができる。また、「使用できる」といえるためには、特許発明に係る物について、例えば、発明が目的とする作用効果等を奏する態様で用いることができることを要するというべきである。

2 本願明細書の記載

明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。なお、下線は当審で付した。

「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが鋭意検討した結果、従来の技術では、タイヤを使用中にゴムの硬度が高くなり、グリップ性能が低下するおそれがあることが判明した。すなわち、従来の技術では、経時的な硬度変化を抑制するという点では改善の余地があることが判明した。
本発明は、前記課題を解決し、経時的な硬度変化を抑制できるゴム組成物及び空気入りタイヤを提供することを目的とする。」
「【0019】
上記ゴム組成物は前述の効果が得られるが、このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
従来から、所定値以上のグリップ性能を維持できるか否かを確かめる目的で、80℃、2週間の条件によりゴム組成物を熱処理し、硬度の変化を調査することが 行われてきた。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、上記熱処理条件では実際のタイヤの使用時を再現した試験とはなっていないことが判明した。本発明者らが、この点について更に鋭意検討した結果、本願特定の条件で熱処理を行うことにより、実際にタイヤを使用した際の状況を好適に再現でき、非常に相関性よく経時的な硬度変化を評価できることを見出した。
そして、本発明者らが更に鋭意検討した結果、本願特定の条件で熱処理を行い、熱処理前後のゴム組成物の硬度の変化が小さければ、実際に5万kmタイヤ走行した場合であっても、経時的な硬度変化を抑制できることを見出した。より具体的には、本願特定の条件で熱処理を行い、熱処理前後のゴム組成物の硬度により算出した上記式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下であれば、実際に5万kmタイヤ走行した場合であっても、経時的な硬度変化を抑制できることを見出した。
以上のとおり、本願特定の条件で行った熱処理前後のゴム組成物の硬度により算出した上記式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下であれば、経時的な硬度変化を抑制できる。
なお、本明細書において、ゴム組成物の硬度は、加硫後のゴム組成物の硬度を意味する。」
「【0027】
なお、ゴム組成物の上記式(1)で表される耐熱老化性指数(硬度変化)は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤、軟化剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、不飽和結合の少ないゴム成分を使用したり、ゴム成分と相溶性の高い軟化剤を使用したり、充填剤としてシリカを使用したり、軟化剤を減量したり、ジエン系ゴムと反応性の高いシランカップリング剤を使用したりすると硬度変化は小さくなる傾向がある。
通常のジエン系ゴムは、不飽和結合を多く含むため、再架橋により経時的な硬度変化(硬化)が生じるものの、不飽和結合の少ないゴム成分は、不飽和結合が少ないため、再架橋が生じにくく、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しにくく、経時的な硬度変化を抑制できる。
ゴム成分と相溶性の高い軟化剤は、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。
続きを表示(全31行)
シリカは、カーボンブラックに比べて発熱が少ないため、再架橋の進行を抑制でき、経時的な硬度変化を抑制できる。
また、硫黄と加硫促進剤の配合量を調整することによっても、硬度変化を調整できる。
【0028】
より具体的に説明すると、加硫後のゴム組成物において、上記式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とするには、後述するゴム成分、軟化剤、シリカを適宜選択すること、これらの配合量を適宜調整すること、等により付与することが可能である。具体的には、ゴム成分として、水素添加共重合体(以下においては、水添共重合体ともいう)を使用する方法、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用する方法等により付与できる。・・・
【0029】
以下において、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用する方法について更に説明する。
例えば、水素添加スチレンブタジエンゴム(本明細書においては、水添スチレンブタジエンゴム、水素添加SBR、水添SBRともいう)は二重結合が少ないため、通常のSBRに相溶する軟化剤を水素添加SBRと共に配合すると、相溶せずにブルームする可能性があり、経年によるゴムの硬化が起こりやすくなるおそれがある。
一方、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用すると、軟化剤がブルームしにくくなり、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。そして、このような水添共重合体と相溶性の高い軟化剤は、ハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)に基づいて選択可能である。具体的には、水添共重合体(例えば、水素添加SBR)のHSP値に近いHSP値を有する軟化剤を選定すればよい。選定した軟化剤は、水添共重合体に相溶しやすく、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。
【0030】
より具体的には、加硫後のゴム組成物において、上記式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とするには、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体に加えて更に軟化剤を含有し、上記共重合体が水素添加スチレンブタジエンゴムであり、上記水素添加スチレンブタジエンゴムと、上記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)に基づいて下記式(2)を用いて算出したA([(J/cm3)1/2])が4.5未満であることが好ましい。なお、上記共重合体が、重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
上記Aは、より好ましくは4.0以下、更に好ましくは3.5以下、特に好ましくは3.1以下、最も好ましくは2.6以下、より最も好ましくは2.1以下、更に最も好ましくは1.9以下であり、下限は特に限定されず、0に近いほど好ましく、0であってもよい。
これにより、好適に上記式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とすることが可能となる。
ここで、ゴム成分、軟化剤として、複数の成分が存在する場合は、最も含有量の多い成分によりAを算出する。
A=√(α2+β2+γ2) 式(2)
α=水素添加スチレンブタジエンゴムのδdと軟化剤のδdの差の絶対値([(J/cm3)1/2])
β=水素添加スチレンブタジエンゴムのδpと軟化剤のδpの差の絶対値([(J/cm3)1/2])
γ=水素添加スチレンブタジエンゴムのδhと軟化剤のδhの差の絶対値([(J/cm3)1/2])
δd:分子間の分散力によるエネルギー([(J/cm3)1/2])
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー([(J/cm3)1/2])
δh:分子間の水素結合によるエネルギー([(J/cm3)1/2])
なお、本明細書において、ハンセン溶解度パラメータδd、δp、δhは、Hansen solubility sphere法により算出された298.15K、101.3kPaにおける値である。
【0031】
上記の通り、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用する方法では、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用することが重要である。ここで、軟化剤としては、後述するように、オイル、液状ポリマー(液状ジエン系重合体)、樹脂などが使用できるが、軟化剤の配合量については、使用する軟化剤の種類により異なる。
ゴム成分と架橋可能な不飽和結合を有する軟化剤の場合、具体的には、液状ジエン系重合体の場合、その配合量は特に限定されない。
一方、ゴム成分と架橋可能な不飽和結合を有さない軟化剤の場合、具体的には、樹脂の場合、配合量は、ゴム成分100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましい。
【0032】
上記式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とする他の手段としては、軟化剤を減量する方法、ジエン系ゴムと反応性の高いシランカップリング剤を使用する方法等が挙げられる。」
「【0035】
ゴム成分として、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体(以下においては、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体ともいう)を含む。共重合体は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の通り、水添共重合体を用いることにより、経時的な硬度変化を抑制しやすいことから、以下においては、共重合体が、水添共重合体である場合を中心に説明するが、共重合体として、非水添共重合体の使用を排除するものではない。
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
【0036】
ゴム成分として、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の共役ジエン部が水素添加された水添共重合体を含むことが好ましい。
水添共重合体は、水添処理により二重結合部が減らされていることで、再架橋の反応点が少ない。これにより、経時的な硬度変化を抑制できる。」
「【0041】
共重合体の水素添加率(芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物の共重合体の共役ジエン部に対して水素添加された割合)は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは75モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上、最も好ましくは93モル%以上である。また、共重合体の水素添加率は、好ましくは99モル%以下、より好ましくは98モル%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、水素添加率は、H1-NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0042】
続きを表示(全13行)
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは20万以上、より好ましくは40万以上である。また、共重合体のMwは、好ましくは200万以下、より好ましくは100万以下、更に好ましくは80万以下であり、特に好ましくは60万以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0043】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0044】
共重合体のガラス転移温度(Tg)は、-45℃以上が好ましく、-35℃以上がより好ましく、-30℃以上が更に好ましく、-25℃以上が更により好ましく、-24.5℃以上が特に好ましく、-24℃以上が最も好ましい。また、共重合体のTgは、-10℃未満が好ましく、-12.5℃未満がより好ましく、-13℃未満が更に好ましく、-15℃未満がより更に好ましく、-17.5℃未満が特に好ましく、-20℃未満が最も好ましい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、共重合体のガラス転移温度(Tg)は、後述の実施例の記載の方法により測定される。
【0045】
共重合体がスチレンブタジエン共重合体である場合、スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは25質量%以上である。また、スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。スチレン含有量が上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、スチレン含有量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。」
「【0066】
ゴム成分100質量%中の共重合体(好ましくは水添共重合体)の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0067】
ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴム(好ましくは水添スチレンブタジエンゴム)の含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは100質量%である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0068】
上記共重合体以外に使用できるその他のゴム成分としては、例えば、ポリブタジエンゴム(BR)、イソプレン系ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。」
「【0072】
上記ゴム組成物は、シリカを含んでもよい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
・・・
続きを表示(全22行)
【0075】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上、特に好ましくは55質量部以上であり、また、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは80質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0076】
上記ゴム組成物において、充填剤(補強性充填剤)100質量%中のシリカの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0077】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドなどのジスルフィド結合を有するジスルフィド系シランカップリング剤がより好ましい。
【0078】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0079】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含んでもよい。
・・・
【0082】
カーボンブラックを配合すると発熱が多くなり、再架橋の進行を促進するおそれがあるため、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0質量部である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0083】
上記ゴム組成物は、軟化剤を配合することが好ましい。軟化剤としては特に限定されないが、オイル、液状ポリマー(液状ジエン系重合体)、樹脂などが挙げられる。これら軟化剤は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
軟化剤のなかでも、オイル、液状ポリマー、及び樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、液状ポリマー及び/又は樹脂がより好ましく、液状ポリマー及び樹脂を併用することが更に好ましい。」
「【0096】
軟化剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは30質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、軟化剤の含有量には、ゴム(油展ゴム)に含まれるオイルの量も含まれる。
【0097】
続きを表示(全16行)
液状ポリマー(液状ジエン系重合体)の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは20質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは45質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
【0098】
樹脂の含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
【0099】
オイルはブルームしやすく、経年によるゴムの硬化が起こりやすくなるおそれがあるため、オイルの含有量は、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは1質量部以下、特に好ましくは0質量部である。上記範囲内にすることで、前記効果がより好適に得られる傾向がある。
【0100】
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0101】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0102】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。」
「【0103】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
・・・
【0106】
続きを表示(全19行)
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
・・・
【0108】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
・・・
【0110】
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
・・・
【0113】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
・・・
【0119】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0120】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。」
「【実施例】
【0127】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0128】
続きを表示(全98行)
以下、合成、重合時に用いた各種薬品について、まとめて説明する。なお、薬品は必要に応じて定法に従い精製を行った。
n-ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
ブタジエン:東京化成工業(株)製の1,3-ブタジエン
TMEDA:関東化学(株)製のN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン
n-ブチルリチウム溶液:関東化学(株)製の1.6M n-ブチルリチウムヘキサン溶液
エタノール:関東化学(株)製
2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック200
【0129】
また、得られた共重合体の評価方法について、以下にまとめて説明する。
【0130】
(共重合体の共役ジエン部の水素添加率の測定)
四塩化炭素を溶媒として用いて15質量%濃度の溶液を調製して、100MHzのH1-NMRの不飽和結合部のスペクトル減少率から算出した。
【0131】
(スチレン含有量の測定)
25℃にてJEOL JNM-A 400NMR装置を用いてH1-NMRを測定し、そのスペクトルより求めた6.5~7.2ppmのスチレン単位に基づくフェニルプロトンと4.9~5.4ppmのブタジエン単位に基づくビニルプロトンの比からスチレン含有量を決定した。
【0132】
(重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)の測定)
共重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めた。
【0133】
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に従い、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製の示差走査熱量計(Q200)を用いて昇温速度10℃/分で昇温しながら測定することにより、ガラス転移開始温度として求めた。
【0134】
<共重合体の製造例>
合成例1(SBR1の合成:水素添加率0モル%)
十分に窒素置換した耐熱反応容器にn-ヘキサン2000ml、スチレン60g、ブタジエン140g、TMEDA0.93g、n-ブチルリチウム0.45mmolを加えて、50℃で5時間攪拌し、重合反応を行った。その後、エタノールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール1gを添加後、再沈殿精製によりSBR1を得た。得られたSBR1は重量平均分子量(Mw)490,000、スチレン含有量30質量%であった。
【0135】
合成例2(水添SBR1の合成:水素添加率95モル%)
得られた重合体を水素添加する以外は、SBR1と同様の処方にて水添SBR1を得た。すなわち、SBR1において重合転化反応後、エタノールを加えて重合反応を停止させず、次いで、水素ガスを0.4MPa-Gaugeの圧力で供給しながら20分間撹拌し、未反応のポリマー末端リチウムと反応させ、水素化リチウムとした。水素ガス供給圧力を0.7MPa-Gauge、反応温度を90℃とし、チタノセンジクロリドを主体とする触媒を用いて水素添加を行った。水素の吸収が目的の水素添加率となる積算量に達した時点で、反応温度を常温とし、水素圧を常圧に戻して反応容器より抜き出し、反応溶液を水中に撹拌投入して溶媒をスチームストリッピングにより除去することによって、水添SBR1を得た。得られた水添SBR1の水素添加率は95モル%であり、重量平均分子量(Mw)は450,000であった。
【0136】
合成例3(水添SBR2の合成:水素添加率80モル%)
目的の水素添加率となるように、水素の吸引の積算量を調整した以外は、水添SBR1と同様の処方により、水添SBR2を得た。得られた水添SBR2の水素添加率は80モル%であり、重量平均分子量(Mw)は480,000であった。
【0137】
合成例4(水添SBR3の合成:水素添加率60モル%、水添SBR)
目的の水素添加率となるように、水素の吸引の積算量を調整した以外は、水添SBR1と同様の処方により、水添SBR3を得た。得られた水添SBR3の水素添加率は60モル%であり、重量平均分子量(Mw)は450,000であった。
【0138】
【表1】
[図:0001397414000001.jpg]
【0139】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:上記方法で合成した非水添SBR
水添SBR1~3:上記方法で合成した水添SBR
シリカ1:エボニックデグッサ社製のVN3(N2SA:175m2/g)
シリカ2:ソルベイジャパン(株)製の115GR(N2SA:115m2/g)
シリカ3:エボニックデグッサ社製の9000GR(N2SA:235m2/g)
軟化剤1:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH-24(アロマオイル)
軟化剤2:出光興産(株)製のPS-32(ミネラルオイル)
軟化剤3:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(αメチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点:85℃)
軟化剤4:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C100(クマロンインデン樹脂、軟化点:95~105℃)
軟化剤5:クラレ社製のクラプレンLIR30(液状IR、重量平均分子量:29000)
軟化剤6:KRATON 社製のsylvatraxx 4150(ポリテルペン樹脂、軟化点:150℃)
軟化剤7:サートマー社製のRICON100(液状SBR、スチレン含量:20質量%、ビニル含量:70質量%、重量平均分子量:4500)
軟化剤8:DRT社製のDercolyte L120(ポリリモネン樹脂、軟化点:120℃)
シランカップリング剤1:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤2:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3-トリ エトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤3:エボニックデグッサ社製のSi363(3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール、下記式で表される化合物)
【化1】
[図:0001397414000002.jpg]
老化防止剤:大内新興化学(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:三新化学工業(株)製のサンセラーTBZTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
加硫促進剤3:大内新興化学工業(株)製のノクセラーDT(1,3-ジ-o-トリルグアニジン)
加硫促進剤4:大内新興化学工業(株)製のノクセラーM-P(2-メルカプトベンゾチアゾール)
加硫促進剤5:大内新興化学工業(株)製のノクセラーTOT-N(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
加硫促進剤6:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
【0140】
(実施例及び比較例)
表2に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で10分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0141】
また、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。
【0142】
(熱処理)
更に、得られた加硫ゴム組成物を温度90℃、酸素濃度20%の条件下のオーブン中で336時間静置することにより熱処理を行い、熱処理後の加硫ゴム組成物を得た。
【0143】
得られた加硫ゴム組成物、熱処理後の加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを下記により評価した。結果を表2に示す。
【0144】
(ゴム硬度(Hs))
JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に従って、タイプAデュロメータにより、加硫ゴム組成物(試験片)、熱処理後の加硫ゴム組成物(試験片)の硬度を測定した(JIS-A硬度)。測定は25℃で行った。
【0145】
同一の配合の試験用タイヤを5本用意し、そのうち4本の試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、5万km走行した。そして、未走行の試験用タイヤと、5万km走行後の試験用タイヤのトレッドから試験片を切り出し、それぞれの試験片について、上記方法に従って、JIS-A硬度を測定した。そして、以下の式に基づいて走行前後HS変化代を算出した。走行前後HS変化代が小さいほど、経時的な硬度変化を抑制できることを示す。
走行前後HS変化代=(5万km走行後の試験用タイヤから切り出した試験片の硬度-未走行の試験用タイヤから切り出した試験片の硬度)/未走行の試験用タイヤから切り出した試験片の硬度×100
【0146】
(引張試験)
JIS K6251(2010)に基づいて、得られた加硫ゴム組成物から3号ダンベル型試験片を作製し、該試験片を用いて23℃において引張試験を実施して300%伸張時応力(M300)、破断時の引張強度(TB)、破断時伸び(EB)を測定した。
【0147】
【表2】
[図:0001397414000003.jpg]
【0148】
表2より、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含み、上記耐熱老化性指数が10以下である実施例は、経時的な硬度変化を抑制できることが分かった。」

3 本願発明1について

(1)

本願発明1は、上記第3のとおりのものであって、そのゴム組成物を構成する成分として、「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」、および、「軟化剤」を含むものである。

また、前記共重合体を特定する事項は、「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた」のみであるから、前記共重合体は、例えばその分子量がいかなる値であってもよいものであると認められるし、前記共重合体を構成する「芳香族ビニル化合物」及び「共役ジエン化合物」の含有割合や、分子鎖の構造(直鎖なのか分岐があるのか)、分子鎖中の「芳香族ビニル化合物」と「共役ジエン化合物」の並び方(ランダムなのかブロックなのか)、水素添加などの後処理の有無やその程度(水素添加率等)についても、いかようであってもよいものであると認められる。

また、前記軟化剤は、その化学構造式や物性等についていかなる特定もされていないから、軟化剤といえるものであればいかなる物質であってもよいと認められる。

さらに、本願発明1を引用する本願発明6は、本願発明1において、「前記共重合体が、重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであり」、及び、「前記水素添加スチレンブタジエンゴムと、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より下記式(2)を用いて算出したAが4.5未満である」(式(2)の記載を省略)と限定したものである。

そうすると、本願発明1の「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」には、「重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴム」(以下、「本願発明6に係る水素添加スチレンブタジエンゴム」ともいう。)ではないものが含まれていると解することが合理的であり、かつ、本願発明1の「軟化剤」には、本願発明6に係る「A」の値(以下、「A値」ともいう。)が4.5未満ではない軟化剤が含まれていると解することが合理的であるから、本願の明細書の記載が実施可能要件を満たすといえるためには、当業者であれば、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき、本願発明1の「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」が、本願発明6に係る水素添加スチレンブタジエンゴムではないものである場合や、本願発明1の「軟化剤」のA値が4.5未満ではない場合においても、本願発明1の「式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下であることを特徴とするゴム組成物」を製造することができるといえる程度に記載がされていることを要するといえる。

(2)

本願明細書には、本願発明1の「ゴム組成物」の製造に関して、段落【0027】に、「ゴム組成物の上記式(1)で表される耐熱老化性指数(硬度変化)は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤、軟化剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、不飽和結合の少ないゴム成分を使用したり、ゴム成分と相溶性の高い軟化剤を使用したり、充填剤としてシリカを使用したり、軟化剤を減量したり、ジエン系ゴムと反応性の高いシランカップリング剤を使用したりすると硬度変化は小さくなる傾向がある。」、「不飽和結合の少ないゴム成分は、不飽和結合が少ないため、再架橋が生じにくく、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しにくく、経時的な硬度変化を抑制できる。」、「ゴム成分と相溶性の高い軟化剤は、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる。」、「シリカは、カーボンブラックに比べて発熱が少ないため、再架橋の進行を抑制でき、経時的な硬度変化を抑制できる。」と説明されている。

この説明によれば、本願発明1の「式(1)で表される耐熱老化性指数」を調整する方法は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤、軟化剤、シランカップリング剤)の種類や量を調整することであり、その具体例のうち、不飽和結合の少ないゴム成分を使用する方法で経時的な硬度変化(硬化)が小さくなる傾向がある理由は、不飽和結合の少ないゴム成分は、不飽和結合が少ないため、再架橋が生じにくく、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しにくいからであり、また、ゴム成分と相溶性の高い軟化剤を使用する方法で経時的な硬度変化(硬化)が小さくなる傾向がある理由は、ゴム成分と相溶性の高い軟化剤は、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となるからであると説明されていることが理解できる。

一方、この説明によれば、本願発明1の「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」の水素添加率が60%未満である場合には、不飽和結合がより多いことから、再架橋が生じやすく、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しやすくなるので、軟化剤の種類の調整などの他の調整方法を尽くしてもなお経時的な硬度変化(硬化)を抑制できない可能性があることも理解できる。

また、ゴム成分と相溶性の低い「軟化剤」は、軟化剤のブルームが抑制できず、経年によるゴムの硬化を防げないので、ゴム成分の種類の調整などの他の調整方法を尽くしてもなお経時的な硬度変化(硬化)を抑制できない可能性があることも理解できる。

そして、これらの可能性があることを踏まえた上で、本願発明1の「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」の水素添加率が60%未満である場合に関するさらなる説明、例えば、軟化剤の種類の調整などの他の調整方法を尽くせば「式(1)で表される耐熱老化性指数」を10以上にすることができることに関する理論的な証明(説明)や実施例による裏付け(下記(4)参照。)等は記載されていないし、ゴム成分と相溶性の低い「軟化剤」の場合についても同様である。

(3)

本願明細書の段落【0028】~【0030】には、「加硫後のゴム組成物において、上記式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とするには、後述するゴム成分、軟化剤、シリカを適宜選択すること、これらの配合量を適宜調整すること、等により付与することが可能である。」、「具体的には、ゴム成分として、水素添加共重合体(以下においては、水添共重合体ともいう)を使用する方法、水添共重合体と共に、水添共重合体と相溶性の高い軟化剤を使用する方法等により付与できる。」、「水素添加スチレンブタジエンゴム(本明細書においては、水添スチレンブタジエンゴム、水素添加SBR、水添SBRともいう)は二重結合が少ないため、通常のSBRに相溶する軟化剤を水素添加SBRと共に配合すると、相溶せずにブルームする可能性があり、経年によるゴムの硬化が起こりやすくなるおそれがある。」、「このような水添共重合体と相溶性の高い軟化剤は、ハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)に基づいて選択可能である。具体的には、水添共重合体(例えば、水素添加SBR)のHSP値に近いHSP値を有する軟化剤を選定すればよい。」、「より具体的には、加硫後のゴム組成物において、上記式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とするには、芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体に加えて更に軟化剤を含有し、上記共重合体が水素添加スチレンブタジエンゴムであり、上記水素添加スチレンブタジエンゴムと、上記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)に基づいて下記式(2)を用いて算出したA([(J/cm3)1/2])が4.5未満であることが好ましい。なお、上記共重合体が、重量平均分子量が20万~200万、水素添加率が60モル%以上の水素添加スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。」と記載されている。

これらの記載によれば、加硫後のゴム組成物において、上記式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とする方法は、ゴム成分、軟化剤、シリカを適宜選択することや、これらの配合量を適宜調整することであり、その好ましい例として、「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体に加えて更に軟化剤を含有し、上記共重合体が水素添加スチレンブタジエンゴムであり、上記共重合体が、好ましくは本願発明6に係る水素添加スチレンブタジエンゴムであり、軟化剤のA値が4.5未満である場合」(以下、「好ましいゴム組成物」ともいう。)があげられていることが理解できる。

一方、上記「好ましいゴム組成物」には、「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」の水素添加率が60%未満である場合が含まれていないことや、軟化剤のA値が4.5以上である場合が含まれていない。

そして、これらの場合については、上記(2)のとおり、軟化剤の種類の調整などの他の調整方法を尽くしてもなお経時的な硬度変化(硬化)を抑制できない可能性(前者の場合)、及び、ゴム成分の種類の調整などの他の調整方法を尽くしてもなお経時的な硬度変化(硬化)を抑制できない可能性(後者の場合)がある。

(4)

本願明細書には、実施例が16例記載されているが、これらはいずれも、上記「好ましいゴム組成物」に該当するものに限られていて、ゴム成分として水素添加率が60モル%未満の水素添加スチレンブタジエンゴムが選択されている実施例や、軟化剤のA値が4.5以上である軟化剤が選択されている実施例は、1例も記載されていない。

また、比較例1~5のゴム組成物は、いずれも、本願発明1の「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体を含むゴム組成物であって、ゴム成分100質量部に対して、軟化剤を30質量部以上含有するゴム組成物」を充足するものであるが、「下記式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下であること」を充足しないものであり、かつ、ゴム成分として水素添加率が60モル%未満の水素添加スチレンブタジエンゴムが選択されている場合(比較例1)、及び、軟化剤のA値が4.5以上である軟化剤が選択されている場合(比較例2~5)に該当するものである。

さらに、比較例6は、上記「好ましいゴム組成物」に該当する例であるにも関わらず、式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とすることができない(10.1である)例である。

(5)

以上によれば、当業者は、本願明細書の記載に基づいて、「下記式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」にするためには、少なくとも、「好ましいゴム組成物」であることを要するのであって、ゴム成分として水素添加率が60モル%未満の水素添加スチレンブタジエンゴムが選択されている場合には、軟化剤の種類の調整などの他の調整方法を尽くしてもなお経時的な硬度変化(硬化)を抑制できないため「下記式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」にすることができないし、軟化剤のA値が4.5以上である軟化剤が選択されている場合にも、「下記式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」にすることはできないと理解すると認められる。

また、本願明細書において具体的な記載がなくても、「式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」であるゴム組成物を製造することができるといえる技術常識もない。

(6)

以上のとおりであるから、明細書及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき本願発明1のうち、ゴム成分として、水素添加率が60モル%未満の水素添加スチレンブタジエンゴムを用いる場合や、軟化剤のA値が4.5以上である場合については、当業者といえども、「式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」であるゴム組成物を製造することができないと認められ、仮に製造することができるとしても、「式(1)で表される耐熱老化性指数が10以下」であるゴム組成物を製造することができるまでやみくもにゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤、軟化剤、シランカップリング剤)の種類や量の組合せを変更するという過度の試行錯誤を要するものと認められる。

4 請求人の主張について

(1)

請求人は、令和4年11月24日提出の意見書(以下、単に「意見書」ともいう。)、及び、令和5年1月27日提出の回答書(以下、単に「回答書」ともいう。)において、概略、以下の主張をしている。

<主張1>

「しかしながら、(a)「芳香族ビニル化合物及び共役ジエン化合物を共重合して得られた共重合体」の水素添加率が60%未満である場合には、本願明細書[0027]の「ゴム成分と相溶性の高い軟化剤は、軟化剤のブルームが抑制され、経年によるゴムの硬化を防ぐことが可能となる」との記載に沿って、ゴム成分と相溶性のより高い軟化剤を使用すればよいことは当業者であれば明らかであると思料致します。
同様に、(b)「前記共重合体と、前記軟化剤のハンセン溶解度パラメータ値(HSP値)より式(2)を用いて算出したAが4.5未満」ではない場合は、本願明細書[0027]の「不飽和結合の少ないゴム成分は、不飽和結合が少ないため、再架橋が生じにくく、タイヤ使用時に発生する熱によって架橋密度が変化しにくく、経時的な硬度変化を抑制できる」との記載に沿って、水素添加率がより高い共重合体などの不飽和結合のより少ないゴム成分を使用すればよいことは当業者であれば明らかであると思料致します。
更には、(a)の場合、(b)の場合の両方において、本願明細書[0027]の「充填剤としてシリカを使用したり、軟化剤を減量したり、ジエン系ゴムと反応性の高いシランカップリング剤を使用したりすると硬度変化は小さくなる傾向がある」との記載に沿って、充填剤としてシリカを使用したり、軟化剤を減量したり、ジエン系ゴムと反応性の高いシランカップリング剤を使用したりすればよいことは当業者であれば明らかであると思料致します。」(意見書1頁「(2-1)」の項の8~24行)

<主張2>

「しかしながら、本願明細書[0031]には「ゴム成分と架橋可能な不飽和結合を有さない軟化剤の場合、具体的には、樹脂の場合、配合量は、ゴム成分100質量部に対して20質量部以下とすることが好ましい。」と記載されています。当業者であれば、この記載を参酌すれば、ポリリモネン樹脂が35質量部も配合されている比較例6の組成物が本願パラメータを満たさないことは容易に理解できることは明らかであると思料致します。」(意見書2頁「(2-2)」の項の11~15行)

<主張3>

「仮に、水添SBR1の水素添加率を向上させるだけではパラメータを満たさない場合は、水素添加率を向上させた水添SBRを使用すると共に、充填剤としてシリカを使用したり、軟化剤を減量したり、ジエン系ゴムと反応性の高いシランカップリング剤を使用したりすればよいことは当業者であれば明らかであると思料致します。」(回答書、2頁9~13行)

<主張4>

「更には、仮に、比較例2において、水添SBR1の水素添加率を向上させるだけではパラメータを満たさない場合は、前記手法と必要に応じて組み合わせつつ、更に、例えば、以下の手法を、必要に応じて組み合わせつつ採用することによっても、「式(1)で表される耐熱老化性指数」を10以下にすることが可能であることは、当業者であれば明らかであると思料致します。(A)本願明細書[0099]の「オイルはブルームしやすく、経年によるゴムの硬化が起こりやすくなるおそれがあるため、オイルの含有量は、好ましくは5質量部以下・・・である。」との記載に沿って、アロマオイル(軟化剤1)の含有量(比較例2では35質量部)を減らして、必要であれば減量した分を他の軟化剤に置き換える。(B)アロマオイル(軟化剤1)をより相溶性の高い軟化剤(例えば、Aが4.5とギリギリ4.5未満を満たさない軟化剤)に変更する。(C)SBR中に存在する不飽和結合の数を減らす目的で、スチレン量の多い水添SBR(ブタジエン単位そのものが少ない水添SBR)に変更する。(D)SBR主鎖中の不飽和結合の数が問題となりやすいため、ブタジエン単位における、ビニル結合量を増やした(シス量、トランス量を減らした)水添SBRに変更する。」(回答書、2~3頁「(3)」の項)

(2)

ア 主張1及び3については、すでに、上記3で検討したとおりであって、採用できない。

イ また、主張2に係る、比較例6に関する合議体の指摘は、要するに、「好ましいゴム組成物」に該当する例であるにも関わらず、式(1)で表される耐熱老化性指数を10以下とすることができない例(比較例6)があるのだから、「好ましいゴム組成物」に該当しない場合には、実施可能要件についてより一層詳しい開示が必要であることを示したものであり、そのような開示がないと認められることについては、上記3で述べたとおりである。

ウ また、主張4について、まず、合議体が比較例2(【表2】)を指摘した理由は、軟化剤のA値が4.5以上である場合には、ゴム成分の種類の調整などの他の調整方法を尽くしてもなお経時的な硬度変化(硬化)を抑制できないので、「下記式(1)で表される耐熱老化性指数」を10以下にすることができないことを具体的に例示するためである。

また、比較例2のゴム組成物は、その水素添加スチレンブタジエンゴム(SBR1)の重量平均分子量が45万であり、水素添加率が95モル%であり(【表1】)、その軟化剤のA値が4.55であり、シリカ及びシランカップリング剤を含むゴム組成物であって、その式(1)で表される耐熱老化性指数が19.1であるゴム組成物であるから、その耐熱老化性指数を10以下にするためには、大幅にその値を改善することが必要である。

しかし、比較例2のゴム組成物の水素添加スチレンブタジエンゴムの水素添加率は、95%と高いので、さらに水素添加率を高めることによって、「下記式(1)で表される耐熱老化性指数」の値を改善する余地がほぼないものであり、また、その軟化剤のA値も、4.55であって4.5に非常に近い値であるから、その値を小さくすることによって、「下記式(1)で表される耐熱老化性指数」の値を改善する余地がほぼないものである。

また、その軟化剤の含有割合は、ゴム成分100質量部に対して35質量部であるから、その量を5質量部減らすだけで、本願発明1の「ゴム成分100質量部に対して、軟化剤を30質量部以上」を充足しないものとなってしまうため、軟化剤の含有割合を減らすことによって、「下記式(1)で表される耐熱老化性指数」の値を改善する余地もほぼないものである。

また、比較例2のゴム組成物は、実施例1で使用しているものと同じシリカ及びシランカップリング剤を既に含有しているから、シリカやシランカップリング剤を含有するものとすることによって、「下記式(1)で表される耐熱老化性指数」の値を改善する余地もないものである。

これに対し、審判請求人は、(A)~(D)の手法を、必要に応じて組み合わせつつ採用することによっても、「式(1)で表される耐熱老化性指数」を10以下にすることが可能であることは、当業者であれば明らかであると主張するが、何ゆえ明らかであるといえるのかその根拠となる証拠をなにも提示していない。また、(A)~(D)の手法が何ゆえ(どのような作用機序で)「式(1)で表される耐熱老化性指数」の値を改善することができるものであるといえるのか不明であるし、実施例比較例をみても、当該手法を組み合わせれば「式(1)で表される耐熱老化性指数」の値を9以上改善し10以下にすることができると理解できる組合せは見出せない。また、そのような明細書の記載や証拠の提示等がなくても(A)~(D)の手法を組み合わせれば「式(1)で表される耐熱老化性指数」の値を10以下にすることができるといえる技術常識もない。

よって、審判請求人の主張はいずれも採用できない。

第5 むすび

以上のとおり、本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、本願発明1は、特許法第36条第4項第1号の規定により特許を受けることができない。

よって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2021-004893

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決246件(住友ゴム工業株式会社)
  • 2024-004841拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)融合タンパク質、物質製造方法、ベクター、形質転換細胞、空気入りタイヤの製造方法及…
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
  • 2025-004885拒絶査定不服審判 / 2026-06-30 / 原査定取消(特許/登録すべき)バドミントンラケット
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
  • 2024-017650拒絶査定不服審判 / 2026-05-27 / 原査定取消(特許/登録すべき)重荷重用タイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
  • 2024-015062拒絶査定不服審判 / 2026-04-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
  • 2024-006279拒絶査定不服審判 / 2026-04-28 / 請求不成立空気入りタイヤ及びその製造方法
    同じ当事者: 住友ゴム工業株式会社
検索でもっと見る →
同じ根拠条文の審決893件(特許法36条4項1号、行政事件訴訟法46条)
  • 2024-002064拒絶査定不服審判 / 2025-10-16 / 請求不成立特定のゴム組成物のトレッドを有するタイヤ及び関連方法
    共通の条文: 特許法36条4項1号、行政事件訴訟法46条
  • 2023-016683拒絶査定不服審判 / 2025-09-12 / 請求不成立タイヤトレッドゴム組成物
    共通の条文: 特許法36条4項1号、行政事件訴訟法46条
  • 2022-003484拒絶査定不服審判 / 2025-10-29 / 請求不成立電場処理フライヤー
    共通の条文: 特許法36条4項1号、行政事件訴訟法46条
  • 2023-010587拒絶査定不服審判 / 2025-04-18 / 請求不成立静電気劣化防止方法およびその装置
    共通の条文: 特許法36条4項1号、行政事件訴訟法46条
  • 2023-011370拒絶査定不服審判 / 2024-12-16 / 請求不成立情報処理装置
    共通の条文: 特許法36条4項1号、行政事件訴訟法46条
同じ論点・分野の審決(審決分類)416件(536・C08L)
  • 2024-011484拒絶査定不服審判 / 2026-07-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)ポリシロキサンを含むフラッディング組成物
    共通の審決分類: 536・C08L
  • 2024-015062拒絶査定不服審判 / 2026-04-28 / 原査定取消(特許/登録すべき)タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
    共通の審決分類: 536・C08L
  • 2024-008270拒絶査定不服審判 / 2026-04-08 / 原査定取消(特許/登録すべき)架橋した有機ポリマーを形成するための架橋組成物、有機ポリマー組成物、それを形成す…
    共通の審決分類: 536・C08L
  • 2024-009835拒絶査定不服審判 / 2026-03-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)低誘電材料用の樹脂組成物、積層基板用フィルム、積層基板、低誘電材料用の樹脂組成物…
    共通の審決分類: 536・C08L
  • 2024-007855拒絶査定不服審判 / 2026-03-03 / 原査定取消(特許/登録すべき)ゴム組成物及びタイヤ
    共通の審決分類: 536・C08L

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存