特許拒絶査定不服審判
2022-003484
電場処理フライヤー
- 審判番号
- 2022-003484
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-124488
- 請求日
- 2022年03月08日
- 審決日
- 2025年10月29日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ZERO-FORM株式会社
- 【請求人代理人】南條 眞一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 河端 賢
- 審判官 中尾 麗
- 分類
- P18 .536-WZ (A47J) / P18 .537-WZ (A47J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 行政事件訴訟法46条特許法36条4項1号特許法36条6項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-124488「電場処理フライヤー」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月17日出願公開、特開2019- 5290〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特願2017-124488号(以下、「本願」という。)は、平成29年6月26日の出願であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和3年 6月 3日付け :拒絶理由通知(発送日:同年6月15日)
令和3年 8月16日 :意見書及び手続補正書の提出
令和3年11月18日付け :拒絶査定(発送日:同年12月7日)
令和4年 3月 8日 :審判請求書及び手続補正書の提出
令和6年 7月10日付け :拒絶理由通知(発送日:同年7月16日)
令和6年 9月17日 :意見書の提出
令和6年12月25日付け :拒絶理由通知(発送日:令和7年1月
21日)
令和7年 3月19日 :面接の実施
令和7年 3月24日 :意見書の提出
第2 本願発明
令和4年3月8日に提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「 収容される加熱媒体が透過不可能な金属製外部容器、
前記金属製外部容器の中に収納される加熱媒体が透過可能な金属製内部容器、
前記金属製外部容器と前記金属製内部容器との間に介挿され、前記金属製外部容器と前記金属製内部容器とを電気的に絶縁する絶縁体、
前記金属製外部容器と前記金属製内部容器との間に交流高電圧を印可する電源、
前記金属製外部容器に収容された加熱媒体を加熱する面状の熱源を有し、
前記金属製外部容器に収容された加熱媒体に投入された食品を加熱加工する電場処理フライヤーであって、
前記金属製外部容器と前記金属製内部容器が円筒であり、同心に配置されており、
前記面状の熱源が前記金属製外部容器の側面と前記金属製内部容器の側面との間に前記外部容器の円筒状側面に適合するように取り付けられていることを特徴とする、電場処理フライヤー。」
第3 拒絶の理由
令和6年12月25日付けで当審より請求項1ないし5について通知した拒絶理由の概要は、次のとおりのものである。
1(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
記
請求項1ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、発明の詳細な説明は、請求項1ないし5に係る発明を当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。
第4 判断
1 理由1(サポート要件)、理由2(実施可能要件)について
(1) 請求項1に係る発明について
ア 請求項1に係る発明における発明特定事項
請求項1に係る発明において、以下の事項が特定されている(下線は当審において付した。以下同様。)。
「前記面状の熱源が前記金属製外側容器の側面と前記金属製内側容器の側面との間に前記外部容器の円筒状側面に適合するように取り付けられている」
イ 発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、以下のような記載がある(下線は当審において付した。以下同様。)。
(ア) 「螺旋(ヘリカル)形状の高周波誘導コイルは筒状であるため、発熱体となる外部容器あるいは内部容器に巻き付ける形で取り付ける。」(段落【0030】;図6に図示された実施例3に関する記載)
(イ) 「実施例3のスパイラル高周波誘導加熱コイル29a,29bは外部容器21と内部容器21の間に配置することもできる。この構成の場合、電場加熱フライヤーの手入れに手間がかかるが、外部容器21と内部容器21が共に発熱するため、熱効率が向上する。」(段落【0036】;図6に図示された実施例3に関する記載)(合議体注:「内部容器21」は「内部容器22」の誤記と認める。)
(ウ) 「円筒体形状の内部容器22は外部容器21の内部に間隔を開けて収納され、円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22とは絶縁体23により電気的に分離されている。」(段落【0038】;図7に図示された実施例4に関する記載)
(エ) 「実施例4のヘリカル状高周波誘導加熱コイルは円筒体形状外部容器21に密着して巻回され、磁束が円筒体形状外部容器21に集中するため、効果的に加熱が行われる。」(段落【0042】;図7に図示された実施例4に関する記載)
(オ) 「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置することも可能である。」(段落【0043】;図7に図示された実施例4に関する記載)
ウ サポート要件、実施可能要件の検討
(ア)令和6年9月17日提出の意見書を踏まえた検討
a 審判請求人は、令和6年9月17日提出の意見書において、「請求項1に記載された発明の特徴を記載した最後の段落「前記面状の熱源が前記金属製外側容器の側面と前記金属製内側容器の側面との間に前記外部容器の円筒状側面に適合するように取り付けられている」は、発明の詳細な説明の段落[0030]、段落[0036]及び段落[0043]に記載された事項を包括的に述べたものです。・・・したがって、この事項は、発明の詳細な説明に記載された段落[0030]、段落[0036]及び段落[0043]に記載された具体例に対して拡張ないし一般化して記載したものであり、サポート要件を充足しています。」と主張する。
b これに対して、段落【0043】に記載された「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置すること」については、【図7】の図示内容を参照しても、具体的にどのような態様で具現化するものが意図されているのかが明らかでない。
すなわち、【図7】には、段落【0043】に記載されたものではなく、段落【0042】に記載された「円筒体形状外部容器21に密着して巻回され」た態様に対応する「円筒体形状外部容器21」の外周「に密着して巻回され」た態様が図示されているまでである。そして、同図示内容からみて、「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が、「円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22」を「電気的に分離」する「絶縁体23」の外周領域についても「円筒体形状外部容器21に密着して巻回され」ていることが看取される。
しかしながら、同「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」を、段落【0043】に記載のように「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置する」と、「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が「絶縁体23」が配されている領域を通過することにより互いに干渉するものと解されるところ、これを具体的にどのような態様により具現化するものが意図されているのかが明らかでないことから、段落【0043】に記載されたものは、単に形式的に他の態様の可能性を断片的に示したものに過ぎず、発明の詳細な説明に実質的に開示された技術的事項とは認められない。
c そうすると、請求項1に記載された上記アの事項は、発明の詳細な説明に実質的に開示された技術的事項ではない上記段落【0043】に記載された事項に基づくものである。
また、請求項1に記載された上記アの事項を具体的に実施するにあたり、その具体例と上記意見書で主張する上記段落【0043】に記載された事項は、当業者が実施することができる程度に記載されているものとは認められない。
(イ)令和7年3月24日提出の意見書を踏まえた検討
a 審判請求人は、令和7年3月24日提出の意見書において、以下のように主張する。
(a)「 拒絶理由中「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」を段落[0043]に記載のように「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置する」と「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が「絶縁体23」が配されている領域を通過することにより互いに干渉する」との記載事項は技術的に見て意味不明です。
「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」も「絶縁体23」も有形物ですから「絶縁体23」が配されている領域を「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が通過することは物理的に不可能です。また、「干渉」は電磁気学的な現象えあると考えられますが、誘電体損以外に絶縁体が高周波電磁界と干渉することはあり得ません。なお、高周波により磁性体に発生する渦電流損を利用するのが本発明の高周波誘導加熱です。」(合議体注:「現象えある」は「現象である」の誤記と認める。)
(b)「 段落[0043]にはヘリカル高周波誘導加熱コイルの配置位置として「円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置する」と図示の必要がない程度に具体的に記載されており、当業者ならば容易に理解できます。」
b これらについて検討する。
(a)上記a(a)の主張について
同主張における「「干渉」は電磁気学的な現象えあると考えられます」(合議体注:「現象えある」は「現象である」の誤記と認める。)については、令和7年3月19日に実施した面接において、「令和6年12月25日付け拒絶理由通知の1(1)ウ(イ)における「同「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」を、段落【0043】に記載のように「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置する」と、「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が「絶縁体23」が配されている領域を通過することにより互いに干渉するものと解されるところ、これを具体的にどのような態様により具現化するものが意図されているのかが明らかでない」との指摘に対して、請求人側より、このうち「互いに干渉する」を電磁的な波動の干渉と理解の上で、同指摘の意味内容の説明を求め、合議体より、空間的にみて、例えば同一位置に「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」と「絶縁体23」が存在する場合等を意味する旨説明をし、請求人側が、本願明細書の段落【0043】に記載された「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置すること」について、【図7】の図示内容を踏まえて説明をした。」(面接記録第1ページ「6.面接内容」の「面接の具体的内容」欄。合議体注:下線を付した記載は文意をより明確にするため「」を付した面接記録の記載の冒頭位置より移動した。)ものであり、請求人側は上記拒絶理由通知の指摘における「干渉」の意味内容として合議体の意図を十分に理解しているものと理解するのが相当であり、かかる主張は失当であって採用することはできない。
そして、上記a(a)の主張における「「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」も「絶縁体23」も有形物ですから「絶縁体23」が配されている領域を「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が通過することは物理的に不可能です。」については、請求人側は、同面接において「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置すること」について、【図7】の図示内容を踏まえて説明をした。」(面接記録第1ページ「6.面接内容」の「面接の具体的内容」欄。)上で、「出席者は、面接を踏まえて拒絶理由通知に対して応答する。例えば、意見書において、【図7】の図示内容を基に段落【0043】の上記記載」の内容を説明する等面接内容を反映した主張をする。」(面接記録第2ページ「7.面接結果」の「n.出席者は、後日、下記の事項を行う。」具体的内容の記載欄。)(合議体注:「出席者」は面接記録第1ページの「3.出席者」欄に記載の請求人側弁理士を意味する。)ことに同意し、そのことを記載した面接記録を請求人側が確認してその確定に至ったにもかかわらず、上記主張のとおり、「「絶縁体23」が配されている領域を「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が通過することは物理的に不可能です。」と主張するにとどまっている。
そして、請求人による該「「絶縁体23」が配されている領域を「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が通過することは物理的に不可能です。」との主張によれば、請求人も、空間的にみて、例えば同一位置に「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」と「絶縁体23」が存在することを回避するような態様を具現化することは不可能であると認識しているものと認められる。
この点に関して、本願発明の課題である「フライヤーの外部容器1と内部容器2との間に発生する電気力線を均一に」(本願明細書の段落【0013】。)すること等を解決するためには、
(a)-1 フライヤーの外部容器1と内部容器2との間の高さ方向においても高周波誘電加熱コイルは電気力線が均一になるように配置されることが必要であり、
(a)-2 金属製の外部容器と金属製の内部容器を電気的に絶縁し、かつ、内部容器を外部容器に対して所定の位置に支持・固定するためには、絶縁体はある程度の大きさが必要であること、
が当然に求められると解されることからみても、空間的にみて、例えば同一位置に「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」と「絶縁体23」が存在せざるを得ず、それを回避することは、請求人の主張のとおり「物理的に不可能」であると認められる。
そうすると、上記拒絶理由通知において指摘した「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置する」と、「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」が「絶縁体23」が配されている領域を通過することにより、空間的にみて、例えば同一位置に「ヘリカル高周波誘導加熱コイル」と「絶縁体23」が存在するものと解されるところ、これを「具体的にどのような態様により具現化するものが意図されているのかが明らかでない」ことについては、「具体的にどのような態様により具現化するものが意図されているのか」について何ら明示的に説明がなされておらず、むしろ、請求人自ら不可能である旨主張しており、依然として解消しているとはいえないことから、同拒絶理由通知で指摘したとおり、段落【0043】に記載された「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置すること」は、単に形式的に他の態様の可能性を断片的に示したものに過ぎず、発明の詳細な説明に実質的に開示された技術的事項とは認められない。
(b)上記a(b)の主張について
同主張における「段落[0043]にはヘリカル高周波誘導加熱コイルの配置位置として「円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置する」と図示の必要がない程度に具体的に記載されており、当業者ならば容易に理解できます。」については、上記(a)のとおり、上記拒絶理由通知において指摘した「具体的にどのような態様により具現化するものが意図されているのかが明らかでない」ことについて、「具体的にどのような態様により具現化するものが意図されているのか」について何ら明示的に説明がなされておらず、依然として解消しているとはいえないことから、同拒絶理由通知で指摘したとおり、段落【0043】に記載された「ヘリカル高周波誘導加熱コイルは円筒体形状の外部容器21と円筒体形状の内部容器22との間に配置すること」は、単に形式的に他の態様の可能性を断片的に示したものに過ぎず、発明の詳細な説明に実質的に開示された技術的事項とは認められない。
(ウ)したがって、上記アの事項を発明特定事項として含む請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、発明の詳細な説明は、上記アの事項を発明特定事項として含む請求項1に係る発明を当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。
(2) 請求項2ないし5に係る発明
請求項1を引用する請求項2ないし5に係る発明も上記(1)アの事項を発明特定事項として含むことから、同様に、請求項2ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、また、発明の詳細な説明は、請求項2ないし5に係る発明を当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。
2 小括
よって、請求項1ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
また、発明の詳細な説明は、請求項1ないし5に係る発明を当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものとは認められない。
第5 むすび
以上のとおり、請求項1ないし5に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないものであるから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない。
また、発明の詳細な説明は、請求項1ないし5に係る発明を当業者が実施可能な程度に明確かつ十分に記載したものとは認められないものであるから、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
審決本文(J-PlatPat)
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