2021-003842
ステントを搬送するためのシステムと方法
- 審判番号
- 2021-003842
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-555370外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年03月24日
- 審決日
- 2022年03月30日
- 公報発行日
- 2022年09月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】恩田 誠
- 【請求人代理人】恩田 博宣
- 【請求人代理人】本田 淳
- 分類
- P18 .121-Z (A61F) / P18 .57 -Z (A61F)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第5項、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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本願は、2016年(平成28年)4月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2015年4月21日 米国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は概ね以下のとおりである。
第2 令和3年3月24日提出の手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は、補正箇所を示す。)。
「 近位部と遠位部を有する内側の細長いシャフトと、内側の細長いシャフトを覆って配置される径方向に拡張できる人工器官であって、径方向に圧縮された形状と径方向に拡張された形状を有し、前記径方向に圧縮された形状で血管系を介して搬送され、前記径方向に拡張された形状で管壁と係合するように構成された人工器官と、近位部と遠位部を有する外側の細長いシャフトと、近位部と遠位部を有するシースであって、前記径方向に拡張可能な人工器官を覆って配置されるシースと、前記外側の細長いシャフトに連結された第1ハブと、前記第1ハブの近位に配置された第2ハブと、前記第2ハブに連結され、前記第1ハブに向かって遠位に延伸するハイポチューブとを有し、前記ハイポチューブは前記シースに連結され、前記第2ハブを遠位側に進めることにより前記ハイポチューブ及び前記シースが遠位側に移動し、これにより、前記人工器官が該人工器官の近位端から該人工器官の遠位端へと径方向に拡張するステントデリバリシステム。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、令和2年8月14日提出の手続補正書による手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「 近位部と遠位部を有する内側の細長いシャフトと、内側の細長いシャフトを覆って配置される径方向に拡張できる人工器官であって、径方向に圧縮された形状と径方向に拡張された形状を有し、前記径方向に圧縮された形状で血管系を介して搬送され、前記径方向に拡張された形状で管壁と係合するように構成された人工器官と、近位部と遠位部を有する外側の細長いシャフトと、近位部と遠位部を有するシースであって、前記径方向に拡張可能な人工器官を覆って配置されるシースと、前記外側の細長いシャフトに連結された第1ハブと、前記第1ハブの近位に配置された第2ハブと、前記第2ハブに連結され、前記第1ハブに向かって遠位に延伸するハイポチューブとを有し、前記内側の細長いシャフトを遠位側に進めると前記シースが遠位側に進み、これにより、前記人工器官が該人工器官の近位端から該人工器官の遠位端へと径方向に拡張するステントデリバリシステム。」
2 本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された「前記内側の細長いシャフトを遠位側に進めると前記シースが遠位側に進み、」の記載を、「前記ハイポチューブは前記シースに連結され、前記第2ハブを遠位側に進めることにより前記ハイポチューブ及び前記シースが遠位側に移動し、」と改めるものである。
本件補正は、上記のとおりシースを遠位側に移動させるための構成を「内側の細長いシャフト」から「ハイポチューブ」に置き換えるものであり、令和4年1月25日付け回答書(以下、「回答書」という。)の記載(2頁2行)によれば、両者は別々の構造であるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものとは認められない。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げる事項を目的とする補正ではない。
3 独立特許要件について
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものではないが、仮に、上記回答書に記載(2頁9~10行)されているように、ハイポチューブと内側の細長いシャフトとは、互いに対して軸方向に固定されており、ハイポチューブは内側の細長いシャフトを介して間接的にシースに連結され、第2ハブを遠位側に進めることによりハイポチューブ及びシースが遠位側に移動するのであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、細長いシャフトが遠位側に移動する構成を前提として、シースを移動させるための構成をハイポチューブとして具体化したものと解して、本件補正は特許請求の範囲の減縮にあたるとした場合に、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載及び引用発明
ア 引用文献1(拒絶査定の引用文献1)
原査定の拒絶の理由で引用された本願優先日前に頒布された刊行物である特表2013-528112号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある(下線は当審で付与した。以下、同様)。
(ア)「本発明は、概略、医療装置、特に、ステント又はその他の移植構造等の人工器具のための内腔搬送システムに関する。この搬送装置は、体の動脈系、静脈系、又はその他の部分にステントを配置するために使用される。」(段落【0013】)
(イ)「図1A~図1D、図2A~図2Dは、プロテーゼ用の二方向性搬送システムの第1実施例を示す。ステントの搬送について説明するが、このシステムは他のプロテーゼ(例えば、移植片、ステント移植片、フィルタ等)の搬送にも利用できる。図1A~図1Dは、ステントの先端(末端)解放を示しており、そこでは、ステントは該ステントがその先端(末端)からその後端(基端)に向かって拡張するように展開される。図2A~図2Dは、ステントの後端(基端)解放を示しており、そこでは、ステントは該ステントがその後端(基端)からその先端(末端)に向かって拡張するように展開される。図1Aは、ステントを先端から展開するように構成されたステント搬送システム100を示す。搬送システム100は、インナー(内側)シャフト102、ミドル(中間)シャフト108、アウター(外側)シャフト114、シャトルシース(さや)120、及びステント128を含む。シャフトは、好ましくは、円形横断面の押出成形管であるが、その他の断面(例えば、卵形、長方形、楕円形)であってもよい。以下に説明する本実施例及び他の実施例におけるシャフトは、ポリエチレン、PTFE,FEP,PVC又はその他の公知の材料で作られる。インナーシャフト102は、造影剤又はガイドワイヤ(図示せず)を摺動自在に収容するために、インナーシャフトの基端から末端に伸びる中央内腔(ルーメン)を有する。末端における先細り形状のノーズコーンはインナーシャフト102に連結されており、血管やその他の組織に損傷しないようにしてある。ハブ106又はフレア領域は、ユーザが把持する領域を提供するとともに、インナーシャフトが末端側に過剰に前進してミドルシャフト108に進入する(又はミドルシャフトを基端側に過剰に後退させる)のを防止する。ミドルシャフト108はまた、その基端から末端に伸びる中央内腔110を有し、インナーシャフト102の上にスライド自在に配置されている。ミドルシャフト108はまた、ユーザが把持する領域を提供するとともに、ミドルシャフト108が末端側に過剰に前進してアウターシャフト114に進入する(又はアウターシャフト114を基端側に過剰に後退させる)のを防止するハブ112又はフレア領域を有する。ミドルシャフト108はインナーシャフト102の上にスライド自在に配置され、また、アウターシャフト114の中にスライド自在に配置され、さらに、シャトルシース120の中にスライド自在に配置されている。以下に説明する本実施例及び他の実施例は「ワイヤ上での使用」のために構成されているが、搬送カテーテルはガイドワイヤに素早く交換できるように改変することが簡単にできる。急速交換及びワイヤ上での使用は、米国特許第5,451,233号等の特許文献に詳細に記載されている。また、ハブ106,112,118は、搬送カテーテルの基端部から血液又はその他の流体が出るのを防止しながら、複数のシャフトが相互に相対移動できる止血弁を備えていてもよい。シャフトにしっかりを密着してシャフト相互の移動を防止するためにTuohy-Borst(商標名)等の止血弁が使用できる。したがって、Tuohy-Borstは、固定機構としても利用される。」(段落【0047】~【0048】)
(ウ)「アウターシャフト114は、該シャフト114の基端と末端との間に伸びる中央内腔116を有し、該中央内腔の中にミドルシャフト108が摺動自在に配置されている。アウターシャフト108の基端にあるハブ118は、ユーザに把持領域を提供し、ミドルシャフト108上にあるハブ112が末端側に過剰に前進するのを防止する(又は、アウターシャフト114が基端側に過剰に後退するのを防止する)。基端のロック機構又は連結機構122は、アウターシャフト113の末端をシャトルシース120の基端に連結する。末端のロック機構又は連結機構124は、シャトルシース120の末端をインナーシャフト102の末端にノーズコーン126を介して連結する。基端と末端のロック機構又は連結機構は、種々の形態(例えば、スナップフィット、干渉フィット、とげ付きコネクタ、ロック機構、キーロック、回転式又は直動式ロック、ねじ付きブッシング、ツイストロック、磁気カップリング、バヨンネットカップリング、破壊式又は壊れやすいコネクタ、その他の公知のもの)をとり得る。基端のカップリングは、末端のカップリングと同じ形態をとり得る。または、基端と末端に異なるカップリングを用いてもよい。この実施例では、基端ロック122がロックされており(黒塗りの四角形122で示されている)、末端ロック124がアンロックされている(ロックされていない)(白抜きの四角形124で示されている)。このような構成により、図1B~図1Dに示すように、ステント128を末端側に送り出すことができる。」(段落【0050】~【0051】)
(エ)「 図2A~図2Dは、ステントの基端配送に適した形状に設計された搬送システム100を示す。図2Aは、基端と末端のロック又はカップリング122、124が入れ違いになっている構成の違いを除いて、図1A~図1Dを参照して説明したものと実質的に同じ搬送システム100を示す。この実施例では、末端ロック124はロック構造で、シャトルシース120がノーズコーン126を介してインナーシャフト102に連結されている。ロック構造は黒塗り長方形で示してある。基端ロック122はアンロックされており、白抜き長方形122で示すようにシャトルシース120がアウターシース114にロックされていない。図2Bにおいて、ステント128に対して、インナーシャフト102が末端側に前進し、それにより図2Cに示すようにシャトルシース120も末端側に前進する。シャトルシース120が末端側に進むにしたがってステント128が解放されるようになり、ステント128の解放部分が自分自身でその基端から末端に向けて拡張し、径方向に拡張した形状になる。また、図2Cに示すようにステント128の一部が拡張した状態で、外科医はインナーシャフト102を基端側に後退させてシャトルシース120をステント128上で後退させて再びステント128を捕獲し収容して潰した状態に納めることができる。これにより、最初の展開が不適切であった場合、外科医はステントを再配置することができる。図2Dは、シャトルシースが末端側に移動してステント128を解放し、ステント128が完全に拡張された状態を示す。カテーテル100は、拡張したステント128を介して基端側に後退させて患者から取り出すことができる。この搬送方法は、反対側の後退静脈アプローチ又は頸静脈アプローチ中に利用できる。深静脈源上にステントを配置するのは難しい。したがって、順向性アプローチを使用する際に基端解放を利用できる。」(段落【0053】~【0054】)
(オ)「図1A~図1D及び図2A~図2Dに示す実施例において、基端と末端のロック機構又はカップリング機構122,124は、ロック構造又はアンロック構造に予め設けることができる。当業者は、任意のロック構造とアンロック構造の組み合わせが可能であると理解している。したがって、カテーテルには、ロック位置又はアンロック位置に両ロックを設けてもよい。また、カテーテルにはロックされた基端ロックとアンロックされた末端ロックを設けてもよいし、アンロックされた基端ロックとロックされた末端ロックを設けてもよい。ユーザは提供されたカテーテルを利用できるし、または、所望のステント展開方向に応じてロック構造はカテーテルを使用する前に又は現場でユーザによって変更できる。本実施例及び本願で開示されたその他の実施例に適用される種々のロック機構の例を以下に詳細に説明する。」(段落【0055】)
(カ)「[図:0001387872000001.jpg][図:0001387872000002.jpg][図:0001387872000003.jpg][図:0001387872000004.jpg]」(図2A~2D)
(キ)上記(カ)の特に図2A,2Bの記載からすれば、ステント128がインナーシャフト102を覆って配置されていること、及び、シャトルシース120がステント128を覆って配置されていることが看取できる。
(ク)上記(カ)の特に図2Aの記載からすれば、インナーシャフト102がハブ106に連結され、ハブ118に向かって末端側に延伸していることが看取できる。
上記(ア)~(オ)の下線部の記載、(カ)の図面の記載及び(キ)、(ク)の認定事項からすれば、図2A~2D記載の実施例の構成(すなわち、上記(オ)記載のアンロックされた基端ロックとロックされた末端ロックを設けた構成。)として、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「インナーシャフト102と、インナーシャフト102を覆って配置される径方向に拡張できるステント128であって、搬送に適した形状と径方向に拡張した形状を有するステント128と、アウターシャフト114と、径方向に拡張可能なステント128を覆って配置されるシャトルシース120と、アウターシャフト114に連結されたハブ118と、ハブ118の近位に配置されたハブ106と、ハブ106に連結され、ハブ118に向かって末端側に延伸するインナーシャフト102を有し、インナーシャフト102はノーズコーン126を介してシャトルシース120に連結され、インナーシャフト102が末端側に前進することにより、ステント128が基端から末端に向けて拡張する搬送システム100。」
イ 引用文献2(拒絶査定の引用文献3)
原査定の拒絶の理由で引用された本願優先日前に頒布された刊行物である特表2006-500992号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
(ア)「部品は、チューブ状であってもよい。部品は、カテーテルであってもよい。医療器具は、カテーテルであってもよい。カテーテルは、例えば、約30cm乃至約180cmの長さ、及び/又は、約0.020インチ(約0.051cm)乃至約0.180インチ(約0.43cm)の外径を有してもよい。・・・・・・医療器具は、人工器官(例えば、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント)を体内管に搬送するために構成されるカテーテルであってもよい。部品は、カテーテルのハイポチューブのシース部分であってもよい。ハイポチューブのシース部分は、約0.100インチ(約0.254cm)乃至約60インチ(約152.4cm)の長さ、及び/又は、約0.015インチ(約0.038cm)乃至約0.180インチ(約0.457cm)の外径を有してもよい。」(段落【0032】~【0034】)
(イ)「図3A及び図3Bは、他の実施例であるバルーンカテーテル200の断面図を示しており、これは一般的にオーバーザワイヤ型カテーテルと称される。カテーテル200は、先端202、くびれ部205を有する膨張バルーン204、及びカテーテルの基端部208へ延びるシャフト206を備える。シャフト206は、その基端部207においてハブアセンブリ210に装着される。シャフト206は、外チューブ212及び同チューブ内に同軸状に配置される内チューブ214を有する。幾つかの実施例において、外チューブ212は、2つのチューブ、即ち基端側の外チューブ及び先端側の外チューブから形成される。環状のルーメン215は、外チューブ212と内チューブ214との間において構成される。内チューブ214は、カテーテルの全長に渡って延び、ガイドワイヤを収容すべく配置される中央ルーメン220を構成する。先端部222において、外チューブ212は、わずかに曲がってくびれ部205に係合する。実施例によっては、カテーテル200は、シャフト206の基端部207において、チューブ状のカテーテル部品としてハイポチューブを有してもよい。そのようなバルーンカテーテルの例には、ボストン サイエンティフィック-シメッド社(Boston Scientific-SciMed、米国ミネソタ州メープルグローブに所在)より販売されているエヌシーレンジャー(登録商標Ranger)ファミリーのバルーンカテーテルが含まれる。」(段落【0075】)
(3)引用発明との対比
以下、本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「インナーシャフト102」は、本件補正発明の「内側の細長いシャフト」と、「内側のシャフト」である点、及び、近位部及び遠位部を有する点で一致する。
イ 引用発明の「ステント128」は、図2Aに示されるように圧縮した状態で血管系を介して搬送される人工器官であり(上記(2)ア.(ア)参照。)、医療用のステントである以上、拡張した状態では血管の管壁に係合するものと認められるから、本件補正発明の「内側の細長いシャフトを覆って配置される径方向に拡張できる人工器官であって、径方向に圧縮された形状と径方向に拡張された形状を有し、前記径方向に圧縮された形状で血管系を介して搬送され、前記径方向に拡張された形状で管壁と係合するように構成された人工器官」に相当する。
ウ 引用発明の「アウターシャフト114」は、近位部及び遠位部を有しており、機能及び構造上、本件補正発明の「外側の細長いシャフト」に相当する。
エ 引用発明の「シャトルシース120」は、近位部及び遠位部を有しており、機能及び構造上、本件補正発明の「シース」に相当する。
オ 引用発明の「ハブ118」は、アウターシャフトに連結されており、本件補正発明の「第1ハブ」に相当する。
カ 引用発明の「ハブ106」は、ハブ118の近位に配置されており、本件補正発明の「第2ハブ」に相当する。
キ 引用発明の「インナーシャフト102」と、本件補正発明の「ハイポチューブ」は、「内側のシャフト」である点で一致する。
ク 本件明細書において、内側シャフト114(内側の細長いシャフト)と外側ステントカバー104(シース)の連結は、ノーズコーン106を介して行われており(段落【0035】参照。)、間接的な連結も「連結」に含まれるものと認められるから、引用発明のノーズコーン126を介したインナーシャフト102とシャトルシース120の連結も、インナーシャフト102とシャトルシース120の「連結」にあたるものと認められる。
また、引用発明において、「基端」及び「末端」は、それぞれ「近位端」及び「遠位端」を意味し、「末端側に前進」することは、「遠位側に移動」することを意味するものと認められる。
してみれば、引用発明の「インナーシャフト102はノーズコーン126を介してシャトルシース120に連結され、インナーシャフト102末端側に前進することにより、ステント128が基端から末端に向けて拡張する」ことは、本件補正発明と「前記内側のシャフトは前記シースに連結され、前記第2ハブを遠位側に進めることにより前記内側のシャフト及び前記シースが遠位側に移動し、これにより、前記人工器官が該人工器官の近位端から該人工器官の遠位端へと径方向に拡張する」点において共通する。
ケ 引用発明の「搬送システム100」は、機能及び構造上、本件補正発明の「ステントデリバリシステム」に相当する。
以上のことからすると、本件補正発明と引用発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
近位部と遠位部を有する内側のシャフトと、
内側のシャフトを覆って配置される径方向に拡張できる人工器官であって、径方向に圧縮された形状と径方向に拡張された形状を有し、前記径方向に圧縮された形状で血管系を介して搬送され、前記径方向に拡張された形状で管壁と係合するように構成された人工器官と、
近位部と遠位部を有する外側の細長いシャフトと、
近位部と遠位部を有するシースであって、前記径方向に拡張可能な人工器官を覆って配置されるシースと、
前記外側の細長いシャフトに連結された第1ハブと、
前記第1ハブの近位に配置された第2ハブと、
前記第2ハブに連結され、前記第1ハブに向かって遠位に延伸する内側のシャフトとを有し、
前記内側のシャフトは前記シースに連結され、前記第2ハブを遠位側に進めることにより前記内側のシャフト及び前記シースが遠位側に移動し、これにより、前記人工器官が該人工器官の近位端から該人工器官の遠位端へと径方向に拡張するステントデリバリシステム。
【相違点】
内側のシャフトが、本件補正発明では内側の細長いシャフト及びハイポチューブであるのに対して、引用発明ではインナーシャフト102である点。
(4)判断
医療装置におけるチューブ状の部品としてハイポチューブは引用文献2(上記(2)イ参照。)に記載されているように周知技術である(請求人も回答書でこの点について認めているものと認められる。)。
そして、上記(2)ア(イ)に記載されているように、引用発明はインナーシャフト102を公知の材料から作ることを意図しているのであるから、インナーシャフト102の具体的な材料を当該周知技術のハイポチューブとして具体化することは当業者が容易になし得ることと認められる。
なお、出願人は回答書において、ハイポチューブと内側の細長いシャフトは別々の構造である旨主張しているが、具体的にどのような形態で別々の構造とされているのか明らかにしておらず、また、本願明細書及び図面の記載を参酌しても明らかとは言えない。
そして、両者が別々の構造であるとしても、回答書(2頁7~12行)で主張するように、両者は一緒に遠位側に前進することにより外側ステントカバー(シース)を移動させるという作用を奏するための構成であるから、当該作用を奏する範囲で、その一部をハイポチューブで構成し、他の公知の材料から構成された内側の細長いシャフトに固定するような構成も当業者であれば容易に想到できることと認められる。
そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測しうる程度のものであって、格別のものとは認められない。
よって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)小括
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができたものとは認められない。
4 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項の規定に違反したものであり、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に、本件補正が、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正は、同条第6項の規定により準用する同法第126条第7項の規定に適合しないものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり
決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~11に係る発明は、令和2年8月14日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載したとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、拒絶の理由として、概ね次の理由を含むものである。
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内において、頒布された引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2並びにその記載事項は、上記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]3で検討した本件補正発明の「前記ハイポチューブは前記シースに連結され、前記第2ハブを遠位側に進めることにより前記ハイポチューブ及び前記シースが遠位側に移動し、」という構成を、「前記内側の細長いシャフトを遠位側に進めると前記シースが遠位側に進み、」という構成にしたものであるが、上記第2の[理由]3(3)で認定したとおり、上記引用発明のインナーシャフト102(内側のシャフト)は、シャトルシース120(シース)に連結され、ハブ106(第2ハブ)を遠位側に進めることによりインナーシャフト102(内側のシャフト)及びシャトルシース120(シース)を遠位側に移動するものであり、当該インナーシャフト102(内側のシャフト)は、その機能及び構造上、本件補正発明の細長いシャフト及びハイポチューブに相当するのと同様に、本願発明の内側の細長いシャフトに相当する。
よって、上記第2の[理由]3(3)、(4)で本件補正発明について検討したのと同様の理由により、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-003842