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特許拒絶査定不服審判

2021-002453

電気掃除機

審判番号
2021-002453
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-155187外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年02月25日
審決日
2022年02月01日
公報発行日
2022年04月28日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (A47L) / P18 .55 -WZ (A47L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法17条の2第3項特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2019-155187「電気掃除機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年12月26日出願公開、特開2019-217321〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

この出願(以下、「本願」という。)は、平成28年10月6日に出願した特願2016-197715号の一部を令和元年8月28日に新たな出願としたものであって、令和2年3月31日に手続補正書及び上申書が提出され、令和2年8月5日付け(発送日:同年8月11日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和2年10月9日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年11月17日付け(発送日:同年12月1日)で拒絶査定がされ、これに対し、令和3年2月25日に拒絶査定不服審判が請求され、その請求と同時に特許請求の範囲及び明細書を補正する手続補正書が提出され、令和3年6月10日に上申書が提出され、当審において令和3年9月7日付け(発送日:同年9月14日)で拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和3年10月11日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 当審において通知した拒絶の理由について

当審において令和3年9月7日付けで通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

1.(新規性)この出願の下記の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

2.(進歩性)この出願の請求項1ないし3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

4.(新規事項)令和2年3月31日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について

引用文献1に記載された発明を主引用発明とするとき

・請求項1及び2に対して引用文献等1

・請求項3に対して引用文献等1、3及び4

引用文献2に記載された発明を主引用発明とするとき

・請求項1及び2に対して引用文献等1及び2

・請求項3に対して引用文献等1ないし4

●理由3(明確性)について

・請求項1ないし3

請求項1に係る発明及び請求項1に係る発明を直接的又は間接的に引用する請求項2及び3に係る発明は明確でない。

●理由4(新規事項)について

・請求項1ないし3

請求項1には、「前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い」という記載がある(下線は当審が付与。以下同様。)。

しかしながら、出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、不織布の長さを植毛の長さの50%以上とすることについて記載されておらず、当初明細書等から自明な事項でもない。

また、請求人が上記記載の補正の根拠としている図19を参酌しても、「50%」という数値までは把握できない。

よって、この補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。

<引用文献等一覧>

1.特開2011-5184号公報

2.特開2003-493号公報

3.特開2008-11943号公報(周知技術を示す文献)

4.特開2003-93288号公報(周知技術を示す文献)

第3 当審の判断

1 理由4(新規事項)について

事案に鑑み、最初に理由4(新規事項)について検討する。

(1)補正の内容

出願当初の特許請求の範囲の請求項1には、不織布の長さに関する記載は存在しなかったところ、令和2年3月31日の手続補正により補正がされた請求項1には、

「前記不織布又は前記ブレード部材の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い」

と記載され、さらに、令和3年2月25日の手続補正により補正がされた請求項1には、

「前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い」

と記載された。

そして、令和3年10月11日の手続補正により補正がされた請求項1には、

「前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い」

との記載は依然として存在する。

(2)検討、判断

ア 新規事項についての判断

令和3年10月11日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1には「前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い」との記載がある。

しかし、出願当初の図19を参酌しても、不織布143の長さは植毛142の長さより短いことは看取できるものの、図面は設計図ではないため正確な寸法が図示されているとは限らず、不織布の長さは植毛の「50%以上」の長さという数値範囲までは把握することができない。

そして、当初明細書等には、不織布の長さを植毛の長さの50%以上とすることについて記載されておらず、当初明細書等及び技術常識から自明な事項でもない。

よって、令和3年10月11日の手続補正は、依然として、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。

イ 請求人の主張について

この点について、請求人は令和3年10月11日付け意見書において、

「図19において、回転ブラシの最下部に位置する刷毛142と不織布143を実測してみますと、刷毛142と不織布143の長さ関係の比率は、2:1となっております。この関係から、不織布の長さを植毛の長さの50%以上とすることが読み取れると思料致します。」

と主張する。

しかし、上述のとおり、図面は設計図ではないため正確な寸法が図示されているとは限らないから、出願当初の図19において刷毛142と不織布143を実測して、刷毛142と不織布143の長さ関係の比率は2:1となっていたとしても、不織布の長さは植毛の「50%以上」の長さという数値範囲までは読み取ることができないというべきである。

よって、令和3年10月11日の手続補正は、依然として、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。

したがって、請求人の上記主張は採用することができない。

(3)小括

以上のとおりであるから、令和3年10月11日の手続補正による補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものとはいえないから、令和3年9月7日付け拒絶理由通知書により通知したとおり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものである。

2 理由2(進歩性)について

次に、理由2(進歩性)について検討する。

仮に、請求項1についての上記補正が新規事項の追加に当たらないものとして検討を行う。

(1)本願発明

本願の請求項1ないし3に係る発明は、令和3年10月11日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

〔本願発明〕

「モータによって水平方向を軸として回転する回転ブラシを有し、
前記回転ブラシは、互いに隣接する植毛及び不織布を有し、
前記植毛及び前記不織布は、根元が一体であって先端は互いに離間すると共に、前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様にそれぞれ8本配設されており、
前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い電気掃除機。」

(2)引用文献、引用発明

ア 引用文献1

当審において令和3年9月7日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1には、「清掃体」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0019】
このような構成の清掃体1は、たとえば掃除機の柄の先に設けられるヘッドの吸込口に設けられる。
図3は、本実施例1の清掃体が適用される掃除機の一例を示す図である。
【0020】
続きを表示(全14行)
掃除機21は、図3に示すように、掃除機本体23に蛇腹状のホース25の基端部が着脱可能に接続されて、このホース25の先端部に円筒状の柄27が接続される。そして、この柄27の先端部にヘッド29が着脱可能に設けられ、このヘッド29に、本実施例の清掃体1が装着された回転体31が回転可能に取り付けられる。
【0021】
図4は、本実施例の清掃体が装着された回転体を示す斜視図であり、図5は、図4のA-A断面図である。
【0022】
回転体31は、細長い円柱状とされ、その外周面には、周方向等間隔4箇所に、軸方向一端部から軸方向他端部へ行くに従って周方向一方側へ緩やかにねじれた溝33が形成されている。
【0023】
回転体31の各溝33は、回転体31の外周面への開口部33aに対して底部33bが幅広に形成されており、断面略T字形に形成されている。清掃体1は、回転体31の溝33の底部33bに基材3が配置される一方、拭き部材7および芯材5が、溝33の開口部33aから径方向外側へ突出して設けられるように、回転体31の溝33に、回転体31の軸方向一端部から軸方向他端部側へ押し込まれて回転体31に装着される。
【0024】
基材3が溝33の開口部33aより幅広とされることで、回転体31に清掃体1が装着された状態において、清掃体1の溝33からの回転体31の径方向外側への抜けが防止される。また、回転体31に清掃体1が取り付けられた状態では、清掃体1の長手方向の寸法は、回転体31の軸方向の寸法より若干短く、回転体31の軸方向両端部が残されるように、回転体31に清掃体1が装着される。
本実施例1では、回転体31の4つの溝33にそれぞれ清掃体1が装着される。」
(イ)「【0041】
上記実施例1では、ブラシ状の芯材5を覆うように拭き部材7が設けられたが、本実施例3では、芯材5の片側にのみ拭き部材が設けられる。
【0042】
具体的には、本実施例3の清掃体は、実施例1と同様に、パイル織りにより基材3および芯材5が一体的に形成される。そして、ブラシ状の芯材5の片側に隣接して、拭き部材91が基材3に固定される。
続きを表示(全11行)
【0043】
拭き部材91は、細長い長方形のシート状とされ、綿などの天然繊維またはポリエステルなどの化学繊維により形成された織物、編物、または不織布、あるいは合成樹脂製のシートが使用される。本実施例3においても、拭き部材91は、芯材5を構成する素材より帯電順位がマイナス側の素材により形成される。
拭き部材91は、その下端部が直角に折り返されて、基材3の上面の幅方向一方側に芯材5に沿って設けられる。そして、拭き部材91は、その下端部が基材3の上面に重ね合わされて超音波溶着により基材3に固定される。
【0044】
拭き部材91は、基材3に固定された状態において芯材5の半分より長く、芯材5と同じかそれより短く構成されるのが好ましく、図示例では、拭き部材91は、基材3に立設された状態において芯材5より若干低く設けられている。
【0045】
このような構成の実施例3の清掃体は、実施例1と同様に、回転体に装着されて掃除機に適用される。なお、本実施例3では、回転体の回転方向側に拭き部材91が配されるようにヘッドに回転体が取り付けられる。本実施例3では、上記実施例1と同様に、拭き部材91がマイナスに帯電することで、床面に付着しているマイナスに帯電した塵埃を効率よく回収することができると共に、ブラシ状の芯材5により床面の塵をかき出すことが可能となる。」
(ウ)「【0048】
また、上記各実施例では、清掃体1が装着された回転体31をモータにより回転させたが、モータを設けずに、掃除機本体の吸引力による風力により回転体を回転させるようにしてもよい。」

(エ)図3「

[図:0001382934000001.jpg]

」

(オ)図4「

[図:0001382934000002.jpg]

」

(カ)図5「

[図:0001382934000003.jpg]

」

(キ)図6「

[図:0001382934000004.jpg]

」

(ク)図7「

[図:0001382934000005.jpg]

」

(ケ)図10「

[図:0001382934000006.jpg]

」

引用文献1には、段落【0042】、【0043】及び図10を参酌すると、芯材5における一方の端部が基材3に一体的に形成され、拭き部材91における一方の端部が基材3に固定され、芯材5及び拭き部材91の他方の端部が互いに(長手方向に)離間することが記載されている。

引用文献1の上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明及び事項(以下、それぞれ「引用発明1」及び「引用文献1記載事項」という。)が記載されている。

〔引用発明1〕

「モータ57により水平方向を軸として回転する、清掃体1が装着された回転体31を有し、
清掃体1は、ブラシ状の芯材5と、芯材5の片側に隣接して、不織布が使用された拭き部材91とを有し、
芯材5における一方の端部が基材3に一体的に形成され、拭き部材91における一方の端部が基材3に固定され、芯材5及び拭き部材91の他方の端部が互いに離間すると共に、回転体31の外周面には、周方向等間隔4箇所に、軸方向一端部から軸方向他端部へ行くに従って周方向一方側へ緩やかにねじれた溝33が形成されて、清掃体1は、回転体31の溝33の底部33bに基材3が配置される一方、拭き部材7および芯材5が、溝33の開口部33aから径方向外側へ突出して設けられるように、回転体31の溝33に、回転体31の軸方向一端部から軸方向他端部側へ押し込まれて回転体31に装着され、
拭き部材91は、基材3に固定された状態において芯材5の半分より長く、芯材5より短く構成される掃除機21。」

〔引用文献1記載事項〕

「モータ57により水平方向を軸として回転する、清掃体1が装着された回転体31を有する電気掃除機であること。」

イ 引用文献2

当審において令和3年9月7日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には、「掃除機用床ノズルの回転ロータ」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、掃除機のアタッチメントとして使用される床ノズルに内蔵される回転ロータに関するものである。」
(イ)「【0007】
【発明の実施の形態】実施の形態
図1から図3に実施の形態を示す。図1は本発明の実施の形態の回転ロータを示す斜視図である。図1において、1は回転ロータ、2はロータ、3は清掃体、4はブラケットである。図2は清掃体の正面図である。図2において、5は基布、6はブラシ部、7は帯状体である。図3は清掃体の斜視図である。本発明の回転ロータは、図1の如く、ロータ2、清掃体3、ブラケット4より構成されてある。ロータ2は、概円柱形状を形成していて、外周部に、軸の周りに所定の角度捩りを加えて開口する複数条の支持溝8を有している。清掃体3は、ロータ2の支持溝8にたいして、挿入固定されて複数条、形成されてある。ブラケット4は、ロータ2の両端部に取り付けられてある。」
(ウ)「【0011】本発明の回転ロータは、帯状体に、ポリプロピレンン等の樹脂材料が使用されてあるが、帯状体の材料として、目的に応じて、他に織布、不織布、紙、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー等を使用する。
【0012】また、図4にて本発明の回転ロータに使用する清掃体の他の実施例を示す。図4は清掃体の正面図である。図4において、15は基布、16はブラシ部、17は帯状体である。清掃体は、図4の如く、基布15、ブラシ部16、帯状体17より構成されてある。基布15は、概長方形の平板状を形成していて、上面には、ブラシ部16及び帯状体17が、互いに隣接するように、形成されてある。ブラシ部16は、帯状体17よりも高くなるように毛丈が設定されてある。帯状体17は、概V字形状になるように折り込まれて、ブラシ部16に隣接するように、基布15にたいして一体的に形成されてある。
【0013】清掃体13は、上記の如くの構成となっている為、ブラシ部16が、床面の細かな溝等の塵埃を効果的に掻き出す。また、帯状体17がブラシ部16に隣接して形成されてあると共に、ブラシ部16が、帯状体17よりも高くなるように毛丈が設定されてある為、ブラシ部16は、毛倒れをする事無く、かつ毛先の腰が強くなり、床面の細かな溝等に入り込んだ塵埃であっても、効果的に掻き出すことができる。」

(エ)「【0018】本発明の回転ロータは、上記の如くの構成となっているが、清掃体の本数、ブラシ部及び帯状体の形状については、目的に応じて、適時設定しても、何ら支障は無い。」

(オ)図1「

[図:0001382934000007.jpg]

」

(カ)図4「

[図:0001382934000008.jpg]

」

引用文献2には、段落【0012】及び図4を参酌すると、略V字形状の帯状体17における左側の片の先端と、ブラシ部16の先端とが離間することが記載されている。

引用文献2の上記記載事項及び図面の図示内容を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

〔引用発明2〕

「水平方向を軸として回転する、清掃体3を含む回転ロータ1を有し、
清掃体3は、互いに隣接するブラシ部16及び不織布を使用した帯状体17を有し、
ブラシ部16及び帯状体17は、基布15の上面に一体的に形成され、ブラシ部16及び帯状体17の先端が互いに離間すると共に、回転ロータ1におけるロータ2の外周部に、軸の周りに所定の角度捩りを加えて開口する複数条の支持溝8を有し、清掃体3は、支持溝8に対して挿入固定されて複数条、形成され、
ブラシ部16が、帯状体17よりも高くなるように毛丈が設定されている掃除機。」

(3)対比、判断

ア 引用発明1を主引用発明とするとき

本願発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「モータ57」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「モータ」に相当し、以下同様に、「清掃体1が装着された回転体31」は「回転ブラシ」に、「芯材5」は「植毛」に、「拭き部材91」は「不織布」に、「掃除機21」は「電気掃除機」にそれぞれ相当する。

引用発明1の「芯材5における一方の端部が基材3に一体的に形成され、拭き部材91における一方の端部が基材3に固定され、芯材5及び拭き部材91の他方の端部が互いに離間すると共に、回転体31の外周面には、周方向等間隔4箇所に、軸方向一端部から軸方向他端部へ行くに従って周方向一方側へ緩やかにねじれた溝33が形成されて、清掃体1は、回転体31の溝33の底部33bに基材3が配置される一方、拭き部材7および芯材5が、溝33の開口部33aから径方向外側へ突出して設けられるように、回転体31の溝33に、回転体31の軸方向一端部から軸方向他端部側へ押し込まれて回転体31に装着され」という事項から、芯材5及び拭き部材91は、それぞれの一方の端部が基材3を介して一体であり、それぞれの他方の端部が互いに離間しているといえる。また、基材3が回転体31に配置されることから、芯材5及び拭き部材91のそれぞれの一方の端部が根元であり、それぞれの他方の端部が先端であるといえる。

したがって、引用発明1は、本願発明の「前記植毛及び前記不織布は、根元が一体であって先端は互いに離間する」という事項を備えているといえる。

引用発明1の前述の事項から、回転体31の外周面に形成された、周方向等間隔4箇所に、軸方向一端部から軸方向他端部へ行くに従って周方向一方側へ緩やかにねじれた溝33は、回転体31の軸方向に対して螺旋状に列をなす様に4本配設されているといえる。

そうすると、その溝33に配置される清掃体1、すなわち、芯材5及び拭き部材91も回転体31の軸方向に対して螺旋状に列をなす様に4本配設されているといえる。

したがって、引用発明1の「回転体31の外周面には、周方向等間隔4箇所に、軸方向一端部から軸方向他端部へ行くに従って周方向一方側へ緩やかにねじれた溝33が形成されて、清掃体1は、回転体31の溝33の底部33bに基材3が配置される一方、拭き部材7および芯材5が、溝33の開口部33aから径方向外側へ突出して設けられるように、回転体31の溝33に、回転体31の軸方向一端部から軸方向他端部側へ押し込まれて回転体31に装着され」ている態様と、本願発明の「前記植毛及び前記不織布は、」「前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様にそれぞれ8本配設されて」いる態様とは、「前記植毛及び前記不織布は、」「前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様に複数本配設されており」という事項の限りにおいて一致する。

引用発明1の「拭き部材91は、基材3に固定された状態において芯材5の半分より長く、芯材5より短く構成される」という事項は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い」という事項に相当する。

よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

〔一致点〕

「モータによって水平方向を軸として回転する回転ブラシを有し、
前記回転ブラシは、互いに隣接する植毛及び不織布を有し、
前記植毛及び前記不織布は、根元が一体であって先端は互いに離間すると共に、前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様に複数本配設されており、
前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い電気掃除機。」

〔相違点1〕

「前記植毛及び前記不織布は、」「前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様に複数本配設されており」という事項に関して、本願発明は、「前記植毛及び前記不織布は、」「それぞれ8本配設されて」いるのに対して、引用発明1は、芯材5及び拭き部材91がそれぞれ4本である点。

〔相違点1について〕

上記相違点1について検討する。

引用発明1において、回転体31に装着する清掃体1の本数を4本としなければならない特段の事情は見当たらず、清掃体1の本数を具体的に何本とするかは、必要に応じて当業者が適宜設定し得た事項である。

したがって、引用発明1において、清掃体1の本数を8本、すなわち、芯材5及び拭き部材91の本数をそれぞれ8本とすることは、当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎない。

また、回転ブラシに配設する清掃体の本数を8本とすることは周知技術(例えば、特開2005-21467号公報の段落【0017】及び【0018】並びに図3、特開2009-261806号公報の段落【0012】、【0013】及び【0019】並びに図1、3及び7等を参照。)である。

したがって、引用発明1において、周知技術を参照して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

〔効果について〕

そして、全体としてみても、本願発明の奏する効果は、引用発明1及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

〔小括〕

よって、本願発明は、引用発明1に基いて、あるいは、引用発明1及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

イ 引用発明2を主引用発明とするとき

本願発明と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「清掃体3を含む回転ロータ1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明の「回転ブラシ」に相当し、以下同様に、「ブラシ部16」は「植毛」に、「帯状体17」は「不織布」にそれぞれ相当する。

引用発明2の「ブラシ部16及び帯状体17は、基布15の上面に一体的に形成され、ブラシ部16及び帯状体17の先端が互いに離間すると共に、回転ロータ1におけるロータ2の外周部に、軸の周りに所定の角度捩りを加えて開口する複数条の支持溝8を有し、清掃体3は、支持溝8に対して挿入固定されて複数条、形成され」という事項から、ブラシ部16及び帯状体17は基布15を介して一体であり、先端が互いに離間しているといえる。

また、回転ロータ1におけるロータ2の外周部に、軸の周りに所定の角度捩りを加えて開口する複数条の支持溝8は、回転ロータ1の軸方向に対して螺旋状に列をなす様に複数本配設されているといえる。

そうすると、その支持溝8に対して挿入固定される清掃体3、すなわち、ブラシ部16及び帯状体17も回転ロータ1の軸方向に対して螺旋状に列をなす様に複数本配設されているといえる。

したがって、引用発明2の「ブラシ部16及び帯状体17は、基布15の上面に一体的に形成され、ブラシ部16及び帯状体17の先端が互いに離間すると共に、回転ロータ1におけるロータ2の外周部に、軸の周りに所定の角度捩りを加えて開口する複数条の支持溝8を有し、清掃体3は、支持溝8に対して挿入固定されて複数条、形成され」ている態様と、本願発明の「前記植毛及び前記不織布は、」「前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様にそれぞれ8本配設されて」いる態様とは、「前記植毛及び前記不織布は、」「前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様に複数本配設されており」という事項の限りにおいて一致する。

引用発明2の「ブラシ部16が、帯状体17よりも高くなるように毛丈が設定されている」という事項と、本願発明の「前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い」という事項とは、「不織布の長さは、植毛の長さより短い」という事項の限りにおいて一致する。

引用発明2の「掃除機」と、本願発明の「電気掃除機」とは、「掃除機」である限りにおいて一致する。

よって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

〔一致点〕

「水平方向を軸として回転する回転ブラシを有し、
前記回転ブラシは、互いに隣接する植毛及び不織布を有し、
前記植毛及び前記不織布は、根元が一体であって先端は離間すると共に、前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様に複数本配設されており、
前記不織布の長さは、前記植毛の長さより短い掃除機。」

〔相違点2〕

本願発明は、「回転ブラシ」が「モータ」により回転し、「掃除機」に関して「電気掃除機」であるのに対して、引用発明2は、「回転ロータ1」がモータにより回転するのか不明であると共に、掃除機が「電気掃除機」であるか不明である点。

〔相違点3〕

「不織布の長さは、植毛の長さより短い」という事項に関して、本願発明は、「前記不織布の長さは、前記植毛の少なくとも50%以上の長さを有し、かつ、前記植毛の長さより短い」のに対して、引用発明2は、「ブラシ部16」の毛丈に対する「帯状体17」の毛丈の割合の最小値がどの程度なのか不明である点。

〔相違点4〕

「前記植毛及び前記不織布は、」「前記回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様に複数本配設されており」という事項に関して、本願発明は、「前記植毛及び前記不織布は、」「それぞれ8本配設されて」いるのに対して、引用発明2は、ブラシ部16及び帯状体17がそれぞれ複数条である点。

〔相違点2について〕

上記相違点2について検討する。

引用発明2と引用文献1記載事項とは、回転ブラシを備えた掃除機である点で共通している。

したがって、引用発明2に引用文献1記載事項を適用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

〔相違点3について〕

上記相違点3について検討する。

引用発明2の「帯状体17」は、引用文献2の段落【0013】を参酌すると、「ブラシ部16」の毛倒れを防止するためのものであるから、「ブラシ部16」の毛丈に対する「帯状体17」の毛丈の割合の最小値をどの程度にするかは、「ブラシ部16」の毛倒れを防止可能な数値の中から、当業者が適宜に決定し得たことである。

したがって、引用発明2において、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

〔相違点4について〕

上記相違点4について検討する。

引用文献2の段落【0018】には「本発明の回転ロータは、上記の如くの構成となっているが、清掃体の本数、ブラシ部及び帯状体の形状については、目的に応じて、適時設定しても、何ら支障は無い。」と記載されており、引用発明2において、回転ロータ1に固定する清掃体3の本数を具体的に何本とするかは、4本に限られるものではなく、当業者が適宜設定し得た事項である。

したがって、引用発明2において、清掃体3の本数を8本、すなわち、ブラシ部16及び帯状体17の本数をそれぞれ8本とすることは、当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎない。

また、回転ブラシに配設する清掃体の本数を8本とすることは周知技術(例えば、特開2005-21467号公報の段落【0017】及び【0018】並びに図3、特開2009-261806号公報の段落【0012】、【0013】及び【0019】並びに図1、3及び7等を参照。)である。

したがって、引用発明2において、周知技術を参照して、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

〔効果について〕

そして、全体としてみても、本願発明の奏する効果は、引用発明2、引用文献1記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

〔小括〕

よって、本願発明は、引用発明2及び引用文献1記載事項に基いて、あるいは、引用発明2、引用文献1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)請求人の主張について

請求人は上記意見書において、

「本願の請求項1に係る発明と引用文献1,2に記載の発明とは、植毛及び不織布とは、根元が一体であって先端は互いに離間すると共に、根元が一体となった植毛及び不織布で構成された部材が回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様に配設した点で一致し、回転ブラシに配設された植毛及び不織布のそれぞれの本数が、本願の請求項1に係る発明では8本であるのに対して引用文献1,2に記載の発明では4本である点で相違している。
引用文献1,2に記載の発明では、回転ブラシに配設される植毛及び不織布のそれぞれの本数が4本であるので、隣り合う部材(植毛及び不織布)同士の隙間が大きくなります。このため、不織布が倒れ易くなり、倒れた状態が継続すると床面に接触し難くなり、毛髪ごみ等が植毛に絡み易くなるものであります。
これに対し、本願の請求項1に係る発明では、植毛及び不織布とは、根元が一体であって先端は互いに離間すると共に、根元が一体となった植毛及び不織布で構成された部材が回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様にそれぞれ8本配設しているので、上記部材が隣り合って回転ブラシの周方向に対して密になり、倒れ易い不織布が根元で一体となった植毛、及び隣り合う別の植毛によって支えられ、床面に接触し易くなり、毛髪ごみ等が植毛に絡み易くなるという効果を奏するものであります。
次に引用文献3,4に記載の発明は、電気掃除機の回転ブラシの清掃片にスリットを設ける点で本願の請求項3に係る発明と一部一致する技術を開示しておりますが、請求項3が従属する本願の請求項1に係る発明の特徴である植毛及び不織布は、根元が一体であって先端は互いに離間すると共に、根元が一体となった植毛及び不織布で構成された部材が回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様にそれぞれ8本配設した構成については開示されておりません。
以上のように、引用文献1乃至4には、上記した本願の請求項1に係る発明の特徴は一切開示されておらず、上記した本願の請求項1に係る発明の効果は期待できないものであります。
よって、引用文献1乃至4に記載の技術を組み合わせたとしても、本願の請求項1に係る発明の構成は得られるものではありません。このように本願の請求項1に係る発明は引用文献1乃至4に対して進歩性を有するものであります。」と主張する。

請求人が上記意見書において主張する「本願の請求項1に係る発明では、植毛及び不織布とは、」「それぞれ8本配設している」点について検討する。

引用発明1において、回転体31に装着する清掃体1の本数を4本としなければならない特段の事情は見当たらず、清掃体1の本数を具体的に何本とするかは、必要に応じて当業者が適宜設定し得た事項である。

したがって、引用発明1において、清掃体1の本数を8本、すなわち、芯材5及び拭き部材91の本数をそれぞれ8本とすることは、当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎない。

また、回転ブラシに配設する清掃体の本数を8本とすることは、上記のとおり周知技術である。

したがって、引用発明1において、周知技術を参照して、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、引用文献2の段落【0018】には「本発明の回転ロータは、上記の如くの構成となっているが、清掃体の本数、ブラシ部及び帯状体の形状については、目的に応じて、適時設定しても、何ら支障は無い。」と記載されており、引用発明2において、回転ロータ1に固定する清掃体3の本数を具体的に何本とするかは、4本に限られるものではなく、当業者が適宜設定し得た事項である。

したがって、引用発明2において、清掃体3の本数を8本、すなわち、ブラシ部16及び帯状体17の本数をそれぞれ8本とすることは、当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎない。

また、回転ブラシに配設する清掃体の本数を8本とすることは、上記のとおり周知技術である。

したがって、引用発明2において、周知技術を参照して、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

また、請求人が上記意見書において主張する「本願の請求項1に係る発明では、植毛及び不織布とは、」「それぞれ8本配設しているので、上記部材が隣り合って回転ブラシの周方向に対して密になり、倒れ易い不織布が根元で一体となった植毛、及び隣り合う別の植毛によって支えられ、床面に接触し易くなり、毛髪ごみ等が植毛に絡み易くなるという効果を奏する」点について検討する。

回転ブラシの軸方向に対して螺旋状に列をなす様に清掃体を複数本配設する場合、清掃体の本数が多いほど回転ブラシの周方向に対して密になり隣り合う清掃体に支えられることは当業者にとって自明である。

そうすると、請求人が上記意見書において主張する効果は、引用発明1及び周知技術、もしくは、引用発明2、引用文献1記載事項及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

よって、請求人の上記主張は採用することができない。

第4 むすび

以上のとおり、令和3年10月11日の手続補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶すべきものである。

また、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

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2021-002453

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