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特許拒絶査定不服審判

2021-001935

切断機械の切断工具を自動式に交換する方法および装置

審判番号
2021-001935
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-557328外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年02月12日
審決日
2021年09月16日
公報発行日
2022年03月25日
結論
請求不成立
審判長/審判官
分類
P18 .121-Z (B26D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第6項、特許法第29条第1項第3号、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-557328「切断機械の切断工具を自動式に交換する方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔2016年(平成28年)11月10日国際公開、WO2016/177735、平成30年 6月 7日国内公表、特表2018-514404〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本願は、2016年(平成28年)5月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年(平成27年)5月5日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。

平成29年12月12日 :翻訳文
令和 2年 2月 5日付け:拒絶理由通知書

同 年10月 6日付け:拒絶査定

令和 3年 2月12日 :審判請求書及び手続補正書

同 年 7月 1日 :上申書

第2 令和3年2月12日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和3年2月12日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「複数の切断工具を備えていて切断機械において前記切断工具を自動式に交換する装置であって、前記切断工具を収容するための第1の容器および第2の容器が設けられている、装置において、ハウジング内に、前記第1および第2の容器と、前記切断工具を前記第1の容器から取り出してから使用位置で位置決めし、かつ摩耗した前記切断工具を使用位置から前記第2の容器内にもたらす手段と、が配置されており、
前記切断工具は剃刀の刃であって、前記剃刀の刃は、切断平面に対して斜めにセットされた前記剃刀の刃の方向付けにおいて、4つの切断領域が使用されるように形成されている、ことを特徴とする、装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、平成29年12月12日に提出された翻訳文に記載された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「複数の切断工具を備えていて切断機械において前記切断工具を自動式に交換する装置であって、前記切断工具を収容するための第1の容器および別の容器が設けられている、装置において、ハウジング内に、前記第1および第2の容器と、前記切断工具を前記第1の容器から取り出してから使用位置で位置決めし、かつ摩耗した前記切断工具を使用位置から前記第2の容器内にもたらす手段と、が配置されていることを特徴とする、装置。」

2 補正の適否

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「切断工具」について、「切断工具は剃刀の刃であって、前記剃刀の刃は、切断平面に対して斜めにセットされた前記剃刀の刃の方向付けにおいて、4つの切断領域が使用されるように形成されている」ものであるとの限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

ア 引用文献1

(ア)原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、実願平1-131806号(実開平3-71891号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は理解の便のため当審にて付与。)

a 明細書第3ページ第20行-明細書第4ページ第9行

「通常スリッタは広幅のシート状物を同時に複数のスリット(テープ)にスリットするものであるから、1台のスリッタには複数の刃部が配置されている。
本考案ではスリッタの1つの刃部の交換を中心に説明するが、当然複数台の刃部の自動交換装置を使用するか又は順次に移動させて1台の自動交換装置によって所定の操作を繰返すことによって満足できる結果が得られることは勿論云うまでもない。」

b 明細書第4ページ第10-20行

「本考案における刃部の自動交換装置は、未使用の刃部を収容している「刃部供給箱」及び刃部をスリッタの所定位置に移動せしめる手段等を備えた「刃部供給部」と、スリッタの所定の位置に装着されている使用済の刃部を脱着し、また新しい(汚れていない)未使用の刃部をスリッタの所定の位置に装着する「刃部装着(固定)部」と、脱着した使用済の刃部を収納する「刃部収納箱」と刃部固定部から該刃部収納箱まで刃部を運搬する移動手段を伴った「刃部収納部」とから構成される。」

c 明細書第6ページ第1-10行

「第3図は刃部を自動的に交換する本考案装置の平面図である。未使用の刃部を多数箇収容している刃部供給箱6と、刃部を刃部供給箱から取出すための共通ベース26に設けたエアシリンダ9と押出し座8とによって刃部供給部IIが構成される。また刃部をスリッタに装着し、又は使用済の刃部をスリッタから取りはずすための刃部固定部IIIと使用済の刃部を収納する刃部収納部IVと前記刃部供給部IIによって本考案の自動装置が構成されている。」

d 明細書第6ページ第11-17行

「刃部供給箱6には保持具2に設けられた穴2bの2箇の穴間隔と同等の間隔で案内棒7及び7’が設けてあり、また刃部供給箱には刃部を押出すための押出し座8が貫通できるように切欠き部分25が設けてある(第4図参照)。そしてエアシリンダ9を駆動させると押出し座8が動き、刃部は案内棒に沿って移動できるように配備されている。」

e 明細書第7ページ第1-4行

「次に刃部固定部IIIでは刃部はスリッタの所定位置に誘導される。これは案内プレート14に取付けられているエアシリンダ10及び12によって刃部が移動され位置決めされる。」

f 明細書第8ページ第15-20行

「刃部収納部IVは使用済の刃部を移動手段により移動したものを収納する場所である。そして、この収納場所として刃部収納箱15が設けられている。この刃部収納箱には案内棒16,16’が備えてあり、保持具2の穴2bが貫行して、刃部Iが刃部収納箱に案内され収納される。」

g 明細書第9ページ第1-3行

「刃部を移動せしめる移動装置部分Vは、刃部を供給→装着(固定部)→収納の工程で移動せしめるものである。」

h 明細書第10ページ第9-13行

「本考案の刃部の自動交換装置によれば、予め組立てられた刃部を収納した供給箱6の装着と、空の収納箱15を装着することにより、供給箱6に収納した刃部の数だけ自動で刃部交換が行え、刃部交換作業の省力化及び生産性向上に繋がる。」

i 第3図

[図:0001382184000001.jpg]

j 第5図

[図:0001382184000002.jpg]

(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

上記(ア)a、b、c、f、i及びjからみて、刃部の自動交換装置は、刃部供給部、刃部装着部、刃部収納部を備え、スリッタに取り付けて使用されるものである。そして、複数の要素を備え、他の機器に取り付けて使用される装置がハウジングを備えることは技術常識であることから、刃部の自動交換装置は、ハウジングを備え、刃部供給部、刃部装着部、刃部収納部は、ハウジング内に配置されている、すなわち、ハウジング内に、刃部供給箱6および刃部収容箱15と、刃部を刃部供給箱6から取り出してから所定位置で装着し、かつ使用済の刃部を所定位置から刃部収容箱15内に運搬する移動手段と、が配置されていることは自明であるといえる。

(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。

「複数の刃部を配置していてスリッタにおいて前記刃部を自動的に交換する自動交換装置であって、前記刃部を収容するための刃部供給箱6および刃部収容箱15が装着されている、自動交換装置において、ハウジング内に、前記刃部供給箱6および刃部収容箱15と、前記刃部を前記刃部供給箱6から取り出してから所定位置で装着し、かつ使用済みの刃部を所定位置から刃部収容箱15内に運搬する移動手段と、が配置されている自動交換装置。」

(以下、「引用発明」という。)

イ 引用文献2

(ア)この審決で新たに引用する、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2008-110428号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は理解の便のため当審にて付与。)

a 【0008】

「・・・更に、正n角形の各辺に刃部を形成することで、ある一辺の刃部
が消耗しても、他の刃部を新たに利用することができ、刃物本体を長期にわたって使用することができる。・・・」

b 【0012】

「刃物本体の刃部は消耗品であるため、使用期限が存在する。使用期限が到来すると、その刃部は使用できないので他の刃部を使用することになるが、刃物本体は正n角形であるため、ある一辺の刃部が消耗しても他の刃部を使用することができる。そこで、刃物本体を角度(360/n)゜単位で回転させることができるようにすれば、刃物本体を所定角度回転させれば、他の刃部をあらためてセットすることができる。」

c 【0025】

「刃物本体20は、平面視でプレート状に形成されると共に正方形の外観形状を有している。刃物本体20の各辺にはパネルPを裁断するための刃部20aが形成される。刃部20aは全部で4箇所に形成されているが、実際に裁断を行なう場合には、上側の2つの刃部20aが使用される。図4(当審注:「図3」の誤記と認める。)には、パスラインL(パネルPが通過する下面位置)が図示されている。パネルPの下面と刃部20aとのなす角度は135゜(又は、ほぼ135゜)になっている。」

d 【0027】

「刃物回転モータ23は、刃物本体20を90゜単位で回転駆動するモータであり、刃物本体20の回転中心に取り付けられたプーリ20cとベルト24を介して刃物本体20を駆動する。刃物回転モータ23を起動するのは、刃物本体20のある刃部20aが消耗して他の刃部20aを使用しようとする場合であり、パネルPの裁断動作を行なう場合には起動されない。」

e 【0032】

「<裁断装置の作用>
次に、図3に示す裁断装置15の作用について図5により説明する。図5(a)は裁断開始前の待機状態を図示している。刃物本体20の大きさとしてはB=150~250mm、厚さは1.5~2.5mm、パネルPの厚みは10~50mmが例としてあげられる。(b)は裁断開始時点を示しており、刃部20a上の点20PがパネルPの幅方向端面に最初に衝突する。(c)は裁断途中の状態を示す図であり(d)は裁断終了後の状態を示す図である。このように刃物本体20は、パネルPの幅方向の一端側から他方側へと移動する。この裁断方法によれば、切粉を発生させずにパネルPを裁断することができる。また、材料をロスすることなく裁断することもできる。」

f 図3

[図:0001382184000003.jpg]

g 図4

[図:0001382184000004.jpg]

(イ)上記(ア)から、引用文献2には以下の技術的事項が記載されていると認められる。

上記(ア)e及びgからみて、刃物本体20の形状は、薄い板状のものであることから、刃物本体20は、「剃刀の刃」であるといえる。

上記(ア)c及びfからみて、刃物本体20は、パスラインLに対して斜めにセットされた刃物本体20の方向付けにおいて、4箇所の刃部20aが使用されるように形成されているといえる。

したがって、引用文献2には以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「刃物本体20は剃刀の刃であって、剃刀の刃は、パスラインLに対して斜めにセットされた剃刀の刃の方向付けにおいて、4箇所の刃部20aが使用されるように形成されていること。」

(以下、「引用文献2記載の技術的事項」という。)

(3)本件補正発明と引用発明との対比

ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりである。

(ア)引用発明の「複数の刃部」を「配置していて」は、本件補正発明の「複数の切断工具」を「備えていて」に相当し、以下同様に、「スリッタ」は、「切断機械」に、「自動的」に交換する「自動交換装置」は、「自動式」に交換する「装置」に相当する。

(イ)引用発明の「刃部供給箱6」は、本件補正発明の「第1の容器」に相当し、以下同様に、「刃部収容箱15」は、「第2の容器」に、「装着されている」は、「設けられている」に相当する。

(ウ)引用発明の「所定位置」で「装着し」は、本件補正発明の「使用位置」で「位置決めし」に相当し、以下同様に、「使用済の刃部」は、「摩耗した切断工具」に、「運搬する移動手段」は、「もたらす手段」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】

「複数の切断工具を備えていて切断機械において前記切断工具を自動式に交換する装置であって、前記切断工具を収容するための第1の容器および第2の容器が設けられている、装置において、ハウジング内に、前記第1および第2の容器と、前記切断工具を前記第1の容器から取り出してから使用位置で位置決めし、かつ摩耗した前記切断工具を使用位置から前記第2の容器内にもたらす手段と、が配置されている、装置。」

【相違点】

「切断工具に関して、本件補正発明では、剃刀の刃であって、剃刀の刃は、切断平面に対して斜めにセットされた剃刀の刃の方向付けにおいて、4つの切断領域が使用されるように形成されているのに対し、引用発明では、そのような構成を有していない点。」

(4)判断

以下、相違点について検討する。

ア 相違点について

引用文献2記載の技術的事項は、「刃物本体20は剃刀の刃であって、剃刀の刃は、パスラインLに対して斜めにセットされた剃刀の刃の方向付けにおいて、4箇所の刃部20aが使用されるように形成されていること。」(上記(2)イ(イ))というものであり、これにより、刃物本体を長期にわたって使用することができる(上記(2)イ(ア)a)。

引用発明の「刃部」と、引用文献2に記載された「刃物本体20」は、ワークを切断するためのものである点で機能・作用が共通しており、刃部本体が長期にわたって使用できるようになれば、コストを低下できることが当然に予測できるから、刃部本体を長期にわたり使用することは、引用発明においても内在する課題であるということができ、引用発明に引用文献2記載の技術的事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。

したがって、引用発明において、引用文献2記載の技術的事項を適用し、相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

イ 小括

したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

ウ 請求人の補正案についての付言

なお、請求人は、令和3年7月1日付け上申書にて、「前記4つの切断領域は、前記剃刀の刃の4つの象限に配置されている」という構成を追加することで限定を付加する補正案を提示しているが、引用文献2(上記イ(ア)a-d,fの記載事項)には、当該構成が記載されており、仮に、当該限定を付した発明に補正したとしても、当該発明は、当業者が容易に想到し得たものである。

3 本件補正についてのむすび

上記2のとおり、本件補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成29年12月12日に提出された翻訳文に記載された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]1(2)に記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

令和2年10月6日付け拒絶査定の理由は、本願は、令和2年2月5日付けの拒絶理由通知の理由1ないし5によって拒絶をすべきものである、というものであり、当該拒絶理由通知の理由2は、概略次のとおりのものである。

理由2

本願発明は、本願の優先日前に頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

引用文献1:実願平1-131806号(実開平3-71891号)のマイクロフィルム

3 当審の判断について

本願発明は、上記第2の[理由]2で補正の適否を検討した本件補正発明から、「切断工具」について、「切断工具は剃刀の刃であって、前記剃刀の刃は、切断平面に対して斜めにセットされた前記剃刀の刃の方向付けにおいて、4つの切断領域が使用されるように形成されている」との限定を削除したものである。

そうすると、本願発明と引用発明は、上記第2の[理由]2(3)「本件補正発明と引用発明との対比」と同様に対比でき、上記限定が削除されていることにより相違点が生じないことから、本願発明と引用発明に差異はなく、本願発明は引用発明と同一である。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-001935

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