特許拒絶査定不服審判
2024-013773
用紙処理装置及び画像形成システム
- 審判番号
- 2024-013773
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2023-040943
- 請求日
- 2024年08月27日
- 審決日
- 2026年04月22日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コニカミノルタ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人鷲田国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 青木 良憲
- 審判官 田々井 正吾
- 分類
- P18 .121-WZ (B26D) / P18 .537-WZ (B26D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2023-40943「用紙処理装置及び画像形成システム」拒絶査定不服審判事件〔令和5年6月23日出願公開、特開2023-87686〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
この出願(以下「本願」という。)は、平成31年3月18日に出願された特願2019-49895の一部を、令和5年3月15日に新たな特許出願としたものであって、出願以後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
1 令和5年 3月15日
上申書の提出
2 令和5年11月28日付け
拒絶の理由を通知
3 令和6年 4月 1日
意見書の提出
4 令和6年 5月20日付け
拒絶をすべき旨の査定
5 令和6年 8月27日
審判請求書及び手続補正書の提出
6 令和8年 1月 7日付け
拒絶の理由を通知(以下、この通知を「当審拒絶理由通知」という。)
7 令和8年 3月16日
意見書及び手続補正書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~10に係る発明は、令和8年3月16日提出の手続補正書により補正をした特許請求の範囲の請求項1~10に記載した事項により特定されるとおりのものであって、このうち、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、請求項1に記載した次の事項(下線は補正箇所に付した。)により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
用紙を成果物と断裁屑とに断裁する用紙処理装置であって、
前記用紙を搬送する搬送部と、
前記用紙を用紙搬送方向に直交する方向に断裁する断裁機と、
前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが第1の長さの断裁屑が落下する第1の落下スペースと、
前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが前記第1の長さより長い第2の長さの断裁屑が落下する第2の落下スペースと、
前記第1の落下スペースを落下した前記第1の長さの断裁屑、および、前記断裁された後に前記第2の落下スペースに達するまで送られて、搬送経路を切り替える切替ガイドによって前記第2の落下スペースを落下した前記第2の長さの断裁屑を回収する回収容器と、
を備える用紙処理装置。」
第3 当審拒絶理由通知
1 理由の概要
当審拒絶理由通知における拒絶理由のうち、本願発明1に対する進歩性欠如についての理由(理由B)の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)本願発明1は、引用文献1~2(下記2参照)に記載された発明に基いて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 引用文献等一覧
(1)特開2017-185582号公報
(2)特開2002-356045号公報
なお、本願は、第1のとおり、いわゆる分割出願であって、もとの特許出願の時である平成31年3月18日に出願したものとみなすが、上記(1)~(2)の文献は、いずれもこの日より前に公知となったものである。
第4 当審の判断
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項(下線は当審で付与。以下同じ。)
ア 発明の詳細な説明
「【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙裁断装置及びその裁断方法に関する。
・・・
【0005】
又、前記裁断時に用紙の切除部分がニップされない場合の問題点を解決する施策として、上記特許文献2に記載の裁断装置のように、裁断刃の前後にある搬送ローラ対の内側に接離自在な押圧部材を備えて、裁断時に用紙を押さえながらカッター(裁断刃)で裁断することも考えられるが、前記裁断により生じた不要部分である切除片は、搬送経路上に残ってしまうか又は、加工品と共に、搬送経路下流側に搬送されてしまう。
【0006】
本発明の目的は、切除領域が搬送ローラ対にニップされないときでも、適正に用紙を裁断できる用紙裁断装置を提供することであり、さらに、前記裁断により生じた不要部分である切除片を、搬送経路上の下流部に移送することなく、裁断部下方の切除片箱に落下させて確実に回収することである。
・・・
【0028】
[用紙加工装置100の全体構成]
図1は本発明に係る用紙裁断装置を備えた用紙加工装置の模式縦断面図である。この図1において、用紙加工装置100は、装置本体1の用紙Zの搬送方向Fの上流端部に給紙部3を備え、搬送方向Fの下流端部に紙受け部2を備え、該給紙部3と紙受け部2との間に、略水平な搬送経路5が構成されている。給紙部3には給紙ローラ対8が配置され、搬送経路5には、複数の搬送ローラ対9、10、11、12、13等が搬送方向Fに間隔をおいて配置されると共に、主たる加工機構として、用紙搬送上流側から用紙搬送下流側に向けて、スリット形成機構20、折り型形成機構21及び裁断機構22が配置されている。裁断機構22、搬送ローラ対12、13及び、用紙保持手段70は裁断装置101を構成している。また、装置本体1内の下端部には、スリット、裁断等の加工により発生する屑紙である切除片Jを収容する切除片箱23が配置されている。
・・・
【0049】
(8)裁断装置101では、裁断機構22により各裁断線Cf、Cm1、Cm2、Crで順次裁断し、生じた切除片Jは下方の切除片箱23に落下し、加工品Qは紙受け部2に搬送され、積載される。
・・・
【0065】
[裁断装置101の第一の実施形態]
(裁断装置101の基本構成)
裁断装置101は、主に、裁断機構22、搬送ローラ対12、13及び、用紙保持手段70から構成されている。
詳細には、図5A、図2のように、裁断機構22は、用紙搬送幅方向Wに延び、相対向する一対の裁断刃220を備える。一方の裁断刃220は上側可動刃22Aにより、他方の裁断刃220は下側固定刃22Bにより構成されており、上側可動刃22Aが下側固定刃22Bに対し接触離間し、用紙Zを搬送方向Fと直交する搬送幅方向Wに裁断する。上側可動刃22Aは、動力伝達機構を介してモータ等の裁断駆動部50に連結されている。
【0066】
又、用紙搬送手段として、用紙搬送経路5を介して上下に対向配置されると共に、裁断位置を挟んで用紙搬送方向の上流側及び下流側にそれぞれ配置された一対の搬送ローラ12、13を備えている。
【0067】
又、用紙保持手段70は、前記一対の搬送ローラ12、13の内側であって、用紙の裁断位置を挟んで用紙搬送方向の上流側及び/又は下流側に配置され、裁断時に用紙を搬送経路上に保持する手段である。前記用紙保持手段70は、用紙の搬送経路上側に設置される固定押さえ部材71a、71bと、前記用紙の搬送経路を隔てて下側に、前記固定押さえ部材71a、71bと対向するように設置されると共に、前記固定押さえ部材に対して接離自在に設けられた可動押さえ部材72a、72bとから構成される。
・・・
【0069】
(裁断装置101の動作)
次に、上記構成の裁断装置101の動作について順を追って説明する。裁断装置101は、以下(1)~(3)に示すように、可動押さえ部材72a、72bを「退避位置」、「押圧位置」、「廃棄位置」に選択的に移動させる制御手段を備える。
(1)図5Aは、可動押さえ部材72a、72bが「退避位置」にある状態を示している。
退避位置においては、図5Aに示すように、可動押さえ部材72a、72bと固定押さえ部材71a、71bとの間に隙間を形成しており、一対の搬送ローラ12により、この隙間を通して、用紙Zを所定の裁断位置に向けて(搬送方向Fに)供給する。
好ましくは、可動押さえ部材72a、72bは、図5Aのように、水平状態ではなく、搬送方向上流側に向かって傾斜させるのがよい。前記用紙Zを供給する際、用紙先端部が突き当たってジャムとなることを防ぐ為である。
【0070】
(2)図5Bは、可動押さえ部材72a、72bが「押圧位置」にある状態を示している。
用紙Zが裁断位置(裁断線C(前裁断線Cf))に達すると、一対の搬送ローラ12による搬送を停止すると共に、前記可動押さえ部材72a、72bが固定押さえ部材71a、71bに向けて移動し、図5Bに示すように、用紙Zを可動押さえ部材と固定押さえ部材71a、71bとの間に挟持状態に押圧する。そして、前記挟持状態のまま、裁断機構22の上側可動刃22Aが下側固定刃22Bに向けて移動し、用紙Zの裁断位置(裁断線C(前裁断線Cf))において裁断する。
【0071】
(3)図5Cは、可動押さえ部材72a、72bが「廃棄位置」にある状態を示している。
前記用紙Zの裁断後、前記可動押さえ部材72a、72bは、前記退避位置よりさらに固定押さえ部材71a、71bから離れる方向に移動し、図5Cに示すように、下方に向けて傾斜した姿勢となる。したがって、用紙Zが裁断位置(裁断線C(前裁断線Cf))において裁断され生じた切除片J(前端切除領域Kf)は、下方の切除片箱23にスムーズに落下し、収納される。
【0072】
図5Dのように、切除片J(後端切除領域Kr)が用紙Zの後端部に配置される場合についても、裁断装置101は、前記(1)~(3)と同様の動作を行うが、(3)の「廃棄位置」においては、切除片Jは、可動押さえ部材72bの傾斜により、下方の切除片箱23にスムーズに落下し、収納される。尚、(1)の「退避位置」においては、用紙Zの先端部は、一対の搬送ローラ12から一対の搬送ローラ13への受渡しにより、隙間を通して、所定の裁断位置に向けて(搬送方向Fに)供給される。
・・・
【0092】
前述の第一、第二の実施形態において、裁断する切断領域(Kf、Km、Kr)の用紙搬送方向長さが、所定以上長い場合は、可動押さえ部材72aが「廃棄位置」に配置されても、裁断され生じた切除片Jは、可動押さえ部材72aに引っかかって、下方の切除片箱23にスムーズに落下しない。
【0093】
その場合は、図11に示すように、用紙先端部Zaの移送前に可動押さえ部材72aを「廃棄位置」に配置し、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送するように構成してもよい。尚、このとき、可動押さえ部材72bは「退避位置」から「押圧位置」に移動する。
【0094】
又は、図12に示すように、裁断装置101の搬送方向下流側にリジェクトゲート235をさらに備え、リジェクトゲート235を退避位置(実線位置)に配置し、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送するように構成してもよい。」
イ 図面
「【図1】
[図:0001436691000001.jpg]
・・・
【図5A】
[図:0001436691000002.jpg]
【図5B】
[図:0001436691000003.jpg]
【図5C】
[図:0001436691000004.jpg]
【図5D】
[図:0001436691000005.jpg]
【図11】
[図:0001436691000006.jpg]
【図12】
[図:0001436691000007.jpg]
」
(2) 引用文献1の記載事項の整理
ア 引用文献1には、段落【0028】、【0049】、図1の記載からみて、用紙Zを加工品Qと切除片Jとに裁断する用紙加工装置100について記載されている。
イ 段落【0065】~【0066】、図1、図5A~Dの記載からみて、上記アの用紙加工装置100では、上記用紙Zを搬送ローラ12,13が搬送し、裁断装置101が、この用紙Zを搬送方向Fと直交する搬送幅方向Wに裁断する。
ウ 段落【0069】~【0072】、図5A~Dの記載からみて、用紙加工装置100では、可動押さえ部材72a、72bが下方に向けて傾斜することで、裁断により生じた搬送方向Fの長さが所定以上長くはない切除片J(以下「短切除片」という。)が落下するようにスペース(以下、次のエのスペースと区別するために「第1のスペース」という。)が生じることが理解できる。
エ 段落【0092】、【0094】、図12の記載からみて、用紙加工装置100では、リジェクトゲート235が退避位置に配置されることで、裁断により生じた搬送方向Fの長さが所定以上長い切除片J(以下「長切除片」という。)を裁断するためにリジェクトゲート235の下方にスペース(以下、上記ウのスペースと区別するために「第2のスペース」という。)が生じることが理解できる。
オ 段落【0049】、【0071】~【0072】、【0092】、【0094】、図5C~D、図12の記載からみて、用紙加工装置100は、短切除片、および、加工品Qを紙受け部2に搬送する他の位置<図12の点線位置>から切り替えられて退避位置<図12の実線位置>に配置されるリジェクトゲート235によって、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送してから裁断されて落下した長切除片を収容する切除片箱23を備える。
(3)引用文献1に記載された発明
上記(1)~(2)より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているということができる。
「 用紙Zを加工品Qと切除片Jとに裁断する用紙加工装置100であって、
前記用紙Zを搬送する搬送ローラ12、13と、
前記用紙Zを搬送方向Fと直交する搬送幅方向Wに裁断する裁断装置101と、
前記裁断により生じた短切除片が落下するように可動押さえ部材72a、72bが下方に向けて傾斜することで生じる第1のスペースと、
前記裁断により生じた長切除片を裁断するためにリジェクトゲート235が退避位置に配置されることで生じる第2のスペースと、
前記短切除片、および、加工品Qを紙受け部2に搬送する他の位置<図12の点線位置>から切り替えられて前記退避位置<図12の実線位置>に配置されるリジェクトゲート235によって、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送してから裁断されて落下した前記長切除片を収容する切除片箱23と、
を備える用紙加工装置100。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
ア 発明の詳細な説明
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像形成装置及び画像形成方法並びに記録媒体に関し、更に詳しくは、長手方向に搬送される帯状の記録媒体に複数の画像を並べて記録し、画像記録後に各画像毎に記録媒体を切断して画像プリントを作成する画像形成装置及び画像形成方法並びに記録媒体に関するものである。
・・・
【0026】各画像36の側縁36bから幅tだけ離れた切断位置CL2が第2カッタ17の切断位置に達すると、コントローラ20がドライバ55を介して第2カッタ17を動作させて記録紙25aを切断する。これにより、各画像毎に記録紙25aが切り離されて各画像36の周囲に幅tの縁41が形成されているプリント56が得られる。切り落とされた余白37a~37n又は余白39a~39nは、第2カッタ17の下方に配置された屑受け57に収納される。
・・・
【0033】第2カッタ17の切断位置に記録紙25aの切断位置CL2が達すると、コントローラ20がドライバ55を介して第2カッタ17を動作させて記録紙25aを切断する。これにより、各画像毎に記録紙25aが切り離されて、画像36の周囲に幅tの縁41が形成されたプリント56となる。プリント56は、排紙ローラ対61によってソータ19に排出される。
【0034】また、余白40であったシート状の記録紙25cが搬送される場合には、搬送路切り換え板60が集積位置に回動し、記録紙25cを余白集積ボックス18に向かってガイドして集積する。」
イ 図面
「【図2】
[図:0001436691000008.jpg]
」
(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)より、引用文献2には、次の技術的事項(以下「引用文献2記載の技術的事項」という。)が記載されているということができる。
「記録紙25aを画像プリント56と余白である記録紙25cとに切断する画像形成装置において、
記録紙25aを第2カッタ17で切断し、記録紙25aから切り離されたプリント56は、排紙ローラ対61によってソータ19に排出し、
余白である記録紙25cを搬送する場合は、搬送路切り換え板60を集積位置に回動して下方の余白集積ボックス18にガイドして落下させること。」
3 本願発明1と引用発明1の対比
(1)引用発明1の「用紙Z」が本願発明1の「用紙」に相当し、以下同様に、「加工品Q」が「成果物」に、「切除片J」が「断裁屑」に、「裁断する」ことが「断裁する」ことに、「用紙加工装置100」が「用紙処理装置」に、「搬送ローラ12、13」が「搬送部」に、「搬送方向Fと直交する搬送幅方向W」が「用紙搬送方向に直交する方向」に、「裁断装置101」が「断裁機」に、それぞれ相当する。
(2)引用発明1の「短切除片」は、本願発明1の「用紙搬送方向の長さが第1の長さの断裁屑」に相当し、引用発明1の「前記裁断により生じた短切除片が落下するように可動押さえ部材72a、72bが下方に向けて傾斜することで生じる第1のスペース」は、本願発明1の「前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが第1の長さの断裁屑が落下する第1の落下スペース」に相当する。
(3)引用発明1の「前記裁断により生じた長切除片」は、本願発明1の「前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが前記第1の長さより長い第2の長さの断裁屑」に相当する。そして、引用発明1の「前記裁断により生じた長切除片を裁断するためにリジェクトゲート235が退避位置に配置されることで生じる第2のスペース」と、本願発明1の「前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが前記第1の長さより長い第2の長さの断裁屑が落下する第2の落下スペース」とを対比すると、両者は第1の落下スペースよりも下流にある「下流スペース」であることが把握され、「前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが前記第1の長さより長い第2の長さの断裁屑を処理するための下流スペース」という点に限り一致する。
(4)引用発明1の「前記短切除片、および、加工品Qを紙受け部2に搬送する他の位置<図12の点線位置>から切り替えられて前記退避位置<図12の実線位置>に配置されるリジェクトゲート235によって、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送してから裁断されて落下した前記長切除片を収容する切除片箱23」と、本願発明1の「前記第1の落下スペースを落下した前記第1の長さの断裁屑、および、前記断裁された後に前記第2の落下スペースに達するまで送られて、搬送経路を切り替える切替ガイドによって前記第2の落下スペースを落下した前記第2の長さの断裁屑を回収する回収容器」とを対比すると、引用発明1において「用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送」することで、「長切除片」を「第2のスペース」に達するまで送ることになるから、両者は「前記第1の落下スペースを落下した前記第1の長さの断裁屑、および、前記下流スペースに達するまで送られた前記第2の長さの断裁屑を回収する回収容器」という点に限り一致する。
4 本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点
上記3の対比より、本願発明1と引用発明1は、次の(1)の一致点で一致し、(2)の相違点で相違する。
(1)一致点
用紙を成果物と断裁屑とに断裁する用紙処理装置であって、
前記用紙を搬送する搬送部と、
前記用紙を用紙搬送方向に直交する方向に断裁する断裁機と、
前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが第1の長さの断裁屑が落下する第1の落下スペースと、
前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが前記第1の長さより長い第2の長さの断裁屑を処理するための下流スペースと、
前記第1の落下スペースを落下した前記第1の長さの断裁屑、および、前記下流スペースに達するまで送られた前記第2の長さの断裁屑を回収する回収容器と、
を備える用紙処理装置。
(2)相違点
本願発明1は、
<a>「前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが前記第1の長さより長い第2の長さの断裁屑が落下する第2の落下スペース」を備え、
<b>回収容器が「前記第1の落下スペースを落下した前記第1の長さの断裁屑」、および、「前記断裁された後に前記第2の落下スペースに達するまで送られて、搬送経路を切り替える切替ガイドによって前記第2の落下スペースを落下した前記第2の長さの断裁屑」を「回収する」のに対して、
引用発明1は、
<a′>第2のスペースに「前記断裁により生じた前記用紙搬送方向の長さが前記第1の長さより長い第2の長さの断裁屑」が落下するか不明であり、
<b′>切除片箱23が「前記第1の落下スペースを落下した前記第1の長さの断裁屑」、および、「前記第2の長さの断裁屑」を「回収する」ものの、この「第2の長さの断裁屑」が「前記断裁された後に前記第2の落下スペースに達するまで送られて、搬送経路を切り替える切替ガイドによって前記第2の落下スペースを落下した」ものであるか否かは不明である点。
5 相違点の検討
(1)引用発明1における動機
引用文献1には、切断領域が所定以上長い場合に、可動押さえ部材72aを図5Cの「廃棄位置」に配置しても、切除片Jが可動押さえ部材72aに引っかかってスムーズに下方に落下しない(段落【0092】)ことから、リジェクトゲート235を設けて、図12の退避位置に配置して、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送すること(段落【0094】)が記載されている一方、裁断後の切除片Jをどこから落下させるのかは、明記されていない。
これに対して、裁断後の切除片Jを放置することはできないし、上記の図12におけるリジェクトゲート235は裁断後の切除片Jを下方に落下させることに対する障害を克服するためのものであるから、引用発明1には、長切除片(搬送方向Fの長さが所定以上長い切除片J)を、どこかのスペースから下方に落下させるように構成しようとする動機が必然的に存在することを当業者であれば認識できる。
(2)引用文献2記載の技術的事項について
ここで、引用文献2記載の技術的事項を参照すると、「記録紙25aを画像プリント56と余白である記録紙25cとに切断する画像形成装置において、記録紙25aを第2カッタ17で切断し、記録紙25aから切り離されたプリント56は、排紙ローラ対61によってソータ19に排出し、余白である記録紙25cを搬送する場合は、搬送路切り換え板を集積位置に回動して下方の余白集積ボックス18にガイドして落下させること。」(上記2(2))というものであり、記録紙25aを切断した後のプリント56と記録紙25c(余白)を下流側に搬送し、搬送路切り換え板60により、記録紙25cを下方にガイドして下方の余白集積ボックス18に落下させることが示されている。
(3)引用発明1への引用文献2記載の技術的事項の適用について
引用発明1と引用文献2記載の技術的事項は、用紙を切断した後の成果物とそれ以外を選別する技術という点で、技術分野が共通するといえ、上記(1)のとおり引用発明1には、長切除片を、どこかのスペースから下方に落下させるように構成する動機があるところ、引用発明1のリジェクトゲート235は、退避位置に配置するか否かで、成果物を搬送する経路を切り替えているから、引用文献2記載の技術的事項に接した当業者であれば、引用発明1における長切除片について、引用文献2記載の技術的事項の記録用紙25cと同様に、下流側に搬送して、リジェクトゲート235によって下方にガイドして、下方に落下させるように構成することを容易に想到できるといえる。
そして、このように、長切除片を、リジェクトゲート235の下方に落下させるならば、リジェクトゲート235の下方に、長切除片を落下させるために、「断裁により生じた用紙搬送方向の長さが前記第1の長さより長い第2の長さの断裁屑が落下する第2の落下スペース」を備えるようにすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。
(4)相違点の検討のまとめ
したがって、上記相違点は、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
6 請求人の意見書における主張
当審拒絶理由通知における拒絶理由に対して、請求人が令和8年3月16日に提出した意見書(以下、単に「意見書」という。)における理由B(進歩性)に関する主張について検討する。
(1)請求人の主張の概要
ア 第2の落下スペースについて
当審拒絶理由通知において、「本願発明1と引用発明1の一致点」として、切除片Jの落下スペースについて、図12の「退避位置に配置されることで生じるスペース」を「第2の落下スペース」と判断したことは誤りである。
イ リジェクトゲート235について
引用文献1の図12の「リジェクトゲート235」が言及するのは「退避位置」であり「廃棄位置」ではない。
ウ 引用文献2を引用文献1に適用する阻害要因について
引用文献1では、「断裁部下方」の切除片箱に確実に落下させることを目的とするのに対して、引用文献2では、一部の切除片(特に余白を含む長い切除片)は切断部下方とは異なる集積ボックスに落下させることから、引用文献2の落下場所は、引用文献1の目的とは異なるため、引用文献2を引用文献1に適用することには阻害要因が存在する。
(2)上記(1)の主張の検討
ア 上記(1)アの主張について
上記3~4の本願発明1と引用発明1の対比、一致点及び相違点の認定においては、当審拒絶理由通知に対して提出された手続補正書の内容、及び意見書の特に上記(1)アの主張を考慮し、引用発明1の第2のスペースについて、第2の長さの断裁屑が落下するか否かは不明であると相違点を認定した上で、上記5で容易と判断したものである。
請求人は、意見書において、当該主張に関し、引用発明1が、「裁断部下方の切除片箱に落下させて確実に回収すること」が目的であると理解でき、図12の状態から切除片Jを落下させた場合、断裁機構22から搬送ローラ対13の上流に搬送されて落下し、図12の状態から搬送ローラ対13の上流で切除片Jを落下させるのであれば、落下場所は「断裁部下方」とはならない旨の説明をする。
しかしながら、切除片Jが「断裁機構22から搬送ローラ対13の上流に搬送されて落下」することについて、引用文献1には示されていない。すなわち、用紙先端部Zaを下方にガイドしながら裁断位置まで移送してから裁断され」る切除片Jを、裁断機構22のさらに上流に逆送して落下させることについては、落下できる機構についても具体的な開示がなく、記載も示唆もされていない。また、このような逆送が用紙処理にもたらす複雑化や非効率性等の不利益を考慮すれば、上記4(2)の相違点では、引用発明1の第2のスペースに第2の長さの断裁屑が落下するか否かは不明であると認定したものの、図12に関連する段落【0092】~【0094】の記載からみて、むしろ、裁断した切除片Jをそのまま下流に移送して、第2のスペースから落下させる蓋然性が高いともいえる。
したがって、上記(1)アの主張を考慮しても、依然として本願発明1の容易想到性は否定されない。
イ 上記(1)イの主張について
請求人は、当該主張に関し、段落【0089】に「押圧位置と退避位置以外に、廃棄位置をさらに備えた」と記載されているとおり、「退避位置」と「廃棄位置」は、引用文献1では明確に異なっており、図12のリジェクトゲート235の状態(退避位置)から前方に切除片Jを搬送して切除片Jを廃棄すると理解することはできない旨を主張する。
しかしながら、上記段落【0089】の「押圧位置」、「退避位置」及び「廃棄位置」は、他の段落【0069】や【0090】、図5A~Dの記載も参酌すれば、可動押さえ部材72a、72bが取り得る位置である。
これに対して、ゲート235は、図12に示されているように、退避位置<図12の実線位置>と、加工品Qを紙受け部2に搬送する他の位置<図12の点線位置>に切り替えられるものであるから、上記の可動押さえ部材72a、72bとは動作形態が異なり、その取り得る位置について「退避位置」という用語が共通で用いられるとしても、その技術的意義が同じであるといはいえない。ゲート235についてみれば、加工品Qを紙受け部2に搬送する他の位置として、「前方に切除片Jを搬送して切除片Jを廃棄する」ことが排除されるものではない。
したがって、ゲート235が退避位置<図12の実線位置>と、加工品Qを紙受け部2に搬送する他の位置<図12の点線位置>に切り替えられるだけであるという理由で、ゲート235により「前方に切除片Jを搬送して切除片Jを廃棄する」ことがないとはいえず、請求人の上記(1)イの主張は採用することができない。
ウ 上記(1)ウの主張について
請求人が主張するとおり、引用文献1の段落【0006】には、「前記裁断により生じた不要部分である切除片を、搬送経路上の下流部に移送することなく、裁断部下方の切除片箱に落下させて確実に回収することである。」と記載されているが、その具体的手段は、段落【0071】、図5Cに記載されているように、可動押さえ部材72a、72bが「廃棄位置」にある状態を取ることで、「裁断され生じた切除片J(前端切除領域Kf)は、下方の切除片箱23にスムーズに落下し、収納される」というものである。
これに対して、引用発明1の段落【0094】、及び図12に記載された技術は、上記具体的手段が適切に機能しない、すなわち、段落【0092】に記載されているように、「可動押さえ部材72aが「廃棄位置」に配置されても、裁断され生じた切除片Jは、可動押さえ部材72aに引っかかって、下方の切除片箱23にスムーズに落下しない」場合に機能するものであって、切除片Jは、少なくとも裁断部(例えば、可動押さえ部材72a、72b)の下方には落下せず、他の位置から落下するのであるから、引用文献2に「一部の切除片(特に余白を含む長い切除片)は切断部下方とは異なる集積ボックスに落下させる」ことが記載されているからといって、引用発明1に引用文献2記載の技術的事項を適用することの阻害要因にはならないことが明らかである。
したがって、上記(1)ウの主張によっても、本願発明1の容易想到性を否定するには至らない。
7 小括
上記1~6より、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明(本願発明1)は、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、すなわち当審拒絶理由通知の理由B(進歩性)により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明、及び他の理由(理由A(明確性))について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2024-013773