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特許拒絶査定不服審判

2021-001673

薄膜樹脂フィルムとレイアップにおけるその使用

審判番号
2021-001673
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-522452外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2021年02月05日
審決日
2022年07月05日
公報発行日
2022年12月28日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (H05K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-522452「薄膜樹脂フィルムとレイアップにおけるその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月14日国際公開、WO2016/007718、平成29年 8月10日国内公表、特表2017-522740〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 10項目
理 由

1.手続の経緯

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本願は、2015年7月9日(パリ条約に基づく優先権主張外国庁受理 2014年7月10日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年1月28日付け拒絶理由通知に対する応答時、令和1年8月2日に手続補正がなされ、同年11月29日付け拒絶理由通知に対する応答時、令和2年4月8日に手続補正がなされたが、同年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和3年2月5日に拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされ、当審による同年9月14日付け拒絶理由通知に対する応答時、令和4年2月17日に手続補正がなされたものである。

2.本願発明

本願の請求項1ないし23に係る発明は、令和4年2月17日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

なお、請求項1については、上記令和4年2月17日の手続補正によって補正はされていない。

「【請求項1】
第1平坦表面および第2平坦表面を有し、約1ミル~2ミルの厚みを有するbステージ化樹脂ベース層、ベース層の第1平坦表面上に配置された第1保護層、およびベース層の第2平坦表面上に配置された第2保護層を含み、
第1保護層および第2保護層が、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートから構成され、約1ミル~約5ミルの厚みを有し、ベース層から分離可能に設けられている、樹脂フィルム生成物。」

3.拒絶の理由の概要

請求項1に対して、令和3年9月14日付けで当審が通知した拒絶理由のうち「理由1(進歩性)」の概要は次のとおりである。

本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記

引用文献1:特開2006-313834号公報
引用文献2:特開平10-128897号公報
引用文献3:特開2001-310428号公報

4.引用文献1の記載および引用発明

当審による拒絶の理由に引用された上記引用文献1(特開2006-313834号公報)には、「配線回路基板の製造方法」について、図面とともに以下の各記載がある。なお、下線は当審で付与した。

(1)「【請求項1】
絶縁層上に配線層を有するとともに前記配線層を電磁的に遮蔽する電磁波シールド層を有するシールド配線基板を準備する工程と、
樹脂層および離型シートの積層体からなる転写シートを準備する工程と、
前記シールド配線基板の前記電磁波シールド層上に前記転写シートの前記樹脂層を転写する工程とを備えることを特徴とする配線回路基板の製造方法。」
(2)「【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
本発明に係る配線回路基板の製造方法は、絶縁層上に配線層を有するとともに配線層を電磁的に遮蔽する電磁波シールド層を有するシールド配線基板を準備する工程と、樹脂層および離型シートの積層体からなる転写シートを準備する工程と、シールド配線基板の電磁波シールド層上に転写シートの樹脂層を転写する工程とを備えたものである。」
(3)「【0026】
このようにして、ベース絶縁層1、グランド用配線層2a、信号用配線層2b、信号用配線層2bの端子部2c、カバー絶縁層3および電磁波シールド層からなるシールド配線基板10が形成される。
【0027】
一方、図3に示すように、たとえばポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型シート6上に樹脂溶液を塗布し乾燥させることにより、樹脂層5および離型シート6からなる転写シート7を形成する。離型シート6の厚みは25~50μmであることが好ましい。樹脂層5の厚みは5~50μmであることが好ましく、5~35μmであることがより好ましい。
【0028】
樹脂溶液は、たとえばメチルエチルケトンを溶媒とし、たとえばエポキシ樹脂を溶解することによって得られる。樹脂溶液に可撓性付与剤としてたとえばアクリロニトリルブタジエンゴム等を添加してもよい。樹脂溶液の固形分濃度は20~50重量%であることが好ましい。また、離型シート6の表面はシリコーン処理等により離型処理される。それにより、離型シート6は樹脂層5から容易に剥離することができる。
【0029】
次に、図4に示すように、樹脂層5の表面を電磁波シールド層4の上面に重ねて加熱および加圧することにより転写シート7を電磁波シールド層4上にラミネートする。この場合、温度は50℃~150℃とし、圧力は0.5~5MPaとする。その後、温度を130℃~170℃とし、約3時間の熱硬化処理を行う。
【0030】
熱硬化処理終了後、図5に示すように離型シート6を剥離する。その後、電解めっきにより露出した端子部2cに電解金めっき層8を形成する。【0031】 このようにして、シールド配線基板10および樹脂層5および電解金めっき層8からなる配線回路基板20が形成される。」
(4)「【0042】
なお、転写シート7を形成した後、その転写シートをすぐに電磁波シールド層4上にラミネートせずに保存する場合は、図6に示すように、樹脂層5上にさらに他の離型シート8を形成してもよい。この場合、後に転写シート7を電磁波シールド層4上にラミネートする際には離型シート8を剥離してから使用する。」
(5)「
[図:0001391299000001.jpg]
」

上記(1)ないし(5)から以下のことがいえる。

・上記引用文献1に記載の「配線回路基板の製造方法」は、上記(1)、(2)の記載によれば、電磁波シールド層を有するシールド配線基板を準備する工程と、樹脂層および離型シートの積層体からなる転写シートを準備する工程と、前記シールド配線基板の前記電磁波シールド層上に前記転写シートの前記樹脂層を転写する工程とを備えてなるものである。

・上記(3)の記載によれば、転写シートは、樹脂層および離型シート6からなり、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型シート6上に樹脂溶液を塗布し乾燥させることにより形成されるものである。そして、離型シート6の厚みは25~50μmであることが好ましく、樹脂層の厚みは5~50μmであることが好ましいものである。

・上記(4)の記載、及び上記(5)(【図6】)によれば、樹脂層上にさらに他の離型シート8を形成してもよく、この場合、後に転写シート7をシールド配線基板の電磁波シールド層上にラミネートする際には離型シート8を剥離してから使用される。そして、上記(3)の記載によれば、樹脂層は、シールド配線基板上にラミネートされたのちに熱硬化処理されるものである。

以上のことから、特に図6に示される樹脂層5上にさらに他の離型シート8を形成してなる「転写シート」に着目し、これを発明として捉えると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「離型シート6と、前記離型シート6上に樹脂溶液を塗布し乾燥させることにより形成した5~50μmの厚みを有する樹脂層と、前記樹脂層上に形成した離型シート8とからなる転写シートであって、
前記離型シート6及び前記離型シート8は、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなり、厚みが25~50μmであり、
前記離型シート8が剥離され、シールド配線基板上に樹脂層がラミネートされたのちに熱硬化処理される、転写シート。」

5.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「転写シート」は、離型シート6と、離型シート6上に形成された樹脂層と、その樹脂層上に形成された離型シート8とからなり、「離型シート6」、「樹脂層」、及び「離型シート8」の順に配置されてなるものである。そして、引用発明における「離型シート6」及び「離型シート8」にあっても、樹脂層から剥離されるまでの間は当該樹脂層の表面を保護する働きがあることは自明なことであり、一方、本願発明でいう「第1保護層」及び「第2保護層」は、本願明細書の記載や図面(例えば段落【0034】、【0044】、【0048】、図2D)を参照するに、樹脂ベース層をプリント回路基材基板の表面に対して適用するために樹脂ベース層から除去され得るものであることを踏まえると、引用発明における「離型シート6」、「樹脂層」、及び「離型シート8」は、それぞれ本願発明でいう「第1保護層」、「樹脂ベース層」、及び「第2保護層」に相当するものである。

また、引用発明における「樹脂層」は、離型シート6と離型シート8の間に設けられてなるものであり、これら離型シートとの接触面が平坦な表面であることも普通のことである。

したがって、本願発明と引用発明とは、「第1平坦表面および第2平坦表面を有し、所定の厚みを有する樹脂ベース層、ベース層の第1平坦表面上に配置された第1保護層、およびベース層の第2平坦表面上に配置された第2保護層」を含むものである点で共通する。

ただし、樹脂ベース層について、本願発明では「bステージ化」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定を有していない点で相違する。

さらに、樹脂ベース層の所定の厚みについて、本願発明1では「約1ミル~2ミル」と特定するのに対し、引用発明では「5~50μm」(換算すると「約0.2ミル~約2.0ミル」)である点で相違する。

(2)引用発明における「離型シート6」及び「離型シート8」は、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなるものであり、「離型」シートであるから、樹脂層から分離可能なものであることは自明なことである。

また、引用発明における「離型シート6」及び「離型シート8」の厚みは、「25~50μm」であり、換算すると、「約1.0ミル~約2.0ミル」であるから、本願発明で特定する「約1ミル~約5ミル」の範囲に含まれる。

したがって、本願発明と引用発明とは、「第1保護層および第2保護層が、ポリエチレンテレフタレートから構成され、約1ミル~約5ミルの厚みを有し、ベース層から分離可能に設けられている」点で共通する。

ただし、ポリエチレンテレフタレートから構成される第1保護層および第2保護層について、本願発明では「二軸延伸」のものであることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定がない点で相違する。

(3)そして、引用発明におけるこれら離型シート6、樹脂層、及び離型シート8とからなる「転写シート」は、本願発明でいう「樹脂フィルム生成物」に相当するものである。

よって上記(1)ないし(3)によれば、本願発明と引用発明とは、

「第1平坦表面および第2平坦表面を有し、所定の厚みを有する樹脂ベース層、ベース層の第1平坦表面上に配置された第1保護層、およびベース層の第2平坦表面上に配置された第2保護層を含み、
第1保護層および第2保護層が、ポリエチレンテレフタレートから構成され、約1ミル~約5ミルの厚みを有し、ベース層から分離可能に設けられている、樹脂フィルム生成物」

である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]

樹脂ベース層について、本願発明では「bステージ化」であることを特定するのに対し、引用発明ではそのような明確な特定を有していない点。

[相違点2]

樹脂ベース層の所定の厚みについて、本願発明1では「約1ミル~2ミル」と特定するのに対し、引用発明では「5~50μm」(「約0.2ミル~約2.0ミル」)である点。

[相違点3]

ポリエチレンテレフタレートから構成される第1保護層および第2保護層について、本願発明では「二軸延伸」のものであることを特定するのに対し、引用発明ではそのような特定がない点。

6.判断

上記相違点について検討する。

(1)[相違点1]について

引用発明の転写シートにおける「樹脂層」は、離型シート6上に樹脂溶液を塗布し「乾燥」させることにより形成されるものであり、「転写」可能なものであることから、流動性の無い状態のものであるといえ、そして、シールド配線基板上にラミネートされたのちに熱硬化処理されるものである。してみれば、シールド配線基板上へのラミネート前の「樹脂層」は、いわゆるbステージ状態のものであるということができ、本願発明でいう「bステージ化樹脂ベース層」に相当するものである。

よって、相違点1は実質的な相違でない。

ここで、審判請求人は、令和4年2月17日に提出した意見書において、次のア.及びイ.点において、引用発明における「樹脂層」はbステージ化樹脂層ではない旨主張している。

ア.引用文献1の実施例では、樹脂層を形成するための樹脂溶液の組成が、エポキシ樹脂や硬化剤に加えて、溶媒としてトルエンおよびエチレングリコールモノメチルエーテルが60質量%含まれ、かかる樹脂溶液を離型シート上に塗布した後、100℃の温度で3分間乾燥させることにより樹脂層を形成したことが記載されている(段落【0045】~【0048】)。ここで、トルエンの沸点は110.6℃であり、エチレングリコールモノメチルエーテルの沸点は124.1℃であり、このような沸点を有する溶媒を60質量%もの量で含む樹脂溶液の塗布層を100℃で3分間乾燥させたとしても、100℃よりも明らかに高い沸点を有する前記2種類の溶媒を実質的に除去できないことは明らかであり、さらに、引用文献1には、実施例の記載を含め、離型シート上に塗布した樹脂溶液を部分硬化の状態に乾燥させること、または、硬化が進行し過ぎないように制御(冷却)すること、すなわち、樹脂層を部分硬化したbステージ化樹脂層として転写シート中に存在させることを教示または示唆するような記載もないため、引用発明を構成する樹脂層が溶媒の大部分を除去して得られるようなbステージ化樹脂層であるとは考え得ない。

イ.引用文献1に記載の発明は「電磁波シールド層上の樹脂層にピンホールが形成されるのを防止する」ことを課題とする(段落【0008】)ところ、転写シートの樹脂層をシールド配線基板の電磁波シールド層上に融着または密着させた後に硬化を行うことによって、樹脂層中の気泡を除去して前記課題を解決している(段落【0017】、【0034】)。そして引用文献1に記載の上記実施例の態様を考慮すれば、引用文献1に記載の発明において該発明の課題(樹脂層中のピンホール発生防止)を解決するためには、電磁波シールド層上への転写時には多くの溶媒が含まれた未硬化の状態である(すなわち、bステージ化まで硬化が進んでいない)樹脂層を転写後に電磁波シールド層上で硬化することを必要としていることは明らかでるから、引用発明において転写シートを構成する樹脂層として、課題解決に必要とする構成を排除して、溶媒の大部分を除去して半硬化したbステージ化樹脂層を採用する理由はない。

そこで、まず上記主張「ア.」の点について検討する。

上記のとおり引用文献1の実施例では、樹脂溶液を離型シート上に塗布した後、100℃の温度で3分間「乾燥させる」ことにより樹脂層を形成しているのであるから、たとえ溶媒であるトルエンおよびエチレングリコールモノメチルエーテルの沸点がそれぞれ110.6℃、124.1℃であったとしても、これらの溶媒の多くは揮発して除かれるのは自明である。例えば本願の優先日前に公開されたもではないが特開2015-108064号公報では、溶媒として「N-メチル-2-ピロリドン」が用いられており、かかる溶媒の沸点は202℃であるが、沸点よりも低い130℃10分の乾燥でBステージ化した樹脂フィルムを作製したことが記載されている(段落【0037】、【0041】、【0056】を参照)。

そして、例えば特開2012-89619号公報(段落【0025】を参照)や特開2003-101202号公報(段落【0046】を参照)に記載されているように、Bステージ化(半硬化状態)するには、樹脂が完全硬化するに充分な温度である硬化開始温度よりも低い温度(好ましくは硬化開始温度から40℃程度以上低い温度)で行う必要があるところ、引用文献1の実施例では熱硬化処理を150℃で行っていることから、乾燥の際の100℃はまさにBステージ化(半硬化状態)するための温度であるといえる。ここで、エポキシ樹脂のゲル化開始温度(架橋反応が開始する温度)は70℃から80℃程度であるところ(例えば特開2005-19714号公報の段落【0032】、特開2002-261428号公報の段落【0017】を参照)、乾燥の際は100℃であるからゲル化が開始しており、部分的に硬化した状態になる。したがって、たとえ引用文献1には樹脂層を部分硬化したbステージ化樹脂層として転写シート中に存在させることの明記がないとしても、乾燥させることによって形成した樹脂層は、部分的に硬化した状態すなわちbステージ化した状態のものであると理解できるものである。

次に、上記主張「イ.」の点について検討する。

上記のとおり引用文献1に記載の発明は、電磁波シールド層上の樹脂層にピンホールが形成されるのを防止することを課題とするものである。しかしながら、引用文献1の段落【0005】~【0013】の記載、特に段落【0011】に「この配線回路基板の製造方法においては、電磁波シールド層上の樹脂層が電磁波シールド層上に樹脂溶液を直接塗布することにより形成されるのではなく、転写シートから樹脂層を転写することにより形成される。それにより、電磁波シールド層上の樹脂層にピンホールが形成されることを防止することができる。」と記載されているように、従来、電磁波シールド層上に樹脂溶液を直接塗布していたために、樹脂溶液の塗布時に気泡が発生し、樹脂層にピンホールが形成されていたのを防止するために、樹脂溶液を直接塗布するのではなく、予め離型シート上に塗布して樹脂層を形成しておき、これを転写するようにしたことが課題解決のための必須の構成である。引用文献1の段落【0016】~【0017】、【0034】には、電磁波シールド層に転写シートの樹脂層を重ねて加熱および加圧する工程をさらに含んでよく、これにより、たとえ樹脂層中へ気泡が混入していてもこれを排除することができることが記載されているが、かかる構成は任意に付加される構成にすぎず(そのため、かかる構成は独立形式の請求項には記載されておらず、引用形式の請求項4に記載されている)、課題解決のための必須の構成ではない。したがって、審判請求人が主張するように、課題解決のためには転写時に樹脂層中に多くの溶媒が含まれた未硬化の状態である必要があるとする主張は、その前提において引用文献1の記載の誤った解釈に基づくものである。

よって、審判請求人の主張はいずれも採用することはできない。

(2)[相違点2]について

樹脂ベース層の所定の厚さについて、本願発明が下限値を「約1ミル」に特定することに関しては、本願の発明の詳細な説明の段落【0030】に「ベース層(12)の厚みは、約0.1ミル~約3ミルの範囲であり得る。・・・例示的な実施形態では、ベース層(12)の厚みは0.1ミル~1ミルの範囲であり得る。さらに別の実施形態では、ベース層(12)の厚みは、約1ミル~2ミルの範囲であり得る。・・・好ましい実施形態では、樹脂フィルムの厚みは、1、2または3ミルである。加熱したときのベース層(12)の粘度も、特に樹脂フィルムの厚みに基づいて制御することができる。一般に、ベース層(12)の厚みが増加するにつれて、ベース層(12)の粘度が増加することとなる。」と記載されているのみであり、下限値の「約1ミル」に臨界的意義を認めることはできない。そして、引用発明における「樹脂層」の厚みは「5~50μm」、つまり「約0.2ミル~約2.0ミル」であるから、本願発明とは「約1ミル~2ミル」の範囲において重複することから、引用発明においても、離型シート6及び離型シート8の厚みとして「約1ミル~2ミル」の範囲の厚みを選択し、相違点2に係る構成とすることは当業者であれば適宜なし得たことである。

(3)[相違点3]について

例えば当審による拒絶の理由に引用された特開平10-128897号公報(特に段落【0046】、【0050】、図1を参照)や特開2001-310428号公報(特に段落【0002】~【0003】を参照)に記載されているように、回路基板製造などに用いられる離型フィルム(剥がれる機能を有するフィルム)として、「二軸延伸」ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることは周知の技術である。ここで、「二軸延伸」することにより、フィルム強度などのフィルム特性が向上することも当業者にとって周知の事項であり、引用発明においても、ポリエチレンテレフタレートからなる離型シート6及び離型シート8に強度等により優れた「二軸延伸」したものを用いるようにし、相違点3に係る構成とすることは当業者であれば容易になし得たことである。

7.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2021-001673

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