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特許無効審判

2020-800107

建設機械のアタッチメント取付け冶具および建設機械

審判番号
2020-800107
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2018-047417外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6430671
請求日
2020年11月18日
審決日
2023年08月31日
公報発行日
2023年11月24日
結論
請求成立(無効)
当事者
審判長/審判官
分類
P1113.151-Z (E02F) / P1113.113-Z (E02F) / P1113.121-Z (E02F) / P1113.537-Z (E02F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
行政事件訴訟法46条特許法38条特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第38条、特許法第29条、特許法第36条第6項第2号、特許法第2条第3項第1号、特許法第36条、特許法第29条第1項第1号、特許法第29条第2項、特許法第2条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6430671号発明「建設機械のアタッチメント取付け冶具および建設機械」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論
特許第6430671号の請求項1ないし5に係る発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由

目次 ▾ 31項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第6430671号(以下「本件特許」という。平成30年3月15日出願、平成30年11月9日登録、請求項の数は5。)の特許請求の範囲の請求項1~5に係る特許を無効とすることを求める事案であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 2年11月18日 :審判請求書提出
令和 3年12月17日付け:答弁指令
令和 3年 6月28日付け:請求人に対し審尋
令和 3年 7月 5日付け:書面審理通知
令和 3年 7月29日 :審判事件回答書(請求人)
令和 3年 9月16日付け:被請求人に対し審尋
令和 5年 5月12日付け:審決の予告

なお、被請求人に対して、審判請求書を送付(答弁指令)し、期間を指定して答弁書を提出する機会を与え、請求人提出の審判事件回答書を送付(審尋)し、期間を指定して回答書を提出する機会を与え、さらに当審起案の審決の予告を通知し、期間を指定して訂正の請求をする機会を与えたが、いずれについても、被請求人からは何らの応答はなかった。

第2 本件特許発明について

1 本件特許発明

本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件特許発明1」等といい、全体の発明を「本件特許発明」という。)は、本件特許公報の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。(分説記号A~Gは、請求人の主張による。)

「【請求項1】
A.バケット等の各種アタッチメントに所定間隔を空けて設けられた固定アゴ部側連結ピンと可動アゴ部側連結ピンそれぞれをパワーショベル等の建設機械の作動アーム先端部に取り付けられた固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部と、前記建設機械の作動アームに設けられたバケットシリンダから伸縮するピストン先端部に可動アゴ連結リンクを介して取り付けられた可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部とに収容させた後、前記固定アゴ部側ピン収容部の開口部と前記可動アゴ部側ピン収容部の開口部とをそれぞれ固定アゴ部側閉じ部と可動アゴ部側閉じ部とによって閉じてアタッチメントを取付ける建設機械のアタッチメント取付け冶具であって、
B.前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部外側に設けられ、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接して当該可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面と、
C.前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させる際、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接するように前記固定アゴ部に対する前記可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する閉じ過ぎ防止部と、
続きを表示(全16行)
を有することを特徴とする建設機械のアタッチメント取付け冶具。
【請求項2】
D.請求項1記載の建設機械のアタッチメント取付け冶具において、
前記固定アゴ部と前記可動アゴ部とは、回動軸を介して回動可能に構成されていると共に、前記回動軸を介して前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に対する前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開き過ぎを防止する開き過ぎ防止部を設けており、前記建設機械の作動アームに取り付けられたバケットシリンダによって前記回動軸を介して前記固定アゴ部と前記可動アゴ部とが回動して前記固定アゴ部側ピン収容部と前記可動アゴ部側ピン収容部との間隔が狭くなったり拡がり、前記固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンが収容され、前記可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンが収容できることを特徴とする建設機械のアタッチメント取付け冶具。
【請求項3】
E.請求項2記載の建設機械のアタッチメント取付け冶具において、
前記閉じ過ぎ防止部は、前記固定アゴ部における前記回動軸に近い位置に溶接され、前記可動アゴ部の前記回動軸に近い基部が当接するストッパーの一部であり、前記可動アゴ部の前記回動軸に近い基部が前記固定アゴ部の前記ストッパーに当接した状態で、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させた場合には、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接することを特徴とする建設機械のアタッチメント取付け冶具。
【請求項4】
F.請求項2記載の建設機械のアタッチメント取付け冶具において、
前記閉じ過ぎ防止部は、前記固定アゴ部と前記可動アゴ部の対向する腹部であり、前記固定アゴ部の腹部と前記可動アゴ部の腹部とが当接した状態で、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させた場合には、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接することを特徴とする建設機械のアタッチメント取付け冶具。
【請求項5】
G.請求項1~請求項4記載の建設機械のアタッチメント取付け冶具を備えたことを特徴とする建設機械。」

第3 請求人の主張

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1 請求人の主張の概要

請求人は、本件特許発明の特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書(以下「請求書」という。)、審判事件回答書(以下「回答書」という。)を参照。)、証拠方法として請求書に添付して甲第1号証の1ないし甲第21号証を、回答書に添付して甲第22号証ないし甲第28号証を提出している(枝番含む。)。

〔無効理由1〕(特許法38条)

本件特許に係る特許出願の出願時、本件特許発明1乃至5に係る特許を受ける権利の一部は、真の共同発明者である遠藤氏が有しており、本件特許に係る出願は、遠藤氏と共同でなされたものではないから、特許法第38条の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

〔無効理由2〕(特許法36条6項2号)

本件特許発明1乃至5は明確ではなく、本件特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

〔無効理由3〕(特許法29条1項1号又は2号、及び同条2項)

(3-1)本件特許発明1、2、4及び5は、平成27年11月7日開催の展示会に展示された本件第1試作機或いはこれを備える建設機械と同一であるか、または、本件特許発明1乃至5は、本件第1試作機に基づいて本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第1号または第2号、または同条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3-2)本件特許発明1乃至3及び5は、平成29年10月6日に公然に試験された本件第2試作機或いはこれを備える建設機械と同一であるか、または、本件特許発明1乃至5は、本件第1試作機に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

〔無効理由4〕(特許法29条2項)

本件特許発明1乃至5は、甲第7号証及び甲第21号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである

(請求書2~6頁の「(一)請求の理由の要約」及び「(三)特許無効審判請求の根拠」を参照。)

2 証拠方法

提出された証拠は、以下のとおりである。

(「甲第1号証の1」等は、以下、その数字に従って「甲1の1」等と称することがある。)

甲第1号証の1:特許第6430671号登録原簿
甲第1号証の2:特許第6430671号公報
甲第1号証の3:特願2018-47417号特許願
甲第2号証:特開2020-20124号公報
甲第3号証の1:パテント、平成30年3月10日、第71巻、第3号、表紙、目次
甲第3号証の2:杉本智則、「発明者の認定」をめぐる無効審判手続上の諸問題及び派生論点、パテント、平成30年3月10日、第71巻、第3号、96~106頁
甲第4号証の1:会社概要、和光機械工業株式会社HP、https://www.wacoh.ne.jp/company.html
甲第4号証の2:会社沿革、和光機械工業株式会社HP、https://www.wacoh.ne.jp/enkaku.html
甲第4号証の3:小型建設機械、和光機械工業株式会社HP、https://www.wacoh.ne.jp/小型建設機械-2.html
甲第4号証の4:和光バケットクランプ、和光機械工業株式会社HP、https://www.wacoh.ne.jp/archives/1090.html
甲第4号証の5:和光バケットクランプ、和光機械工業株式会社、https://www.wacoh.ne.jp/wp-content/uploads/2017/06/536380a76fc4fe9cbee53b0620d22906.pdf
甲第5号証:特許情報プラットホームJPlatPatの請求人の識別番号の検索結果(検索項目:申請人識別番号、キーワード=592219536)
甲第6号証:新型クイックロックに関する経緯まとめ、遠藤明博、令和2年8月6日
甲第7号証:特許第6211324号公報
甲第8号証の1:顧問契約書、平成26年10月27日
甲第8号証の2:顧問契約の延長修了の申入れ、丸山満、平成30年3月2日
甲第9号証の1:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成26年7月14日
甲第9号証の2:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成26年11月6日
甲第9号証の3:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成27年1月15日
甲第9号証の4:アタッチメント取付手順、遠藤明博、平成27年1月15日
甲第9号証の5:新型クイックロック 可動アーム引き寄せスプリングの重機取付動作検証、遠藤明博、平成27年1月14日
甲第9号証の6:株式会社高千穂での試験を撮影した動画、遠藤明博、平成27年1月13日
甲第9号証の7:株式会社高千穂での試験を撮影した動画、遠藤明博、平成27年1月13日
甲第9号証の8:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成27年5月15日
甲第9号証の9:株式会社高千穂での試験を撮影した動画、遠藤明博、平成27年5月12日
甲第9号証の10:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成28年2月19日
甲第9号証の11:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成28年10月5日
甲第9号証の12:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成28年12月20日
甲第9号証の13:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成29年7月12日
甲第9号証の14:株式会社高千穂での試験を撮影した動画、遠藤明博、平成29年7月11日
甲第9号証の15:株式会社高千穂での試験を撮影した動画、平成29年7月11日
甲第9号証の16:宅配便の依頼主控及び納品書(控)、遠藤明博、平成29年11月6日
甲第9号証の17:株式会社日立建機での試験を撮影した動画、遠藤明博、平成29年11月2日
甲第9号証の18:株式会社日立建機での試験を撮影した動画、遠藤明博、平成29年11月2日
甲第10号証:図面、丸山満、平成26年3月12日~4月9日に提供
甲第11号証:ファクシミリ、丸山満、平成28年10月7日送信
甲第12号証の1:本件第1試作機の図面、令和2年10月20日出力
甲第12号証の2:本件第1試作機の写真、平成27年11月7日撮影
甲第12号証の3:本件第1試作機の写真、令和2年10月17日作成
甲第12号証の4:企業情報、住友建機販売株式会社仙台支店、住友建機株式会社HP https://www.sumitomokenki.co.jp/company/network/domestic/sendai/
甲第12号証の5:住友建機販売株式会社 仙台支店様 お客様感謝祭に展示参加しました。、お知らせ、株式会社エステーケーHP、https://stk-g1.co.jp/information/住友建機販売-仙台支店様-お客様感謝祭に展示参加/
甲第13号証の1:本件第2試作機の図面、令和2年10月18日出力
甲第13号証の2:会社概要、株式会社日乃本HP、令和2年10月19日出力、https://www.hinomoto-srs.co.jp/company/
甲第13号証の3:株式会社日乃本での試験を撮影した動画、遠藤明博、平成29年10月6日
甲第13号証の4:株式会社日乃本での試験を撮影した写真、遠藤明博、平成29年10月6日
甲第13号証の5:株式会社日乃本での試験を撮影した写真、遠藤明博、平成29年10月6日
甲第13号証の6:株式会社日乃本での試験を撮影した写真、遠藤明博、平成29年10月6日
甲第13号証の7:株式会社日乃本での試験を撮影した写真、遠藤明博、平成29年10月6日
甲第13号証の8:株式会社日乃本での試験を撮影した写真、大和勇記、平成29年10月6日
甲第14号証:会社概要、株式会社加藤製作所HP、令和2年10月17日出力、http://www.kato-works.co.jp/profile/index.html
甲第15号証:会社紹介、山手運送株式会社HP、令和2年10月17日出力、https://www.yamate-unsou.com/company/
甲第16号証:実施許諾契約書の件、大和勇記、平成30年5月25日
甲第17号証:プロフィール、南部なおとHP、令和2年10月17日出力、http://nanbunaoto.com/profile.html
甲第18号証の1:木花天乃 九頭竜の流れ/おもてなし音頭、クラウン徳間ミュージックショップ、令和2年10月17日出力、https://crowntokuma-shop.com/products/detail/CTM00008MG
甲第18号証の2:特願2019-56197号特許願
甲第18号証の3:特願2019-56197号に係る発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書
甲第18号証の4:ビッグサイトでエキサイト!、南部なおとの【盛春ブログ】、2019年3月13日、https://nanbunaoto.exblog.jp/28086408/
甲第19号証の1:トッカエひっかえV、オノデラ製作所株式会社HP、令和2年9月28日出力、https://www.lets-onodera.com/product/th/
甲第19号証の2:バケットロック、ユタニ工業株式会社HP、令和2年9月28日出力、http://www.yutani.jp/attachment/bklock.html
甲第19号証の3:バケットロック、wayback machine、https://web.archive.org/web/20170608173852/http://www.yutani.jp/attachment/bklock.html
甲第19号証の4:スーパーキャッチ、株式会社松本製作所、令和2年9月28日出力、http://www.att-mac.co.jp/products/17.html
甲第19号証の5:株式会社松本製作所 株式会社エムエーシーHP、wayback machine、https://web.archive.org/web/20160310091419/http://www.att-mac.co.jp/products/17.html
甲第19号証の6:Mロック、株式会社ミクロHP、令和2年9月28日出力、http://www.396.co.jp/02building/02_01.html
甲第19号証の7:主要諸元、wayback machine、https://web.archive.org/web/20161027164611/http://www.396.co.jp/02building/02_01.html
甲第20号証:特開2006-57287号公報
甲第21号証:特開昭61-137927号公報
甲第22号証:特許第6430671号公報
甲第23号証の1:甲9の9の動画のスナップショット
甲第23号証の2:甲9の5の写真
甲第23号証の3:新型クイックロックに関する経緯まとめ、遠藤明博、2020年8月6日(甲6にメモ等を追加した日)
甲第24号証の1:図面(甲10の1頁目)、丸山満、
甲第24号証の2:図面(甲10の4頁目)、丸山満
甲第24号証の3:図面(甲10の5頁目)、丸山満
甲第24号証の4:図面(甲10の9頁目)、丸山満
甲第24号証の5:ファクシミリ(甲11)、丸山満
甲第25号証の1:出張報告書、遠藤明博、2014年8月4日
甲第25号証の2:試験報告書、遠藤明博、2015年12月22日
甲第25号証の3:試験報告書、遠藤明博、2015年12月22日
甲第25号証の4:出張報告書、遠藤明博、2016年8月10日
甲第25号証の5:出張報告書、遠藤明博、2017年1月25日
甲第25号証の6:報告書、遠藤明博、2017年8月24日
甲第25号証の7:出張報告書、遠藤明博、2017年10月10日
甲第25号証の8:出張報告書、遠藤明博、2018年4月25日
甲第25号証の9:業務依頼書、遠藤明博、2016年10月3日
甲第25号証の10:甲25の9に添付した図面、遠藤明博、2016年9月30日
甲第25号証の11:甲25の9に添付した図面、遠藤明博、2016年9月30日
甲第25号証の12:業務依頼書、遠藤明博、2017年5月12日
甲第25号証の13:甲25の12に添付した図面、遠藤明博、2017年10月12日
甲第25号証の14:業務依頼書、遠藤明博、2017年10月11日
甲第25号証の15:甲25の14に添付した図面、遠藤明博、2017年10月11日
甲第25号証の16:図面、遠藤明博、2017年10月12日
甲第25号証の17:業務依頼書、遠藤明博、2018年2月17日
甲第25号証の18:甲25の17に添付した図面、遠藤明博、2018年2月16日
甲第25号証の19:株式会社日立建機での試験を撮影した動画、遠藤明博、2017年11月2日
甲第26号証の1:3次元CADアニメーション動画、、遠藤明博、2015年12月22日
甲第26号証の2:甲26の1の動画の画面のキャプチャ、遠藤明博、2021年7月12日
甲第26号証の3:3次元CADアニメーション動画、遠藤明博、2021年7月21日
甲第26号証の4:甲26の3の動画の画面のキャプチャ、遠藤明博、2021年7月12日
甲第26号証の5:3次元CADアニメーション動画、遠藤明博、令和3年7月21日
甲第26号証の6:甲26の5の動画の画面のキャプチャ、遠藤明博、2021年7月12日
甲第26号証の7:新型クイックロック 可動アーム引き寄せスプリングの重機取付動作検証、遠藤明博、2015年1月14日
甲第26号証の8:遠藤明博の身分証明書
甲第26号証の9:遠藤明博の身分証明書
甲第26号証の10:甲9の14の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の11:甲9の14の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の12:甲9の14の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の13:甲9の15の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の14:甲9の15の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の15:甲9の19の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の16:甲9の19の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の17:甲25の19の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の18:甲25の19の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の19:甲25の19の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の20:甲25の19の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の21:甲25の19の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の22:甲9の18の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の23:甲9の18の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の24:甲9の18の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第26号証の25:甲9の18の動画のスナップショット、請求人代理人、2021年7月25日
甲第27号証:甲13の8の写真を表示したスマートホンの画面キャプチャ、大和勇記、2021年7月10日
甲第28号証:遠藤明博氏の名刺

3 請求人の具体的な主張

(1)無効理由1

ア 請求書における主張

(ア)請求人と丸山満氏との共同開発の概要

請求人は、平成26年4月9日から平成30年5月23日までの約4年間、本件特許の発明者である丸山満氏と共同で、本件特許に関する「クイックロック」(請求人内部での開発製品の通称)の開発を行った(甲6)。

この共同開発に関わる取り決めとして、請求人と丸山満氏は、平成26年10月27日、丸山満氏が請求人の顧問としてクイックロックに関する製造・販売の指導や助言を行うこと、及び丸山満氏が請求人に対して特願2013-148793号(甲7)のクイックロックに関わる部分の通常実施権を許諾することを主な内容とする契約を結んだ(甲8の1)。

共同開発の主な作業分担は、遠藤氏を含む請求人の従業員が試作機の設計、製造、試験及び改良を行い、丸山満氏が試作機の図面や動画を確認するというものである。

平成29年10月6日、請求人と丸山満氏は、主要な販売先候補である株式会社日乃本の本社にて試験を行い、クイックロックの完成を確認した(甲6、甲13の2乃至甲13の8)。

平成30年3月2日、丸山満氏から、一方的に顧問契約の延長終了の申し入れがあり、平成30年4月30日、顧問契約が終了した(甲8の2)。

(7頁13行~8頁13行)

(イ)遠藤氏が本件特許発明1乃至5の真の共同発明者であること

a 本件特許発明をする契機

平成25年6月14日、請求人は、丸山満氏から、株式会社日乃本にてカプラ製品を生産できるかどうかの相談を受けた(甲6)。

平成26年4月9日、遠藤氏は、丸山満氏から提供された図面(甲10)に基づいて、図面の3次元CAD化と、クイックロックの開発の見積りを開始した。

(9頁6~16行)

b 開発行動について

遠藤氏は、開発当初から開発終了まで、3DCADの設計、試作材料の手配、試作機の組立、試作機の試験、試作機の改良を担当し、何度も試行錯誤を重ね、改良のたびに丸山満氏に図面や動画を送付した(甲6、甲9の1乃至甲9の18)。

平成26年7月14日、遠藤氏は、株式会社高千穂でのクイックロックの試験を撮影した動画を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の1)。

平成26年11月6日、遠藤氏は、クイックロックの図面を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の2)

平成27年1月15日、遠藤氏は、クイックロック取付手順及びクイックロック動作検証報告書を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の3乃至甲9の5)。クイックロック動作検証報告書には、別途動画のダウンロード先のメールを送る旨が記載されており(甲9の5)、遠藤氏は、スプリング無とスプリング有の動画の確認を丸山満氏に依頼した(甲9の5乃至甲9の7)。

平成27年5月15日、遠藤氏は、株式会社高千穂でのクイックロックの試験を撮影した動画(平成27年5月12日撮影)を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の8、甲9の9)。

平成28年2月19日、遠藤氏は、クイックロックの図面を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の10)。

平成28年10月5日、遠藤氏は、クイックロックの図面を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の11)。

平成28年12月20日、遠藤氏は、株式会社高千穂でのクイックロックの試験を撮影した動画を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の12)。

平成29年7月12日、遠藤氏は、株式会社高千穂でのクイックロックの試験を撮影した動画(平成29年7月11日撮影)を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の13乃至甲9の15)。

平成29年11月16日、遠藤氏は、株式会社日立建機東北支社東北支店庄内営業所でのクイックロックの試験を撮影した動画(平成29年11月2日撮影)を丸山満氏に宅配便で送付した(甲6、甲9の16乃至甲9の18)。

遠藤氏は、何度も試験及び改良を重ねた末、クイックロックの完成に至った(甲6)一方、丸山満氏は、打ち合わせに参加したり、試験に立ち会ったりしたものの(甲6)、開発に寄与する詳細な情報としては、最初の図面(甲10)と手書きのメモのFAX(甲11)しか提供しなかった。

尚、試作機の材料費の総額136万円は、請求人が全て負担し、平成30年6月20日に全ての支払いを終えた。

(11頁2行~12頁12行)

c 発明の着想

甲7と甲10から、丸山満氏が、本件第1試作機の着想者であることは認める。本件第1試作機は、本件特許発明4を具体化したものであり、本件特許の図18のように、閉じ過ぎ防止部の機能を固定アゴ部及び可動アゴ部の腹部に持たせたものである(甲1の2、甲9の9、甲12の1乃至甲12の3)。

一方、本件第2試作機の着想者が、丸山満氏ではなく、大和氏である。本件第2試作機は、本件特許発明3を具現化したものであり、本件特許の図1乃至図16に図示されるストッパー1d(甲1の2)や、請求人特許出願の図2及び図4に図示される回動ストッパー12(甲2)のように、開き過ぎ防止部及び閉じ過ぎ防止部の両方の機能を単一の回動ストッパ(甲13の1)に持たせたものである(甲1の2,甲2、甲13の1、甲13の3乃至甲13の7)。

大和氏が、開き過ぎ防止部及び閉じ過ぎ防止部の両方の機能を単一のストッパに持たせることを着想し、遠藤氏らに助言及び指導を行い、本件第2試作機の開発に至ったものである。

(12頁13行~13頁3行)

d 発明の完成

遠藤氏は、クイックロックの開発を始めてから、何度も設計、製造、試験及び改良を繰り返し、平成27年5月1日、本件特許発明4が具体化された本件第1試作機の組立を完成し、同年5月12日、株式会社高千穂にて本件第1試作機の試験を行い、同年5月15日、本件第1試作機の動作検証の動画を丸山満氏に発送した(甲6、甲9の8、甲9の9)。そして、請求人は、同年11月7日、住友建機販売株式会社仙台支店の展示会に本件第1試作機を展示した(甲6、甲12の2乃至甲12の5)。以上の通り、本件特許発明4は、平成27年5月1日から同年11月7日までの間に完成した。また、本件特許発明4は、本件特許発明1及び2の構成要件を備えるので、本件特許発明1及び2も同様に、平成27年5月1日から平成27年11月7日までの間に完成した。更に、遠藤氏は本件第1試作機を建設機械に取り付けて試験を行っていることから(甲9の9)、本件特許発明4のアタッチメント取付け治具を備える建設機械である本件特許発明5も、同様に、平成27年5月1日から同年11月7日までの間に完成した。

また、遠藤氏は、平成29年1月26日、大割機取付け対応のため再設計を開始し、同年5月16日、本件特許発明3が具体化された本件第2試作機の制作手配を開始し、同年7月7日、本件第2試作機の組立を完成し、同年7月11日、株式会社高千穂にて本件第2試作機の試験を行い、同年7月12日、本件第2試作機の動作検証の動画を丸山満氏に発送した(甲6、甲9の13乃至甲9の15)。そして、請求人は、平成29年10月6日、本件被請求人及び丸山満氏の立ち会いの下、株式会社日乃本にて本件第2試作機の試験を行い、動作が問題無いことを確認した(甲6、甲13の3乃至甲13の8)。以上の通り、本件特許発明5は、平成29年7月7日から平成29年10月6日までの間に完成した。

(13頁4行~14頁20行)

e 事情の総括

前述の通り、丸山満氏が、本件第1試作機の着想者であることは認めるが、遠藤氏は、平成26年4月9日から平成30年5月23日までの約4年間に、本件第1試作機及び本件第2試作機を含む多くの試作機を製作し、その改良を重ね、度重なる試験を行って、本件特許の出願日前に、本件特許発明4が具体化された本件第1試作機と、本件特許発明3が具体化された本件第2試作機を基本的に完成させた。

また、遠藤氏は、改良のたびに丸山満氏に試作機の図面や動画の確認を依頼していることから、遠藤氏と丸山満氏との間には一定の一体的・連続的な協力関係があった。

以上から、遠藤氏は、本件特許発明1乃至5に係る真の共同発明者である。

(15頁11~20行)

イ 回答書における主張

(ア)本件特許発明の特徴的部分の特定

a 本件特許発明が解決しようとする課題

本件特許発明3及びこれを引用する本件特許発明5の解決課題は、課題1乃至課題6の全てで、本件特許発明1、2及び4並びにこれを引用する本件特許発明5の解決課題は、課題1乃至5です。

【課題1】アタッチメントのピン間隔の大小にかかわらず、連結およびロックして使用できるようにすること。(・甲22の【0045】・甲25の5)

【課題2】熟練者でなくても、固定アゴ部と可動アゴ部のピン収容部それぞれに連結ピンを収容できるようにすること。(・甲22の【0004】、【0007】)

【課題3】コストを削減すること。(・甲22の【0004】、【0007】)

【課題4】アタッチメントの自重の大小や形状にかかわらず、連結およびロックして使用できるようにすること。(・甲25の4・甲25の5)

【課題5】製品化可能な強度を備えること。(・甲25の2及び甲25の3・甲25の5)

【課題6】製品化可能な安全性を備えること。(・甲25の7)

(4頁17~末行、4~5頁の表1)

b 課題を解決するための新規な構成

請求項ごとの課題を解決するための新規な構成は、以下の通りである。

【請求項1】

前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部外側に設けられ、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接して当該可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面(以下、「請求項1案内面」といいます。)。

前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させる際、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接するように前記固定アゴ部に対する前記可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する閉じ過ぎ防止部(以下、「請求項1閉じ過ぎ防止部」といいます。)。

【請求項2】

前記建設機械の作動アームに取り付けられたバケットシリンダによって前記回動軸を介して前記固定アゴ部と前記可動アゴ部とが回動して前記固定アゴ部側ピン収容部と前記可動アゴ部側ピン収容部との間隔が狭くなったり拡がり、前記固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンが収容され、前記可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンが収容できるように、前記回動軸を介して前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に対する前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開き過ぎを防止する開き過ぎ防止部(以下、「請求項2開き過ぎ防止部」といいます。)。

【請求項3】

前記固定アゴ部における前記回動軸に近い位置に溶接され、前記可動アゴ部の前記回動軸に近い基部が当接するストッパーの一部であり、前記可動アゴ部の前記回動軸に近い基部が前記固定アゴ部の前記ストッパーに当接した状態で、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させた場合には、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接する前記閉じ過ぎ防止部(以下、「請求項3閉じ過ぎ防止部」といいます。)。

【請求項4】

前記固定アゴ部と前記可動アゴ部の対向する腹部であり、前記固定アゴ部の腹部と前記可動アゴ部の腹部とが当接した状態で、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させた場合には、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接する前記閉じ過ぎ防止部(以下、「請求項4閉じ過ぎ防止部」といいます。)。

【請求項5】

請求項5に特有の新規な構成なし。

(5頁5~6行、5~7頁の表2)

(イ)遠藤氏によって設計、制作及び試験された試作機の変遷

遠藤氏によって設計、製作及び試験された試作機は、大規模な改良ごとに分けると4台あり、審判請求書記載の「本件第1試作機」及び「本件第2試作機」との関係が分かり易いように、この4台を「第1の1試作機」、「第1の2試作機」、「第1の3試作機」及び「第2試作機」と呼びます。

また試作機の一部の部位の名称は、甲23の1や甲23の2に示します。

【第1の1試作機】

開発時期:2014年4月9日乃至2016年8月9日
図面の証拠:甲24の1乃至甲24の4

・請求項1案内面の実施例の着想なし

・可動アームのフックが固定アームと反対側(図面左側)に向かって開口

・ストッパーが請求項2開き過ぎ防止部の実施例2としてのみ機能

・可動アームと固定アームが当接し、請求項1閉じ過ぎ防止部の実施例2として機能

・可動アームの固定アームに対向する部位の膨出が小さい

【第1の2試作機】

開発時期:2016年9月13日乃至2017年1月24日
図面の証拠:甲25の10及び甲25の11

・請求項1案内面の実施例の着想あり

・可動アームのフックが固定アーム側(図面右側)に向かって開口

・案内面と可動アームのフックとの境界が面一であり、案内面が固定アーム側(図面右側)に延伸

・ストッパーが請求項2開き過ぎ防止部の実施例2としてのみ機能

・可動アームと固定アームが当接し、請求項1閉じ過ぎ防止部の実施例2として機能

・可動アームの固定アームに対向する部位の膨出が大きい

【第1の3試作機】

開発時期:2017年1月26日乃至2017年10月6日
図面の証拠:甲24の13

・請求項1案内面の実施例あり

・可動アームのフックが鉛直下側(図面下側)に向かって開口

・案内面と可動アームのフックとの境界に屈曲点を有し、案内面が固定アームと反対側(図面左側)に延伸

・ストッパーが請求項2開き過ぎ防止部の実施例2としてのみ機能

・可動アームと固定アームが当接し、請求項1閉じ過ぎ防止部の実施例2として機能

・可動アームの固定アームに対向する部位の膨出が大きい

【第2試作機】

開発時期:2017年10月16日乃至2018年4月24日
図面の証拠:甲25の14、甲25の16及び甲25の18

・請求項1案内面の実施例あり

・可動アームのフックが鉛直下側(図面下側)に向かって開口

・案内面と可動アームのフックとの境界に屈曲点を有し、案内面が固定アームと反対側(図面左側)に延伸

・可動アームストッパーが請求項2開き過ぎ防止部の実施例1及び請求項1閉じ過ぎ防止部の実施例1の両方として機能

・可動アームと固定アームの当接なし

・可動アームの固定アームに対向する部位の膨出なし

(11頁11~16、22行、12~14頁の表4)

(2)無効理由2

ア 不明確指摘記載の特定

本件不明確指摘記載は、本件特許の請求項1に係る「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピン」である。

(請求書18頁14~18行)

イ 本件不明確指摘記載の意味

本件不明確指摘記載は、パワーショベル等の建設機械に取り付けられるア タッチメントの寸法を特定する記載であって、建設機械に取り付けられるアタッチメントの中で、ピン間隔が最小および最大のアタッチメントを意味するものである。

そして、本件不明確指摘記載では、アタッチメントのピン間隔の最小値および最大値を具体的に特定できないから、ある具体的な「建設機械のアタッチメント取付け治具」が、本件特許発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解できない。

(請求書19頁下から3行~20頁5行)

ウ 発明の詳細な説明の記載の参酌

本件特許の段落【0026】には、ピン間隔が例えば、320mm程度の最小のバケット2’と、580mm程度の最大の破砕機2’’が記載されているものの、他にピン間隔の具体的数値の記載はなく、320mm及び580mmという数値の臨界的意義についての記載もない。そして、本件特許発明1の「建設記載のアタッチメント取付け治具」との関係において、アタッチメントのピン間隔の最小値および最大値を具体的に特定する記載もない。

そうすると、本件特許に係る発明の詳細な説明の記載を参酌しても、本件不明確指摘記載では、アタッチメントのピン間隔の最小値および最大値を具体的に特定できないから、ある具体的な「建設機械のアタッチメントの取付け治具」が、本件特許発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解できない。

(請求書20頁6~16行)

エ 出願時の技術常識の参酌

出願時の技術常識によれば、アタッチメント取付け治具に取り付け可能なアタッチメントのピン間隔の範囲は、メーカーや型式によって様々である。従って、本件不明確指摘記載は、出願時の技術常識を参酌しても、アタッチメントのピン間隔の最小値および最大値を具体的に特定できないから、ある具体的な「建設機械のアタッチメント取付け治具」が、本件特許発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解できない。

(請求書20頁17行~21頁20行)

オ 小括

以上の通り、本件不明確指摘記載は、アタッチメントのピン間隔の最小値および最大値を具体的に特定できないから、ある具体的な「建設機械のアタッチメント取付け治具」が、本件特許発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解できない。従って、本件特許発明1の範囲は不明確である。また、本件特許発明2乃至5は本件特許発明1を引用するから、本件特許発明2乃至5も不明確である。

そうすると、本件特許発明1乃至本件特許発明5は明確ではない。

(請求書21頁下から8行~22頁3行)

(3)無効理由3

ア 本件第1試作機に基づく主張

(ア)本件第1試作機及びこれを備える建設機械が公然知られ、公然実施されたこと

住友建機販売株式会社仙台支店では、平成27年11月7日に、お客様感謝祭と称して、取引先企業が自社製品を出展する展示会が開催された(甲12の4及び甲12の5)。

請求人は、この展示会に、本件第1試作機を自社製品「クイックロック」として販売のために展示した(甲12の2及び甲12の3)。これは、特許法第2条第3項第1号に該当する行為である。

甲12の3によれば、本件第1試作機は、(a)本件特許発明1の可動アゴ部側連結ピン案内面に相当する箇所が視認可能な状態、(b)本件特許発明2の開き過ぎ防止部、すなわち可動アゴ部が回転軸を介して固定アゴ部に対し回動した際に当接して開き過ぎを防止するストッパーに相当する箇所が視認可能な状態、(c)本件特許発明4の閉じ過ぎ防止部、すなわち固定アゴ部と可動アゴ部の対向する腹部に相当する箇所が互いに接触していることが視認可能な状態、で展示されている。また、甲12の3によれば、本件第1試作機に付されたパンフレットの写真には、建設機械に取り付けられている様子が示されていることから、本件特許発明5に相当する建設機械が視認可能な状態で展示されている。

以上から、本件第1試作機及びこれを備える建設機械は、本件特許の特許出願前に、本件特許発明1、2、4及び5に係る技術的特徴について不特定の者が知り得る状態で展示されていた。すなわち、本件第1試作機及びこれを備える建設機械は、本件特許の特許出願前に、公然知られ、かつ公然実施されていた。

(請求書22頁11行~23頁5行)

(イ)本件特許発明1、2、4及び5が本件第1試作機又はこれを備える建設機械と同一であること

甲9の9の動画及び甲12の1の図面から、本件第1試作機は、本件特許発明4を具体化したものであり、本件特許の図18のように、閉じ過ぎ防止部の機能を固定アゴ部及び可動アゴ部の腹部に持たせたものであることは明らかである(甲1の2、甲9の9、甲12の1乃至3)。

従って、本件特許発明4は、本件第1試作機と同一である。また、請求項4は、請求項1及び2を引用することから、本件特許発明4は、本件発明1及び2の構成を備えるので、本件特許発明1及び2も同様に、本件第1試作機と同一である。更に、本件特許発明5は、本件第1試作機を備える建設機械と同一である。

(請求書23頁6~22行)

(ウ)本件特許発明1乃至5が本件第1試作機に基づいて容易に想到できること

仮に、本件特許発明1、2、3及び5が、本件第1試作機又はこれを備える建設機械と相違点があるとしても、その相違点は単なる設計的事項であるから、本件特許発明1、2、4及び5は、本件第1試作機に基づいて容易に想到できる。

また、特開2006-57287号公報(甲20)には、アタッチメントのクイックカプラへの装着適合性を判定するアタッチメントの取付可否判定具が開示されている(段落【0001】)。このアタッチメントの取付可否判定具10は、第1プレートと第2プレートを備えて構成され(段落【0020】、図1及び図2)、第1プレート1には、第2プレート2の回動範囲を制限するストッパ(回動止め部材)8a、8bが備えられており(【0026】)、本件第1試作機のストッパ(甲12の1)として、甲20記載のストッパ8a、8bを適用すれば、本件特許発明3の構成要件を全て満たすので、本件特許発明3は容易に想到できる。

(請求書23頁23行~24頁16行)

イ 本件第2試作機に基づく主張

(ア)本件第2試作機及びこれを備える建設機械が公然知られ、公然実施されたこと

顧問契約書(甲8の1)の第6条(秘密保持義務)の条項において、乙(=丸山満氏)は、甲(=請求人)の業務内容について秘密保持義務があったが、甲は、何ら秘密保持義務がなかったから、請求人は、クイックロックの製品に関する技術情報を秘匿対象とする必要ないと認識していた。

そして、甲は、共同開発を開始してから本件特許に係る発明が完成するまで、本件第1試作機及び本件第2試作機を含む様々な試作機について、様々な販売先候補の企業に対して秘密保持義務を課さずに開示し、秘密保持義務がない第三者が容易に視認できる場所で試験や展示を行ってきた(甲6)。

平成29年10月6日に株式会社日乃本の本社にて行われた試験についても(甲13の3乃至甲13の8)、甲、丸山満氏、株式会社日乃本の代表取締役である國府田臣一氏、被請求人、及び株式会社日乃本の代表取締役である中村恒夫氏に対して、口頭及び文書のいずれの方法によっても秘密保持義務を課さなかった。また、甲13の3及び13の8によれば、株式会社日乃本の本社は大通りに面しており、道路と試験場所との間に遮蔽物も置かれていないことから、通行人や訪問者が試験の様子を容易に視認できたことが分かる。

また、この試験は、本件第2試作機及びこれを備える建設機械の使用であって、特許法第2条第3項第1号に該当する行為である。

従って、本件第2試作機及びこれを備える建設機械は、本件特許の特許出願前に、公然知られ、かつ公然実施されていた。

(請求書24頁22行~25頁下から3行)

(イ)本件特許発明1乃至3及び5が本件第2試作機又はこれを備える建設機械と同一であること

甲13の3の動画、甲13の4乃至甲13の7の写真及び甲13の1の図面から、本件第2試作機は、本件特許発明3を具体化したものであり、本件特許の図1乃至図16に図示されるストッパー1d(甲1の2)や、請求人特許出願の図2及び図4に図示される回動ストッパ12(甲2)のように、開き過ぎ防止部及び閉じ過ぎ防止部の両方の機能を単一の回動ストッパー(甲13の1)に持たせたものであることは明らかである(甲1の2、甲2,甲13の1、甲13の3乃至甲13の7)。

従って、本件特許発明3は、本件第2試作機と同一である。また、請求項3は、請求項1及び2を移用することから、本件特許発明3は、本件特許発明1及び2の構成要件を備える。従って、本件特許発明1及び2も同様に、本件第2試作機と同一である。更に、本件特許発明5は、本件第2試作機を備える建設機械と同一である。

(請求書25頁下から2行~26頁12行)

(ウ)本件特許発明1乃至5が本件第2試作機に基づいて容易に想到できること

仮に、本件特許発明1乃至3及び5が、本件第2試作機又はこれを備える建設機械と相違点があるとしても、その相違点は単なる設計的事項であるから、本件特許発明1乃至3及び5は、本件第2試作機に基づいて容易に想到できる。

また、本件第2試作機の回動ストッパ(甲13の1)に代えて、本件第1試作機のストッパ(甲12の1)を適用すれば、本件第2の試作機の固定アゴ部及び可動アゴ部の腹部が、閉じ過ぎ防止部の機能を持つことは明らかであり、本件特許発明4の構成要件を全て満たすので、本件特許発明4は容易に想到できる。

(請求書26頁13~21行)

ウ 追加の説明及び証拠について

請求人が主張する公然実施又は公然知られた発明に基づく新規性・進歩性違反の無効理由における、第1試作機の展示会での展示及び第2試作機の試験の公開について、当審は、令和3年6月28日付けで追加の説明及び証拠を求めた審尋を通知したところ、請求人は、「本回答書においては、公知公用の新規性違反及び進歩性違反の関するご指摘の事実を証明する説明及び証拠の追加提出は行いません。」(回答書46頁末行~47頁3行)との回答を行った。

(4)無効理由4

ア 本件特許発明1と甲7発明との対比

甲7における「半円弧状係合部1a31」、「半円弧状係合部1b31」、「第1回動式半円弧状閉塞部片1a35」及び「第2回動式半円弧状閉塞部1a36」、「第1回動式半円弧状閉塞部片1b35」及び「第2回動式半円弧状閉塞部片1b36」は、それぞれ本件特許発明1における「固定アゴ部側ピン収容部」、「可動アゴ部側ピン収容部」、「固定アゴ部側閉じ部」、「可動アゴ部側閉じ部」に相当する。

甲7の図4乃至図6には可動アゴ部1bの半円弧状係合部1b31の開口部外側に設けられ連結ピン2bが半円弧状係合部1b31に収容されるまで案内する案内面が図示され、この案内面は本件特許発明1における「可動アゴ部側連結ピン案内面」に相当する。すなわち、甲7の図5において可動側フック板1b3には半円弧状係合部1b31の図面右端側から延びる面があり、その面に連結ピン2bが接触している。甲7の図6ではその連結ピン2bが半円弧状係合部1b31から延びる面から半円弧状係合部1b31へと移動している。そうするとこの面が構成要素Bにおける「可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面」であることが明らかである。そうすると構成要素Bにおける一部において両者は一致する。

甲7における図2及び図4には固定アゴ部1a及び可動アゴ部1bが記載されるとともに、これらが互いに距離を縮めて閉じる方向に移動したとき、対向する面が当接する位置関係にあることが理解され、この対向する面は本件特許発明1における「固定アゴ部に対する可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する閉じ過ぎ防止部」に相当する。そうすると構成要素Cにおける一部において両者は一致する。そして以下の点で相違する。

相違点1:本件特許発明1には構成要素Bとして「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接」する点が記載されているが、甲7には明確な記載がない点。

相違点2:本件特許発明1には構成要素Cとして「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接」する点が記載されているが、甲7には明確な記載がない点。

(請求書33頁下から2行~34頁25行、35頁7~17行)

イ 相違点の判断

(ア)相違点1について検討するに、甲21には「多種の器具が油圧掘削機に使用されること」「如何なる永久的変更なしに、これらのピンと協働するように設計される。」ことが記載されており、多種の器具によってピン間距離が異なることは当業者であれば当然知り得る事実であることから、ピン間距離が最小及び最大の場合にもこれらピンに当接可能とすることは甲21に記載されているに等しい。したがって、甲21に記載の事項を甲7に記載の発明に適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に想到し得るものである。

(請求書34頁下から2行~35頁6行)

(イ)相違点2について検討するに、甲21には「多種の器具が油圧掘削機に使用されること」「如何なる永久的変更なしに、これらのピンと協働するように設計される。」ことが記載されており、多種の器具によってピン間距離が異なることは当業者であれば当然に知り得る事実であることから、ピン間距離が最小及び最大の場合にもこれらのピンに当接可能とすることは甲21に記載されているに等しい。したがって、甲21に記載の事項を甲7に記載の発明に適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に想到し得るものである。

(請求書35頁18~末行)

第4 証拠の記載

1 甲第7号証

ア 甲7の記載

甲7には、以下の事項が記載されている。

(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーショベル等の建設機械のバケットの取付け構造および建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パワーショベル等の建設機械のバケットの取付け構造として、バケットの後部部に所定間隔を空けて設けられた2本のバケット連結ピンにそれぞれ一端開放の固定アゴ部と可動アゴ部とを係合させた後、規制材とコイルばね等により固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢する構造や(例えば、特許文献1参照。)、ネジ等を駆動させることによって可動アゴ部を固定アゴ部から離れるように付勢したり(例えば、特許文献2参照。)、さらには専用の油圧シリンダによって可動アゴ部を固定アゴ部から離れるように付勢する構造(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1~3に記載の建設機械のバケット取付け構造では、一端開放の固定アゴ部と可動アゴ部にそれぞれバケット連結ピンを係合させた後、規制材とコイルばねや、ネジまたは油圧シリンダ等によって固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢する必要があるため、その分だけコストが増大するという問題があった。
【0005】
また、ネジまたは油圧シリンダ等によって固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢しているものの、バケット連結ピンが係合している固定アゴ部と可動アゴ部とは、その一端が開放したままであるため、バケット連結ピンが外れるおそれもあった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、可動アゴを動作させるためのネジや油圧シリンダ等の駆動アクチュエータが不要でコストを削減でき、かつ、固定アゴ部と可動アゴ部からバケット連結ピンが外れることを確実に防止できる建設機械のバケット取付け構造および建設機械を提供することを目的とする。」
(ウ)「【発明の効果】
【0008】
本発明に係る建設機械のバケット取付け構造および建設機械では、固定アゴ部および可動アゴ部は、それぞれ、一端開放でバケット連結ピンの外周面に応じた断面半円弧状の半円弧状係合部を有すると共に、その半円弧状係合部に連結ピンを係合させた後、その半円弧状係合部の一端開放側を閉塞して半円弧状係合部との間でパケット連結ピンを支持する断面半円弧状の半円弧状閉塞部を有するため、可動アゴを動作させるためのネジや油圧シリンダ等の駆動アクチュエータが不要でコストを削減できると共に、固定アゴ部と可動アゴ部からバケット連結ピンが外れることを確実に防止できる。」
(エ)「【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施の形態の建設機械とそのバケット取付け構造(装置または機構)1について図面を参照しながら具体的に説明する。
【0011】
続きを表示(全35行)
<建設機械のバケット取付け構造1の構成>
本発明の建設機械のバケット取付け構造1は、図1に示すように、バケット2の後部部に所定間隔を空けて設けられた2本のバケット連結ピン2a,2bそれぞれにパワーショベル等の建設機械(図示省略。)の作動アーム3a先端部に取り付けられた固定アゴ部1aと、バケット駆動シリンダ3bから伸縮するピストン3b1先端部にバケットリンク3cを介して取り付けられた可動アゴ部1bとを係合させてバケット2を取付けるものである。なお、図1において、3dは、作動アーム3aに基端部が回動可能に連結される一方、バケット駆動シリンダ3bから伸縮するピストン3b1の先端部とバケットリンク3cの基端部に先端部が回動可能に連結されたアームリンクである。なお、バケット取付け構造1以外のバケット2や、作動アーム3a、バケット駆動シリンダ3b、バケットリンク3c、アームリンク3d等の構成や連結構造は、従来のものと同じで周知である。
【0012】
本発明に係る実施形態のバケット取付け構造1は、図1~図8に示すように、固定アゴ部1aと、可動アゴ部1bとから構成されている。
【0013】
固定アゴ部1aは、図4に示すように建設機械の作動アーム3aの先端部に固定アゴ連結ピン3a1を介して固定側連結板1a1が回動可能に連結されており、その固定側連結板1a1の下端部には、第1固定基板1a2を介して固定側フック板1a3が取り付けられている。
【0014】
固定側フック板1a3には、バケット連結ピン2aに係合する一端開放でかつバケット連結ピン2aの外周面に応じたほぼ断面半円弧状の半円弧状係合部1a31と、抜差し式ロックピン1a33が挿入されるロックピン用抜差し孔1a32と、回動ピン1a37で回動可能に連結され、回動軸1a34を介して回動することによりバケット連結ピン2aを支持する2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1a35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36と、ハンドル1a38とが設けられている。
【0015】
つまり、第1回動式半円弧状閉塞部片1a35は、図8や図9に示すように基端側が回動ピン1a37を介して第2回動式半円弧状閉塞部片1a36の先端側に回動可能に連結される一方、先端側にバケット連結ピン2aの外周面に応じた半円弧状当接部1a35aを有し、その半円弧状当接部1a35aと固定アゴ部1aの半円弧状係合部1a31との間でバケット連結ピン2aを挟持して支持する。
【0016】
第2回動式半円弧状閉塞部片1a36は、図8や図9に示すように先端側が回動ピン1a37を介して第1回動式半円弧状閉塞部片1a35の基端側に回動可能に連結される一方、基端側が回動軸1a34を介して固定アゴ部1aに回動可能に取付けられている。そして、ロックピン用抜差し孔1a32に抜差し式ロックピン1a33が挿入され、第1回動式半円弧状閉塞部片1a35の半円弧状当接部1a35aと固定アゴ部1aの半円弧状係合部1a31との間でバケット連結ピン2aを挟んで支持している場合、図9に示すように第2回動式半円弧状閉塞部片1a36における回動ピン1a37と回動軸1a34との間の内側面1a36aが半円弧状係合部1a31の外周面1a31aに当接して、半円弧状係合部1a31を介してバケット連結ピン2aにかかる力を受ける。なお、このようにバケット連結ピン2aを挟んで支持している場合、第1回動式半円弧状閉塞部片1a35両側の端部と、固定アゴ部1aの半円弧状係合部1a31両側の端部とは接触していても、接触しなくてもどちらでも良いが、この実施形態では、後述する図8や図9に示すように第1回動式半円弧状閉塞部片1a35の両端部と、固定アゴ部1aの半円弧状係合部1a31の両端部とは接触してなく、両端部間の内周面がバケット連結ピン2aをその両側から密接状態で確実に挟持する。
【0017】
また、第1固定基板1a2には、所定角度で第2固定基板1a4が溶接等によって接合されており、この第2固定基板1a4には、可動アゴ部1bを第2固定基板1a4に沿って図4上X方向にスライドさせるためのスライド用ガイド孔1a41が形成されている。
【0018】
可動アゴ部1bは、図1に示すようにバケット駆動シリンダ3bから伸縮するピストン3b1先端部にバケットリンク3cを介して取り付けられ、固定アゴ部1aに対しスライド可能に設けられている。具体的には、可動アゴ部1bは、図4に示すようにバケットリンク3cの先端部にバケット連結ピン2c1を介して可動側連結部1b1が回動可能に連結されており、その可動側連結部1b1の下端部には、スライド基板1b2を介して可動側フック板1b3が取り付けられている。
【0019】
可動側フック板1b3には、バケット連結ピン2b1に係合する半円弧状係合部1b31と、ロックピン1b33が挿入されるロックピン用抜差し孔1b32と、回動ピン1b37で回動可能に連結され、回動軸1b34を介して回動することによりバケット連結ピン2b1をロックする2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1b36と、ハンドル1b38とが設けられている。なお、可動側フック板1b3側の第1回動式半円弧状閉塞部片1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1b36も、図9に示す固定側フック板1a3側の第1回動式半円弧状閉塞部片1a35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36と同様に構成されており、第1回動式半円弧状閉塞部片1b35の半円弧状当接部と固定アゴ部1bの半円弧状係合部1b31との間でバケット連結ピン2aを挟んで支持している場合、第2回動式半円弧状閉塞部片1b36における回動ピン1b37と回動軸1b34との間の内側面が半円弧状係合部1b31の外周面に当接して、半円弧状係合部1b31を介してバケット連結ピン2bにかかる力を受ける。
【0020】
<建設機械のバケット取付け構造1を使用したバケット2の取付け方法>
次に、本実施形態の建設機械のバケット取付け構造1を使用したバケット2の取付け方法について説明する。
【0021】
まず、作業者がこの建設機械のアームシリンダ(図示せず。)等を駆動させて作動アーム3aを動作させて、固定アゴ部1aの固定側フック板1a3を、バケット2の後端部の一方のバケット連結ピン2aに係合させる。なお、この状態では、バケット駆動シリンダ3bのピストン3b1(図1参照。)は縮んでおり、固定側フック板1a3の半円弧状係合部1a31と可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31との間は、図4に示すようにバケット2後部部のバケット連結ピン2a,2b間よりも狭い状態にある。
【0022】
次に、作業者がこの建設機械のバケット駆動シリンダ3bを駆動してピストン3b1を伸ばして、図5に示すようにこの第2固定基板1a4のスライド用ガイド孔1a41に従って、可動アゴ部1bを第2固定基板1a4に沿ってX方向にスライドさせて、可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31をバケット2後部部のバケット連結ピン2bの方向へ移動させる。
【0023】
そして、図6に示すように可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31がバケット2後部部のバケット連結ピン2bに当たり、半円弧状係合部1a31と半円弧状係合部1b31がそれぞれバケット2後部部のバケット連結ピン2a,2bに係合すると、作業者は固定側フック板1a3および可動側フック板1b3のロックピン用抜差し孔1a32,1b32それぞれから抜差し式ロックピン1a33,1b33を抜く。
【0024】
そして、作業者は、図7に示すように固定アゴ部1aのハンドル1a38をY方向(図8上、反時計回り。)に回す一方、可動アゴ部1bのハンドル1b38をY’方向(図8上、時計回り。)に回して、回動軸1a34,1b34それぞれを介して2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1a35,1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36,1b36を回動させ、半円弧状係合部1a31と半円弧状係合部1b31の開放端側を塞ぐ。
【0025】
最後に、作業者は、図8に示すように固定側フック板1a3および可動側フック板1b3のロックピン用抜差し孔1a32,1b32それぞれに抜差し式ロックピン1a33,1b33を差し入れて2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1a35,1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36,1b36の回動をロックして、2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1a35,1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36,1b36によるバケット連結ピン2a,2bの支持状態をロックする。」

(オ)図1~図6は以下のとおり。

「
[図:0001403015000001.jpg]
」
「
[図:0001403015000002.jpg]
」
「
[図:0001403015000003.jpg]
」
「
[図:0001403015000004.jpg]
」
「
[図:0001403015000005.jpg]
」
「
[図:0001403015000006.jpg]
」

イ 甲7発明

上記アからみて、甲7には次の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているものと認める。

「バケット2の後部部に所定間隔を空けて設けられた2本のバケット連結ピン2a,2bそれぞれにパワーショベル等の建設機械の作動アーム3a先端部に取り付けられた固定アゴ部1aと、バケット駆動シリンダ3bから伸縮するピストン3b1先端部にバケットリンク3cを介して取り付けられた可動アゴ部1bとを係合させてバケット2を取付ける、建設機械のバケット取付け構造1であって、
固定アゴ部1aは、建設機械の作動アーム3aの先端部に固定アゴ連結ピン3a1を介して固定側連結板1a1が回動可能に連結されており、その固定側連結板1a1の下端部には、第1固定基板1a2を介して固定側フック板1a3が取り付けられ、
固定側フック板1a3には、バケット連結ピン2aに係合する一端開放でかつバケット連結ピン2aの外周面に応じたほぼ断面半円弧状の半円弧状係合部1a31と、回動ピン1a37で回動可能に連結され、回動軸1a34を介して回動することによりバケット連結ピン2aを支持する2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1a35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36と、が設けられ、
第1回動式半円弧状閉塞部片1a35は、基端側が回動ピン1a37を介して第2回動式半円弧状閉塞部片1a36の先端側に回動可能に連結される一方、先端側にバケット連結ピン2aの外周面に応じた半円弧状当接部1a35aを有し、その半円弧状当接部1a35aと固定アゴ部1aの半円弧状係合部1a31との間でバケット連結ピン2aを挟持して支持し、
続きを表示(全17行)
第2回動式半円弧状閉塞部片1a36は、先端側が回動ピン1a37を介して第1回動式半円弧状閉塞部片1a35の基端側に回動可能に連結される一方、基端側が回動軸1a34を介して固定アゴ部1aに回動可能に取付けられており、
第1固定基板1a2には、所定角度で第2固定基板1a4が溶接等によって接合されており、この第2固定基板1a4には、可動アゴ部1bを第2固定基板1a4に沿ってスライドさせるためのスライド用ガイド孔1a41が形成されており、
可動アゴ部1bは、バケットリンク3cの先端部にバケット連結ピン2c1を介して可動側連結部1b1が回動可能に連結されており、その可動側連結部1b1の下端部には、スライド基板1b2を介して可動側フック板1b3が取り付けられていることで、固定アゴ部1aに対しスライド可能に設けられており、
可動側フック板1b3には、バケット連結ピン2b1に係合する半円弧状係合部1b31と、回動ピン1b37で回動可能に連結され、回動軸1b34を介して回動することによりバケット連結ピン2b1をロックする2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1b36と、が設けられ、
可動側フック板1b3側の第1回動式半円弧状閉塞部片1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1b36も、固定側フック板1a3側の第1回動式半円弧状閉塞部片1a35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36と同様に構成されており、第1回動式半円弧状閉塞部片1b35の半円弧状当接部と固定アゴ部1bの半円弧状係合部1b31との間でバケット連結ピン2aを挟んで支持するものであって、
建設機械のバケット取付け構造1を使用したバケット2の取付け方法は、
まず、バケット駆動シリンダ3bのピストン3b1は縮んでおり、固定側フック板1a3の半円弧状係合部1a31と可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31との間は、バケット2後部部のバケット連結ピン2a,2b間よりも狭い状態において、
建設機械のアームシリンダ等を駆動させて作動アーム3aを動作させて、固定アゴ部1aの固定側フック板1a3を、バケット2の後端部の一方のバケット連結ピン2aに係合させ、
次に、建設機械のバケット駆動シリンダ3bを駆動してピストン3b1を伸ばして、第2固定基板1a4のスライド用ガイド孔1a41に従って、可動アゴ部1bを第2固定基板1a4に沿ってスライドさせて、可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31をバケット2後部部のバケット連結ピン2bの方向へ移動させ、
そして、可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31がバケット2後部部のバケット連結ピン2bに当たり、半円弧状係合部1a31と半円弧状係合部1b31がそれぞれバケット2後部部のバケット連結ピン2a,2bに係合し、
回動軸1a34,1b34それぞれを介して2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1a35,1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36,1b36を回動させ、半円弧状係合部1a31と半円弧状係合部1b31の開放端側を塞ぎ、
最後に、2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1a35,1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36,1b36によるバケット連結ピン2a,2bの支持状態をロックする、
建設機械のバケット取付け構造1。」

2 甲第21号証

ア 甲21には、以下の事項が記載されている。

(ア)「本発明は掘削機アームへの取着用迅速開放ヒツチに関するものである。」(2頁右上欄2~3行)

(イ)「本発明の目的は、機械的または半機械的錠止装置を有し、それにより一旦器具が取着されると、器具を取り外すことなく油圧装置(または他の係合装置)を非作動にすることができるヒツチを提供することにある。」(2頁右上欄17行~左下欄1行)

(ウ)「多種の器具が油圧掘削機に使用されることができ、例えば器具はバケツト、オーガ、ドリル、タンパ、縦びきノコ歯、油圧ドリル、グレーダ刃、または他の市場で利用し得る器具であつても良い。各器具は掘削機のジツパおよび傾斜リンクに取着されることができるようなピンホールを備える。かかる器具は通常ピンホールを貫通する一対のピンを備えておりかつ本発明のヒツチは、如何なる永久的変更なしに、これらのピンと協働するように設計される。」(2頁左下欄7~16行)

(エ)「しかしながら、駆動手段がリンクを枢動するために設けられてもよい。この駆動手段は油圧モータ、油圧ラムまたは同等の電気的または機械的作動機構であつても良い。一般に、駆動手段はリンクを折り曲げることによりヒツチを少なくとも外すように配置される。これはジヨー間の距離を減少しかつ器具ピンからヒツチを外す。ピン間隔の僅かな変化を許容するように、リンクを相対的に長手方向に摺動するための手段が設けられる。これは一方のリンクを介して自由に走行しかつ第2のリンクに軸承された偏心軸を使用してなされても良い。軸は前記一方のリンクに固定されたモータによつて作動される。」(3頁左上欄6~18行)

(オ)「ヒツチ5は外方リンク10および内方リンク11からなる。リンク10,11は中心で枢動可能に接続されかつそれらの自由端は器具ピン8,9を取り巻くためそれぞれのジヨー12,13を備えている。リンクは外方リンク10に設けられた突出部14が内方リンク11上のストツパ15に当接するとき枢軸6および7に関連して中心を越えて錠止される。」(3頁右上欄14行~左下欄1行)

(カ)FIG.1、FIG.2は以下のとおり。

「
[図:0001403015000007.jpg]
」
「
[図:0001403015000008.jpg]
」

3 甲第9号証の5

甲9の5は以下のものである。

[図:0001403015000009.jpg]

4 甲第10号証

甲10の1枚目は以下のものである。

[図:0001403015000010.jpg]

5 甲第11号証

甲11は以下のものである。

[図:0001403015000011.jpg]

6 甲第8号証の1

甲8の1(顧問契約書)には、以下の記載がある。

「和光機械工業株式会社(以下「甲」という)と丸山 満(以下「乙」という)とは、乙が甲のために行う顧問業務に関して、次のとおり契約する。
第1条(契約の成立)甲は、乙に対し、乙が甲の顧問としてクイックロックの製品に関する製造・販売の指導、助言等を行うことを委託し、乙はこれを承諾した。また乙は甲に対し特許出願番号148793の本クイックロックにかかわる部分の通常実施権を許諾した。
第2条(誠実業務)乙は、甲の顧問として、甲の最善の利益を図るべく顧問業務を誠実に遂行するものとする。
・・・
続きを表示(全13行)
第6条(秘密保持義務)乙は、顧問業務遂行上、乙において覚知した甲の業務内容について、第三者に漏洩してはならない。
第7条(契約期間)本契約期間は、平成26年11月1日から平成27年4月30日までとする。・・・本契約は、自動的に1年間延長されるものとし、以降も同様とする。
・・・
平成26年10月27日
(甲)・・・
和光機械工業株式会社
・・・
(乙)・・・
丸山 満」

7 甲第13号証の4~7

13の4~7の各1枚目は、以下のものである。

・甲13の4の1枚目

[図:0001403015000012.jpg]

・甲13の5の1枚目

[図:0001403015000013.jpg]

・甲13の6の1枚目

[図:0001403015000014.jpg]

・甲13の7の1枚目

[図:0001403015000015.jpg]

8 甲第23号証の1、2

甲23の1、2は、以下のものである。

・甲23の1

[図:0001403015000016.jpg]

・甲23の2

[図:0001403015000017.jpg]

9 甲第23号証の3

甲23の3は、「新型クイックロックに関する経緯まとめ」と題する書面である甲6に、手書きで追記したものであって、以下の事項が記載されている。

(1)「年」の欄が「2013(H25)」、「月日」の欄が「6/14」には、「内容」の欄に「日乃本にて丸山氏よりカプラ製品を見せられ和光で生産できないか相談を受ける」と記載され、

以下同様に、

「2014(H26)」「4/9」には、「丸山氏の図面で試作準備に取り掛かる。図面の3次元CAD化と見積り始める。」と、

「2014(H26)」「10/27」には、「丸山氏と顧問契約を結ぶ。」と、記載されている。

(2)「2014(H26)」「4/9」には、「丸山氏の図面で試作準備に取り掛かる。図面の3次元CAD化と見積り始める。」と、

「2014(H26)」「8/1」には、「(株)日乃本にて丸山氏試作確認。」と、

「2015(H27)」「1/13」には、「タカチホにてスプリング検証試験。」と、

「2015(H27)」「11/7」には、「住友建機展示会出展。」と、

「2016(H28)」「8/9」には、「(株)日乃本にて丸山氏量産試作確認。」と、記載されている。

(3)「2016(H28)」「9/13」には、「改良型の設計開始。」と、

「2017(H29)」「1/24」には、「(株)日乃本にて丸山氏新可動アーム試作確認。」と、記載されている。

(4)「2017(H29)」「1/26」には、「大割機取付け対応のため再設計開始。」と、

「2017(H29)」「7/11」には、「タカチホにて着脱確認試験実施。」と、

「2017(H29)」「8/23」には、「タカチホにて、丸山氏・(株)日之本の國府田専務立ち会いのもと着脱動作確認。」と、

「2017(H29)」「10/6」には、「(株)日之本にて丸山氏可動アーム回動フック式試作確認。(写真動画有り)」と、記載されている。

(5)「2017(H29)」「10/16」には、「改良修正の追加工開始。」と、

「2017(H29)」「11/2」には、「日立建機にて大割機の着脱確認試験実施。」と、

「2018(H30)」「4/24」には、「星山興業にてフィールドテスト状況の現場確認。(写真動画有り)」と、記載されている。

(6)2014(H26)4/9~2016(H28)8/9、2016(H28)9/13~2017(H29)1/24、2017(H29)1/26~10/6、2017(H29)10/16~2018(H30)4/24の期間に対して、手書きで矢印が引かれており、各矢印に、第1の1試作機、第1の2試作機、第1の3試作機、第2試作機と手書きで書き加えられている。

10 甲第25号証の1

甲25の1は、「出張報告書」であって、

「期間」の欄に、「H26年8月1日(金)」と、

「目的」の欄に、

「参加者:丸山、
・・・
和光機械 カイ、ヤマ、・・・、エン」(当審注:「丸山」は丸山満氏を、「ヤマ」は大和氏を、「エン」は遠藤氏を示すことが手書きされている。以降の出張報告書等も同様。)と、

「内容」の欄に、

「1.重機に取付け、標準バケットの着脱動作確認
・・・
・加藤のバケットは、バケットの外板からピンまで距離が狭く、クイックロックのボス回りの板に干渉した。
→実績のあるコベルコのバケットに変更して着脱動作確認を行った。
・重機着脱操作は、丸山氏、ロックピン・クランプアームの操作をエン。
→要領を得るのに数回練習したのち、スムーズに着脱動作行い確認を行った。
・丸山氏の感想として基本的な動作、仕上りに問題はないが、改良点がいくつかあった。」と、記載されている。

11 甲第25号証の4

甲25の4は「出張報告書」であって、

「期間」の欄に、「2016年8月9日(火)」と、

「目的」の欄に、

「出席者:・・・
丸山氏
カイ、ヤマ、フジ、エン」と、

「内容」の欄に、

「1.(株)日乃本にてWQL45のデモ・着脱確認した内容を報告します。」、

「・スケルトンバケットのセットプレート内で干渉する部分があった。→標準バケットでは干渉しないことは確認済みだが、他社製のものでも干渉しないように修正と確認が必要と考えます。
・コツがなくて着脱できなければならない。(丸山氏)
→現状では手前に寄せないと可動アームの軌道に取付ピンが来ない。(エン)
・アームを垂直にした位置あたりで取付けたい。手前に寄せることはブレーカーの時接触する。(丸山氏)」、
「・油圧ブレーカーを取付け時、いくらバケットリンクを操作しても固定アームが開かず取付けできなかった。
油圧ブレーカーはバケットよりピン間距離が離れ、可動アームが開きにくい位置関係にあったので、バネの効果は必要ないように感じた。(エン)」と、記載されている。

12 甲第25号証の5

甲25の5は「出張報告書」であって、

「期間」の欄に、「2017年1月24日(火)」と、

「目的」の欄に、

「出席者:・・・
丸山氏
カイ、ヤマ、フジ、エン」と、

「内容」の欄に、

「4)油圧ブレーカの着脱実演行いました。
・装着には2本の取付ピンに対して同時に固定アームと可動アームのフックをかける操作が必要。(エン)
・2本の取付ピンに対して同時にフックをかけるコツがないと取り付けられないようではダメ(丸山氏)
・手前側取付ピンに固定アームフックをはめてから、可動アームのフックをはめるのが理想(丸山氏)」、
「6)大割機の着脱トライについて
・手前側取付ピンに固定アームのフックをはめることはできたが、可動アームは閉じたままで取付ピンに向かう動きが出来なかった。手前側取付ピンに固定アームのフックをはめたまま持ち上げ、可動アームが開くポイントがないか動作確認行いましたが、可動アームが開かず大割機を装着できなかった。(エン)
7)丸山氏の可動アームの提案
・ピン間距離370~480の範囲で取付ピンを受ける傘型の受けるアーム構造。傘型の傾斜で定位置に取付ピンをガイドするので自然とアームは開く(丸山)
・・・
・大割機の着脱、傘型を参考にした構造とロックの方法・強度を考えて検討する。」と、記載されている。

13 甲第25号証の6

甲25の6は、「報告書」であって、

「期間」の欄に、「2017年8月23日(水)」と、

「目的」の欄に、

「出席者:・・・丸山氏
クロ、エン」と、

「内容」の欄に、

「5)油圧ブレーカの着脱実演行いました。(クロ)
・回転フックで取付ピンをロックする操作が重い。(丸山)
→油圧ブレーカの角度を変えることで回転フックに油圧ブレーカの自重負荷を緩和できるポイントを確認し問題解消しました。土間に対し油圧ブレーカのロッドがおおよそ30度くらいの角度が良好でした。
そのポジションのままで回転フックと固定アームのロック操作が可能です。
5)標準バケットの着脱実演行いました。(クロ)
・丸山氏は前回の試作のイメージで操作を、固定アームを取付ピンを引掛け、そのまま持ち上げてしまうと可動アームが開いたままになり、可動アーム側の取付ピンがはまらない状態でした。
→バケットを置いたまま、可動アーム側の操作まですると自然と取付ピンが入る操作方法を教え、実際操作してもらい、問題なく取付くこと確認していただきました。」と、記載されている。

14 甲25号証の7

甲25の7は、「出張報告書」であって、

「期間」の欄に「2017年10月6日(金)」と記載され、

「目的」の欄に、

「出席者:・・・
丸山氏
カイ、ヤマ、フジ、エン」と、

「内容」の欄に

「4)油圧ブレーカの着脱実演行いました。
・8/23山形にて國府田専務と丸山さんに確認していただいた時と同様に着脱確認できました。
5)スケルトンバケットの着脱実演行いました。
・8/23山形では標準バケットで山形にて國府田専務と丸山さんに確認していただきましたが、その時と同様に着脱確認できました。
6)可動アームが閉じたときのストッパーについて
・ヤマよりストッパー位置についてアドバイス頂きました。開いたときのストッパーと一体化したいと思います。
7)大割機の着脱トライについて
・可動アームのフックまで取付ピンを誘導できたが、どのポジションで試みても回転フックの操作が重くロックが出来なかった。これは回転フック内面に接触している大割機の取付ピンからかかる荷重が抵抗となり操作ができなかったと考ます。
・対策として回転フックの内面を1mm大きくし、大割機の取付ピンからの荷重がかからないようにすることを打合せしました。
可動アームのフックと回転フックの内面は同じR寸法に設定しているので、回転フックの内面を1mm大きくした場合、アタッチメントの取付ピンの荷重は可動アームのフックだけが直接受けるようになるので、回転フックの操作はスムーズになると考えています。」と、記載されている。

15 甲第25号証の8

甲25の8は「出張報告書」であって、

「期間」の欄に「2018年4月24日(火)」と記載され、

「目的」の欄に、

「出席者:・・・
フジ、エン」と、

「内容」の欄に

「1)4月より場内にて1日2時間ほど利用している。アタッチメントバケットとスケルトンバケット。着脱頻度は1日数回。(オペ)
・・・
2)使用感について、着脱の操作が簡単。ピンをさすだけでロックできるので簡単で使い易い。(オペ)」と、記載されている。

16 甲第25号証の10、11、13、15,16、18

甲25の10、11、13,15、16,18は、以下のものである。

・甲25の10

[図:0001403015000018.jpg]

・甲25の11

[図:0001403015000019.jpg]

・甲25の13

[図:0001403015000020.jpg]

・甲25の15

[図:0001403015000021.jpg]

・甲25の16

[図:0001403015000022.jpg]

・甲25の18

[図:0001403015000023.jpg]

17 甲第26号証の10~25

甲26の10~25は、以下のものである。

・甲26の10

[図:0001403015000024.jpg]

・甲26の11

[図:0001403015000025.jpg]

・甲26の12

[図:0001403015000026.jpg]

・甲26の13

[図:0001403015000027.jpg]

・甲26の14

[図:0001403015000028.jpg]

・甲26の15

[図:0001403015000029.jpg]

・甲26の16

[図:0001403015000030.jpg]

・甲26の17

[図:0001403015000031.jpg]

・甲26の18

[図:0001403015000032.jpg]

・甲26の19

[図:0001403015000033.jpg]

・甲26の20

[図:0001403015000034.jpg]

・甲26の21

[図:0001403015000035.jpg]

・甲26の22

[図:0001403015000036.jpg]

・甲26の23

[図:0001403015000037.jpg]

・甲26の24

[図:0001403015000038.jpg]

・甲26の25

[図:0001403015000039.jpg]

第5 当審の判断

1 無効理由1

(1)共同発明者の判断基準

ア 特許法第38条について、次のように判示する裁判例がある。

発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項)、「産業上利用することができる発明をした者は、・・・その発明について特許を受けることができる」と規定されている(同法29条1項柱書き)。そして、発明は、その技術内容が、当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されたときに、完成したと解すべきである(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決民集31巻6号805頁参照)。

したがって、発明者とは、自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者、すなわち、当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成するための創作に関与した者を指すというべきである。もとより、発明者となるためには、一人の者がすべての過程に関与することが必要なわけではなく、共同で関与することでも足りるというべきであるが、複数の者が共同発明者となるためには、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことを要する。そして、発明の特徴的部分とは、特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち、従来技術には見られない部分、すなわち、当該発明特有の課題解決手段を基礎づける部分を指すものと解すべきである(知財高裁平成19年(行ケ)第10278号事件判決、東京地裁平成24年(ワ)25935号事件判決、知財高裁平成27年(ネ)10061号事件判決)。

イ 上記裁判例等によれば、発明者であるといえる、つまり特許を受ける権利を得るためには、発明の特徴的部分の完成に現実に関与したことが必要であって、その関与とは、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与することである。

以上の点から、まず、本件特許発明の特徴的部分は何なのかを判断し、次に、遠藤氏が、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与した者、すなわち特許を受ける権利を有する者(共同発明者)といえるのかどうかについて判断する。

(2)本件特許明細書の記載

本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。)

ア「【背景技術】

【0002】

従来より、パワーショベル等の建設機械のアタッチメント取付け冶具として、バケット等のアタッチメントに所定間隔を空けて設けられた2本の連結ピンにそれぞれ一端開放の固定アゴ部と可動アゴ部とを係合させた後、規制材とコイルばね等により固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢する機構や(例えば、特許文献1参照。)、ネジ等を駆動させることによって可動アゴ部を固定アゴ部から離れるように付勢したり(例えば、特許文献2参照。)、さらには専用のバケットシリンダによって可動アゴ部を固定アゴ部から離れるように付勢する機構(例えば、特許文献3参照。)や、可動アゴ部と固定アゴ部のピン収容部を固定アゴ部側閉じ部と可動アゴ部側閉じ部とによって閉じるように構成したものも提案されている(例えば、特許文献4参照。)。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】 特開2011-231505号公報

【特許文献2】 実用新案登録第3134696号公報

【特許文献3】特開平2006-169886号公報

【特許文献4】 特許第6211324号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかし、上述の特許文献1~3に記載の建設機械のアタッチメント取付け冶具では、一端開放の固定アゴ部と可動アゴ部にそれぞれ連結ピンを係合させた後、規制材とコイルばねや、ネジまたはバケットシリンダ等によって固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢する規制機構が必要であるため、その分だけコストが増大するという問題があった。

【0005】

また、ネジまたはバケットシリンダ等によって固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢しているものの、連結ピンが係合している固定アゴ部と可動アゴ部とは、その一端が開放したままであるため、連結ピンが外れるおそれもあった。

【0006】

また、特許文献4に記載の建設機械のアタッチメント取付け冶具では、固定アゴ部と可動アゴ部の開口部を、それぞれ、固定アゴ部側閉じ部と可動アゴ部側閉じ部とによって閉じるように構成されていているため、連結ピンが外れるおそれはないものの、熟練者でない場合には、固定アゴ部と可動アゴ部のピン収容部それぞれに連結ピンを収容することが困難であるという問題があった。

【0007】

そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、固定アゴ部に対する可動アゴ部の開き動作やその開き角度等を規制するネジやバケットシリンダ等の規制機構が不要でコストを削減できる共に、固定アゴ部と可動アゴ部のピン収容部それぞれに連結ピンを収容して連結ピンが外れることを確実に防止できる建設機械のアタッチメント取付け冶具および建設機械を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

前記課題を解決するため、本発明に係る建設機械のアタッチメント取付け冶具は、バケット等の各種アタッチメントに所定間隔を空けて設けられた固定アゴ部側連結ピンと可動アゴ部側連結ピンそれぞれをパワーショベル等の建設機械の作動アーム先端部に取り付けられた固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部と、前記建設機械の作動アームに設けられたバケットシリンダから伸縮するピストン先端部に可動アゴ連結リンクを介して取り付けられた可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部とに収容させた後、前記固定アゴ部側ピン収容部の開口部と前記可動アゴ部側ピン収容部の開口部とをそれぞれ固定アゴ部側閉じ部と可動アゴ部側閉じ部とによって閉じてアタッチメントを取付ける建設機械のアタッチメント取付け冶具であって、前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部外側に設けられ、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接して当該可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面と、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させる際、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接するように前記固定アゴ部に対する前記可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する閉じ過ぎ防止部とを有することを特徴とする。

また、本発明に係る建設機械のアタッチメント取付け冶具では、前記固定アゴ部と前記可動アゴ部とは、回動軸を介して回動可能に構成されていると共に、前記回動軸を介して前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に対する前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開き過ぎを防止する開き過ぎ防止部を設けており、前記建設機械の作動アームに取り付けられたバケットシリンダによって前記回動軸を介して前記固定アゴ部と前記可動アゴ部とが回動して前記固定アゴ部側ピン収容部と前記可動アゴ部側ピン収容部との間隔が狭くなったり拡がり、前記固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンが収容され、前記可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンが収容できることも特徴とする。

また、本発明に係る建設機械のアタッチメント取付け冶具では、建設機械のアタッチメント取付け冶具において、前記閉じ過ぎ防止部は、前記固定アゴ部における前記回動軸に近い位置に溶接され、前記可動アゴ部の前記回動軸に近い基部が当接するストッパーの一部であり、前記可動アゴ部の前記回動軸に近い基部が前記固定アゴ部の前記ストッパーに当接した状態で、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させた場合には、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接することも特徴とする。

また、本発明に係る建設機械のアタッチメント取付け冶具では、前記閉じ過ぎ防止部は、前記固定アゴ部と前記可動アゴ部の対向する腹部であり、前記固定アゴ部の腹部と前記可動アゴ部の腹部とが当接した状態で、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させた場合には、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接することも特徴とする。

また、本発明に係る建設機械は、上述のいずれかの建設機械のバケット取付け構造を備えたことを特徴とする。

【発明の効果】

【0009】

本発明に係る建設機械のアタッチメント取付け冶具および建設機械では、可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部周囲に設けられ、可動アゴ部側連結ピンに当接して当該可動アゴ部側連結ピンが可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面と、固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に固定アゴ部側連結ピンを収容後、建設機械の作動アームに設けられたバケットシリンダの動作により可動アゴ部を可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に可動アゴ部側連結ピンを収容させる際、建設機械で取り付ける各種アタッチメントの内、固定アゴ部側連結ピンと可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、可動アゴ部側連結ピンが可動アゴ部側連結ピン案内面に当接するように固定アゴ部に対する可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する閉じ過ぎ防止部とを有する。

そのため、固定アゴ部に対する可動アゴ部の開き動作やその開き角度等を規制するネジやバケットシリンダ等の規制機構が不要でコストを削減できる共に、固定アゴ部と可動アゴ部のピン収容部それぞれに連結ピンを収容して連結ピンが外れることを確実に防止できる。」

イ「【0013】

なお、図1において、3dは、作動アーム3aに基端部が回動可能に連結される一方、バケットシリンダ3bから伸縮するピストン3b1の先端部と可動アゴ連結リンク3cの基端部に先端部が回動可能に連結されたアームリンクである。また、アタッチメント取付け冶具1以外のバケット2や、作動アーム3a、バケットシリンダ3b、可動アゴ連結リンク3c、アームリンク3d等の構成や連結構造は、従来のものと同じで周知であり、さらには、アタッチメントとして、バケット2以外のドリルや杭打機、破砕機等のアタッチメントも当然に適用可能である。」

ウ「【0026】

<建設機械のアタッチメント取付け冶具1を使用したアタッチメントの取付け方法>

次に、以上のように構成された実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1を使用して、この建設機械で取り付ける各種アタッチメントの内、固定アゴ部側連結ピン2aと可動アゴ部側連結ピン2b間のピン間隔が例えば、320mm程度の最小のバケット2’と、ピン間隔が例えば、580mm程度の最大の破砕機2”とを取り付ける場合について説明する。

【0027】

(ピン間隔が最小のバケット2’を取り付ける場合)

・・・

【0035】

これでこの建設機械では、本実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1によって取り付け固定したバケット2’を、従来技術のように固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの開き動作やその開き角度等を規制するネジや油圧シリンダ3b等の規制機構を設けることなく使用することができる。

【0036】

(ピン間隔が最大の破砕機2”を取り付ける場合)

・・・

【0044】

これでこの建設機械では、本実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1によって取り付け、固定したピン間隔が最大の破砕機2”も、従来技術のように固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの開き動作やその開き角度等を規制するネジや油圧シリンダ3b等の規制機構を設けることなく使用することができる。

【0045】

その結果、実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1によれば、固定アゴ部側連結ピン2aと可動アゴ部側連結ピン2b間のピン間隔が最小であるバケット2’のピン間隔と、最大の破砕機2” のピン間隔との間のアタッチメントでも、固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの開き動作やその開き角度等を規制するネジや油圧シリンダ3b等の規制機構を設けることなく上記と同様に連結およびロックして使用することができる。」

エ「【0046】

<本実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1の主な効果>

以上説明したように、本実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1では、可動アゴ部1bの可動アゴ側ピン収容部1b30の開口部周囲に設けられ、可動アゴ部側連結ピン2bに当接して可動アゴ部側連結ピン2bが可動アゴ側ピン収容部1b30に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面1b39と、固定アゴ部1aの固定アゴ部側ピン収容部1a30に固定アゴ部側連結ピン2aを収容後、建設機械の作動アーム3aに設けられた油圧シリンダ等の動作により可動アゴ部1bを可動アゴ部側連結ピン2bに近付けて当該可動アゴ部1bの可動アゴ側ピン収容部1b30に可動アゴ部側連結ピン2bを収容させる際、建設機械で取り付ける各種アタッチメントの内、固定アゴ部側連結ピン2aと可動アゴ部側連結ピン2b間のピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピン2bでも、あるいはそのピン間隔が最大の可動アゴ部側連結ピン2bでも、可動アゴ部側連結ピン2bが可動アゴ部側連結ピン案内面1b39に当接するように固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの閉じ過ぎを防止するストッパー1dの閉じ過ぎ防止部1d1とを有する。

【0047】

そのため、本実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1では、固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの開き動作やその開き角度等を規制するネジや油圧シリンダ3b等の規制機構が不要でコストを削減できる共に、固定アゴ部1aと可動アゴ部1bから連結ピンが外れることを確実に防止でき、固定アゴ部1aと可動アゴ部1bのピン収容部それぞれに連結ピンを収容することができる。

【0048】

また、本実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1のストッパー1dには、固定アゴ部1aと可動アゴ部1bとは、回動軸1cを介して回動可能に構成されているため、回動軸1cを介した固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの開き過ぎを防止する開き過ぎ防止部1d2を設けている。

【0049】

そのため、本実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1では、固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの開き動作やその開き角度等を規制するネジや油圧シリンダ3b等の規制機構を設けなくても固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの開き過ぎも防止できるため、この点でコストを削減できると共に、アタッチメントの取り付け作業性を向上させることができる。

【0050】

尚、上記実施形態の説明では、固定アゴ部1aの固定側連結板1a1に設けた1つのストッパー1dの角部にそれぞれ本発明の閉じ過ぎ防止部1d1と開き過ぎ防止部1d2としての機能を持たせて説明したが、本発明では、これに限らず、例えば図17(a),(b)に示すように固定アゴ部1aの固定側連結板1a1に閉じ過ぎ防止部1d1’と開き過ぎ防止部1d2’とを独立して設けて、回動軸1cを介した固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの閉じ過ぎや開き過ぎを防止するように構成しても良い。

【0051】

また、開き過ぎ防止部1d2’は図17(a),(b)に示す場合と同様に固定アゴ部1aの固定側連結板1a1に設ける一方、例えば、図18に示すように固定アゴ部1aの固定側フック板1a3における可動アゴ部1bの可動側フック板1b3に対向する部分を膨出させて閉じ過ぎ防止部1d1”とし、固定アゴ部1aの半円弧状係合部1a31の内側である固定アゴ部側ピン収容部1a30に固定アゴ部側連結ピン2aを収容後、建設機械の作動アーム3aに設けられたバケットシリンダ3bの動作により可動アゴ部1bを可動アゴ部側連結ピン1bに近付けて当該可動アゴ部1bの後述する半円弧状係合部1b31の内側である可動アゴ部側ピン収容部1b30に可動アゴ部側連結ピン2bを収容させる際、図18に示すように固定アゴ部1aの固定側フック板1a3における可動アゴ部1bの可動側フック板1b3に対向する膨出部分である閉じ過ぎ防止部1d1”が可動アゴ部1bの可動側連結板1b1に当接して、この建設機械で取り付ける各種アタッチメントの内、ピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピン2bおよび最大の可動アゴ部側連結ピン2bでも、可動アゴ部側連結ピン2bが可動アゴ部側連結ピン案内面1b39に当接するように構成しても良いし、図示しないが可動アゴ部1bの可動側フック板1b3における固定アゴ部1aの固定側フック板1a3に対向する部分を膨出させて閉じ過ぎ防止部1d1”としても勿論良い。」

(3)本件特許発明の目的及び効果と、該目的等に対応する発明の特徴的部分

上記(2)の記載からみて、本件特許発明の課題、目的及び効果と、該目的等に対応する発明の特徴的部分は、以下のとおりである。

ア 課題、目的及び効果

従来より、建設機械のアタッチメント取付け冶具として、アタッチメントに所定間隔を空けて設けられた2本の連結ピンにそれぞれ一端開放の固定アゴ部と可動アゴ部とを係合させた後、規制材とコイルばね等により固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢する機構や、ネジ等を駆動させることによって可動アゴ部を固定アゴ部から離れるように付勢したり、さらには専用のバケットシリンダによって可動アゴ部を固定アゴ部から離れるように付勢する機構が提案されているものの、一端開放の固定アゴ部と可動アゴ部にそれぞれ連結ピンを係合させた後、(a)規制材とコイルばねや、ネジまたはバケットシリンダ等によって固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢する規制機構が必要であるため、その分だけコストが増大するという問題があったり、また、ネジまたはバケットシリンダ等によって固定アゴ部から可動アゴ部が離れるように付勢しているものの、(b)連結ピンが係合している固定アゴ部と可動アゴ部とは、その一端が開放したままであるため、連結ピンが外れるおそれもあり、(【0002】~【0005】)

固定アゴ部と可動アゴ部の開口部を、それぞれ、固定アゴ部側閉じ部と可動アゴ部側閉じ部とによって閉じるように構成したものもあるが、連結ピンが外れるおそれはないものの、(c)熟練者でない場合には、固定アゴ部と可動アゴ部のピン収容部それぞれに連結ピンを収容することが困難であるという課題を見いだしたことから、(【0006】)

このような課題に着目し、(d)固定アゴ部に対する可動アゴ部の開き動作やその開き角度等を規制するネジやバケットシリンダ等の規制機構が不要でコストを削減できる共に、(e)固定アゴ部と可動アゴ部のピン収容部それぞれに連結ピンを収容して連結ピンが外れることを確実に防止できる建設機械のアタッチメント取付け冶具および建設機械を提供することを目的とするものであって、(【0007】)

さらに、(f)固定アゴ部側連結ピン2aと可動アゴ部側連結ピン2b間のピン間隔が最小であるバケット2’のピン間隔と、最大の破砕機2”のピン間隔との間のアタッチメントでも、固定アゴ部1aに対する可動アゴ部1bの開き動作やその開き角度等を規制するネジや油圧シリンダ3b等の規制機構を設けることなく連結およびロックして使用することができる、との効果を奏するもの(【0045】)である。

イ 発明の特徴的部分

本件特許の明細書の発明の詳細な説明に従来例として挙げられた特許文献4であって、本件無効審判事件の無効理由4の主引用例として提出された甲第7号証(特許第6211324号公報)の記載、及び技術常識を踏まえると、上記アから、本件特許発明の課題、目的及び効果に対応した特徴的部分(特に【0008】参照。)は、以下のとおりのものと認める。

〔本件特許発明1〕

(a)「前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部外側に設けられ、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接して当該可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面」(以下「請求項1案内面」という。)

(b)「(前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させる際、)前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接するように前記固定アゴ部に対する前記可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する閉じ過ぎ防止部」(以下「請求項1閉じ過ぎ防止部」という。)

〔本件特許発明2〕

「前記回動軸を介して前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に対する前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開き過ぎを防止する開き過ぎ防止部を設けており、(前記建設機械の作動アームに取り付けられたバケットシリンダによって前記回動軸を介して前記固定アゴ部と前記可動アゴ部とが回動して前記固定アゴ部側ピン収容部と前記可動アゴ部側ピン収容部との間隔が狭くなったり拡がり、前記固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンが収容され、前記可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンが収容できること)」(以下「請求項2開き過ぎ防止部」という。)

〔本件特許発明3〕

「前記閉じ過ぎ防止部は、前記固定アゴ部における前記回動軸に近い位置に溶接され、前記可動アゴ部の前記回動軸に近い基部が当接するストッパーの一部であり、前記可動アゴ部の前記回動軸に近い基部が前記固定アゴ部の前記ストッパーに当接した状態で、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させた場合には、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接すること」(以下「請求項3閉じ過ぎ防止部」という。)

〔本件特許発明4〕

「前記閉じ過ぎ防止部は、前記固定アゴ部と前記可動アゴ部の対向する腹部であり、前記固定アゴ部の腹部と前記可動アゴ部の腹部とが当接した状態で、前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させた場合には、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接すること」(以下「請求項4閉じ過ぎ防止部」という。)

(4)発明の特徴的部分の完成に対して遠藤氏が創作的に寄与したかについて

ア 証拠の記載に基づく遠藤氏の開発の変遷

(ア)開発の契機

甲23の3から(上記第4の9(1))、2013(H25)年6月14日に、日乃本にて丸山氏よりカプラ製品を見せられ和光で生産できないか相談を受けることが、

2014(H26)年4月9日に、遠藤氏は、丸山氏の図面で試作準備に取り掛かり、図面の3次元CAD化と見積りを始めることが、

2014(H26)年10月27日に、請求人と丸山氏が顧問契約書(甲8の1)を作成して顧問契約を結んだことが分かる。

(イ)各試作機の開発時期

遠藤氏が開発に関わったと請求人が主張する本件特許発明に係る試作機について、審判請求時には「本件第1試作機」及び「本件第2試作機」であったところ(上記第3の3(1)ア(イ)c等)、さらに大規模な改良ごとに第1の1試作機、第1の2試作機、第1の3試作機、第2試作機と4台に分けられていることから(上記第3の3(1)イ(イ))、この4つの各試作機に沿って、遠藤氏の開発の変遷に関する各証拠の記載(図面や報告書等については、それらの作成日後に、手書きで追記したところがある。)について、以下検討する。

そして、甲23の3の記載(上記第4の9(6))から、第1の1試作機、第1の2試作機、第1の3試作機、第2試作機は、それぞれ、2014年(平成26年)4月9日から2016年(平成28年)8月9日まで、2016年(平成28年)9月13日から2017年(平成29年)1月24日まで、2017年(平成29年)1月26日から10月6日まで、2017年(平成29年)10月16日から2018年(平成30年)4月24日まで、開発が行われていたものと認められる。

(ウ)第1の1試作機

a 甲9の5

甲9の5は、「新型クイックロック 可動アーム引き寄せスプリングの重機取付動作検証」と題する書面であって、

右上に「2015/1/14」と、

1~4行目に、

「アタッチメントを取り付ける際、可動アームは固定アームに引き寄せていないと取付けしにくい問題について引寄せスプリングを追加していますが今回タカチホ場内にて重機に取付て効果を確認したことを報告します。
1.目的
引寄せスプリングの効果の確認」と記載され、

中段には、左右に写真がある。

b 甲23の2

甲23の2は、甲9の5の中段左側の写真を拡大したものであって、甲23の2から、固定アゴ部内側における回動軸に近い位置にストッパーが取り付けられ、該ストッパーの上面には斜度が違う2つの傾斜面が形成されており、可動アゴ部の回動軸に近い基部は、可動アゴ部の回動角度によって、ストッパーの上面の1つの傾斜面に当接することが看取できる。

とすれば、該2つの傾斜面は、固定アゴ部に対する可動アゴ部の開き角度を、最小及び最大の角度に制限するものであることが理解できる。

c 甲25の1

甲25の1の記載(上記第4の10)から、平成26年8月1日に、丸山満氏、大和氏及び遠藤氏が立ち会いの下、バケットの着脱動作確認を行い、スムーズに行えることが確認されたことが分かる。

d 甲25の4

甲25の4の記載(上記第4の11)から、平2016年8月9日に、丸山満氏、大和氏及び遠藤氏が立ち会いの下、バケットよりピン間距離が離れた油圧ブレーカーの着脱確認を行ったが、いくつかの課題があったことが分かる。

e 甲26の2

甲26の2は、甲26の1(2021年7月21日作成の三次元CADのアニメーション動画)の元となった、2014年4月10日作成の3次元CADの画面のキャプチャであって、甲26の2から、固定アームの内側面の回動軸近傍に、直方体の突起が形成されており、また、固定アゴ部の先端側かつ可動アゴ部側と、可動アゴ部の先端側かつ固定アゴ部側とが当接していることが看取できる。

(エ)第1の2試作機

a 甲25の10及び甲25の11

甲25の11の「設計」及び「製図」の欄には、共に2016/9/27と記載され、「遠藤」の印が押印されているが、甲25の10の上記欄の記載は不明瞭である。しかしながら、甲25の10及び甲25の11は、それらの図の内容からみて、同様の経緯により作成された設計図面と推認されるから、甲25の10及び甲25の11は、共に、遠藤氏が設計及び製図したものであって、同時期に作成されたものと認められる。

そして、甲25の10及び甲25の11から、可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部の内側(固定アゴ部側)に、該開口部に連続して案内面が形成されていることが看取できる。

b 甲25の5

甲25の5の記載(上記第4の12)から、2017年1月24日に、丸山満氏、大和氏及び遠藤氏が立ち会いの下、油圧ブレーカーの着脱実演、大割機の着脱を行ったが、いくつかの課題があったことが分かる。

(オ)第1の3試作機

a 甲25の13

甲25の13は、その記載された図からみて、設計図面であって、

「設計」及び「製図」の欄には、共に「2017/5/12」と記載され、「遠藤」の印が押印されている。

そして、甲25の13から、可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部の固定アゴ部と反対側に、該開口部から屈曲点を介して案内面が形成されていることが看取できる。

b 甲9の14、甲26の10~12

甲9の14は、平成29年7月11日の株式会社高千穂での試験を撮影した動画であって、甲26の10~12は、甲9の14の、それぞれ50秒、1分4秒、1分6秒時点のスナップショットである。

そして、甲9の14、甲26の10~12から、以下の事項が看取できる。

(a)可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部における固定アゴ部と反対側には、開口部に連続して案内面が形成されており(甲26の10)、固定アゴ部の回動軸近傍の内側面にストッパーが設けられており(甲26の10)、固定アゴ部と可動アゴ部が開いた状態で、可動アゴ部の回動軸近傍がストッパーに当接している(甲26の10)。

(b)可動アゴ部の固定アゴ部に対向する部位と、固定アゴ部の可動アゴ部に対向する部位とが、衝突し(甲26の11)、操縦席から近い方のバケットのピンは、固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部の開口部に収容され、操縦席から遠い方のバケットのピンは、案内面における開口部の入り口近傍に当接している(甲26の11)。

(c)操縦席から遠い方のバケットのピンは、可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部に収容されている(甲26の12)。

(d)甲26の11~甲26の12の間において(甲9の14の1分4秒~1分6秒)、操縦席から遠い方のバケットのピンは、案内面に案内されて可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部方向に移動していることが理解できる。

c 甲9の15、甲26の13及び14

甲9の15は、平成29年7月11日の株式会社高千穂での試験を撮影した動画であって、甲26の13及び14は、甲9の15の45秒、53秒時点のスナップショットである。

そして、甲9の15、甲26の13及び14から、以下の事項が看取できる。

(a)油圧ブレーカーの着脱動作試験を行った(甲9の15)。

(b)可動アゴ部の固定アゴ部に対向する部位と、固定アゴ部の可動アゴ部に対向する部位とが衝突し(甲26の13)、操縦席から近い方の油圧ブレーカーのピンは、固定アゴ部のフックの開口部に収容され、操縦席から遠い方の油圧ブレーカーのピンは、案内面における開口部に近い側に当接している(甲26の14)。

(c)油圧ブレーカにおいて、運転室から近い側のピンを固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に収容した後、固定アゴ部と可動アゴ部の間隔を最小なものとした状態で、可動アゴ部の案内面に運転室から遠い方のピンが衝突し、該ピンが案内面に接した状態で、可動アゴ部の可動アーム側ピン収容部を該ピンに近づけることによって、該ピンが該可動アゴ部側ピン収容部に収容されることが理解できる。(甲9の15)

d 甲25の6

甲25の6の記載(上記第4の13)から、2017年8月23日に、丸山満氏及び遠藤氏が立ち会いの下、標準バケットの着脱実演を行い、問題なく取付けることが確認できたこと、油圧ブレーカの着脱動作の確認を行い、課題が改善されたことがわかる。

e 甲25の7

甲25の7の記載(上記第4の14)から、2017年10月6日に、丸山満氏、大和氏及び遠藤氏が立ち会いの下、油圧ブレーカの着脱実演を行い、問題が無いことが確認されたこと、スケルトンバケットの着脱実演を行い、問題が無いことが確認されたこと、大割機の着脱を行い、課題が解決していないこと、が分かる。

(カ)第2試作機

a 甲25の8

甲25の8の記載(上記第4の15)から、甲25の8は、2018年4月24日に、遠藤氏が立ち会いの下、アタッチメントバケットとスケルトンバケットの着脱を行い、問題が無いことが確認されたこと、が分かる。

b 甲25の19、甲26の15~21

甲25の19は、2017年11月2日の株式会社日立建機での試験を近距離で撮影した動画であって、甲26の15~21は、甲25の19の5秒、19秒、23秒、24秒、24秒、25秒、1分2秒時点のスナップショットである。

そして、甲25の19、甲26の15~21から、以下の事項が看取できる。

(a)可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部において、固定アゴ部と反対側には、開口部に連続して案内面が形成されており(甲26の15、16)、固定アゴ部の回動軸近傍の内側にストッパーが設けられており(甲26の15、16)、固定アゴ部と可動アゴ部が開いた状態で、可動アゴ部の回動軸近傍がストッパーの上端に当接し(甲26の15)、固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態でも、可動アゴ部の回動軸近傍がストッパーの上端に当接している(甲26の16)。

(b)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で(甲26の16)、操縦席から近い方の大割機のピンは、固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部の開口部に収容されている。

(c)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で(甲26の17)、操縦席から遠い方の大割機のピンは、案内面における開口部から遠い側に当接している(甲26の17)。

(d)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で(甲26の18)、操縦席から遠い方の大割機のピンは、案内面における中間付近に当接している(甲26の18)。

(e)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で、操縦席から遠い方の大割機のピンは、可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部近傍で案内面に当接している(甲26の19)。

(f)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で、操縦席から遠い方の大割機のピンは、可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部に収容されている(甲26の20)。

(g)甲26の17~甲26の19の間において(甲25の19の23秒~24秒)、操縦席から遠い方の油圧ブレーカーのピンは、案内面に案内されて可動アゴ部側ピン収容部の開口部方向に移動していることが理解できる。

c 甲9の18、甲26の22~25

甲9の18は、平成29年11月2日の株式会社日立建機での試験を撮影した動画であって、甲26の22~25は、甲9の18の12秒、13秒、15秒、35秒時点のスナップショットである。

そして、甲9の18、甲26の22~25から、以下の事項が看取できる。

(a)可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部において、固定アゴ部と反対側には、開口部に連続して案内面が形成されている(甲26の22)。

(b)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で(甲26の22)、操縦席から近い方のバケットのピンは、固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部の開口部に収容されている(甲26の22)。

(c)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で(甲26の22)、操縦席から遠い方のバケットのピンは、案内面における開口部近傍に当接している(甲26の22)。

(d)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で(甲26の24)、操縦席から遠い方のバケットのピンは、可動アゴ部側ピン収容部の開口部にある程度収容されている(甲26の24)。

(e)固定アゴ部と可動アゴ部が閉じた状態で、操縦席から遠い方の大割機のピンは、可動アゴ部側ピン収容部の開口部に収容されている(甲26の25)。

(f)甲26の22~甲26の25の間において(甲9の18の12秒~35秒)、操縦席から遠い方のバケットのピンは、案内面に案内されて可動アゴ部側ピン収容部の開口部方向に移動していることが理解できる。

イ 遠藤氏の創作的寄与について

(ア)丸山氏と遠藤氏の共同開発について

請求人は、共同開発に関し、平成25年6月14日に、請求人は、丸山満氏から、株式会社日乃本にてカプラ製品を生産できるかどうかの相談を受け、平成26年4月9日から平成30年5月23日までの約4年間、丸山氏と共同で、本件特許に関する「クイックロック」(請求人内部での開発製品の通称)の開発を行っており、共同開発の主な作業分担は、遠藤氏を含む請求人の従業員が試作機の設計、製造、試験及び改良を行い、丸山満氏が試作機の図面や動画を確認するというものであって、特に、遠藤氏は、平成26年4月9日、丸山満氏から提供された図面(甲10)に基づいて、図面の3次元CAD化と、クイックロックの開発の見積りを開始し、開発当初から開発終了まで、3DCADの設計、試作材料の手配、試作機の組立、試作機の試験、試作機の改良を担当し、何度も試行錯誤を重ね、改良のたびに丸山満氏に図面や動画を送付しており、この共同開発に関わる取り決めとして、請求人と丸山氏は、平成26年10月27日、丸山氏が請求人の顧問としてクイックロックに関する製造・販売の指導や助言を行うこと等を内容とする契約を結んでいる(甲8の1)旨、主張している(上記第3の3(1)ア(ア)及び(イ)a及びb)。

そして、名刺(甲28)に、請求人の社名及び住所と遠藤氏の氏名が記載され、請求人の特許出願の公開公報である特開2020-20124号(甲2)には、出願人の欄に請求人の社名が、発明者の欄には、請求人の住所に加えて遠藤氏の氏名が記載され、請求人の社名入りの図面である甲25の11,13,15,16,18等(第4の16)の設計及び製図の欄に遠藤の印が押印されていることからみて、遠藤氏は請求人の会社に社員として在籍していたことが認められるところ、遠藤氏の開発の経緯については、上記アのとおりであって、特に、共同開発に関わる取り決めとして請求人と丸山氏との間で顧問契約書(甲8の1)を作成していること、丸山氏から請求人に図面(甲10)が提供されていること、バケットや油圧ブレーカ等の着脱を行った(試験)際に、遠藤氏及び丸山氏が参加していること(各出張報告書(甲25の1等)参照。)、遠藤氏が設計及び図面(甲25の10等)を作成していることから、遠藤氏は、平成26年4月9日から平成30年5月23日までの約4年間、請求人の会社の社員として丸山氏と共同で開発を行っており、第1の1試作機~第2試作機の設計、製図から始まり、試験を担当して試行や改良を重ねていたことによって、課題を解決するための着想及び具体化の過程に関与していることは明らかである。

特徴的部分と遠藤氏の貢献について、以下、検討する。

(イ)本件特許発明の課題及び特徴的部分と遠藤氏の貢献との関係について

a 上記アの(ウ)c及びd、(エ)b、(オ)d及びe、(カ)aによれば、第1の1試作機~第2試作機のそれぞれが、バケットに加え、大割機や油圧ブレーカー等の他のアタッチメントの着脱動作を容易にしようとする課題を認識しているから、上記(3)ア(c)の課題を認識していることが理解できる。

b 上記ア(ウ)bから、第1の1試作機において、ストッパーの2つの傾斜面が、固定アゴ部に対する可動アゴ部の開き角度を、最小及び最大の角度に制限することは、「閉じ過ぎ防止部」及び「開き過ぎ防止部」といえ、さらに、ストッパーは、固定アゴ部における回動軸に近い位置に取り付けられ、可動アゴ部の回動軸に近い基部が当接しているといえる。

c 上記ア(ウ)eの「固定アゴ部の先端側かつ可動アゴ部側と、可動アゴ部の先端側かつ固定アゴ部側とが当接している」ことは、固定アゴ部と可動アゴ部とが最小の閉じ角度となっていることを意味するから、この構造は「閉じ過ぎ防止部」といえる。

d 上記ア(エ)aから、第1の2試作機において、可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部の内側(固定アーム側)ではあるが、該開口部に連続した「案内面」が形成されていることが理解できる。

e 上記ア(オ)b及びcから、第1の3試作機において、可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部の外側(固定アゴ部と反対側)に該開口部に連続した「案内面」を形成したことが理解できる。

そして、バケット及び油圧ブレーカの着脱において、バケット及び油圧ブレーカにおける、運転室から近い側のピンを固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に収容した後、固定アゴ部と可動アゴ部の間隔を最小なものとした状態で、可動アゴ部側ピン収容部の上記案内面に運転室から遠い方のピンが衝突し、該ピンが案内面に接した状態で、可動アゴ部側ピン収容部を該ピンに近づけることによって、該ピンが該可動アゴ部側ピン収容部に収容されることが確認されており、バケット及び油圧ブレーカの着脱により、上記bの「閉じ過ぎ防止部」及び「開き過ぎ防止部」、上記の「案内面」を改良して、「請求項1案内面」、「請求項1閉じ過ぎ防止部」、「請求項2開き過ぎ防止部」、「請求項3閉じ過ぎ防止部」を発明したこと、及び上記cの「閉じ過ぎ防止部」を改良して「請求項4閉じ過ぎ防止部」を発明したことが理解できる。

f 上記ア(カ)b及びcから、第2試作機において、バケット及び大割機の両方に対して、上記eと同様の着脱を行っていることから、この時点においても、「請求項1案内面」等を発明したことが理解できる。

ウ したがって、遠藤氏は、本件特許発明の課題や効果を認識した上で、丸山氏と共同で、本件特許発明の特徴的部分である請求項1案内面、請求項1閉じ過ぎ防止部、請求項2開き過ぎ防止部、請求項3閉じ過ぎ防止部、請求項4閉じ過ぎ防止部の完成に創作的に寄与した者と認められる。

(5)まとめ

以上のとおりであるから、遠藤氏は、本件特許発明の共同発明者であって、本件特許発明の特許を受ける権利を有する者と認める。

2 無効理由2

(1)明確性要件の判断基準

特許法第36条第6項第2号は、特許請求の範囲の記載に関し、特許を受けようとする発明が明確でなければならない旨規定する。同号がこのように規定した趣旨は、仮に、特許請求の範囲に記載された発明が明確でない場合には、特許が付与された発明の技術的範囲が不明確となり、第三者の利益が不当に害されることがあり得るので、そのような不都合な結果を防止することにある。そして、特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から検討されるべきである。

(2)請求人の主張

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本件特許の請求項1に係る「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピン」との記載は、発明の詳細な説明の記載や出願時の技術常識を参酌しても、アタッチメントのピン間隔の最小値および最大値を具体的に特定できないから、ある具体的な「建設機械のアタッチメント取付け治具」が、本件特許発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解できないから、本件特許発明1乃至5は不明確である。」旨、主張する(第3の3(2))。

そこで、上記主張の「アタッチメントのピン間隔の最小値および最大値」について検討する。

(3)明確性の判断

ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項1は、上記第2の1【請求項1】に記載したとおりである。

請求項1において、「建設機械のアタッチメント取付け治具」は「建設機械のアタッチメント」を取り付けるものであって、「バケット等の各種アタッチメントに所定間隔を空けて設けられた固定アゴ部側連結ピン及び可動アゴ部側連結ピン」とあるように、各種のアタッチメントに対応可能なものであって、該アタッチメント毎に両ピンの間隔が種々存在していることは明らかである。してみると、上記の請求項1の記載は、「建設機械のアタッチメント取付け治具」を取付けることができる「アタッチメント」の両ピンのいずれの間隔にも対応可能という程度の意味であって、明確なものである。

また、本件特許の明細書の発明の詳細な説明を参照すると、

「【0026】
<建設機械のアタッチメント取付け冶具1を使用したアタッチメントの取付け方法>
次に、以上のように構成された実施形態の建設機械のアタッチメント取付け冶具1を使用して、この建設機械で取り付ける各種アタッチメントの内、固定アゴ部側連結ピン2aと可動アゴ部側連結ピン2b間のピン間隔が例えば、320mm程度の最小のバケット2’と、ピン間隔が例えば、580mm程度の最大の破砕機2”とを取り付ける場合について説明する。」等と記載されているように、建設機械のアタッチメント取付け冶具1で取り付け可能なアタッチメントについて、両ピン2a,2bの間隔が最大の破砕機2”と最小のバケット2’を取り付ける場合について言及されていることからも明らかである。

したがって、請求項1の記載は明確であって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確なものではない。

3 無効理由3

(1)(3-1)について

ア 請求人は、第1試作機について、平成27年11月7日に、住友建機販売株式会社仙台支店において、お客様感謝祭と称して、取引先企業が自社製品を出展する展示会が開催され(甲12の4及び甲12の5)、請求人は、この展示会に、本件第1試作機を自社製品「クイックロック」として販売のために展示し(甲12の2及び甲12の3)、甲12の3によれば、本件発明1の可動アゴ部側連結ピン案内面、本件発明2の開き過ぎ防止部、本件発明4の閉じ過ぎ防止部が展示されている旨、主張する(上記第3の3(3)ア(ア))。

イ しかしながら、甲12の2及び甲12の3からみて、第1試作機の詳細が十分に理解できる状態で展示されていたとは認められず、特に、上記の本件特許発明1の可動アゴ部側連結ピン案内面、本件発明2の開き過ぎ防止部に相当する構成は見えていない。

そして、第1試作機が展示会で展示されたのかについて検討するも、甲12の4及び甲12の5からみて、該展示会に第1試作機が展示されたこと、及び第1試作機をどのように展示していたかは定かではない。

よって、アタッチメントの取付け治具としての基本構成は、技術常識等からみて第1試作機が備えていると仮定したとしても、上記のとおり、第1試作機における本件特許発明1の可動アゴ部側連結ピン案内面の構成は、該展示会において視認可能な状態で展示されたと認めることはできないから、第1試作機が公然知られた、または公然実施されたものとすることはできない。

なお、甲23の3によれば、上記展示会が開催されたとする平成27年11月27日において開発されていた試作機は、上記1(4)ア(ウ)の第1の1試作機であるが、第1の1試作機に関する証拠をみても、バケット以外のアタッチメントの着脱を容易に行えるものとはなっていない点でも、第1の1試作機は、本件発明1に係る可動アゴ部側連結ピン案内面等の構成を備えていない。

ウ 以上のことから、本件特許発明1は、本件特許の出願前に、公然知られた発明、または公然実施された発明ではない。

さらに、本件発明1の可動アゴ部側連結ピン案内面の構成とすることは、後記4で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではないから、本件発明1は、本件特許の出願前に、公然知られた、または公然実施されたと主張する第1試作機に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

また、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記で説示した理由と同じ理由により、本件特許の出願前に、公然知られた発明、または公然実施された発明ではなく、本件特許の出願前に、公然知られた、または公然実施されたと主張する第1試作機に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)(3-2)について

ア 請求人は、秘密保持義務がない第三者が容易に視認できる場所で、甲第13号証の3~8のとおり第2試作機の試験(特に、平成29年10月6日、株式会社日乃本の本社。甲13の3~甲13の8。)を行っていた旨主張している(上記第3の3(3)イ(ア))。

イ 甲13の3(動画)、甲13の4~8(写真)からみて、第2試作機は、本件発明1に係る基本構成及び「可動アゴ側連結ピン案内面」や「閉じ過ぎ防止部」を備えていることは理解できるが、1種類のアタッチメントしか試験していないことから、「可動アゴ部側連結ピン案内面」が「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接して当該可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する」構成、及び「閉じ過ぎ防止部」が「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接するように前記固定アゴ部に対する前記可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する」構成を備えることまで、上記証拠から読み取ることはできない。

さらに、該敷地内に、開発とは無関係の第三者が自由に出入りできる状態であったのかについて、提出された証拠から読み取ることはできず、また、敷地の周囲から試験の様子を通行人が視認できた状況であったとしても、どの程度の距離まで近づけたのか、どの程度詳細な構造や動作まで視認可能であったのか不明である。

ウ 以上のことから、試験を行った上記第2試作機は、本件特許発明1の上記2つの構成を備えているか不明であって、かつ、試験の実施により本件特許の出願前に公然知られた、または公然実施されたものとは認められない。

よって、本件特許発明1は、本件特許の出願前に、公然知られた発明、または構成実施された発明ではない。

さらに、本件特許発明1の可動アゴ部側連結ピン案内面の構成とすることは、後記4で検討したとおり、当業者が容易になし得たことではないから、本件発明1は、本件特許の出願前に、公然知られた、または公然実施されたと主張する第2試作機に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

また、本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記で説示した理由と同じ理由により、本件特許の出願前に、公然知られた発明、または公然実施された発明ではなく、本件特許の出願前に、公然知られた、または公然実施されたと主張する第2試作機に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)まとめ

以上のとおりであるから、本件特許発明2~5は、本件特許の出願前に、公然知られた発明、または公然実施された発明ではなく、公然知られた発明、または公然実施された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

なお、当審より、上記展示及び試験に関するさらなる証拠の提出及び説明を求めた審尋を通知したところ、「本回答書において、公知公用の新規性違反及び進歩性違反に関するご指摘の事実を証明する説明及び証拠の追加提出は行いません。」との回答書による回答があったとおり、さらなる説明及び証拠の提出はなかった。

4 無効理由4(刊行物公知に基づく進歩性)

ア 対比

本件特許発明1と甲7発明を対比する。

(ア)甲7発明の「バケット2」、「固定アゴ部1a」、「可動アゴ部1b」、「バケット連結ピン2a」、「バケット連結ピン2b」、「パワーショベル等の建設機械」、「作動アーム3a」、「半円弧状係合部1a31」、「バケット駆動シリンダ3b」、「ピストン3b1」、「バケットリンク3c」、「半円弧状係合部1b31」、「半円弧状係合部1a31」の「開放端側」、「半円弧状係合部1b31」の「開放端側」、「2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する」「第1回動式半円弧状閉塞部片1a35」および「第2回動式半円弧状閉塞部片1a36」、「2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する」「第1回動式半円弧状閉塞部片1b35」および「第2回動式半円弧状閉塞部片1b36」、「建設機械のバケット取付け構造1」は、それらの構造及び機能からみて、それぞれ本件特許発明1の「バケット等の各種アタッチメント」、「固定アゴ部」、「可動アゴ部」、「固定アゴ部側連結ピン」、「可動アゴ部側連結ピン」、「パワーショベル等の建設機械」、「作動アーム」、「固定アゴ部側ピン収容部」、「バケットシリンダ」、「ピストン」、「可動アゴ連結リンク」、「可動アゴ部側ピン収容部」、「固定アゴ部側ピン収容部の開口部」、「可動アゴ部側ピン収容部の開口部」、「固定アゴ部側閉じ部」、「可動アゴ部側閉じ部」、「アタッチメント取付け治具」に相当する。

(イ)甲7発明の「建設機械のバケット取付け構造1」は、本件特許発明1の「アタッチメントを取付ける建設機械のアタッチメント取付け冶具」に相当する。

甲7発明の「バケット2の後部部に所定間隔を空けて設けられた2本のバケット連結ピン2a,2bそれぞれにパワーショベル等の建設機械の作動アーム3a先端部に取り付けられた固定アゴ部1aと、バケット駆動シリンダ3bから伸縮するピストン3b1先端部にバケットリンク3cを介して取り付けられた可動アゴ部1bとを係合させてバケット2を取付ける、建設機械のバケット取付け構造1」において、「建設機械のアームシリンダ等を駆動させて作動アーム3aを動作させて、固定アゴ部1aの固定側フック板1a3を、バケット2の後端部の一方のバケット連結ピン2aに係合させ、次に、建設機械のバケット駆動シリンダ3bを駆動してピストン3b1を伸ばして、この第2固定基板1a4のスライド用ガイド孔1a41に従って、可動アゴ部1bを第2固定基板1a4に沿ってスライドさせて、可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31をバケット2後部部のバケット連結ピン2bの方向へ移動させ、そして、可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31がバケット2後部部のバケット連結ピン2bに当たり、半円弧状係合部1a31と半円弧状係合部1b31がそれぞれバケット2後部部のバケット連結ピン2a,2bに係合」させることは、本件特許発明1の「バケット等の各種アタッチメントに所定間隔を空けて設けられた固定アゴ部側連結ピンと可動アゴ部側連結ピンそれぞれをパワーショベル等の建設機械の作動アーム先端部に取り付けられた固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部と、前記建設機械の作動アームに設けられたバケットシリンダから伸縮するピストン先端部に可動アゴ連結リンクを介して取り付けられた可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部とに収容させた」ことに相当し、同じく「回動軸1a34,1b34それぞれを介して2段式回動式半円弧状閉塞部を構成する第1回動式半円弧状閉塞部片1a35,1b35および第2回動式半円弧状閉塞部片1a36,1b36を回動させ、半円弧状係合部1a31と半円弧状係合部1b31の開放端側を塞」ぐことは、「前記固定アゴ部側ピン収容部の開口部と前記可動アゴ部側ピン収容部の開口部とをそれぞれ固定アゴ部側閉じ部と可動アゴ部側閉じ部とによって閉じ」ることに相当する。

(ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、本件特許発明1と甲7発明とは、

「バケット等の各種アタッチメントに所定間隔を空けて設けられた固定アゴ部側連結ピンと可動アゴ部側連結ピンそれぞれをパワーショベル等の建設機械の作動アーム先端部に取り付けられた固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部と、前記建設機械の作動アームに設けられたバケットシリンダから伸縮するピストン先端部に可動アゴ連結リンクを介して取り付けられた可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部とに収容させた後、前記固定アゴ部側ピン収容部の開口部と前記可動アゴ部側ピン収容部の開口部とをそれぞれ固定アゴ部側閉じ部と可動アゴ部側閉じ部とによって閉じてアタッチメントを取付ける建設機械のアタッチメント取付け冶具。」で一致するものの、以下の2点で相違する。

〔相違点1〕本件特許発明1は、「前記可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部の開口部外側に設けられ、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接して当該可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面」を有するのに対し、甲7発明は、上記の「可動アゴ部側連結ピン案内面」を備えていない点。

〔相違点2〕本件特許発明1は、「前記固定アゴ部の固定アゴ部側ピン収容部に前記固定アゴ部側連結ピンを収容後、前記建設機械の油圧シリンダ等の作動により前記可動アゴ部を前記可動アゴ部側連結ピンに近付けて当該可動アゴ部の可動アゴ部側ピン収容部に前記可動アゴ部側連結ピンを収容させる際、前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接するように前記固定アゴ部に対する前記可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する閉じ過ぎ防止部」を有するのに対し、甲7発明は、上記の「閉じ過ぎ防止部」を備えていない点。

イ 判断

上記相違点1及び2について検討する。

(ア)相違点1

a 上記相違点1について、刊行物公知による進歩性を無効理由として請求人が提示する甲7及び甲21には、開示も示唆もされていない。

請求人は、「甲7の図4乃至図6には可動アゴ部1bの半円弧状係合部1b31の開口部外側に設けられ連結ピン2が半円弧状係合部1b31に収容されるまで案内する案内面が図示され、この案内面は本件特許発明1における「可動アゴ部側連結ピン案内面」に相当する。すなわち、甲7の図5において可動側フック板1b3には半円弧状係合部1b31の図面右端側から延びる面があり、その面に連結ピン2bが接触している。甲7の図6ではその連結ピン2bが半円弧状係合部1b31から延びる面から半円弧状係合部1b31へと移動している。そうするとこの面が構成要素Bにおける「可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する可動アゴ部側連結ピン案内面」であることが明らかである。」旨(第3の3(4))、主張している。

そこで甲7の図4乃至図6をみると、可動アゴ部1bの半円弧状係合部1b31の開口部外側に、該開口部外側から連続する直線が図示されているが、該直線部分が半円弧状係合部1b31から外側に延びる片であるとしても、該片が連結ピン2bの案内面としての機能を有することを示す直接の記載は、甲7には見当たらない。

さらに、図5をみると、連結ピン2bが半円弧状係合部1b31に収容される直前と推認される状態において、半円弧状係合部1b31から外側に延びる片に当接しているように看取できるとしても、該当接していることの説明が甲7には記載されていないから、図5の状態が連結ピン2bの案内といえるかどうか不明である。

また、甲7発明が、「建設機械のバケット駆動シリンダ3bを駆動してピストン3b1を伸ばして、この第2固定基板1a4のスライド用ガイド孔1a41に従って、可動アゴ部1bを第2固定基板1a4に沿ってスライドさせて、可動側フック板1b3の半円弧状係合部1b31をバケット2後部のバケット連結ピン2bの方向へ移動させ」るものであるものの、該スライドによって、連結ピン2bが当接する上記片により案内されているかどうかも不明である。

b 仮に、連結ピン2bの上記片への当接、並びに半円弧状係合部1b31の移動により、上記片が連結ピン2bを案内するものであったとしても、当該片の構成が本件特許発明1のように、「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接して当該可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する」ものとすることも、甲7には開示も示唆もない。

この点について、請求人は「甲21には「多種の器具が油圧掘削機に使用されること」「如何なる永久的変更なしに、これらのピンと協働するように設計される。」ことが記載されており、多種の器具によってピン間距離が異なることは当業者であれば当然知り得る事実であることから、ピン間距離が最小及び最大の場合にもこれらピンに当接可能とすることは甲21に記載されているに等しい。」(第3の3(4)イ(ア))旨、主張している。

しかしながら、ピン間距離が異なる多種の器具が使用されるとしても、甲21には案内面に関して記載されておらず、ピン間の距離が異なる多種の器具の使用に際して、どのようにそれらの使用を達成するかの記載もないことから、可動アゴ部側連結ピンを当接させて案内する機能まで想定されないし、甲21に接した当業者が甲7発明の上記片を案内面として改変する動機付けは存在しない。

さらに、上記で仮として検討したように、連結ピン2bの上記片への当接、並びに半円弧状係合部1b31の移動により、上記片が連結ピン2bを案内するものであったとしても、上記相違点1に係る「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも当接して当該可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側ピン収容部に収容されるまで案内する」ものとすることまでは、甲21に記載も示唆もないから、上記相違点1に係る構成は、当業者が容易になし得たことではない。

c 以上のとおりであるから、甲7発明において、甲21に記載の事項に基いて、上記相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

(イ)相違点2

a 甲7発明は、上記ア(ウ)で説示したとおり、閉じ過ぎ防止部を明確には備えていない。

閉じ過ぎ防止部について、請求人は、「甲7における図2及び図4には固定アゴ部1a及び可動アゴ部1bが記載されるとともに、これらが互いに距離を縮めて閉じる方向に移動したとき、対向する面が当接する位置関係にあることが理解され、この対向する面は本件特許発明1における「固定アゴ部に対する可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する閉じ過ぎ防止部」に相当する。」(第3の3(4))旨、主張する。

しかしながら、固定アゴ部1a及び可動アゴ部1bは、互いに距離を縮めて閉じる方向に移動するものであるものの、それらの対向する面が当接することまでは甲7には記載されておらず、よって、それらの対向する面が当接するかどうか不明と言わざるを得ない。

請求人が主張する固定アゴ部1a及び可動アゴ部1bが記載されている図2及び図4をみても、固定アゴ部1a及び可動アゴ部1bは同図の奥行き方向に多種の部材から構成されており、そのうちどの部分が当接する可能性があるのか理解できない。

b なお、可動アゴ部1bは、固定アゴ部1aに対して距離を縮めて閉じる方向に移動するのであるから、甲7発明の建設機械のバケット取付け構造1において、最終的にそのどこかの部分が衝突することにより、結果的に相違点2に係る「閉じ過ぎ防止部」となる部分が存在すると仮定する。

しかし、その場合においても、「閉じ過ぎ防止部」が、「前記建設機械で取り付ける前記各種アタッチメントの内、前記固定アゴ部側連結ピンと前記可動アゴ部側連結ピンとのピン間隔が最小の可動アゴ部側連結ピンおよび最大の可動アゴ部側連結ピンでも、前記可動アゴ部側連結ピンが前記可動アゴ部側連結ピン案内面に当接するように前記固定アゴ部に対する前記可動アゴ部の閉じ過ぎを防止する」ことは、上記(ア)で検討したとおり、「可動アゴ部側連結ピン案内面」についてと同様に、甲7、甲21等には記載されておらず、示唆する記載もないから、当業者が容易に想到し得たことではない。

c 以上のとおりであるから、甲7発明において、甲21に記載の事項に基いて、上記相違点2に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 本件特許発明2ないし5について

本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の構成をすべて含み、さらに限定を加えた発明であるから、上記イで検討した理由と同じ理由により、甲7発明及び甲21に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび

以上のとおり、本件特許発明1ないし5は、特許法第38条の規定に違反してされたものであるから、本件特許発明1ないし5に係る特許は無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

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2020-800107

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  • 2024-002556拒絶査定不服審判 / 2026-01-26 / 原査定取消(特許/登録すべき)情報提示システム
    共通の審決分類: 113・E02F、121・E02F、537・E02F
  • 2024-008405拒絶査定不服審判 / 2025-12-10 / 原査定取消(特許/登録すべき)ショベル、ショベルの表示装置、及びショベルの制御装置
    共通の審決分類: 113・E02F、121・E02F、537・E02F

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