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特許無効審判

2021-800073

有機性廃棄物処理システム

審判番号
2021-800073
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2019-200214
登録番号
6755057
請求日
2021年08月24日
審決日
2023年03月10日
公報発行日
2024年10月25日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】鈴木 敏勝
  • 【請求人代理人】弁理士法人MTS国際特許事務所
  • 【請求人代理人】石井 良和
  • 【請求人】株式会社 ピーシーエス
  • 【請求人代理人】弁理士法人MTS国際特許事務所
  • 【請求人代理人】石井 良和
  • 【被請求人】サステイナブルエネルギー開発 株式会社
  • 【被請求人代理人】弁理士法人IPX
  • 【被請求人代理人】井上 彰文
  • 【被請求人代理人】押谷 昌宗
  • 【被請求人代理人】河部 康弘
  • 【被請求人代理人】藤沼 光太
審判長/審判官
  • 審判長 平塚 政宏
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 植前 充司
分類
P1113.151-Y (B09B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法38条特許法123条1項2号特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第38条、特許法第2条第1項、特許法第2条、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6755057号発明「有機性廃棄物処理システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨 1 請求の趣旨 特許第6755057号発明の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。 2 答弁の趣旨 本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人らの負担とする、との審決を求める。 第2 手続の経緯 1 本件特許の出願から設定登録までの手続の経緯 特許第6755057号(以下、「本件特許」という。)の請求項1及び2に係る発明についての出願は、令和1年11月1日を出願日とする特許出願であって、令和2年8月27日に特許権の設定登録がされたものである。 2 本件無効審判の主な手続の経緯 本件無効審判における主な手続の経緯は、次のとおりである。なお、以下、請求人 鈴木敏勝を「請求人1」といい、請求人 株式会社ピーシーエスを「請求人2」といい、総称して、「請求人」といい、被請求人 サステイナブルエネルギー開発株式会社を「被請求人」という。 令和3年8月24日 :審判請求書の提出(請求人) 令和3年9月30日 :手続補正書の提出(請求人) 令和4年1月31日 :審判事件答弁書の提出(被請求人) 令和4年3月25日付け :審尋 令和4年4月22日 :回答書(被請求人) 令和4年5月16日 :回答書(請求人) 令和4年9月14日 :被請求人代表者本人尋問申出書及び尋問事 項書の提出(被請求人) 令和4年10月3日付け :審理事項通知 令和4年11月1日 :口頭審理陳述要領書の提出 (請求人及び被請求人) 令和4年11月15日 :上申書の提出(請求人) 令和4年11月15日付け :第1回口頭審理及び証拠調べ 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 有機性廃棄物を低分子化する亜臨界水処理装置と、 低分子化された有機性廃棄物からメタン生成菌によりバイオガスを生成するメタン発酵装置と、 メタン発酵により生成されたバイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置と、 硫化成分を除去したバイオガスから二酸化炭素を取り除くガス精製装置と、 メタン発酵により生成された消化液から有害物質を加圧浮上分離させる固液分離装置と、 消化液からさらに固形分を分離する高度水処理装置とを備え、 前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液は、前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用されることを特徴とする有機性廃棄物処理システム。 【請求項2】 前記固液分離装置の後に、排出される固形分中にプラスチックの残留が認められた場合、残留プラスチックを回収し、別途設置の残渣ガス化装置を備え乾留ガスを生成し、高圧ボイラーで燃料として利用する残渣ガス化装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の有機性廃棄物処理システム。」 第4 請求人の主張の概要及び証拠方法 1 請求人の主張の概要 請求人は、おおむね次の無効理由を主張している。 ・無効理由(共同出願違反) 本件特許発明1及び2についての特許は、共同発明者である請求人1又は請求人1から請求人2を経て特許を受ける権利を譲り受けることなくされた特許出願に係るものであり、特許法第38条の規定に違反するものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものである。 そして、請求人が提出した審判請求書、回答書、口頭審理陳述要領書及び上申書の記載を整理すると、上記主張の根拠は、おおむね以下のとおりと認められる。なお、各主張の根拠の摘記は、おおむね請求人が提出した書面の記載(各摘記の末尾に該当書面及び記載箇所を示す。)に従った。 <請求人1及び2は被請求人に特許を受ける権利を譲渡していないことについて> (1)「本件特許発明についての共同発明者は、光山昌浩、請求人1、乙(当審注:「岡田治」のことである。以下、同様。)の3名であり、且つ、特許権者は光山昌浩が代表取締役である被請求人のみであるとして、甲第1号証に記載されている。 請求人1及び2が、文書、口頭その他の手段で、被請求人に対して、請求人1が原始的に有する特許を受ける権利を譲渡する等の意思表示をした事実は全くない。また、他の共同発明者との間での譲渡同意書の交付、受領も全くなかった。 譲渡等の法律行為がなかったことは、甲第4号証の「さりながら・・・他なりません。」の段落から、被請求人が、請求人1及び乙から特許を受ける権利を取得していないことが明白である。同号証の内容は取得していなかったことを前提としている。また取得していれば、その旨の回答をしているはずである。」(令和3年9月30日提出手続補正書第3ページ) <請求人1が本件特許発明の共同発明者であることについて> (2)「特許権者のサステイナブルエネルギー開発株式会社が、自ら本件審判請求人鈴木敏勝が発明者であると願書に記載して特許出願をしたのであるから、前記の2件の裁判例(当審注:知財高裁平成24年(行ケ)第10059号事件及び知財高裁平成19年(行ケ)第10278号事件のことである。)とは事情が異なるものであって、発明者については争う必要のない事件である。 にもかかわらず、審判請求人であって本件特許発明の発明者である鈴木敏勝に本件特許発明のどの部分に貢献したのかを問いあわせる令和4年3月25日付の審尋は、本件審判の審理において意味がないと考える。 本件審判請求における争点は、共同発明者鈴木敏勝が、被請求人に対して特許を受ける権利を譲渡したか否かのみであり、共同発明が成立しているか否かは争点になっていない。」(令和4年5月16日提出回答書第3ページ) (3)「審判請求人鈴木敏勝が本件特許発明の技術分野における発明者たり得る資質を有することについて説明する。 本件特許の技術内容について、鈴木敏勝は多くのシステムの製造、運転及び修理の経験があり、発明能力が高い技術者であり、日本において、現に稼働している亜臨界水処理装置の半数以上が、審判請求人株式会社ピーシーエス及びその代表鈴木敏勝によって製造、改修されたものである。 また、今回提出の甲第5号証乃至甲第10号証に示されるように、本件特許の出願前に、亜臨界水処理装置、メタン発酵消化液処理システム、及び、加圧浮上装置について特許出願し、且つ、特許を取得している。また、これらの装置、システムを実際に製造し、試運転をしてから特許出願している。 特に、亜臨界水処理方法及び装置に関し、甲第5号証に示される発明は、少なくとも日本で最初に、定常運転ができる亜臨界水処理装置を開発したことに基づくものであり、亜臨界水処理装置の分野において、審判請求人鈴木敏勝は、日本における第1人者である。 また、甲第6号証乃至甲第10号証に示されるように、亜臨界水処理装置に付随して、汚染物質分離減容化システム及び方法、農林資源の肥料化減容システム、亜臨界水処理方法及び装置、超微細気泡含有液体を用いる超微細気泡洗浄方法、その装置及び加圧浮上装置、メタン発酵消化液処理方法およびメタン発酵消化液処理システムを製造し、且つ、特許を取得している。 審判請求人鈴木敏勝は、亜臨界水処理装置の分野のみならず、メタン発酵消化液処理装置及び方法、加圧浮上装置、を組み合わせた廃棄物や廃液の処理システムについては熟知し、製造し、発明者であるとともに、この分野における最先端の技術者でもある。」(令和4年5月16日提出回答書第4及び5ページ) (4)「審判請求人鈴木敏勝は、本件特許に係る発明について、他の共同発明者と、殆ど打合せしていないが、最初の会合で、当然、亜臨界水処理装置及びメタン発酵消化液処理システムについて説明をしている。この際、本件特許の請求項1における、バイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置、固液分離装置、高度水処理装置、及び、消化液を亜臨界水処理装置、メタン発酵装置、固液分離装置において再利用することは、口頭で説明している。 岡田治の同席のもとで、被請求人からの可能であるか否かの質問に対して、その場で、経験に基づいて、質問の解となる技術思想を創作し、可能であるか否かについて岡田治の確認を得て、消化液の再利用システムを口頭で説明し、このようにすれば可能である旨の回答をした。この時点で本件特許発明におけるシステム構成についての共同発明が成立したと認識している。 これについての記録、文書は無いが、被請求人は、前述のように、答弁書における予備的主張において、「当該協議において、両者が有する本件特許発明に係る特許を有する権利(当審注:「特許を受ける権利」の誤記と認める。)は被請求人に譲渡されている」として、鈴木敏勝が共同発明者の一人であることを認めている。 鈴木敏勝及び岡田治の説明に基づいて、被請求人が出願したものであるからこそ、共同発明者として記載したものである。」(令和4年5月16日提出回答書第6ページ) (5)「本件発明の特許公報の請求項1は、「亜臨界水処理装置」、「メタン発酵装置」、「脱硫装置」、「固液分離装置」、及び、「高度水処理装置」をその構成要件とし、且つ、特徴部分として、「前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液は、前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用されることを特徴とする有機性廃棄物処理システム」を含んでいる。 請求人1は、被請求人代表者から、共同発明者乙の同席での最初の打合せのときに、「できるのか」との問いに対して「できます」と回答した。 「できます」とは、上記5つの構成要件からなる「有機性廃棄物処理システム」により、プラスチックを低分子化し、効率的にメタン発酵してメタンガスを取り出すことができる発明によって、という意味である。 この時点では、本件特許の出願はなされていないので、本件特許の請求項1の特徴部分を含まない構成要件からなる発明である。 上記回答の時点で、特許法第2条第1項の「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」との定義に該当する発明(共同発明)が成立している。発明が成立することと、それが新規性、進歩性等の特許要件を備えているか否かは別問題である。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第4ページ) (6)「本件発明における請求項での特徴部分においては「有害物質を加圧浮上分離された消化液」とある。しかしながら、構成要件の「低分子化された有機性廃棄物が・・・メタン発酵装置」における「亜臨界水処理装置により低分子化された有機性廃棄物」には有機性の有害物質も当然含まれていて、有機性の有害物質は、低分子化により無毒化されて全く残っていないので、「有害物質を加圧浮上分離された消化液」は有り得ないものである。なぜ有り得ないものを特徴とするのか理解に苦しむが、特徴部分は少なくとも進歩性をもたらすものではないし、また、第三者が消化液を再利用することを実施したとき、どのようにも権利侵害を主張することができないので、実質的に特許発明の構成要件たり得ないものである。 すなわち、「有害物質を加圧浮上分離された消化液」は存在しないので、第三者が本件発明を実施することはできないし、また、単に「加圧浮上分離槽を経た消化液」について第三者が実施しても、差止めも損害賠償請求も出来ない。 米国特許制度における審査では、有り得ないものに特許を与えても、第三者にとって無害であるので認めているようである。 以上より、本件特許の請求項1にかかる発明の5つの構成要件からなる発明は、公知技術の寄せ集めではなく、また特徴部分は、有り得ない条件下での消化液の処理を記述しているに過ぎず、上記5つの構成要件だけからなる発明、即ち、(iii)(当審注:(iv)の誤記と解され、上記(5)のことである。)で述べた特許法第2条第1項の定義に該当する発明(共同発明)は、上記の特徴部分を含む請求項1に係る発明と同一である。 本件特許における請求項2に記載された「残留プラスチックを・・・乾留ガスを生成し」も有り得ないことである。 既に審判請求書でも述べたが、プラスチックは亜臨界水処理されたことにより元のプラスチックではないものとなる。また、プラスチックはそのままでも乾留できるがエネルギーコストが高くなりすぎるので、亜臨界水処理により低分子化してから乾留させるのが通常であり、低分子化できなかったプラスチックは再度亜臨界炉に投入すればよいのであって、わざわざ高コストな乾留処理することなど有り得ない。 即ち、請求項2に係る構成も、発明の構成たり得ないものである。 以上より請求人1は、請求項1及び請求項2における少なくとも「亜臨界水処理装置」について発明をしている。その余の構成である「メタン発酵装置」、「脱硫装置」、「固液分離装置」、及び、「高度水処理装置」は公知である。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第4及び5ページ) 2 証拠方法 請求人は、証拠方法として、審判請求書に添付して下記甲第1ないし4号証を提出し、令和4年5月16日提出の回答書に添付して下記甲第5ないし12号証の2を提出し、同年11月1日提出の口頭審理陳述要領書に添付して下記甲第13号証の1ないし16号証を提出し、同年同月15日提出の上申書に添付して下記甲第17号証を提出した。 甲第1号証:特許第6755057号公報 甲第2号証:秘密保持に関する覚書、平成30年6月18日、被請求人、請求人2、及び、他3法人 甲第3号証:共同発明者の乙が甲2の覚書当事者である丙の名で被請求人に対してなされた質問状(メール)、令和3年4月8日、共同発明者乙 甲第4号証:甲第3号証の質問状に対する被請求人からの回答書(メール)、令和3年4月9日、被請求人 甲第5号証:特許第6327993号公報 甲第6号証:特許第6284156号公報 甲第7号証:特許第6445393号公報 甲第8号証:特許第6377087号公報 甲第9号証:特許第6120427号公報 甲第10号証:特許第6395199号公報 甲第11号証:被請求人のホームページ抜粋、令和3年7月22日、被請求人 甲第12号証の1:債務者を被請求人、債権者株式会社ピーシーエスが、債務者が本件特許発明に係るシステムを代金未払いのまま無断で使用するなという仮処分申立書、令和3年9月8日(申立日)、請求人 甲第12号証の2:引渡前に被請求人が占拠使用した本件特許発明に係るシステムに欠陥があったという損害賠償請求訴状、令和3年10月13日(訴状提出日)、被請求人 甲第13号証の1:被請求人から請求人2に対する発注書、平成30年10月22日(発行日)、被請求人 甲第13号証の2:請求人2から被請求人への請書、平成30年10月26日(発行日)、請求人2 甲第13号証の3:請求人2から被請求人への請求書、平成30年12月10日(発行日)、請求人2 甲第13号証の4:被請求人から請求人1への支払いを示す預金通帳、平成31年1月7日、北海道銀行札幌北口支店 甲第13号証の5:請求人2が作成した作業工程管理表、令和2年11月10日~12日、請求人2 甲第14号証の1:特許第6284156号公報 甲第14号証の2:特許第6377087号公報 甲第15号証:株式会社ピーシーエス職務発明規定、平成23年1月1日、請求人2 甲第16号証:被請求人提案の契約書案、平成31年4月1日(提案日)、被請求人 甲第17号証:他の発明者からの乙第1号証の議事メモについての報告(メール)、令和4年11月14日(作成日)、被請求人及び請求人以外の発明者 証拠の表記(証拠の説明に関する表現も含む。)は、おおむね請求人が提出した証拠説明書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 被請求人の主張の概要及び証拠方法 1 被請求人の主張の概要 被請求人は、請求人が主張する上記無効理由は理由がない旨主張している。 そして、被請求人が提出した審判事件答弁書、回答書及び口頭審理陳述要領書の記載を整理すると、上記主張の根拠は、おおむね以下のとおりと認められる。なお、各主張の根拠の摘記は、おおむね被請求人が提出した書面の記載(各摘記の末尾に該当書面及び記載箇所を示す。)に従った。 <本件特許発明は被請求人が単独で発明したものであることについて> (1)「本件特許発明1の本質的特徴は、単に乙2にはないガス精製装置や固液分離装置を設置するということではなく、 ・亜臨界水処理装置、メタン発酵装置、脱硫装置、ガス精製装置、固液分離装置、及び高度水処理装置のいずれも備えた装置において、固液分離装置で有害物質を加圧浮上分離した消化液を、亜臨界水処理装置、メタン発酵装置又は固液分離装置において再利用する点(以下「本質的特徴1」という。)にある。 また、本件特許発明2の本質的特徴は、上記本件特許発明1の本質的特徴1に加えて、 ・上記装置に、排出される固形分を投入することで、当該固形分に含まれるプラスチック成分から乾留ガスを抽出し、高圧ボイラーで燃焼することで熱利用するための残渣ガス化装置を備える点(以下「本質的特徴2」という。)にある。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第3ページ) (2)「本件特許発明1及び2を構成要件に分説すると、以下のとおりとなる。 (本件特許発明1) A 有機性廃棄物を低分子化する亜臨界水処理装置と、 B 低分子化された有機性廃棄物からメタン生成菌によりバイオガスを生成するメタン発酵装置と、 C メタン発酵により生成されたバイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置と、 D 硫化成分を除去したバイオガスから二酸化炭素を取り除くガス精製装置と、 E メタン発酵により生成された消化液から有害物質を加圧浮上分離させる固液分離装置と、 F 消化液からさらに固形分を分離する高度水処理装置とを備え、 G 前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液は、前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用されることを特徴とする H 有機性廃棄物処理システム。 (本件特許発明2) I 前記固液分離装置の後に、排出される固形分中にプラスチックの残留が認められた場合、残留プラスチックを回収し、別途設置の残渣ガス化装置を備え乾留ガスを生成し、高圧ボイラーで燃料として利用する残渣ガス化装置を備えることを特徴とする J 請求項1に記載の有機性廃棄物処理システム。」(令和4年1月31日提出審判事件答弁書第4及び5ページ) (3)「公知資料である乙2には,構成要件A~C及びGに関する構成が,乙4には構成要件Eに相当する構成 が,乙5にはメタン発酵処理後の残留プラスチックを燃料として再利用するという構成要件Iに関連する構成が開示されている。 また,これらの公知資料を前提としたうえで,被請求人が作成した資料等である乙6の1には,構成要件B及びGの構成が,乙7の1には,構成要件A及びBの構成と,選択透過膜と脱硫装置の配置の順序が逆ではあるものの,構成要件C及びDの構成が,乙8には,構成要件A,B及びEに関連する構成が,乙9の1には,構成要件Eに関連する構成が,乙10の1には,構成要件Cを除いた全ての構成要件の構成が記載されている。 これらの公知資料及び被請求人作成の資料は全て有機廃棄物の処理システムに関する資料であり,選択透過膜と脱硫装置の順序は当業者によって適宜選択される事項にすぎないから,遅くとも2018年8月24日には,被請求人代表者は,これらの資料を組み合わせて,本件特許発明を完成させている。」(令和4年1月31日提出審判事件答弁書第20ページ) (4)「乙10の1は、被請求人の事業提案書であり、乙9の1の改定版のような位置づけの資料である。この資料には、これまでのシステムに加え、メタン発酵槽の発酵残渣から加圧浮上装置により固形分と液体分を分離した上で、固形分に残留プラスチックが含まれていた場合に、残留プラスチックから乾留ガスを生成するための乾留炉を備えた残渣ガス化装置を備えたシステムが記載されている。 この残渣ガス化装置を追加したきっかけは、乙9の1の作成以降に、亜臨界水処理物の電子顕微鏡による写真を解析した際に、完全に分解されていない残留プラスチックの存在を被請求人代表者が発見したからである。その後、当該亜臨界水処理物を被請求人が宮城県産業技術総合センターに依頼してFT―IR分析をしてもらったところ、亜臨界水処理物に残留プラスチックの存在が認められた。このように亜臨界水処理物に残留プラスチックが存在することを第三者機関によっても確認されている。 なお、後述のとおり、請求人らは、「亜臨界水処理装置によってプラスチックが低分子化された材料(元プラスチック)の固形分は存在するが、投入時の状態のままでのプラスチックは存在しない」(7頁4行目以降)と主張しており、この発見は被請求人独自の発見に他ならない。 この発見に基づき、被請求人は亜臨界水処理では、メタン発酵槽の発酵残渣にプラスチックが残存している可能性があり、そこから乾留ガスを生成することを考え、乾留炉を備えた残渣ガス化装置をこれまでのシステムに追加して組み込むことにしたのである(本質的特徴2)。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第8及び9ページ) (5)「以上のとおり、遅くとも2018年8月24日時点までに、被請求人代表者が作成した資料を組み合わせると上記本件特許発明1及び2に関する全ての構成要件を備えた発明の記載が認められ、この時点において、被請求人代表者単独で、本件特許発明が完成している。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第9ページ) <請求人1は本件特許発明の共同発明者ではないことについて> (6)「被請求人代表者は遅くとも2018年8月24日には,本件特許発明を完成させている。したがって,発明者として記載のある請求人鈴木及び岡田治は,既に着想を得ていた本件特許発明の個別の装置の選定のために被請求人に協力していたにすぎず,単なる補助者にすぎない者である。 それ故,請求人鈴木及び岡田治は本件特許発明の共同発明者とは認められない。」(令和4年1月31日提出審判事件答弁書第20ページ) (7)「請求人らは、「審判請求人鈴木敏勝は、本件特許に係る発明について、他の共同発明者と、殆ど打ち合わせをしていないが、最初の会合で、当然、亜臨界処理システム装置及びメタン発酵消化液処理システムについて説明をしている。この際、本件特許請求項1における、バイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置、固液分離装置、高度水処理装置、及び、消化液を亜臨界水処理装置、メタン発酵装置、固液分離装置において再利用することは、口頭で説明している。」と主張する。・・・(略)・・・ 請求人の主張するとおり、請求人らと被請求人は、本件特許に係る発明についてほとんど打ち合わせをしていない。 そして、少ない打合せの際に、請求人鈴木から亜臨界水処理装置について説明を受けたことはあるが、本件特許発明の請求項1にかかる構成全てを有するシステムで、かつ、消化液を亜臨界水処理装置、メタン発酵装置、固液分離装置において再利用できることについて、口頭で説明を受けたことはない。 請求人らが何の証拠も示さず、また、いつ、どのような場所で説明をしたのかなど一切具体的な説明ができていない上、人証申請すらしていないことが、その証左である。 ・・・(略)・・・ 請求人らは、本件特許発明とは無関係の特許の発明者が請求者鈴木であることの立証を行うのみで、何ら本件特許発明について具体的な主張立証をしようとしない。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第11及び12ページ) (8)「これらの請求人ら主張は、本件特許発明の本質的特徴のうち、本質的特徴1の「亜臨界水処理装置、メタン発酵装置、脱硫装置、ガス精製装置、固液分離装置、及び高度水処理装置のいずれも備えた装置において、固液分離装置で有害物質を加圧浮上分離した消化液を、亜臨界水処理装置、メタン発酵装置又は固液分離装置において再利用する」の「固液分離装置で有害物質を加圧浮上分離した消化液」部分を明確に否定し、また、本質的特徴2の「上記装置に、排出される固形分を投入することで、当該固形分に含まれるプラスチック成分から乾留ガスを抽出し、高圧ボイラーで燃焼することで熱利用するための残渣ガス化装置を備える点」全部を否定するものである。 請求人らの主張の技術的な当否は措くとして、発明自体を否定することは、自らがその発明の本質的特徴の創作に寄与したことと矛盾する。 すなわち、被請求人が出願した本件特許発明を否定していることは、請求人らが本件特許発明の本質的特徴に創作的に寄与していないことの証左に他ならない。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第13ページ) <被請求人は請求人から特許を受ける権利を譲渡されていることについて> (9)「本件特許出願は請求人鈴木から同じく共同研究グループに属していた飯島謙一氏が本件特許に極めて類似する特許の出願をするとの情報を得たことから,早急に出願する必要があった。 当該出願について,発明者と記載のある請求人鈴木らと協議した際,被請求人代表者が作成した議事メモが乙1の1である。 当該協議は,広島にある株式会社TRCワークシステムに,被請求人が開発した有機廃棄物処理システムである「ISOPシステム」を導入するための会議の際に行われたものである。 そして,仮に本件特許発明が請求人鈴木や岡田治との共同発明であると認められたとしても,当該協議において,両者が有する本件特許発明に係る特許を受ける権利は被請求人に譲渡されている。」(令和4年1月31日提出審判事件答弁書第23ページ) 2 証拠方法 被請求人は、証拠方法として、審判事件答弁書に添付して下記乙第1号証の1ないし15号証を提出し、令和4年11月1日提出の口頭審理陳述要領書に添付して下記乙第16ないし20号証を提出した。 乙第1号証の1:議事メモ、2019年5月28日、被請求人代表者 乙第1号証の2:乙第1号証の1のプロパティ画面、2022年1月25日、被請求人 乙第1号証の3:陳述書、令和4年1月27日、小林春道氏 乙第2号証:特開2015-217345号公報 乙第3号証:拒絶理由通知書、2020年4月22日 乙第4号証:特開2012-135705号公報 乙第5号証:IoT・自動化で進む農業技術イノベーション、2017年10月26日、一般財団法人社会開発研究センター 乙第6号証の1:2018年1月19日付け株式会社TRCワークシステム様向けご提案書、2018年1月29日(最終更新日)、被請求人 乙第6号証の2:乙第6号証の1のプロパティ画面、2021年12月30日、被請求人 乙第7号証の1:2018年2月9日付け TRCワークシステム様向け説明資料、2018年2月9日(最終更新日)、被請求人 乙第7号証の2:乙第7号証の1のプロパティ画面、2021年12月30日、被請求人 乙第8号証:電子メール、2018年5月7日、被請求人 乙第9号証の1:2018年6月1日付け事業企画書、2018年6月2日(最終更新日)、被請求人 乙第9号証の2:乙第9号証の1のプロパティ画面、2022年1月18日、被請求人 乙第10号証の1:2018年8月24日付け事業提案書、2018年8月24日(最終更新日)、被請求人 乙第10号証の2:乙第10号証の1のプロパティ画面、2022年1月17日、被請求人 乙第11号証:特許第6755058号公報 乙第12号証:REWARD事業計画書、2018年5月、小林春道氏及び被請求人代表者 乙第13号証の1:三原プロジェクト資金繰表、2019年5月28日、被請求人 乙第13号証の2:乙第13号証の1のプロパティ画面、2022年1月12日、被請求人 乙第14号証の1:三原プロジェクト地元説明資料、2019年4月11日、被請求人 乙第14号証の2:乙第14号証の1のプロパティ画面、2022年1月12日、被請求人 乙第15号証:基本契約書、2019年5月31日、被請求人及び株式会社TRCワークシステム 乙第16号証:平成27年8月28日経済産業省東北経済産業局認定の異分野連携新事業分野開拓計画の内容、平成27年8月28日(認定日)、被請求人ら 乙第17号証:株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチウェブサイト、2022年10月25日(印刷日)、株式会社ルネッサンス・エナジー・リサーチ 乙第18号証:株式会社徳尾商事ウェブサイト、2022年10月25日(印刷日)、株式会社徳尾商事 乙第19号証の1:地球環境シリーズ 亜臨界水反応による廃棄物処理と資源・エネルギー化、2007年9月頃、シーエムシー出版(監修:吉田弘之) 乙第19号証の2:hontoウェブサイト、2022年10月28日(印刷日)、大日本印刷株式会社 乙第20号証:陳述書、2022年11月1日、被請求人代表者 被請求人代表者本人(陳述の内容は、第1回口頭審理及び証拠調べ調書中の本人調書のとおり。) 証拠の表記(証拠の説明に関する表現も含む。)は、おおむね被請求人が提出した証拠説明書の記載に従った。以下、順に「乙1」のようにいう。 第6 当審の判断 本件無効審判事件は、請求人1が本件特許発明についての特許を受ける権利を有しているところ、被請求人に対し当該権利を譲渡していないから、特許法第38条の規定に違反することを理由として同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきとの請求に対し、被請求人は(1)本件特許発明は被請求人が単独で発明したものであり、請求人1は本件特許発明の共同発明者ではない、(2)仮に請求人1が本件特許発明の共同発明者であったとしても、被請求人は請求人1から特許を受ける権利を譲渡されている旨主張するものである。 したがって、本件無効審判における争点は、次の2点である。 (争点1)請求人1は、本件特許発明の特許を受ける権利を有している(共同発明者)か否か。 (争点2)請求人1が共同発明者である場合、請求人1が有する特許を受ける権利が被請求人に譲渡されていたか否か。 1 共同発明者の判断基準 (1)特許法第38条について、次のように判示する裁判例がある。 ア ある特許発明の共同発明者であるといえるためには、特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち、従前の技術的課題の解決手段に係る部分、すなわち発明の特徴的部分の完成に現実に関与したことが必要であると解される(知財高裁平成24年(行ケ)第10059号事件判決)。 イ 発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいい(特許法2条1項)、「産業上利用することができる発明をした者は、・・・その発明について特許を受けることができる」と規定されている(同法29条1項柱書き)。そして、発明は、その技術内容が、当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されたときに、完成したと解すべきである(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決民集31巻6号805頁参照)。 したがって、発明者とは、自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者、すなわち、当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成するための創作に関与した者を指すというべきである。もとより、発明者となるためには、一人の者がすべての過程に関与することが必要なわけではなく、共同で関与することでも足りるというべきであるが、複数の者が共同発明者となるためには、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことを要する。そして、発明の特徴的部分とは、特許請求の範囲に記載された発明の構成のうち、従来技術には見られない部分、すなわち、当該発明特有の課題解決手段を基礎づける部分を指すものと解すべきである(知財高裁平成19年(行ケ)第10278号事件判決、東京地裁平成24年(ワ)25935号事件判決、知財高裁平成27年(ネ)10061号事件判決)。 (2)上記裁判例等によれば、発明者であるといえる、つまり特許を受ける権利を得るためには、発明の特徴的部分の完成に現実に関与したことが必要であって、その関与とは、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与することである。すなわち、特許を受ける権利は、発明が完成したときに発生し当該発明の発明者に原始的に帰属するものであり、願書に記載された発明者は、発明者であると推認されるとしても、願書への記載をもって特許を受ける権利が発生するわけではない。 ここで、請求人は、請求人が特許を受ける権利を有することについて特許掲載公報の発明者の欄に請求人1の名前が掲載されていることを根拠としている。一方、出願人である被請求人は、願書において発明者として請求人1の名前を掲載した理由について具体的な主張をし、本件特許発明は被請求人が単独で発明したものであり、請求人1は本件特許発明の共同発明者ではないと主張している。したがって、発明者欄への記載をもって直ちに請求人1が特許を受ける権利を有するとはいえず、請求人1が特許を受ける権利を有する者であるかを確認するべき理由がある。 当審は、上記裁判例が判示する見地に立って、判断する。 すなわち、まず、本件特許発明の特徴的部分は何なのかを判断し、次に、請求人1が、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与した者、すなわち特許を受ける権利を有する者(共同発明者)といえるのかどうかについて判断する。 2 本件特許発明の特徴的部分について (1)本件特許明細書等に記載された事項 本件特許に係る特許出願の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面には、おおむね次の記載がある。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、可燃の産廃処理物からエネルギーの創造に関したものである。メタン発酵の生成及び処理物として電気、熱、肥料及び二酸化炭素を生成できるので、利用分野は多岐に渡る。」 イ 「【背景技術】 【0002】 今日まで、人類が消費するエネルギーは、そのほとんどの化石燃料を燃焼させるという方法で賄って来た。これらの方法は、いずれも二酸化炭素や燃焼物を環境中に放出するものであった。 【0003】 わが国は、国内の温室効果ガスの排出削減・吸収量の確保により、令和12年度に温室効果ガス排出量を平成25年度比26.0%減という削減目標を定めた。その後、COP21においてパリ協定が採択されたことを踏まえ、平成28年5月に地球温暖化対策計画が閣議決定されたところである。 【0004】 一方、環境省は廃棄物処理法に基づく「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」を平成28年1月21日に変更し、廃棄物エネルギー利用の観点での目標値を設定するとともに、エネルギー源としての廃棄物の有効利用、廃棄物エネルギーの地域における利活用等の取組を進めることとしている。 【0005】 しかしながら、中小規模の一般廃棄物処理施設では、ノウハウが蓄積されていないことや、コストなどの観点から、廃棄物エネルギーの利活用が十分に行われていないのが現状である。 【0006】 さらに、「人口減少」「少子高齢化」の影響は、自治体の廃棄物行政にも大きな影響を投げかけている。すなわち、現在の人口動態に見合った規模の廃棄物処理施設を将来にわたって維持することは非常に困難である。 【0007】 また、財政逼迫は多くの自治体ですでに顕在化しており、廃棄物処理施設の必要な更新に関わる初期費用や将来にわたる維持管理費、さらには、解体・撤去に要するコストも非常に高額であることなどから、老朽化した処理施設をなんとか温存して、問題の先送りを行なっている自治体も少なくない。 【0008】 また、自治体が現在焼却処理している廃棄物のなかにはプラスチック混合物も多く含まれていることから、単純焼却させた場合の発熱量や有毒ガス等の発生により、炉を傷める要因ともなっている。 【0009】 一方で、プラスチック系の産業廃棄物はこれまで中国等に輸出されていたが、輸入国自体の環境汚染を引き起こすことから輸入自体が禁止されたものの、日本国内での産業廃棄物処理施設ではその全量を処理することができないために、大きな社会課題となっている。自治体は産業廃棄物の処理に関しては一義的な責任は負っていないものの、その処理に関して協力を求められているという側面も併せ持っている。さらにプラスチックを含む可燃性廃棄物の処理が二酸化炭素の排出量増加に連なり全世界規模での大きな社会問題となっている。 【0010】 上記のような産業廃棄物の処理方法は、可燃性の廃棄物を焼却する工程を含む方法であるが、この焼却工程に変えて、嫌気的雰囲気下でメタン生成菌を用いて有機性廃棄物を発酵させてバイオガスを生成させる工程(メタン発酵方法)を利用することが可能である。 【0011】 このメタン発酵方法は、好気性細菌により有機性廃棄物を加水分解及び酸発酵した後、メタン発酵槽内に有機性廃棄物を投入し、新規な水を加えて有機性廃棄物の含水率を調整し、嫌気性細菌であるメタン生成菌を用いて有機物を発酵することにより、有機性廃棄物からバイオガスを発生させる方法である(例えば特許文献1及び2参照)。このようにして生成されたメタンガスは燃料として利用されている。また、メタン発酵方法によって有機性廃棄物から得られる消化液及び固化物は、植物の成長に必要な窒素化合物を多量に含むため、優れた肥料として利用可能である。 【0012】 ところが、従来のメタン発酵方法では、好気性細菌を用いた有機性廃棄物の加水分解及び酸発酵が十分ではなく、有機性廃棄物が良好に低分子化されないため、有機物の消化率があまり高くなかった。 【0013】 また、従来のメタン発酵方法においては、パッケージされた食品廃棄物やプラスチック容器に収容された食品廃棄物を原料とした場合には、そのパッケージやプラスチック容器は細菌により分解や発酵されないため、分解・発酵可能な有機性廃棄物からこれらを除去する必要があり、効率が悪く、コストも増加するといった問題があった。さらに、食品廃棄物は人の味覚に合わせた塩分が含まれており、この塩分濃度は細菌の増殖や発酵に悪影響を及ぼすほど高濃度の場合もある。 【0014】 このような問題を解決する方法として、有機性廃棄物の低分子化及び減容化に亜臨界水処理を用いた方法が開発された(例えば特許文献3参照)。亜臨界水処理は、水の臨界温度以下の高温であり、飽和水蒸気圧以上の高圧である高温高圧下で液体状の亜臨界水に接触させることで、有機性廃棄物を可溶化する方法であり、従来の低分子化処理では分解できなかったパッケージやプラスチック容器を分解することができる方法である。そのため、パッケージされた食品廃棄物やプラスチック容器に収容された食品廃棄物を低分子化する場合であっても、パッケージやプラスチック容器を除去することなく、食品廃棄物とともに可溶化させることができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0015】 【特許文献1】特開昭50-135279号公報 【特許文献2】特開2002-119937号公報 【特許文献3】特開2003-117526号公報 【特許文献4】特許第5792450号 【特許文献5】特許第6327993号 【特許文献6】特許第6377087号 【特許文献7】特許第5796136号 【特許文献8】特許第6120427号」 ウ 「【発明が解決しようとする課題】 【0016】 しかしながら、このような亜臨界水処理により有機性廃棄物を単に可溶化するだけでは、有機性廃棄物からのエネルギーの生成効率はそれほど高くはなく、実用性を考慮すると問題を有するものであった。また、従来技術においては、発酵残渣の処理についても、実用上課題を有するものであった。 【0017】 そこで、本発明は、上記のような状況に鑑みてなされたもので、有機性廃棄物からバイオガスを高効率で生成して発電のエネルギー源とするとともに、発酵残渣及び消化液を適切に処理することにより廃棄物を殆ど生じない有機性廃棄物処理システムを提供することを目的としている。」 エ 「【課題を解決するための手段】 【0018】 本発明者らは、上記課題を解決するために、バイオマス技術を活用して有機性廃棄物からエネルギーや有価副産物を作り出す有機性廃棄物処理システムについて鋭意研究を行った結果、メタン発酵の原料である有機性廃棄物を予め低分子化することにより、高効率でメタン発酵を行うとともに、メタン発酵で生成されたバイオガスから二酸化炭素を選択的に分離することによって、汎用の天然ガス発電機による発電を可能とし、さらに、得られた二酸化炭素、発酵残渣及び消化液を有効利用することにより、廃棄物を殆ど生じない、本発明の有機性廃棄物処理システムを発明するに至った。 【0019】 したがって、本発明の有機性廃棄物処理システムは、 有機性廃棄物を低分子化する亜臨界水処理装置と、 低分子化された有機性廃棄物からメタン生成菌によりバイオガスを生成するメタン発酵装置と、 メタン発酵により生成されたバイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置と、 硫化成分を除去したバイオガスから二酸化炭素を取り除くガス精製装置と、 メタン発酵により生成された消化液から有害物質を加圧浮上分離させる固液分離装置と、 消化液からさらに固形分を分離する高度水処理装置とを備え、 前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液は、前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用されることを特徴としている。 ・・・(略)・・・ 【0022】 加えて、プラスチックが本システムで完全分離出来ず固液分離装置で残った場合、プラスチックを乾留装置(残渣ガス化装置)でガス化し、高圧ボイラーの燃料として再利用することが可能である。すなわち、本発明においては、前記固液分離装置の後に、排出される固形分中にプラスチックの残留が認められた場合、残留プラスチックを回収し、別途設置の残渣ガス化装置を備え乾留ガスを生成し、高圧ボイラーで燃料として利用する残渣ガス化装置を備えることが好ましい。」 オ 「【発明の効果】 【0023】 本発明の有機性廃棄物処理システムによれば、有機性廃棄物からバイオガスを高効率で生成して発電のエネルギー源とするとともに、発酵残渣及び消化液を適切に処理することにより廃棄物を殆ど生じることなく、有機性廃棄物を処理することができる。すなわち、本発明の有機性廃棄物処理システムによれば、バイオ技術を駆使することにより、地球環境に悪影響を及ぼさないで、エネルギー及び有価物を創造することができる。さらには、これらの仕組みを導入することにより、完全な自己完結エネルギーリサイクル社会を形成することができる。」 カ 「【発明を実施するための形態】 【0025】 以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。 【0026】 図1は、本発明の有機性廃棄物処理システムの全体フローを示した概念図である。本発明の有機性廃棄物処理システムにおいては、まず、図1に示されたように、有機性廃棄物1を亜臨界水処理装置2に投入して亜臨界水処理することにより、性状や形状が均一なメタン発酵原料とする。次いで、このメタン発酵原料をメタン発酵装置3に移し、20日程度かけてメタン生成菌により発酵させ、バイオガスと消化液を生成する。生成されたバイオガスは、脱硫装置4により硫化成分を除去し、さらに、ガス精製装置5により二酸化炭素を除去して、可燃性ガスに精製される。このようにして得られた可燃性ガスは、天然ガスと同等の熱量を持つため、汎用の天然ガス用の発電機6の良好なエネルギー源として供給できる。 【0027】 一方、メタン発酵により生成された消化液には、発酵残渣が混ざっているため、固液分離装置7を用いることにより消化液から発酵残渣を分離する。分離された発酵残渣には、分解途中の有機成分が多く含まれていることから、この発酵残渣を肥料として有効利用することができる。また、分離された消化液には、分離し得る成分が未だ溶解しているため、高度水処理装置8においてこの消化液から固形分をさらに分離し、この固形分を固液分離装置7に戻すことにより、排水基準を満たすレベルまで消化液を処理する。なお、本発明の有機性廃棄物処理システムにおいては、亜臨界水処理装置2、メタン発酵装置3又は固液分離装置7における水分量を適切な範囲に調整する必要があるが、この水分調節に高度水処理装置8で処理された消化液を再利用することも可能である。 【0028】 このように、本発明の有機性廃棄物処理システムによれば、有機性廃棄物からバイオガスを高効率で生成するとともに、排水基準を満たすまで消化液を処理し、発酵残渣を肥料とすることを可能としている。・・・(略)・・・ 【0058】 本発明における加圧浮上槽57は、消化液中に懸濁している成分や溶解している成分に超微細気泡を付着させて見掛け比重を小さくすることにより、懸濁成分又は溶解成分を消化液から浮上分離させる装置である。ここで、本発明における加圧浮上槽57について詳細に説明する。まず、加圧浮上槽57においては、上流側の凝集反応槽55から消化液が供給される。そして、加圧浮上槽57内に消化液が所定量以上に貯留されると、この消化液に対して超微細気泡を下方より送り出すことにより、消化液中に懸濁している成分や溶解している成分に超微細気泡を付着させる。なお、この超微細気泡は、空気を加圧溶解した水を再び大気圧下に開放することにより、水中に発生されたものであり、直径が0.3~1nm程度のものである。この超微細気泡の付着によって、懸濁成分や溶解成分が液面まで浮上させられ、消化液から分離される。このようにして浮上分離される成分には、有害重金属類が含まれることから、この工程を経ることにより有害重金属類が除去された消化液が得られる。 【0059】 したがって、本発明の有機性廃棄物処理システムにおける固液分離装置7には、このような加圧浮上槽57を備えることにより、消化液中に溶解している有害重金属を超微細気泡の界面に吸着させて分離することができる。なお、ここで得られた消化液は、次の高度水処理装置においてさらに分離されるが、この段階で亜臨界水処理装置2やメタン発酵装置3において再利用されてもよい。 【0060】 <残渣ガス化装置> 本発明の有機性廃棄物処理システムにおける固液分離装置においては、反応槽・脱水機53から排出される固形分中に万が一不充分な分解状態でのプラスチック成分が含まれる場合は、図2に示されているように、それらを高圧ボイラー15に接続した残渣ガス化装置16に投入する。残渣ガス化装置16でプラスチック成分から乾留ガスを抽出し、高圧ボイラーで燃焼することで熱利用する。このことで、本発明の有機性廃棄物処理システム外への廃棄物を完全に無くすることが可能となる。 【0061】 <高度水処理装置> 本発明においては、上記のようにして固液分離装置7において処理された消化液をさらに膜分離生物処理を施すことにより、消化液に含まれる有効成分を再度分離し、肥料等として活用する。図7は、本発明の有機性廃棄物処理システムにおける高度水処理装置8の一実施形態を示す概念図である。なお、図中のPはポンプを意味し、各槽から溶液を送り出すために設けられている。固液分離装置7の加圧浮上槽57から送られた消化液は、曝気槽61及び膜分離槽62において微細気泡に接触させることにより不溶成分を除去する。次いで、不溶成分を除去した消化液は、逆浸透原水槽63に一旦貯蔵された後、逆浸透装置64において固形分と消化液に分離される。ここで分離された固形分は肥料として利用され、消化液は、排水基準を満たすレベルであれば廃棄処理してもよいが、循環水槽65に貯蔵された後に、前述の亜臨界水処理装置2、メタン発酵装置3又は固液分離装置7に送られて再利用される。」 キ 「【図1】 [図:0001414441000001.jpg] 」 ク 「【図2】 [図:0001414441000002.jpg] 」 (2)本件特許発明の特徴的部分 ア 本件特許発明の課題 上記(1)ウの摘記によれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、「有機性廃棄物からバイオガスを高効率で生成して発電のエネルギー源とするとともに、発酵残渣及び消化液を適切に処理することにより廃棄物を殆ど生じない有機性廃棄物処理システムを提供すること」(本件特許の発明の詳細な説明の【0017】)である。 イ 課題を解決するための手段 そして、上記課題を解決するために、本件特許においては、上記(1)エの摘記のとおり、「バイオマス技術を活用して有機性廃棄物からエネルギーや有価副産物を作り出す有機性廃棄物処理システムについて鋭意研究を行った結果、メタン発酵の原料である有機性廃棄物を予め低分子化することにより、高効率でメタン発酵を行うとともに、メタン発酵で生成されたバイオガスから二酸化炭素を選択的に分離することによって、汎用の天然ガス発電機による発電を可能とし、さらに、得られた二酸化炭素、発酵残渣及び消化液を有効利用することにより、廃棄物を殆ど生じない、本発明の有機性廃棄物処理システムを発明するに至った。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0018】)ものであり、本件特許発明1及び2のとおりの発明特定事項(本件特許の発明の詳細な説明の【0019】及び【0022】)を備えたものである。 ウ 本件特許発明1の特徴的部分 (ア)まず、本件特許発明1の個々の発明特定事項毎に検討すると、次のaないしfに示すとおり、個々の発明特定事項自体は、いずれも、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された技術的事項である。 a 「有機性廃棄物を低分子化する亜臨界水処理装置」という発明特定事項は、本件特許の発明の詳細な説明の【0015】の特許文献3(特開2003-117526号公報)、同じく特許文献4(特許第5792450号)、同じく特許文献5(特許第6327993号、甲5)、同じく特許文献6(特許第6377087号、甲8、甲14の2)、甲7及び乙2に記載されているように、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された技術的事項である。 b 「低分子化された有機性廃棄物からメタン生成菌によりバイオガスを生成するメタン発酵装置」という発明特定事項は、本件特許の発明の詳細な説明の【0015】の特許文献1(特開昭50-135279号公報)、同じく特許文献2(特開2002-119937号公報)、甲10及び乙2に記載されているように、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された技術的事項である。 c 「メタン発酵により生成されたバイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置」は、乙2に記載されているように、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された技術的事項である。 d 「硫化成分を除去したバイオガスから二酸化炭素を取り除くガス精製装置」という発明特定事項における「ガスから二酸化炭素を取り除くガス精製装置」は、本件特許の発明の詳細な説明の【0015】の特許文献7(特許第5796136号)に記載されているように、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された技術的事項である。 e 「メタン発酵により生成された消化液から有害物質を加圧浮上分離させる固液分離装置と、消化液からさらに固形分を分離する高度水処理装置」という発明特定事項は、「有害物質」を加圧浮上させているかどうかは別にして、本件特許の発明の詳細な説明の【0015】の特許文献8(特許第6120427号公報、甲9)及び甲6に記載されているように、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された技術的事項である。 f 「固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液が前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用されること」という発明特定事項における「消化液」を「メタン発酵装置」「において再利用されること」は、乙2に記載されているように、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載された技術的事項である。 (イ)他方、本件特許発明1の個々の発明特定事項を全て有するシステムが、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献に記載されたものであること、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然知られたものであること又は本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされたものであることを示す客観的な証拠はない。 なお、甲10には、バイオマスを発酵させてメタンガスを得た後に生じる発酵消化液の処理システムであって、「亜臨界水処理装置7」、「メタン発酵槽2」及び「加圧浮上槽6」を備え、「加圧浮上槽6」と連通する「分離液返送用ライン16」を備えたものが記載されているが(甲10請求項6~8、図8)、該処理システムは、「亜臨界水処理装置7」が「メタン発酵槽2」及び「加圧浮上槽6」の後に設けられており、本件特許発明1とは対応する各装置の配置順序が全く異なるうえ、甲10における「加圧浮上槽6」は消化液から「有害物質」を加圧浮上分離させるものでもない点で、本件特許発明1と全く異なるものである。 (ウ)そして、上記(1)アないしクの摘記事項によると、本件特許発明1の個々の発明特定事項を全て有するシステムは、「有機性廃棄物からバイオガスを高効率で生成して発電のエネルギー源とするとともに、発酵残渣及び消化液を適切に処理することにより廃棄物を殆ど生じることなく、有機性廃棄物を処理することができる。すなわち、本発明の有機性廃棄物処理システムによれば、バイオ技術を駆使することにより、地球環境に悪影響を及ぼさないで、エネルギー及び有価物を創造することができる。さらには、これらの仕組みを導入することにより、完全な自己完結エネルギーリサイクル社会を形成することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0023】)という効果を奏するものであり、まさに、上記アで示した本件特許発明の課題を解決するものである。 (エ)そうすると、本件特許発明1の個々の発明特定事項自体は、本件特許発明の課題解決手段を基礎づける部分であるとはいえず、本件特許発明1の個々の発明特定事項を全て組み合わせたものが、本件特許発明の課題解決手段を基礎づける部分、すなわち、本件特許発明1の特徴的部分であるといえる。 したがって、本件特許発明1の特徴的部分(以下、「特徴的部分A」という。)は、次のとおりであると認められる。 <特徴的部分A> 「有機性廃棄物を低分子化する亜臨界水処理装置と、低分子化された有機性廃棄物からメタン生成菌によりバイオガスを生成するメタン発酵装置と、メタン発酵により生成されたバイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置と、硫化成分を除去したバイオガスから二酸化炭素を取り除くガス精製装置と、メタン発酵により生成された消化液から有害物質を加圧浮上分離させる固液分離装置と、消化液からさらに固形分を分離する高度水処理装置とを備えた有機性廃棄物処理システムにおいて、前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液が前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用されること。」 エ 本件特許発明2の特徴的部分 上記ウと同様に、本件特許発明2の特徴的部分は、特徴的部分Aに加え、次の特徴的部分(以下、「特徴的部分B」という。)であると認められる。 <特徴的部分B> 「前記固液分離装置の後に、排出される固形分中にプラスチックの残留が認められた場合、残留プラスチックを回収し、別途設置の残渣ガス化装置を備え乾留ガスを生成し、高圧ボイラーで燃料として利用する残渣ガス化装置を備えること。」 3 本件特許発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したかどうかについて (1)請求人1と、本件特許発明の特徴的部分との関係についてみる。 ア 当審は、令和4年3月25日付け審尋及び同年10月3日付け審理事項通知において、課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、請求人1が本件特許発明の特徴的部分の完成にどのように創作的に寄与したのかについて、具体的な証拠を示すように求めたが、請求人は、「審判請求人鈴木敏勝が本件特許発明の技術分野における発明者たり得る資質を有する」(令和4年5月16日提出回答書第4及び5ページ)、「最初の会合で、当然、亜臨界水処理装置及びメタン発酵消化液処理システムについて説明をしている。この際、本件特許の請求項1における、バイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置、固液分離装置、高度水処理装置、及び、消化液を亜臨界水処理装置、メタン発酵装置、固液分離装置において再利用することは、口頭で説明している。」(令和4年5月16日提出回答書第6ページ)、「請求人1は、被請求人代表者から、共同発明者乙の同席での最初の打合せのときに、「できるのか」との問いに対して「できます」と回答した。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第4ページ)及び「「有害物質を加圧浮上分離された消化液」は有り得ないものである。・・・請求項2に記載された「残留プラスチックを・・・乾留ガスを生成し」も有り得ないことである。」(令和4年11月1日提出口頭審理陳述要領書第4及び5ページ)等の回答をするのみで、請求人1が本件特許発明の特徴的部分の完成にどのように創作的に寄与したのかについての具体的な証拠を提出しなかった。 イ また、請求人は、「審判請求人鈴木敏勝が本件特許発明の技術分野における発明者たり得る資質を有する」ことを示す証拠として甲5ないし10を提出したが、甲5ないし10からは、本件特許の個々の発明特定事項(「亜臨界水処理装置」、「メタン発酵装置」及び「加圧浮上分離させる固液分離装置」)に関連する特許の発明者欄に請求人1の名前が記載されていることが確認できるにとどまる。 なお、甲5ないし10の記載内容について検討してみても、甲5ないし9には、本件特許発明1の個々の発明特定事項のうちの一部が記載されているに過ぎず、また、甲10に記載された装置は、上記2(2)ウ(イ)のなお書きのとおり、本件特許発明1と全く異なるものである。 ウ そうすると、請求人が提出した証拠からは、請求人1が、本件特許発明1の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明1の特徴的部分Aの完成に創作的に寄与したことを伺わせる根拠は見出せない。同様に、請求人1が、本件特許発明2の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明2の特徴的部分Bの完成に創作的に寄与したことを伺わせる根拠も見出せない。 エ 加えて、本件特許発明1における「有害物質を加圧浮上分離させる固液分離装置」及び「前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液が前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用される」という事項は、上記2(1)カの摘記(特に、本件特許の発明の詳細な説明の【0058】及び【0059】)のとおり、有害物質を加圧浮上分離された消化液の再利用が説明されていることを勘案すると、いずれも技術的に意味のある事項であり、本件特許発明1の実質的な構成要件であることは明らかであるといえ、また、上記2(2)ウ(エ)のとおり、本件特許発明1の特徴的部分Aを構成するものである。 したがって、そもそも、「有害物質を加圧浮上分離された消化液」はあり得ないものであると認識している請求人1が、本件特許発明1の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明1の特徴的部分Aの完成に創作的に寄与したとは考えられない。 オ さらに、本件特許発明2における「前記固液分離装置の後に、排出される固形分中にプラスチックの残留が認められた場合、残留プラスチックを回収し、別途設置の残渣ガス化装置を備え乾留ガスを生成し、高圧ボイラーで燃料として利用する残渣ガス化装置を備える」という事項は、上記2(1)カの摘記(特に、本件特許の発明の詳細な説明の【0060】)のとおり説明がされていることを勘案すると、技術的に意味のある事項であり、本件特許発明2の実質的な構成要件であることは明らかであるといえ、また、上記2(2)エのとおり、本件特許発明2の特徴的部分Bを構成するものである。 したがって、そもそも、「残留プラスチックを回収し、別途設置の残渣ガス化装置を備え乾留ガスを生成し」はあり得ないものであると認識している請求人1が、本件特許発明2の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明2の特徴的部分Bの完成に創作的に寄与したとは考えられない。 (2)以上に対して、被請求人代表者本人の尋問における陳述を含め、被請求人が提出した証拠は、本件特許発明1及び2の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明1の特徴的部分A及び本件特許発明2の特徴的部分Bの完成に創作的に寄与したのが被請求人単独であること、すなわち、少なくとも請求人1は、本件特許発明1及び2の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明1の特徴的部分A及び本件特許発明2の特徴的部分Bの完成に創作的に寄与していないことを伺わせるものである。 (3)そうすると、請求人1が、本件特許発明の共同発明者であったということはできない。 したがって、当然、請求人2が本件特許発明に係る特許を受ける権利を有しているともいえない。 4 請求人の主張について (1)請求人は、請求人1が本件特許発明の共同発明者であることについて、上記第4 1(2)ないし(6)の主張をしているので、以下、検討する。 ア 上記第4 1(2)の主張について (ア)請求人主張の要点は、被請求人が、請求人1を発明者であると願書に記載して特許出願をしたのであるから、発明者については争う必要がないというものである。 (イ)上記主張について検討するに、請求人は、本件においては、被請求人である特許権者が、自ら請求人1が発明者であると願書に記載して特許出願をしたのであるから、発明者について争う必要がない旨を主張しているのに対し、被請求人は、遅くとも2018年8月24日の時点において、被請求人代表者単独で、本件特許発明を完成させている旨、及び、請求人1は、既に着想を得ていた本件特許発明の個別の装置の選定のために被請求人に協力していたにすぎず、単なる補助者にすぎない者である旨を主張している(上記第5 1(5)及び(6))。 そうすると、本件においては、上記第6冒頭で(争点1)として示したとおり、請求人1が本件特許発明の特許を受ける権利を有している(共同発明者)か否かが争点になるから、特許掲載公報の発明者欄に請求項1が発明者として記載されているからといって、請求人1が、本件特許発明1の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明1の特徴的部分Aの完成に創作的に寄与したことを直ちに証明することにはならない。 そして、上記3で検討したとおり、請求人1が、本件特許発明の共同発明者であったということはできない。 したがって、上記第4 1(2)の主張は採用できない。 イ 上記第4 1(3)の主張について (ア)請求人主張の要点は、甲5ないし10からみて、請求人1は、亜臨界水処理装置、メタン発酵消化液処理システム、加圧浮上装置などについて熟知及び製造しており、この分野における最先端の技術者あるから、本件特許発明の技術分野における発明者たり得る資質を有しているというものである。 (イ)上記主張について検討するに、請求人1が本件特許発明の技術分野における発明者たり得る資質を有しているからといって、請求人1が、本件特許発明1の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、本件特許発明1の特徴的部分Aの完成に創作的に寄与したことを直ちに証明することにはならない。 そして、上記3で検討したとおり、請求人1が、本件特許発明の共同発明者であったということはできない。 したがって、上記第4 1(3)の主張は採用できない。 ウ 上記第4 1(4)の主張について (ア)請求人主張の要点は、請求人1は、最初の会合で、亜臨界水処理装置及びメタン発酵消化液処理システムについて説明をしており、その際、脱硫装置、固液分離装置、高度水処理装置のことや、消化液を亜臨界水処理装置、メタン発酵装置、固液分離装置において再利用することを口頭で説明しており、この時点で本件特許発明におけるシステム構成についての共同発明が成立したと認識しているというものである。 (イ)上記主張について検討するに、請求人1が、被請求人に対して、「最初の会合」で「亜臨界水処理装置及びメタン発酵消化液処理システム」について説明をし、その際に、「バイオガスから硫化成分を除去する脱硫装置」、「固液分離装置」、「高度水処理装置」及び「消化液を亜臨界水処理装置、メタン発酵装置、固液分離装置において再利用すること」を口頭で説明したことを示す客観的な証拠はない。 仮に、請求人1が、被請求人に対して、「最初の会合」で、何らかの説明をしていたとしても、後記エ及びオで検討するとおり、請求人が説明したとされる技術的事項は、少なくとも「前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液は、前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用される」という構成を欠くものであり、むしろ、請求人1は、当該構成が本件特許発明の特徴的部分を構成し得ないものであると認識しているというのであるから、本件特許発明1の特徴的部分Aを説明していたとはいえない。 したがって、上記第4 1(4)の主張は採用できない。 エ 上記第4 1(5)の主張 について (ア)請求人主張の要点は、「本件特許発明1は、「亜臨界水処理装置」、「メタン発酵装置」、「脱硫装置」、「固液分離装置」及び「高度水処理装置」を構成要件とする「有機性廃棄物処理システム」であるところ、請求人1は、被請求人代表者から、「できるのか」との問いに対して「できます」と、すなわち、上記5つの構成要件からなる「有機性廃棄物処理システム」により、プラスチックを低分子化し、効率的にメタン発酵してメタンガスを取り出すことができる旨を回答した。」というものである。 (イ)上記主張について検討するに、請求人1が、被請求人に対して、「最初の会合」で「亜臨界水処理装置」、「メタン発酵装置」、「脱硫装置」、「固液分離装置」及び「高度水処理装置」を構成要件とする「有機性廃棄物処理システム」により、プラスチックを低分子化し、効率的にメタン発酵してメタンガスを取り出すことができることを口頭で説明したことを示す客観的な証拠はない。 仮に、請求人が上記主張に関して何らかの回答をしていたとしても、その技術的事項には、「ガス精製装置」という発明特定事項が欠けており、また、「前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液は、前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用される」という発明特定事項も欠けているところ、本件特許発明1の特徴的部分Aは、上記2(2)ウ(エ)のとおりであり、単に、「亜臨界水処理装置」、「メタン発酵装置」、「脱硫装置」、「固液分離装置」及び「高度水処理装置」を構成要件とする「有機性廃棄物処理システム」ではない。 したがって、上記第4 1(5)の主張は採用できない。 オ 上記第4 1(6)の主張について (ア)請求人主張の要点は、「亜臨界水処理装置により低分子化された有機性廃棄物」には、有機性の有害物質は低分子化により無毒化されて残っていないので、本件特許発明1における「有害物質を加圧浮上分離された消化液」は有り得ず、実質的に特許発明の構成要件たり得ない。同様に、プラスチックは亜臨界水処理されたことにより元のプラスチックではないものとなり、低分子化できなかったプラスチックは再度亜臨界炉に投入すればよいのであって、わざわざ高コストな乾留処理することなど有り得ないから、本件特許発明2における「残留プラスチックを回収し、別途設置の残渣ガス化装置を備え乾留ガスを生成」することは有り得ず、実質的に特許発明の構成要件たり得ない。以上からみて、請求人1が説明した5つの構成要件だけからなる発明が、本件特許発明1及び2に相当する。」というものである。 (イ)上記主張は、本件特許発明1における、「前記固液分離装置において有害物質を加圧浮上分離された消化液は、前記亜臨界水処理装置、前記メタン発酵装置又は前記固液分離装置において再利用される」という事項、及び、本件特許発明2における「前記固液分離装置の後に、排出される固形分中にプラスチックの残留が認められた場合、残留プラスチックを回収し、別途設置の残渣ガス化装置を備え乾留ガスを生成し、高圧ボイラーで燃料として利用する残渣ガス化装置を備える」という事項が、技術的に意味がなく、有り得ない構成であり、これら各構成は、本件特許発明の特徴的部分を構成し得ないというものである。 しかしながら、上記事項が、技術的に意味のない構成ではないこと並びにこれら各構成が本件特許発明1の特徴的部分A及び本件特許発明2の特徴的部分Bを構成するものであることは、上記2(2)ウ(エ)及び2(2)エのとおりである。 そして、上記主張は、上記事項が有り得ないというものである。 そうすると、当然、請求人1が、本件特許発明1の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、請求人1にとって有り得ないものを含む本件特許発明1の特徴部分Aの完成に創作的に寄与したとはいえない。 本件特許発明2についても同様であり、請求人1が、本件特許発明2の課題を解決するための着想及びその具体化の過程において、請求人1にとって有り得ないものを含む本件特許発明2の特徴部分Bの完成に創作的に寄与したとはいえない。 したがって、上記第4 1(6)の主張は採用できない。 (2)請求人は、請求人1及び2が被請求人に特許を受ける権利を譲渡していないことについて、上記第4 1(1)の主張もしているので検討する。 ア 請求人主張の要点は、本件特許発明についての共同発明者は、光山昌浩、請求人1、乙の3名であり、且つ、特許権者は光山昌浩が代表取締役である被請求人のみであるものの、請求人1及び2が、被請求人に対して、請求人1が有する特許を受ける権利を譲渡する等の意思表示をした事実はないというものである。 イ 上記主張について検討するに、上記3のとおり、請求人1が、本件特許発明の共同発明者であるとはいえない以上、請求人1及び2が被請求人に特許を受ける権利を譲渡しているかどうかは無効理由の判断に関係がない。 したがって、上記第4 1(1)の主張は採用できない。 5 むすび したがって、本件特許発明1及び2についての特許は、特許法第38条の規定に違反してされた特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とすべきものであるとはいえない。 よって、無効理由は理由がない。 第7 結語 以上のとおり、本件特許発明1及び2に関して、無効理由は理由がなく、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明1及び2についての特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とすべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-800073

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