審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許無効審判

2020-800014

噴射製品および噴射方法

審判番号
2020-800014
法域
特許
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
特願2018-509670
登録番号
6539407
請求日
2020年02月14日
審決日
2023年04月21日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】フマキラー 株式会社
  • 【請求人代理人】前 直美
  • 【請求人代理人】高橋 元弘
  • 【請求人代理人】碓井 允揮
  • 【被請求人】アース製薬 株式会社
  • 【被請求人代理人】鮫島 正洋
  • 【被請求人代理人】▲高▼見 憲
  • 【被請求人代理人】篠田 淳郎
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 瀬良 聡機
  • 審判官 冨永 保
分類
P1123.112-YAA(A01N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法169条2項民事訴訟法61条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第134条の2第1項、特許法第134条の2第9項、特許法第29条第1項第2号、特許法第134条の3、特許法第134条の2第3項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項、特許法第29条第1項、特許法第169条第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の特許第6539407号「噴射製品および噴射方法」の特許無効審判事件についてされた令和 3年 6月21日付け審決に対し、知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和03年(行ケ)第10090号、令和 4年 8月 4日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。

結論

結 論 特許第6539407号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~2〕、3について訂正することを認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 手続の経緯 1 特許第6539407号の請求項1~4に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、2017年3月31日(優先権主張 2016年3月31日 日本国、2016年11月25日 日本国)を国際出願日とする出願であって、令和元年6月14日に特許権の設定登録がなされたものである(以下、その特許を「本件特許」といい、その明細書を「本件特許明細書」といい、特許請求の範囲を「本件特許請求の範囲」という。)。 2 本件特許について、本件特許の利害関係人である、フマキラー株式会社(以下「請求人」という。)から、本件特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明の特許を無効にすることを求める旨の無効審判の請求がなされた。 以下に、本件審判の請求以後の経緯を整理して示す。 令和 2年 2月14日 審判請求書及び甲第1号証~甲第14号証の 提出(請求人) 同年 6月29日 審判事件答弁書及び乙第1の1号証~乙第1 の2号証の提出(被請求人) 同年 同月 同日 訂正請求書の提出(被請求人) 同年 8月14日 審判事件弁駁書及び甲第15の1号証~甲第 36号証の提出(請求人) 同年 同月 同日 営業秘密に関する申出書の提出(請求人) 同年10月30日付け 審理事項通知 同年11月13日 上申書及び甲第37号証の提出(請求人) 同年 同月 同日 上申書及び乙第2号証~乙第3号証の提出 (被請求人) 同年11月27日 口頭審理陳述要領書の提出(請求人) 同年 同月 同日 口頭審理陳述要領書の提出(被請求人) 同年12月11日 第1回口頭審理 同年 同月14日 乙第4号証の提出(被請求人) 同年12月16日 上申書(2)の提出(被請求人) 令和 3年 1月12日 上申書及び甲第38号証の提出(請求人) 同年 同月22日 上申書(3)の提出(被請求人) 3 特許庁は、令和3年6月21日、被請求人が令和2年6月29日付けでした特許請求の範囲の請求項1~3についての訂正を認めた上で、「本件審判の請求は、成り立たない。」旨の審決をし、その謄本は令和3年7月1日、請求人に送達された。 4 請求人は、令和3年7月30日、審決を不服として知的財産高等裁判所に訴えを提起した(令和3年(行ケ)第10090号)。同裁判所は、令和4年8月4日、「特許庁が無効2020-800014号事件について令和3年6月21日にした審決を取り消す」旨の判決を言渡した。 5 被請求人は、上告又は上告受理の申立て期間内に、最高裁判所に上告又は上告受理の申立てを行わなかったため上記取消判決は確定した。 そして、訂正を認めた審決の取消が確定したため、上記被請求人が令和2年6月29日付けでした訂正は行われなかったことになり、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許登録時のものとなった。 6 審判の請求に理由がないものとした審決に対して取消判決が確定した後、被請求人からは、特許法134条の3の定める期間内に、同法同条に基づく訂正請求の申立てがなされた。以降の手続は以下のとおりである。 令和 4年 8月25日 訂正請求の申立て(被請求人) 同年 9月30日付け 審理再開通知 同年10月 3日付け 特許法134条の3に基づく訂正請求の ための期間指定通知(10日) 同年 同月14日 訂正請求書の提出(被請求人) 同年 同月28日 上申書(4)及び乙第5号証~乙第12 号証の提出(被請求人) 令和 5年 1月20日 審判事件弁駁書(請求人は、新型コロナ 感染症の影響等を理由に、上申書提出の 指定期間30日の延長を求め、審判合議 体は、職権により60日に延長すること を認めた。)及び甲第39号証~甲第5 5号証の提出(請求人) 第2 判決の拘束力について 上記取消判決において、取消事由1(訂正要件の判断の誤り)について、「本件審決には、本件訂正の訂正要件の判断に誤りがあり、この判断の誤りは、本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし3に係る発明の要旨認定の誤りに帰するから本件審決は取り消されるべきものである。」(上記判決文中の「本件訂正」とは、令和2年6月29日付けでした訂正のことをいう。)と判断した上で、取消事由2(甲1製品に係る発明(公然実施発明)を主引例とする本件発明1ないし3の新規性の判断の誤り)(無効理由1関係)について、「本件事案に鑑み、本件訂正が適法であることを前提とする取消事由2について、念のため判断する。」として、「以上によれば、本件審決における本件発明1ないし3の新規性の判断に誤りがあるから、原告主張の取消事由2は理由がある。」と判断を示した。 そして、取消事由2に係る判断については、「なお、・・・本件審決は取消事由1によって取り消されるべきであるから、この判断については、本判決の拘束力(行政事件訴訟法33条1項)は及ばない。」と説示している。 したがって、判決の拘束力は、令和2年6月29日付けでした訂正が訂正要件を満たさないという点にのみ及ぶので、その前提で以下検討する。 第3 訂正の可否についての当審合議体の判断 1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容 第1の手続の経緯に示すとおり、被請求人は、願書に添付した特許請求の範囲について、令和4年10月14日に訂正請求書を提出し、添付した訂正特許請求の範囲のとおりの訂正を求めた。 その訂正請求書の訂正請求の趣旨は、「特許第6539407号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを求める。」というものである。(以下、令和4年10月14日付け訂正請求による訂正及び訂正特許請求の範囲を、それぞれ「本件訂正」及び「本件訂正特許請求の範囲」ともいう。) 本件訂正の内容は以下のとおりである。 (1)訂正事項1 訂正前の請求項1において、 「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品。」とあるのを、訂正後に 「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品。」と訂正する。(審決注:下線は訂正箇所を示す。以下同様。) (2)訂正事項2 訂正前の請求項2において、 「前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、前記ポンプ容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である、請求項1記載の噴射製品。」とあるのを、訂正後に 「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.85以上となるよう調整され、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品であって、 前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、前記ポンプ容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である、噴射製品。」と訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の請求項3において、「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、 前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう前記害虫忌避組成物を噴射する、噴射方法。」とあるのを、訂正後に 「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルであり、 前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.85以上となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう前記害虫忌避組成物を噴射する、噴射方法。」と訂正する。 2 訂正の適否の判断 (1)一群の請求項について 本件訂正に係る請求項1~3のうち、訂正前の請求項1及び2について、請求項2は請求項1を直接的に引用するものとなっており、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~2に対応する本件訂正後の請求項1~2は、特許法第134条の2第3項に規定する関係を有する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項に対して請求されたものである。 (2)訂正事項1について ア 目的について 訂正事項1に係る訂正は、請求項1の噴射製品に充填される害虫忌避組成物に含まれる害虫忌避成分の「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分」であるとの選択肢から、選択肢の1つである「p-メンタン-3,8-ジオール」を削除することで、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項について 上記アのとおり、訂正事項1は、選択肢の1つの成分を削除したものにすぎず、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえず、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないかどうかの判断について 上記アのとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項2について ア 目的について (ア)訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正(以下「訂正事項2-1」という。)、訂正前の請求項1に「前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり」と記載されていた選択肢から、「p-メンタン-3,8-ジオール」を削除する訂正(以下「訂正事項2-2」という。)、及び訂正前の請求項1に「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、」と記載されていた、「粒子径比(r30/r15)が、0.6以上」との粒子径比の下限を「0.85以上」と範囲を限定する訂正(以下「訂正事項2-3」という。)である。 (イ)上記訂正事項2-1は、特許法134条の2第1項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。 (ウ)また、上記訂正事項2-2は、請求項1の噴射製品に充填される害虫忌避組成物に含まれる害虫忌避成分の「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分」であるとの選択肢から、選択肢の1つである「p-メンタン-3,8-ジオール」を削除することで、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (エ)さらに、上記訂正事項2-3は、「粒子径比(r30/r15)が、0.6以上」との粒子径比の下限を「0.85以上」と上げて数値範囲を限定することで、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項について まず、訂正事項2-1は、上記アのとおり、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえず、願書に添付した本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 次に、訂正事項2-2も、上記アのとおり、選択肢の1つである「p-メンタン-3,8-ジオール」を削除するものであるから、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえず、本件特許の願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることは明らかである。 さらに、訂正事項2-3も、上記アのとおり、「粒子径比(r30/r15)が、0.6以上」との粒子径比の下限を、実施例6の粒子径比である「0.85」という値以上の「0.85以上」と上げて特許請求の範囲を減縮するものであり、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえず、本件特許の願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないかどうかの判断について 上記アのとおり、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正、及び特許請求の範囲を減縮するための訂正であり、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項2は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項3について ア 目的について (ア)訂正事項3に係る訂正は、訂正前の請求項3に「前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり」と記載されていた選択肢から、「p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」を削除し、「前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」とする訂正(以下「訂正事項3-1」という。)、及び訂正前の請求項3に「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、」と記載されていた、「粒子径比(r30/r15)が、0.6以上」との粒子径比の下限を「0.85以上」と範囲を限定する訂正(以下「訂正事項3-2」という。)である。 (イ)上記訂正事項3-1は、請求項3の噴射方法に用いられる噴射製品に充填される害虫忌避組成物に含まれる害虫忌避成分の「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分」であるとの選択肢をから、選択肢の1つである「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」のみに特定して特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 (ウ)また、上記訂正事項3-2は、「粒子径比(r30/r15)が、0.6以上」との粒子径比の下限を「0.85以上」と上げて数値範囲を限定することで、特許請求の範囲を減縮するものである。 したがって、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 新規事項について まず、訂正事項3-1は、上記アのとおり、害虫忌避成分の選択肢を削除するものにすぎないから、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえず、本件特許の願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 さらに、訂正事項3-2も、上記アのとおり、「粒子径比(r30/r15)が、0.6以上」との粒子径比の下限を、実施例6の粒子径比である「0.85」という値以上の「0.85以上」と上げて数値範囲を減縮したものであり、本件特許明細書等の記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係で、新たな技術的事項の導入をするものとはいえず、本件特許の願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないかどうかの判断について 上記アのとおり、訂正事項3は、特許請求の範囲を減縮するものであり、カテゴリーを変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 したがって、訂正事項3は、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)独立特許要件について 請求項1~3が審判請求の対象となっているから、本件訂正に対して、独立特許要件は課されない。 3 小括 以上のとおり、訂正事項1~3に係る訂正は、特許法134条の2第1項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの又は第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、しかも同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に違反するものでもない。 よって、結論のとおり、本件訂正を認める。 第4 本件訂正特許発明 上記第3のとおり本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、「本件訂正特許発明1」~「本件訂正特許発明3」のように表記することがある。)は、本件特許明細書等の記載からみて、本件訂正特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項によって特定されるとおりであり、本件訂正特許発明1~3は、以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品。 【請求項2】 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.85以上となるよう調整され、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品であって、 前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、前記ポンプ容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である、噴射製品。 【請求項3】 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルであり、 前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.85以上となり、かつ、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう前記害虫忌避組成物を噴射する、噴射方法。」 第5 請求人の主張の概要 1 本件審判の請求の趣旨 請求人が主張する本件審判における請求の趣旨は、「特許第6539407号の請求項1、2、3に記載された発明の特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。との審決を求める。」(第1回口頭審理調書 審判請求書「6 請求の趣旨」)である。 2 請求人が主張する無効理由及び証拠方法の概要 請求人は、以下の無効理由を主張し、証拠方法として甲第1号証~甲第55号証を提出した。 (1)無効理由の概要 審判請求書、令和2年8月14日付け審判事件弁駁書、令和2年11月13日付け上申書、令和2年11月27日付け口頭審理陳述要領書及び令和5年1月20日付け審判事件弁駁書を考慮し、本件訂正を踏まえると、請求人が主張する無効理由は、概略以下のとおりである。 (審判請求書の「第1 請求の理由の要約」、「第3 特許無効審判請求の根拠」、「第4 本件特許を無効にすべき理由 3 無効理由1(新規性欠如)(2)むすび」及び「4 無効理由2(優先権が認められないことを前提とする新規性欠如)(3)むすび」の記載、令和2年8月14日付け審判事件弁駁書の「第1 弁駁の概要」、「第3 無効理由3」、「第6 無効理由4」及び「第7 結語」の記載、並びに審判請求書全体の記載及び上記審判事件弁駁書全体の記載を参照。) 無効理由1(新規性欠如):本件特許発明1~3は、本件優先日1(平成28年3月31日)の前に公然実施された甲第1号証及び甲第5号証に係る噴射製品乃至噴射方法(本件優先日1の前に公然実施された、『公然実施品1(製造ロット番号「8F2C1A」、包装ロット番号「8G2KA」とする「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」)』(甲第5号証)によって認識される甲第1号証に係る発明(「公然実施発明1」))と同一であり、本件特許発明1~3に係る特許は、特許法第29条第1項第2号に違反してされたものであるので、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。 無効理由2(新規性欠如):本件特許発明1~3のうち、害虫忌避成分をイカリジン(審決注:1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート)とする部分は、本件特許出願に係る優先権主張のうち特願2016-71925号に基づく優先権主張についてはその効果が認められず、本件特許発明の新規性についての判断基準日は特願2016-229406号の出願日である平成28年11月25日(本件優先日2)であるので、本件特許発明1~3に係る特許は、本件優先日2の前に公然実施された甲第8号証及び甲第5号証に係る噴射製品乃至噴射方法(『公然実施品2(製造ロット番号「8F881A」とする「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」)』(甲第5号証)によって認識される甲第8号証に係る発明(「公然実施発明2」))と同一であり、特許法第29条第1項第2号に違反してされたものであるので、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とされるべきである。 無効理由3(実施可能要件違反) 本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件の請求項1~3に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、本件の請求項1~3に係る発明についての特許は、明細書の発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 無効理由4(明確性要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではないので、本件の請求項1~3に係る発明についての特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきものである。 無効理由3及び無効理由4に関しては、審判請求時における無効理由1及び2に加え、令和2年6月29日付け訂正請求に起因して審判請求の理由を補正する必要が生じ(「粘膜への刺激が低減された」及び「粘膜への刺激を低減する」という訂正事項が問題となっていた。)、令和2年8月14日に提出された審判事件弁駁書にて審判請求の理由に追加する補正がされ、その補正を許可する決定が口頭審理でなされたものである(第1回口頭審理調書)。 しかしながら、令和2年6月29日付け訂正請求を認めた審決は、知的財産高等裁判所において取消の判決がなされ、該判決は確定したため、上記訂正がされなかったものとなった。 そのため、当該訂正請求における訂正が認められることを前提とした無効理由3(実施可能要件違反)及び無効理由4(明確性要件違反)には、理由がないことは明らかである。 [審判請求書の補正の許否の決定] 令和5年1月20日に請求人により提出された審判事件弁駁書において、新たに追加された公然実施品1に基づく進歩性欠如の主張(「無効理由1-2」及び「無効理由2-2」(3頁3~10行、23~28行、12頁21行~17頁6行、18頁26行~22頁3行及び甲第44号証~甲第55号証)は、審判請求書において全くしていない主張を条文を追加して行うものであるから、審判請求書に記載された特許を無効とする理由の要旨を変更する新たな無効理由を構成するものであるので、上記主張及び証拠に基づく審判請求書の補正を許可しない。 また、令和4年10月28日に被請求人により提出された上申書では、乙第5号証~乙第7号証を証拠方法とし、公然実施品1又は公然実施品2に対して進歩性を有する旨の主張をしているが、これらの主張は、請求人の主張する無効理由に対して必要な反論(予備的主張としての反論)とは認められないので審理の基礎として採用しない。 (2) 証拠方法 請求人は、証拠方法として、以下の書証を提出している。 甲第1号証:フマキラー株式会社の公式ホームページ、「天然由来の成分で虫よけ&UVカット!『服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット』新登場」[online]、2016年1月19日、[検索日2020年2月1日]、インターネットURL:https://www.fumakilla.co.jp/new/1962/ (以下「甲1」という。) 甲第2号証:フマキラー株式会社、「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」の処方集、2015年12月8日制定(以下「甲2」という。) 甲第3号証:アズビル株式会社、「3 飽和水蒸気圧表(日本機械学会「蒸気表」より抜粋)」 (以下「甲3」という。) 甲第4号証:株式会社三谷バルブカタログ「Pumps 2013」、2013年(以下「甲4」という。) 甲第5号証:試験結果報告書(粒子径測定試験)(以下「甲5」という。) 作成日:2020年2月7日 試験実施日:2019年7月5日 試験場所:フマキラー株式会社 S1試験室 実験及び作成者:フマキラー株式会社 開発本部 開発研究部 副主任研究員補 西本 奈未 甲第6号証:フマキラー株式会社、「製造Lot確認一覧」、2014年11月28日(以下「甲6」という。) 甲第7号証:フマキラー株式会社、「製造期表」(作成日不明)(以下「甲7」という。) 甲第8号証:フマキラー株式会社の公式ホームページ、「有効成分”イカリジン”の濃度を高めた虫よけ剤「天使のスキンベープミストプレミアム」「天使のスキンベーププレミアム」緊急新発売!」[online]、2016年8月8日、[検索日2020年2月1日]、インターネットURL:https://www.fumakilla.co.jp/new/1742/ (以下「甲8」という。) 甲第9号証:独立行政法人医薬品医療機器総合機構、「審査報告書」、平成27年2月18日(以下「甲9」という。) 甲第10号証:フマキラー株式会社、「天使のスキンベープミストプレミアム」の処方集、2016年6月28日制定(以下「甲10」という。) 甲第11号証:PCT/JP2017/013663号の優先権証明書 特願2016-071925号 (以下「甲11」という。) 甲第12号証:PCT/JP2017/013663号の優先権証明書 特願2016-229406号 (以下「甲12」という。) 甲第13号証:国際公開第2017/171030号(以下「甲13」という。) 甲第14号証:特許第6539407号公報(以下「甲14」という。) 甲第15の1号証:アマゾンジャパン合同会社の公式ホームページ、「スキンベープ虫除けスプレーミストタイプ100ml服にスプレー UVカット カスタマーレビュー」[online]、2016年3月7~14日、[検索日2020年8月6日]、インターネットURL:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%97-%E2%BE%8D%E9%99%A4%E3%81%91%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC-%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97-100ml-%E6%9C%8D%E3%81%AB%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC/product-reviews/B01CCDRXWA/ref=cm_cr_getr_d_paging_btm_next_5?sortBy=recent&pageNumber=4 (以下「甲15の1」という。) 甲第15の2号証:アマゾンジャパン合同会社の公式ホームページ、「スキンベープ虫除けスプレーミストタイプ100ml服にスプレー UVカット カスタマーレビュー」[online]、2016年3月14~20日、[検索日2020年8月6日]、インターネットURL:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%97-%E2%BE%8D%E9%99%A4%E3%81%91%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC-%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97-100ml-%E6%9C%8D%E3%81%AB%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC/product-reviews/B01CCDRXWA/ref=cm_cr_getr_d_paging_btm_next_5?sortBy=recent&pageNumber=3 (以下「甲15の2」という。) 甲第15の3号証:アマゾンジャパン合同会社の公式ホームページ、「スキンベープ虫除けスプレーミストタイプ100ml服にスプレー UVカット カスタマーレビュー」[online]、2016年3月21日~7月31日、[検索日2020年8月6日]、インターネットURL:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%97-%E2%BE%8D%E9%99%A4%E3%81%91%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC-%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97-100ml-%E6%9C%8D%E3%81%AB%E3%82%B9%E3%83%97%E3%83%AC%E3%83%BC/product-reviews/B01CCDRXWA/ref=cm_cr_getr_d_paging_btm_next_5?sortBy=recent&pageNumber=2 (以下「甲15の3」という。) 甲第16号証:フマキラー株式会社、「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」の処方集、2015年12月8日制定(以下「甲16」という。) 甲第17号証の1:フマキラー株式会社、「製造品名 スナヒウエキ」「ロット番号810001」の「新規製造伝票」、2016年2月9~10日(以下「甲17の1」という。) 甲第17号証の2:フマキラー株式会社、「製造品名 スナヒウヨウキイリ」「ロット番号8F2C1A」の「新規製造伝票」、2016年2月12日(以下「甲17の2」という。) 甲第17号証の3:フマキラー株式会社、「製造品目 スナヒウフリスタイ3」「ロット番号8F2C1A 8G2KA、8F2G1A 〃」の「新規製造伝票」、2016年2月18日(以下「甲17の3」という。) 甲第17号証の4:フマキラー株式会社、「製造品目 スナヒウ」「ロット番号8F2C1A 8G2KA、8F2G1A 〃」の「新規製造伝票」、2016年2月18日(以下「甲17の4」という。) 甲第18号証の1:株式会社 三谷バルブ、「得意先名 フマキラー(株)」「商品名称 スキンVナチュラル白トリガー(スナヒア トリガー)」の「製品仕様書」、2014年12月18日作成、2016年8月2日改定(以下「甲18の1」という。) 甲第18号証の2:株式会社 三谷バルブ、「得意先名 フマキラー(株)」「商品名称 スキンVナチュラル白トリガー(スナヒア トリガー)」の「製品組完図」、2014年12月18日作成、2016年8月2日改定(以下「甲18の2」という。) 甲第18号証の3:株式会社 三谷バルブ、「得意先名 フマキラー(株)」「商品名称 スキンVナチュラル白トリガー(スナヒア トリガー)」の「改定履歴」、2014年12月18日作成、2016年8月2日改定(以下「甲18の3」という。) 甲第19号証:フマキラー株式会社、「FUMAKILLA PRODUCTS GUIDE 2015 フマキラー総合カタログ」、2015年1月、p.45(以下「甲19」という。) 甲第20号証:フマキラー株式会社、「2017 FUMAKILLA PRODUCTS GUIDE フマキラー総合カタログ」、2017年1月、p.35~37(以下「甲20」という。) 甲第21号証:アース製薬株式会社の公式ホームページ、「その他に関するよくあるご質問 Q有効期限・使用期限について教えてください。」[online]、(掲載年不明)、[検索日2020年8月6日]、インターネットURL:https://www.earth.jp/support/faq/other/za0010/index.html (以下「甲21」という。) 甲第22号証:アース製薬株式会社の公式ホームページ、「ナチュラス ボタニカルスプレー 130mL」[online]、(掲載年不明)、[検索日2020年8月7日]、インターネットURL:https://www.earth.jp/products/naturas-botanical-spray-130/index.html(以下「甲22」という。) 甲第23号証:試験結果報告書(2)(粒子径測定試験)(以下「甲23」という。) 作成日:2020年8月6日 試験実施日:2020年7月30日 試験場所:フマキラー株式会社 S1試験室 実験及び作成者:フマキラー株式会社 開発本部 開発管理室 主任 船越 久生 甲第24号証:NJSSの公式ホームページ、「NJSS入札情報速報サービス 液滴粒子径分布測定装置 1式 日機装(株)製 エアロトラックLDSA-SPR1500A (2009年12月08日公示)」[online]、2009年12月08日公示、[検索日2020年8月6日]、インターネットURL:https://www.njss.info/offers/view/270582/ (以下「甲24」という。) 甲第25号証:「平成23年度 日本建築学会近畿支部研究報告集 環境系」、平成23年5月25日発行、p.77~80、日本建築学会近畿支部発行(以下「甲25」という。) 甲第26号証:家屋害虫、Vol.16、No.2、1994年12月、p.100~107(以下「甲26」という。) 甲第27号証:THE MERCK INDEX Online、「Ethyl Butylacetylaminopropionate」[online]、(掲載年不明)、[検索日2020年8月2日]、インターネットURL:https://www.rsc.org/Merck-Index/monograph/print/m5098/ethylbutylacetylaminopropionate?q=authorize (以下「甲27」という。) 甲第28号証:THE MERCK INDEX Online、「Picaridin」[online]、(掲載年不明)、[検索日2020年8月2日]、インターネットURL:https://www.rsc.org/Merck-Index/monograph/print/m8776/ picaridin?q=authorize(以下「甲28」という。) 甲第29号証:SNSサービス「Twitter」の投稿、[online]、2016年9月15日、[検索日2020年7月29日]、インターネットURL:https://twitter.com/nachicco_info/status/776406388939431936 (以下「甲29」という。) 甲第30号証:フマキラー株式会社、「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」の処方集、2016年6月28日制定(以下「甲30」という。) 甲第31号証の1:フマキラー株式会社、「製造品名 ステフアエキ」「ロット番号810001」の「新規製造伝票」、2016年8月5日(以下「甲31の1」という。) 甲第31号証の2:フマキラー株式会社、「製造品名 ステフア ヨウキイリ」「ロット番号8F881A」の「新規製造伝票」、2016年8月8日(以下「甲31の2」という。) 甲第31号証の3:フマキラー株式会社、「製造品名 ステフア ヨウキイリ」「ロット番号8F881A」の「新規製造伝票」、2016年8月8日(以下「甲31の3」という。) 甲第32号証の1:株式会社 三谷バルブ、「得意先名 フマキラー(株)」「商品名称 スキンVP200金トリガー(ステフア トリガー)」の「製品仕様書」、2016年7月6日作成、2016年10月26日改定(以下「甲32の1」という。) 甲第32号証の2:株式会社 三谷バルブ、「得意先名 フマキラー(株)」「商品名称 スキンVP200金トリガー(ステフア トリガー)」の「製品組完図」、2016年7月6日作成、2016年10月26日改定 (以下「甲32の2」という。) 甲第33号証の1:株式会社 三谷バルブ、「得意先名 フマキラー(株)」「商品名称 (仮)新スキンベープミスト」の「製品仕様書」、2016年7月6日作成(以下「甲33の1」という。) 甲第33号証の2:株式会社 三谷バルブ、「得意先名 フマキラー(株)」「商品名称(仮)新スキンベープミスト」の「製品組完図」、2016年7月6日作成(以下「甲33の2」という。) 甲第34号証:フマキラー株式会社、「FUMAKILLA PRODUCTS GUIDE 2019 フマキラー総合カタログ」、2019年1月、p.42(以下「甲34」という。) 甲第35号証の1:フマキラー株式会社、「製造品目名 ステフア エキ 天使ミストプレミアム混合液」の「新規製造伝票」、2020年5月13日(以下「甲35の1」という。) 甲第35号証の2:フマキラー株式会社、「製造品目名 ステフア ヨウキイリ 天使ミストプレミアム容器入」の「新規製造伝票」、2020年5月14日(以下「甲35の2」という。) 甲第35号証の3:フマキラー株式会社、「製造品目名 ステフア ヨウキイリ 天使ミストプレミアム容器入」の「新規製造伝票」、2020年5月14日(以下「甲35の3」という。) 甲第35号証の4:フマキラー株式会社、「製造品目名 ステフア ヨウキイリ 天使ミストプレミアム容器入」の「新規製造伝票」、2020年5月14日(以下「甲35の4」という。) 甲第35号証の5:フマキラー株式会社、「製造品目名 ステフウ2 天使のスキンベープミストPR」の「新規製造伝票」、2020年5月14日(以下「甲35の5」という。) 甲第35号証の6:フマキラー株式会社、「製造品目名 ステフウ2 天使のスキンベープミストPR」の「新規製造伝票」、2020年5月14日(以下「甲35の6」という。) 甲第35号証の7:フマキラー株式会社、「製造品目名 ステフウ2 天使のスキンベープミストPR」の「新規製造伝票」、2020年5月14日(以下「甲35の7」という。) 甲第35号証の8:フマキラー株式会社、「製造品目名 ステフウ2 天使のスキンベープミストPR」の「新規製造伝票」、2020年5月14日(以下「甲35の8」という。) 甲第36号証:新村出編、「広辞苑第七版」、(2018年1月12日)、p.1981「てい-げん」の項目、株式会社岩波書店発行(以下「甲36」という。) 甲第37号証:フマキラー株式会社、「略号 スナヒウ」の2016年2月19~22日の「入庫処理」及び「出庫処理」の記録 (以下「甲37」という。) 甲第38号証:陳述書(以下「甲38」という。) 作成日:令和3年1月8日 陳述者:フマキラー株式会社 開発本部 開発管理室 知的財産グループ 船越 久生 甲第39号証:安全データシート、製品名(±)-1,3-Butanediol、シグマアルドリッチジャパン合同会社、令和3年4月20日(改訂日) (以下「甲39」という。) 甲第40号証:安全データシート、製品名Propylene glycol、シグマアルドリッチジャパン合同会社、令和4年6月9日(改訂日) (以下「甲40」という。) 甲第41号証:安全データシート、製品名Ethyl Alcohol,pure、シグマアルドリッチジャパン合同会社、令和3年5月25日(改訂日) (以下「甲41」という。) 甲第42号証:安全データシート、製品名DEET、シグマアルドリッチジャパン合同会社、令和4年4月12日(改訂日) (以下「甲42」という。) 甲第43号証:高瀬彌平、記載不備解消型の国内優先権出願の優先権主張の効果は認められない、パテント、2010年、63巻7号、p.36(以下「甲43」という。) 甲第44号証:薬事ニュース記事、新有効成分含有医薬部外品2成分の承認了承-薬食審、株式会社薬事ニュース社、平成27年3月27日 甲第45号証:化学工業日報記事、フマキラー、安全性高い虫よけ剤開発、新規忌避成分を配合、株式会社化学工業日報社、平成28年1月22日 甲第46号証:審査報告書、独立行政法人医薬品医療機器総合機構、平成27年2月18日 甲第47号証:弁護士高橋元弘、甲第46号証の審査報告書のウェブページのスクリーンキャプチャ、令和5年1月17日、インターネットURL:pmda.go.jp/quasi_drugs/2015/Q20150615002/400092000_22700DZX00374000_Q100_1.pdf 甲第48号証:-薬事の虎-『楽天からの「虫よけスプレー」等に対する警告』~281号~【増刊号】、株式会社薬事法ドットコム、平成24年8月30日、インターネットURL:https://www.yakujihou.com/mailmagazine/1042/ 甲第49号証:アース製薬ウェブページ「蚊柱(かばしら)を作るユスリカってどんな虫?蚊ではないって本当?」、平成30年5月1日、インターネットURL:https://www.earth.jp/gaichu/wisdom/sonota/article_001.html 甲第50号証:特開2009-1501号公報 甲第51号証:特表2009-536658号公報 甲第52号証:特表2010-518130号公報 甲第53号証:特開2011-121894号公報 甲第54号証:「虫除けスプレーの使用と子供への安全性(Insect Repellent Use and Safety in Children)」のウェブアーカイブ、インターネットURL:https://www.fda.gov/Drugs/EmergencyPreparedness/ucm085277.htm 、アメリカ食品医薬品局(FDA)、平成26年12月9日(更新日)、平成28年3月3日(アーカイブ日) 甲第55号証:JOHNNIEYATES、「社説 蚊やマダニから身を守るためのアドバイス(Advice for Protection Against Mosquitoes and Ticks)」、インターネットURL:https://www.aafp.org/dam/brand/aafp/pubs/afp/issues/2015/0601/p754.pdf、平成27年6月1日、American Family Physician、91巻、11号、p.754 第6 被請求人の答弁の趣旨並びにその主張の概要及び提出した証拠方法 1 答弁の趣旨及びその主張の概要 被請求人が主張する答弁の趣旨は、「本件の審判の請求は、成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める。」である(審判事件答弁書「6答弁の趣旨」、第1回口頭審理調書)。 そして、被請求人は、審判事件答弁書、上申書及び口頭審理陳述要領書において、請求人が主張する上記無効理由は、理由がない旨の主張をしていると認める。 2 証拠方法(乙第1号証~乙第12号証) 被請求人は、証拠方法として、以下の書証を提出している。 乙第1の1号証:株式会社三谷バルブの公式ホームページ、「製品紹介 ディスペンサーポンプ 目次 トリガーポンプ Z-305/505シリーズ T-305/650シリーズ PDF(989KB)」[online]、(掲載年不明)、[検索日2020年6月4日]、インターネットURL:https://www.mitanivalve.com/jp/products/pumps.html(以下「乙1の1」という。) 乙第1の2号証:乙1の1のPDF(989KB)、(掲載年不明)、[検索日2020年6月4日] (以下「乙1の2」という。) 乙第2号証:知財高判平成30年4月4日判決言渡 平成29年(ネ)第10090号特許権侵害差止請求控訴事件 判決 (以下「乙2」という。) 乙第3号証:アマゾンジャパン合同会社の公式ホームページ、「Amazon Vine 先取りプログラムとは?」[online]、(掲載年不明)、[検索日2020年11月2日]、インターネットURL:https://www.amazon.co.jp/gp/vine/help (以下「乙3」という。) 乙第4号証:被請求人作成の口頭審理用資料 (2020年12月11日)(以下「乙4」という。) 乙第5号証:メルク社のウェブサイト、昆虫忌避剤IR3535○R(審決注:原文では丸の中にR)メルク社、2021年(以下「乙5」という。) 乙第6号証:SCOTT P.CARROLL、J.Med.Entomol.、2008年、45(4)、p.706~714 乙第7号証:2015年3月6日薬事・食品衛生審議会 化粧品・医薬部外品部会 議事録、厚生労働省 乙第8号証:化学大辞典2、「揮発度」の項目、共立出版株式会社、1960年6月30日、p.786~787及び奥付(以下「乙8」という。) 乙第9号証:ICSC 0044 エタノール(無水)、国立医薬品食品衛生研究所、2018年(以下「乙9」という。) 乙第10号証:被請求人従業者 延原健二 作成の実験報告書、2022年10月26日(以下「乙10」という。) 乙第11号証:IR3535○R(3-[N-n-butyl-N-acetyl]aminopropionic acid ethylester)のSDS(安全データシート)、メルク社、2022年8月31日(印刷日)(以下「乙11」という。) 乙第12号証:イカリジン(ピカリジン)のSDS(安全データシート)、Med Chem Express社、2022年8月20日(印刷日)(以下「乙12」という。) 第7 無効理由についての当審合議体の判断 当審合議体は、以下に示すとおり、無効理由1及び2には理由がないものと判断する(無効理由3及び4については、すでに述べたとおり検討するまでもなく理由はない。)。 理由は以下のとおりである。 1 無効理由1(新規性欠如)について (1)請求人提出の各証拠の内容 ア 甲1に示されている事項 甲1a「NEWS 2016.01.19 新製品情報 天然由来の成分で虫よけ&UVカット!『服にスプレー スキンベープミストナチュラルUVカット』新登場 紫外線を92%※カット!※UV遮蔽率86%の綿に1回/100cm2スプレーした場合100%天然由来成分の衣類用虫よけスプレー。 2016年3月1日(火)からメーカー出荷、3月中旬から全国の店頭で順次発売 [図:0001422767000001.jpg] フマキラー株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大下一明)は、紫外線をカットできる衣服用の天然虫よけスプレー『服にスプレースキンベープミストナチュラルUVカット』を2016年3月1日(火)より出荷し、同月中旬より順次、全国の店頭で販売します。販売チャネルは、ドラッグストア、スーパー、ホームセンターなどです。 弊社では、天然由来の成分にこだわる方、子供の健康を重視する保護者の方、敏感肌の方や虫よけ剤を肌に塗ることに抵抗感を持つ方、特に女性をターゲットに、服の上から使用できる本商品を開発しました。さらに、本商品には紫外線を防ぐ効能を付加し、多くの女性ユーザーのご要望に応えました。 効力の弱いものが多いとされる天然由来の成分ですが、本商品は94%※1以上の虫よけ効果を発揮するとともに、服の素材や色によっては、約92%※2の紫外線をカットできる機能も有しています。 ※1 自社試験による虫よけ効果。上半身衣類にまんべんなく14回スプレーした時。 ※2 UV遮蔽率86%の綿に1回/100cm2スプレーした場合。」 (標題~【商品の特長】の1行上) 甲1b「【商品の特長】 ○1 (審決注:原文では、○1は、丸数字、以下同様。)紫外線を92%※カット!※UV遮蔽率86%の綿に1回/100cm2スプレーした場合 ○2 100%天然由来の成分! 有効成分として、レモンユーカリに含まれる「p-メンタン-3,8-ジオール」と、ハッカやミントに含まれる「l-メントール」が、2重の虫よけバリア空間を作り出します。 ○3 服にスプレーするだけ! 服にスプレーするだけで、効きめが広がり、イヤな虫から全身をガード。帽子やベビーカー※にも使え、生地を傷める心配もありません。 ※肌に直接触れない箇所にご使用ください。 ○4 ミストタイプのスプレーで使いやすい! スプレーするだけの手軽さ。ガス不使用なので舞い散りも気になりません。 ○5 パッチテスト済み!※すべての方に肌トラブルが起こらないということではありません。 【有効成分など】 p-メンタン-3,8-ジオール、l-メントール、エタノール、水、香料、紫外線吸収剤 【適用害虫】 ユスリカ 【使用方法】 ・衣類から約10cm離し、衣類にまんべんなくスプレーしてください。1人あたり約14回が目安です。 ・衣類を着たままスプレーする場合は、肌に直接かからないよう注意してください。」(【商品の特長】、【有効成分など】、【適用害虫】及び【使用方法】) イ 甲2に記載されている事項 甲2a「品名 服にスプレー スキンベープミストナチュラルUVカット ・・・制定 2015.12.08 有効期間 3年(暫定) ・・・」 甲2b「処方 製品1本あたり 成分名 % 分量 換算値 備考 Eucalydiol 221582 有効成分 l-メントール 有効成分 ・・・ 香料 ・・・ 紫外線吸収剤 ・・・ 溶剤 イオン交換水 32.8905g 溶剤 合計 90.0000g 100.0000mL 」 甲2c「適用製品 製品名 略号 服にスプレー スキンベープミストナチュラルUVカット スナヒウ」 ウ 甲3に記載されている事項 甲3a「3 飽和水蒸気圧表 (日本機械学会「蒸気表」より抜粋) 温度 圧力 ・・・ ℃ kPa ・・・ 20 2.3366」 エ 甲4に記載されている事項 甲4a「 [図:0001422767000002.jpg] 」(37頁) オ 甲5に記載されている事項 甲5a「 試験結果報告書 (粒子径測定試験) 2020年2月7日 フマキラー株式会社 開発本部 開発研究部 副主任研究員補 西本 奈未 【目的】 ポンプ式害虫忌避製品から噴射される害虫忌避組成物の粒子径測定 【試験実施日】 2019年7月5日 【試験場所】 フマキラー株式会社 S1試験室 【使用機器】 エアロトラックLDSA-SPR1500A粒子径分布測定装置 製造元 :マイクロトラック・ベル株式会社製 測定方式:レーザ光回折方式 【供試資材】 〇1 服にスプレースキンベープミストナチュラルUVカット 製造ロット番号:8F2C1A 包装ロット番号:8G2KA ※詳細は別紙1のとおり。 〇2 天使のスキンベープミストプレミアム200mL 製造ロット番号:8F881A ※詳細は別紙2のとおり。 【試験方法】 〇1 供試資材を試験前に室温(25±2℃)に1時間以上置き、供試資材を室温に保持する。 〇2 粒子径測定装置のセンサー位置から、供試資材のトリガーの噴射口まで、15cmおよび30cm離し、噴霧粒子の中心がセンサー位置になるように高さを調整した位置に供試資材をセットする。 〇3 15cmおよび30cmの位置から供試資材を1回噴射し、害虫忌避組成物の50%平均粒子径を測定する。 〇4 測定は各5回測定し、最大値及び最小値を除く平均を算出する。 [図:0001422767000003.jpg] 以上」(1頁1行~2頁末行) 甲5b「別紙1 供試資材とした製品名「服にスプレースキンベープミストナチュラルUVカット」とする製品は以下のとおりの噴射製品である。 1.構成 下記の写真1-1のとおり、レモンユーカリに含まれる「p-メンタン-3,8-ジオール」等を害虫忌避成分とする害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成されたトリガーポンプを備えており、このトリガーポンプが容器に取り付けられている。トリガーポンプは、株式会社三谷バルブ製造のZ-305シリーズのトリガーポンプである。 [図:0001422767000004.jpg] 製品としては、下記写真1-2及び1-3のとおり、ブリスターパックと台紙からなる包装にトリガーポンプ及び容器からなる製品本体を包装する。 [図:0001422767000005.jpg] 有効成分(害虫忌避成分)の記載は、製品本体の裏面(写真1-4)及び台紙裏面(写真1-5)に記載されているとおり、「p-メンタン-3,8-ジオール」である。その他害虫忌避組成物を構成する成分は、l-メントール、エタノール、水、香料、紫外線吸収剤である。 [図:0001422767000006.jpg] 2.ロット番号 製造ロット番号は、製品本体底面(写真1-6)と台紙裏面右下部(写真1-5の拡大写真2)に印字されており、「8F2C1A」である。また、ブリスターパックと台紙からなる包装にトリガーポンプ及び容器からなる製品本体を包装する際にもロット番号(包装ロット番号)を付しており、その包装ロット番号は「8G2KA」である(写真1-5の拡大写真2)。 製造ロット番号「8F2C1A」のうち1番目は製造期末尾を、3番目は製造月を、4番目が製造日を表しており、68期(2015年(平成27年)10月1日~2016年(平成28年)10月1日)の2月12日に製造されたことを示している。 また、包装ロット番号「8G2KA」のうち1番目は製造期末尾を、3番目は製造月を、4番目が製造日を表しており、68期の2月18日に包装されたことを示している。 [図:0001422767000007.jpg] 」(3~5頁 別紙1) 甲5c「別紙2 供試資材とした製品名「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」とする製品は以下のとおりの噴射製品である。 2.構成 下記の写真2-1のとおり、イカリジンを害虫忌避成分とする害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成されたトリガーポンプを備えており、このトリガーポンプが容器に取り付けられている。トリガーポンプは、株式会社三谷バルブ製造のZ-305シリーズのトリガーポンプである。 [図:0001422767000008.jpg] 有効成分(害虫忌避成分)の記載は、製品本体の裏面(写真2-2)に記載されているとおり、「イカリジン」である。その他害虫忌避組成物を構成する成分は、エタノール、ヒアルロン酸Na(2)、精製水、香料である。 [図:0001422767000009.jpg] 2.ロット番号 製造ロット番号は、製品本体底面(写真2-3)に印字されており、「8F881A」である。 製造ロット番号「8F881A」のうち1番目は製造期末尾を、3番目は製造月を、4番目が製造日を表しており、68期(2015年(平成27年)10月1日~2016年(平成28年)10月1日)の8月8日に製造されたことを示している。 [図:0001422767000010.jpg] 」(6~7頁 別紙2) カ 甲6に記載されている事項 甲6a「 [図:0001422767000011.jpg] 」 キ 甲7に記載されている事項 甲7a「 [図:0001422767000012.jpg] 」 ク 甲8に示されている事項 甲8a「NEWS 2016.08.08 新製品情報 有効成分”イカリジン”の濃度を高めた虫よけ剤「天使のスキンベープミスト プレミアム」「天使のスキンベープミスト プレミアム」緊急新発売! ミストは8月中旬、エアゾールは9月中旬から全国で展開するドラッグストアを中心に順次発売。<<防除用医薬部外品>> [図:0001422767000013.jpg] フマキラー株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大下一明)は、虫よけ成分”イカリジン”の濃度を高めた虫よけ剤「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」と「天使のスキンベープ プレミアム200mL」を緊急で新発売します。ミストタイプの「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」は8月中旬より、エアゾールタイプの「天使のスキンベープ プレミアム200mL」は9月中旬より順次、全国で展開するドラッグストアを中心に発売します。なお、本格的な展開は、来春を予定しています。 本商品は、有効成分であるイカリジンの濃度を15%にまで高めた虫よけ剤です。濃度を高めることによって、虫よけ効果が長持ちします。 なお、”イカリジン”は、1986年、ドイツのバイエル社がディートに代わる忌避剤として開発し、欧州、米国、オーストラリア、マレーシアなど54カ国以上で、すでに忌避剤として採用されている成分です(2015年1月弊社調べ)。 【商品の特長】 ○1 虫よけ効果が6~8時間持続! 有効成分として、新虫よけ成分の”イカリジン”を15%配合しています。 ○2 ミストタイプは、潤水成分の「ヒアルロン酸ナトリウム」配合でお肌にやさしい。 エアゾールタイプは、パウダーインでお肌さらさら。 【分類】 防除用医薬部外品 【有効成分】 「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」・・・イカリジン15%(原液濃度) 「天使のスキンベープ プレミアム200mL」・・・イカリジン15%(原液濃度) 【効能】 蚊成虫、ブユ、アブ、マダニの忌避 【使用方法】 肌から約10cm離して、適量を肌の露出部にまんべんなくスプレーする。 顔、首筋等は、手のひらに一度スプレーしてから塗り広げる。」 (標題~【使用方法】) ケ 甲9に記載されている事項 甲9a「審査報告書 平成27年2月18日 独立行政法人医薬品医療機器総合機構 ・・・ 記 ・・・ [有効成分]イカリジン ・・・ [化学構造] ・・・ 化学名: (日本名)1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート ・・・」(有効成分の欄及び化学構造の欄の化学名(日本名)の項目) コ 甲10に記載されている事項 甲10a「品名 天使のスキンベープミストプレミアム200mL ・・・ 制定 2016/6/28 有効期間 3年間 ・・・」 甲10b「処方 1本(200mL)中 成分名 % 分量 換算値 備考 イカリジン 有効成分 ・・・ 湿潤剤 ・・・ 着香剤 ・・・ 溶剤 イオン交換水 67.7702g 溶剤 合計 184.8000g 200.0000mL」 サ 甲11に記載されている事項 本件特許に係る出願の優先権主張の基礎となる出願である、特願2016-71925号の明細書及び特許請求の範囲。 甲11a「【書類名】 特許請求の範囲 【請求項1】 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品であり、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品。 【請求項2】 前記害虫忌避組成物は、さらに、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分を含み、 前記揮発抑制成分は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下である、請求項1記載の噴射製品。 【請求項3】 前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、前記ポンプ容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である、請求項1または2記載の噴射製品。 【請求項4】 前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物および噴射剤が加圧充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータとを備えるエアゾール製品である、請求項1または2記載の噴射製品。 【請求項5】 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、 前記害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であり、 前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との比(r30/r15)が、0.6以上となるよう前記害虫忌避組成物を噴射する、噴射方法。」 甲11b「【背景技術】 【0002】 従来、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)を配合した害虫忌避剤が知られている。しかしながら、ディートは、皮膚吸収作用による安全性の点から、6ヵ月未満の乳児には使用できず、12歳未満は使用回数が制限される。そこで、ディートに代えて、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート等を配合した害虫忌避剤が検討されている(特許文献1~3)。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、ディートに代わる上記害虫忌避成分の配合された害虫忌避剤は、たとえばポンプ製品やエアゾール製品として噴射された際に、噴射された粒子が使用者やその周囲の者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい。その結果、使用者等は、粘膜に違和感を感じたり、咳き込んだりしやすい。なお、従来使用されていたディートでは、上記害虫忌避成分よりも粘膜への刺激が小さい。そのため、ディートの配合された害虫忌避剤では、粘膜刺激に関するこのような課題はそもそも生じにくい。 【0005】 本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、使用者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、粘膜への刺激が低減された噴射製品および噴射方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、上記害虫忌避成分が配合されている場合における粘膜への刺激の原因について鋭意研究し、以下の知見を得た。すなわち、噴射された害虫忌避剤の中には、皮膚や髪等の適用箇所に付着せずに、適用距離(たとえば噴口から15cmの距離)を超えてさらに離れた位置(たとえば噴口から30cm離れた位置)に到達し、浮遊するものがある。このような離れた位置では、粒子径は、適用距離における粒子径よりも小さくなる。その結果、小さくなった粒子は、吸引されやすく粘膜を刺激しやすい。そこで、本発明者らは、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整された噴射製品であれば、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減され、上記課題が解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。・・・ ・・・ 【発明の効果】 【0012】 本発明によれば、使用者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、粘膜への刺激が低減された噴射製品および噴射方法を提供することができる。 【発明を実施するための形態】 【0013】 <噴射製品> 本発明の一実施形態の噴射製品は、害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品である。また、本実施形態の噴射製品は、害虫忌避成分として、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分を含む。さらに、本実施形態の噴射製品は、噴口から15cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整されている。なお、本実施形態の噴射製品は、噴射された際の粒子径比が特定の範囲となるよう調整されていることを特徴とする。そのため、その他の構成(たとえば噴射製品の形状、他の成分および配合、容器内圧等の各種物性等)は、上記粒子径比の範囲を満たすものであればよく、特に限定されない。したがって、以下の詳細な説明のうち、害虫忌避成分および粒子径比以外の構成は、いずれも例示である。 【0014】 (第1の実施形態) 本実施形態では、噴射製品の一態様として、噴射製品がポンプ製品である場合について説明する。本実施形態の噴射製品は、害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器と、ポンプ容器に取り付けられ、噴口が形成されたアクチュエータとを備えるポンプ製品である。 【0015】 ・害虫忌避組成物 害虫忌避組成物は、ポンプ容器に充填される内容物であり、害虫を忌避するための害虫忌避成分を含む。本実施形態の害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分を含む。これら害虫忌避成分は、蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、ナンキンムシ等の衛生害虫に加え、ユスリカ、チョウバエ等の不快害虫も好適に忌避し得る。ところで、これら害虫忌避成分は、一般に、噴射された後に微粒子化されると、使用者やその周囲の者(以下、使用者等ともいう)の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすい。その結果、使用者等は、粘膜に違和感を感じたり、咳き込んだりしやすい。なお、このような課題は、他の害虫忌避成分では生じにくく、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオールおよび1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートに特有の課題である。しかしながら、本実施形態の噴射製品は、このような粘膜を刺激しやすい成分が含まれる場合であっても、後述するとおり、噴射された際の害虫忌避組成物の粒子径比が特定の範囲となるよう調整されているため、使用者等の粘膜を刺激しにくい。 【0016】 害虫忌避成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、害虫忌避成分の含有量は、害虫忌避組成物中、5質量%以上であることが好ましい。一方、害虫忌避成分の含有量は、害虫忌避組成物中、50質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。害虫忌避成分の含有量が5質量%未満である場合、噴射製品は、害虫忌避効果を充分に発揮できない可能性がある。一方、害虫忌避成分の含有量が50質量%を超える場合、噴射製品は、期待される効力の増加よりも使用感の低下の方が大きくなりやすい。 【0017】 害虫忌避組成物は、上記害虫忌避成分のほかに、噴射後の揮発を抑制するため、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を好適に含む。これにより、噴射された害虫忌避組成物は、揮発が抑制され、粒子径が小さくなりにくい。揮発抑制成分は特に限定されない。一例を挙げると、揮発抑制成分は、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、濃グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、脂肪酸エステル、流動パラフィン、植物油、水からなる群から選択される少なくとも1の成分である。揮発抑制成分としてこれらの成分が含有される場合、噴射された害虫忌避組成物は、揮発がより抑制されやすく、適用箇所を超えた範囲(たとえば噴口から30cm離れた位置)にまで噴射された場合であっても、粒子径が小さくなりにくい。 【0018】 揮発抑制成分が含有される場合、揮発抑制成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、揮発抑制成分の含有量は、害虫忌避組成物中、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。揮発抑制成分の含有量が10質量%未満である場合、噴射製品は、揮発抑制成分を含有させることによる効果が充分に発揮できない可能性がある。」 甲11c「【0026】 本実施形態の噴射製品によって噴射される害虫忌避組成物は、噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整されればよく、1.0以上となるよう調整されることが好ましい。なお、本実施形態において、噴口から15cmという距離は、噴射製品を使用する使用者が適用箇所(皮膚や髪等)に噴射する場合の距離が想定されている。また、本実施形態において、噴口から30cmという距離は、噴射された害虫忌避組成物のうち、適用箇所に付着せずに、さらに離れた位置に到達した際の距離を想定している。このような離れた位置では、従来の害虫忌避組成物は、粒子径が小さくなりやすく、使用者等の粘膜を刺激しやすいと考えられた。しかしながら、本実施形態の噴射製品は、粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるよう調整されている。そのため、噴射された害虫忌避組成物は、噴口から30cm離れた位置であっても粒子径が維持されたままである。その結果、噴射製品は、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、粘膜への刺激が低減され得る。なお、噴射された害虫忌避組成物の粒子径および粒子径比(r30/r15)は、たとえばレーザー光回折式粒度測定装置(LDSA-1400Aマイクロトラック・ベル(株)製)を用いて測定し得る。 【0027】 このように、本実施形態の噴射製品は、噴射された害虫忌避組成物の粒子径比(r30/r15)が0.6以上に調整されていればよく、このような粒子径比を上記範囲に調整する方法は特に限定されない。一例を挙げると、害虫忌避組成物の粒子径比(r30/r15)は、害虫忌避組成物の処方(たとえばそれぞれの成分の種類および含有量、忌避抑制成分の有無および含有量等)、アクチュエータの形状、寸法(たとえば噴口の大きさ、形状等)、または、単位時間当たりの噴射量(噴射速度)、噴射圧等の各種物性が調整されることにより調整されればよい。一例を挙げると、アクチュエータの形状は、トリガータイプ、フィンガーポンプタイプ等であってもよい。これらのアクチュエータの噴口の大きさは、φ0.1~1.0mmであってもよく、噴口は複数であってもよい。1回噴射当たりの噴射量は、0.05~3.0mlであってもよい。蓄圧式ポンプの場合、1秒当たりの噴射量は、0.1~5.0gであってもよい。噴射圧は、デジタルフォースゲージ(DS2-2N(株)イマダ製)で15cmの距離から測定した場合において0.01~0.50Nであってもよい。 【0028】 また、本実施形態の噴射製品によって噴射された害虫忌避組成物は、噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15が50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。50%平均粒子径r15が50μm未満である場合、使用者等は、粘膜が刺激されやすい。 【0029】 本実施形態の噴射製品によって噴射された害虫忌避組成物は、噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30が50μm以上であればよく、70μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。50%平均粒子径r30が50μm未満である場合、使用者等は、粘膜が刺激されやすい。 【0030】 本実施形態の噴射製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、噴射製品は、ポンプ容器に害虫忌避組成物を充填し、アクチュエータによってポンプ容器の開口を閉止することによって製造することができる。 【0031】 以上、本実施形態の噴射製品(ポンプ製品)によれば、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、噴射された害虫忌避組成物は、噴射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維持されているため、粘膜への刺激が低減され得る。 ・・・ 【0045】 <噴射方法> 本発明の一実施形態の噴射方法は、害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品を用いて害虫忌避組成物を噴射する噴射方法である。また、本実施形態の噴射方法において使用される害虫忌避成分は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分を含む。さらに、本実施形態の噴射方法は、噴口から15cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるように害虫忌避組成物を噴射する。 【0046】 本実施形態の噴射方法を実施するにあたり、害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物および噴射製品は、いずれも上記第1の実施形態および第2の実施形態において説明したものと同様のものを使用し得る。また、本実施形態の噴射方法は、ポンプ製品である噴射製品を用いて実施することもでき、エアゾール製品である噴射製品を用いて実施することもできる。 【0047】 本実施形態の噴射方法によれば、粘膜を刺激しやすい上記特定の害虫忌避成分が配合されているにもかかわらず、噴射された害虫忌避組成物は、噴射後に粒子径比(r30/r15)が0.6以上に維持されるよう噴射される。その結果、本実施形態の噴射方法によって噴射された害虫忌避組成物は、使用者等の粘膜を刺激しにくい。」 甲11d「【実施例】 【0048】 以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。 【0049】 <ポンプ製品> 使用したポンプ製品の詳細を以下に示す。 (ポンプ製品1) アクチュエータ:(株)三谷バルブ製(品番:Z-305-101T7)、トリガー式噴射部材(品番:ND-97-0、噴口径:φ0.45mm、1回吐出量:約0.3cc) 【0050】 (実施例1~4、比較例1~3) 表1に記載の処方にしたがって害虫忌避組成物を調製した。得られた害虫忌避組成物を、上記ポンプ製品1にセット可能な内容積約240mlのポンプ容器に、ポンプ製品1のディップチューブが充分に浸かることを確認して約150ml充填し、ポンプ製品1を取り付け、噴射製品を作製した。なお、表中の無水エタノール以外のそれぞれの配合成分の配合量の数値の単位は、(wt/v%)である。 【0051】 【表1】 [図:0001422767000014.jpg] 【0052】 <50%平均粒子径> 噴射製品を25℃に保持し、レーザー光回折式粒度測定装置(LDSA-1400A マイクロトラック・ベル(株)製)を用いて50%平均粒子径を測定した。測定は、噴口から15cmの位置および30cmの位置から1回噴射し害虫忌避組成物の平均粒子径を測定した。得られた測定結果に基づいて、50%平均粒子径r15と50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)を算出した。なお、測定は5回行い、最大値および最小値を除く3点 の平均を算出した。結果を表1に示す。 【0053】 <粘膜刺激性> 噴射製品を25℃に保持し、被験者の肩口に15cmの距離から1回噴射し、刺激感を評価させた。以下の評価基準にしたがって、粘膜刺激性を評価した。評価は、10人の被験者によって行い、平均を算出した。結果を表1に示す。 (評価基準) 1:粘膜刺激が感じられなかった。 2:弱い粘膜刺激が感じられた。 3:粘膜刺激が感じられた。 4:強い粘膜刺激が感じられた。 5:許容範囲を超える強い粘膜刺激が感じられた。 【0054】 表1に示されるように、粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるよう調整された実施例1~4の噴射製品は、粘膜刺激が低減された。一方、粒子径比(r30/r15)が0.6未満となるよう調整された比較例1~3の噴射製品は、実施例1~4と比べ、強い粘膜刺激が感じられた。」 シ 甲12の内容 本件特許に係る出願の優先権主張の基礎となる出願である、特願2016-229406号の明細書及び特許請求の範囲。 特許請求の範囲及び明細書の【0001】~【0047】の記載は甲11の記載と同一であり、実施例において、実施例5~11、比較例4~6、参考例1の記載が追加されているが、本件訂正特許発明に該当する実施例は、イカリジンを害虫忌避成分とした実施例5、7及びポンプ製品2を用いて実施例1、2と同一成分組成で行った実施例9、10のみが追加されている。 ス 甲13の内容 本件特許に係る出願の国際公開公報。 セ 甲14の内容 本件特許の特許公報。 ソ 甲15の1に示されている事項 甲15の1a「カスタマーレビュー (写真)スキンベープ虫除けスプレー ミ・・・ ・・・ ・・・revodog ベスト500レビュアー VINEメンバー ・・・天然成分かつ服にスプレーするので安心して使えます。 2016年3月14日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・エトロフ ベスト1000レビュアー VINEメンバー ・・・お肌に直接噴霧する虫除けスプレーが使えない人に・・・ 2016年3月13日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・ローニャ ・・・ストッパーが嬉しい 2016年3月12日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・ゆきねこ VINEメンバー ・・・手軽。あとは効果ですね。 2016年3月12日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・▲+▲RYNEX▲+▲ ・・・虫よけとUVカットのW効果 2016年3月11日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・isajie ベスト500レビュアー VINEメンバー ・・・期待します 2016年3月10日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・ふわふわオムレット ベスト1000レビュアーVINEメンバー ・・・スプレータイプの虫よけ。使いやすくて便利・・・ 2016年3月9日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・amazonカスタマー VINEメンバー ・・・虫よけ+UVカット 2016年3月9日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・亞桜 ・・・珍しい服に使うタイプの虫除けスプレー 2016年3月8日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・チットタカッチ VINEメンバー ・・・服に掛ける虫よけ良い発想。匂いもユーカリとレモンいい感じです。 2016年3月7日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・」 タ 甲15の2に示されている事項 甲15の2a「カスタマーレビュー (写真)スキンベープ虫除けスプレー ミ・・・ ・・・ ・・・チュブラーシカ ベスト500レビュアー VINEメンバー ・・・なんとユスリカ用の虫除け剤 2016年3月20日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・70年代が好き ・・・画期的 2016年3月20日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・dooinney oie ベスト1000レビュアー VINEメンバー ・・・紫外線もカット 2016年3月19日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・ぴー ・・・効果に期待 2016年3月19日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・Amazonカスタマー ・・・UVカットと虫除けがこれ1本で出来る 2016年3月18日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・Amazonカスタマー ベスト500レビュアー ・・・子供に安心 2016年3月17日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・はいでぃよ 殿堂入り ベスト10レビュアー VINEメンバー ・・・良い匂いですが・・・ 2016年3月17日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・Prime VINEメンバー ・・・レモンユーカリの香りが爽やか(新成分イカリジン) 2016年3月15日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・voodootalk 殿堂入り ベスト1000レビュアー VINEメンバー ・・・虫よけにUVカットをプラスするという発想は良い 2016年3月14日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・Hachiouji-love VINEメンバー ・・・さすが、さすがのフマキラー製品 2016年3年14日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・」 チ 甲15の3に示されている事項 甲15の3a「カスタマーレビュー (写真)スキンベープ虫除けスプレー ミ・・・ ・・・ ・・・るびこん ・・・天然成分 2016年3月28日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・にゃんこ VINEメンバー ・・・こういう商品が欲しかった! 2016年3月22日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・ ・・・ひろ VINEメンバー ・・・臭いは賛否あるかも 2016年3月21日に日本でレビュー済み Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー( 詳細 ) ・・・」 ツ 甲16の内容 甲2の黒塗り部分を外したもの テ 甲17の1に記載されている事項 甲17の1a「新規製造伝票 ・・・ 製造記録 ・・・ 年月日 ・・・ 16.2.10 品番コード 製造品名 793215 スナヒウエキ ロット番号 810001」 ト 甲17の2に記載されている事項 甲17の2a「新規製造伝票 ・・・ 製造記録 ・・・ 製造年月日 ・・・ 16年2月12日 品番コード 製造品名 793419 スナヒウヨウキイリ ・・・ ロット番号 8F2C1A 品番コード 材料名 ・・・ ロット番号 1 195619 スナヒア トリガー 151015 2 790707 スナヒウ LBボトル 201622 3 793215 スナヒウ エキ 810001」 ナ 甲17の3に記載されている事項 甲17の3a「新規製造伝票 ・・・ 製造記録 ・・・ 製造年月日 ・・・ 2016年2月18日 品番コード 製造品目 793624 スナヒウフリスタイ3 ロット番号 8F2C1A 8G2KA ・・・ 品番コード 材料名 1 190614 スナヒウダイシ2 2 195620 スナヒアブリスター 3 223552 スナヒイPOP1 4 793419 スナヒウヨウキイリ ・・・ 備考 サンプル含む 8F2C1A 8G2KA ・・・」 ニ 甲17の4に記載されている事項 甲17の4a「新規製造伝票 ・・・ 製造記録 ・・・ 製造年月日 ・・・ 2016年2月18日 品番コード 製造品目 10028424 スナヒウ ロット番号 8F2C1A 8G2KA ・・・ 品番コード 材料名 1 121817 スナヒウBC2 2 152327 スナヒウPCT3 3 793624 スナヒウフリスタイ3」 ヌ 甲18の1に記載されている事項 甲18の1a「製品仕様書 作成2014年12月18日 改定2016年08月02日 得意先名 フマキラー(株) 株式会社 三谷バルブ ・・・ 商品名称 スキンVナチュラル白トリガー(スナヒアトリガー)」 ネ 甲18の2に記載されている事項 甲18の2a「製品組完図 作成2014年12月18日 改定2016年08月02日 得意先名 フマキラー(株) 株式会社 三谷バルブ ・・・ 」 ノ 甲18の3に記載されている事項 甲18の3a「改定履歴 作成2014年12月18日 改定2016年08月02日 得意先名 フマキラー(株) 株式会社 三谷バルブ ・・・ 商品名称 スキンVナチュラル白トリガー(スナヒアトリガー) 規格名称 Z-305-101-72-00H(97-0)x106R ・・・ 改定日 箇所 内容・・・ 2016/08/02 規格名称 改定前Z-305-102-72-00H(97-0)x106R 改定後Z-305-101-72-00H(97-0)x106R・・・ ・・・」 ハ 甲19に記載されている事項 甲19a「 [図:0001422767000015.jpg] 」 ヒ 甲20に記載されている事項 甲20a「 [図:0001422767000016.jpg] 」 甲20b「 [図:0001422767000017.jpg] 」 フ 甲21に示されている事項 甲21a「その他に関するよくあるご質問 Q 有効期限・使用期限について教えてください。 A 製品には、有効期間や使用期限が表示されている製品と、表示されていない製品があります。 ■表示されていない商品に関して 製造後、少なくとも3年は安心してお使いいただけます(一部2年のものもあり)。未使用・未開封の商品の場合、ご家庭の室内などの通常の保存状態であれば、4~5年経過していてもご使用いただけます。・・・ <表示しない理由> 【医薬品・医薬部外品・防除用医薬部外品・化粧品に該当する商品】 厚生労働省の許認可のもとに製造販売しています。これらの商品は、許認可の際に3年以上品質が安定していることが確認されているため、薬機法上は有効期間の表示が不要となっています。 【医薬品・医薬部外品・防除用医薬部外品・化粧品以外の商品】 薬機法での規制対象ではありませんが、当社は、これらの商品に関しても同様に、薬機法に則り、3年以上品質が安定していることを確認しているため、有効期間の表示を行っておりません。」 へ 甲22の内容 ナチュラスボタニカルスプレー130mL 虫ケア用品(殺虫剤・防虫剤)に関するアース製薬の製品情報について示されている。 ホ 甲23の内容 2020年8月6日付けのフマキラー株式会社において作成された粒子径測定試験の試験結果報告書(2)であり(試験実施日2020年7月30日)、供試資材として、以下のものが示されている。 〇1 服にスプレースキンベープミストナチュラルUVカット 製造ロット番号:8F2C1A 包装ロット番号:8G2KA ※詳細は2020年2月7日付け試験結果報告書(粒子径測定試験)の別紙1のとおりのもの 〇2 服にスプレースキンベープミストナチュラルUVカット 製造ロット番号:8FLG8A 包装ロット番号:9G8JA ※「ジュンテンドー広島県廿日市店」において2020年7月30日に購入したもの (詳細は別紙2のとおり。) 〇3 天使のスキンベープミストプレミアム200mL 製造ロット番号:8F881A ※詳細は2020年2月7日付け試験結果報告書(粒子径測定試験)の別紙2のとおり。 〇4 天使のスキンベープミストプレミアム200mL 製造ロット番号:2F5F2B ※「ジュンテンドー広島県廿日市店」において2020年7月30日に購入したもの (詳細は別紙3のとおり。) 甲5(2020年2月7日付け試験結果報告書(粒子径測定試験))に記載の【測定結果】と共に、2020年7月30日に購入した「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」及び「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」の粒子径測定試験結果が記載され、別紙1~4に、2020年7月30日に購入した商品の購入領収書、当該商品の写真や詳細情報及び製造伝票が示されている。 マ 甲24に示されている事項 甲24a「NJSS入札情報速報サービス ・・・ 液滴粒子径分布測定装置 1式 日機装(株)製 エアロトラックLDSA-SPR1500A (2009年12月08日公示) ・・・ 概要:文部科学省(MEXT)(東京都千代田区霞が関3-2-2)が公告・公示する一般競争入札の入札情報「液滴粒子径分布測定装置 1式 日機装(株)製 エアロトラックLDSA-SPR1500A(公示日:2009年12月08日)」について。」 ミ 甲25に記載されている事項 甲25a「空気中における噴霧水粒子の挙動解析に関する基礎的研究 ・・・ 1.はじめに ドライミストや霧吹き型の除菌・消臭剤など、日常生活で液体粒子の噴霧が行われることが多い。これらの効果を評価するためには、空気中における液体粒子の挙動の把握が不可欠であるが、粒子の寿命や到達距離などの性状は、周囲の温湿度や粒子径によって様々であると考えられる。・・・」(77頁標題、左欄3~9行) ム 甲26の内容 蓄圧ポンプ式噴霧器や手動ポンプ式噴霧器による殺虫剤の噴霧に関して、その粒子径の分布を検証する論文。 メ 甲27の内容 「3-(N-ブチル-N-アセチル)-アミノプロピオン酸エチルエステル」の化学式、沸点、構造、蒸気圧、水への溶解度等が示されている。 モ 甲28の内容 「1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボキシレート」の化学式、沸点、構造、蒸気圧、水への溶解度等が示されている。 ヤ 甲29に示されている事項 甲29a「 [図:0001422767000018.jpg] 」 ユ 甲30の内容 甲10の黒塗りを外したもの ヨ 甲31の1に記載されている事項 甲31の1a「新規製造伝票 ・・・ 製造記録 ・・・ 年月日 ・・・ 16.8.5 品番コード 製造品名 771075 ステフアエキ ロット番号 810001」 ラ 甲31の2に記載されている事項 甲31の2a「新規製造伝票 ・・・ 製造記録 ・・・ 製造年月日 ・・・ 2016年8月8日 ・・・ 品番コード 製造品名 794401 ステフアヨウキイリ ・・・ ロット番号 8F881A ・・・ 品番コード 材料名・・・ ロット番号 1 101350 ステフア トリガー 2 794605 ステフアLBボトル 3 771075 ステフア エキ・・・ 810001 ・・・」 リ 甲31の3に記載されている事項 甲31の3a「新規製造伝票 ・・・ 製造記録 ・・・ 製造年月日 ・・・ 2016年8月8日 ・・・ 品番コード 製造品名 794401 ステフアヨウキイリ ・・・ ロット番号 8F881A ・・・ 品番コード 材料名 ・・・ロット番号 1 101350 ステフア トリガー 2 794605 ステフアLBボトル 3 771075 ステフア エキ 810001 ・・・ 注意事項・備考 ロット 810001 8F881A ・・・ サンプル ロット 810001 8F881A」 ル 甲32の1に記載されている事項 甲32の1a「製品仕様書 作成2016年07月06日 改定2016年10月26日 得意先名 フマキラー(株) 株式会社 三谷バルブ ・・・ 商品名称 スキンVP200金トリガー(ステフア トリガー)」 レ 甲32の2に記載されている事項 甲32の2a「製品組完図 作成2016年07月06日 改定2016年10月26日 得意先名 フマキラー(株) 株式会社 三谷バルブ ・・・ 商品名称 スキンVP200金トリガー(ステフア トリガー)」 ・・・」 ロ 甲33の1に記載されている事項 甲33の1a「製品仕様書 作成2016年07月06日 ・・・ 得意先名 フマキラー(株) 株式会社 三谷バルブ ・・・ 商品名称 (仮)新スキンベープミスト」 ワ 甲33の2に記載されている事項 甲33の2a「製品組完図 ・・・ 得意先名 フマキラー(株) 株式会社 三谷バルブ ・・・ 商品名称 (仮)新スキンベープミスト ・・・」 ア2 甲34に記載されている事項 甲34a「 [図:0001422767000019.jpg] 」 イ2 甲35の1~甲35の8の内容 令和2年5月時点で販売されている「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」と公然実施品2とが同じ仕様であることを示す新規製造伝票 ウ2 甲36に記載されている事項 甲36a「てい-げん【低減】へること。へらすこと。・・・」(1981頁【低減】の項目) エ2 甲37に記載されている事項 甲37a「 [図:0001422767000020.jpg] [図:0001422767000021.jpg] [図:0001422767000022.jpg] [図:0001422767000023.jpg] [図:0001422767000024.jpg] [図:0001422767000025.jpg] [図:0001422767000026.jpg] [図:0001422767000027.jpg] [図:0001422767000028.jpg] [図:0001422767000029.jpg] [図:0001422767000030.jpg] [図:0001422767000031.jpg] [図:0001422767000032.jpg] [図:0001422767000033.jpg] 」 オ2 甲38の内容 令和3年1月8日付けで請求人フマキラー株式会社開発本部開発管理室知的財産グループ 船越 久生氏の陳述書であって、甲37の「入庫処理」及び「出庫処理」の記録の読み方、並びに、公然実施発明1は有効期限経過後であっても、容器外に成分が揮発し、粒子径に影響を与えることはない旨の陳述をしたことが示されている。 (2)被請求人提出の各証拠の内容 ア 乙1の1に示されている事項 乙1の1a「製品紹介 ディスペンサーポンプ 目次 ・・・ トリガーポンプ Z-305/505シリーズ T-305/650シリーズ PDF(989KB) ・・・」 イ 乙1の2の内容 乙1の1の「トリガーポンプ Z-305/505シリーズ T-305/650シリーズ」の「PDF(989KB)」には、「トリガーポンプ」「Z-305」「シリーズ」に属するものであっても、それぞれ形状が異なることが示されている。 ウ 乙2の内容 サンプル薬に具現化された技術的思想について説示した部分が存在する知財高判平成30年4月4日判決言渡の平成29年(ネ)第10090号特許権侵害差止請求控訴事件の判決文が示されている。 エ 乙3に示されている事項 乙3a「Amazon Vine 先取りプログラムとは? Amazon Vine 先取りプログラム(以下、「本プログラム」)とは、お客様に予約商品や新商品のサンプルをご利用いただき、ご意見やご感想をカスタマーレビューとして投稿いただく、招待制プログラムです。本プログラムのメンバー(以下、「Vineメンバー」)となるお客様は、他のお客様の役に立つ率直なカスタマーレビューを投稿している実績があります。・・・ ・・・ 本プログラムは、高い信頼が寄せられているトップレビュアーの方々から、商品に対する率直かつ公平なご意見をいただき、他のお客様に対して参考となる情報を提供することを目的として生まれました。 ・・・ Vineメンバーが発売前の商品を受け取ることはありますか? はい。本プログラムに参加している仕入先によっては、発売前の商品をVineメンバーに提供する場合があります。」 オ 乙4の内容 口頭審理期日において、被請求人が配布し、その内容の一部について説明した資料。 令和2年6月29日提出の訂正請求書に基づく訂正を前提に、該訂正が適法であること、無効理由1~4に理由がないことが説明されている。 (3)公然実施品1及び公然実施発明1について ア 甲1には、フマキラー株式会社の公式ホームページにおける2016年1月19日付け新製品情報として、品名「服にスプレースキンベープミストナチュラル UVカット」内容量100mlの虫よけスプレーで、100%天然由来成分の衣類用虫よけスプレーが示されている(甲1a)。 また、商品の特長として、「有効成分として、レモンユーカリに含まれる「p-メンタン-3,8-ジオール」と、ハッカやミントに含まれる「l-メントール」が、2重の虫よけバリア空間を作り出します」、「服にスプレーするだけで、効きめが広がり、イヤな虫から全身をガード」、「スプレーするだけの手軽さ。ガス不使用なので、舞い散りも気になりません。」、有効成分などとして、「p-メンタン-3,8-ジオール、l-メントール、エタノール、水、香料、紫外線吸収剤」が示されている(甲1b)。 イ 甲2には、品名「服にスプレースキンベープミストナチュラル UVカット」の処方が記載されており、その製品1本あたりの処方として、有効成分が、「Eucalydiol 221582」、「l-メントール」、香料、紫外線吸収剤、溶剤、イオン交換水を含むこと、特に、イオン交換水は、32.8905gであり、合計90.0000g 100.0000mLであることが記載されている(甲2a、甲2b)。 ウ 甲5(甲5a)には、請求人の開発本部開発研究部の副主任研究員補である西本奈未が、2020年2月7日に作成した「試験結果報告書(粒子径測定試験)」であること、目的として「ポンプ式害虫忌避製品から噴射される害虫忌避組成物の粒子径測定」であること、試験実施日が「2019年7月5日」であること、試験場所が「フマキラー株式会社 S1試験室」であること、使用機器が「マイクロトラック・ベル株式会社製」の「エアロトラックLDSA-SPR1500A粒子径分布測定装置」であり、測定方式が「レーザ光回折方式」であること、供試資材として「○1 服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」の製造ロット番号が「8F2C1A」、包装ロット番号が「8G2KA」であるものを使用したこと及び試験方法が記載され、その測定結果として「○1 服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」の平均粒子径r15が295.93(μm)、平均粒子径r30が236.27(μm)であることが記載されている。 また、甲5の別紙1(甲5b)には、「供試資材とした製品名「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」とする製品は以下のとおりの噴射製品である。」として、「1.構成」及び「2.ロット番号」について、以下の内容が具体的に記載されている。 (ア)「1.構成」について 【写真1-1】~【写真1-3】に示されている製品は、「服にスプレースキンベープミストナチュラル UVカット」であり、製品本体の形態が噴口、トリガーポンプ及び容器を備えたものであること、トリガーポンプが、株式会社三谷バルブ製造のZ-305シリーズのものであること、並びに製品本体がブリスターパックと台紙からなる包装により包装されていることが示されている。 また、【写真1-4】~【写真1-5の拡大写真1】に示されている製品の裏面及び台紙の裏面には、「【有効成分等】p-メンタン-3,8-ジオール、l-メントール、エタノール、水、香料、紫外線吸収剤」及び「【内容量】100mL」が記載されていることが示されている。 (イ)「2.ロット番号」について 【写真1-6】~【写真1-5の拡大写真2】に示されている製品の底面及び台紙の裏面右下部には、製造ロット番号「8F2C1A」が、【写真1-5の拡大写真2】に示されている台紙の裏面右下部には、包装ロット番号「8G2KA」が、それぞれ印字されていることが記載されている。 そして、製造ロット番号「8F2C1A」は、1番目が製造期末尾を、3番目が製造月を、4番目が製造日を表し、68期(2015年(平成27年)10月1日~2016年(平成28年)10月1日※審決注:原文のまま)の2月12日に製造されたことを示していること、及び包装ロット番号「8G2KA」は、1番目が製造期末尾を、3番目が製造月を、4番目が製造日を表し、68期の2月18日に製造されたことを示していることが記載されている。 エ ここで、甲1、甲2及び甲5に記載された事項等に基づき、公然実施発明に関して検討する。 (ア)甲1と甲2には、「服にスプレー スキンベープミストナチュラルUVカット」という同じ品名の虫よけスプレーが記載され、その内容量も100mlと共通している。そして、甲1及び甲2に含まれている有効成分もp-メンタン-3,8-ジオール(審決注:甲2記載の「Eucalydiol」の有効成分は、p-メンタン-3,8-ジオールであることは、本件優先日時点での周知事項である。)及びl-メントールを含み、香料、紫外線吸収剤、イオン交換水などを含んでいることが看取できる。 さらに、甲2の処方は、制定日が2015年12月8日と記載されており、甲1の新製品情報の公表日2016年1月19日より前であって、これと十分に近接した時期に、甲2の処方が制定されていることから、甲1及び甲2の時期的関係において矛盾がなく、甲2は、甲1の虫よけスプレーの処方を示していると認められる。 甲2の処方は、溶剤としてイオン交換水である水を含んでいる。また、甲3の記載によれば、水の20℃の飽和水蒸気圧は、2.3366kPaであることが知られている(甲3a)。 甲2の処方における水の含有量は、合計90.0000g中、イオン交換水32.8905gを含むことから、その虫よけスプレー全体に対する質量%は、36.545質量%(=32.8905g/90.0000g×100)であるといえる。 さらに、甲1の虫よけスプレーは、甲1の写真(甲1a)から明らかなように、トリガーポンプを備えるポンプ製品であり、ガス不使用であること(甲1b)、また、甲2の処方の備考欄に噴射剤の記載がないことから、噴射剤を含まないポンプ製品であると認められる(甲2b)。 (イ)甲1と甲5には、「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」という同じ品名の虫よけスプレーが記載され、その内容量も100mlと共通している。そして、甲1及び甲5を総合すると、含まれている有効成分は、p-メンタン-3,8-ジオール及びl-メントールであり、エタノール、水、香料及び紫外線吸収剤を含んでいると理解できる。 また、甲6及び甲7の記載から、甲5で用いた製品は、製品ロット番号及び包装ロット番号から2016年2月12日に製造され、2016年2月18日に包装されたと理解できる。 甲1と甲5の製品ロット番号及び包装ロット番号からみて、甲1の新製品情報より約1月ほどあとに甲5の製品は製造され、甲5の試験結果報告書の供試資材に用いたものと理解でき、甲5の「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」は、甲1において「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」として発売するとされた製品を実際に製造したものであるとして時期的関係において矛盾がないだけでなく、近接した時期に製造されたものであるといえる。 したがって、甲5は、甲1において「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」として発売するとされた製品を実際に製造したものについての試験結果を記載した報告書であるといえる。 そうすると、甲1及び甲5に示された「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」であるポンプ製品は、甲5の測定から、製品の噴口から15cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30を測定した場合、それぞれ、平均粒子径r15が295.93(μm)、平均粒子径r30が236.27(μm)であり、その粒子径比(r30/r15)が、0.80(=236.27/295.93)であるといえる。 オ 甲1のポンプ製品の譲渡について (ア)甲15の1~甲15の3には、Amazon.co.jpのカスタマーレビューが掲載されている。 この甲15の1~甲15の3は、URLを示した電子的技術情報として提出されており、そのURLから表示される電子的技術情報において、各上部に示されている「 [図:0001422767000034.jpg] 」との記載部分の「 [図:0001422767000035.jpg] 」の部分をクリックすると、新たな画面により、 [図:0001422767000036.jpg] が示され、そこから次のことが分かる。 a 当該写真に示されている製品は、甲1に新製品情報として示されている「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」の写真(甲1a)及び甲5の別紙1の【写真1-1】~【写真1-3】(甲5b)と、形状(噴口が形成されたトリガーポンプを備えた容器)、色及び製品ラベルの模様が同じである。 b 当該写真の包装台紙のデザインは、甲1の写真(甲1a)及び甲5の別紙1の【写真1-1】~【写真1-3】(甲5b)に示されている製品本体を包装している台紙のデザインと、同じである。 c 当該写真の右欄に示されている製品説明も、甲1及び甲5の別紙1に示されている内容と同じである。 甲15の1~甲15の3に示された「カスタマーレビュー」とそれにリンクをさせた商品表示は、同一内容の製品についてのものでなければカスタマーレビューの意味がないから、甲15の1~甲15の3は、これらのサイトからリンクして表示される製品のレビューであると考えるのが自然で、異なる製品のレビューであるとする理由や根拠もない。 したがって、甲15の1~甲15の3に示されている「カスタマーレビュー」(甲15の1a~甲15の3a)は、「服にスプレー スキンベープミストナチュラル UVカット」についてのものであると考えられ、甲1及び甲5のポンプ製品と同じ製品の「カスタマーレビュー」であるといえる。 (イ)甲15の1~甲15の3に示されている「カスタマーレビュー」のうち、本件第1優先日(2016年3月31日)前に掲載されたカスタマーレビューは、全てAmazonの「Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビュー」である。 この「Amazon Vine 先取りプログラム」は、乙3より、お客様に新商品のサンプルを利用してもらい、意見や感想をカスタマーレビューとして投稿してもらうプログラムであり、トップレビュアーから商品に対する率直かつ公平な意見をもらい、他のお客様に対して参考となる情報を提供することを目的としたプログラムである(乙3a)。そうすると、当該「Amazon Vine 先取りプログラム」は、お客様が新商品をサンプルとして実際に入手し、利用したのち、カスタマーレビューに意見や感想を投稿するものであり、当該新商品の利用者には、当該新商品の情報を秘匿する義務はなく、むしろ、当該新商品の内容を積極的に広く知らしめる意図で行われているプログラムであるといえる。 したがって、甲15の1~甲15の3には、本件第1優先日(2016年3月31日)前の多数のAmazon Vine先取りプログラムメンバーのカスタマーレビューが記載されているから、甲1のポンプ製品は、少なくとも当該「Amazon Vine 先取りプログラム」のカスタマーレビュー投稿者に対してそのサンプルが譲渡されていたと認められ、本件第1優先日前に、公然実施されていたといえる。 カ 以上より、甲1及び甲5に記載されたポンプ製品は本件第1優先日前に公然実施されていた製品(以下「公然実施品1」という。)といえ、上記ア~エで述べた甲1、甲2及び甲5に記載された事項から、以下の公然実施された発明を認定できる。 「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された、噴射剤を含まない噴射製品であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含み、前記害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールであり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.80であり、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmである、噴射製品であり、前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填された容器と、前記容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたトリガーポンプを備えるポンプ製品である、噴射製品。」の発明(以下「公然実施発明1-1」という。) そして、上記公然実施発明1-1の噴射製品を利用することで、害虫忌避組成物を噴射する噴射方法も公然実施されていたことは明らかであるから、以下の公然実施された発明も認定できる。 「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された、噴射剤を含まない噴射製品を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含み、 前記害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールであり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.80となり、かつ、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmとなる、噴射方法」の発明(以下「公然実施発明1-3」という。) (なお、「公然実施発明1-1」と「公然実施発明1-3」とを併せて、「公然実施発明1」という。) キ 請求人の「公然実施発明1-1」及び「公然実施発明1-3」に対する主張について (ア)令和2年11月27日提出の口頭審理陳述要領書4頁22行~5頁2行及び令和3年1月12日提出の上申書3頁表下1~12行において、「公然実施発明1-1」と「公然実施発明1-3」について、水を害虫忌避組成物中、36.545質量%「以上」と「以上」という範囲で認定できる旨を主張し、その根拠として、害虫忌避の有効成分である「Eucalydiol 221582」の純度によってその仕込み量を変更し、調整をイオン交換水によって行うことから、実際に製造された公然実施品1では、36.545質量%以上となる場合があることを主張している。 しかしながら、請求人のいうとおり、「Eucalydiol 221582」の純度によってイオン交換水の量を考慮しなければならない場合があったとしても、処方例としてイオン交換水の含有量が定められている以上、計算上値のわずかにずれる場合が存在することをもって、36.545質量%「以上」と認定できることにはならない。 したがって、請求人の上記主張は採用することができない。 (イ)令和2年11月27日提出の口頭審理陳述要領書3頁下から2行~4頁21行及び令和3年1月12日提出の上申書3頁表下13~21行において、本件訂正特許発明の「調整され(た)」という特定が、結果として平均粒子径r30と粒子径比(r30/r15)が所定の数値内に収まっていることを意味しているとすれば、公然実施発明1もその状態にあるのであるから、公然実施発明1も「調整され(た)」という状態にあるといえる旨主張している。 この主張については、以下(4)ア(ア)cで後記のとおり、本件訂正特許発明における粒子径比(r30/r15)や平均粒子径r30を「調整され(た)」とは、「調整された状態」を示すものといえる。そして、公然実施発明1において、甲5の粒子径比(r30/r15)や平均粒子径r30実験結果から本件訂正特許発明の数値範囲に該当している以上、両者の状態に相違はないといえる。 ク 被請求人の主張について 審判事件答弁書11頁末行~14頁12行において、公然実施品1が株式会社三谷バルブ製のZ-305シリーズのうちのどのトリガーポンプを備えているのか確認できないこと、甲2には全ての成分及びその分量が開示されていないので甲5の実験を追試できないこと、並びに甲2によれば有効期間は3年であるところ、甲5で試験された公然実施品1は製造日から3年を経過したものを測定しており、当時のものと同等かどうか判断できないことを指摘し、甲5の実験結果については不知ないし否認する旨、主張している。 しかしながら、トリガーポンプについては、前記ウ(ア)のとおり、株式会社三谷バルブ製造のZ-305シリーズのトリガーポンプを備えていることが確認でき、このトリガーポンプはカタログに掲載され入手可能なものである(例えば、甲4a参照)。また、甲2に記載の成分及びその分量については、甲16として、甲2の黒塗り部分を外したものが提出され、甲2の全ての成分及びその分量を確認することができる。さらに、甲5で用いた粒子径分布測定装置(日機装(株)製エアロトラックL DSA-SPR1500A)は、少なくとも2009年12月8日には入手可能で(甲24a)、粒子径分布の測定は可能であるから、甲5の実験を追試できないとはいえない。 また、有効期間については、公然実施品には有効期間の表示がなされていないものの、有効期間や使用期限が表示されていない製品は厚生労働省の許認可の際に3年以上品質が安定していることが確認され、通常の保存状態であれば4~5年経過しても使用可能なもの(甲21a)であるところ、甲5の試験結果報告書及びその後の試験結果報告書(2)(甲23)の結果は、手動で噴射される害虫忌避組成物の粒子径を測定するという実験の性質から個々の測定値に一定のばらつきが生じるものの、いずれの粒子径や粒子径比も、本件訂正特許発明1を満たすものであり、その一方で、被請求人は、成分組成が変化することについて、具体的な証拠を提示していないことを考慮すると、実験結果に著しく影響を及ぼすような経年変化に起因した実験成分組成の実質的な変化はないといえる。 以上のとおり、被請求人の主張は採用できない。 (4)対比・判断 ア 本件訂正特許発明1について (ア)公然実施発明1-1との対比 a 公然実施発明1-1の「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された、噴射剤を含まない噴射製品」であり、「前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填された容器と、前記容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたトリガーポンプを備えるポンプ製品である、噴射製品」は、本件訂正特許発明1の「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、」「害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)」に相当する。 b 公然実施発明1-1の「前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含」むことに関し、本件特許明細書の【0014】には、本件訂正特許発明1の害虫忌避組成物は20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を好適に含むことが記載され、当該成分として「水」が例示されている。 一方、公然実施発明1-1に含まれる「水」は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaであり、噴射後の揮発を抑制できる成分といえる。 そうしてみれば、公然実施発明1-1の「前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含」むことは、本件訂正特許発明1の「前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含」むことに相当する。 c 公然実施発明1-1の「前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmである」と、本件訂正特許発明1の「前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された」との対比において、本件訂正特許発明1の「50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された」とは、噴射製品という物の発明においては、調整された状態と理解すべきであり、公然実施発明1-1において、「害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmである」状態は、「50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された」状態に該当している。 したがって、公然実施発明1-1の「前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmである」は、本件訂正特許発明1の「前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された」ことに相当するといえる。 d そして、公然実施発明1-1の「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.80とな」ることは、本件訂正特許発明1の「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され」たことに相当するといえる。 e 被請求人は、審判事件答弁書14頁13行~18頁11行において、公然実施発明1において、粒子径比(r30/r15)を0.8となるように調整することやr30を236.27に調整されたものであることを顕在化する必要がなく把握できないこと、それらを調整することの意義が把握できないこと、(r30/r15)を所定以上に調整する技術的思想が知られ得る状況として実施したといえないこと、イオン交換水が揮発抑制成分として認識されていないこと等を指摘し、本件訂正特許発明が公然に実施された発明といえない(公然実施発明1とは相違している)旨主張している。 しかしながら、本件訂正特許発明1における粒子径比(r30/r15)やr30が「調整され」たとは、「調整された状態」を示すものであり、両発明の対比は数値範囲が一致又は重複しているかどうかによって判断すればよく、調整する意図や意義を把握できるかどうかや、調整する技術的思想が知られ得る状況として実施されたかどうかによって、上記c及びdの判断は左右されない。 また、公然実施発明1-1に含まれる「水」が本件発明1の「揮発抑制成分」に該当するかどうかは、当該「水」が噴射後の揮発を抑制することができる成分であることを客観的に把握できるか否かによって判断すべきであるから、水の添加目的や、水が噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたかによって、上記bの判断は左右されるものではない。 したがって、被請求人の主張は採用できない。 f 以上のとおり、本件訂正特許発明1と公然実施発明1-1とは、 「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただしグリセリンを除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品」である点で一致し、以下の点において相違する。 (公然実施発明1-1)相違点1:害虫忌避組成物の害虫忌避成分について、本件訂正特許発明1においては、「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であ」るのに対して、公然実施発明1-1においては、害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールである点。 (イ)判断 (公然実施発明1-1)相違点1について検討する。 公然実施発明1-1の噴射製品の害虫忌避成分は、「p-メンタン-3,8-ジオール」であり、本件訂正特許発明1の害虫忌避成分である「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分」とは異なっており、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル又は1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートが公然実施発明1-1の害虫忌避成分噴射製品に含有されていることが技術常識であるとの事情もないので、(公然実施発明1-1)相違点1は実質的な相違点である。 (ウ)小括 したがって、本件訂正特許発明1は、本件第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえない。 イ 本件訂正特許発明2について (ア)公然実施発明1-1との対比 本件訂正特許発明2は、独立形式で記載されてはいるが、「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)」の下限が本件訂正特許発明1の「0.60」よりも大きい「0.85」としている点、及び「前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータを備えるポンプ製品である」ことを特定し、噴射製品がポンプ容器とアクチュエータを備えるポンプ製品であることをさらに特定している点で本件訂正特許発明1の特定事項と相違しているものである。 したがって、本件訂正特許発明2と公然実施発明1-1とを対比すると、上記アで対比したのと同様に、「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただしグリセリンを除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう調整された、噴射製品。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (公然実施発明1-1)相違点1’:害虫忌避組成物の害虫忌避成分について、本件訂正特許発明2においては、「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分であ」るのに対して、公然実施発明1-1においては、害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールである点。 (公然実施発明1-1)相違点2:「前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)」について、本件訂正特許発明2においては、「0.85以上となるように調整され」と特定されているのに対して、公然実施発明1-1においては、「0.80」である点。 (公然実施発明1-1)相違点3:本件訂正特許発明2においては、「前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填されたポンプ容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたアクチュエータを備えるポンプ製品である」ことを特定しているのに対して、公然実施発明1-1では、「前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填された容器と、前記容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたトリガーポンプを備えるポンプ製品である点。 (イ)判断 まず、(公然実施発明1-1)相違点1’について検討する。 前記アの(公然実施発明1-1)相違点1の判断と同様に、公然実施発明1-1の噴射製品の害虫忌避成分は、「p-メンタン-3,8-ジオール」であり、本件訂正特許発明2の害虫忌避成分である「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1の成分」とは異なっており、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル又は1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートが公然実施発明1-1の害虫忌避成分噴射製品に含有されていることが技術常識であるとの事情もないので、(公然実施発明1-1)相違点1’は実質的な相違点である。 (ウ)小括 したがって、本件訂正特許発明2は、(公然実施発明1-1)相違点2及び(公然実施発明1-1)相違点3について検討するまでもなく、本件第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえない。 ウ 本件訂正特許発明3について (ア)公然実施発明1-3との対比 a 公然実施発明1-3の「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された、噴射剤を含まない噴射製品を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法」は、本件訂正特許発明3の「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法」に相当する。 b 公然実施発明1-3の「前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含」むこと関し、本件特許明細書の【0014】には、本件訂正特許発明3の害虫忌避組成物は20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を好適に含むことが記載され、当該成分として「水」が例示されている。 一方、公然実施発明1-3に含まれる「水」は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaであり、噴射後の揮発を抑制できる成分といえる。 そうしてみれば、公然実施発明1-3の「前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.545質量%含」むことは、本件訂正特許発明3の「前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含」むことに相当する。 c 公然実施発明1-3の「噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmである」と、本件訂正特許発明3の「前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となる」との対比において、本件訂正特許発明3の「50%平均粒子径r30が、50μm以上となる」ことは、公然実施発明1-3において、「50%平均粒子径r30が、236.27μmである」ことに該当している。 したがって、公然実施発明1-3の「噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、236.27μmである」は、本件訂正特許発明3の「前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となる」ことに相当するといえる。 したがって、本件訂正特許発明3と公然実施発明1-3とは、 「害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射製品(ただし、噴射剤を含む場合を除く)を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下であり、かつ、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分(ただし揮発抑制成分がグリセリンである場合を除く)を、害虫忌避組成物中、10質量%以上含み、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、50μm以上となるよう前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法。」 である点で一致し、以下の点において相違する。 (公然実施発明1-3)相違点1'':害虫忌避組成物の害虫忌避成分について、本件訂正特許発明3においては、「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルであ」るのに対して、公然実施発明1-3においては、害虫忌避成分は、p-メンタン-3,8-ジオールである点。 (公然実施発明1-3)相違点2'':「前記噴口から15cm離れた位置における50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)」について、本件訂正特許発明3においては、「0.85以上とな」ると特定されているのに対して、公然実施発明1-3においては、「0.80」である点。 (イ)判断 まず、(公然実施発明1-3)相違点1''について検討する。 前記アの(公然実施発明1-1)相違点1の判断と同様に、公然実施発明1-3の噴射製品の害虫忌避成分は、「p-メンタン-3,8-ジオール」であり、本件訂正特許発明3の害虫忌避成分である「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」とは異なっており、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルが公然実施発明1-3の害虫忌避成分噴射製品に含有されていることが技術常識であるとの事情もないので、(公然実施発明1-3)相違点1''は実質的な相違点である。 (ウ)小括 したがって、本件訂正特許発明3は、(公然実施発明1-3)相違点2''について検討するまでもなく、本件第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえない。 (5)まとめ よって、本件訂正特許発明1~3についての特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してされたものとはいえないので、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由1により無効とすべきものではない。 2 無効理由2(新規性欠如)について (1)公然実施品2及び公然実施発明2について ア 甲8には、フマキラー株式会社の公式ホームページにおける2016年8月8日付け新製品情報として、品名「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」の虫よけ剤が示されている(甲8a)。 また、商品の特長として、「有効成分として、新虫よけ成分の”イカリジン”を15%配合しています。」、「ミストタイプは、潤水成分の「ヒアルロン酸ナトリウム」配合でお肌にやさしい。」ことが示され、使用方法として、「肌から約10cm離して、適量を肌の露出部にまんべんなくスプレーする。顔、首筋等は、手のひらに一度スプレーしてから塗り広げる。」ことが示され、有効成分として、「「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」・・・イカリジン15%(原液濃度)」であることが示されている(甲8a)。 イ 甲10には、品名「天使のスキンベープミストプレミアム200mL」の処方が記載されており、1本(200mL)中の処方として、有効成分が、「イカリジン」、湿潤剤、着香剤、溶剤、イオン交換水を含むこと、その中で、イオン交換水は、67.7702gであり、合計184.8000g 200.0000mLであることが示されている(甲10a、甲10b)。そして、「イカリジン」とは、「化学名:(日本名)1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」(甲9a)である。 ウ 甲5(甲5a)には、請求人の開発本部開発研究部の副主任研究員補である西本奈未が、2020年2月7日に作成した「試験結果報告書(粒子径測定試験)」であること、目的として「ポンプ式害虫忌避製品から噴射される害虫忌避組成物の粒子径測定」であること、試験実施日が「2019年7月5日」であること、試験場所が「フマキラー株式会社 S1試験室」であること、使用機器が「マイクロトラック・ベル株式会社製」の「エアロトラックLDSA-SPR1500A粒子径分布測定装置」であり、測定方式が「レーザ光回折方式」であること、供試資材として「○2 天使のスキンベープミストプレミアム200mL」の製造ロット番号が「8F881A」であるものを使用したこと及び試験方法が記載され、その測定結果として「○2 天使のスキンベープミストプレミアム200mL」の平均粒子径r15が233.03(μm)、平均粒子径r30が271.40(μm)であることが記載されている。 また、甲5の別紙2(甲5c)には、「供試資材とした製品名「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」とする製品は以下のとおりの噴射製品である。」として、「2.構成」及び「2.ロット番号」について、以下の内容が具体的に記載されている。 (ア)「2.構成」について 【写真2-1】に示されている製品は、「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」であり、製品本体の形態が噴口、トリガーポンプ及び容器を備えたものであること、並びにトリガーポンプが、株式会社三谷バルブ製造のZ-305シリーズのものであることが記載されている。 また、【写真2-2】~【写真2-2の拡大写真】に示されている製品の裏面には、「【有効成分】イカリジン15%(原液濃度)、【その他の成分】エタノール、ヒアルロン酸Na(2)、精製水、香料」が記載されていることが示されている。 (イ)「2.ロット番号」について 【写真2-3】に示されている製品の底面には、製造ロット番号「8F881A」が、印字されていることが記載されている。 そして、製造ロット番号「8F881A」は、1番目が製造期末尾を、3番目が製造月を、4番目が製造日を表し、68期(2015年(平成27年)10月1日~2016年(平成28年)10月1日※審決注:原文のまま)の8月8日に製造されたことを示していることが記載されている。 エ ここで、甲8、甲10及び甲5に記載された事項等に基づき、公然実施発明に関して検討する。 (ア)甲8と甲10には、「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」という同じ品名の虫よけ剤が示され、その内容量も200mLと共通している。そして、甲8及び甲10に含まれている有効成分も「イカリジン」を含み、湿潤剤などを含んでいる。 さらに、甲10の処方は、制定日が2016年6月28日と記載されており、甲8の新製品情報の公表日2016年8月8日より前であって、これと十分に近接した時期に甲10の処方が制定されていることから、甲8及び甲10の時期的関係において矛盾がなく、甲10は、甲8の虫よけ剤の処方を示していると認められる。 甲10の処方は、溶剤としてイオン交換水である水を含んでいる。また、甲3の記載によれば、水の20℃の飽和水蒸気圧は、2.3366kPaであることが知られている(甲3a)。 甲10の処方における水の含有量は、合計184.8000g中、イオン交換水67.7702gを含むことから、その虫よけ剤全体に対する質量%は、36.6722質量%(=67.7702g/184.8000g×100)と計算できる。 さらに、甲8の虫よけ剤は、甲8の写真(甲8a)から明らかなように、トリガーポンプを備えるポンプ製品であり、甲10の処方の備考欄に噴射剤の記載がないことから、噴射剤を含まないポンプ製品であると認められる(甲10b)。 (イ)甲8と甲5には、「天使のスキンベープミスト プレミアム」という同じ品名の虫よけ剤が記載され、その内容量も200mlと共通している。そして、甲8及び甲5に含まれている有効成分は、イカリジンであり、その他にヒアルロン酸ナトリウムを含んでいる。 また、甲6及び甲7の記載から、甲5で用いた製品は、製造ロット番号から2016年8月8日に製造されたものであると理解できる。 そうすると、甲8の新製品情報の発表日に甲5の製品は製造されており、甲5の供試資材とした、「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」は、甲8の「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」と時期的関係において矛盾がなく、甲5は、甲8において「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」として発売するとされた製品を実際に製造したものについての試験結果を記載した報告書であるといえる。 そうすると、甲8及び甲5に記載された「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」であるポンプ製品は、甲5の測定から、製品の噴口から15cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30を測定した場合、それぞれ、平均粒子径r15が233.03(μm)、平均粒子径r30が271.40(μm)であり、その粒子径比(r30/r15)が、1.16(=271.40/233.03)であるといえる。 オ 甲8(及び甲5)のポンプ製品の譲渡について (ア)甲29には、2016年9月15日付けのSNSサービス「Twitter」の投稿が、写真付きで示されており、該投稿から次のことが分かる。 a 当該写真に示されている製品は、甲8の右側に掲載されるミストタイプの写真との比較及び甲5の6頁に掲載される供試資材の写真との比較において、甲8に新製品情報として示されている「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」の写真(甲8a)、甲5の別紙2の【写真2-1】(甲5c)と、形状(噴口が形成されたトリガーポンプを備えた容器)、色及び製品ラベルの模様が同じであるといえる。 b 当該写真の上欄に「虫よけ成分 イカリジン」と示され、甲8及び甲5の別紙2に示されている虫よけ成分(有効成分)と同じである。 以上のことより、上記エで検討した点も考慮すれば、甲29に示されている「SNSサービス「Twitter」の投稿」は、甲8及び甲5のポンプ製品と同じ製品についての投稿であるといえる。 (イ)また、甲29に示されているSNSサービス「Twitter」の投稿(写真付き)の投稿日は、2016年9月15日である。そして、甲29には、「nachicco イラストレーター」との名で投稿が行われ、「近所のドラックストアに、お仕事させていただいたプレミアムな天使のスキンベープ、ありましたよ-!!」及び、「号泣 早速、連れて帰りましたよ」との投稿内容が示されている(甲29a)。 甲29の写真のドラッグストアの所在地及び実際に購入した投稿者名は明らかではないものの、甲8のフマキラーのHPの商品情報の2016年8月8日付けのNEWSにおいて、「有効成分”イカリジン”の濃度を高めた虫よけ剤「天使のスキンベープミスト プレミアム」「天使のスキンベープミスト プレミアム」緊急新発売!」「ミストは8月中旬、エアゾールは9月中旬から全国で展開するドラッグストアを中心に順次発売。<<防除用医薬部外品>>」「フマキラー株式会社(本社:東京都千代田区、社長:大下一明)は、虫よけ成分”イカリジン”の濃度を高めた虫よけ剤「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」と「天使のスキンベープ プレミアム200mL」を緊急で新発売します。ミストタイプの「天使のスキンベープミスト プレミアム200mL」は8月中旬より、エアゾールタイプの「天使のスキンベープ プレミアム200mL」は9月中旬より順次、全国で展開するドラッグストアを中心に発売します。」との緊急発売の予定が示されている一方で、被請求人は、実際の販売日の立証を行っておらず、特に緊急発売の予定時期が変更されたり、延期されたことの証拠が提出されていないことを考慮すると、甲29に示された、本件第2優先日(2016年11月25日)前のSNSサービス「Twitter」の投稿(写真付き)から、同優先日前に甲8のポンプ製品は、販売を目的としてドラッグストアに対して譲渡されていた又はドラッグストアにおいて譲渡の申出がされていたと認められる。 したがって、甲8のポンプ製品は本件第1優先日(2016年3月31日)より後であって、本件第2優先日(2016年11月25日)前に、公然実施されていたといえる。 カ 以上より、甲8及び甲5に記載されたポンプ製品は、「公然実施品2」として、以下の公然実施された発明を認めることができる。 「 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射剤を含まない噴射製品であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.6722質量%含み、 前記害虫忌避成分は、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートであり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、1.16であり、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、271.40μmである、噴射製品であり、 前記噴射製品は、前記害虫忌避組成物が充填された容器と、前記容器に取り付けられ、前記噴口が形成されたトリガーポンプを備えるポンプ製品である、噴射製品」の発明(以下「公然実施発明2-1」という。) そして、上記公然実施発明2-1の噴射製品を利用することで、害虫忌避組成物を噴射する噴射方法も公然実施されていたことは明らかであるから、以下の公然実施された発明も認定できる。 「 害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物が充填され、前記害虫忌避組成物を噴射する噴口が形成された噴射剤を含まない噴射製品を用いて前記害虫忌避組成物を噴射する噴射方法であり、 前記害虫忌避組成物は、20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水を、害虫忌避組成物中、36.6722質量%含み、 前記害虫忌避成分は、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートであり、 前記噴口から15cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、1.16となり、かつ、 前記噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30が、271.40μmとなる、噴射方法」の発明(以下「公然実施発明2-3」という。) (なお、「公然実施発明2-1」と「公然実施発明2-3」とを併せて、「公然実施発明2」という。) (2)本件訂正特許発明に関する優先権主張の効果について 害虫忌避成分が1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートである場合の本件訂正特許発明について、優先権の主張の効果が認められず、公然実施発明2との関係で新規性欠如の無効理由があるとの主張されているため、本件訂正特許発明の優先権主張の効果について検討する。 ア 本件特許に係る出願は、平成28年(2016年)3月31日を出願日とする特願2016-71925号(以下「優先権出願1」という。)及び平成28年(2016年)11月25日を出願日とする特願2016-229406号(以下「優先権出願2」という。)の2件の特許出願を、優先権主張の基礎として主張する日本を指定国に含む国際出願である。 イ 本件特許に係る出願の優先権主張の判断の前提 日本国出願を優先権主張の基礎とする日本を指定国とする国際出願に関しては、国内優先権を主張しているものと判断されるところ、国内優先権主張の効果が認められるための判断の前提は以下のとおりである。 後の出願に係る発明が先の出願の当初明細書等に記載された事項の範囲のものといえるか否かは、後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項と先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項とを対比し、後の出願の明細書の発明の詳細な説明に、先の出願の当初明細書等に記載されていなかった技術的事項を記載することにより、後の出願の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項が、先の出願の当初明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えることになる場合には、その超えた部分については優先権主張の効果は認められない(平成30年(ワ)第4329号が参考となる。)。 したがって、国内優先権主張の効果が認められるためには、請求項に係る発明が、優先権主張の基礎とされた出願の出願書類全体に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでない(すなわち、新規事項の追加にあたらない)ことを必要とする。 ウ 優先権出願1の出願書類には、以下のことが記載されている。 (ア)噴射製品及び噴射方法における、害虫忌避組成物中に含まれる害虫忌避成分は、「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートからなる群から選択される少なくとも1つの成分」であること(甲11a~甲11c 請求項1、請求項5、【0013】、【0015】、【0045】)。 (イ)従来、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)を配合した害虫忌避剤が知られていたが、皮膚吸収作用による安全性の点から、ディートに代えて、害虫忌避成分として「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」等を配合した害虫忌避剤があること(甲11b【0002】)、及び当該害虫忌避成分を配合した害虫忌避剤は、ポンプ製品やエアゾール製品として噴射された際に、噴射された粒子が使用者や周囲の者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすいという課題があり、この課題は他の害虫忌避成分では生じにくく、「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」に特有の課題であること(甲11b【0004】、【0015】)。 (ウ)この課題を解決すべく、当該害虫忌避成分が配合されている場合における粘膜への刺激の原因を研究したところ、噴射された害虫忌避剤の中には、適用距離(例えば噴口から15cmの距離)を超えた位置(例えば噴口から30cm離れた位置)で浮遊するものがあり、このような位置での粒子径は、適用距離での粒子径より小さくなる結果、吸引されやすく粘膜を刺激しやすい、それゆえ、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整された噴射製品及び噴射方法であれば、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減され、当該課題を解決し得ることを見いだしたこと(甲11b【0006】)、この粒子径の比については、噴口から15cm離れた位置における噴射された害虫忌避組成物の50%平均粒子径r15と、噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30との粒子径比(r30/r15)が、0.6以上となるよう調整され、適用箇所を超えた位置における粒子径として、噴口から30cm離れた位置における噴射された前記害虫忌避組成物の50%平均粒子径r30については、50μm以上となるよう調整されること(甲11b【0013】甲11c【0026】)、並びにこのような粒子径比を前記範囲に調整する方法は、特に限定されず、害虫忌避組成物の処方(例えばそれぞれの成分の種類及び含有量、忌避抑制成分の有無及び含有量等)、アクチュエータの形状、寸法、又は単位時間当たりの噴射量(噴射速度)、噴射圧等の各種物性が調整されることにより調整されればよいこと、害虫忌避組成物は、当該害虫忌避成分のほかに、噴射後の揮発を抑制するため、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を含むこと、及びこれにより、噴射された害虫忌避組成物は、揮発がより抑制されやすく、適用箇所を超えた範囲(例えば噴口から30cm離れた位置)にまで噴射された場合であっても、粒子径が小さくなりにくいこと(甲11b【0013】~【0018】、甲11c【0026】~【0029】、【0045】~【0047】)。 (エ)さらに、実施例において、前記害虫忌避成分のうち、「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」を、揮発抑制成分として「1,3-ブチレングリコール」、「プロピレングリコール」又は「精製水」を、溶媒として「無水エタノール」を用い、これらの組合せや配合量を変えて害虫忌避組成物を調製し、粒子径比r30/r15、及び、50%平均粒子径r30を、所定の範囲以上となるよう調整した場合に、粘膜刺激が低減されたことを確認している(甲11d【0048】~【0054】)。 エ 以上のとおり、これら優先権出願1の明細書等には、従来から知られていた害虫忌避成分であるディートに代わる害虫忌避成分の「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」、「p-メンタン-3,8-ジオール」及び「1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」に、粘膜を刺激しやすいという特有の課題があったこと、該課題を解決する手段(すなわち、噴射製品及び噴射方法において、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整したものであれば、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減されること)が記載されており、優先権出願1の明細書等の実施例には、上記害虫忌避成分のうち「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」を含む害虫忌避組成物の粒子径比及び粒子径を調整することにより、上記課題を解決できることが示されている(実施例2及び3)。そして、優先権出願1の明細書等をみれば「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」を含む害虫忌避組成物と同様に粒子径比及び粒子径を調整すれば、その他の前記害虫忌避成分を含む害虫忌避組成物も同様に粘膜刺激性が低減されると、当業者であれば理解できる(害虫忌避組成物中に含まれる害虫忌避成分である、「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」、「p-メンタン-3,8-ジオール」及び「1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」は、いずれも、皮膚吸収作用による安全性の点から、問題であるとされた「N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)」に代わる公知成分として同列に扱われていた害虫忌避成分にすぎないことが読みとれる(上記(イ)))。 オ 一方、本件訂正特許発明のうち「1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」を害虫忌避成分とするものについての実施例は、優先権出願2の明細書等において追加されている(実施例5及び7)が、本件訂正特許発明は、本件特許明細書によれば(【0013】~【0018】、【0026】~【0029】、【0045】~【0047】)、ディートに代わる害虫忌避成分特有の課題を粒子径比及び粒径を調整することによって解決するものであり、優先権出願2の明細書等に「1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」の実施例が追加されたことによって発明の要旨となる技術事項が変わるものではない。すなわち、優先権出願2の明細書等において追加された実施例5及び7は、優先権出願1の明細書等の実施例2及び3の処方と、害虫忌避成分として「1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」を用いた以外の処方は同じであるし、その結果についても、同様に粘膜刺激性が低減されていることが上記(ウ)の機構どおり確認されていることからすれば、追加された実施例5及び7は、優先権出願1の明細書等に記載された技術的事項のうち、「1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」を用いた場合の具体例を示したものにすぎない。そして、上記エで述べたとおり、優先権出願1の明細書等を見れば、「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル」を用いた場合と同様に実施すれば、「1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」を用いた場合にも同様に粘膜刺激性が低減されると、当業者であれば理解できるから、優先権出願1の明細書等に記載されていた技術的事項について上記具体例を追加したからといって、優先権出願1の明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えるものとはいえない。 カ よって、害虫忌避成分として、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートを選択した場合の本件訂正特許発明は、優先権出願1により発明の構成部分が明らかにされており、優先権出願1の明細書等全体に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないから、優先権出願1を基礎とする優先権主張の効果は認められる。 以上のとおりであるから、害虫忌避成分として、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートを選択した場合の本件特許訂正発明の優先日は、本件第1優先日(2016年3月31日)である。 キ したがって、本件第1優先日を基準に特許法第29条第1項第2項(公然実施)を判断することになり、本件第1優先日より後であって、本件第2優先日(2016年11月25日)前に、公然実施されていた公然実施発明2は、本件訂正特許発明の第1優先日前に公然実施された発明とはいえない。 ク 請求人の優先権主張に関する主張について (ア)請求人は、優先権主張に関して、以下の旨主張している(審判請求書18頁19行~20頁13行、令和2年8月14日付け審判事件弁駁書10頁18行~12頁18行、令和2年11月13日付け上申書4頁3行~6頁7行、令和2年11月27日付け口頭審理陳述要領書9頁19~33行、及び令和5年1月20日付け審判事件弁駁書4頁16行~11頁19行、17頁9~24行を参照。)。 a 害虫忌避成分として、優先権出願1の明細書等の実施例に記載の3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルと、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート(「イカリジン」)とでは、その化学式、沸点、構造、蒸気圧、水への溶解度などが異なっており(甲27a、甲28a)、使用者が感じる粘膜刺激性も異なるため、優先権出願1の実施例に記載の3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルと同一の条件で粒子径を調整したとしても、裏付けの実験もないのに、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート(「イカリジン」)においても、課題を解決できることを理解できない。 b 優先権出願1の明細書等には、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート(「イカリジン」)を害虫忌避成分とする実施例がないために、配合される水や溶剤の量をどのように調整すれば粒子径比(r30/r15)が0.6以上となるかについて当業者は理解することができない。 実施可能になるということは、当業者がその物を作ることができ、かつ、その物を使用することができることを要し、害虫忌避成分の種類、揮発抑制成分の種類(甲39、甲40、甲41)、刺激性の場所(甲39、甲41、甲42)による相違によって、どのようにすれば作用効果を奏する技術上の意義のある態様で使用できるか不明で、数値限定発明であるから抽象的な機序(本件特許明細書【0006】)の開示では足りず、実施例、比較例で裏付ける必要がある。 c 害虫忌避成分として、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートを選択した本件訂正特許発明は、優先権出願2によって実施例を補充することによってサポート要件違反を回避した場合に該当し、優先権出願1を基礎とする優先権主張の効果は認められない(甲43)。 d 「発明は、その技術内容が、当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されていなければならないものと解するのが相当であり、技術内容が当該程度にまで構成されていないものは、発明として未完成のものである(最高裁昭和52年10月13日判決日、昭和49年(行ツ)第107号)との判例を参考に、害虫忌避成分として、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレートを選択した本件訂正特許発明は、優先権出願2によって実施例を補充することによって実験による技術上の裏付けがなされ完成されたもので、第1優先日時点で完成しておらず、優先権出願1を基礎とする優先権主張の効果は認められない。 e 本件訂正特許発明2の要旨となる技術的事項のうち粒子径比(r30/r15)が0.85以上とする構成は、実施例11及び12という追加した実施例を根拠としているところ、優先権出願1の明細書の実施例を含めた明細書には、0.85以上という数値の根拠がないので、優先権出願1を基礎とする優先権主張の効果は認められない。 (イ)上記請求人の主張について、以下検討する。 a 主張aについて 請求人は、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルと、1-メチルプロピル2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート(「イカリジン」)との化合物としての性質等の相違を指摘して優先権出願1の明細書等の実施例に記載の化合物と同一の条件で粒子径を調整したとしても、イカリジンの場合においても、課題を解決できることを理解できない旨主張している。 しかしながら、本件訂正特許発明は、皮膚吸収作用による安全性の点から、ディートに代替する害虫忌避成分として「3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール、1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート」を配合した害虫忌避剤は、ポンプ製品やエアゾール製品として噴射された際に、噴射された粒子が使用者や周囲の者の鼻や喉等の粘膜を刺激しやすいという課題があり、当該課題を解決すべく、当該害虫忌避成分が配合されている場合における粘膜への刺激の原因を研究したところ、噴射された害虫忌避剤の中には、適用距離(例えば噴口から15cmの距離)を超えた位置(例えば噴口から30cm離れた位置)で浮遊するものがあり、このような位置での粒子径は、適用距離での粒子径より小さくなる結果、吸引されやすく粘膜を刺激しやすので、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整された噴射製品及び噴射方法であれば、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減され、当該課題を解決し得ることを見いだしたことに基づく。そして上記課題を解決する手段について、上記ウ(ウ)で述べたように、粒子径比(r30/r15)や50%平均粒子径r30を調整することが、優先権出願1の明細書等に記載され、実施例においては、害虫忌避剤の例として、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステルが示されていたのであるから、別の害虫忌避剤である1-メチルプロピル 2-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペリジンカルボキシレート(「イカリジン」)についても、当業者は上記課題を解決できることを、優先権出願1の明細書等から認識できる。 また、優先権出願1の明細書等には、粒子径比を調整する方法について、特に限定されず、害虫忌避組成物の処方(例えばそれぞれの成分の種類および含有量、忌避抑制成分の有無および含有量等)、アクチュエータの形状、寸法、または、単位時間当たりの噴射量(噴射速度)、噴射圧等の各種物性が調整されることにより調整されればよいこと、害虫忌避組成物は、当該害虫忌避成分のほかに、噴射後の揮発を抑制するため、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を含むことにより、噴射された害虫忌避組成物は、揮発がより抑制されやすく、適用箇所を超えた範囲(例えば噴口から30cm離れた位置)にまで噴射された場合であっても、粒子径が小さくなりにくいことが記載されているのであるから、請求人の主張するような同一条件で粒子径を調整する必要はなく、イカリジンの場合にも上記粒子径比を調整できるから、当業者は上記課題を解決できることを優先権出願1の明細書等から認識できる。 b 主張bについて 請求人は、優先権主張の判断に関連して実施可能に発明が記載されていることに関し、当業者がその物を作ることができ、かつ、その物を使用することができることというには、害虫忌避成分の種類、揮発抑制成分の種類、刺激性の場所によって相違するので、どのようにすれば作用効果を奏する技術上の意義のある態様で使用できるか不明で、数値限定発明であるから抽象的な機序の開示では足りず、実施例、比較例で裏付ける必要がある旨主張している。 しかしながら、害虫忌避成分の種類、揮発抑制成分の種類、刺激性の場所によって相違が一定程度存在すること自体は、当然で技術常識であり、当業者であれば、その技術常識を前提として、上記(a)で述べた本件訂正特許発明の理論的な考え方(メカニズム)、具体例も参考にその物を作ることができ、かつ、その物を使用することができるといえる。 また、数値限定が発明特定事項に存在する発明であるからといって裏付ける実施例や比較例が必ず必要であるわけでなく、本件訂正特許発明は、噴射された害虫忌避剤の中には、適用距離(例えば噴口から15cmの距離)を超えた位置(例えば噴口から30cm離れた位置)で浮遊するものがあり、このような位置での粒子径は、適用距離での粒子径より小さくなる結果、吸引されやすく粘膜を刺激しやすので、適用距離における粒子径だけでなく、適用箇所を超えた位置における粒子径も考慮し、それぞれの位置における粒子径の比が所定の値以上となるよう調整された噴射製品及び噴射方法であれば、粘膜を刺激しやすい害虫忌避成分が配合されている場合であっても、粘膜への刺激が低減され、当該課題を解決し得ることを見いだしたという知見に基づいてなされた発明であると理解できる。 したがって、粒子径の比を所定の値以上とするという発明特定事項を、そのまま一定の数値範囲の区切りという意味で下限を理解すれば、当業者であれば実施可能なものといえる。 さらに、請求人は、被請求人の乙11及び乙12に基づく主張に関連して、甲39~甲42を提出して、従来の害虫忌避成分のディートも含めて、揮発抑制成分としての1,3-ブタンジオールやプロピレングリコール、溶剤の無水エタノールの眼への刺激性の相違を指摘して、揮発抑制成分や溶剤の量をどのように調整すればよいか不明である旨主張しているが、眼への刺激性に関する上記証拠は、請求人も認めるように、本件訂正特許発明が課題とする鼻や喉の粘膜に関する技術常識を示すものとはいえない上に、上述のとおり、「このような粒子径比を前記範囲に調整する方法は、特に限定されず、害虫忌避組成物の処方(たとえばそれぞれの成分の種類および含有量、忌避抑制成分の有無および含有量等)、アクチュエータの形状、寸法、または、単位時間当たりの噴射量(噴射速度)、噴射圧等の各種物性が調整されることにより調整されればよいこと、害虫忌避組成物は、当該害虫忌避成分のほかに、噴射後の揮発を抑制するため、20℃での蒸気圧が2.5kPa以下となる揮発抑制成分を含むことにより、噴射された害虫忌避組成物は、揮発がより抑制されやすく」との記載に基づき、各種条件から技術常識に基づき選択することで(各成分の粘膜への刺激の程度に応じて含有量を調整することや、揮発抑制成分の量自体によって揮発させないようにすることや、揮発抑制成分や溶剤成分の蒸気圧(甲27、甲28、甲3の1、甲3の2、乙9等に示されるようにそれらの成分自体の性質は技術常識である。)に基づく成分自体の揮発の程度(乙8)を考慮すること等)、揮発抑制成分や溶剤の量は、直接の記載がなくとも適宜選択し、優先権出願1の明細書等から本件訂正特許発明を実施できるといえる。 c 主張c及びdについて 請求人は、害虫忌避成分として、イカリジンを選択した本件訂正特許発明について、優先権出願2によって実施例を補充することによってサポート要件違反を回避した場合に該当するとの理由や、化学物質の発明に関する判例を参考に、優先権出願2によって実施例を補充することによって実験による技術上の裏付けがなされ完成されたもので、第1優先日時点で完成していないとの理由を挙げて、優先権出願1を基礎とする優先権主張の効果は認められない旨主張している。 しかしながら、上記a及びbで述べたとおり、優先権出願1の明細書等から、イカリジンを選択した本件訂正特許発明について、当業者は上記課題を解決できることを認識できるし、発明を実施でき完成していたといえる(本件訂正特許発明は、化学物質自体の発明ではない)から、優先権出願2の特許請求の範囲に記載された発明の要旨となる技術的事項が、優先権出願1の明細書等に記載された技術的事項の範囲を超えるものとはいえず、請求人の主張c及びdは受け入れられない。 d 主張eについて 請求人は、本件訂正特許発明2の要旨となる技術的事項のうち粒子径比(r30/r15)が0.85以上とする構成は、実施例11及び12という追加した実施例を根拠としていることを前提に、優先権出願1の明細書の実施例を含めた明細書等には、0.85以上という数値の根拠がないので、優先権出願1を基礎とする優先権主張の効果は認められない旨主張しているが、0.85以上という下限の限定は、0.6以上という範囲を減縮した範囲にすぎず、その数値自体が新たな技術的事項の導入になるとはいえない。 当然、0.85という下限は、単に大きいほど、つまり粒子径が変化しないほど定性的に好ましいという程度の意味でしかないと理解すべきである。 (ウ)請求人の優先権主張に関する主張の判断のまとめ 上記請求人の主張はいずれも採用できない。 ケ 小括 したがって、本件訂正特許発明1~3は、本件第1優先日前に公然実施された発明であるとはいえない。 (3)まとめ よって、本件訂正特許発明1~3についての特許は、特許法第29条第1項第2号の規定に違反してされたものともいえないので、同法第123条第1項第2号に該当せず、無効理由2により無効とすべきものではない。 第8 むすび 以上検討したように、本件訂正特許発明1、2、3に係る特許は、請求人の主張する無効理由及び提出した証拠方法によっては、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-800014

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ出願・登録の審決1件(出願 特願2018-509670)
  • 2019-701052異議申立 / 2025-12-09 / 維持噴射製品および噴射方法
    同じ出願番号
同じ当事者の審決127件(アース製薬 株式会社、フマキラー 株式会社)
  • 2023-890049無効審判 / 2024-03-27 / 請求不成立ゲキメツ
    同じ当事者: アース製薬 株式会社、フマキラー 株式会社
  • 2019-300150取消審判 / 2019-06-10 / 請求成立(取消)ハチホイホイ
    同じ当事者: アース製薬 株式会社、フマキラー 株式会社
  • 2018-900066異議申立 / 2019-05-21 / 維持ゴキブリプッシュプロ、ゴキブリプッシュ、プッシュプロ、プッシュ、プロ、ゴキプッシ…
    同じ当事者: アース製薬 株式会社、フマキラー 株式会社
  • 2024-018375拒絶査定不服審判 / 2026-07-08 / 請求不成立害虫駆除方法
    同じ当事者: フマキラー 株式会社
  • 2026-700169異議申立 / 2026-06-30 / 維持人体用害虫忌避剤乳化組成物
    同じ当事者: フマキラー 株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)4件(112・A01N)
  • 2021-800059無効審判 / 2023-02-14 / 請求不成立次亜塩素酸水、次亜塩素酸水を調製するための組成物、及び次亜塩素酸水の判定用の試験…
    共通の審決分類: 112・A01N
  • 2022-701295異議申立 / 2023-08-28 / 訂正認容薬剤組成物、害虫防除用線香、及びそれらを用いた殺虫成分拡散増強方法
    共通の審決分類: 112・A01N
  • 2018-700417異議申立 / 2019-02-26 / 訂正認容ノロウイルス不活性化剤及び衛生資材
    共通の審決分類: 112・A01N
  • 2017-016089拒絶査定不服審判 / 2018-06-07 / 原査定取消(特許/登録すべき)抗菌組成物及び菌の発育抑制方法
    共通の審決分類: 112・A01N

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存