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特許異議申立

2020-700957

生分解性不織布

審判番号
2020-700957
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-545058
登録番号
6731064
請求日
2020年12月03日
審決日
2022年01月05日
公報発行日
2022年05月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】旭化成株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】中村 和広
  • 【権利者代理人】齋藤 都子
  • 【権利者代理人】三間 俊介
  • 【異議申立人】栗 暢行
審判長/審判官
  • 審判長 井上 茂夫
  • 審判官 藤井 眞吾
  • 審判官 矢澤 周一郎
分類
P1651.113-YAA(D04H) / P1651.121-YAA(D04H) / P1651.536-YAA(D04H) / P1651.537-YAA(D04H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6731064号発明「生分解性不織布」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

特許第6731064号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~18〕について訂正することを認める。 特許第6731064号の請求項1、3~9及び11~18に係る特許を維持する。 特許第6731064号の請求項2及び10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

第1 手続の経緯 特許第6731064号の請求項1~18に係る特許についての出願は、平成29年10月12日(優先権主張 平成28年10月14日)を国際出願日とする出願であって、令和2年7月7日にその特許権の設定登録がされ、令和2年7月29日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年12月 3日 :特許異議申立人栗暢行(以下「申立人」という。)による請求項1~18に係る特許に対する特許異議の申立て 令和3年 5月18日付け:取消理由通知書 令和3年 7月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 令和3年 8月30日 :申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1に記載された 「ポリ乳酸系重合体の繊維から構成され、目付が20~350g/m2であり、120℃におけるMD方向の伸度が、50%以上であり、かつ、熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下である、熱成型用の生分解性不織布。」を、 「ポリ乳酸系重合体の繊維から構成され、目付が20~350g/m2であり、120℃におけるMD方向の伸度が、50%以上であり、かつ、初期荷重0.005N/2mm、昇温速度10℃/分での熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下であり、かつ、動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率が10~500MPaである、熱成型用の生分解性不織布。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~9及び11~18も同様に訂正する)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項3に記載された 「請求項1又は2に記載の生分解性不織布」を、 「請求項1に記載の生分解性不織布」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~9及び11~18も同様に訂正する)。 (4)訂正事項4 本件訂正前の請求項4に記載された 「請求項1~3のいずれか1項に記載の生分解性不織布」を、 「請求項1又は3に記載の生分解性不織布」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~9及び11~18も同様に訂正する)。 (5)訂正事項5 本件訂正前の請求項5に記載された 「請求項1~4のいずれか1項に記載の生分解性不織」を、 「請求項1、3、又は4のいずれか1項に記載の生分解性不織」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~9及び11~18も同様に訂正する)。 (6)訂正事項6 本件訂正前の請求項6に記載された 「請求項1~5のいずれか1項に記載の生分解性不織」を、 「請求項1、又は3~5のいずれか1項に記載の生分解性不織」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~9及び11~18も同様に訂正する)。 (7)訂正事項7 本件訂正前の請求項7に記載された 「請求項1~6のいずれか1項に記載の生分解性不織」を、 「請求項1、又は3~6のいずれか1項に記載の生分解性不織」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8、9及び11~18も同様に訂正する)。 (8)訂正事項8 本件訂正前の請求項8に記載された 「請求項1~7のいずれか1項に記載の生分解性不織」を、 「請求項1、又は3~7のいずれか1項に記載の生分解性不織」に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9及び11~18も同様に訂正する)。 (9)訂正事項9 本件訂正前の請求項9に記載された 「請求項1~8のいずれか1項に記載の生分解性不織」を、 「請求項1、又は3~8のいずれか1項に記載の生分解性不織」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11~18も同様に訂正する)。 (10)訂正事項10 本件訂正前の請求項10を削除する。 (11)訂正事項11 本件訂正前の請求項11に記載された 「請求項1~9のいずれか1項に記載の生分解性不織」を、 「請求項1、又は3~9のいずれか1項に記載の生分解性不織」に訂正する(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する)。 (12)訂正事項12 本件訂正前の請求項13に記載された 「請求項1~9のいずれか1項に記載の生分解性不織」を、 「請求項1、又は3~9のいずれか1項に記載の生分解性不織」に訂正する(請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15~18も同様に訂正する)。 (13)訂正事項13 本件訂正前の請求項14に記載された 「請求項1~9のいずれか1項に記載の生分解性不織」を、 「請求項1、又は3~9のいずれか1項に記載の生分解性不織」に訂正する。 (14)訂正事項14 本件訂正前の明細書の【0100】に記載された 「(6)機械熱分析によるMD方向の寸法変化率(%)」を、 「(6)熱機械分析によるMD方向の寸法変化率(%)」に訂正する。 2 一群の請求項 本件訂正前の請求項1~18は、請求項2~18が、本件訂正請求の対象である請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~18〕について請求されたものである。 また、訂正事項14は、一群の請求項〔1-18〕の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 本件訂正前の請求項1に係る発明に関する訂正事項1は、「熱機械分析」及び「生分解性不織布」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1は、本件訂正前の明細書の【0100】及び特許請求の範囲の【請求項2】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてするものである。 また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2及び10について 訂正事項2及び10は、それぞれ本件訂正前の請求項2及び10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3~9及び11~13について 訂正事項3~9及び11~13は、訂正事項2により請求項2を削除する訂正に伴って引用する請求項を整理するための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項3~9及び11~13は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項14について ア 訂正の目的の適否について 本件特許の願書に最初に添付した明細書には、「MD方向の寸法変化率(%)」について、 「【0019】 本実施形態の生分解性不織布は、熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下であることを特徴とする。」 の記載がある。 また、「熱機械分析」は、「物質の温度を,調整されたプログラムに従って変化させながら,非振動的な荷重のもとで,物質の変形を温度又は時間の関数として測定する方法。」(JIS K 7197:1991)を意味する用語であるが、「機械熱分析」の用語は出願時の技術常識でもない。 そうすると、「物質の変形」である「MD方向の寸法変化率(%)」を測定する方法は「熱機械分析」であるから、本件訂正前の「機械熱分析」は「熱機械分析」が本来の記載であるといえる。 したがって、訂正事項14は、本件訂正前の「(6)機械熱分析によるMD方向の寸法変化率(%)」を、本来の記載「(6)熱機械分析によるMD方向の寸法変化率(%)」と正すものであるから、誤記の訂正を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項14は、本件特許の願書に最初に添付した明細書の【0019】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号ないし第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項〔1~18〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、3~9及び11~18に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、3~9及び11~18に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポリ乳酸系重合体の繊維から構成され、目付が20~350g/m2であり、120℃におけるMD方向の伸度が、50%以上であり、かつ、初期荷重0.005N/2mm、昇温速度10℃/分での熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下であり、かつ、動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率が10~500MPaである、熱成型用の生分解性不織布。」 「【請求項3】 前記不織布のタテ引裂き強度を目付で除した値が0.002~0.5N/(g/m2)である、請求項1に記載の生分解性不織布。 【請求項4】 前記不織布中の繊維の複屈折率が、0.002~0.10である、請求項1又は3に記載の生分解性不織布。 【請求項5】 前記不織布中の繊維は、前記ポリ乳酸系重合体に加え、脂肪族エステル共重合体を、全樹脂重量を基準として、0.5~30重量%さらに含むものである、請求項1、3、又は4のいずれか1項に記載の生分解性不織布。 【請求項6】 前記不織布の平均繊維径が1~40μmであり、かつ、前記不織布は長繊維で構成されている、請求項1、又は3~5のいずれか1項に記載の生分解性不織布。 【請求項7】 前記不織布において、動的粘弾性評価の温度依存性試験における損失正接(tanδ)の極大値が0.5以下である、請求項1、又は3~6のいずれか1項に記載の生分解性不織布。 【請求項8】 前記不織布の、動的粘弾性評価の温度依存性試験における貯蔵弾性率の10~70℃における貯蔵弾性率が、200MPa以上である、請求項1、又は3~7のいずれか1項に記載の生分解性不織布。 【請求項9】 前記不織布を、温度120℃中でMD/CD二軸両方向へ同時に、面積倍率6.25倍に延伸した延伸シートの2.5cm角目付に関して、R/Aveの値が1.0以内である、請求項1、又は3~8のいずれか1項に記載の生分解性不織布。」 「【請求項11】 請求項1、又は3~9のいずれか1項に記載の生分解性不織布を熱成型で一体加工する工程を含む、成型体の製造方法。 【請求項12】 不織布を55℃~160℃に予熱する工程を含む、請求項11に記載の方法。 【請求項13】 請求項1、又は3~9のいずれか1項に記載の生分解性不織布から構成される、成型指数1.1以上の成型体。 【請求項14】 請求項1、又は3~9のいずれか1項に記載の生分解不織布から構成され、成形指数が1.1~20倍であり、かつ、連続した不織布から、同一成形機で成形した少なくとも10個以上の成形体の底部同位置から採取した布帛片の目付のR/Aveの値が0.5以内となる成形体群。 【請求項15】 請求項13に記載の成型体において、熱機械分析(TMA)にて、30~100℃において、容器を構成する成型体片に荷重0.05N/2mmを加えた際のMD方向の伸長変化率が4%以下であることを特徴とする生分解性飲料抽出用容器。 【請求項16】 沸水浸漬時の容量変化が20%~90%である、請求項15に記載の飲料抽出用容器。 【請求項17】 構成する不織布成型体の配向度が0.010以上であることを特徴とする、請求項15又は16に記載の飲料抽出用容器。 【請求項18】 構成する不織布成型体の結晶化度が30~70%である、請求項15~17のいずれか1項に記載の飲料抽出用容器。」 第4 取消理由通知書に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~18に係る特許に対して、当審が令和3年5月18日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 (1)取消理由1(明確性) 請求項1~18に係る発明が次の点で明確でなく、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に適合しないから、特許を受けることができない。 ア 請求項1における「熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下である」の記載は、「熱機械分析」が、一般的に、「物質の温度を,調整されたプログラムに従って変化させながら,非振動的な荷重のもとで,物質の変形を温度又は時間の関数として測定する方法。」(JIS K 7197:1991)とされるところ、請求項1においては、「物質の温度」を変化させる「調整されたプログラム」や、「非振動的な荷重」が特定されておらず、上記記載における「寸法変化率」がどのような条件の「熱機械分析」により測定されたものであるのかが理解できないから、請求項1及び請求項1を引用する請求項2~18に係る発明は明確でない。 イ 請求項10における「定長熱セット」の用語の意味内容を当業者が理解できないため、請求項10に係る発明は明確でない。 (2)取消理由2(新規性) 請求項1、5、10~13及び15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また、請求項1、10~13及び15に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 (3)取消理由3(進歩性) 請求項1、5、6、10~13、15~18に係る発明は、甲第1号証に記載された発明又は甲第2号証に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [引用文献等一覧] 甲第1号証:特開2011-162904号公報(以下「甲1」という。) 甲第2号証:特開2000-136478号公報(以下「甲2」という。) 甲第3号証:特開平9-95848号公報(以下「甲3」という。) 甲第4号証:特開平5-311537号公報(以下「甲4」という。) 2 当審の判断 (1)取消理由1(明確性)について ア 上記1(1)アについて 「熱機械分析」は、「物質の温度を,調整されたプログラムに従って変化させながら,非振動的な荷重のもとで,物質の変形を温度又は時間の関数として測定する方法。」(JIS K 7197:1991)であるところ、本件訂正前の請求項1では、「熱機械分析」について、「物質の温度」を変化させる調整されたプログラムや、非振動的な荷重が特定されておらず明確でなかったが、本件訂正により、「初期荷重0.005N/2mm、昇温速度10℃/分での熱機械分析」と特定されたため、明確となった。 イ 上記1(1)イについて 本取消理由の対象とされた本件訂正前の請求項10は、本件訂正により削除された。 ウ 小括 よって、取消理由1(明確性)には理由がない。 (2)取消理由2(新規性)及び取消理由3(進歩性)について ア 引用文献の記載事項 (ア)甲1 甲1には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 ポリ乳酸系重合体とポリプロピレン系重合体とを含む複合長繊維を構成繊維とするポリ乳酸系長繊維不織布からなる成型体であって、前記複合長繊維の複合形態はポリ乳酸系重合体が芯部を形成し、ポリプロピレン系重合体が鞘部を形成する芯鞘型複合長繊維であり、前記ポリ乳酸系長繊維不織布の130℃での破断時の伸度がタテ方向、ヨコ方向ともに150%以上であることを特徴とする成型体。 【請求項2】 ポリ乳酸系長繊維不織布の目付が10~300g/m2であることを特徴とする請求項1記載の成型体。 【請求項3】 ポリ乳酸系長繊維不織布の140℃における乾熱収縮率が10%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の成型体。 【請求項4】 請求項1~3いずれかの項に記載の成型体を用いたことを特徴とするフィルター。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、植物由来の高分子であるポリ乳酸系重合体を用いたものであって、高温時の伸度が高く、かつ寸法安定性に優れ、成型性に優れた不織布からなる成型体を提供することを課題とする。」 「【0029】 必要に応じて、バインダー樹脂を付与して、構成繊維同士をバインダー樹脂によって接着させて、本発明の成型体を構成するポリ乳酸系不織布を製造してもよい。 バインダー樹脂を付与する場合には、熱処理を施して構成繊維同士を接着させた後にバインダー樹脂を付与するとよい。すなわち、バインダー樹脂を水中に乳化分散させてバインダー樹脂液を得、このバインダー樹脂液に熱処理を施したウェブを含浸させた後、あるいは熱処理を施したウェブにバインダー樹脂液をスプレー等の手法で付与させた後などに、乾燥処理する方法を採用することができる。 【0030】 バインダー樹脂の付着量は、成型性の観点から、繊維質量に対して、20質量%以下とすることが好ましい。 バインダー樹脂としては、上述のポリ乳酸系重合体にブレンドされる成分と同様に、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ヒドロキシカルボン酸とを構成成分とする脂肪族ポリエステル共重合体(三菱化学社製「GSPLa」)や、脂肪族ジオールと芳香族カルボン酸とを縮合して得られる生分解性脂肪族-共重合芳香族ポリエステル共重合体(ノバモント社製「イースターバイオGP」、BASF社製「ECOFLEX」)などが挙げられる。」 「【0033】 本発明の成型体は、上記のようにして得られたポリ乳酸系長繊維不織布をプレス成型などの方法により成型することにより得られる。成型体は容器形状品であってもよいし、ボード状品であってもよい。プレス成型により容器形状品を得る場合には、フランジ部とこのフランジ部から3次元方向に突出した容器部とを有するように構成することが好ましい。本発明において、成型体を得る方法は特に制限されないが、一例として、以下に、プレス成型について説明する。」 「【0045】 (4)目付(g/m2) 標準状態の試料から試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、各試料片の質量(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積あたりに換算して、目付とした。 【0046】 (5)130℃での破断時の伸度(%) 幅5cm×長さ20cmの試験片を10個準備し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、商品名「UTM-4-1-100」)を用いて、130℃の雰囲気下で、JIS-L-1906に準じて測定した。このときの条件は、つかみ間隔が20cm、引張速度20cm/分であった。伸張-荷重曲線を描き、破断時の伸度についての10点の平均値を破断伸度とした。」 「【0050】 (9)乾熱収縮率(%) ポリ乳酸系長繊維不織布から、幅20cm×長さ20cmの試験片を切り出し、その試験片を140℃の雰囲気下で5分間放置して加熱処理した後、室温にて冷却し、下記の数式からタテ方向およびヨコ方向の乾熱収縮率をそれぞれ求めた。 タテ方向の乾熱収縮率(%) ={(加熱処理前の試験片のタテ方向の寸法)-(加熱処理後の試験片のタテ方向の寸法)}/(加熱処理前の試験片のタテ方向の寸法)×100 ヨコ方向の乾熱収縮率(%) ={(加熱処理前の試験片のヨコ方向の寸法)-(加熱処理後の試験片のヨコ方向の寸法)}/(加熱処理前の試験片のヨコ方向の寸法)×100 (10)成型性 形状が略半球体の成型体を得るための金型(雌型と雄型とからなる、雌型の深さが65mm、直径が120mmであり、エアシリンダーである雄型の直径が120mmである)を用いて、実施例および比較例で得られたポリ乳酸系長繊維不織布をプレス成型に付することにより成型体を作成した。この際、予熱温度は150℃、予熱時間は5分、エアーソシリンダーのエアー圧は7kg/cm2とした。以下の基準で評価した。 ○:成型体に破れが無く、良好に成型されている。 ×:成型体の少なくとも一部に破れが生じている。 【0051】 (実施例1) ポリ乳酸(融点:174℃、MFR:14g/10分、D体含有率:0.4モル%)(以下、「P1」と略称する)を用意した。一方で、ポリプロピレン(融点:160℃、MFR:60g/10分)(以下、「P2」と略称する)を用意した。 【0052】 P1を芯部とし、P2を鞘部として、芯部/鞘部=1/1(質量比)である芯鞘複合断面となるように、さらに、芯成分のP1の溶融重合体中にタルク0.5質量%を含有するように個別に計量した後、それぞれを個別のエクストルーダー型溶融押出機を用いて、温度210℃で溶融し、単孔吐出量1.3g/分の条件で溶融紡糸した。 【0053】 紡出糸条を公知の冷却装置にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアサッカーに牽引速度2500m/分で牽引細化し、公知の開繊器具を用いて開繊し、移動するスクリーンコンベア上にウェブとして捕集堆積させた。堆積させた複合長繊維の単糸繊度は4.5dtexであった。 【0054】 次いで、このウェブをロール温度130℃としたエンボスロールからなる部分熱圧着装置に通して部分的に熱圧着し、目付100g/m2のポリ乳酸系長繊維不織布を得て評価に付した。さらに、該ポリ乳酸系長繊維不織布から成型体を得て、評価に付した。 【0055】 (実施例2) 目付を70g/m2とした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系長繊維不織布および成型体を得、評価に付した。 【0056】 (実施例3) 目付を50g/m2とした以外は、実施例1と同様にしてポリ乳酸系長繊維不織布および成型体を得、評価に付した。」 「【0062】 【表1】 [図:0001384036000001.jpg] 」 上記記載事項から、実施例1に着目すると、甲1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「ポリ乳酸系長繊維不織布であって、目付が100g/m2であり、130℃での破断時の伸度(タテ)が270%であり、かつ、乾熱収縮率(タテ)が0.9%である、予熱温度150℃、予熱時間5分として、プレス成型に付される生分解性不織布。」 (イ)甲2 甲2には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体よりなる2種成分の芯鞘型複合長繊維にて構成され、前記ポリ乳酸とポリ乳酸を主体とする熱可塑性重合体とは融点が100℃以上であり、鞘成分の融点は芯成分の融点よりも低く、芯成分の複屈折率は0.015以下であり、鞘成分の複屈折率は芯成分の複屈折率よりも低く、前記繊維が集積され、これら繊維相互間が鞘成分の軟化又は溶融によって融着された部分熱融着領域が散点状に設けられ、乾熱90℃雰囲気下で測定した縦方向破断伸度と横方向破断伸度との和が160%以上であることを特徴とする生分解性を有する成型用不織布。」 「【0009】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記問題点を解決し、不織布によって容易に深絞り成型品を得ることができ、しかも成型品にヒートシール性を具備させることができ、また成型品に生分解性を付与できるようにすることを目的とする。」 「【0060】(6)不織布の乾熱雰囲気下の面積収縮率: 1m×1mの大きさの試料の中に、不織布の縦方向が5cmかつ横方向が5cmとなる大きさの枠を4か所記載した。その後、四フッ化エチレン樹脂製のシートのうえに上記試料を置き、熱風循環型熱処理機を用いて、加熱温度90℃、熱処理時間1分で処理した。その後に放冷し、上記枠の個々の長さを測定し、最初に記載した元の面積から熱処理後の面積を減算して、その差についての元の面積に対する割合を算出して、面積収縮率(%)としてた。なお、それらを平均化して、HWSで示した。 【0061】(7)加熱雰囲気下の破断伸度: インストロン社製の加熱雰囲気下引張試験機 MODEL1122を用い、JIS L-1096に記載のストリップ法にしたがい測定した。すなわち、試料幅5cm、試料長15cmの、不織布の縦方向(MD)の試料と横方向(CD)の試料とを各々10個準備し、掴み間隔10cm、引張速度10cm/分、内部の雰囲気温度90℃、温度保持時間1分で測定した。その時の破断時の伸度を平均化して、不織布の破断伸度とした。」 「【0066】(10)成型性: クランプに保持した不織布を鞘成分の融点よりも30℃高い温度の雰囲気下で10秒予熱し、次に直ちに加熱金型上に移動させて、容器形状にプレス成型を行った。金型は、上径50mmφ、下径40mmφ、深さ40mm、底部の隅部の曲率半径3mmであった。またプラグとのクリアランスは0.5mmとし、金型及びプラグの温度は共に70℃に保持させた。成型後は冷却し、成型物を取り出して深さを測り、金型との深さの比による熱セット率を求め、下記の基準で判定を行った。また成型物の外観検査を行い、下記の基準で成型性の判定を行った。 【0067】熱セット率 ○: 熱セット率が90%以上 △: 熱セット率が70%以上90%未満 ×: 熱セット率が70%未満 外観検査 ◎: 成型物に異常が全く認められない ○: 成型物はおおむね良好 △: 成型斑がややある ×: 成型斑が目立つまたは穴あきがある 【0068】(実施例1)鞘成分として融点が140℃、ASTM-1238Eの処方で測定したメルトインデックス値(190℃)が35g/10分、D-乳酸/L-乳酸のモル比(D/L比)が4/96であるポリ乳酸を用い、芯成分として融点が168℃、前記メルトインデックス値(190℃)が45g/10分、D/Lのモル比が1/99であるポリ乳酸を用いた。これら鞘成分と芯成分とを個別に溶融計量し、通常の丸孔を有する芯鞘型複合紡糸用口金装置(温度210℃)を用い、単孔吐出量を0.88g/分(芯鞘複合比は重量比で1:1)として紡出した。 【0069】その後、冷却装置を介してエアーサッカーで紡出糸条を2200m/分で牽引し、開繊し、移動するコンベヤネット上に堆積して、繊度が3.6デニールの繊維ウェブを得た。この繊維の芯成分の複屈折率は0.011、また鞘部の複屈折率は0.009であった。この繊維ウェブを、加熱回転ロール(温度が80℃、線圧が0.5kg/cm)に接触させ、ウェブの表層を疑似接着させた。その後、圧着面積率が15%、圧着部密度が22個/cm2、圧着部面積が0.7mm2の彫刻ロールと、フラットロールとを備えた熱エンボス加工機で、加工温度を115℃、線圧を40kg/cmとして、上述の表層疑似接着ウェブを点圧着した。これにより、目付が約100g/m2の長繊維不織布を製造した。また、上述のようにして不織布の特性を測定した。 【0070】その不織布を成型加工用基布とし、上述の(10)の条件で成型加工を行って成型性を評価した。以上の結果を表1に示す。 【0071】表1から明らかなように、安定した操業状態で長繊維不織布を得ることができた。得られた不織布は、生分解性能及び熱安定性を持ち、成型加工のために必要な基本性能を有するものであって、成型性が良好で深絞り成型に好適であることが分かった。 【0072】 【表1】 [図:0001384036000002.jpg] 【0073】(実施例2)紡糸時の単孔吐出量を1.17g/分、紡糸速度を3500m/分とした。そして、それ以外は実施例1と同じ処方で、単糸繊度が3デニール、目付が100g/m2の長繊維不織布を製造し、その特性を測定した。また得られた不織布を成型加工用基布とし、成型加工を行って、成型性を評価した。その結果を表1に示す。 【0074】表1から明らかなように、得られた長繊維不織布は、芯部と鞘部の複屈折率が共に比較的高く、加熱雰囲気下の破断伸度(MD+CD)がやや低い状態にあるため、成型性がやや劣る傾向にあった。しかし、操業性、生分解性能、熱安定性を持ち、成型加工に具備する基本性能は有するものであった。」 上記記載事項から、実施例2に着目すると、甲2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「ポリ乳酸系長繊維不織布であって、目付が100g/m2であり、雰囲気温度90℃での加熱雰囲気下の破断時の伸度(MD及びCD)が平均値165%であり、かつ、不織布の乾熱雰囲気下の面積収縮率が1.7%である、プレス成型用の生分解性不織布。」 (ウ)甲3 甲3には、次の事項が記載されている。 「【請求項1】 熱可塑性脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性ポリマーからなる長繊維から構成され、しかもこの長繊維の結晶化度が10~40%かつ過冷却度指数が0.4以上であり、構成長繊維同士が部分的に熱圧着されて形成されることを特徴とする生分解性成形用長繊維不織布。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記の問題を解決するもので、通気性、通液性が要求される成形品その他への展開を可能とするとともに、複雑な形状の成形をも可能とし、さらに極めて短時間でコンポスト化される生分解性成形用長繊維不織布を提供しようとするも のである。」 「【0009】熱可塑性脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリグリコール酸やポリ乳酸のようなポリ(α-ヒドロキシ酸)またはこれらを構成する繰り返し単位要素による共重合体が挙げられる。また、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(β-プロピオラクトン)のようなポリ(ω-ヒドロキシアルカノエート)が、さらに、ポリ-3-ヒドロキシプロピオネート、ポリ-3-ヒドロキシブチレート、ポリ-3-ヒドロキシカプロレート、ポリ-3-ヒドロキシヘプタノエート、ポリ-3-ヒドロキシオクタノエートのようなポリ(β-ヒドロキシアルカノエート)およびこれらを構成する繰り返し単位要素とポリ-3-ヒドロキシバリレートやポリ-4-ヒドロキシブチレートを構成する繰り返し単位要素との共重合体が挙げられる。また、グリコールとジカルボン酸の縮重合体からなるものとして、例えば、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートまたはこれらを構成する繰り返し単位要素とするポリアルキレンジカルボキシレート共重合体が挙げられる。 【0010】本発明においては、生分解性能および製糸性等の点から、以上の中で特に、ポリ乳酸系重合体と、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケートのいずれかの重合体あるいはこれら重合体を主繰り返し単位とした共重合体と、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトンのいずれかの重合体あるいはこれら重合体を主繰り返し単位とした共重合体とが好適である。」 「【0017】本発明の不織布の構成長繊維は、その繊維形態は脂肪族ポリエステルを単独で用いたものでも良いし、2種以上の脂肪族ポリエステルを用いた複合繊維でも良い。さらに、繊維横断面は、通常の丸断面のほか異形断面、中空断面や芯鞘複合断面等の複合断面であっても差し支えない。」 「【0019】本発明の不織布は前記の単糸繊度を満足する長繊維で構成され、かつ、その目付が10~500g/m2の範囲にあることが好ましい。目付が10g/m2未満であると、地合いおよび機械的強力が劣り、実用性に乏しいものとなる。逆に、目付が500g/m2を超えると、柔軟性が損なわれ好ましくない。すなわち、単糸繊度が細い場合には同一目付けでも緻密な不織布となるが、生分解に伴う機械的強度の低下が早いことを考慮する必要があり、また、繊維自体の機械的強度が低い場合には、不織布としての一定の強力を維持するためには、単糸繊度および目付けを大きくすることが必要である。」 「【0022】本発明のように不織布を構成する長繊維が上記要件を満たすことは、換言すれば、不織布の熱成形温度における歪応力が低くかつ破断伸度が高いこととなり、これにより熱成形時の不織布の破れを防止するという効果も得られる。例えば、熱成形温度における不織布の伸長破断伸度は50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは100%以上であることが必要である。 【0023】また、長繊維不織布並びにこれを構成する長繊維が、熱成型時に収縮を起こし難いことも成型用不織布としての基本的要件である。なぜなら、シートが熱成形時に収縮を起こすと、金型にシートがとられ安定した連続成形が困難となるからである。従って、熱成形時における不織布の面積収縮率は10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下であることが良い。」 「【0035】本発明の生分解性成形用長繊維不織布を用いて加熱成形する方法としては、例えば、不織布を構成する重合体、複数の重合体から構成される場合は最も融点の高い重合体のガラス転移温度以上、融点以下の温度に予備加熱して金型にてプレス成形し、その後、成型品の機械的強度を向上させるために、引き続き結晶化温度付近の温度にて結晶化を促進させるという成型方法等を採用することができる。」 「【0046】実施例2 融点が162℃、MFR値が20g/10分で窒化ホウ素を1重量%含むL-乳酸/ヒドロキシカプロン酸共重合体(重量比=88/12)を実施例1と同じ紡糸口金より紡糸温度200℃で溶融紡糸した。次に、紡出糸条を温度が15℃の冷却風にて冷却した後、引き続いて紡糸口金の下方に設けたエアーサッカーにて引取速度1500m/分で引取り、開繊し、移動するスクリーンネット上に堆積させてウエブを形成した。次いで、このウエブをエンボスロールからなる部分熱圧着装置に通し、ロール温度が140℃、圧着面積率が6.5%の条件にて部分的に熱圧着し、単糸繊度が4.0デニールの長繊維からなる、目付65g/m2の長繊維不織布を得た。この不織布を構成する長繊維の結晶化度は、18.0%、過冷却度指数は0.52であった。 【0047】得られた本発明の生分解性成形用長繊維不織布を120℃に予熱し、開口径10.5cm、深さ5.5cmの苗木ポットにプレス成形したところ、良好な成形品が得られた。得られた苗木ポット成形品の通気度は170cc/cm2 ・秒であった。また、この苗木ポット成形品を用いて約1年間苗木ポットごとに目的地に植栽したところ苗木は順調に成木として成長し、苗木ポットは1年後には跡形なく、土中で分解していた。」 上記記載事項から、実施例2に着目すると、甲3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。 「L-乳酸/ヒドロキシカプロン酸共重合対からなる長繊維から構成され、目付が65g/m2であり、かつ プレス成形用の生分解性不織布。」 (エ)甲4 甲4には、次の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、粘着テープ用基布に関し、更に詳しくは、ポリエステルフィラメントを用いた粘着テープ用基布に関する。」 「【0008】 【課題を解決するための手段】・・・乾熱収縮率が3.0%より大きいと、粘着テープラミネートの際の熱処理工程において、自己収縮が大きくなり、その際発生する収縮応力や寸法変化率が大きくなることにより、斯かる工程の管理が難しくなり、生産性を損なう原因となる。」 イ 引用発明1を主引用発明とした理由について (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「ポリ乳酸系長繊維不織布であ」る「予熱温度150℃、予熱時間5分として、プレス成型に付される生分解性不織布」は、本件発明1の「ポリ乳酸系重合体の繊維から構成され」た「熱成型用の生分解性不織布」に相当する。 引用発明1の「目付が100g/m2であ」ることは、本件発明1の「目付が20~350g/m2であ」ることに相当する。 そうすると、本件発明1と引用発明1とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点] 「ポリ乳酸系重合体の繊維から構成され、目付が20~350g/m2である、熱成型用の生分解性不織布。」 [相違点1-1] 本件発明1は、「120℃におけるMD方向の伸度が、50%以上」であるのに対して、引用発明1は、「130℃での破断時の伸度(タテ)」が「270%」である点。 [相違点1-2] 本件発明1は、「初期荷重0.005N/2mm、昇温速度10℃/分での熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下」であるのに対して、引用発明1は、「乾熱収縮率(タテ)」が「0.9%」である点。 [相違点1-3] 本件発明1は、「動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率が10~500MPaであ」るのに対して、引用発明1は、その点が不明である点。 b 新規性についての判断 相違点1-3について検討する。 甲1に記載された、引用発明1の原料及び製造方法(上記ア(ア)【0051】~【0054】)は、本件発明1の実施例の原料及び製造方法と同じではなく、また、甲1に記載された、引用発明1の原料及び製造方法であれば、引用発明1が相違点1-3に係る本件発明1の構成を備えることを示す証拠も提出されていないから、引用発明1が相違点1-3に係る本件発明1の構成を備えているとはいえず、相違点1-3は実質的なものである。 c 進歩性についての判断 さらに、相違点1-3について検討する。 「動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率」について、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「本実施形態の不織布は、動的粘弾性の温度依存性評価おける、90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率が常に15~500MPaであり、好ましくは20~300MPa、より好ましくは20~200Mpa、特に好ましくは25~150MPaである。90℃~150℃における貯蔵弾性率をこの範囲内とすることで、熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく、部分的に不織布が伸ばされるような伸度斑が少なく、形がきれいな意匠性に優れる成型体を得ることができる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を下回る場合、成型時の熱により不織布の機械的強度が低くなりすぎているため、金型の形状や加熱の温度斑などによる延伸斑が発生しやすくなる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を上回る場合、成型時に熱を与えてもなお機械的強度が高いため、金型で延伸した際に布帛が破断しやすくなる。」(【0042】)と記載されている。 すなわち、相違点1-3に係る本件発明1の構成は、「熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく」することを可能とするために採用された構成であるところ、甲1には「熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく」することについて何ら記載されておらず、引用発明1において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とする動機付けがない。 しかも、相違点1-3に係る本件発明1の構成は、甲2~4にも記載されておらず、かつ、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。 したがって、引用発明1において、相違点1-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、相違点1-1及び相違点1-2を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明3~9及び11~18について 本件発明3~9及び11~18は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、上記(ア)で検討したのと同じ理由により、引用発明1ではなく、また、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)小括 よって、本件発明1、3~9及び11~18は、引用発明1ではなく、また、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 引用発明2を主引用発明とした理由について (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と引用発明2とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点] 「ポリ乳酸系重合体の繊維から構成され、目付が20~350g/m2である、熱成型用の生分解性不織布。」 [相違点2-1] 本件発明1は、「120℃におけるMD方向の伸度が、50%以上」であるのに対して、引用発明2は、「雰囲気温度90℃での加熱雰囲気下の破断伸度(MD+CD)が165%」である点。 [相違点2-2] 本件発明1は、「初期荷重0.005N/2mm、昇温速度10℃/分での熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下」であるのに対して、引用発明2は、「不織布の乾熱雰囲気下の面積収縮率が1.7%」である点。 [相違点2-3] 本件発明1は、「動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率が10~500MPaであ」るのに対して、引用発明2は、その点が不明である点。 b 新規性についての判断 相違点2-3について検討する。 甲2に記載された、引用発明2の原料及び製造方法(上記ア(イ)【0068】、【0069】、【0073】)は、本件発明1の実施例の原料及び製造方法と同じではなく、また、甲2に記載された、引用発明2の原料及び製造方法であれば、引用発明2が相違点2-3に係る本件発明1の構成を備えることを示す証拠も提出されていないから、引用発明2が相違点2-3に係る本件発明1の構成を備えているとはいえず、相違点2-3は実質的なものである。 c 進歩性についての判断 さらに、相違点2-3について検討する。 「動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率」について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本実施形態の不織布は、動的粘弾性の温度依存性評価おける、90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率が常に15~500MPaであり、好ましくは20~300MPa、より好ましくは20~200Mpa、特に好ましくは25~150MPaである。90℃~150℃における貯蔵弾性率をこの範囲内とすることで、熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく、部分的に不織布が伸ばされるような伸度斑が少なく、形がきれいな意匠性に優れる成型体を得ることができる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を下回る場合、成型時の熱により不織布の機械的強度が低くなりすぎているため、金型の形状や加熱の温度斑などによる延伸斑が発生しやすくなる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を上回る場合、成型時に熱を与えてもなお機械的強度が高いため、金型で延伸した際に布帛が破断しやすくなる。」(【0042】)と記載されている。 すなわち、相違点2-3に係る本件発明1の構成は、「熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく」することを可能とするために採用された構成であるところ、甲2には「熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく」することについて何ら記載されておらず、引用発明2において、相違点2-3に係る本件発明1の構成とする動機付けがない。 しかも、相違点2-3に係る本件発明1の構成は、甲1、3、4にも記載されておらず、かつ、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。 したがって、引用発明2において、相違点2-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、相違点2-1及び相違点2-2を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明3~9及び11~18について 本件発明3~9及び11~18は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、上記(ア)で検討したのと同じ理由により、引用発明2ではなく、また、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ)小括 よって、本件発明1、3~9及び11~18は、引用発明2ではなく、また、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 エ まとめ よって、取消理由2(新規性)及び取消理由3(進歩性)には理由がない。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許法第29条第2項(進歩性)に係る申立理由について 申立人は、請求項1~18に係る発明は、甲3に記載された発明、甲1~甲4に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨の主張をしている。 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明3とは、次の点で一致し、相違する。 [一致点] 「ポリ乳酸系重合体の繊維から構成され、目付が20~350g/m2である、熱成型用の生分解性不織布。」 [相違点3-1] 本件発明1は、「120℃におけるMD方向の伸度が、50%以上」であるのに対して、引用発明3は、その点が不明である点。 [相違点3-2] 本件発明1は、「初期荷重0.005N/2mm、昇温速度10℃/分での熱機械分析による80℃~140℃におけるMD方向の寸法変化率が±4%以下」であるのに対して、引用発明3は、その点が不明である点。 [相違点3-3] 本件発明1は、「動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率が10~500MPaであ」るのに対して、引用発明3は、その点が不明である点。 イ 判断 相違点3-3について検討する。 「動的粘弾性評価の温度依存性試験において90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率」について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本実施形態の不織布は、動的粘弾性の温度依存性評価おける、90℃~150℃の温度領域での貯蔵弾性率が常に15~500MPaであり、好ましくは20~300MPa、より好ましくは20~200Mpa、特に好ましくは25~150MPaである。90℃~150℃における貯蔵弾性率をこの範囲内とすることで、熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく、部分的に不織布が伸ばされるような伸度斑が少なく、形がきれいな意匠性に優れる成型体を得ることができる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を下回る場合、成型時の熱により不織布の機械的強度が低くなりすぎているため、金型の形状や加熱の温度斑などによる延伸斑が発生しやすくなる。他方、貯蔵弾性率がこの範囲を上回る場合、成型時に熱を与えてもなお機械的強度が高いため、金型で延伸した際に布帛が破断しやすくなる。」(【0042】)と記載されている。 すなわち、相違点3-3に係る本件発明1の構成は、「熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく」することを可能とするために採用された構成であるところ、甲3には「熱プレス成型を行った際に、金型による変形に追従でき、破袋が少なく、できた成型体の表面の凹凸が少なく」することについて何ら記載されておらず、引用発明3において、相違点3-3に係る本件発明1の構成とする動機付けがない。 しかも、相違点3-3に係る本件発明1の構成は、甲1、2、4にも記載されておらず、かつ、本件特許に係る出願前における周知技術でもない。 したがって、引用発明3において、相違点3-3に係る本件発明1の構成とすることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 よって、相違点3-1及び相違点3-2を検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明3~9及び11~18について 本件発明3~9及び11~18は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに発明特定事項を加え、本件発明1を限定するものであるから、上記(1)で検討したのと同じ理由により、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3)小括 よって、本件発明1、3~9及び11~18は、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、申立人の進歩性に係る上記申立理由は採用できない。 2 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)及び特許法第36条第6項第1号(サポート要件)に係る申立理由について 申立人は、発明の詳細な説明の記載が、当業者が請求項10に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない旨、及び請求項10に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨の主張をしているが、本申立理由の対象とされた本件訂正前の請求項10は、本件訂正により削除された。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1、3~9及び11~18に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、3~9及び11~18に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。 また、請求項2及び10に係る特許は、本件訂正により削除されたため、申立人による請求項2及び10に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700957

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