特許異議申立
2020-700917
塗料の製造方法及び色彩データを予測する方法
- 審判番号
- 2020-700917
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-238855
- 登録番号
- 6703639
- 請求日
- 2020年11月27日
- 審決日
- 2022年03月30日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】関西ペイント株式会社
- 【権利者代理人】山田 泰之
- 【権利者代理人】安藤 達也
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 川端 修
- 審判官 蔵野 雅昭
- 審判官 木村 敏康
- 分類
- P1651.121-YAA(G01J) / P1651.537-YAA(G01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6703639号発明「塗料の製造方法及び色彩データを予測する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6703639号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5~9〕、〔4、14~17〕、〔10~13〕について訂正することを認める。
特許第6703639号の請求項1~17に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6703639号の請求項1~13の発明に係る特許についての出願は、令和元年12月27日を出願日とするものであって、令和2年5月12日にその特許権の設定登録がなされ、同年6月3日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許についての異議申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和2年11月27日 特許異議申立人である藤江桂子による特許異議の申立て
令和3年3月10日付け 取消理由通知
同年5月12日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年6月16日付け 訂正請求があった旨の通知
同年7月20日 意見書の提出(特許異議申立人)
同年9月22日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年11月26日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年11月30日付け 訂正請求があった旨の通知
同年12月22日 意見書の提出(特許異議申立人)
なお、令和3年5月12日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨について
令和3年11月26日付けの訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、「特許第6703639号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~17について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、特許請求の範囲の訂正に係る以下の訂正事項1~10からなるものである(下線は変更箇所。)。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1において、
ア 「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベース」
と記載されているのを、
「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベース」
に訂正し(以下、「訂正事項1-1」ともいう。)、
イ 「(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程」
と記載されているのを、
「(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程」
に訂正し(以下、「訂正事項1-2」ともいう。)、
ウ 「(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程」
と記載されているのを、
「目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程であって、目標色彩データXtが、光輝性顔料を含まない塗膜の色彩データである工程」
に訂正し(以下、「訂正事項1-3」ともいう。)、
エ 「(S106)前記S105工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程」
と記載されているのを、
「(S106)前記S105工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデルを用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程」
に訂正し(以下、「訂正事項1-4」ともいう。)、
オ 「(S107)前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程」
と記載されているのを、
「(S107)前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測されるXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程」
に訂正(以下、「訂正事項1-5」ともいう。)する。
カ 上記ア~オについて、請求項1の記載を引用する請求項3、6~9も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に
「前記S103工程において、目標色彩データXtが、光輝性顔料を含む塗膜の色彩データである、請求項1に記載の方法。」
と記載されているのを、独立形式に記載を変更した上で、
「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法であって、下記S101~S111工程を含む 、前記塗料の製造方法。
(S101)前記データベー スに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する工程
(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程
(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程であって、目標色彩データXtが、光輝性顔料を含む塗膜の色彩データである工程
(S104)前記目標色彩データXtを、前記コンピュータに入力する工程
(S105)コンピュータを用いた検索により、前記目標色彩データXtに近似する検索色彩データXn1及び検索色彩データXn1に対応する近似配合組成データYn1を得るとともに、前記目標色彩データXtと前記検索色彩データXn1とを比較し合否を判定する工程
(S106)前記S105工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程
(S107)前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測されるXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程
(S108)前記S105~S107工程のいずれかで合格した際の、合格配合組成データYC1を得る工程
(S109)前記合格配合組成データYC1に基づき、実候補塗料CMCiを調製し、該実候補塗料CMCiの塗装板を得て、実測色彩データXCiを取得する工程
(S110)前記色彩データXtと前記実測色彩データXCiとの比較、及び/又は、前記目標とする色彩と前記実候補塗料CMCiの塗装板の色彩との比較により、合否を判定する工程
(S111)前記S110工程において合格しない場合に、前記S106~S110工程を繰り返す工程」
に訂正する。
また、請求項2の記載を引用する請求項3、6~9も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4において、
ア 「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベース」
と記載されているのを、
「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベース」
に訂正し(以下、「訂正事項3-1」ともいう。)、
イ 「下記S201~S209工程を含む、前記方法。」
と記載されているのを、
「下記S201~S207工程を含む、前記方法。」
に訂正し(以下、「訂正事項3-2」ともいう。)、
ウ 「(S202)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程」
と記載されているのを、
「(S202)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程」
に訂正(以下、「訂正事項3-3」ともいう。)する。
エ 上記ア~ウについて、請求項4を引用する訂正前の請求項6、8~9に対応する訂正後の請求項15~17も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5において、
「前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
(i)光輝性顔料を含まない組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
(ii)光輝性顔料を含む組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。」
とあるうち、
ア 請求項1を引用するものについて、独立形式に記載を変更した上で、
「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法であって、下記S101~S111工程を含む、前記塗料の製造方法。
(S101)前記データベー スに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する工程
(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
(i)光輝性顔料を含まない組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
(ii)光輝性顔料を含む組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
を含み、
前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程
(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程
(S104)前記目標色彩データXtを、前記コンピュータに入力する工程
(S105)コンピュータを用いた検索により、前記目標色彩データXtに近似する検索色彩データXn1及び検索色彩データXn1に対応する近似配合組成データYn1を得るとともに、前記目標色彩データXtと前記検索色彩データXn1とを比較し合否を判定する工程
(S106)前記S105工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程
(S107)前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される、XtXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程
(S108)前記S105~S107工程のいずれかで合格した際の、合格配合組成データYC1を得る工程
(S109)前記合格配合組成データYC1に基づき、実候補塗料CMCiを調製し、該実候補塗料CMCiの塗装板を得て、実測色彩データXCIを取得する工程
(S110)前記色彩データXtと前記実測色彩データXCiとの比較、及び/又は、前記目標とする色彩と前記実候補塗料CMCiの塗装板の色彩との比較により、合否を判定する工程
(S111)前記S110工程において合格しない場合に、前記S106~S110工程を繰り返す工程」
に訂正し、また、請求項5の記載を引用する請求項6~9も同様に訂正し(以下、「訂正事項4-1」ともいう。)、
イ 請求項4を引用するものについて、独立形式に記載を変更した上で、
「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いる塗膜の色彩データを予測する方法であって、下記S201~S207工程を含む 、前記方法。
(S201)前記データベースに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する工程
(S202)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
(i)光輝性顔料を含まない組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
(ii)光輝性顔料を含む組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
を含み、
前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程
(S203)塗膜の色彩データを予測する塗料CMtの配合組成データYCMを得る工程
(S204)前記配合組成データYCMを、前記コンピュータに入力する工程
(S205)必要に応じて、コンピュータを用いた検索により、前記配合組成データYCMに対応する検索色彩データXn1を取得する工程
(S206)前記S205工程で対応する検索色彩データXn1が検索されなかった場合、又は、前記S205工程を行わなかった場合において、前記配合組成データYCMから、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル、又は、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデルと前記人工知能モデル以外の予測式とを用いて、予測色彩データXm1を得る工程
(S207)必要に応じて、前記塗料CMtを塗装した塗装板の実測色彩データXCMを取得し、前記予測色彩データXm1と比較する工程」
に訂正して新たな請求項14とし、また、請求項14の記載を引用する請求項15~17も同様に訂正(以下、「訂正事項4-2」ともいう。)する。
(5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
組成物中の光反射性顔料の含有量、光干渉性顔料の含有量、配向制御剤の含有量、組成物中の光反射性顔料の各色相別の含有量、光干渉性顔料の各色相別の含有量、着色剤の各色相別の含有量、及び、それらの含有量の2つ以上の合計から選ばれる1種類以上のデータ、及び/又は、
組成物に含まれる色材の形状データ、
を学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。」
とあるうち、
ア 請求項1~3、請求項1~3を引用する請求項5を引用するものについて、
「前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
組成物中の光反射性顔料の含有量、光干渉性顔料の含有量、配向制御剤の含有量、組成物中の光反射性顔料の各色相別の含有量、光干渉性顔料の各色相別の含有量、着色剤の各色相別の含有量、及び、それらの含有量の2つ以上の合計から選ばれる1種類以上のデータ、及び/又は、
組成物に含まれる色材の形状データ、
を学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程を含む、請求項1~3、5のいずれかに記載の方法。」
に訂正し、また、請求項6の記載を引用する請求項7~9も同様に訂正し(以下、「訂正事項5-1」ともいう。)、
イ 請求項4、請求項4を引用する請求項5を引用するものについて、
「前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
組成物中の光反射性顔料の含有量、光干渉性顔料の含有量、配向制御剤の含有量、組成物中の光反射性顔料の各色相別の含有量、光干渉性顔料の各色相別の含有量、着色剤の各色相別の含有量、及び、それらの含有量の2つ以上の合計から選ばれる1種類以上のデータ、及び/又は、
組成物に含まれる色材の形状データ、
を学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程を含む、請求項4又は14に記載の方法。」
に訂正して新たな請求項15とし、また、請求項15の記載を引用する請求項16~17も同様に訂正(以下、「訂正事項5-2」ともいう。)する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1~6のいずれかに記載の方法。」
と記載されているのを、
「請求項1~3、5、6のいずれかに記載の方法。」
に訂正する。
また、請求項7の記載を引用する請求項8~9も同様に訂正する。
(7)訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に
「前記データベースに登録された1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXは、実測データ、又は、実測データと実測データに基づき算出されたデータとを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。」
とあるうち、
ア 請求項1~3を引用するもの、及び、請求項5~7で請求項4を直接又は間接的に引用しないものについて、
「前記データベースに登録された1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXは、実測データ、又は、実測データと実測データに基づき算出されたデータとを含む、請求項1~3、5~7のいずれかに記載の方法。」
に訂正し、また、請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正し(以下、「訂正事項7-1」ともいう。)、
イ 請求項4を引用するもの、及び、請求項5~7で請求項4を直接又は間接的に引用するものについて、
「前記データベースに登録された1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXは、実測データ、又は、実測データと実測データに基づき算出されたデータとを含む、請求項4、14、15のいずれかに記載の方法。」
に訂正して新たな請求項16とし、また、請求項16の記載を引用する請求項17も同様に訂正(以下、「訂正事項7-2」ともいう。)する。
(8)訂正事項8
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に
「車両の補修塗装を行う際に用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の方法。」
とあるうち、
ア 請求項1~3を引用するもの、及び、請求項5~8で請求項4を直接又は間接的に引用しないものについて、
「車両の補修塗装を行う際に用いられる、請求項1~3、5~8のいずれかに記載の方法。」
に訂正し(以下、「訂正事項8-1」ともいう。)、
イ 請求項4を引用するもの、及び、請求項5、6、8で請求項4を直接又は間接的に引用するものについて、
「車両の補修塗装を行う際に用いられる、請求項4、14~16のいずれかに記載の方法。」
に訂正して新たな請求項17とする(以下、「訂正事項8-2」ともいう。)。
(9)訂正事項9
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10において、
ア 「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベース」
と記載されているのを、
「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベース」
に訂正し(以下、「訂正事項9-1」ともいう。)、
イ 「(S302)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する手段」
と記載されているのを、
「(S302)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する手段であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である手段」
に訂正し(以下、「訂正事項9-2」ともいう。)、
ウ 「(S307)前記手段S306において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する手段を、合格するまで繰り返す手段」
と記載されているのを、
「(S307)前記手段S306において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測されるXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する手段を、合格するまで繰り返す手段」
に訂正(以下、「訂正事項9-3」ともいう。)する。
エ 上記ア~ウについて、請求項10の記載を引用する請求項12、13も同様に訂正する。
(10)訂正事項10
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項11において、
ア 「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベース」
と記載されているのを、
「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベース」
に訂正し(以下、「訂正事項10-1」ともいう。)、
イ 「下記手段S401~S409を含む、前記システム。」
と記載されているのを、
「下記手段S401~S407を含む、前記システム。」
に訂正し(以下、「訂正事項10-2」ともいう。)、
ウ 「(S402)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する手段」
と記載されているのを、
「(S402)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する手段であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である手段」
に訂正(以下、「訂正事項10-3」ともいう。)する。
エ 上記ア~ウについて、請求項11の記載を引用する請求項12、13も同様に訂正する。
3 訂正の適否
(1)一群の請求項について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の記載を訂正するものであるところ、請求項3、6~9はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2の記載を訂正するものであるところ、請求項3、6~9はそれぞれ請求項2を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。
訂正事項3は、本件訂正前の請求項4の記載を訂正して、訂正後の請求項4、及び、14とする訂正を含むものであるところ、請求項15~17はそれぞれ請求項4、及び、14を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項3によって記載が訂正される請求項4に連動して訂正されるものである。
訂正事項4は、本件訂正前の請求項5の記載を訂正するものであるところ、請求項6~9はそれぞれ請求項5を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項4によって記載が訂正される請求項5に連動して訂正されるものである。
また、本件訂正前の請求項5~9は、本件訂正前の請求項1~4を直接または又は間接的に引用している。
したがって、本件訂正後の請求項1~9、14~17は、本件訂正前の請求項1~9に対応する。
なお、本件訂正後の請求項4、14~17については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされている。
訂正事項9は、本件訂正前の請求項10の記載を訂正するものであるところ、請求項12、13はそれぞれ請求項10を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項9によって記載が訂正される請求項10に連動して訂正されるものである。
訂正事項10は、本件訂正前の請求項11の記載を訂正するものであるところ、請求項12、13はそれぞれ請求項11を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項10によって記載が訂正される請求項11に連動して訂正されるものである。
また、本件訂正前の請求項12、13は、本件訂正前の請求項10、11を直接または又は間接的に引用している。
したがって、本件訂正後の請求項10~13は、本件訂正前の請求項10~13に対応する。
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとにされたものである。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1について
上記2のとおり、訂正事項1は、訂正事項1-1~1-5からなるものである。
(ア)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、本件訂正前の請求項1の「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベース」を、「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベース」であるものに限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)には当該「データベース」について、以下の記載がある。なお、下線は、当審で付した。
「<データベース>
本発明におけるデータベースは、色彩データと配合組成データとを対応させて登録(記録)することで構成される。本発明のデータベースには、色彩データ、配合組成データに加えて、色彩又は組成に関係する各種データを対応させて登録することができる。本発明においては、データベースに登録されるデータは、非常に多数のデータ(いわゆる、ビッグデータ)であることが好ましい。具体的には、5千組以上、1万組以上、より好ましくは2万組以上である。これらのデータは、任意に、追加・変更・削除が可能である。
データベースに登録された1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXは、実測データ、又は、実測データと実測データに基づき算出されたデータとを含む。実測データに基づき算出されたデータとしては、実測データを用い所定の数式等を用いて算出される各種パラメータ値、実測データに基づき算出できる予測値等があげられる。
データベースは、単一のデータベースであってもよく、また、少なくとも一つの共通情報要素により互いに関連付けられた複数のデータベース又は関連付けられていない複数のデータベースであってもよい。」(段落【0025】)
したがって、上記下線部から明らかなように、訂正事項1-1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(イ)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、本件訂正前の請求項1の「(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程」における「人工知能モデル」を、「配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種」に限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件特許明細書には当該人工知能モデルについて、以下の記載がある。なお、下線は、当審で付した。
「図3は、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルにおけるニューラルネットワーク9(脳の神経細胞の働きをプログラムで再現したもの)を示す概略構成図である。人工知能モデルは、データベースに登録されたデータを用い、学習用データをコンピュータに入力するとともに学習用データを機械学習させることで生成される。図3に示すように、ニューラルネットワーク9は、入力層91、隠れ層92及び出力層93の3つの処理層(3つのニューロン層)を含むものとして構成されている。
入力層91は、入力ノード911~91iと呼ばれる少なくとも1~i個の処理要素を含有し、ネットワークの隠れ層の隠れノード921~92jに結合されている。入力層91の各ユニットは、配合組成データYに係る1種類以上の特徴量に対応している。
隠れ層92は、隠れノード921と呼ばれる少なくとも1~j個の処理要素を有し、ネットワークの出力層93の出力ノード931に結合されている。各隠れ層92(隠れノード921~92j)は、入力層91(入力ノード911~91i)と出力層93(出力ノード931~93k)との間に存在する。隠れノード921~92jの数は、入出力関係の複雑さをモデル化するために、ネットワーク機能に加えられた隠れノードの数を増やすことにより変えることができる。
出力層93は、出力ノード931~93kと呼ばれる少なくとも1~k個の処理要素を有するように組織されている。処理要素又はノードは、ネットワーク実行時に配合組成データと色彩データとの間の関係を計算できるように相互結合されている。出力層93の各ユニットは、色彩データXに係る1種類以上の各成分量に対応している。
なお、ニューラルネットワーク9内ではデータは1方向にのみ流れることとなり、各ノードは信号を1つ以上のノードへ送信するだけでフィードバックを受け取ることはない。」(段落【0023】)
したがって、上記下線部から明らかなように、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項1-3について
訂正事項1-3は、本件訂正前の請求項1の「(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程」における「目標色彩データXt」を、「光輝性顔料を含まない塗膜の色彩データ」に限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件特許明細書には当該目標色彩データXtについて、以下の記載がある。なお、下線は、当審で付した。
「<S103工程>
S103工程は、目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程である。
目標色彩データXtとしては、塗装物、成形品、自然構造物等が有しているあらゆる色彩についての色彩データがあげられる。特に、塗装物の色彩データとすることが好ましい。
本発明は、これまでコンピュータ調色が困難であった、光輝性顔料を含む塗膜の色彩データを目標色彩データXtとしても、精度よく調色を行うことができる。このため、S103工程における目標色彩データXtは、光輝性顔料を含む塗膜の色彩データであることが好ましい。もちろん、S103工程における目標色彩データXtは、光輝性顔料を含まない塗膜の色彩データであってもよい。」(段落【0075】)
したがって、上記下線部から明らかなように、訂正事項1-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(エ)訂正事項1-4について
訂正事項1-4は、本件訂正前の請求項1の「(S106)前記S105工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程」における「前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式」を、「前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル」に限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1-4は、「前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式」が、具体的には、「前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び前記人工知能モデル以外の予測式」、「前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル」、及び、「前記人工知能モデル以外の予測式」の3つの選択肢のいずれかを意味するものであったところ、これを唯一の選択肢(前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル)に限定するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(オ)訂正事項1-5について
訂正事項1-5は、本件訂正前の請求項1の「(S107)前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程」における「目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYni」を、「目標色彩データXtを与えると予測されるXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYni」に限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件特許明細書には当該候補配合組成データYniについて、以下の記載がある。
「数理最適化による算出は、候補配合組成データYniは、例えば、データベースに記録されている色彩データを参照して、近似配合組成により得られる色彩データを構成する座標軸ごとに、誤差を減らす方向に作用する特性情報を有する成分を検索し得ることができる。例えば、L*a*b*表色系において、誤差をΔL*=L*2-L*1、Δa*=a*2-a*1、Δb*=b*2-b*1とした場合に、L*軸上の誤差ΔL*が正の値である場合にはL*2の値を減少させる方向に作用する特性情報を有する成分を検索し、L*軸上の誤差ΔL*が負の値である場合にはL*2の値を増加させる特性情報を有する成分を検索する。同様に、a*軸上の誤差・・・それぞれ検索する。これにより、近似配合組成において、色空間を構成する表色系の座標軸ごとに、誤差を減らす方向に作用させる、すなわち、所定の特性情報を付与するための成分を追加することにより、目標とする色彩に近付けた候補配合組成データYniを得ることができる。
仮に、誤差を減らす方向に作用する特性情報を有する成分が検索されない場合には、目標色彩データXtに基づいて、より適切な新たな近似配合組成を得た後に、候補配合組成データを得ることができる。」(段落【0086】)
「<S107工程>
S107工程は、前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程である。
S107工程において、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得る方法は、S106工程におけるコンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得る方法と同じものである。
また、S107工程において、合否を判定する方法は、S106工程における合否を判定する方法と同じものである。」(段落【0099】)
したがって、上記下線部から明らかなように、訂正事項1-5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(カ)小括
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、要するに、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2に
「前記S103工程において、目標色彩データXtが、光輝性顔料を含む塗膜の色彩データである、請求項1に記載の方法。」
と記載されているのを、独立形式に記載を変更する(以下、「訂正事項2-a」という。)とともに、
訂正事項1-1、1-2、1-5に係る訂正と同じ内容の訂正を行い、さらに、
訂正事項1-3に係る訂正に代えて、
「(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程」
と記載されているのを、
「目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程であって、目標色彩データXtが、光輝性顔料を含む塗膜の色彩データである工程」
に訂正(以下、「訂正事項2-3」という。)するものである。
ここで、訂正事項2-aは、請求項1を引用する形式で記載されていたものを請求項1の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項2-3は、本件訂正前の請求項2が引用する請求項1の「(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程」における「目標色彩データXt」を、「光輝性顔料を含む塗膜の色彩データ」に限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件特許明細書には当該目標色彩データXtについて、上記ア(ウ)に摘記したとおりの記載があるから、訂正事項2-3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
また、その余の訂正(訂正事項1-1、1-2、1-5に係る訂正と同じ内容の訂正)については、上記ア(ア)(イ)(オ)のとおりであり、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、4号に規定する、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項3について
上記2のとおり、訂正事項3は、訂正事項3-1~3-3からなるものである。
(ア)訂正事項3-1、3-3について
訂正事項3-1の内容は、実質的に訂正事項1-1と同じものであるから、訂正事項1-1(上記ア(ア)を参照。)と同様の理由により、また、訂正事項3-3の内容は、実質的に訂正事項1-2と同じものであるから、訂正事項1-2(上記ア(イ)を参照。)と同様の理由により、訂正事項3-1、3-3は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(イ)訂正事項3-2について
訂正事項3-2は、「下記S201~S209工程を含む、前記方法。」を「下記S201~S207工程を含む、前記方法。」に訂正するものであるところ、「下記」には、S201~S207工程しか記載されていない(S208工程とS209工程は記載されていない)ことから、「S209工程」との記載が「S207工程」の誤記であることは明らかである。
したがって、訂正事項3-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。
また、訂正事項3-2が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(ウ)小括
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、2号に規定する、特許請求の範囲の減縮及び誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
エ 訂正事項4について
上記2(4)のとおり、訂正事項4は、訂正事項4-1、及び、4-2からなるものである。
また、訂正事項4-1は、要するに、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
(i)光輝性顔料を含まない組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
(ii)光輝性顔料を含む組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
を含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。」
と記載されているうち、請求項1を引用するものを独立形式に記載を変更する(以下、「訂正事項4-a」という。)とともに、訂正事項1-1、1-2、1-5に係る訂正と同じ内容の訂正を行って、本件訂正後の請求項5とする訂正であり、
訂正事項4-2は、要するに、本件訂正前の請求項5のうち、請求項4を引用するものを独立形式に記載を変更する(以下、「訂正事項4-b」という。)とともに、訂正事項1-1、1-2、1-5に係る訂正と同じ内容の訂正を行ったうえで、本件訂正後の請求項14とするものである。
そして、訂正事項4-a、4-bは、請求項1又は4を引用する形式で記載されていたものを請求項1又は4の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、その余の訂正(訂正事項1-1、1-2、1-5に係る訂正と同じ内容の訂正)については、上記ア(ア)(イ)(オ)のとおりであり、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、4号に規定する、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
オ 訂正事項5について
上記2のとおり、訂正事項5は、訂正事項5-1、及び、5-2からなるものである。
また、訂正事項5-1は、要するに、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
組成物中の光反射性顔料の含有量、光干渉性顔料の含有量、配向制御剤の含有量、組成物中の光反射性顔料の各色相別の含有量、光干渉性顔料の各色相別の含有量、着色剤の各色相別の含有量、及び、それらの含有量の2つ以上の合計から選ばれる1種類以上のデータ、及び/又は、
組成物に含まれる色材の形状データ、
を学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程を含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。」
と記載されているところ、引用する請求項を、請求項1~3、及び、5に限定して、本件訂正後の請求項6とする訂正であり、
訂正事項5-2は、要するに、本件訂正前の請求項6のうち、請求項4を直接又は間接的に引用するもの(本件訂正後の請求項4及び14に対応する。)に限定して、新たな請求項15とする訂正である。
そうすると、訂正事項5-1、5-2は、いずれも引用する請求項を一部削除することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件訂正後の請求項6及び15がそれぞれ引用する請求項には重複もない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
カ 訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載の方法。」と記載されているところ、引用する請求項から請求項4を削除して、請求項1~3、5、6のいずれかに限定することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
キ 訂正事項7について
上記2のとおり、訂正事項7は、訂正事項7-1、及び、7-2からなるものである。
また、訂正事項7-1は、要するに、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に
「前記データベースに登録された1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXは、実測データ、又は、実測データと実測データに基づき算出されたデータとを含む、請求項1~7のいずれかに記載の方法。」
と記載されているところ、引用する請求項から請求項4を削除して、引用する請求項を、請求項1~3、5~7に限定して、本件訂正後の請求項8とする訂正であり、
訂正事項7-2は、引用する請求項を、請求項4、14、15に変更して(要するに、本件訂正前の請求項4、及び、請求項4を直接又は間接的に引用するものに限定して)、新たな請求項16とする訂正である。
そうすると、訂正事項7-1、7-2は、いずれも引用する請求項を一部削除することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件訂正後の請求項8及び16がそれぞれ引用する請求項には重複もない。
したがって、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
ク 訂正事項8について
上記2(8)のとおり、訂正事項8は、訂正事項8-1、及び、8-2からなるものである。
また、訂正事項8-1は、要するに、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項9に
「車両の補修塗装を行う際に用いられる、請求項1~8のいずれかに記載の方法。」
と記載されているところ、引用する請求項から請求項4を削除して、引用する請求項を、請求項1~3、5~8に限定して、本件訂正後の請求項9とする訂正であり、
訂正事項8-2は、引用する請求項を、請求項4、14~16に変更して(要するに、本件訂正前の請求項4、及び、請求項4を直接又は間接的に引用するものに限定して)、新たな請求項17とする訂正である。
そうすると、訂正事項8-1、8-2は、いずれも引用する請求項を一部削除することを目的とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件訂正後の請求項9及び17がそれぞれ引用する請求項には重複もない。
したがって、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
ケ 訂正事項9について
上記2(9)のとおり、訂正事項9は、訂正事項9-1~9-3からなるものである。
また、訂正事項9-1の内容は、実質的に訂正事項1-1と同じものであるから、訂正事項1-1(上記ア(ア)を参照。)と同様の理由により、また、訂正事項9-2の内容は、実質的に訂正事項1-2と同じものであるから、訂正事項1-2(上記ア(イ)を参照。)と同様の理由により、また、訂正事項9-3の内容は、実質的に訂正事項1-5と同じものであるから、訂正事項1-5(上記ア(オ)を参照。)と同様の理由により、訂正事項9-1~9-3は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
コ 訂正事項10について
上記2(10)のとおり、訂正事項10は、訂正事項10-1~10-3からなるものである。
また、訂正事項10-1の内容は、実質的に訂正事項1-1と同じものであるから、訂正事項1-1(上記ア(ア)を参照。)と同様の理由により、また、訂正事項10-3の内容は、実質的に訂正事項1-2と同じものであるから、訂正事項1-2(上記ア(イ)を参照。)と同様の理由により、訂正事項10-1、10-3は、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
また、訂正事項10-2の内容は、実質的に訂正事項3-2と同じものであるから、訂正事項3-2(上記ウ(イ)を参照。)と同様の理由により、訂正事項10-2は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであり、かつ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことも明らかであって、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合する。
(3)独立特許要件について
本件特許異議申立においては、本件訂正前の全ての請求項1~13に対して特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1~10によるいずれの訂正についても、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(4)別の訂正単位とする求めについて
上記2のとおり、訂正後の請求項4、14~17については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがなされている。
(5)小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項第1、2、4号に掲げる事項を目的とするものであり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5、6項の規定に適合するものである。
また、訂正後の請求項4、14~17は、当該請求項についての訂正が認められるので、他の請求項とは別の訂正単位とされるものである。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5~9〕、〔4、14~17〕、〔10~13〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正請求は認められたので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~17に係る発明(以下、項番にしたがって「本件発明1」などといい、まとめて、「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲の請求項1~17に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法であって、下記S101~S111工程を含む、前記塗料の製造方法。
(S101)前記データベー スに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する工程
(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程
(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程であって、目標色彩データXtが、光輝性顔料を含まない塗膜の色彩データである工程
(S104)前記目標色彩データXtを、前記コンピュータに入力する工程
(S105)コンピュータを用いた検索により、前記目標色彩データXtに近似する検索色彩データXn1及び検索色彩データXn1に対応する近似配合組成データYn1を得るとともに、前記目標色彩データXtと前記検索色彩データXn1とを比較し合否を判定する工程
(S106)前記S105工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデルを用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程
(S107)前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測されるXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程
(S108)前記S105~S107工程のいずれかで合格した際の、合格配合組成データYC1を得る工程
(S109)前記合格配合組成データYC1に基づき、実候補塗料CMCiを調製し、該実候補塗料CMCiの塗装板を得て、実測色彩データXCiを取得する工程
(S110)前記色彩データXtと前記実測色彩データXCiとの比較、及び/又は、前記目標とする色彩と前記実候補塗料CMCiの塗装板の色彩との比較により、合否を判定する工程
(S111)前記S110工程において合格しない場合に、前記S106~S110工程を繰り返す工程
【請求項2】
1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法であって、下記S101~S111工程を含む 、前記塗料の製造方法。
(S101)前記データベー スに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する工程
(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程
(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程であって、目標色彩データXtが、光輝性顔料を含む塗膜の色彩データである工程
(S104)前記目標色彩データXtを、前記コンピュータに入力する工程
(S105)コンピュータを用いた検索により、前記目標色彩データXtに近似する検索色彩データXn1及び検索色彩データXn1に対応する近似配合組成データYn1を得るとともに、前記目標色彩データXtと前記検索色彩データXn1とを比較し合否を判定する工程
(S106)前記S105工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程
(S107)前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測されるXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程
(S108)前記S105~S107工程のいずれかで合格した際の、合格配合組成データYC1を得る工程
(S109)前記合格配合組成データYC1に基づき、実候補塗料CMCiを調製し、該実候補塗料CMCiの塗装板を得て、実測色彩データXCiを取得する工程
(S110)前記色彩データXtと前記実測色彩データXCiとの比較、及び/又は、前記目標とする色彩と前記実候補塗料CMCiの塗装板の色彩との比較により、合否を判定する工程
(S111)前記S110工程において合格しない場合に、前記S106~S110工程を繰り返す工程
【請求項3】
前記S111工程において合格しない場合において、前記予測色彩データXniと前記実測色彩データXCiの差分Δを補正係数αとしてコンピュータに入力した後に、前記S106~S111工程が繰り返される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いる塗膜の色彩データを予測する方法であって、下記S201~S207工程を含む、前記方法。
(S201)前記データベースに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する工程
(S202)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程
(S203)塗膜の色彩データを予測する塗料CMtの配合組成データYCMを得る工程
(S204)前記配合組成データYCMを、前記コンピュータに入力する工程
(S205)必要に応じて、コンピュータを用いた検索により、前記配合組成データYCMに対応する検索色彩データXn1を取得する工程
(S206)前記S205工程で対応する検索色彩データXn1が検索されなかった場合、又は、前記S205工程を行わなかった場合において、前記配合組成データYCMから、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル、又は、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデルと前記人工知能モデル以外の予測式とを用いて、予測色彩データXm1を得る工程
(S207)必要に応じて、前記塗料CMtを塗装した塗装板の実測色彩データXCMを取得し、前記予測色彩データXm1と比較する工程
【請求項5】
1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法であって、下記S101~S111工程を含む、前記塗料の製造方法。
(S101)前記データベー スに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する工程
(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
(i)光輝性顔料を含まない組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
(ii)光輝性顔料を含む組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
を含み、
前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程
(S103)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る工程
(S104)前記目標色彩データXtを、前記コンピュータに入力する工程
(S105)コンピュータを用いた検索により、前記目標色彩データXtに近似する検索色彩データXn1及び検索色彩データXn1に対応する近似配合組成データYn1を得るとともに、前記目標色彩データXtと前記検索色彩データXn1とを比較し合否を判定する工程
(S106)前記S105工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程
(S107)前記S106工程において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測されるXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する工程を、合格するまで繰り返す工程
(S108)前記S105~S107工程のいずれかで合格した際の、合格配合組成データYC1を得る工程
(S109)前記合格配合組成データYC1に基づき、実候補塗料CMCiを調製し、該実候補塗料CMCiの塗装板を得て、実測色彩データXCiを取得する工程
(S110)前記色彩データXtと 前記実測色彩データXCiとの比較、及び/又は、前記目標とする色彩と前記実候補塗料CMCiの塗装板の色彩との比較により、合否を判定する工程
(S111)前記S110工程において合格しない場合に、前記S106~S110工程を繰り返す工程
【請求項6】
前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
組成物中の光反射性顔料の含有量、光干渉性顔料の含有量、配向制御剤の含有量、組成物中の光反射性顔料の各色相別の含有量、光干渉性顔料の各色相別の含有量、着色剤の各色相別の含有量、及び、それらの含有量の2つ以上の合計から選ばれる1種類以上のデータ、及び/又は、
組成物に含まれる色材の形状データ、
を学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程を含む、請求項1~3、5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記判定する工程で合格しない場合において、人工知能モデル以外の予測式を用いるように切り替える工程が前記繰り返す工程に含まれる、請求項1~3、5、6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記データベースに登録された1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXは、実測データ、又は、実測データと実測データに基づき算出されたデータとを含む、請求項1~3、5~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
車両の補修塗装を行う際に用いられる、請求項1~3、5~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備えるコンピュータ調色システムであって、下記手段S301~S311を含む、前記システム。
(S301)前記データベースに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する手段
(S302)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する手段であって、前記前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である手段
(S303)目標とする色彩の目標色彩データXtを得る手段
(S304)前記目標色彩データXtを、前記コンピュータに入力する手段
(S305)コンピュータを用いた検索により、前記目標色彩データXtに近似する検索色彩データXn1及び検索色彩データXn1に対応する近似配合組成データYn1を得るとともに、前記目標色彩データXtと前記検索色彩データXn1とを比較し合否を判定する手段
(S306)前記手段S305において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測される候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する手段
(S307)前記手段S306において合格しない場合に、コンピュータを用いて目標色彩データXtを与えると予測されるXtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYniを得た後、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル及び/又は前記人工知能モデル以外の予測式を用いて、候補配合組成データYniから予測される予測色彩データXniを得るとともに、前記色彩データXtと前記予測色彩データXniとを比較し、合否を判定する手段を、合格するまで繰り返す手段
(S308)前記手段S305~S307のいずれかで合格した際の、合格配合組成データYC1を得る手段
(S309)前記合格配合組成データYC1に基づき、実候補塗料CMCiを調製し、該実候補塗料CMCiの塗装板を得て、実測色彩データXCiを取得する手段
(S310)前記色彩データXtと前記実測色彩データXCiとの比較、及び/又は、前記目標とする色彩と前記実候補塗料CMCiの塗装板の色彩との比較により、合否を判定する手段
(S311)前記手段S310において合格しない場合に、前記手段S306~S310を繰り返す手段
【請求項11】
1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いる塗膜の色彩データを予測するシステムであって、下記手段S401~S407を含む、前記システム。
(S401)前記データベースに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する手段
(S402)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する手段であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である手段
(S403)塗膜の色彩データを予測する塗料CMtの配合組成データYCMを得る手段
(S404)前記配合組成データYCMを、前記コンピュータに入力する手段
(S405)必要に応じて、コンピュータを用いた検索により、前記配合組成データYCMに対応する検索色彩データXn1を取得する手段
(S406)前記手段S405で対応する検索色彩データXn1が検索されなかった場合、又は、前記手段S405を行わなかった場合において、前記配合組成データYCMから、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル、又は、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデルと前記人工知能モデル以外の予測式とを用いて、予測色彩データXm1を得る手段
(S407)必要に応じて、前記塗料CMtを塗装した塗装板の実測色彩データXCMを取得し、前記予測色彩データXm1と比較する手段
【請求項12】
前記システムが、得られた配合組成データに基づき自動調合して調色配合を行う自動調合手段を備えている、請求項10又は11に記載のシステム。
【請求項13】
請求項10~12のいずれかに記載のシステムを制御し動作させるためのアプリケーションソフトウェア。
【請求項14】
1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いる塗膜の色彩データを予測する方法であって、下記S201~S207工程を含む 、前記方法。
(S201)前記データベースに登録されたデータを用い、学習用データを前記コンピュータに入力する工程
(S202)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
(i)光輝性顔料を含まない組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
(ii)光輝性顔料を含む組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、
を含み、
前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程
(S203)塗膜の色彩データを予測する塗料CMtの配合組成データYCMを得る工程
(S204)前記配合組成データYCMを、前記コンピュータに入力する工程
(S205)必要に応じて、コンピュータを用いた検索により、前記配合組成データYCMに対応する検索色彩データXn1を取得する工程
(S206)前記S205工程で対応する検索色彩データXn1が検索されなかった場合、又は、前記S205工程を行わなかった場合において、前記配合組成データYCMから、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデル、又は、前記少なくとも1種の学習した人工知能モデルと前記人工知能モデル以外の予測式とを用いて、予測色彩データXm1を得る工程
(S207)必要に応じて、前記塗料CMtを塗装した塗装板の実測色彩データXCMを取得し、前記予測色彩データXm1と比較する工程
【請求項15】
前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、
組成物中の光反射性顔料の含有量、光干渉性顔料の含有量、配向制御剤の含有量、組成物中の光反射性顔料の各色相別の含有量、光干渉性顔料の各色相別の含有量、着色剤の各色相別の含有量、及び、それらの含有量の2つ以上の合計から選ばれる1種類以上のデータ、及び/又は、
組成物に含まれる色材の形状データ、
を学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程を含む、請求項4又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記データベースに登録された1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXは、実測データ、又は、実測データと実測データに基づき算出されたデータとを含む、請求項4、14、15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
車両の補修塗装を行う際に用いられる、請求項4、14~16のいずれかに記載の方法。」
第4 取消理由の概要
当審が令和3年9月22日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由は、以下の取消理由1、取消理由2、及び、取消理由4であり、その概要は下記1~3のとおりである。
<取消理由1>
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
<取消理由2>
本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
<取消理由4>
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~17に係る発明は、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
1 取消理由1の概要
取消理由1は、要するに、本件発明の「人工知能モデル」について、「人工知能モデル」に該当するものと該当しないものとを区別する基準がどのようなものか明確でない。したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるというもの(以下、「取消理由1-1」という。)、及び、
S106工程とS107工程は、全く同じ工程であり(請求項の記載からは差異は認められない。また、令和3年5月12日付けの訂正請求によってS106工程及びS107工程の記載はなんら訂正されていない。)、両者の合否の判定は常に一致するはずであり、また、いずれの工程を何度繰り返し行っても常に同じ合否の判定が出るはずであり、また、同じ候補配合組成データYniに対して、何度繰り返しS110工程を行ってもその合否判定は常に同じになるはずである。
以上を勘案すると、S106工程で不合格の場合はS107工程を(何度繰り返し)行っても合格とならないはずであるし、S110工程で不合格になった場合にS106工程(S107工程)を再度行っても再度同じ候補配合組成データYniが得られるだけなので、その後再度S110工程を行っても合格判定が出ることもあり得ない。
しかしながら、S107工程及びS110工程は、必ず合格判定が出ることを要するものであるから、以上のとおりであるにもかかわらず、S107工程及びS110工程において必ず合格判定が出るのだとすると、S106工程、S107工程、及び、S110工程は、同じ条件に対する判定が合格であったり不合格であったりする非理論的な工程であり、したがって、本件発明は明確ではない。したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるというもの(以下、「取消理由1-2」という。)である。
2 取消理由2の概要
当審が令和3年3月10日付けで通知した取消理由2は、要するに、本件発明1が解決しようとする課題は、「光学特性の予測が難しい光輝性の色彩を含む、多種多様な色彩の塗色を得るための塗料の製造方法であって、作業者の熟練度によらず、少ない試作回数で調色を終了させることができるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法を提供すること」である。
また、本件発明1は、S105~S107工程のいずれかで合否判定が合格になることを要するものであるが、S106工程において不合格となった場合に行われるS107工程は、S106工程と同じ工程なので、何度繰り返し行っても判定が合格になることはありえないし、S110工程で不合格になった場合にS106工程(S107工程)を再度行っても再度同じ候補配合組成データYniが得られるだけなので、その後再度S110工程を行っても合格判定が出ることはあり得ない。
したがって、本件発明1は、合格判定が出ない態様(所定の塗料を製造できないため、その課題を解決することができない態様)を包含していると認められる、また、本件発明2~17についても同様の理由によりその課題を解決することができない態様を包含していると認められる。したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるというものである。
3 取消理由4の概要
取消理由4は、要するに、刊行物等として、特開平10-324829号公報(特許異議申立人藤江桂子が提出した甲第1号証。以下、「甲1」という。)を引用し、本件発明は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである、というものである。
第5 当審の判断
1 取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由について
(1)取消理由1-1について
上記第2のとおり、本件訂正請求が認められた結果、本件発明に係る「人工知能モデル」は、「配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種」に限定されたので、本件発明に係る「人工知能モデル」に該当するか否かの基準(定義)が明確になった。
また、一般に人工知能とは、データの入力層と出力層を備え、入力層と出力層の関係を学習用データによってモデル化して使用するものを意味する技術用語であり、上記定義は、「人工知能モデル」という表記とも矛盾しないと認められる。
なお、特許異議申立人は、要するに、データの入力層と出力層の処理要素の数がそれぞれ1である場合が含まれていると解せること、したがって、線形回帰やファジイ理論を用いるものが含まれるのか否かが依然として明確ではないと主張する(令和3年12月22日付け意見書3頁下から6行~6頁末行)。
しかしながら、線形回帰やファジイ理論を用いるものであっても、本件発明では、入力層と出力層の関係が学習用データによってモデル化されるものであることが特定されており、「人工知能モデル」に該当するか否かは明確である。たとえば、線形回帰における回帰直線が、学習用データによってモデル化されるものであれば人工知能モデルであり、そうでなければ人工知能モデルでないことになる。また、ファジィ推論のルールが学習用データによってモデル化されるものであれば人工知能モデルであり、そうでなければ人工知能モデルでないことになる。
したがって、取消理由1-1によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。
(2)取消理由1-2について
上記第2のとおり、本件訂正請求が認められた結果、本件発明1に係る「S107工程」で得られる「候補配合組成データYni」は、「XtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYni」となった。
そうすると、「S107工程」で得られる「候補配合組成データYni」は、直前に行われたS106工程あるいはS107工程で得られた「候補配合組成データYni」とは異なるものであり、かつ、「XtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分」が追加されているのであるから、直前に行われたS106工程あるいはS107工程で不合格と判定された場合であっても、合格と判定される可能性がより高いことは明らかであり、したがって、S106工程、S107工程、及び、S110工程が、同じ条件に対する判定が合格であったり不合格であったりする非理論的な工程であるとはいえない。
よって、取消理由1-2によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。
(3)取消理由2について
上記第2のとおり、本件訂正請求が認められた結果、本件発明1に係る「S107工程」で得られる「候補配合組成データYni」は、「XtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分を追加してXtに近づけた次の候補配合組成データYni」となった(直前に行われたS106工程あるいはS107工程で得られる「候補配合組成データYni」とは異なるものとなった)ので、直前に行われたS106工程あるいはS107工程で不合格と判定された場合であっても、「S107工程」で得られる判定がこれとは異なるも(合格)となる可能性があることは明らかであるし、S107工程を繰り返すたびに「XtとXniの誤差を減らす方向に作用する成分」が追加されるのであるから、そのたびに合格と判定される可能性が高まっていくことも明らかである。そして、以上によれば、本件発明1は、いつか必ず合格の判定が得られるものであるといえる。
そうすると、本件発明1は、合格判定が出ない態様を包含しているとはいえないし、本件発明2~17についても同様であるから、取消理由2によって本件特許を取り消すべきものとすることはできない。
(4)取消理由4について
ア 甲1に記載されている事項
特開平10-324829号公報(甲1)には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車補修用塗料の調色装置に関する。」
「【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述の現状に鑑み、光輝材を含有しない塗色のみならず、光輝材を含有する塗色についても、削減された工程数で、熟練者によらずとも短時間で高精度に補修塗料の調色をすることが可能である自動車補修用塗料の調色装置を提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明は、コンピュータ、カラー表示装置、複数の受光角で測色することができる分光光度計及び電子天秤からなる自動車補修用塗料の調色装置であって、前記調色装置は、自動車補修用塗料の調色計算をおこなうことができる調色計算機構、色彩データファイル、並びに、通信回線を介してデータベースサーバー中の少なくとも塗料用配合材の基礎データ及び自動車上塗り塗料の基本配合情報データを参照することができるデータベース参照機構を前記コンピュータに搭載しており、与えられた計算指示に即応して、前記コンピュータから、前記分光光度計の測色データ及び前記色彩データファイル中の色彩データに基づいて前記調色計算機構により光輝材を含有するか又は含有しない自動車補修用塗料の調色計算結果を前記カラー表示装置並びに前記電子天秤に出力することができるとともに、通信回線を介してデータベースサーバーに接続することにより、少なくとも塗料用配合材の基礎データ及び自動車上塗り塗料の基本配合情報を参照して前記調色計算に使用することができることを特徴とする自動車補修用塗料の調色装置である。以下に本発明を詳述する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の自動車補修用塗料の調色装置は、典型的には図2に示すように、パーソナルコンピュータ1、カラー表示装置2、多角度分光光度計3及び電子天秤4からなる。上記調色装置は、調色計算機構、色彩データファイル、並びに、通信回線5を介してデータベースサーバー6中の少なくとも塗料用配合材の基礎データ及び自動車塗料の基本配合情報データを参照することができるデータベース参照機構を上記パーソナルコンピュータ1に搭載している。以下、これらについて詳細に説明する。
【0017】(1)調色計算機構
本発明における調色計算の過程は、図3に示すブロック図により典型的に表すことができる。まず、目標色の多角度分光反射率を測定し(過程1)、次に、図示しない色彩データファイルから色材基礎データ分光反射率を読み込んで、着色に供する複数の着色材についての配合を求める(過程2)。光輝材を含有しない塗料については、この配合結果に基づく予測反射率が目標色の所定範囲内に納まるか否かを判定し(過程5)、所定範囲内に納まるように必要な修正計算を繰り返した後出力される(過程6)。一方、着色材と光輝材とを含有する塗料については、着色材の配合を求め(過程2)、更に、光輝材を添加した効果を計算にいれて(過程3)、着色材や光輝材の配合及び塗装条件を変えた複数の塗板について測色した複数の受光角における分光反射率データを用いてファジイ推論により補正し(過程4)、この予測反射率を目標色の反射率と比較し(過程5)、その結果、目標色との色差が所定値以上であれば、所定値内に納まるように修正計算を繰り返した後出力される(過程6)。
【0018】目標とする塗色がソリッド系塗料のものである場合
目標とする塗色がソリッド系塗料のものである場合、補修対象自動車の目標色の分光反射率を測定し、後に説明する色彩データファイルから基礎データとなる着色材塗板の分光反射率を読み込んで、着色に供する複数の着色材をある特定の配合で混合した場合の予測分光反射率を、以下に示すクベルカ・ムンクの光学濃度式を用いて予測計算をしつつ色彩が一致するように配合計算をする。この予測分光反射率を目標色の反射率と比較し、目標色との色差が所定値以上であれば、所定値内に納まるように修正計算を繰り返す。
【0019】この場合において、クベルカ・ムンクの光学濃度式は、
(K/S)λ=(1-Rλ)2/2Rλ (0<Rλ<1)
で表される。式中、(K/S)λは、波長λにおけるクベルカ・ムンクの光学濃度を表し、Rλは、波長λにおける反射率を表す。上記クベルカ・ムンクの光学濃度式により、上記色彩データファイル中の基礎データである分光反射率を、着色層の吸収係数Kと散乱係数Sの比で示される光学濃度K/Sに変換し、ダンカンの混色理論式である2定数法により混合時の光学濃度を求め、更にこれを反射率に変換して所定配合の場合の予測分光反射率を求めることができる。
【0020】この際、予測精度をより向上させるために、サンダーソンの補正式を用いて樹脂層と空気層との界面で生じる影響を補正し、理想状態の反射率に変換した後、上記混色理論式を用いることができる。
【0021】上記修正計算過程においては、ニュートン・ラプソン法による反復計算手法を使用することができ、収束計算を、色彩値XYZ、L*a*b*等を利用して目標との差を評価しつつ行うメタメリック法や、目標反射率との差の2乗和を評価しつつ行うアイソメリック法等により行うことができる。
【0022】以上の過程を経て、目標とする塗色がソリッド系塗料のものである場合に、目標色と一致する補修用塗料を調色することができる。」
「【0023】目標とする塗色がメタリック・パール系塗料のものである場合
一方、目標とする塗色がメタリック・パール系塗料のものである場合、複数の着色材と光輝材とからなる塗料の調色をする必要がある。この際、目標色と目標光輝感とがともに目標塗色と一致するようにするために、着色材と光輝材との配合比は、(i)複数の受光角において測色可能な分光光度計を用いて、照射角と受光角との複数の組み合わせに対する目標塗色の分光反射率を測色し、(ii)この分光反射率分布と一致するように、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算しつつ、着色材と光輝材との配合比を計算する。」
「【0026】上記(ii)の場合において、着色材と光輝材とをある所定比率で混合した場合の予測分光反射率を計算するには、予め、光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材について測色された基礎データ分光反射率Rgを、コンピュータの記憶装置に格納しておく。これらの基礎データは、
Rb=Rb(θ,λ,x)
Rg=Rg(θ,λ,x,y)
で表される。式中、θは、受光角θを表し、xは、光輝材の濃度を表し、yは、着色材の濃度を表し、λは、波長を表す。
【0027】本発明においては、上記光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材について計測された基礎データ分光反射率Rgは、上記迷光に対する補正や、塗料を形成する樹脂の表面反射、樹脂の内部鏡面反射率の影響に対する補正を施した値であることが好ましい。
【0028】また、光輝材含有塗色の分光反射率Rb、Rgは、受光角が正反射に近い条件では、分光測色の測定値が容易に100%を超えてしまう場合があるが、このために、本発明においては、配向-トラップモデルを適用して上記Rb、Rgを定めることが好ましい。すなわち、塗料層内部では、照射光に対して、光輝材の形状や塗装条件によって様々な角度に散乱反射される。また、光輝材の空隙に入射した照射光は、空隙内でトラップされる。これらの要因を考慮にいれることにより、理想状態における光輝材の分光反射率Rbtrueは、
Rbtrue(θ,λ,x)=I0(θ,λ)/I1(λ)=C(θ,λ)×〔1-Tr(λ,x)〕×Rm(θ,λ)
となる。式中、I0(θ,λ)は、波長λ、受光角θにおける観察光の受光エネルギーを表し、I1(λ)は、波長λにおける観察光の照射エネルギーを表し、C(θ,λ)は、光輝材による光の散乱配向関数を表し、Tr(λ,x)は、光輝材濃度xにおける観察光のトラップ効果を表し、Rm(θ,λ)は、光輝材の固有反射率を表す。上記Rgについても、同様に理想状態における分光反射率Rgtrueを求めることができる。
【0029】なお、複数の光輝材を配合した場合の分光反射率は、以下のようにして、理想状態における光輝材の分光反射率Rbtrueから、複数の光輝材を配合した場合の分光反射率Rbtrue,Mとして求めておくことが好ましい。すなわち、まず、標準の光輝材に対する相対的な値として、配向関数Cs(θ,λ)とトラップ効果Trs(λ,x)を求めておき、これらを用いて標準の光輝材による理想状態の反射率Rtrue,S(θ,λ,x)から標準の光輝材の固有反射率を求める。
Rms(θ,λ,x)=Rtrue,S(θ,λ,x)/Cs(θ,λ)×〔1-Trs(λ,x)〕
式中、Rms(θ,λ,x)は、標準の光輝材の固有反射率を表す。そして、これに基づいて、n種の光輝材を配合した場合の分光反射率を以下の式から求める。
Rbtrue,M(θ,λ,x1 ,x2 ・・・xn )=Σ〔Csj(θ,λ,xj)・xj〕/Σxj×〔1-Σ〔Trs,j(λ,xj)・xj〕/Σxj〕×Σ〔Rms,j(θ,λ,xj)・xj〕/Σxj
式中、Rbtrue,M(θ,λ,x1,x2・・・xn)は、n種の光輝材をx1、x2・・・xnの配合で配合した場合の分光反射率を表す。和は、jについてnまでとる。その他の記号は、上記に準じる。
【0030】かくして、上述の補正等により求めた光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材についての基礎データ分光反射率Rgから、着色材による吸収率Aは、
A=Rg(θ,λ,x,y)-Rb(θ,λ,x)
となる。透過性が高くて散乱能の低い着色材の場合、ランベルト-ベールの法則が成り立つと考えてよく、
Abs(θ,λ,x,y)=-log(T)
である。式中、式中、Abs(θ,λ,x,y)は、光輝材と混合した着色材についての吸光度スペクトルを表す。Tは透過率であり、吸収率AとT=A-1の関係がある。このとき、塗料層内の光路長及び着色材の固有吸光度スペクトルを考慮することにより、
Abs(θ,λ,x,y)=L(θ,x)・y・Abs(λ)
がなりたつ。L(θ,x)は、塗料層内の光輝材を考慮した光路長を表す。Abs(θ,λ,x,y)は、上記と同様であり、Abs(λ)は、着色材の固有吸光度スペクトルを表す。上記L(θ,x)は、光輝材について、標準的な着色材を用いて予め求めておく。
【0031】上記考察に基づいて、n種類の光輝材とm種類の着色材を配合した場合の吸光度スペクトルは、
AbsM(θ,λ,x1,x2・・・xn,y1,y2・・・ym)=ΣLi(θ,xi)/Σxi・Σ〔yj・Absj(λ)〕
となる。式中、符号の意味は上記に準じる。和は、iについてnまで、jについてmまでとる。予測分光反射率は、従って、上記吸光度スペクトルAbsM(θ,λ,x1,x2・・・xn,y1,y2・・・ym)から上記ランベルト-ベールの法則を考慮して求めることができる。図3中、2の過程がこれを表す。
【0032】ところで、光輝材の添加量によって乱反射の程度が異なり、各受光角における分光反射率は変化する。通常、着色層内部に存在する光輝材の密度が高い程着色層内部の単位面積当たりの散乱能が高いので、光輝材による乱反射が増加し、従って光輝感が増大する。光輝材の添加量が充分多くなり、散乱能が飽和に達したなら、光輝材を更に添加してももはや光輝感は増加しない。従って、光輝材の添加量に対する光輝感の変化の関係は、飽和に達するまでは比例的であり、一次微分が正で二次微分が負の単調増加関数となる。そこで、光輝材の添加量を徐徐に増加させたときの各照射角と各受光角における分光反射率の基礎データを求めておき、下記式に示すように、この光輝材の濃度xと光輝感を表すフロップ値Fとの関係fによって、光輝材の濃度xに対するフロップ値Fを推定する。
F=f(x)
式中、fは、フロップ値の推定関数である。図3中、3の過程がこれを表す。
【0033】この場合、フロップ値の推定関数は、予め離散的に測定した光輝材の添加量に対するプロップ値を対応づけて求める。この対応づけは、例えば、一次補間等によることができる。この際、補間の精度を向上させるために、フロップ値Fを光輝材の濃度xに対して一次微分が正で二次微分がゼロに近い単調増加関数によってフロップ値F1変換しておくと、この変換されたフロップ値F1は、光輝材の添加量に対して比例関係がよく成立するので、複数の光輝材を添加する場合に各変換されたフロップ値F1の加法性が成立しやすく、従って、複数の光輝材を添加する場合のフロップ値の推定がより正確になるので好ましい。
【0034】かくして、本発明においては、着色材と光輝材とからなる塗料の配合を求めるに際して、光輝材の添加量の変化によって生じる各受光角における分光反射率の変化を考慮しつつ、目標分光反射率及び目標フロップ値となる配合を予測計算することができる。
【0035】本発明においては、このようにして理論的に求めた予測計算結果を、更に、ファジイ推論を用いた計算手法を導入して補正することにより、色合わせの精度の向上を実現する。この手法においては、予測分光反射率の計算を行う場合に、予め、着色材や光輝材の配合及び塗装条件を変えた複数の塗板について測色した変角分光反射率や多角度分光反射率をコンピュータのメモリ内に格納し、上記理論的に計算した予測結果との差を補正して色合わせの精度を向上させる計算手段として、上記格納したデータに基づいてファジイ推論を使用する。図3中、4の過程がこれを表す。以下、この過程を詳述する。」
「【0038】図4に本発明におけるファジイ推論のブロック図を示す。ファジイ推論においては、曖昧性をファジイ集合論におけるメンバーシップ関数を用いて定義する。推論に応用する場合には、このメンバーシップ関数を用いてファジイプロダクションルールを定義する。このファジイプロダクションルールは、前件部と後件部とからなり、一般的には、下記式で表される。下記式は、簡単のため、前件部2、後件部1の場合について示す。
R1:if a1 is Ai1 and a2 is ai2 then b isBi(i=1,2・・・n)
式中、Riは、i番目のファジイプロダクションルールを表し、a1は、前件部1の概念を表し、a2は、前件部2の概念を表し、Ai1は、前件部1のi番目のメンバーシップ関数(ファジイラベル)を表し、Ai2は、前件部2のi番目のメンバーシップ関数(ファジイラベル)を表し、bは、後件部の概念を表し、Biは、後件部のi番目のメンバーシップ関数(ファジイラベル)を表し、nは、メンバーシップ関数(ファジイラベル)の数を表す。上記補正関数Rcorを求める場合には、ファジイプロダクションルールの前件部は、着色材の種類、光輝材の種類及び膜厚からなり、後件部は、補正値となる。
【0039】前件部のファジイラベルは、着色材、白顔料、光輝材については、「多い」、「少ない」の表現であり、それに程度が加わる。塗膜の厚さtについては、実測値であってもよく、又は、適当なインデックス、例えば、バーコーターの番号等であってもよい。想定される膜厚の範囲を想定し、これを等間隔又は不等間隔に分割してファジイラベルを設定する。光輝材については、最大添加量を想定して、これを等間隔又は不等間隔に分割してファジイラベルを設定することが好ましい。着色材と白顔料については、これらの配合量の合計は常に100であるので、着色材についてのみ注目すればよい。着色材については、全ての着色材の合計配合量と、各着色材の配合比とを表す座標系で配合情報を表すことができる。例えば、着色材が3種類の場合は、合計配合量に対応する座標軸と、各着色材の、合計配合量に対する配合比を表す座標軸からなる三角柱座標空間内に対応付けることができる。そして、配合比の合計は0~100の範囲内であるから、この間をn分割すればよい。この場合、淡色領域では分割を密に、濃色領域では分割を疎にするように、指数関数的に分割間隔を変化させることが好ましい。
【0040】後件部のファジイラベルは、ある条件で作成された塗板の実測分光反射率から計算される光学濃度と、作成条件から理論的に計算された光学濃度との差の程度を表すものである。例えば、理論計算により求めた波長λにおける光学濃度と実測の波長λにおける光学濃度との比の値をとり、この値の想定範囲を等間隔又は不等間隔にn分割して後件部のメンバーシップ関数を規定する。この場合において、比の値が1.0付近では分割が密になり、想定範囲の最小値及び最大値付近では疎になるように分割することが好ましい。」
「【0042】ファジイ推論においては、前件部の各概念について目標値と検索値との差からメンバーシップ関数により、各概念をファジイ化し、次に、予め決めておいたファジイプロダクションルールを用いて、例えば、着色材がやや多いなら、着色材をやや減らす等のように、状態に対する対策をどのようにとればよいかを決定する。これから、後件部のメンバーシップ関数を引き当てる。そして、引き当てられた関数から着色量の修正量を決定する。この過程を非ファジイ化という。本発明においては、予め作成された塗板の作成条件とその実測反射率とを上記コンピュータのメモリー内に記憶させ、この情報を用いて正確な後件ファジイ出力が得られるように、後件部のメンバーシップ関数の調整とファジイプロダクションルールの調整をする。この場合、単純高さ法による非ファジイ化手法を用いて計算を行う。単純高さ法においては、メンバーシップ関数は、後件部の概念bに対する広がりを持たず、b軸上の位置とその高さのみの関数となる。」
「【0056】本発明においては、上記コンピュータには、更に、電子天秤計量支援機能、色彩シミュレーション機能、計算候補選択機能、色彩測定機能、色差測定機能、製品ロット管理機能、オーサリング機能、リモートメンテナンス機能等を付与するこができる。上記電子天秤計量支援機能は、電子天秤連携計量機能、電子天秤連携色彩シミュレーション機能、データファイル登録機能等からなるものであり、上記学習用実績データファイルの構築を促進することができる。」
「【0060】上記色彩測定機能は、メタリック・パール系の塗色を測光するための分光光度計、例えば、多角度分光光度計、変角分光光度計等による測光を制御するための機能である。上記色差測定機能は、上記調色計算後に、実際に予測配合に基づいて調製した塗料を塗布した塗板と見本とがどの程度一致しているかを確認したり、また、データの再現性をみるためのものである。」
「【0066】本発明の調色装置は、更に、所望により、その他の付属装置、例えば、プリンター、色材の自動供給装置等を装備することができる。
【0067】本発明の調色装置においては、光輝材を含有するか又は含有しない自動車補修用塗料の調色計算をおこなうことができる調色計算機構、及び、色彩データファイルをコンピュータに搭載することにより、計算指示に即応して、例えば、3~60秒程度の応答時間内に、光輝材を含有するか又は含有しない自動車補修用塗料の調色計算結果を出力することができる。また、本発明の調色装置においては、通信回線を介してデータベースサーバーに接続することにより、少なくとも塗料用配合材の基礎データ及び自動車上塗り塗料の基本配合情報を収集して上記調色計算に利用して常に最新のデータを反映させることができ、かつ、コンピュータ上のデータベースを過度に大きなものとすることがないので、記憶装置やCPU等に過度の負担をかけることがなく、通常のパーソナルコンピュータで充分対応することができる。
【0068】また、調色計算機構が、複数の着色材と光輝材とからなる塗料配合を求めるに際して、光輝材の添加によって生じる各受光角における分光反射率の変化を考慮しつつ、目標分光反射率及び目標フロップ値となる配合を予測計算するとともに、着色材や光輝材の配合及び塗装条件を変えて測定した変角分光反射率をコンピュータのメモリ内に格納し、計算した調色結果との差を補正して色合わせの精度を向上させる計算手段として、ファジイ推論を使用するものであるので、例えば、3~4つの受光角における分光測色データを使用しても充分高精度の予測分光反射率を算出することができ、従って、何度も修正計算を繰り返す必要がなく、熟練を要することなしに多様な塗色に対して確実に高精度の塗料配合を求めることができる。このため、従来、1時間程度は必要としていた調合作業時間を、例えば、20分以内程度に短縮することができる。また、クリヤー塗料を塗布しないベース塗膜の測色データから、クリヤー塗膜の塗布した場合の測色データを予測することも可能であるので、クリヤー塗装工程を省くことが可能となり、作業の短縮化に資することができる。
【0069】更に、色彩シミュレーション機能により、秤量中の配合に対応する色彩を瞬時に計算して表示し、目標色と比較表示することで、本来感覚的な作業である調色作業の特性を損なうことなく、目標色にどの程度近づいたかを視覚的に判断してより効率的に塗料配合を実現することができる。」
「【0072】実施例1
パーソナルコンピュータ(CPU166MHz、メモリ32MB、ウインドウズ’95搭載)、液晶フルカラー表示装置、ドッキングステーション及び測色プローブからなる分光光度計(マクベス社製)並びに電子天秤(ザルトリウス社製、最小秤量0.1g、最大秤量7.2kg)をセットし、上記パーソナルコンピュータに、光輝材含有塗料の調色計算をおこなうことができるファジイ推論を使用した調色計算機構、データベース参照機構、及び、光輝材と着色材の色彩データファイルを搭載した。
データベースの作成
光輝材と着色材の色彩データファイルには、表1の着色材及び光輝材について、表1に示す濃度における測色データを搭載した。
【0073】
【表1】
・・・
【0074】また、ファジイ推論のために、18種の実際の塗板についての測色データを実績データとして搭載した。なお、測色は、予め下塗り塗装を施した装板にメタリック系塗料を塗布して得た試料塗板を多角度分光光度計(CE-741、マクベス社製)を使用して、400~700nmを10nm毎に、正反射方向から20°、45°及び110°の受光角について行った。
【0075】カラーマッチングの実行
分光光度計で目標塗色を測色後、分光光度計をドッキングステーションにセットしてデータをコンピュータに入力した後、配合計算指示を与えた。指示後、約10秒で初回計算結果を得た。この計算結果に基づいて電子天秤で秤量して塗料を調製した。この塗料を塗布して目標塗板と同様にして塗板を作成した。この塗板を測色して目標色との色差ΔEを求めた。結果を表2に示した。また、得られた予測配合を表3に示した。次に、この初回計算結果にもとづいて修正計算を行い、指示後、約8秒で第二回目の計算結果を得た。この計算結果に基づいて電子天秤で秤量して塗料を調製した。この塗料を塗布して目標塗板と同様にして塗板を作成した。この塗板を測色して目標色との色差ΔEを求めた。結果を表2に示した。また、得られた予測配合を表3に示した。修正計算後の予想配合は、目標配合と比べた場合の相対誤差が3%以内であった。
【0076】また、上記秤量中の予想配合色を、ハイライト方向、正面方向、シェード方向について目標色とともに、表示装置上に表示して目視により確認した。」
「【図3】
[図:0001386092000001.jpg]
イ 甲1に記載された発明
甲1には、メタリック・パール系塗料(複数の着色材と光輝材とからなる塗料)の調色について、目標色と目標光輝感とがともに目標塗色と一致するようにするために、(i)複数の受光角において測色可能な分光光度計を用いて、照射角と受光角との複数の組み合わせに対する目標塗色の分光反射率を測色すること、(ii)この分光反射率分布と一致するように、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算しつつ、着色材と光輝材との配合比を計算することが記載されている(【0023】)。
また、上記(ii)の場合について、着色材と光輝材とをある所定比率で混合した場合の予測分光反射率を計算するには、予め、光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材について測色された基礎データ分光反射率Rgを、コンピュータの記憶装置に格納しておくこと(【0026】)、
n種類の光輝材とm種類の着色材を配合した場合の吸光度スペクトルは、AbsM(θ,λ,x1,x2・・・xn,y1,y2・・・ym)=ΣLi(θ,xi)/Σxi・Σ〔yj・Absj(λ)〕となること(【0031】)、
このようにして理論的に求めた予測計算結果を、更に、ファジイ推論を用いた計算手法を導入して補正することにより、色合わせの精度の向上を実現すること(【0035】)、
も記載されている。
そうすると、甲1には、上記(ii)の場合における、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算する方法の発明として、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1発明]
「着色材と光輝材との配合から塗膜の予測分光反射率を予測計算する方法であって、
予め、光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材について測色された基礎データ分光反射率Rgを、コンピュータの記憶装置に格納し、
n種類の光輝材とm種類の着色材を配合した場合の吸光度スペクトルを、AbsM(θ,λ,x1,x2・・・xn,y1,y2・・・ym)=ΣLi(θ,xi)/Σxi・Σ〔yj・Absj(λ)〕で予測計算し、
このようにして求めた予測計算結果を、更に、ファジイ推論を用いた計算手法を導入して補正する、
方法。」
また、甲1には、メタリック・パール系塗料(複数の着色材と光輝材とからなる塗料)の調色方法であって、目標色と目標光輝感とがともに目標塗色と一致するようにするために、(i)複数の受光角において測色可能な分光光度計を用いて、照射角と受光角との複数の組み合わせに対する目標塗色の分光反射率を測色すること、及び、(ii)この分光反射率分布と一致するように、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算しつつ、着色材と光輝材との配合比を計算することを含むものであり、さらに、上記(ii)における、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算する方法が、上記甲1発明を用いた方法として、以下の調色方法の発明(以下、「甲1製法発明」という。)及び「調色システム」(以下、「甲1システム発明」という。)が記載されていると認められる。
[甲1製法発明]
「メタリック・パール系塗料(複数の着色材と光輝材とからなる塗料)の調色方法であって、調色について、目標色と目標光輝感とがともに目標塗色と一致するようにするために、以下の(i)、(ii)及び(iii)を含む調色方法。
(i)複数の受光角において測色可能な分光光度計を用いて、照射角と受光角との複数の組み合わせに対する目標塗色の分光反射率を測色すること、
(ii)この分光反射率分布と一致するように、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算しつつ、着色材と光輝材との配合比を計算すること
(iii)上記(ii)の予測計算は、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算する方法であって、予め、光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材について測色された基礎データ分光反射率Rgを、コンピュータの記憶装置に格納し、
n種類の光輝材とm種類の着色材を配合した場合の吸光度スペクトルを、AbsM(θ,λ,x1,x2・・・xn,y1,y2・・・ym)=ΣLi(θ,xi)/Σxi・Σ〔yj・Absj(λ)〕で予測計算し、
このようにして求めた予測計算結果を、更に、ファジイ推論を用いた計算手法を導入して補正するものであること」
[甲1システム発明]
「メタリック・パール系塗料(複数の着色材と光輝材とからなる塗料)の調色システムであって、調色について、目標色と目標光輝感とがともに目標塗色と一致するようにするために、以下の(i)、(ii)及び(iii)を含む調色システム。
(i)複数の受光角において測色可能な分光光度計を用いて、照射角と受光角との複数の組み合わせに対する目標塗色の分光反射率を測色すること、
(ii)この分光反射率分布と一致するように、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算しつつ、着色材と光輝材との配合比を計算すること
(iii)上記(ii)の予測計算は、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算する方法であって、予め、光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材について測色された基礎データ分光反射率Rgを、コンピュータの記憶装置に格納し、
n種類の光輝材とm種類の着色材を配合した場合の吸光度スペクトルを、AbsM(θ,λ,x1,x2・・・xn,y1,y2・・・ym)=ΣLi(θ,xi)/Σxi・Σ〔yj・Absj(λ)〕で予測計算し、
このようにして求めた予測計算結果を、更に、ファジイ推論を用いた計算手法を導入して補正するものであること」
ウ 本件発明1について
(ア)対比・判断
本件発明1と甲1製法発明を対比する。
甲1製法発明は、塗料の製造方法に関するものであり、塗料を調色する際にコンピュータを用いたものであるから、本件発明1と甲1製法発明とは「コンピュータ調色に基づく塗料の製造方法」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1)
「コンピュータ調色」について、本件発明1は「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法であって、下記S101~S111工程を含む、前記塗料の製造方法。・・・(略)・・・(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程・・・(略)・・・(S111)前記S110工程において合格しない場合に、前記S106~S110工程を繰り返す工程」であることが特定されているのに対し、甲1発明は、「メタリック・パール系塗料(複数の着色材と光輝材とからなる塗料)の調色方法であって、調色について、目標色と目標光輝感とがともに目標塗色と一致するようにするために、以下の(i)、(ii)及び(iii)を含む調色方法。(以下略)」である点(下線は当審が付与。以下同じ。)。
ここで、相違点について検討する。
甲1製法発明は、「(i)複数の受光角において測色可能な分光光度計を用いて、照射角と受光角との複数の組み合わせに対する目標塗色の分光反射率を測色すること、(ii)この分光反射率分布と一致するように、着色材と光輝材との配合から予測分光反射率を予測計算しつつ、着色材と光輝材との配合比を計算する」ものである。
また、甲1の【0017】には、「調色計算機構」について、光輝材を含有しない塗料及び光輝材を含有する塗料の両者についての調色計算の過程について記載され、いずれの塗料についても、「目標色の多角度分光反射率を測定し(過程1)」、次に、「色彩データファイルから色材基礎データ分光反射率を読み込んで、着色に供する複数の着色材についての配合を求める(過程2)」ことを備えることが記載されている。
すなわち、甲1製法発明は、「目標塗色の分光反射率」(又は「目標色の多角度分光反射率」)に最も一致する「着色材と光輝材との配合比(又は「複数の着色材についての配合」)」を計算によって求めるものであり、仮に、甲1製法発明において人工知能モデルを採用することができたとしても、その場合は、人工知能モデルの入力層は「着色材と光輝材との配合比(又は「複数の着色材についての配合」)」であり、出力層は「目標塗色の分光反射率」となって、当該入力層と出力層との関係を人工知能モデルで表すものとなる。ここで、「分光反射率」は光輝感を反映するものであり、色彩データのような色彩を表す指標ではないことから、甲1製法発明において、人工知能モデルを採用したものにおいては、本件発明1のような出力層が「色彩データ」となることはない。
そうすると、本件発明1は、甲1製法発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである、ということはできない。
(イ)効果について
本件発明1は、上記相違点1に係る発明特定事項を備えることにより、「光学特性の予測が難しい光輝性の色彩を含む、多種多様な色彩の塗色を得るための塗料の製造方法であって、作業者の熟練度によらず、少ない試作回数で調色を終了させることができるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法が提供される。」(本件特許明細書の段落【0015】)と記載されるように、多種多様な色彩の塗色について、少ない試作回数で調色を終了させることができるという、光輝感に対して調色を行う甲1製法発明からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものである。
(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「引用文献1(当審注:甲1のこと)において複数の着色材と光輝材とからなる塗料配合を求める際にファジー推論を用いるのは、「色彩と光輝感の両者を目標色と一致させる」必要があるため、「多くの試行回数を必要と」する(【0013】)ことから、特に、光輝材を含む場合にファジー推論を用いるとしたものです。すなわち、光輝材を含まない塗料の調色にファジー推論を用いることを排除したものではありません」(令和3年12月22日付け意見書10頁下から3行~11頁3行)と主張するが、仮に、光輝材を含まない塗料の調色にファジー推論を用いたとしても、甲1製法発明は、吸光度スペクトルをファジー推論によって予測計算するものであるから、ファジィ推論による予測計算結果として吸光度スペクトルが得られるものに留まり、本件発明1のような「色彩データ」が得られるものとはならない。したがって、上記主張は、上記判断を左右しない。
(エ)本件発明1についての小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
エ 本件発明2について
本件発明2と甲1製法発明とを対比すると、上記ウで述べたことから明らかなように、両者は、「コンピュータ調色に基づく塗料の製造方法」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点2)
「コンピュータ調色」について、本件発明2は、「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いるコンピュータ調色に基づく塗料の製造方法であって、下記S101~S111工程を含む 、前記塗料の製造方法。・・・(略)・・・(S102)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程・・・(略)・・・(S111)前記S110工程において合格しない場合に、前記S106~S110工程を繰り返す工程」が特定されているのに対し、甲1製法発明は「メタリック・パール系塗料(複数の着色材と光輝材とからなる塗料)の調色方法であって、調色について、目標色と目標光輝感とがともに目標塗色と一致するようにするために、以下の(i)、(ii)及び(iii)を含む調色方法。(以下略)」である点。
ここで、相違点2について検討すると、上記ウ(ア)で述べたように、甲1製法発明において、人工知能モデルを採用したものにおいては、本件発明2のような出力層が「色彩データ」となることはない。また、上記ウ(イ)で述べたように、本件発明2は、甲1製法発明からは予測し得ない、格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとは認められない。
オ 本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2を引用し、さらに限定した発明に該当するところ、本件発明1及び2と同様な理由から、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
カ 本件発明4について
本件発明4と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「塗膜の予測分光反射率」は、本件発明1の「塗膜の色彩データ」に対応するから、両者は、「コンピュータを備える装置を用いた塗膜の色彩データを予測する方法」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点3)
「塗膜の色彩データ」の予測について、本件発明4は、「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いる塗膜の色彩データを予測する方法であって、下記S201~S207工程を含む、前記方法。・・・(略)・・・(S202)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程・・・(略)・・・(S207)必要に応じて、前記塗料CMtを塗装した塗装板の実測色彩データXCMを取得し、前記予測色彩データXm1と比較する工程」が特定されているのに対し、甲1発明は「着色材と光輝材との配合から塗膜の予測分光反射率を予測計算する方法であって、予め、光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材について測色された基礎データ分光反射率Rgを、コンピュータの記憶装置に格納し、 n種類の光輝材とm種類の着色材を配合した場合の吸光度スペクトルを、AbsM(θ,λ,x1,x2・・・xn,y1,y2・・・ym)=ΣLi(θ,xi)/Σxi・Σ〔yj・Absj(λ)〕で予測計算し、このようにして求めた予測計算結果を、更に、ファジイ推論を用いた計算手法を導入して補正する、方法。」である点。
ここで、相違点3について検討すると、上記ウ(ア)で述べたように、甲1発明において、人工知能モデルを採用したものにおいては、本件発明4のような出力層が「色彩データ」となることはない。また、上記ウ(イ)で述べたように、本件発明4は、甲1発明からは予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明4は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとは認められない。
キ 本件発明5について
本件発明5は、要するに、本件発明2において、そのS102工程を「(i)光輝性顔料を含まない組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、(ii)光輝性顔料を含む組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、を含」むものに限定したものに相当する。
また、上記エのとおり、本件発明2は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件発明5も、本件発明2と同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
ク 本件発明6~9について
本件発明6~9は、要するに、本件発明1、2、5を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明に相当する。
また、上記ウ、エ、キのとおり、本件発明1、2、5は、いずれも、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件発明6~9も、本件発明1、2、5と同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
ケ 本件発明10について
本件発明10と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「塗膜の予測分光反射率」は、本件発明10の「塗膜の色彩データ」に対応するから、両者は、「コンピュータを備える装置を用いた塗膜の色彩データを予測する方法」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点4)
「塗膜の色彩データ」の予測について、本件発明10は、「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いる塗膜の色彩データを予測する方法であって、下記S201~S207工程を含む、前記方法。・・・(略)・・・(S202)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である工程・・・(略)・・・(S207)必要に応じて、前記塗料CMtを塗装した塗装板の実測色彩データXCMを取得し、前記予測色彩データXm1と比較する工程」が特定されているのに対し、甲1発明は「着色材と光輝材との配合から塗膜の予測分光反射率を予測計算する方法であって、予め、光輝材の基礎データ分光反射率Rb、及び、光輝材と混合した着色材について測色された基礎データ分光反射率Rgを、コンピュータの記憶装置に格納し、n種類の光輝材とm種類の着色材を配合した場合の吸光度スペクトルを、AbsM(θ,λ,x1,x2・・・xn,y1,y2・・・ym)=ΣLi(θ,xi)/Σxi・Σ〔yj・Absj(λ)〕で予測計算し、このようにして求めた予測計算結果を、更に、ファジイ推論を用いた計算手法を導入して補正する、方法。」である点。
ここで、相違点4について検討すると、上記ウ(ア)で述べたように、甲1発明において、人工知能モデルを採用したものにおいては、本件発明10のような出力層が「色彩データ」となることはない。また、上記ウ(イ)で述べたように、本件発明10は、甲1発明からは予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明10は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとは認められない。
コ 本件発明11について
本件発明11と甲1システム発明とを対比すると、両者は、「コンピュータを備える装置を用いた塗膜の色彩データを予測するシステム」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点5)
「塗膜の色彩データ」の予測について、本件発明11は、「1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データY及び対応する色彩データXが少なくとも登録されたデータベースであって、1種類以上の色材を含有する組成物の配合組成データYと対応する色彩データXとを対応させて登録したデータベースと、該データベースに登録されたデータを利用した色合わせ計算ロジックが作動するコンピュータと、を備える装置を用いる塗膜の色彩データを予測するシステムであって、下記手段S401~S407を含む、前記システム。・・・(略)・・・(S402)前記学習用データを機械学習させ、配合組成データYから色彩データXを推定する人工知能モデルの少なくとも1種を生成する手段であって、前記学習用データを機械学習させることで生成する人工知能モデルは、配合組成データYの入力層及び色彩データXの出力層を備え、入力層と出力層の関係が前記学習用データによってモデル化されるものである人工知能モデルの少なくとも1種である手段・・・(略)・・・(S407)必要に応じて、前記塗料CMtを塗装した塗装板の実測色彩データXCMを取得し、前記予測色彩データXm1と比較する手段」が特定されているのに対し、甲1システム発明は「メタリック・パール系塗料(複数の着色材と光輝材とからなる塗料)の調色システムであって、調色について、目標色と目標光輝感とがともに目標塗色と一致するようにするために、以下の(i)、(ii)及び(iii)を含む調色システム。(以下略)」である点。
ここで、相違点5について検討すると、上記ウ(ア)で述べたように、甲1システム発明において、人工知能モデルを採用したものにおいては、本件発明11のような出力層が「色彩データ」となることはない。また、上記ウ(イ)で述べたように、本件発明11は、甲1システム発明からは予測し得ない格別顕著な作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明11は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に想到することができたとは認められない。
サ 本件発明12、13について
本件発明12、13は、本件発明10、または、11を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明に相当する。
また、上記ク、ケのとおり、本件発明10、11は、いずれも、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件発明12、13も、本件発明10、11と同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
シ 本件発明14について
本件発明14は、要するに、本件発明4のS102工程について、さらに、「前記人工知能モデルの少なくとも1種を生成する工程が、(i)光輝性顔料を含まない組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、(ii)光輝性顔料を含む組成物の1種類以上に係る、各配合組成データY及び各色彩データXを学習用データとして用い、人工知能モデルを学習させる工程と、を含」むことを限定したものに相当する。
また、上記カのとおり、本件発明4は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件発明14も、本件発明4と同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
ス 本件発明15~17について
本件発明15~17は、本件発明4、または、14を直接又は間接的に引用し、さらに限定した発明に相当する。
また、上記カ、シのとおり、本件発明4、14は、いずれも、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められないものである。
そうすると、本件発明15~17も、本件発明4、14と同様の理由により、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。
セ 取消理由4についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1~17は、いずれも、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。したがって、本件発明1~17に係る特許は、いずれも、取消理由4によって取り消すべきものであるとは認められない。
2 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立の理由について
取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立の理由は、以下の(1)~(5)の取消理由A~Eである。
(1)取消理由Aについて
取消理由Aは、要するに、本件発明4、6、8、9、11~13は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである、というものであるが、上記第5 1(4)カ、ク、コ、サのとおり、本件発明4、6、8、9、11~13は、甲1に記載された発明ではない。したがって、それらの発明に係る特許を取消理由Aによって取り消すべきものとすることはできない。
(2)取消理由Bについて
取消理由Bは、要するに、本件発明は、甲1に記載された発明、及び、甲2~4の技術的事項を適用して容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである、というものでる。
(当審の判断)
しかしながら、上記第5 1(4)ウ~スのとおり、本件発明と甲1に記載された発明とを対比すると、本件発明は、いずれも、「色彩データXの出力層を備え」るものであるのに対し、甲1に記載された発明は、そのような事項を備えていない点で相違している。そして、甲2~4をみても、甲1に記載された発明において、「色彩データXの出力層を備え」るものに変更することを動機づけるような記載を何も見出せない。
したがって、本件発明に係る特許を取消理由Bによって取り消すべきものとすることはできない。
(3)取消理由Cについて
取消理由Cは、要するに、本件特許の特許請求の範囲の記載は、「近似する」の基準、「合格」と判定する基準、及び、「必要に応じて」に該当するか否かの基準が明確ではないので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものであるというものである。
(当審の判断)
しかしながら、これらはいずれも本件発明の実施にあたり任意に設定できる事項であると認められる事項であるから、基準が記載されていなくても第三者に不足の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許を取消理由Cによって取り消すべきものとすることはできない。
(4)取消理由Dについて
取消理由Dは、要するに、本件特許の特許請求の範囲の記載は、「近似する」の基準、「合格」と判定する基準が明確ではないといえることを前提として、本件発明は発明の詳細な説明にサポートされておらず、また、発明の詳細な説明を参酌しても実施することができないというものである。
(当審の判断)
しかしながら、本件発明の特徴は、コンピュータ調色において、色彩データを出力層とする人工知能モデルを用いること及び所望の配合組成データが得られるまで配合組成データに成分を追加することであることからみて、「近似する」の基準、「合格」と判定する基準は、本件発明の作用効果が奏される範囲内で、それぞれ、「近似する」もの、及び「合格」するものを指し、それらの基準が請求項に特定されていないとしても、本件特許の特許請求の範囲の記載は不明確とはいえない。また、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとか、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載が同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないなどといえるものでもない。
そして、特許異議申立人は、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとか、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載が同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていないといえる具体的な理由を何も説明していない。
したがって、本件特許を取消理由Dによって取り消すべきものとすることはできない。
(5)取消理由Eについて
取消理由Eは、要するに、本件特許の特許請求の範囲の請求項3の「補正係数α」をどのように用いるのかに関する説明が発明の詳細な説明に記載されていないので、本件発明3は実施することができないというものである。
(当審の判断)
しかしながら、請求項3は、「前記S111工程において合格しない場合において、前記予測色彩データXniと前記実測色彩データXCiの差分Δを補正係数αとしてコンピュータに入力した後に、前記S106~S111工程が繰り返される、請求項1又は2に記載の方法。」というものであるから、「補正係数α」は、要するに、「前記予測色彩データXniと前記実測色彩データXCiの差分Δ」であって、これが小さくなるように調色をすることは明らかである。
そうすると、「補正係数α」をどのように用いるのかは明らかであるから、本件の請求項3に係る特許を取消理由Eによって取り消すべきものとすることはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1~17に係る発明の特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由のいずれによっても、取り消すべきものとすることはできない。また、他に本件請求項1~17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-700917