特許異議申立
2021-700346
光放射源の照明又は放射に関する少なくとも1つの特性変数を方向に依存して測定するための方法及びゴニオラジオメーター
- 審判番号
- 2021-700346
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-539342
- 登録番号
- 6787902
- 請求日
- 2021年04月15日
- 審決日
- 2022年07月13日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルエムティー リヒトメステクニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ベルリン
- 【権利者代理人】宮崎 昭夫
- 【権利者代理人】緒方 雅昭
- 【権利者】テクノ チーム ビルトヴェラルバイツンク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
- 【権利者代理人】宮崎 昭夫
- 【権利者代理人】緒方 雅昭
- 【異議申立人】鈴木 憲治
- 審判長/審判官
- 審判長 福島 浩司
- 審判官 樋口 宗彦
- 審判官 石井 哲
- 分類
- P1651.121-YAA(G01J) / P1651.537-YAA(G01J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第4項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6787902号発明「光放射源の照明又は放射に関する少なくとも1つの特性変数を方向に依存して測定するための方法及びゴニオラジオメーター」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6787902号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕、〔7-11〕について」)訂正することを認める。
特許第6787902号の請求項7、9ないし11に係る特許を維持する。
特許第6787902号の請求項1~6及び請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第6787902号の請求項1~11に係る特許についての出願(以下「本件特許出願」という。)は、2016年(平成28年)1月8日(パリ条約による優先権主張 2015年1月22日 ドイツ)を国際出願日とする出願であって、令和2年11月2日に特許権の設定登録がされ、同年11月18日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申し立ての経緯は次のとおりである。
・令和3年4月15日 : 特許異議申立人鈴木憲治(以下「申立人」という。)による請求項1~11に係る特許に対する特許異議の申立て
・令和3年8月16日付け: 取消理由通知書
・令和3年11月22日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書(以下、これによる訂正を「訂正請求1」という。)の提出
・令和4年2月21日 : 申立人による意見書(以下「申立人意見書」という。)の提出
・令和4年3月11日付け: 取消理由通知書(決定の予告;これによる通知について以下、「本件取消理由通知」という。)
・令和4年6月16日 : 特許権者による意見書(以下「申立人意見書」という。)及び訂正請求書(以下、これによる訂正請求を「本件訂正請求」といい、これによる訂正を「本件訂正」という。)の提出
第2.訂正の適否について
上記本件訂正の適否について以下に検討する。
1 一群の請求項1~6について
(1)訂正事項1~6
特許権者は、特許請求の範囲の請求項1~6を削除することを請求する(各請求項についてそれぞれ訂正事項1~6)。
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、請求項1の記載を引用する関係にあるから、一群の請求項である。よって、本件訂正事項1~6は、一群の請求項1~6について請求されている。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1~6はそれぞれ、本件訂正前の請求項1~6を削除するものであるから、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1~6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、一群の請求項1~6に関し、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを認める。
2 一群の請求項7~11について
本件訂正前の請求項7~11は、請求項8~11が請求項7の記載を引用する関係にあるから、一群の請求項である。よって、請求項7~11に係る訂正事項7~11は、一群の請求項7~11について請求されている。
(1)訂正事項7
ア 訂正事項7の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項7を、本件訂正前の下記(ア)から、訂正特許請求の範囲の請求項7に記載された、下記(イ)の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する。
そして、請求項7を引用する、請求項9~11についても同様に訂正する。
ここで、各構成単位冒頭の「M」などは当審で付した分説番号であり、以下、該角構成単位についてこの分説記号を用いて「構成M」などという。本件訂正前後において実質的に変更のない構成単位には共通の分説番号を付した。分説については以下も同様である。また、下線部は本件訂正により変更された箇所を示す。
(ア) 本件訂正前の請求項7
「【請求項7】
M 少なくとも1つのセンサー(1)を有する光放射源(2)の照明又は放射に関する少なくとも1つの特性変数を方向に依存して測定するための方法であって、
N 前記光放射源(2)は、測定動作中に、第1の軸(31)及び前記第1の軸に直交する第2の軸(32)の周りで回転され、前記少なくとも1つのセンサー(1)は、位置的に固定され且つ不動となるように配置され、前記光放射源(2)は、前記測定中に、少なくとも実質的に前記光放射源(2)の放射重心周りの球面上の照明又は放射の特性変数を示す測定値を前記少なくとも1つのセンサー(1)が記録するように動かされ、
O 測定中に同時に測定値を提供する少なくとも2つのセンサー(1、100)が備えられており、
P1 前記光放射源(2)からの光は測定壁(5)上で均一な反射で反射され、反射された光はカメラ(7)によって捕捉され、前記反射された光は、光学ユニット(8)により2次元センサーチップ(100)上に結像され、
P2 前記少なくとも2つのセンサーは、前記2次元センサーチップ(100)のピクセルによって形成されており、
Q1 前記光放射源(2)からの光は、さらに前記測定壁(5)の開口部(51 )を通して直接的に別のセンサー(1’)を照らし、
Q2p このセンサー(1’)が捕捉した信号は、前記2次元センサーチップ(100)による校正のために用いられる、
R ことを特徴とする方法。」
(イ) 本件訂正後の請求項7
「【請求項7】
M’複数のセンサーにより光放射源(2)の照明又は放射に関する少なくとも1つの特性変数を方向に依存して測定するための方法であって、
N’前記光放射源(2)は、測定動作中に、第1の軸(31)及び前記第1の軸に直交する第2の軸(32)の周りで回転され、
前記複数のセンサーは、位置的に固定され且つ不動となるように配置され、前記光放射源(2)は、前記測定動作中に、少なくとも実質的に前記光放射源(2)の放射重心周りの球面上の照明又は放射の特性変数を示す測定値を前記複数のセンサーが記録するように動かされ、
O’前記複数のセンサーは、前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定値を提供し、
P1 前記光放射源(2)からの光は測定壁(5)上で均一な反射で反射され、反射された光はカメラ(7)によって捕捉され、前記反射された光は、光学ユニット(8)により2次元センサーチップ(100)上に結像され、
P3 前記2次元センサーチップ(100)は、マトリクス状に配置された複数のピクセルを含み、
P4 該ピクセルは前記複数のセンサーを構成し、
P5 各センサーは前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定を提供し、
Q0 前記光放射源(2)は、光分布における所望の立体角の領域(56)が前記測定壁(5)を照射し且つ前記光学ユニット(8)を介して前記2次元センサーチップ(100)により捕捉されるように回転され、
Q1’前記光放射源(2)からの光は、さらに前記測定壁(5)の開口部(51)を通して直接的に別のセンサー(1’)を照らし、
Q3 該別のセンサー(1’)は前記開口部(51)内に配置され、
Q2’該別のセンサー(1’)が捕捉した信号は、前記2次元センサーチップ(100)による校正のために用いられ、
Q4 校正の目的のために、前記光放射源(2)の前記測定動作中に、前記開口部(51)に瞬間的に入射する前記光分布の前記領域が前記別のセンサー(1’)によって測定され、
Q5 前記カメラ(7)の前記2次元センサーチップ(100)による前記光分布の測定の後に、
前記光放射源(2)の対応する向きによって前記測定壁(5)の前記開口に入射する前記光分布の注目点が前記別のセンサー(1’)によって測定され、
Q6 前記光分布の前記注目点の測定値が前記2次元センサーチップ(100)の校正のために使用される
R ことを特徴とする方法。」
イ 訂正の目的の適否について
(ア)構成M・N・Oの「少なくとも1つのセンサー(1)」、「少なくとも2つのセンサー(1、100)」を構成M’・O’・P5において「複数のセンサー」またはこれを指して「各センサー」と変更した点(以下「訂正事項7ア」という。)は、構成M・N・Oにおいて「センサー」について個数や図面での符号が相互に整合せず不明確であった不備の解消を図ったものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)構成N・Oの「測定中」を「測定動作中」と変更した点(以下「訂正事項7イ」という。)は、構成Nにおける「測定動作中」及び「測定中」なる用語の混用を解消したものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)構成Oについて、上記(ア)・(イ)の訂正と共に、「測定中に同時に測定値を提供する少なくとも2つのセンサー(1、100)が備えられており、」という記載ぶりから、構成O’の「前記複数のセンサーは、前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定値を提供し、」なる記載ぶりに変更した点(以下「訂正事項7ウ」という。)は、請求項7が方法の発明であることに即して、構成Oが《手段を備える》旨の装置発明の特定事項のような記載ぶりであったものを、構成O’のように「・・・測定値を提供」する旨の、方法発明の工程としての記載ぶりに変更するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(エ)構成P2の「前記少なくとも2つのセンサーは、前記2次元センサーチップ(100)のピクセルによって形成されており、」との特定事項を、構成P3・P4の「前記2次元センサーチップ(100)は、マトリクス状に配置された複数のピクセルを含み、該ピクセルは前記複数のセンサーを構成し、」に変更した点(以下「訂正事項7エ」という。)は、上記(ア)に説示した点で明瞭でない記載の釈明を目的とするほか、「前記2次元センサーチップ(100)のピクセル」について、それが「マトリクス状に配置」されたものであるとの特定事項を付加し、「複数のセンサー」(少なくとの2つのセンサー)について、それが「複数のピクセル」であるとの特定事項を付加する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(オ)構成P5を付加した点(以下「訂正事項7オ」という。)は、構成O・P2を構成O’・P3・P4と変更したことに伴い、構成O’の「前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定値を提供」する「複数のセンサー」が、構成P3・P4で特定される「複数のピクセル」である「複数のセンサー」であることを明確化または特定するものであり、明瞭でない記載の釈明または特許請求の範囲の減縮をを目的とするものである。
(カ)構成Q0を付加した点(以下「訂正事項7カ」という。)は、本件訂正前の構成N等の「光放射源(2)」なる構成要素について、追加の特定事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(キ)構成Q3を付加した点(以下「訂正事項7キ」という。)は、本件訂正前の構成Q1等の「別のセンサー(1’)」なる構成要素について、追加の特定事項を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ク)構成Q2の末尾「・・・用いられる、」を構成Q2’の「・・・用いられ、」と変更した点(以下「訂正事項7ク」という。)は、構成Q2以下に構成Q4~Q6を付加したことに伴い平仄を合わせるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ケ)構成Q4~Q6を付加した点(以下「訂正事項7ケ」という。)は、本件訂正前の構成Q2における「別のセンサー(1’)が補足した信号」について、その取得手順や取得目的について特定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(コ)小括
以上(ア)~(ケ)のとおりであるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものである。
ウ 新規事項の有無について
(ア)上記訂正事項7ア・7エ・7オについて、マトリクス状に配置された複数のピクセルからなる複数のセンサーを備える2次元のセンサーチップ(100)を用いて、「光放射源(2)からの光」が「測定壁(5)」で反射された光を測定する態様は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、それぞれ「本件特許請求の範囲」、《本件特許明細書」、「本件特許図面」といい、総称して「本件特許明細書等」という。)のうち本件特許明細書の【0059】~【0072】及び本件特許図面の図7~9に実施例として開示されている。
よって、該各個別訂正事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
(イ)上記訂正事項7イ・7ウ・7クは、上記のとおり明瞭でない記載の釈明を目的としたものであり、該各個別訂正事項により実質的に特定事項の意味を変更するものではないから、該各個別訂正事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
(ウ)上記訂正事項7カに係る構成Q0を付加した点は、構成Q0に該当する特定事項が本件特許請求の範囲の請求項8(本件訂正前の請求項8)に記載されたものであり、本件特許明細書【0071】の記載によっても裏付けられる。
よって、該個別訂正事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
(エ)上記訂正事項7キに係る構成Q3を付加した点は、本件特許明細書【0061】の、「センサー1’は、壁5の後ろに又は開口部51内の軸35上に配置されている。」なる記載により裏付けられるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
(オ)上記訂正事項7キに係るQ4~Q6を付加した点は、Q4(カメラによる測定動作中のセンサー(1’)による測定)は本件特許明細書の【0066】に、Q5・Q6(カメラによる測定動作後に光分布の顕著なポイント(注目点))についてセンサー(1’)によりセンサー(100)の構成のための測定を行うことについては同【0066】に、それぞれ裏付けとなる記載があるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
(カ)小括
上記(ア)~(オ)のとおりであるから、訂正事項7は特許明細書等に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内でしたことであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
エ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7は、上記イ・ウで説示したとおり、本件訂正前の請求項7について、特許請求の範囲の減縮、または実質的な意味内容の変更がない範囲での明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、訂正前の請求項7に記載した事項を、より広い意味を表す事項に入れ替えるものでも、別の意味を表す事項に入れ替えることによって特許請求 の範囲をずらすものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(2)訂正事項8
ア 訂正事項8の内容
訂正事項8は、本件訂正前の請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3) 訂正事項9
ア 訂正事項9の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項9を、本件訂正前の下記(ア)から、訂正特許請求の範囲の請求項9に記載された、下記(イ)の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する。
そして、請求項9を引用する、請求項10・11についても同様に訂正する。
(ア)本件訂正前の請求項9
「【請求項9】
ゴニオラジオメーターの異なる位置で組み合わされる立体角の領域(56)の光分布は、前記測定壁(5)での反射後に前記2次元センサーチップ(100)により捕捉され、より大きな立体角の領域に組み合わされる前記光分布を形成するために合わされる、ことを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。」
(イ)本件訂正後の請求項9
「【請求項9】
ゴニオラジオメーターの異なる位置で組み合わされる立体角の領域(56)の光分布は、前記測定壁(5)での反射後に前記2次元センサーチップ(100)により捕捉され、より大きな立体角の領域に組み合わされる前記光分布を形成するために合わされる、ことを特徴とする請求項7に記載の方法。」
イ 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項9は、訂正事項8による請求項8の削除に伴い、引用請求項から請求項8を削除するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減にあたるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項9に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項10
ア 訂正の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項10を、本件訂正前の下記(ア)から、訂正特許請求の範囲の請求項10に記載された、下記(イ)の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する。
そして、請求項10を引用する請求項11についても同様に訂正する。
(ア)本件訂正前の請求項10
「【請求項10】
光は、少なくとも1つの結像レンズ(9)又は少なくとも1つの結像レンズ系を通して、前記光放射源(2)と前記少なくとも2つのセンサー(1、100)との間を通過する、ことを特徴とする請求項7~9の何れか1項に記載の方法。」
(イ)本件訂正後の請求項10
「【請求項10】
光は、少なくとも1つの結像レンズ(9)又は少なくとも1つの結像レンズ系を通して、前記光放射源(2)と前記測定壁(5)との間を通過する、ことを特徴とする請求項7又は9に記載の方法。」
イ 訂正の目的の適否について
(ア)本件訂正前の「前記少なくとも2つのセンサー(1、100)」を「前記測定壁(5)」と変更した点(以下「訂正事項10ア」という。)は、上記(1)イ(ア)・(エ)の個別訂正事項にならい、請求項10においても「少なくとも2つのセンサー(1、100)」を「2次元センサーチップ(100)のピクセルによって形成され」た「複数のセンサー」と減縮訂正することに伴い、光放射源(2)に直接対峙するセンサー(1)が削除され、そのまま《光放射源(2)と「2次元センサーチップ(100)のピクセルによって形成され」た「複数のセンサー」との間》と置き換えた場合に、該「間」に該当する光路が「測定壁(5)」(による反射)によって折り返されたものとなることから、空間の中で該「間」を観念することが困難となることを回避するために、前記「間」を、前記折り返された光路のうち、光放射源(2)から測定壁(5)に至る部分に限定するものである。
よって、当該個別訂正事項は、明瞭でない記載の釈明、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)本件訂正前の「請求項7~9の何れか1項に記載の」を「請求項7又は9に記載の」に変更した点(以下「訂正事項10イ」という。)は、訂正事項8による請求項8の削除に伴い、引用請求項から請求項8を削除するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減にあたるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)小括
以上(ア)・(イ)のとおりであるから、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものである。
ウ 新規事項の有無について
(ア)上記訂正事項10アについては、本件訂正後の「光は、少なくとも1つの結像レンズ(9)又は少なくとも1つの結像レンズ系を通して、前記光放射源(2)と前記測定壁(5)との間を通過する」なる特定事項が、本件特許明細書等の【0060】・【0061】~【0064】、【図7】~【図9】の記載事項により裏付けられるものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
(イ)上記訂正事項10イについては、上記イ(イ)で説示したとおり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減にあたる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、新規事項の追加には該当しない。
(ウ)小括
上記(ア)・(イ)のとおりであるから、訂正事項10は特許明細書等に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内でしたことであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
エ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)上記訂正事項10アについては、本件訂正後の「光放射源(2)と前記測定壁(5)との間」なる光路部分は、本件訂正前の「前記光放射源(2)と前記少なくとも2つのセンサー(1、100)との間」のうち、センサーがセンサー(100)である場合の、《光放射源(2)~測定壁(5)~光センサー(100)》なる光路の一部にあたるから、本件訂正前の特定事項をより広い意味に入れ替えるものでも、別の意味を表す技術事項に入れ替えるものでもない。よって、当該個別訂正事項は特許請求の範囲の拡張・変更を伴うものではない。
(イ)上記訂正事項10イは、上記イ(イ)で説示したとおり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減にあたる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)小括
上記(ア)・(イ)のとおりであるから、訂正事項10は特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合する。
(5)訂正事項11
ア 訂正事項11の内容
特許権者は、特許請求の範囲の請求項11を、本件訂正前の下記(ア)から、訂正特許請求の範囲の請求項11に記載された、下記(イ)の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する。
(ア)本件訂正前の請求項11
「【請求項11】
前 記照明又は放射の特性変数の出力放射方向は、平面系を用いて描写され、前記光放射源の放射重心を通って延びる交差線に交差する平面系と、考慮される平面内で前記放射方向を示す放射角とを用いて記述され、照明又は放射の特性変数の各測定値は、前記平面系の特定の平面及びこの平面内の特定の放射角に割り当てられ、前記少なくとも2つのセンサー(1)は、前記平面系における1つ以上の平面に対して同時に測定値を提供する、ことを特徴とする請求項7~10の何れか1項に記載の方法。」
(イ)本件訂正後の請求項11
「【請求項11】
前記照明又は放射の特性変数の出力放射方向は、平面系を用いて描写され、前記光放射源の放射重心を通って延びる交差線に交差する平面系と、考慮される平面内で前記放射方向を示す放射角とを用いて記述され、照明又は放射の特性変数の各測定値は、前記平面系の特定の平面及びこの平面内の特定の放射角に割り当てられ、前記複数のセンサーは、前記平面系における1つ以上の平面に対して同時に測定値を提供する、ことを特徴とする請求項7、9、10の何れか1項に記載の方法。」
イ 訂正の目的の適否について
(ア)「前記少なくとも2つのセンサー(1)」を「前記複数のセンサー」と変更した点(以下「訂正事項11ア」という。)は、上記(1)イ(ア)・(エ)の個別訂正事項にならい、請求項11においても、「前記少なくとも2つのセンサー」を「前記複数のセンサー」、すなわち、請求項7で特定される「2次元センサーチップ(100)のピクセルによって形成され」た「複数のセンサー」と減縮訂正すると共に、本件訂正前の請求項11において、「少なくとも2つのセンサー」の「(1)」なる図面の符号の表記が、引用する請求項7における「(1、100)」と整合しなかった不備を修正したものであるから、明瞭でない記載の釈明、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)本件訂正前の「請求項7~10の何れか1項に記載の」を「請求項7、9、10のいずれか1項に記載の」に変更した点(以下「訂正事項11イ」という。)は、訂正事項8による請求項8の削除に伴い、引用請求項から請求項8を削除するものであり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減にあたるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)小括
以上(ア)・(イ)のとおりであるから、訂正事項11は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものである。
ウ 新規事項の有無について
(ア)上記訂正事項11アにより訂正された結果の「前記複数のセンサーは、前記平面系における1つ以上の平面に対して同時に測定値を提供する」なる機能は、本件特許明細書の
「【0031】
放射源がそのような球座標系の原点に位置する場合、放射源の照明又は放射の特性変数は、-180°≦φ≦180°且つ0≦θ≦180°とされる角度範囲において、光源又は放射源を回転させることによって又は異なる角度領域でセンサーを連続的に動かすことによって、ゴニオメトリックに、すなわち、すべての方向に対して測定され得る。したがって、放射方向は、2つの角度φ、θによって規定することができる。
【0032】
A面、B面及びC面と呼ばれる特定の平面システムを用いることにより、光強度分布又は別の方向に依存する照明若しくは放射の特性変数を記述することは慣例であり、前述のドイツ工業規格 5032 Part 1で説明されている。各平面システムは、光源の光重心において交差する2つの軸を定義する。第1の軸は、平面系のすべての平面が交差する交線によって与えられる。第2の軸は、放射源におけるランプの向きによって与えられる。
・・・
【0045】
多数のセンサー1を使用することによって、捕捉されるべき立体角がセンサー信号の一定の品質により迅速に捕捉され、結果として測定時間が短縮される。例えば、図1及び図2の例示的な実施形態では、走査中に複数の緯度線がカバーされ、後続の走査動作の1つでは、光放射源2は、軸32の周りで対応してより大きな角度で傾斜することができる。
図1及び図2に示される一定の角度距離を有する複数のセンサーの鉛直で等距離の配置は光分布の水平走査の場合に有利であり、同時に、角度分布の複数の水平断面が記録される。」
なる記載により、光放射源を2軸回りで回転しつつ、その放射を鉛直軸方向や水平軸方向に並ぶ複数点で測定することにより達成される機能として裏付けられるものである。
よって、該個別訂正事項は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内でしたものである。
(イ)上記訂正事項11イについては、上記イ(イ)で説示したとおり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減にあたる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、新規事項の追加には該当しない。
(ウ)小括
上記(ア)・(イ)のとおりであるから、訂正事項11は特許明細書等に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内でしたことであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
エ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
(ア)上記訂正事項11アは、上記イ(ア)で説示したとおり本件訂正前の特定事項を減縮するものであり、該特定事項をより広い意味に入れ替えるものでも、別の意味を表す技術事項に入れ替えるものでもない。よって、当該個別訂正事項は特許請求の範囲の拡張・変更を伴うものではない。
(イ)上記訂正事項11イは、上記イ(イ)で説示したとおり、多数項を引用している請求項の引用請求項数の削減にあたる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(ウ)小括
上記(ア)・(イ)のとおりであるから、訂正事項11は特許明細書等に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内でしたことであり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合する。
(6)中括
以上、(1)~(5)のとおりであるから、訂正事項7~11に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、一群の請求項7~11に関し、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項7~11について訂正することを認める。
第3.本件訂正後の特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。構成番号については上記第2.2(1)で述べたものと同様である。
「【請求項1】~【請求項6】(削除)
【請求項7】
M’複数のセンサーにより光放射源(2)の照明又は放射に関する少なくとも1つの特性変数を方向に依存して測定するための方法であって、
N’前記光放射源(2)は、測定動作中に、第1の軸(31)及び前記第1の軸に直交する第2の軸(32)の周りで回転され、
前記複数のセンサーは、位置的に固定され且つ不動となるように配置され、前記光放射源(2)は、前記測定動作中に、少なくとも実質的に前記光放射源(2)の放射重心周りの球面上の照明又は放射の特性変数を示す測定値を前記複数のセンサーが記録するように動かされ、
O’前記複数のセンサーは、前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定値を提供し、
P1 前記光放射源(2)からの光は測定壁(5)上で均一な反射で反射され、反射された光はカメラ(7)によって捕捉され、前記反射された光は、光学ユニット(8)により2次元センサーチップ(100)上に結像され、
P3 前記2次元センサーチップ(100)は、マトリクス状に配置された複数のピクセルを含み、
P4 該ピクセルは前記複数のセンサーを構成し、
P5 各センサーは前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定を提供し、
Q0 前記光放射源(2)は、光分布における所望の立体角の領域(56)が前記測定壁(5)を照射し且つ前記光学ユニット(8)を介して前記2次元センサーチップ(100)により捕捉されるように回転され、
Q1’前記光放射源(2)からの光は、さらに前記測定壁(5)の開口部(51)を通して直接的に別のセンサー(1’)を照らし、
Q3 該別のセンサー(1’)は前記開口部(51)内に配置され、
Q2’該別のセンサー(1’)が捕捉した信号は、前記2次元センサーチップ(100)による校正のために用いられ、
Q4 校正の目的のために、前記光放射源(2)の前記測定動作中に、前記開口部(51)に瞬間的に入射する前記光分布の前記領域が前記別のセンサー(1’)によって測定され、
Q5 前記カメラ(7)の前記2次元センサーチップ(100)による前記光分布の測定の後に、
前記光放射源(2)の対応する向きによって前記測定壁(5)の前記開口に入射する前記光分布の注目点が前記別のセンサー(1’)によって測定され、
Q6 前記光分布の前記注目点の測定値が前記2次元センサーチップ(100)の校正のために使用される
R ことを特徴とする方法。
【請求項8】 (削除)
【請求項9】
9A ゴニオラジオメーターの異なる位置で組み合わされる立体角の領域(56)の光分布は、前記測定壁(5)での反射後に前記2次元センサーチップ(100)により捕捉され、より大きな立体角の領域に組み合わされる前記光分布を形成するために合わされる、
9B ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
10A 光は、少なくとも1つの結像レンズ(9)又は少なくとも1つの結像レンズ系を通して、前記光放射源(2)と前記測定壁(5)との間を通過する、
10B ことを特徴とする請求項7又は9に記載の方法。
【請求項11】
11A 前記照明又は放射の特性変数の出力放射方向は、平面系を用いて描写され、前記光放射源の放射重心を通って延びる交差線に交差する平面系と、考慮される平面内で前記放射方向を示す放射角とを用いて記述され、
11B 照明又は放射の特性変数の各測定値は、前記平面系の特定の平面及びこの平面内の特定の放射角に割り当てられ、
11C 前記複数のセンサーは、前記平面系における1つ以上の平面に対して同時に測定値を提供する、
11D ことを特徴とする請求項7、9、10の何れか1項に記載の方法。」
第4.本件取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について
1 本件取消理由通知の概要
本件取消理由通知により特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)請求項7・9~11に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4項に該当し、取り消されるべきものである。
(2)請求項7・9~11に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が同法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4項に該当し、取り消されるべきものである。
(3)本件特許発明7・9~11は、甲1に記載された発明、甲2・甲3に記載された事項に裏付けられる周知技術、及び技術常識にもとづいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件特許発明7・9~11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)備考
本件取消理由通知の「結論」欄において、取り消し対象の特許として請求項9~11に係る特許のみ記載される誤記があるが、同「理由」欄において、取り消し対象が請求項7・9~11に係る特許である旨明記されている。
2 引用文献等
本件取消理由通知にて提示した引用文献は次のとおり。各甲号証については、以下、下記のとおりそれぞれ「甲1」などと略称する。
・甲第1号証(甲1):
Wu et al.,”Fast measurement of automotive headlamps based on high dynamic range imaging”,APPLIED OPTICS,2012年10月1日, Vol.51,No.28,p.6870-6880
・甲第2号証(甲2):
米国特許第5426500号明細書
・甲第3号証(甲3):
Chr.Schwanengel,”Gegenueberstellung von Messtechniken zur Messung von Lichtstaerkeverteilungen und Lichtstaerkeverteilungsausschnitten”,[online],TechnoTeam Bildverarbeitung GmbH,2010年8月,インターネット<https://www.technoteam.de/apool/tnt/content/e8549/e6009/e6311/e5983/pb_download5985/LVK_Messtechniken_ger.pdf>
・参考文献1:
特開2010-286339号公報
2 引用文献の記載
(1)甲1に記載された事項
ア 甲1の記載事項
本件特許出願の優先日前に公知となった甲1には次の記載がある。ここで、摘記文中の参照文献番号は省略し、訳文中において式は式番号で示した。また、訳文につき、申立人による「甲第1号証抄訳文」によるものは「申立人抄訳」と表記した。以下、各記載事項は、下記に摘記した各記載事項冒頭の「(ア1)」などにより「記載事項ア1」などとして参照する。
(ア1)「To satisfy the requirements of the regulation, few methods have been developed in the past decades for measurement and evaluation of the headlamp.」(6870頁右欄7~9行)
(当審訳:「この規制の要求を満たすために、過去数十年の間に、ヘッドランプの測定・評価方法はほとんど開発されていない。」)
(ア2)「Recently, methods based on three-dimensional (3D) and two-dimensional (2D) image analysis have been developed to align a vehicle to an automotive headlamp beam test apparatus and to characterize the beam profile projected on a panel for regulation purposes.」(6871頁左欄9~14行)
(申立人抄訳:「近年、規制の目的のために、車両を自動車用ヘッドランプビーム試験装置に位置合わせし、パネルに投影されたビ-ムプロファイルを特徴付ける、3次元(3D)および2次元(2D)画像分析に基づく方法が開発されている。」)
(ア3)「Currently, the determination of the illumination performance of a headlamp is usually conducted by a special device called a goniophotometer.」(6871頁左欄19~21行)
(申立人抄訳:「現在、ヘッドランプの照明性能の決定は、通常、ゴニオフォトメータと呼ばれる特別な装置によって行われている。」)
(ア4)「This type of measurement system places the headlamp on a motorized stage that rotates and tilts the headlamp with respect to a photometer that faces the headlamp along a fixed direction of view at a distance of 25 m (dp), as shown in Fig. 1.
The photometer records the illuminance of the headlamp from the angle specified by the motorized stage spot by spot. In normal setup of the dark room, a measuring screen is installed in front of the goniophotometer at a distance of 10 m (ds) from the headlamp. This screen is used for the projection of the light from the headlamp so that the shape of the illumination can be visually inspected.」(6871頁左欄24~36行)
(申立人抄訳:「このタイプの測定システムは、 図1に示すように、25 m( dp)の距離にある固定された視線方向に沿ってヘッドランプに面する光度計に対してヘッドランプを回転および傾斜させる電動ステ-ジ上にヘッドランプを配置する。光度計は、電動ステージによって規定された角度からスポット毎にヘッドランプの照度を記録する。暗室の通常の配置では、測定スクリーンが、ヘッドランプから1Om (ds)の距離でゴニオフォトメータの前に設置される。このスクリーンは、照明の形状を視覚的に検査できるようにヘッドランプからの光を投影するために使用される。」)
(イ1)「Given a goniophotometer system, the regulation requires the photometer to be placed 25m right in front of the headlamp for measurement. This distance of 25 m will be referred as dp in the following discussion. When the headlamp is placed on a motorized stage, the system pans in horizontal direction (around the y-axis) and tilts in vertical direction (around the x-axis); these two movements combined will direct the beam of light onto the screen by following an angle θ with respect to the z-axis and a rotation angle φ with respect to the x-axis on the measuring screen, as illustrated in Fig. 3(b). The purpose of this movement is to make the illuminance of the light at a specified direction of (θ,φ) be projected vertically (along the z-axis) onto the detector surface of the photometer located at dp away, as shown in Fig. 3(a). Note that angle θ is specified in the headlamp coordinate system [x - y - z in Fig. 3(a)], and angle φ is specified in the screen coordinate system [xs - ys in Fig. 3(b)].」(6871頁右欄52行~6872頁左欄11行)
(申立人抄訳:「ゴニオフォトメータシステムを考えると、規則では、測定のためにヘッドランプの真正面25mに光度計を配置する必要がある。この25mの距離は、以下の説明ではd pと呼ばれる。ヘッドランプが電動ステージ上に配置されると、システムは水平方向( y軸周り)にパンし、垂直方向(x軸周り)に傾斜する。これらの2つの動きの組み合わせが、図3(b)に示すように、測定スクリーン上で、z軸に対して角度θ、x軸に対して回転角φに従うことにより、光線をスクリーンに向かわせる。この動きの目的は、図3( a )に示すように、(θ,φ)の指定された方向における光の照度を、dp だけ離れた位置にある光度計の検出表面に垂直に(z 軸に沿って) 投影することである。なお、角度θはヘッドランプ座標系[図3(a)のx-y-z]で指定され、角度φはスクリーン座標系[図3(b)のxs -ys]で指定される。」)
(イ2)「After the headlamp has been installed properly on the motorized stage, the lamp is turned on and the projected light pattern on the measuring screen is visually inspected. If the pattern satisfies the requirement that the cutoff line falls within the regulated region, the measurement process can then begin. The process starts with the opening of the measuring window such that the light from the headlamp can pass through the window and falls on the photometer 15 m behind the screen. Then the stage is panned horizontally and tilted vertically to the designated angle so the radiated light of the headlamp at that direction can be measured by the photometer.」(6872頁右欄7行~6873頁左欄6行)
(申立人抄訳:「電動ステージにヘッドランプを正しく取り付けた後、ランプを点灯し、測定スクリーン上に投影された光のパターンが目視で検査される。パターンが、カットオフラインが規制領域内にあるという要件を満たしている場合、測定プロセスを開始することができる。このプロセスは、ヘッドランプからの光が窓を通過してスクリーンの15m背後の光度計に当たるように、測定窓を開くことから始まる。次に、ステージを水平方向にパンし、指定された角度まで垂直方向に傾けて、その方向におけるヘッドランプの放射光を光度計によって測定できるようにする。」)
(イ3)「Given an illuminance value Epv(dp,θ,φ) measured by the photometer at a distance of dp, it can be converted to luminous intensity by
Iv(θ,φ)= Epv(dp,θ,φ)・d2p . (4)
The luminous intensity Iv(θ,φ) measured directly by the goniophotometer will be used as the “ground truth” to verify the data obtained by the proposed imaging photometer. 」(6873頁右欄8~15行)
(申立人抄訳:「dpの距離にある光度計によって測定された照度値Epv(dp,θ,φ)が与えられると、それを
式(4)
によって光度に変換することができる。
ゴニオフォトメータによって直接測定された光度Iv(θ,φ)は、提案されるイメージング光度計によって得られたデータを検証するための「グラウンド・トゥルース」(地上検証データ)として使用される。」)
(ウ0)「After the light with intensity I(λ) (or Iv in photometry unit) radiating from the headlamp, it generates spectral irradiance Es(r,λ) on the measuring screen at a distance r. This irradiance will become a light source and radiate reflected radiance Ls(r,λ) (or reflected luminance Lsv in photometry unit) to the camera.」(6873頁右欄18~23行)
(当審訳:「強度I(λ)(または測光単位でのIv」)をもつ光がヘッドランプから放射されると、それは距離rの測定スクリーン上にスペクトル放射照度Es(r,λ)を生成する。この放射照度は光源となり反射放射Ls(r,λ)(または測光単位における反射輝度Lsv)をカメラに放射する。」)
(ウ1)「Instead of steering the headlamp around to measure each designated angle sequentially, the imaging photometer can obtain the luminous intensity with the lamp staying stationary. During the measurement process, the measuring window on the measuring screen should be closed and orientation of the headlamp is reset to (θ,φ)=(0,0) such that the axis of the lamp point goes to the center of the screen, as illustrated in Fig. 3(b). The camera used to acquire the distribution of the light for intensity measurement is located 1 m to the left of the headlamp. It is installed at the same height as the headlamp and is also 10 m away from the measuring screen, as has been shown in Fig. 1. After the headlamp was turned on, several images of the measuring screen can then be taken by one proper aperture size with different shutter speeds. These images, which contain digital readings of the light distribution acquired by different exposure time, can be used to obtain the luminous intensity Iv(θ,φ) of the headlamp.」(6873頁右欄38行~6874頁左欄6行)
(申立人抄訳:「それぞれの指定された角度を順番に測定するためにヘッドランプを操縦する代わりに、ランプを静止させたままで撮像光度計が光度を取得することができる。測定プロセス中は、測定スクリーンの測定窓を閉じるべきであり、図3(b)に示すように、ランプポイントの軸がスクリーンの中心になるように、ヘッドランプの向きが(θ,φ)=(0,0)にリセットされる。強度測定用の配光を取得するために使用されるカメラは、ヘッドランプの左1mのところにある。図1に示すように、カメラはヘッドランプと同じ高さに設置され、測定スクリーンから10m離れている。ヘッドランプをオンにした後、シャッタスピードが異なる1つの適切な絞りサイズによって、測定スクリーンの複数の画像を撮影することができる。異なる露光時間によって取得された配光のデジタル読み取り値を含むこれらの画像を使用して、ヘッドランプの光度Iv(θ,φ)を取得することができる。」)
(ウ2)「The measuring screen is made of wood coated with white paint. Because the incident light and viewing angle are both limited to ±10°in the measurement, the screen can be treated as a Lambertian surface.」(6874頁24~28行)
(申立人抄訳・当審訳:「測定スクリーンは白い塗料でコーティングされた木でできている。測定においては入射光と観察角はともに±10°に限定されるので、スクリーンはランベルト表面として扱うことができる。」)
(ウ3)「
[図:0001389370000001.jpg]
[図:0001389370000002.jpg]
」(6875-6876頁「D.」項全文)
(当審訳:「D. デジタル読み取り値から光度への変換について
我々のヘッドランプの議論において使った表記法に立ち返ると、カメラの露光Xは照度Ecvと露出時間Δtの積として、またはX(θ,φ)= Ecv(θ,φ)Δtとして定義される。f-1c関数(または曲線)が定義され、露出時間Δtが与えられたあと、照度は画素値から
式(24)
または
式(25)
により計算される。ここで、 Ecrv(θ,φ)= Xr(θ,φ)/Δt が検出器上の映像点の相対照度値として定義される。Ecrv(θ,φ)の値はHDRIに基づき異なる露出時間での画像を用いて求められる。
我々の経験的学習によれば、ある与えられた露出時間で得られた画像について、最も適切なEcrvの計算のための画素値Zは30<Z<245である。よって、位置(θ,φ)の画素について、露出時間Δtjの画素値Zj(θ,φ)(1≦j≦J) であるJ個の画像についての位置(θ,φ)の画素について、Ecrv(θ,φ)の値は
式(26)
により計算される。ここで、J個の画像のうちM個が30≦Zj(θ,φ)≦200を満たす。
式(25)を式(19)に代入することで
式(27)
が導かれる。ここで、k,R,Eavは未知の係数であるが、後述の実験結果の項で図示される測定手順により決定されうるものである。この等式は(cos3θで)修正された光度と相対的照度との間には、
式(28)
または
式(29)
の線形関係が成り立つことを明白に示している。
仮に、測定対象のヘッドランプについて式(29)中の値aとbとが決定されれば、スクリーン上の各点の推定光度I’v(θ,φ)は
式(30)
で計算され得る。
どのようにこのゴールに到達するか、そしてどのようにこの推定を正確に行うかについては次の項で議論する。」)
(エ1)「The camera used for obtaining the images is Nikon D40, which can be controlled through USB interface by the CameraControlPro software.」(6876頁左欄24~27行)
(申立人抄訳:「画像の取得に使用されるカメラはNikonD40であり、CameraContro1ProソフトウェアによってUSBインターフェースを介して制御可能である。」)
(エ2)「The illuminance value Epv (dp,θ,φ) acquired with the goniophotometer can be converted into the true luminous intensity Iv(θ,φ) by Eq. (4). While this true luminous intensity Iv(θ,φ) can be obtained directly from the photometer, the estimated luminous intensity I’v(θ,φ) needs to be computed indirectly as follows. First, the pixel value Z(θ,φ) of each selected point is converted to relative exposure Xr(θ,φ) (in the range of [0, 1]) using the camera response curve in Fig. 5(a). The relative illuminance of these 40 selected scene points can then be calculated by Eq. (26). Given these 40 relative illuminance values Ecrv(θ,φ) and their corresponding true luminous intensity Iv(θ,φ), we can draw a scatter-gram to show the relation between the modified luminous intensity y=Iv(θ,φ)cos3 θ and the calculated intensity x= Ecrv(θ,φ) . The intensity of the headlamp Iv has a wide dynamic range in these 40 scene points, from 73 cd to 16050 cd, and the result is illustrated in Fig. 6(b).
The experimental data clearly show that a linear relation does exist between Iv(θ,φ)cos3θ and Ecrv(θ,φ) , as was predicted by Eq. (29). This agreement of the experimental data with the theoretical model not only justifies the applicability of our proposed model but also proves the correctness of both the HDR image construction and estimation of the camera response curve. We fitted these 40 data points in Fig. 6(b) by a linear equation based on a least-squared (LS) approach, and the result is
Iv(θ,φ)cos3θ=4422.6 Ecrv(θ,φ)-35.6
which is illustrated in Fig. 6(b) along with the data points.」(6877頁左欄~右欄「1.」項全文)
(当審訳:「ゴニオフォトメータで得た照度Epv(θ,φ)に値は式(4)により真の光度Iv(θ,φ)に変換される。この真の光度Iv(θ,φ)は光度計により直接得られるが、推定光度I’v(θ,φ)は以下のように間接的に計算により求める必要がある。まず、各選択された点における画素値Z(θ,φ)は相対露光Xr(θ,φ)([0,1]のレンジ)に、図5(a)に示すカメラの応答曲線を用いて変換される。次に、これら40個の選択された映像上の点における相対照度値が式(26)により計算される。与えられたこれら40個の相対照度値Ecrv(θ,φ)とそれらに対応する真の光度値Iv(θ,φ)について、修正された光度y=Iv(θ,φ)cos3θと計算された強度Ecrv(θ,φ)との関係を示すために、我々は散布図を描くことができる。ヘッドランプの光度Ivはこれら40個の映像上の点について、73cdから16050cdに至る幅広いダイナミックレンジをもち、その結果は図6(b)に示す。
実験データはIv(θ,φ)cos3θとEcrv(θ,φ)との間に、まさに式(29)に示したような線形関係が成り立つことを示す。この実験データと理論モデルとの合致は我々の提唱するモデルの正当性だけでなくHDR画像構築とカメラ応答曲線の推定の正しさも示す。我々は図6(b)におけるこれら40のデータ点を、最小自乗法に基づき線形式に当てはめ、図6(b)にデータ点と共に図示するように、
Iv(θ,φ)cos3θ=4422.6 Ecrv(θ,φ)-35.6
の結果となった。」)
(エ3)「In real application, we would like to limit the number of points measured by the photometer to only two; and hopefully, these two points with true luminous intensity would provide us with enough information to generate a satisfactory line in Eq. (29). This line can then be combined with the constructed HDR image to recover the luminous intensities for all the pixels in the measuring screen by Eq. (30). The only question left is, where should we select the two positions for the photometer to acquire the true luminous intensities?
On the basis of our experiments, two proper positions for acquiring true Iv(θ,φ) by the photometer are one in the moderate bright region, and the other one in the moderate dark region. These two positions have been included in the 40 selected points in Fig. 6(a) and are marked with squares around the cross in Fig. 6(a). They have screen coordinates of (2, -2) and (6,4) with corresponding (θ,φ) equal to (2.827°, -45°) and (7.195°, 33.7°), respectively.
Given the true Iv(θ,φ) measured by the goniophotometer and the Ecrv(θ,φ) calculated from the HDR image at these two positions, there are two ways to find a and b in equation (29). One is to solve the equation directly, and the other is to compute slope a first by assuming b=0, and then this solution a is used in Eq. (29) to find b. The former obtained (a, b)=(4157.0, -14.2) and the latter found solution (a, b)=(4152.1, -14.1). Performance based on these two equations for estimating I’v(θ,φ) using Eq. (30) can be evaluated by εr as above based on the 40 selected points in Fig. 6(a), and the results are illustrated in Fig. 7 as full circles and hollow diamonds, respectively. As can be seen from the figure, these two methods obtain almost the same performance where the range of the deviation ratio falls within [7%, -11%] except the (contaminated) 16th point (-25%).
Given the above results, we found that two positions with true luminous intensity can provide enough accuracy for estimating luminous intensity based on either scheme of solving a and b. While the performance can be improved when more points with true luminous intensity are available, it is limited to less than 2%. Therefore, it might not worth the effort to have more expensive “ground truth” data available in the practical application.」(6877頁右欄~6878頁左欄の「2.」項全文)
(当審訳:「実際の適用においては、我々は光度計で測定する点の数を2点のみに限定したい。そして願わくば、真の光度を与えられるこれら2つの点は我々に式(29)の直線を満足に作成するための十分な情報を与えてくれる。そうするとこの直線は構築されたHDR画像と組み合わされ、測定スクリーンにおける全画素の光度値を式(30)により生成する。残された課題は、我々は光度計に真の光度値を測定させるこの2つの位置をどこに選定すべきか、という点のみである。
我々の実験に基づけば、真のIv(θ,φ)を得るのに適切な2つの位置の一つは、適度に明るい領域、そして他の一つは適度に暗い領域である。これら2つの位置は図6(a)の40の選択点に含まれ、図6(a)において十字を四角で囲んだ印で示されている。これらはそれぞれスクリーン座標(2,-2)、(6,4)を持ち、対応する(θ,φ)は(2.827°,-45°)と(7.195°,33.7°)である。
これら2つの位置において、ゴニオフォトメータで測定された真のIv(θ,φ)が与えられ、HDR画像からEcrv(θ,φ)が計算されることで、式(29)のaとbを求める方法は2つある。一つは式を直接解くこと、そしてもう一つは、b=0を仮定して傾斜aを計算し、この解aを用いて式(29)からbを計算すること、である。前者では(a,b)=(4157.0,-14.2)が、後者では(a,b)=(4152.1,-14.1)が求まった。式(30)を用いI’v(θ,φ)を推定するこれら2つの等式の性能は、上記で図6(a)の40個の選択された点に基づいて行ったのと同様、εrによって見積もることができる。そして、その結果を図7において、中実円と中空の菱形によりそれぞれ示した。図からわかるとおり、これら2つの方法によっては、16番目の点における(-25%)を除き誤差率[7%,-11%]におさまるほとんど同じ性能が得られる。
上記結果から、真の光度値を有する2つの位置があれば、いずれの手順によってaとbを求める場合でも十分であることがわかった。真の光度値を持つつさらに多くの点を利用できれば性能は改善しうるが、それは2%以下に限られる。なので、実際の応用において、もっと多くの高価な”グラウンド・tゥルース”(地上検証データ)を利用することに価値はない。」)
(オ1)図1
図1(Fig.1)は次のとおりである。
「
[図:0001389370000003.jpg]
」
(オ2)図3
「
[図:0001389370000004.jpg]
」
(図の説明の当審訳:「図3 測定時のヘッドランプの配置。(a)ゴニオフォトメータを基にしたシステムでは、ヘッドランプは精密に回転させる必要がある。(b)提案するところの、画像を基にしたシステムでは、ヘッドランプは静止したままにできる。」)
イ 甲1から看取・認定できる事項
(ア)図1から、次の事項を看取できる(以下、「甲1図1看取事項」という。)。
「1つのヘッドランプが回転台の上に載置され、その10m前方に測定スクリーンが設けられ、該測定スクリーンの中央部で、ヘッドランプの光軸と交わる箇所には、測定窓が設けられ、ヘッドランプの光軸上、該測定窓の先15mの位置(ヘッドランプから前記光軸に沿って25m離れた位置)には、1台の光度計が設置され、ヘッドランプの側方1m離れた場所には測定スクリーンに向けて1台のデジタルカメラが設置されていること。」
(イ)図3(a)の説明において、ヘッドランプを回転させ光度計で測定するシステムのことを「ゴニオフォトメータを基にするシステム」と称していることから、本文中随所の「ゴニオフォトメータで測定された」などにおける「ゴニオフォトメータ」は、この、ヘッドランプを回転させつつ光度計で測定する図3(a)のようなシステムを指すと解される。
ウ 甲1に記載された発明
上記アから、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。分説番号については上記第2.2(1)と同様である。また、各構成単位末尾括弧内には引用元の記載箇所を示す。
「m カメラを備え、ヘッドランプのビームプロファイルを測定する方法であって、(記載事項ア2)
n ヘッドランプが電動ステージ上に配置されると、システムは水平方向(y軸周り)にパンし、垂直方向(x軸周り)に傾斜し、
カメラはヘッドランプの左1mの、ヘッドランプと同じ高さに、スクリーンから10m離れて設置され、ヘッドランプをオンにした後、シャッタスピードが異なる1つの適切な絞りサイズによって、測定スクリーンの複数の画像を撮影し、(記載事項イ1)
o1 画像の取得に使用されるカメラはNikonD40であり、(記載事項エ1)
o3 前記カメラは測定スクリーンの画像を撮影することにより配光のデジタル読み取り値を取得するものであり、(甲1図1看取事項、記載事項イ1・ウ1・エ1)
p1 ヘッドランプをオンにした後、ヘッドランプの光は測定スクリーンに放射され、カメラ(撮像光度計)がその測定スクリーンの反射光の画像を測定するものであり、(記載事項ア4・ウ0・ウ2)
p2 撮像光度計を構成するNikonD40からなるカメラにより、測定スクリーンによるヘッドランプの反射光の複数の画像を撮影され、(記載事項ウ0・ウ1・エ1)
p3 測定スクリーンは、白い塗料でコーティングされた木でできた、±10度の入射角に対しランベルト表面として扱うことができるものであり、(記載事項ウ2)
q1 ヘッドランプの光は、測定スクリーンに設けた測定窓を通過して測定スクリーンの15m背後の光度計に当たるように配置され、(記載事項イ2)
q2 ヘッドランプの種々の放射方向について光度計によって実測した光度と、カメラで測定した測定スクリーンの照度値との線形相関関係に基づいて、ヘッドランプの種々の放射方向について、カメラで測定した照度値から推定光度を間接的に計算し、(記載事項ウ3・エ2)
q4 ランプを静止させたままで撮像光度計(カメラ)が光度を取得する時は、測定スクリーンの測定窓を閉じ、(記載事項ウ1)
q5 実際の適用においては、カメラの画像から適度に明るい領域から1つ、適度に暗い領域から1つの計2点を選択して光度計で光度を測定し、(記載事項エ3)
q6 該2点の光度値とカメラ画像とを組み合わせ、測定スクリーンにおける全画素の光度値を求める、(記載事項エ3)
r 方法。」
(2)甲2に記載された事項
本件特許出願の優先日前に公知となった甲2には次の記載がある。
ア 2列62行~3列6行
「
[図:0001389370000005.jpg]
」
(申立人抄訳:「図1は、本発明による車両用ランプの照度測定方法を実施する照度測定システムを示す。
このシステムは、収束レンズ1と、ハーフミラー2と、センサープレート3と、スクリーン4と、撮像手段5と、計算手段6とを備えている。図1において、参照記号Oは、ヘッドランプ7から光が放射される点を示し、Hは、ヘッドランプ7の光軸がハーフミラー2と交差する点を示し、Sは、光軸がスクリーン4と交差する点を示し、S’は、光軸がセンサープレート3と交差する点を示している。
レンズ1は、検査中のヘッドランプ7から放射された光をスクリーン4に向けて収束させる。」)
イ 3列32~48行
「
[図:0001389370000006.jpg]
」
(申立人抄訳:「ヘッドランプ7から放射されスクリーン4に投射された光は、撮像手段5によって取得され、取得された光画像は、ヘッドランプ7の主光軸を検出するために、所定の画像処理などにかけられる。検出された主光軸に対応する位置A(αおよびβ)に関する情報は、計算手段6によって使用されて、位置A(αおよびβ)に対応する、センサープレート3上の位置A(α及びβ)における照度および光度を決定することができる。
撮像手段5は、自動的にコリメートされるレンズを備えたテレビカメラを使用する。この実施形態では、図4に示すように、256ピクセル(垂直:Y軸)×256ピクセル(水平:X軸)のそれぞれに、すなわち256×256のマトリックス内のピクセルのそれぞれに対してCCD(電荷結合素子)が設けられており、スクリーン4上の光画像を得る。」)
(3)甲3に記載された事項について
本件特許出願の優先日前に公知となった甲3には次の記載がある。
ア 21頁2~14行
「
[図:0001389370000007.jpg]
」
(申立人抄訳:「
[図:0001389370000008.jpg]
」)
イ 21頁15~18行
「
[図:0001389370000009.jpg]
」
(申立人抄訳:「
[図:0001389370000010.jpg]
」
(4)参考文献1の記載事項
本件特許出願の優先日前に公知となった特開2010-286339号公報(以下、「参考文献1」という。)には次の記載がある。
「【0002】
光源、例えば発光ダイオード(LED)の指向性検査は、一般に、LEDを実際に傾け、LEDの光をスクリーン上に照射して、スクリーン上で指向特性を測定することより行われている。」
3 当審の判断
3-1 明確性要件について
(1)上記訂正事項7ア・7ウ・7エ・7オ・11アにより、本件訂正前の「少なくとも1つのセンサー」及び「少なくとも2つのセンサー」は、「2次元センサーチップ(100)」が含む「マトリクス状に配置された複数のピクセル」が構成する「複数のセンサー」に統一された。
これにより、本件発明7・9~11において、「少なくとも1つのセンサー(1)」、「少なくとも2つのセンサー(1、100)」、「2次元センサーチップ(100)」、「別のセンサー(1’)」、「少なくとも2つのセンサー(1)」、「複数のセンサー」、「各センサー」相互間の関係についての不明確性は解消した。
また、センサー(1)と(1’)とが同一である態様と相違する態様、センサー(1)・センサー(100)・センサー(1’)が別センサーで、これらが併用される態様、センサー(1)とセンサー(100)とが択一的である態様などが包含されるとの多義的な解釈も排除され、この点についての不明確性も解消した。
(2)訂正事項7イ・7オ・7ケにより、「測定中」・「測定動作中」なる各用語の不統一が解消され、該「測定動作中」に、「光放射源(2)」の回転、複数のセンサーによる測定、「別のセンサー(1’)」による測定がそれぞれ行われ、該測定の後に、(前記測定の結果に基づく)「光分布の注目点」に対して、「別のセンサー(1’)」による測定が行われる、旨の測定手順が明確となり、測定手順についての不明確性が解消した。
(3)訂正事項7キにより、「別のセンサー(1’)」と測定壁(5)との位置関係についての不明確性は解消した。
(4)訂正事項7カ・7ケにより、該本件訂正後の構成P5・Q0・Q2’・Q4を合わせ読むことで、構成Q0における光放射源(2)の回転は、複数のセンサー(2次元センサーチップ(100))による測定動作中に行われ、該測定動作中の光放射源(2)の回転に伴い、開口部(51)に瞬間的に入射する前記光分布の前記領域が前記別のセンサー(1’)によって2次元センサーチップ(100)の校正を目的として測定されるとの測定手順が明確となり、光放射源(2)の回転が、初期設定として基準方向など1つの角度位置に対してのみ行われるような態様を含みうる不明確性は解消した。
(5)訂正事項10アにより、請求項10の「前記光放射源(2)と前記少なくとも2つのセンサー(1、100)との間」が、「前記光放射源(2)と前記測定壁(5)との間」へと変更されたことにより、「少なくとも2つのセンサー(1、100)」の多義的な解釈による不明確性は解消し、該「間」に該当する空間位置の範囲が明確となった。
(6)その他、本件取消理由通知において通知した明確性要件に関する記載不備は、上記(1)~(5)に係る明確化に伴って何れも解消し、新たな明確性要件上の不備もない。
3-2 サポート要件について
本件取消理由通知において通知したサポート要件に関する記載不備は、「少なくとも1つのセンサー(1)」、「少なくとも2つのセンサー(1、100)」、「2次元センサーチップ(100)」、「別のセンサー(1’)」、「少なくとも2つのセンサー(1)」、「複数のセンサー」、「各センサー」相互間の関係についての不明確性に起因するものであり、該不明確性は上記3で説示したとおり本件訂正により解消したから、前記サポート要件に関する記載不備も本件訂正により解消した。
そして、本件訂正により新たに生じたサポート要件に関する記載不備もない。
3-3 進歩性について
(1)本件発明7と甲1発明との対比
ア(ア)構成mの「カメラ」は、構成o1でデジタルカメラである「NikonD40」と特定され、デジタルカメラはレンズ光学系及びマトリクス配置された複数画素のセンサーアレイを備えることが自明である。
よって、構成mの「カメラ」は、構成P3で「前記2次元センサーチップ(100)は、マトリクス状に配置された複数のピクセルを含み」と特定され、構成P1で「光学ユニット(8)により2次元センサーチップ(100)上に結像され」と特定される、構成P1の「カメラ(7)」に相当し、前記構成mの「カメラ」が自明裏に備える《レンズ光学系》は、構成P1の「光学ユニット(8)」に相当し、前記構成mの「カメラ」が自明裏に備える《マトリクス配置された複数画素のセンサーアレイ》は、構成M’ほかの「複数のセンサー」、構成P1ほかの「2次元センサーチップ(100)」及び構成P3の「マトリクス状に配置された複数のピクセル」に相当する。
(イ)構成mの「ヘッドランプ」、「照明又は放射に関する少なくとも1つの特性変数を方向に依存して測定する」こと、は、それぞれ構成M’の「光放射源(2)」、「ビームプロファイルを測定する」こと、に相当する。
イ(ア)構成nで「ヘッドランプ」に対し「システムは水平方向(y軸周り)にパンし、垂直方向(x軸周り)に傾斜」することは、構成N’で「光放射源(2)」が「第1の軸(31)及び前記第1の軸に直交する第2の軸(32)の周りで回転」されること、及び、構成Q0で「前記光放射源(2)は、光分布における所望の立体角の領域(56)が前記測定壁(5)を照射するように回転され」ること、に相当する。
(イ)構成nで「カメラ」が「ヘッドランプの左1mの、ヘッドランプと同じ高さに、スクリーンから10m離れて設置され」ることは、構成Nの「前記複数のセンサーは、位置的に固定され且つ不動となるように配置され」ることに相当する。
(ウ)構成nで、「カメラ」が「ヘッドランプをオンにした後、シャッタスピードが異なる1つの適切な絞りサイズによって、測定スクリーンの複数の画像を撮影」することは、構成Nの「少なくとも実質的に前記光放射源(2)の放射重心周りの球面上の照明又は放射の特性変数を示す測定値を前記複数のセンサーが記録する」ことに相当する。
ウ 構成o3で「前記カメラは測定スクリーンの画像を撮影することにより配光のデジタル読み取り値を取得する」ことは、「カメラ」の上記《センサーアレイ》が同時に配光のデジタル読み取り値を取得することにほかならないから、構成O’の「前記複数のセンサーは、前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定値を提供」すること、及び構成P5の「各センサーは前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定を提供」すること、に相当する。
エ(ア)構成p1の「測定スクリーン」は、構成P1の「測定壁(5)」に相当する。
(イ)構成p1で「ヘッドランプをオンにした後、ヘッドランプの光は測定スクリーンに放射され、カメラ(撮像光度計)がその測定スクリーンの反射光の画像を測定する」ことは、構成p3で該「スクリーン」が「測定スクリーンは、白い塗料でコーティングされた木でできた、±10度の入射角に対しランベルト表面として扱うことができるものであ」ると特定されるから、構成P1の「前記光放射源(2)からの光は測定壁(5)上で均ーな反射で反射され、反射された光はカメラ(7)によって捕捉され、前記反射された光は、光学ユニット(8)により2次元センサーチップ(100)上に結像され」ることに相当する。
オ(ア)構成q1の「測定窓」、「光度計」は、それぞれ構成Q1’の「開口部(51)」、「別のセンサー(1’)」に相当する。
(イ)構成q1の「ヘッドランプの光は、測定スクリーンに設けた測定窓を通過して測定スクリーンの15m背後の光度計に当たるように配置され」ることは、構成Q1’の「前記光放射源(2)からの光は、さらに前記測定壁(5)の開口部(51)を通して直接的に別のセンサー(1’)を照ら」すことに相当する。
カ 構成q2で「ヘッドランプの種々の放射方向について光度計によって実測した光度と、カメラで測定した測定スクリーンの照度値との線形相関関係に基づいて、ヘッドランプの種々の放射方向について、カメラで測定した照度値から推定光度を間接的に計算」することは、構成Q2’の「該別のセンサー(1’)が捕捉した信号は、前記2次元センサーチップ(100)による校正のために用いられ」ることに相当する。
キ 構成q5で「実際の適用においては、カメラの画像から適度に明るい領域から1つ、適度に暗い領域から1つの計2点を選択して光度計で光度を測定」することは、先にカメラによる撮像が行われていることを前提とし、構成q1で光度計は「測定窓を通過して測定スクリーンの15m背後」に位置すると特定されるから、構成Q5の「前記カメラ(7)の前記2次元センサーチップ(100)による前記光分布の測定の後に、前記光放射源(2)の対応する向きによって前記測定壁(5)の前記開口に入射する前記光分布の注目点が前記別のセンサー(1’)によって測定され」ることに相当する。
ク(ア)構成Q6で「該2点の光度値とカメラ画像とを組み合わせ、測定スクリーンにおける全画素の光度値を求める」ことにおける「2点の光度値」は、「前画素の光度値を求める」ために使用されているといえるから、構成Q6は、構成Q6の「前記光分布の前記注目点の測定値が前記2次元センサーチップ(100)の校正のために使用される」ことに相当する構成を含むといえる。
(イ)構成q5の光度計による測定の目的が、上記(ア)で説示したとおり「校正のため」に相当し、上記キで説示したとおり光度計による測定が「測定窓」を介して行われるするから、構成q5の「光度計で光度を測定」する工程は、構成Q4のうち「校正の目的のために、」「前記開口部(51)に瞬間的に入射する前記光分布の前記領域が前記別のセンサー(1’)によって測定され」る工程に相当する。
(2)一致点・相違点
上記(1)によれば、本件発明7と甲1発明とは、次のアの点で一致し、イの各点で相違する。
ア 本件発明7と甲1発明との一致点
「M’複数のセンサーにより光放射源(2)の照明又は放射に関する少なくとも1つの特性変数を方向に依存して測定するための方法であって、
N”前記光放射源(2)は、第1の軸(31)及び前記第1の軸に直交する第2の軸(32)の周りで回転され、
前記複数のセンサーは、位置的に固定され且つ不動となるように配置され、前記光放射源(2)は、少なくとも実質的に前記光放射源(2)の放射重心周りの球面上の照明又は放射の特性変数を示す測定値を前記複数のセンサーが記録されるものであり、
O’前記複数のセンサーは、前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定値を提供し、
P1 前記光放射源(2)からの光は測定壁(5)上で均ーな反射で反射され、反射された光はカメラ(7)によって捕捉され、前記反射された光は、光学ユニット(8)により2次元センサーチップ(100)上に結像され、
P3 前記2次元センサーチップ(100)は、マトリクス状に配置された複数のピクセルを含み、
P4 該ピクセルは前記複数のセンサーを構成し、
P5 各センサーは前記光放射源(2)の測定動作中に同時に測定を提供し、
Q0” 前記光放射源(2)は、光分布における所望の立体角の領域(56)が前記測定壁(5)を照射するよう回転され、
Q1’前記光放射源(2)からの光は、さらに前記測定壁(5)の開口部(51)を通して直接的に別のセンサー(1’)を照らし、
Q3 該別のセンサー(1’)は前記開口部(51)内に配置され、
Q2’該別のセンサー(1’)が捕捉した信号は、前記2次元センサーチップ(100)による校正のために用いられ、
Q4”校正の目的のために、前記開口部(51)に瞬間的に入射する前記光分布の前記領域が前記別のセンサー(1’)によって測定され、
Q5前記カメラ(7)の前記2次元センサーチップ(100)による前記光分布の測定の後に、
前記光放射源(2)の対応する向きによって前記測定壁(5)の前記開口に入射する前記光分布の注目点が前記別のセンサー(1’)によって測定され、
Q6前記光分布の前記注目点の測定値が前記2次元センサーチップ(100)の校正のために使用される
R ことを特徴とする方法。」
イ 相違点
(ア)相違点1(構成N’・Q0ほか)
光放射源を動かすこと(第1・第2の軸回りでの回転)が、本件発明7は、複数のセンサーすなわちカメラ(の2次元のセンサーチップ)による撮像中である「測定動作中」に行われるのに対し、甲1発明では、光放射源が配置された際(構成n)に行われるほか、「カメラの画像」を取得した後で、「カメラの画像から適度に明るい領域から1つ、適度に暗い領域から1つの計2点を選択して光度計で光度を測定」する際(構成q5)に行われ得るに過ぎず、カメラによる撮影中に光放射源を動かす(回転させる)工程を備えない点。
(イ)相違点2(構成Q3)
「別のセンサー」が、本件発明7では「開口部」内に配置されるのに対し、甲1発明では、開口部の15m背後に配置される点。
(ウ)相違点3(構成Q4)
相違点1に関連し、「別のセンサー」による測定が、本件発明7では、(光照射源が前記2次元センサーチップにより捕捉されるように回転される)測定動作中に「開口部」を介して行われるのに対し、甲1発明では、光照射源を静止させたままでカメラが光度を取得する時は、測定壁の測定窓を閉じ(構成q4)ており、別のセンサーによる測定は行われない点。
(3)相違点の検討
事案に鑑み、相違点2及び3について検討する。
ア 相違点2について
(ア)ランプなど光照射源の照明又は放射に関する少なくとも1つの特性変数を方向に依存して測定するための方法において、カメラとは別に設ける光度計などのセンサーを、測定壁の開口内に設けることについては、甲2・甲3及び参考文献1に記載がなく、周知技術であるともいえない。
(イ)また、甲1発明においては、カメラ及び光照射源を測定壁(測定スクリーン)から10m離して配置し、光度計などの別のセンサーは、測定壁の開口部の15m背後に設置することが規定されており、これは、甲1の上記2(1)ア(ア4)の摘記事項から理解されるとおり、ヘッドランプの一般的な測定システムにおいて採用されている数値であって、甲1発明はこの標準的な光学系配置を前提とする発明であると位置づけられ、構成Q6における「測定スクリーンにおける全画素の光度値」の計算も、前記光学系の配置を前提として行われるものである。そうすると、甲1発明において、光度計のみを光放射源(ヘッドランプ)から10mである測定スクリーン(測定壁)の測定窓(開口部)に移設することによって、「測定スクリーンにおける全画素の光度値」の計算式の変更を要し、前記ヘッドランプの一般的な測定システムによる測定値との関連付けも新たに考察を要することとなるから、当業者にとって、あえて前記移設を行うことの動機付けを欠くといえる。
(ウ)以上(ア)・(イ)のとおりであるから、甲1発明において、光度計を測定スクリーンの測定窓の内部へ移設し、相違点2の構成とすることは、当業者であっても容易に想到し得たこととはいえない。
イ 相違点3について
(ア)光放射源からの放射光の方向に依存した特性変数を測定スクリーンのカメラ撮影と、光度計による測定とにより測定する際に、カメラ撮影を行っている際に測定スクリーンの測定窓を開口して光度計による測定も行うという測定手順は、甲2・甲3及び参考文献1に開示がなく、周知技術であるともいえない。
(イ)甲1発明は、構成q4として「ランプを静止させたままで撮像光度計(カメラ)が光度を取得する時は、測定スクリーンの測定窓を閉じ」るとの特定事項を備える。
甲1発明において、測定スクリーンに測定窓が開口している状態でカメラによる撮影をおこなえば、該測定窓の部分が欠測領域となり、相違点1に関連し、甲1発明がカメラによる測定スクリーンの撮影中にヘッドランプを回転する工程を備えないことを考慮すると、前記欠測領域のカメラによる撮影を補充することができない。
そうすると、甲1発明において、カメラによる測定スクリーンの撮影を行う測定中に、測定窓を開口して光度計による測定を行うようにして相違点3の構成とすることには、阻害要因が存するというべきである。
(ウ)以上(ア)・(イ)のとおりであるから、甲1発明において、構成q4の「ランプを静止させたままで撮像光度計(カメラ)が光度を取得する時は、測定スクリーンの測定窓を閉じ」ることに替えて、ランプを静止させたままで撮像光度計(カメラ)が光度を取得する時には、測定スクリーンの測定窓を開けて、該測定窓を介して光度計による測定を行うようにして、相違点3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 上記ア・イのとおりであるから、相違点1について検討するまでもなく、本件発明7は、甲1発明及び甲2・甲3・参考文献1に記載された事項、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、当然に、本件発明7が甲1発明であるともいえない。
(4)本件発明9~11について
本件発明9~11は何れも、本件発明7の構成を全て備え、かつそれをさらに減縮したものである。
そうすると、本件発明9~11と甲1発明との間にも上記相違点1~3と同様の相違点が存在することとなり、そのうち相違点2・3についての非容易想到性については上記(3)で説示したとおりであるから、本件発明9~11についても、甲1発明及び甲2・甲3・参考文献1に記載された事項、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。
また、当然に、本件発明9~11が甲1発明であるということもできない。
第5.申立人の主張について
1 申立人意見書における申立人の主張
申立人は申立人意見書において、主として下記(主張1)・(主張2)の点を主張する。
(主張1)構成Q5・Q6に係る加入事項に含まれる「光分布の注目点」が、願書に添付した明細書・特許請求の範囲・図面に記載した範囲内のものではないこと。
(主張2)仮に上記(1)の「光分布の注目点」が、願書に添付した明細書・特許請求の範囲・図面に記載した範囲内のものであるとしても、甲1には、測定壁上の光分布の注目点が測定され、これらの測定値が構成のために使用することが記載されているから、構成Q5・Q6は甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことであること。
2 当審の見解
(1)主張1について
ア 本件特許明細書の【0065】には次の記載がある。
「ゴニオメーターの対応するアライメントを用いてカメラ7のセンサーチップ100での確認の後に、固定的に取り付けられ且つより大きな原動力を有するフォトメーターヘッドを用いて、光分布の顕著なポイント、例えば、後に測定される個々のゾーン内の最大値又は最小値を提供することができる。」
イ 上記アの摘記記載において「光分布」が「顕著」であるとする基準は示されておらず、「個々のゾーン内の最大値又は最小値」も、「例えば」と例示的に記載されているに過ぎないし、「最大値」と「最小値」を選定することの利点が特に開示されているともいえない。
また、「顕著」の字義は「際立って目につくさま。だれの目にも明らかなほどはっきりあらわれているさま。」であり、「注目」の字義は「関心をもって見守ること。」であって、「目につく」も「関心を持」つも、共に主観に属する概念であるといえる(字義は共に「デジタル大辞泉」による。)。
そうすると、該【0065】の「光分布の顕著なポイント」も、構成Q5・Q6の「光分布の注目点」と同様に主観的な選定基準によるものといえ、共に「光分布における任意のポイント」と言い換えることができる程度の、同種の概念に属する技術事項であると理解される。
ウ よって、本件訂正における請求項7への構成Q5・Q6の加入にあたり、カメラでの光分布測定の後に別のセンサーで測定するポイントについて、本件特許明細書の「光分布の顕著なポイント」なる記載を根拠として「光分布の注目点」と表現したことは、特許明細書等に記載した事項または記載した事項から自明な事項の範囲内でしたことであるといえ、新規事項の追加には該当しない。
(2)主張2について
本件訂正により請求項7に加入された構成Q5・Q6の容易想到性について検討するまでもなく、甲1発明において、相違点2・3の構成とすることが当業者にとって容易に想到し得たこととはいえず、本件発明7が、甲1発明及び甲2・甲3・参考文献1に記載された事項、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえず、また、本件発明7が甲1発明であるともいえないことは、上記第4.5(3)で説示したとおりである。
(3)まとめ
上記(1)・(2)のとおりであるから、上記主張1は失当であり、上記主張2は、進歩性に関する本決定の結論に影響を与えない。
第6.むすび
以上のとおりであるから、本件取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項7・9~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項7・9~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700346