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特許異議申立

2020-700649

オゾンガス発生システム及びオゾンガス発生方法

審判番号
2020-700649
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-527281外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年09月02日
審決日
2021年08月03日
公報発行日
2021年11月26日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(C01B) / P1651.536-YAA(C01B) / P1651.537-YAA(C01B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6657485号発明「オゾンガス発生システム及びオゾンガス発生方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】
特許第6657485号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。
特許第6657485号の請求項1~9に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 11項目
【理 由】

第1 手続の経緯

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本件特許第6657485号は、2018年(平成30年)11月13日(優先権主張 平成30年5月21日(JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、令和2年2月7日にその特許権の設定登録がされ、同年3月4日に特許掲載公報が発行された。その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。

令和 2年 9月 2日  :特許異議申立人 木下 桂(以下「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て

同年12月 9日付け:取消理由通知

令和 3年 2月 4日  :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

同年 3月17日  :申立人による意見書の提出

同年 4月20日付け:取消理由通知(決定の予告)

同年 6月30日  :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

令和3年6月30日提出の訂正請求書における訂正請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、次の訂正事項1~8からなる(下線部は訂正箇所を示す。)。

なお、本件訂正請求により、令和3年2月4日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1について、「前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、」との記載を、「前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項1について、「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、」との記載を、「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項1について、「前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、」との記載を、「前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。

(4)訂正事項4

本件明細書の段落【0035】について、「この発明に係るオゾンガス発生システムは、1対の平板電極に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源とを備え、前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする。条件(1)及び条件(2)は以下の通りである。条件(1) 前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm2以上、160cm2未満の範囲に設定される、条件(2) 前記複数の放電セルそれぞれに供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される。」との記載を、「この発明に係るオゾンガス発生システムは、1対の平板電極に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源とを備え、前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする。条件(1)及び条件(2)は以下の通りである。条件(1) 前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm2以上、160cm2未満の範囲に設定される、条件(2) 前記複数の放電セルそれぞれに供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される。」に訂正する。

(5)訂正事項5

本件明細書の段落【0036】について、「条件(1)及び条件(2)を満足することにより、」との記載を、「ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように条件(1)及び条件(2)を満足することにより、」に訂正する。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項8について、「前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、」との記載を、「前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項8について、「該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、」との記載を、「該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。

(8)訂正事項8

特許請求の範囲の請求項8について「(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備える、」との記載を、「(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように実行される、」に訂正する(請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。)。

(9)一群の請求項について

訂正前の請求項1の記載を請求項2~7が引用する関係にあるから、訂正前の請求項1~7は一群の請求項であるところ、本件訂正事項1~3に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項〔1~7〕を訂正の単位として請求されたものであり、また、本件訂正事項4~5に係る明細書の訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4号の規定に従い、この一群の請求項〔1~7〕を訂正の単位として請求されたものである。

また、訂正前の請求項8の記載を請求項9が引用する関係にあるから、訂正前の請求項8、9に係る発明は一群の請求項であるところ、本件訂正事項6~8に係る特許請求の範囲の訂正は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、この一群の請求項〔8、9〕を訂正の単位として請求されたものである。

2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断

(1)訂正事項1について

訂正事項1は、請求項1に記載された「前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、」との記載を、「前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、」に訂正して、「原料ガス」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、高純度酸素を原料ガスとすることは本件訂正前の本件明細書の段落【0073】に記載されており、触媒ガスを添加しないことは本件訂正前の本件明細書の段落【0003】に記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

さらに、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は、請求項1に記載された「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、」との記載を、「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、」に訂正して、「複数の放電セル」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、放電セルの放電面に光触媒が塗布されることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0086】、【0298】に記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

さらに、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について

訂正事項3は、請求項1に記載された「前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、」との記載を、「前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、」に訂正して、「オゾン発生器」の満足する設定条件をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとすることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0051】に記載されており、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにすることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0172】に記載されているから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

さらに、訂正事項3は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について

訂正事項4は、訂正事項1~3に係る請求項1の訂正に伴って、本件明細書の段落【0035】を訂正し、請求項1の記載と本件明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

そして、訂正事項1~3と同じく、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

さらに、訂正事項4は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について

訂正事項5は、訂正事項3に係る請求項1の訂正に伴って、本件明細書の段落【0036】を訂正し、請求項1の記載と本件明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

そして、訂正事項3と同じく、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

さらに、訂正事項5は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6について

訂正事項6は、請求項8に記載された「前記オゾン発生器に酸素を含んだ原料ガスが供給され、」との記載を、「前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、」に訂正して、「原料ガス」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、高純度酸素を原料ガスとすることは本件訂正前の本件明細書の段落【0073】に記載されており、触媒ガスを添加しないことは本件訂正前の本件明細書の段落【0003】に記載されているから、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

さらに、訂正事項6は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(7)訂正事項7について

訂正事項7は、請求項8に記載された「該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、」との記載を、「該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、」に訂正して、「複数の放電セル」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、放電セルの放電面に光触媒が塗布されることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0086】、【0298】に記載されているから、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

さらに、訂正事項7は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(8)訂正事項8について

訂正事項8は、請求項8に記載された「(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備える、」との記載を、「(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように実行される、」に訂正して、「ステップ(1)」及び「ステップ(2)」をより限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとすることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0051】に記載されており、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにすることは、本件訂正前の本件明細書の段落【0172】に記載されているから、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

さらに、訂正事項8は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(9)独立特許要件について

特許異議申立ては、全ての請求項1~9についてされているので、訂正事項1~8に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

3 小括

以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕、〔8、9〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて

1 本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」といい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は訂正箇所を示す。)。

「【請求項1】
1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、
前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを備え、
前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、
続きを表示(全60行)
前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、
前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、
前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、
前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足することを特徴とする、
(1) 前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm2以上、160cm2未満の範囲に設定される、
(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項2】
請求項1記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン発生器は以下の条件(3)をさらに満足することを特徴とする、
(3) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間における放電電力密度Jは、2.5W/cm2以上、6W/cm2未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項3】
請求項2記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン発生器は、前記複数の放電セルを所定の冷却温度に冷却する冷却機構をさらに含み、
前記オゾン発生器は以下の条件(4)をさらに満足することを特徴とする、
(4) 前記所定の冷却温度は5℃以上に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項4】
請求項3記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン用電源及び前記オゾン発生器は以下の条件(5)及び条件(6)をさらに満足することを特徴とする、
(5) 前記複数の放電セル全体に供給する総ガス流量Qは3.0L/min以上である、
(6) 前記複数の放電セル全体に付与する総放電電力DWと前記総ガス流量Qとの比である比電力値DW/Qは、600(W・min/L)以上であり、前記総放電電力DWは前記オゾン発生用交流電圧によって規定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項5】
請求項4記載のオゾンガス発生システムであって、
前記複数の放電セルそれぞれの放電面は平面視して円状を呈し、
前記オゾン発生器は以下の条件(7)をさらに満足することを特徴とする、
(7) 前記複数の放電セルそれぞれの放電面の直径が70mm以上、140mm未満の範囲に設定される、
オゾンガス発生システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち、いずれか1項に記載のオゾンガス発生システムであって、
前記オゾン用電源は、
出力周波数fを20kHz以上、50kHz未満の範囲に設定して、高周波交流電圧を出力するインバータ部(22)と、
前記高周波交流電圧を高電圧に昇圧して前記オゾン発生用交流電圧を得る昇圧用トランス(25)とを含む、
オゾンガス発生システム。
【請求項7】
請求項6記載のオゾンガス発生システムであって、
前記昇圧用トランスは内部励磁インダクタンス値Ltを有し、
前記複数の放電セルは全体の静電容量値C0を有し、
以下の条件式を満足する並列共振周波数fcの近傍に前記出力周波数fを設定したことを特徴とする、
条件式:fc=1/(2π・(Lt・C0)0.5)
オゾンガス発生システム。
【請求項8】
1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを用いて、オゾンガスを発生するオゾンガス発生方法であって、
前記オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含み、前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されており、
前記オゾンガス発生方法は、
(1) 前記複数の放電セルそれぞれの放電面の放電面積soを、30cm2以上、160cm2未満の範囲に設定するステップと、
(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、
前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように実行される、
オゾンガス発生方法。
【請求項9】
請求項8記載のオゾンガス発生方法であって、
前記オゾンガス発生方法は以下のステップ(3)をさらに備える、
(3) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間における放電電力密度Jを、2.5W/cm2以上、6W/cm2未満の範囲に設定するステップ、
オゾンガス発生方法。」

2 取消理由の概要

令和3年4月20日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由(下記(1)イ)及び令和2年12月9日付けの取消理由通知で通知した取消理由(下記(1)ア、イ)の概要は、次のとおりである。

(1)取消理由1(サポート要件違反)

ア 発明の詳細な説明に課題解決手段として記載されたガス滞在時間Toについて

本件発明の課題は、本件明細書の段落【0031】、【0034】の記載から、システム構成を必要最小限に抑えて、大ガス流量域においても高濃度なオゾンを外部に出力することができるオゾンガス発生システム、及び、オゾンガス発生方法を提供することであると解されるところ、発明の詳細な説明には、放電空間におけるガス滞在時間Toを短くすることが、当該課題を解決する手段として記載されている。

また、ガス滞在時間Toは、放電面の放電面積so、放電ギャップ長d及び1放電空間当たりの原料ガス流量qoにも影響されるものであるから、放電面積so及び原料ガス流量が特定されても、ガス滞在時間Toは特定されない。

そうすると、ガス滞在時間Toの範囲も、放電ギャップ長dの範囲も特定されていない請求項1~9に係る発明は、上記課題を解決する手段を反映しているといえないから、請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

よって、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

イ 原料ガスの組成及び放電面に塗布される光触媒材料について

本件発明の課題は、上記アのとおりと解されるところ、発明の詳細な説明の<実施の形態>において当該課題を解決することが裏付けられているのは、放電面に光触媒材料が塗布され、かつ高純度酸素ガスが原料ガスとして供給されるオゾン発生器であるといえる。

一方、原料ガスに触媒ガスを添加した原料ガスを用いる等により、放電面に光触媒材料が塗布されず、又は高純度酸素ガスが原料ガスとして供給されないものであるオゾン発生器は、オゾン発生のメカニズムが異なる以上、技術常識からみて、最適な放電面の放電面積so及びそれぞれの放電空間に供給する原料ガス流量qoの範囲も異なる蓋然性が高く、条件(1)及び条件(2)に規定される範囲において、課題を解決することができるか疑義がある。

そうすると、放電面に光触媒材料が塗布され、かつ高純度酸素ガスが原料ガスとして供給されるものであると特定されていない請求項1~9に係る発明は、上記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとはいえないから、請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

よって、本件特許の請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由の概要

申立人が主張する特許異議申立理由のうち、上記2の取消理由において採用しなかった特許異議申立理由は、概略、以下のとおりである。

(1)申立理由1(進歩性欠如)

設定登録時の請求項1、8に係る発明は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、設定登録時の請求項2~5、9に係る発明は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、設定登録時の請求項6、7に係る発明は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(特許異議申立書第9頁第1行~第18頁第10行)。

(2)申立理由2(サポート要件違反)

ア 放電面の形状について

設定登録時の請求項1~4、6~9に係る発明は、放電面の形状を特定するものではないが、単位周囲長さl(cm)を固定した条件において、オゾン生成能力(生成されるオゾンの濃度)は、放電面の形状に依存することになり、放電セルの形状が変われば、必要なガス流量も変わるものと考えられる。

また、本件明細書の段落【0156】~【0238】には、実施例として、放電面が円形の放電セルを用いた場合に、オゾン発生器が条件(1)及び条件(2)を満足するように設定することでオゾン発生器からより高濃度のオゾンガスを取り出せることが記載されている。

そして、放電面の形状が変われば、必要なガス流量も変わると考えられるところ、本件明細書において放電面の形状が円形以外の正方形や長方形としたときの条件を抽出するための実験結果が記載されていない。

したがって、放電面の形状が円形以外の場合を含む請求項1~4、6~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない(特許異議申立書第18頁第13行~第20頁第2行)。

イ 放電ギャップ長について

設定登録時の請求項1~9に係る発明は、放電ギャップ長を特定するものではないが、放電ギャップ長が数十~数百μmの短ギャップ長であるという構成は、目的を達成するために必須の構成である。

また、本件明細書には、オゾン分解量を抑えるためにガス滞在時間を短くすることが記載されているところ、ガス滞在時間=放電面積×放電ギャップ長/原料ガス流量の式により、ガス滞在時間は求められるため、このうちの放電面積および原料ガス流量のみの範囲を規定したとしても、放電ギャップ長を規定しなければ、ガス滞在時間を定めることはできない。

さらに、ガス滞在時間を定めるためには、放電ギャップ長が必須であるにもかかわらず、本件明細書の段落【0156】~【0238】に記載された実施例には、放電ギャップ長についての記載がない。

したがって、放電ギャップ長が規定されていない請求項1~9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない(特許異議申立書第20頁第3行~第21頁第8行)。

<甲号証一覧>

甲第1号証:特許第2983153号公報

甲第2号証:Slawomir Jodzis, “Effective Ozone Generation in Oxygen Using a Mesh Electrode in an Ozonizer with Variable Linear Velocity”, Ozone: Science & Engineering: The Journal of the International Ozone Association, 2012, Vol. 34, p. 378-386

甲第3号証:Slawomir Jodzis et al., “Ozone Synthesis Under Surface Discharges in Oxygen: Application of a Concentric Actuator”, IEEE Transactions on Plasma Science, 2011, Vol. 39, No.4, p. 1055-1060

甲第4号証:特開2017-190259号公報
甲第5号証:特開2004-142963号公報
甲第6号証:特許第5923658号公報

4 甲号証及び参考文献の記載事項について

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(1)甲第1号証の記載内容及び引用発明

ア 甲第1号証の記載内容

甲第1号証には、以下の記載がある(当審注:下線は当審による。「…」は当審による省略を意味する。以下も同様。)。

(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、オゾン発生装置、特に高濃度オゾンを高効率で発生することの可能なオゾン発生装置に関するものである。」
(イ)「【0100】
【実施例】実施例1.
以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1はこの発明の実施例1を示す断面図であり、図47に示した従来例と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。図1において、11はヒューズ12を介して電源1に接続された給電板、31は給電板11に電気接触された導電層(電極)である。この導電層31は図47の従来例の高圧電極3に相当する。4は誘電体であり、アルミナセラミックス板により形成されている。このセラミックス板4と導電層31の大きさの関係を図2に示す。図2中、32はガス通路のためにセラミックス板4の中央部に設けられた穴(ガス供給機構)である。この導電層31はセラミックス板4の片面に厚み40ミクロンの銀メタライズ層で形成されている。給電板11と導電層31の一部でも接触しておれば給電板11と導電層31は同電位となる。したがって、たとえ給電板11とセラミックス板4の間に隙間が生じても、両者が同電位であるため、その隙間には電界がかからず、したがってボイド放電が発生することはない。また、セラミックス板4の外周部もしくは内周部を伝って接地電極2に沿面放電が飛ばないように(図1参照)、セラミックス板4の全面に導電層31を形成せず、外周部と内周部に導電層31の形成されていない領域を設けている。沿面放電を防止するための導電層31と接地電極2との距離は、印加電圧にもよるが、通常十分な2mm以上に設定してある。
【0101】61は金属製のスペーサであり、接地電極2とセラミックス板4との間に挿入されている。該スペーサ61を介してセラミックス板4と接地電極2により、放電の発生する放電空間5が形成され、導電層31及び接地電極2の間に発生する放電により、該放電空間5へのガス供給口(ガス供給機構)7から供給された酸素を含むガスの一部が放電空間5内でオゾン化される。用いるガスは酸素単独でも、窒素と酸素の混合ガスでも空気でもよい。ただし、水分量はなるべく少なく、酸素濃度はなるべく高いほうが効率的である。セラミックス板4、接地電極2はそれぞれ金属スペーサ61を介して面接触されており、セラミックス板4での発熱は、スペーサ61を介して、冷却された接地電極2で有効に吸収される。」

(ウ)「【0105】次に動作について説明する。ガスは図1において接地電極2の周囲部から矢印7の方向に吸い込まれ、放電空間5を通過後、矢印81の方向に流れ、ガス排出管(ガス供給機構)9を通って矢印8の方向に排出される。…」

(エ)「【図1】
」
(オ)「【図2】
」

イ 甲第1号証に記載された発明

上記ア(エ)の図1の符号「1」で示される回路記号は交流電源を意味するから、上記ア(イ)の「電源1」は交流電源である。

また、上記ア(エ)の図1には符号「2」(接地電極)、「4」(セラミックス板)、「31」(導電層)は、それぞれ、上下に2つ含まれる。

よって、甲第1号証には、実施例1に基づく発明として、以下の発明が記載されている。

「導電層と、冷却された接地電極と、導電層が片面に形成された誘電体であるセラミックス板と、導電層に電気接触された交流電源とを備え、セラミックス板と接地電極により形成された放電空間へ酸素単独からなるガスが供給され、導電層及び接地電極の間に発生する放電により、酸素単独からなるガスの一部が放電空間内でオゾン化され、放電空間を通過後、ガス排出管を通ってガスが排出され、導電層、接地電極及びセラミック板をそれぞれ上下に2つ含むオゾンガス発生装置。」(以下、「甲1-1発明」という。)

「導電層と、冷却水で冷却された接地電極と、導電層が片面に形成された誘電体であるセラミックス板と、導電層に電気接触された交流電源とを用いて、オゾンガスを発生するオゾンガスの発生方法であって、セラミックス板と接地電極により形成された放電空間へ酸素単独からなるガスが供給され、導電層及び接地電極の間に発生する放電により、酸素単独からなるガスの一部が放電空間内でオゾン化され、放電空間を通過後、ガス排出管を通ってガスが排出され、導電層、接地電極及びセラミック板をそれぞれ上下に2つ含むオゾンガス発生方法。」(「甲1-2発明」という。)

(2)甲第2号証~甲第6号証、申立人が令和3年3月17日に意見書と共に提出した参考文献1(特開2010-265121号公報)の記載内容

ア 甲第2号証の記載内容

甲第2号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「The way of the gas flow inside the ozonizer is presented in Figure 2. The discharge element consists of a metal mesh (brass, mesh 12, wire diameter 0.5mm) adhered to the ceramic plate (9) made of alumina (φ100×1mm) with an electric permeability of ε = 9.1. The reverse side of the plate adjacent to the metal wall of the cooling chamber (12), which was the induction electrode. … The total volume of the reaction space was 5 cm3 and ca. 0.5 cm3 was occupied with a mesh.
However, not the entire volume of the space was used similarly. There are specific places in the reaction space, where the mesh wires adhere to the ceramic plate. The discharge develops on the metal-dielectric border and forms a system of regularly distributed “spots” (Figure 3). …
The studies were carried out in pure (99.999%) oxygen. The flow rates of 10, 20 and 40 Ndm3/h were used.」(p. 380右欄第3行~第25行)

(当審訳:オゾン発生装置の内部のガスの流れが図2に示されている。放電素子は透磁率ε=9.1のアルミナ製のセラミックプレート(9)(φ100×1mm)に付着された金属メッシュ(真ちゅう、メッシュ12、線径0.5mm)で構成される。プレートの反対側は、冷却チャンバー(12)の金属壁に隣接しており、これが誘電体電極となった。…反応空間の総体積は、5cm3であり、約0.5cm3がメッシュで占められていた。

しかしながら、その空間のすべてが等しく使用されていなかった。反応空間には特定の場所があって、そこでは、メッシュの線材がセラミックプレートに付着されている。放電は、金属と誘電体の境界で発生し、規則的に分布した「スポット」のシステムを形成する(図3)。…

研究は、純粋な(99.999%の)酸素で実施された。10、20及び40Ndm3/hの流量が用いられた。)

(イ)「
」

(当審訳:図3.メッシュ電極上で発生する放電の写真(透明導電性電極を通して空気中で撮影された写真;実際の直径80mm);露出時間25ms。誘電接触のあるメッシュの場所にグローが表示される。)

イ 甲第3号証の記載内容

甲第3号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「Fig. 1 shows the ozonizer cross section. Inside the ozonizer, the ceramic discharge element (actuator, Fig. 2) made of an alumina plate with a diameter of 100 mm and thickness of 1 mm was located. … On the active side of the plate, the electrode consists of concentric strips with a 1-mm thickness. … On the reverse side, an induced electrode was made in the form of a circle with a 90-mm diameter. …
Typically, the gas flows toward the middle of the actuator. The linear velocity of the gas in the reaction space varied and equaled (under normal condition) from 0.005-0.03 m/s (at 10Ndm3/h) to 0.04-0.28 m/s (at 80Ndm3/h). The reaction space volume was 12.9 cm3.」(p. 1055右欄第7行~第27行)

(当審訳:図1にオゾン発生装置の断面図を示す。オゾン発生装置の内部には、100mmの直径、1mmの厚さのアルミナプレートで作られたセラミック放電素子(アクチュエータ、図2)が配置されていた。…プレートの活性面上では、厚みが1mmの同心円のストリップで電極が構成されている。…反対の面の上では、誘電体電極が90mmの直径の円形で作られた。…

通常、ガスはアクチュエータの中央に向かって流れる。反応空間のガスの線速度は(標準状態で)0.005~0.03m/s(10Ndm3/hにおいて)、0.04~0.28m/s(80Ndm3/hにおいて)の範囲で変化する。反応空間の体積は12.9cm3である。)

(イ)「
」

(当審訳:図2 同心円ストリップからなる電極を備えるアクチュエータ。アルミニウムのコーティング(約60μm)で覆われたセラミックプレート(厚さが1mm))

ウ 甲第4号証の記載内容

甲第4号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0048】
すなわち、放電電力密度W/Sの範囲は、1~5(W/cm2)の範囲内であることが実験から分かった。」
(イ)「【0156】
そして、本実施の形態のオゾン発生器1に課したオゾン分解抑制要件は、上記ステップ(d)において、以下の要件(d1)~(d3)を満足することを特徴としている。
【0157】
(d1) 前記原料ガスとして酸素ガス純度を99.99(%)とした高純度酸素ガスを用い、
(d2) 前記原料ガスの供給時のガス流量は3(L/min)以上とし、
(d3) 前記誘電体バリア放電における放電電力密度を1~5(W/cm2)の範囲内で、かつ、比電力W/Q値を300~500(W・min/L)の範囲内にしている。
【0158】
本実施の形態のオゾン発生方法は上記特徴を有することにより、オゾン発生器1内で高濃度のオゾンが生成でき、かつ、放電による単位体積当たりの注入エネルギーで発熱するガス温度も抑制でき、オゾン発生器1内でのオゾン分解率を80%以下に抑えて、取り出せるオゾン濃度が200(g/m3)以上の高濃度オゾンの生成を可能にすることができる。」

エ 甲第5号証の記載内容

甲第5号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0093】
以上のように実際の装置における知見から本実施の形態のオゾン発生器においては、放電領域ギャップ長d、放電ガス圧力p、両者の積p×d、および放電電力密度Wは、装置の大きさ、容積率、経済性を考慮すると、図13から図16の黒四角で示された領域、つまり以下の表1の範囲から選択されることが望ましい。
【0094】
」

オ 甲第6号証の記載内容

甲第6号証には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0012】
本発明の一実施形態によれば、オゾンを生成するために必要な出力電力より低い電力から全出力電力までの範囲の電力で動作できるとともに、出力電力を増加させることが可能な電力系統及び電力制御技術が提供される。本発明の具体的な実施形態によれば、電力系統における20kHz以上40kHz以下の周波数範囲及び10kWの出力電力が提供される。出力電力は、10kWの1%以下もの低さまで制御される。具体的な実施形態によれば、5kWの電力を出力可能な2つのパワートレインを使用して、10kWの出力電力を実現することができる。」
(イ)「【0021】
共振タンク330は、電力段320のフルブリッジのIGBT及び高電圧変圧器340を駆動回路、共振インダクタLr325(変圧器漏れインダクタンスを含むことができる)、高電圧増幅変圧器Xfm340(磁化インダクタンスLm341を有する)、及びオゾン負荷セルスタック310(容量Co311、インピーダンスRo312、及びクランプ電圧Do313を有する)内の非対称性による故障から保護するために、ブロッキングコンデンサCb331を含んでもよい。5kWの単一のパワートレインにより、変圧器の出力電圧は、最大出力の負荷動作において約30kHzのスイッチング周波数(fsw)で約8kV(pk?pk)まで増加させることができる。共振タンクの周波数fresは、
で与えられる。Nは変圧器の巻線比である。Cb>>Co*N2、Lm>>Lr、及び線質係数Qが1より大きく
で定義される場合、図1Aに示す単純化した構成が有効となる。諸実施形態では、共振タンクの電流の再循環(エネルギー損失)を抑制するために、Qが3未満になるように選択される。このモデルの構成要素は、分析を簡単にするために高次波を(基本波のために)無視しているが、(第1次波のために)理想化されていることが理解されよう。」

カ 申立人が令和3年3月17日に意見書と共に提出した参考文献1(特開2010-265121号公報)の記載内容

参考文献1には、下記の事項が記載されている。

(ア)「【0045】
本実施形態のオゾン発生装置用放電セルは、所定の間隔をあけて平行に配置された平板状の誘電体10,10を備えている。誘電体10,10は体積抵抗率が1014Ω・cm以上である純度が99.5%以上の高純度アルミナ焼結基板からなる。
…
【0048】
続きを表示(全14行)
放電空隙20は、誘電体10,10の外縁部に直角方向に形成された原料ガス流路及びオゾンガス流路と連通している。放電空隙20のギャップ量は、オゾンガスの高純度化のために小さいほどよく、具体的には200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下が特に好ましい。
【0049】
誘電体10,10の対向面のシール部11,11より内側には、リブ12と共に機能膜としての低抵抗層14が設けられている。低抵抗層14は、オゾン濃度の低下を阻止するTiO2 の如き機能物質の粉末14aを、ガラスからなる無機系固定材14bにより対向面に膜状に固定して形成された機能膜であり、シール部11より内側のリブ12を除く部分に形成されている。
…
【0051】
誘電体10、10の反放電空隙側(背面側)の表面には、外縁部を額縁状に残して膜状の電極30,30が金属箔接着などによりそれぞれ形成されており、これには高周波高圧電源40が接続されている。電源40の一方の端子は接地されており、その端子と接続される電極30が接地電極であり、他方の電極30が高圧電極である。
【0052】
誘電体10,10の更に背面側には、絶縁板を介して板状の冷却体等が設けられており、これにより放電セルユニットが構成される。板状の冷却体は、誘電体10と同様のセラミック板でもよいし、金属板でもよい。いずれの冷却体も、内部を板面に平行な方向に冷媒が流通する構成になっている。そして、このような放電セルユニットが厚み方向に積層されることにより、オゾン発生装置用放電セルが形成される。
【0053】
オゾン発生装置の運転においては、放電セルの放電空隙20に原料ガスとして高純度の酸素ガスを供給する。酸素ガスの純度としては、クリーン度等の点から99.9%以上が好ましく、99.99%以上が特に好ましい。また、放電空隙20に無声放電を発生させるべく、電極30,30の間に所定の高周波高電圧を印加する。更に、電極30,30の背面側に配置された冷却体に冷媒としての冷却水を供給する。」
(イ)「【0057】
上述したオゾン発生装置用放電セルにおいて、高圧電極側及び接地電極側の誘電体として市販の純度99.5%の高純度アルミナ粉末焼結基板を用いた。その体積抵抗率は1014Ω・cm、厚さは0.5mmである。放電空隙の面積は100cm2、ギャップ量は0.1mm(100μm)である。
【0058】
誘電体の表面に低抵抗層を形成するために機能物質として使用する粉状の金属又はその酸化物としては、Ti、Ni、Wという3種類の金属粉末、TiO2、NiO、WO3という3種類の金属酸化物粉末を用意し、これらを単独で或いは混合して用いた。いずれの粉末の粒径も最大で5μmである。
…
【0064】
完成した放電セルを組み込んだオゾン発生装置を運転し、オゾンガスを発生させた。原料ガスとしては、純度が99.99%以上の酸素ガスを1.0L/minの流量、0.2MPaの圧力で供給した。供給電力は当該オゾン発生装置の最大出力とした。発生したオゾンガスのオゾン濃度と、誘電体表面に形成された低抵抗層の体積抵抗率との関係を図3に示す。」

(ウ)「【図1】

5 当審の判断

(1)取消理由1(サポート要件違反)について

ア 発明の詳細な説明に課題解決手段として記載されたガス滞在時間Toについて

本件訂正により本件発明1~9は、「ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になる」ことが特定されるものであり、本件発明の課題を解決する手段を反映したものとなっている。

イ 原料ガスの組成及び放電面に塗布される光触媒材料について

本件訂正により本件発明1~9は、「オゾン発生器に触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる原料ガスが供給され」、「放電面に光触媒材料が塗布され」ることが特定されるものであり、本件発明の課題を解決することができることに疑義がないものである。

ウ 小活

したがって、本件発明1~9は、発明の詳細な説明に記載したものであるから、取消理由1に理由はない。

(2)申立理由1(進歩性欠如)について

ア 本件発明1、8について

(ア)本件発明1と甲1-1発明を対比する。

甲1-1発明の「導電層」及び「接地電極」、「セラミックス板」は、本件発明1の「1対の平板電極(1,3)」、「誘電体」に相当する。

また、甲1-1発明の「導電層及び接地電極の間に発生する放電」は、セラミックス板を介して導電層及び接地電極の間に交流電源により生じさせる放電であるから、「前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電」に相当する。

さらに、甲1-1発明の「導電層、接地電極及びセラミック板をそれぞれ上下に2つ含む」ことは、放電セルが2つ積層されることを意味するから、「前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含」むことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、

「1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、
前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを備え、
前記オゾン発生器に」「原料ガスが供給され、
前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、
前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含」む

「オゾンガス発生システム。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

本件発明1は、「原料ガス」が「触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる」のに対し、甲1-1発明は、酸素単独からなる点。

<相違点2>

本件発明1は、「前記放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されて」いるのに対し、甲1-1発明は、このような特定がない点。

<相違点3>

本件発明1は、「前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足し」、ここで、

「(1) 前記複数の放電セルは、それぞれ放電面の放電面積soが30cm2以上、160cm2未満の範囲に設定される、
(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoは、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定される、」

ものであるのに対し、甲1-1発明は、このような特定がない点。

事案に鑑み、上記相違点3について検討する。

まず、オゾンガス発生システムにおいて、「前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように、前記オゾン発生器は以下の条件(1)及び条件(2)を満足」させることは本件特許に係る優先日時点の技術常識ではないから、この点が甲第1号証に記載されていない以上、上記相違点3は実質的なものといえる。

次に、上記相違点3に係る本件発明1の特定事項の容易想到性について検討する。

甲第2号証には、上記4(2)アのとおり、オゾン発生装置に用いられるメッシュ電極の直径が80mmであること、40Ndm3/h(約0.67L/min)の流量が用いられること、反応空間の総体積が5cm3であることが記載されている。

また、甲第3号証には、上記4(2)イのとおり、同心円状ストリップからなる電極の直径が90mmであること、反応空間のガス流量が80Ndm3/h(約1.33L/min)であること、反応空間の体積が12.9cm3であることが記載されている。

しかしながら、甲第2号証や甲第3号証には、オゾンガスの分解量を抑えるためにガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することが記載されていないから、甲1-1発明において、甲第2号証や甲第3号証の記載を考慮しても、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明8と甲1-2発明を上記(ア)と同様に対比すると、両者は、

「1対の平板電極(1,3)に誘電体を介し配置した放電セルを有するオゾン発生器(200)と、前記オゾン発生器にオゾン発生用交流電圧を付与するオゾン用電源(100)とを用いて、オゾンガスを発生するオゾンガス発生方法であって、
前記オゾン発生器に」「原料ガスが供給され、前記オゾン発生器は、前記放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させ、前記放電空間に供給した原料ガスからオゾンガスを生成し、該オゾンガスを外部に出力し、前記放電セルは、多段に積層された複数の放電セルを含」む

「オゾンガス発生方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1’>

本件発明8は、「原料ガス」が「触媒ガスを添加しない高純度酸素からなる」のに対し、甲1-2発明は、酸素単独からなる点。

<相違点2’>

本件発明8は、「前記複数の放電セルは、それぞれ放電面に光触媒材料が塗布されて」いるのに対し、甲1-2発明は、このような特定がない点。

<相違点3’>

本件発明8は、「前記オゾンガス発生方法は、

(1) 前記複数の放電セルそれぞれの放電面の放電面積soを、30cm2以上、160cm2未満の範囲に設定するステップと、

(2) 前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qoを、0.5L/min以上、2.5L/min未満の範囲に設定するステップとを備え、

前記ステップ(1)及び前記ステップ(2)は、前記複数の放電セルそれぞれの放電空間を原料ガスが通過する時間をガス滞在時間Toとした場合、前記ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるように実行される」

ものであるのに対し、甲1-2発明は、このような特定がない点。

事案に鑑み、上記相違点3’について検討する。

まず、上記相違点3’は、上記相違点3と同様に、実質的なものである。

次に、上記相違点3’に係る本件発明8の特定事項の容易想到性について検討すると、上記相違点3と同様に、甲1-2発明において、甲第2号証や甲第3号証の記載を考慮しても、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2~5、9について

(ア)本件発明2~5は、本件発明1を直接又は間接に引用するものであるから、本件発明2~5と甲1-1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点3で相違する。

そして、上記相違点3は実質的なものであって、さらに、甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術(上記4(2)ウ、エ)を考慮しても、甲1-1発明において、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2~5は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明9は、本件発明8を引用するものであるから、本件発明9と甲1-2発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点3’で相違する。

そして、上記相違点3’は実質的なものであって、さらに、甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術(上記4(2)ウ、エ)を考慮しても、甲1-2発明において、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明9は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明及び甲第4号証、甲第5号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明6、7について

本件発明6、7は、本件発明1を直接又は間接に引用するものであるから、本件発明6、7と甲1-1発明とを対比すると、少なくとも、上記相違点3で相違する。

そして、上記相違点3は実質的なものであって、甲第6号証に記載された周知技術(上記4(2)オ)を考慮しても、甲1-1発明において、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6、7は、甲第1号証~甲第3号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

エ 小活

以上のとおりであるから、申立理由1に理由はない。

(3)申立理由2(サポート要件違反)について

ア 放電面の形状について

上記2(1)アのとおり、本件発明の課題は、本件明細書の段落【0031】、【0034】の記載から、システム構成を必要最小限に抑えて、大ガス流量域においても高濃度なオゾンを外部に出力することができるオゾンガス発生システム、及び、オゾンガス発生方法を提供することであると解されるところ、発明の詳細な説明には、放電空間におけるガス滞在時間Toを短くすることが、当該課題を解決する手段として記載されている。

一方、本件明細書には、放電面の形状に関して、以下の記載がある。

「【0051】
また、放電セル(基本セルS1,S2)の放電面を平面視して円状で構成し、放電面の直径(外径)を小さくすることで、放電セルの放電空間を原料ガスが通過する時間であるガス滞在時間To[ms]を短縮させている。」
「【0114】
ガス滞在時間Toは、放電空間における電子、イオン、放電ガスと放電面で生成したオゾンガスとの衝突によるオゾン分解量と、放電空間内で滞在しているオゾン自身の自己オゾン分解量の両方に密接に関連する。また、単位周囲長さl(cm)を基準とした平均ガス流速vo/d(cm/s)は、1単位の放電セル内で生成されるオゾン生成能力と密接に関係しており、オゾン生成能力に対しガスの平均ガス流速vo/dが大きければ、総ガス流量Qが大きいことになり、取出せるオゾン濃度が低くなることになる。」
「【0124】
また、単位周囲長さl(cm)を基準とした放電面に流れる平均ガス流速vo/d(cm/s)は、放電セルの形状に依存する。例えば、円板状の放電セルの場合、単位周囲長さl(cm)を基準とした放電セルに流れるガス断面savは、放電面積soの1/2相当の放電径に流れ込む単位ギャップ長当たりの平均ガス流速voで定義すると以下の式(12)で表される。
【0125】
vo(cm/s)=qo/(2π・(so/2π)0.5)
=f(so)・{1/To}…(12)
なお、単位ギャップ長当たりの平均ガス流速voは、関数f(so)と放電空間中のガス滞在時間Toの逆数に依存する値である。」
「【0295】
<その他>本実施の形態では、放電セルにおける放電面の形状を平面視して円状に構成したオゾン発生器200を示したが、放電セル形状を正方形もしく長方形形状の平板セルで構成してもよい。この場合も、条件(2)を満足する投入できる放電電力密度Jの範囲に設定して、多段の放電セルを積層すれば良い。」

上記の段落【0051】、【0114】、【0124】、【0125】の記載によれば、放電面の形状とガス滞在時間Toや平均ガス流速voとは一定の関係があることが理解され、段落【0295】の記載によれば、放電セル形状が正方形もしくは長方形でもよく、円形に限られないことが理解されるものの、「ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になる」ことが特定される本件発明1~4、6~9において、放電面の形状が円形でなければ、本件発明の課題が解決できないとする根拠となる記載は本件明細書の内容を子細に見ても確認できない。

したがって、放電面の形状が円形以外の場合を含むものであっても、本件発明1~4、6~9は、当業者が本件発明の課題を解決することができると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

イ 放電ギャップ長について

本件明細書には、放電ギャップ長に関して、以下の記載がある。

「【0122】
To(ms)=(d・so)/qo…(11)
なお、式(11)において、dは、放電ギャップ長(mm)、soは、1単位の放電セルの放電面における放電面積(cm2)、qoは1放電空間当たりの原料ガス流量(L/min)である。」
「【0242】
オゾン用電源100は、放電空間の放電ギャップ長dが長くなれば、ガス滞在時間Toが非常に長くなり、放電空間で生成するオゾン生成量に対するオゾン分解量が非常に大きくなり、高濃度なオゾンガスを取り出せなくなる。
【0243】
また、放電ギャップ長dが短くなり過ぎると、また、放電空間を通過するガス流速が増し、放電面が接近することで生成したオゾンガスと放電面の壁との衝突や放電空間でのガス衝突や発生した電子、イオン、放電ガスとの衝突が増すため、オゾン分解量が非常に大きくなる。このように、放電ギャップ長dが短くなり過ぎると、高濃度なオゾンガスを取り出せなくなるため、放電ギャップ長dは、数十~数百μm条件の短ギャップ長範囲にすることが望ましい。特に、より高濃度なオゾンガスを取り出すためには、放電ギャップ長dを20μm~100μmの範囲にすることで、より効果を奏する。」
「【0252】
本実施の形態のオゾンガス発生システム1000は、上述した条件(1)~条件(3)を満足することにより、複数の放電セルそれぞれの放電面に関し以下の効果を奏する。なお、3つの条件を満足する際、オゾン発生器の放電ギャップ長dは数十~数百μmnの短ギャップ長に設定する必要がある。以下、この点を詳述する。
【0253】
放電ギャップ長を数十~数百μmの短ギャップの誘電体バリア放電の方が、高電界の放電が実現できる。すなわち、短ギャップの誘電体バリア放電の方が、高エネルギーの放電光エネルギーを有した放電になり、触媒ガスを含んだガスや放電面に塗布した光触媒を光励起させるのに有効に働き、結果として酸素ガスの解離を促進させる効果がより高まる。このため、条件(1)~条件(3)を満足したオゾンガス発生システム及びオゾンガス発生方法を実現する際、オゾン発生器の放電ギャップ長は数十~数百μmに設定することが望ましい。」

上記の段落【0122】、【0242】の記載によれば、放電ギャップ長とガス滞在時間Toは一定の関係があることが理解され、段落【0243】、【0252】、【0253】の記載によれば、放電ギャップ長dは、数十~数百μm、特に、20μm~100μmの範囲にすることが望ましいことが理解されるものの、「ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になる」ことが特定される本件発明1~9において、放電ギャップ長dが数十~数百μm、特に、20μm~100μmの範囲でなければ、本件発明の課題が解決できないとする根拠となる記載は本件明細書の内容を子細に見ても確認できない。

したがって、放電ギャップ長dが規定されないものであっても、本件発明1~9は、当業者が本件発明の課題を解決することができると認識できるものであるから、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

ウ 小活

以上のとおりであるから、申立理由2に理由はない。

(4)申立人の主張について

申立人は、令和3年3月17日提出の意見書において下記ア~ウを主張するので、以下で検討する。

ア 特許法第29条第2項(進歩性欠如)について

(ア)申立人は、本件発明1、8は、甲第1号証~甲第6号証に記載された発明及び参考文献1に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである旨を主張する。

そこで、この主張を検討すると、申立人の主張は、甲第1号証~甲第6号証及び参考文献1をどのように用いることを想定したものか定かではないが、申立理由1の内容を考慮して、甲第1号証を主たる証拠として、甲第2号証~甲第6号証、及び、参考文献1を従たる証拠とし、本件発明1、8の容易想到性を以下検討する。

(イ)本件発明1と甲1-1発明を対比すると、上記(2)ア(ア)に記載されるとおり、両者は、少なくとも、上記相違点3で相違する。

そこで、上記相違点3について検討する。

上記(2)ア~ウで検討したとおり、甲第2号証や甲第3号証の記載事項、あるいは、甲第4号証~甲第6号証に記載された周知技術を考慮しても、甲1-1発明において、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

また、参考文献1には、上記4(2)カ(イ)のとおり、実施例において「原料ガスとしては、純度が99.99%以上の酸素ガスを1.0L/minの流量、0.2MPaの圧力で供給した」と記載されているが、上記4(2)カ(ア)の「このような放電セルユニットが厚み方向に積層されることにより、オゾン発生装置用放電セルが形成される」なる記載及び実施例において放電セルの構造が具体的に記載されていないことから、「1.0L/minの流量」という数値が放電セルあたりの流量(本件発明における「前記複数の放電セル全体に供給する総ガス流量Q」)を意味するのか、放電セルユニットあたりの流量(本件発明における「前記複数の放電セルそれぞれの放電空間に供給する原料ガスの原料ガス流量qo」)を意味するのか定かではないから、「1.0L/minの流量」を放電セルユニットあたりの流量と認めることができない。

そうすると、参考文献1に記載された「1.0L/minの流量」という値を用いて、ガス滞在時間Toを算出することはできない。

さらに、参考文献1には、オゾンガスの分解量を抑えるためにガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは記載されていない。

したがって、甲1-1発明において、参考文献1に記載の周知技術を考慮しても、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

(ウ)本件発明8と甲1-2発明を対比すると、上記(2)ア(イ)に記載されるとおり、両者は、少なくとも、上記相違点3’で相違する。

そこで、上記相違点3’について検討すると、上記(イ)と同様に判断されるから、甲1-2発明において、甲第2号証や甲第3号証の記載事項、あるいは、甲第4号証~甲第6号証、参考文献1に記載の周知技術を考慮しても、ガス滞在時間Toが20ms~80msの範囲になるようにオゾン発生器を設定することは当業者が容易に想到し得たことではない。

イ 特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)について

(ア)申立人は、本件発明1、8の「高純度酸素」とは、どの程度の濃度であるのか不明確であり、例えば、空気(大気)中の酸素は約21%であるが、21%よりも大きければ高純度であるのか、又は、100%の酸素が高純度であるのか、高純度の範囲が不明確である旨を主張する。

そこで、この主張について検討すると、「高純度酸素」は不純物が一定濃度以下である酸素からなるガスであり、一般的に広く流通するものであることは本件特許に係る優先日時点の技術常識であるから、例えば、酸素が21%の空気(大気)は「高純度酸素」でないこと、100%の酸素は「高純度酸素」であることは、当業者にとって明らかである。

したがって、「高純度酸素」なる記載は、当業者の優先日時点における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼす程度に不明確であるとはいえない。

(イ)申立人は、本件発明1、8の「触媒ガス」とは具体的にはどのような物質であるのか不明確であるとともに、どのような化学反応を促進させる触媒ガスであるのか不明確である旨を主張する。

そこで、この主張について検討すると、本件明細書の段落【0020】には、「…放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させると、「供給された原料ガスに含まれる微量の窒素ガスの触媒作用」…によって、酸素原子の解離量が多くなることから高濃度のオゾンガスを生成することができる」と記載されていることから、「触媒ガス」には、例えば、「窒素ガス」が含まれ、「触媒ガス」は、酸素原子を解離させ、オゾンガスを生成する化学反応を促進させるものであることが理解できる。

したがって、「触媒ガス」なる記載は、当業者の優先日時点における技術常識を基礎として、第三者に不測の不利益を及ぼす程度に不明確であるとはいえない。

ウ 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件違反)について

申立人は、本件発明1、8の「光触媒材料」について、光触媒材料にも数多くの種類があり、それぞれ、オゾンを発生させる際の効果、及び、発生したオゾンが分解するのを抑制する効果は異なるものと考えられるところ、本件明細書には、どのような光触媒材料を用いることができるのか記載されていないため、当業者といえども本件発明を実施することができない旨を主張する。

そこで、この主張について検討すると、本件明細書の段落【0020】には、「…放電セルの放電空間に誘電体バリア放電を発生させると、…「放電セルを構成する電極面の全面に配設された光触媒機能」によって、酸素原子の解離量が多くなることから高濃度のオゾンガスを生成することができる」と記載されていることから、「光触媒材料」とは、酸素原子を解離させ、オゾンガスを生成する化学反応を促進させるものであり、このような「光触媒材料」の具体的な種類は、本件特許に係る優先日時点の技術常識であるから、本件明細書には、どのような「光触媒材料」を用いることができるのか記載されていないとしても、当業者は、優先日時点の技術常識から具体的な「光触媒材料」を選択することができる。

また、申立人は、「光触媒材料」の効果の違いを主張の前提とするが、その証拠は挙げておらず、仮に、このような効果の違いがあったとしても、優先日時点の技術常識である「光触媒材料」の中から、ある特定のものを選択した場合に本件発明が実施できないとする特段の理由もない。

したがって、本件明細書及び図面の記載並びに優先日時点の技術常識に基づき、当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく「光触媒材料」を選択し、本件発明を実施することができるから、発明の詳細な説明は、本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。

エ 小活

以上のとおりであるから、申立人の主張はいずれも採用できない。

第4 むすび

以上のとおり、請求項1~9に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由、及び、取消理由に記載した取消理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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2020-700649

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