特許拒絶査定不服審判
2023-008397
無停電電源装置
- 審判番号
- 2023-008397
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-016134
- 請求日
- 2023年05月23日
- 審決日
- 2023年11月28日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】東芝三菱電機産業システム株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 須田 勝巳
- 審判官 打出 義尚
- 審判官 吉田 美彦
- 分類
- P18 .121-Z (H02M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第5項、特許法第17条の2第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 16134「無停電電源装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 8月30日出願公開、特開2021-125916〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年2月3日の出願であって、令和3年1月12日に手続補正がなされ、令和4年11月9日付けの拒絶理由の通知に対し、令和4年12月15日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、令和5年3月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和5年5月23日に審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。
第2 令和5年5月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和5年5月23日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「第1のIGBT素子を含み、第1の交流電圧を直流電圧に変換する複数の第1の半導体モジュールと、
第2のIGBT素子を含み、前記直流電圧を第2の交流電圧に変換する複数の第2の半導体モジュールと、
前記複数の第1および第2の半導体モジュールを冷却するためのヒートシンクとを備え、
前記ヒートシンク上に前記複数の第1および第2の半導体モジュールの第1のIGBT素子および第2のIGBT素子をそれぞれ交互に配置し、
前記第1および第2のIGBT素子は所定方向に沿って一列に配置される、無停電電源装置。」
(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和4年12月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「第1のIGBT素子を含み、第1の交流電圧を直流電圧に変換する複数の第1の半導体モジュールと、
第2のIGBT素子を含み、前記直流電圧を第2の交流電圧に変換する複数の第2の半導体モジュールと、
前記複数の第1および第2の半導体モジュールを冷却するためのヒートシンクとを備え、
前記ヒートシンク上に前記複数の第1および第2の半導体モジュールのそれぞれを交互に配置し、
前記第1および第2のIGBT素子は所定方向に沿って一列に配置される、無停電電源装置。」
2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1および第2の半導体モジュール」の「配置」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2019/180784号(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)
a 「[0011] [実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による無停電電源装置の構成を示すブロック図である。図1において、この無停電電源装置は、入力端子T1、バッテリ端子T2、出力端子T3、電流検出器CD1~CD3、コンバータ1、直流ライン2、コンデンサ3、双方向チョッパ4、インバータ5、冷却器6,7、および制御装置8を備える。」
b 「[0018] コンバータ1(第1の電力変換器)は、制御装置8によって制御され、商用交流電源11からの交流電力を直流電力に変換して直流ライン2に出力する。コンバータ1は、複数組のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)およびダイオードを含む周知のものである。コンバータ1の交流入力電流Iiは、制御可能になっている。」
c 「[0026] インバータ5(第3の電力変換器)は、制御装置8によって制御され、コンバータ1および双方向チョッパ4から直流ライン2を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して負荷13に供給する。インバータ5は、複数組のIGBTおよびダイオードを含む周知のものである。インバータ5の交流出力電流Ioは、制御可能になっている。インバータ5は、交流出力電圧Voが参照交流電圧Vorになるように、負荷13に交流電流Ioを供給する。」
d 「[0028] 冷却器6は、コンバータ1およびインバータ5に共通に設けられ、コンバータ1およびインバータ5で発生する熱を空気中に放散させ、コンバータ1およびインバータ5の温度が過度に上昇して破損されることを防止する。冷却器7は、双方向チョッパ4で発生する熱を空気中に放散させ、双方向チョッパ4の温度が過度に上昇して破損されることを防止する。」
e 「[0029] 図2(A),(B)は、冷却器6の構成を示す図である。特に、図2(A)は冷却器6の平面図であり、図2(B)は冷却器6の正面図である。図2(A),(B)において、冷却器6は、平板部6aと、多数の放熱フィン6bとを含む。冷却器6は、熱伝導率の高い金属(たとえばアルミニウム)で形成されている。」
f 「[0030] 平板部6aの表面には、コンバータ1およびインバータ5が形成された基板15が搭載されている。多数の放熱フィン6bは、平板部6aの裏面に形成されている。冷却器6および基板15は、一体のユニットを構成している。多数の放熱フィン6bには、ファン(図示せず)から風が送られる。」
g 「[0055] 次に、図1~図6に示した無停電電源装置の動作について説明する。商用交流電源11の健全時においてインバータ5の出力電力Poが上限値PoHよりも小さい通常時には、商用交流電源11からの交流電力がコンバータ1によって直流電力に変換され、双方向チョッパ4を介してバッテリ12に蓄えられるとともに、インバータ5によって交流電力に変換されて負荷13に供給される。」
h 「[0058] このとき、上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH-Poだけコンバータ1の入力電力Piが減少されるとともに、その差の電力ΔPoだけ双方向チョッパ4の入力電力Pbが増大される。したがって、過負荷時には、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)は上限値PoHの2倍の電力2×PoHに維持される。このため冷却器6(図1、図2)の冷却能力(すなわちサイズ)を小さく抑制することができる。」
i 「[0067]」 以上のように、この実施の形態1では、インバータ5の出力電力Poが上限値PoHを超えた場合には、インバータ5の出力電力Poの上限値PoHとインバータ5の出力電力Poとの差の電力ΔPo=PoH-Poだけコンバータ1の入力電力Piを減少させるとともに、その差の電力ΔPoの2倍の電力2×ΔPoだけ双方向チョッパ4の入力電力Pbを増大させる。したがって、コンバータ1の入力電力Pbを上限値PoH以下に制限することができる。また、過負荷時であっても、コンバータ1の入力電力Piとインバータ5の出力電力Poとの和の電力(Pi+Po)を2×PoH以下に維持できるので、冷却器6の小型化を図ることができる。」
(イ)引用文献1の記載について検討する。
a 上記(ア)aの「無停電電源装置は、・・・コンバータ1、・・・インバータ5、冷却器6・・・を備える」との記載から、引用文献1には、「コンバータ1とインバータ5と冷却器6とを備える無停電電源装置」が記載されていると認められる。
b 上記(ア)bの「コンバータ1・・・は、商用交流電源11からの交流電力を直流電力に変換し・・・コンバータ1は、複数組のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)およびダイオードを含む周知のものである」との記載から、引用文献1には、「複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のものである、商用交流電源11からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ1」が記載されていると認められる。
c 上記(ア)cの「インバータ5・・・は、・・・コンバータ1・・・から・・・供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換し・・・インバータ5は、複数組のIGBTおよびダイオードを含む周知のものである」との記載及び上記(ア)gの「商用交流電源11からの交流電力がコンバータ1によって直流電力に変換され、・・・インバータ5によって交流電力に変換され」との記載から、引用文献1には、「複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のものである、コンバータ1から供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換するインバータ5」が記載されていると認められる。
d 上記(ア)dの「冷却器6・・・コンバータ1およびインバータ5で発生する熱を空気中に放散させ」との記載から、引用文献1には、「コンバータ1及びインバータ5で発生する熱を空気中に放散させる冷却器6」が記載されていると認められる。
e 上記(ア)eの「冷却器6は、平板部6a・・・を含む」との記載、及び同fの「平板部6aの表面には、コンバータ1およびインバータ5が形成された基板15が搭載され」との記載から、引用文献1には、「冷却器6の平板部6aの表面には、コンバータ1及びインバータ5が形成された基板15が搭載される」ことが記載されていると認められる。
(ウ)上記(イ)の検討から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のものである、商用交流電源11からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ1と、
複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のものである、前記コンバータ1から供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換するインバータ5と、
前記コンバータ1及び前記インバータ5で発生する熱を空気中に放散させる冷却器6とを備え、
前記冷却器6の平板部6aの表面には、前記コンバータ1及び前記インバータ5が形成された基板15が搭載される、無停電電源装置。」
イ 引用文献2
(ア)同じく原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2018-19599号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)
a 「【0006】
コンバータ2は、図10に示すように、コンバータ回路のU相およびV相回路を構成する半導体素子群21Uおよび21Vを、それぞれ冷却フィン付冷却体22Uおよび22V上に電気的に絶縁して、熱伝導的に搭載し、コンバータのU相ユニット2UおよびV相ユニット2Vを構成する。そして、このコンバータの各相ユニットの冷却体22Uと22Vを互いに接合して熱的に一体に構成し、コンバータ2を構成する変換器ユニットが構成される。
・・・
【0020】
その一方で、コンバータ2およびインバータ3のそれぞれにおいては、各ユニットの冷却体が互いに接合して熱的に一体化されているため、ユニット2Uの半導体素子21Uの発熱により冷却体22Uの温度が上昇している時には、他のユニット2Vの半導体素子も同じ発熱量であるため、隣接する冷却体22Vの温度も上昇しているため、冷却体22Uと22Vの接合部付近の温度上昇が高くなるという問題がある。
【0021】
インバータ3においても同様に、各ユニットの半導体素子31U、31V、31Wの発熱量は同じであるので、中間の冷却体32Vの温度が上昇しているときは、両隣の冷却体32U、32Wの温度も上昇しており、中間の冷却体32Vに対して、両隣の冷却体32U、32Wからの熱伝導されるため、この中間の冷却体32Vの温度が他の冷却体より温度が高くなるという問題がある。」
b 「【0023】
この発明は、コンバータおよびインバータの冷却体の全体の温度分布が均一になるようにして、全半導体素子の温度上昇がほぼ均等となる電力変換装置を提供することを課題とする。」
c 「【0029】
図1は、この発明の鉄道車両用電力変換装置の主回路を示す回路構成図であり、図9~図12に示す従来例と同一要素は、同一符号で示し、説明を省略する。」
d 「【0030】
図1のこの発明の実施例1においては、コンバータ2の相回路を構成するスイッチング半導体素子、ダイオード等の半導体素子群21U、21V、およびインバータ3の相回路を構成するスイッチング半導体素子、ダイオード等の半導体素子群31U、31V、31Wのすべてを共通に設けた1つの冷却体5上に、電気的に絶縁して、熱伝導可能に搭載している。これにより、コンバータ2およびインバータ3を構成する半導体素子をこの冷却体5により共通に冷却することができる。」
e 「【0036】
しかし、この発明においては、冷却体5がコンバータ2とインバータ3に共通に設けられ熱的に一体的に構成されているので、冷却体5の温度上昇の高い半部の熱は、温度上昇の低い半部へ伝達されて冷却されるようになるため、冷却体5の全体の温度分布をほぼ均等にすることができる。したがって、コンバータ2およびインバータ3を構成する半導体素子群の全体を平均的に均等に冷却することができるようになるので、冷却体5の冷却効果が高まり、これを小形にすることができる。」
f 「【0040】
この変形例は、インバータ3の各相回路の半導体素子群31U、31V、31Wおよびコンバータ2の各相回路の半導体素子群21U、21Vが、図3(a)、(b)に示すように交互に並ぶようにコンバータと、インバータの各相回路を混合配置して、共通の冷却体5上に搭載したものである。」
g 「【0041】
このように、コンバータとインバータの各相の半導体素子群を混合配置することにより、コンバータ2の各相回路の半導体素子群とインバータ3の半導体素子群が冷却体5の全体に比較的均等に分布するようになるので、コンバータ2とインバータ3の発熱特性が相違していても冷却体5の全体における温度分布がより均等化されることにより、冷却体5の冷却効果をさらに高めることができる。」
h 「【図1】
「
[図:0001406603000001.jpg]
」
i 「【図3】
[図:0001406603000002.jpg]
」
(イ)引用文献2の記載について検討する。
a 上記(ア)aの段落0006の「半導体素子群21Uおよび21V」との記載及び段落0020の「半導体素子21U」との記載並びに段落0021の「半導体素子31U、31V、31Wの発熱量は同じ」との記載から、上記(ア)d及び上記(ア)fの「半導体素子群21U、21V」及び「半導体素子群31U、31V、31W」との記載における「21U」、「21V」、「31U」、「31V」、「31W」は、それぞれ「半導体素子」であると認められる。
b 上記(ア)hの図1のIGBTを表す回路記号及び上記(ア)dの「図1のこの発明の実施例1においては、コンバータ2の相回路を構成するスイッチング半導体素子、ダイオード等の半導体素子群21U、21V、およびインバータ3の相回路を構成するスイッチング半導体素子、ダイオード等の半導体素子群31U、31V、31W・・・」との記載並びに上記aの検討から、半導体素子21U及び半導体素子21Vが、それぞれ、8組のIGBT及びダイオードを含み、半導体素子31U、半導体素子31V、半導体素子31Wが、それぞれ、4組のIGBT及びダイオードを含むことが読み取れる。そうすると、引用文献2には、複数組のIGBT及びダイオードを含む半導体素子が記載されていると認められる。
c 上記aの検討を踏まえると、上記(ア)iの図3(a)の記載から、“コンバータ2の各相回路の半導体素子及びインバータ3の各相回路の半導体素子は、所定方向に沿って一列に配置される”ことが読み取れる。
d 上記a、bの検討を踏まえると、上記(ア)dの「コンバータ2の相回路を構成するスイッチング半導体素子、ダイオード等の半導体素子群21U、21V」、「インバータ3の相回路を構成するスイッチング半導体素子、ダイオード等の半導体素子群31U、31V、31W」、「コンバータ2およびインバータ3を構成する半導体素子をこの冷却体5により共通に冷却する」との記載から、引用文献2には、「それぞれ複数組のIGBT及びダイオードを含む半導体素子により構成される、複数のコンバータ2の相回路」、「それぞれ複数組のIGBT及びダイオードを含む半導体素子により構成される、複数のインバータ3の相回路」、及び「コンバータ2の各相回路を構成する半導体素子及びインバータ3の各相回路を構成する半導体素子を冷却するための冷却体5」が記載されていると認められる。
e 上記(ア)cの段落0029の「図1は、・・・鉄道車両用電力変換装置の主回路を示す回路構成図であり」との記載と同dの段落0030の「図1のこの発明の実施例1においては、コンバータ2の相回路を構成する・・・半導体素子群21U、21V、およびインバータ3の相回路を構成する・・・半導体素子群31U、31V、31Wのすべてを共通に設けた1つの冷却体5上に、電気的に絶縁して、熱伝導可能に搭載している」との記載から、引用文献2には、「コンバータ2の各相回路」と、「インバータ3の各相回路」と、「冷却体5とを備え」た「電力変換装置」が記載されていると認められる。
f 上記(ア)fの「インバータ3の各相回路の半導体素子群31U、31V、31Wおよびコンバータ2の各相回路の半導体素子群21U、21Vが、図3(a)、(b)に示すように交互に並ぶようにコンバータと、インバータの各相回路を混合配置して、共通の冷却体5上に搭載した」との記載、及び同iの図3の記載から、引用文献2には、「冷却体5上にコンバータ2の各相回路の半導体素子及びインバータ3の各相回路の半導体素子を交互に並ぶように混合配置」することが記載されていると認められる。
g 上記(ア)eの「コンバータ2およびインバータ3を構成する半導体素子群の全体を平均的に均等に冷却することができるようになるので、冷却体5の冷却効果が高まり、これを小形にすることができる」との記載、上記(ア)gの「コンバータとインバータの各相の半導体素子群を混合配置することにより、コンバータ2の各相回路の半導体素子群とインバータ3の半導体素子群が冷却体5の全体に比較的均等に分布するようになるので・・・冷却体5の全体における温度分布がより均等化されることにより、冷却体5の冷却効果をさらに高めることができる」との記載、及び上記c、fの検討からすると、引用文献2には、「冷却体5上にコンバータ2の各相回路の半導体素子及びインバータ3の各相回路の半導体素子を交互に並ぶように混合配置し、前記コンバータ2の各相回路の半導体素子及び前記インバータ3の各相回路の半導体素子を、所定方向に沿って一列に配置することで、冷却体5の温度分布を均等化し、冷却体5の冷却効果を高めて、冷却体5を小型化することができる」ことが記載されていると認められる。
(ウ)上記(イ)の検討から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「それぞれ複数組のIGBT及びダイオードを含む半導体素子により構成される、複数のコンバータ2の相回路と、それぞれ複数組のIGBT及びダイオードを含む半導体素子により構成される、複数のインバータ3の相回路と、前記コンバータ2の各相回路を構成する半導体素子及び前記インバータ3の各相回路を構成する半導体素子を冷却するための冷却体5とを備え、前記冷却体5上に前記コンバータ2の各相回路の前記半導体素子及び前記インバータ3の各相回路の前記半導体素子を交互に並ぶように混合配置し、前記コンバータ2の各相回路の半導体素子及び前記インバータ3の各相回路の半導体素子を、所定方向に沿って一列に配置することで、冷却体5の温度分布を均等化し、冷却体5の冷却効果を高めて、冷却体5を小型化することができる、電力変換装置。」
ウ 周知文献A
(ア)同じく原査定に引用され、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-85477号公報(以下「周知文献A」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップで構成する電力用半導体素子及びこれを利用したインバータ装置に関する。」
b 「【0009】
そこで、本発明の実施形態による目的は、電力用半導体素子の冷却効率を向上させ、通電容量の向上及び小型化に対応し、製造性に優れた電力用半導体素子及びインバータ装置を提供することにある。」
c 「【0014】
図15を参照して、各実施形態に係るインバータ装置の回路について説明する。
【0015】
各実施形態の電力用半導体素子は、図15に示すように、回路10と等価の回路の一部及び全部を基本に構成している。
【0016】
回路10は、IGBT(insulated gate bipolar transistor)191,192と、ダイオード201,202とからなる。
【0017】
回路10は、直流電源1から供給される直流電力の正極及び負極をそれぞれ正極端子39及び負極端子40に印加し、コンデンサ4を利用して、IGBT191,192のそれぞれのゲートを制御することにより、交流電力に変換して、出力部2に出力する。
【0018】
コンデンサ4は、例えば電源平滑用コンデンサであるアルミ電解コンデンサなどである。
【0019】
直流電力を三相交流電力に変換する場合は、3つの本電力用半導体素子を使用し、図15に示す構成とすることにより実現できる。
【0020】
直流電力を単相交流電力に変換する場合は、2つの本電力用半導体素子を使用し、図15に示す構成のうち1つの回路10を削除した構成とすることにより実現できる。
【0021】
(第1の実施形態)
図1~3を参照して、本実施形態に係る電力用半導体素子及びインバータ装置について説明する。図15と同一部分には同一符号を付してその詳しい説明を省略し、ここでは異なる部分について主に述べる。なお、以下の実施形態も同様にして重複した説明を省略する。
【0022】
本インバータ装置は、直流電力をW相、V相、U相からなる三相交流に変換するインバータ装置(以下、「三相インバータ装置」という)である。
【0023】
本インバータ装置は、図1に示すように、放熱板22と、放熱板22の上に実装される3つの各相に対応する電力用半導体素子と、放熱板22と3つの電力用半導体素子をそれぞれ接着するW相絶縁樹脂シート36、V相絶縁樹脂シート42及びU相絶縁樹脂シート43とからなる。
【0024】
各相の電力用半導体素子は、それぞれに対応した各相の絶縁樹脂シート36,42,43を用いて、放熱板22に接着している。各相の絶縁樹脂シート36,42,43は、一定の距離を離して、放熱板22に接着されている。」
d 「【図1】
[図:0001406603000003.jpg]
」
e 「【図15】
[図:0001406603000004.jpg]
」
(イ)上記(ア)の記載から、周知文献Aには、次の事項(以下、「周知文献A記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「直流電力をW相、V相、U相からなる三相交流に変換するインバータ装置において、各相に対応し、それぞれが、IGBT(insulated gate bipolar transistor)191,192と、ダイオード201,202とから構成される3つの電力用半導体素子を放熱板22の上に一定の距離を離して配置すること。」
エ 周知文献B
(ア)当審で新たに引用する、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-48151号公報(以下「周知文献B」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。)
a 「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両用半導体冷却装置に関する。」
b 「【0010】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。
一般に、受熱面にインバータとコンバータを実装した車両用半導体冷却装置では、図11に示すように、車両速度に対するコンバータ損失14は、低速領域では損失が低く、高速領域では損失が高い。
【0011】
一方、車両速度に対するインバータ損失15は、低速領域では損失が高く、高速領域では損失が低い。またコンバータ損失14とインバータ損失15とを比較すると、全体として、コンバータ損失14の方が高い。すなわち、車両速度に対してはコンバータ損失14とインバータ損失15とは特性が全く異なるものである。損失はほぼ発熱量と考えることができる。
【0012】
そこで、このような車速と損失との関係を考慮し、以下、第1~第3実施形態を説明する。
(第1実施形態)
(構成の説明)
図1は第1実施形態の車両用半導体冷却装置の構成を示す図、図2はそのA-A断面図である。
【0013】
図1、図2に示すように、第1実施形態の車両用半導体冷却装置8は、半導体素子6、6a群、受熱ブロック9、放熱器または放熱部材としてのヒートシンク11などを有している。
【0014】
半導体素子6、6aは、機能毎に1つのアーム5を構成している。機能とはインバータまたはコンバータの機能である。コンバータの機能は、交流電圧を直流電圧へ変換する機能である。インバータの機能は、直流電圧を交流電圧へ変換する機能である。
この例では、半導体素子6は、インバータ素子またはコンバータ素子であり、半導体素子6aは、半導体素子6に比べて少し小型なクランプダイオードである(図7参照)。
【0015】
受熱ブロック9の半導体素子取付面10には、1つのアーム5を構成する半導体素子6、6aの列22,23が交互にほぼ平行に5列配置され、実装されている。
【0016】
半導体素子6、6aの列22は、インバータの機能を構成する列である。半導体素子6、6aの列23は、コンバータの機能を構成する列である。
【0017】
すなわち、半導体素子取付面10には、複数の半導体素子6,6aで列を構成し、発熱量が互いに異なる半導体素子の列22,23どうしを交互に配置した列22,23が設けられている。
【0018】
単相交流を一旦直流に変換しそれから3相交流に変換する電力変換では、コンバータの機能を構成する列23は1相分で2列必要であり、インバータの機能を構成する列22は、3相交流のU相、V相、W相の各相の分だけ3列必要であり、列は最低5列必要になる。
【0019】
受熱ブロック9の半導体素子取付面10の半導体素子6、6aは、ケース8aで覆われている。
【0020】
受熱ブロック9の半導体素子取付面10の反対側の面には、ヒートシンク11が配設されている。ヒートシンク11には、放熱部材である複数の板状のフィン(放熱板)が列設されている。それぞれのフィンの長手方向端部は、送風方向18に対して風が抜ける方向にそれぞれ平行している。送風方向18は車両が進行する方向と同じであり、車両進行方向といえる。言い換えると、放熱部材は、その長手方向が車両進行方向一致し、放熱部材間の間隙が車両進行方向に沿って、設けられていることになる。
【0021】
すなわち、ヒートシンク11は、空冷用の間隙が設けられ、この間隙に風(気流)が通過する方向と車両進行方向とを一致させるように導体素子取付面10の反対側の面に配設されている。なお、半導体素子取付面10を第1の面、半導体素子取付面10の反対側の面を第2の面という。送風方向18は、この装置が車両に取り付けられた場合でいうと、車両進行方向と矢印の向きが逆の方向である。
【0022】
この車両用半導体冷却装置8は、ヒートシンク11の部分を外部に露出するように車両の床下17に取り付けられており、受熱ブロック9に列をなすように配置された半導体素子6、6aで生じた発熱をその裏側のヒートシンク11から外部へ放熱するものである。
【0023】
換言すると、この車両用半導体冷却装置8は、複数の半導体素子6、6aで1つのアーム5を構成し、複数のアーム5を半導体素子取付面10に配置する上で、発熱量が互いに異なる複数個の半導体素子6、6aの列22,23を交互(一列おき)に配置して半導体素子取付面10に設けている。
【0024】
(作用の説明)
この第1実施形態の作用を説明する。
この第1実施形態では、発熱源でありかつ発熱量が互いに異なる複数個の1アームを構成している半導体素子6,6aの列、つまりインバータの1相を構成する半導体素子6,6aの列22と、コンバータの1相を構成する半導体素子6,6aの列23とを一つの受熱ブロック9の半導体素子取付面10に交互に配置したことにより、半導体素子取付面10への入熱が分散される。
【0025】
このことから、図3に示すように、インバータの機能を構成する半導体素子の列22とコンバータの機能を構成する半導体素子の列23とを機能毎にまとめて配置した場合の比較例の温度上昇曲線20とこの第1実施形態の温度上昇曲線24とを比較すると、この第1実施形態の温度上昇曲線24の方が冷却装置としての温度上昇の最大値と最小値間の温度差が小さくなり、受熱面全体の温度の均熱化が図られていることが分かる。
【0026】
この結果、受熱ブロック9の反対側の面に列設したヒートシンクのフィンによる冷却効率が上がり、比較例よりも冷却装置の最大温度上昇値が低下した状態25を常に継続(維持)できるようになり、冷却性能を向上することができる。
【0027】
(効果の説明)
このようにこの第1実施形態によれば、一つの受熱ブロック9の半導体素子取付面10に、発熱量が互いに異なる複数個の半導体素子6,6aの相毎の列22,23を交互に配置することにより、ヒートスポットを生じることなく本来のヒートシンク11のフィンの冷却効率を維持しながら、受熱ブロック9の半導体素子取付面10における均熱化を図り、冷却性能を向上することができる。」
c 「【図1】
[図:0001406603000005.jpg]
」
d 「【図2】
[図:0001406603000006.jpg]
」
e 「【図7】
[図:0001406603000007.jpg]
」
(イ) 上記bの段落0014の「この例では、半導体素子6は、インバータ素子またはコンバータ素子であり、半導体素子6aは、半導体素子6に比べて少し小型なクランプダイオードである(図7参照)」との記載及び上記eの図7のIGBTを表す回路記号から、半導体素子6は、1組のIGBT及びダイオードを含むことが読み取れる。
(ウ)上記(イ)の検討を踏まえると、上記(ア)の記載から、周知文献Bには、次の事項(以下、「周知文献B記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「ヒートシンク11上の受熱ブロック9の受熱面にインバータとコンバータを実装した車両用半導体冷却装置において、インバータまたはコンバータの機能毎に、1組のIGBT及びダイオードを含む半導体素子6と半導体素子6a(クランプダイオード)とからインバータの1相を構成する半導体素子6,6aの列22と、コンバータの1相を構成する半導体素子6,6aの列23とを構成し、受熱ブロック9の半導体素子取付面10に、半導体素子6、6aの列22(インバータの機能を構成する列)と、半導体素子6、6aの列23(コンバータの機能を構成する列)を交互に配置すること。」
(3)引用発明1との対比
ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。
(ア)a 引用発明1の「交流電力」の電圧は交流電圧であり、引用発明1の「直流電力」の電圧は直流電圧であるところ、引用発明1の「商用交流電源11からの交流電力を直流電力に変換する」ことは、交流電力の交流電圧を直流電力の直流電圧に変換することにほかならない。
そして、引用発明1の「商用交流電源11からの交流電力」の“交流電圧”は、本件補正発明の「第1の交流電圧」に相当するから、引用発明1の「商用交流電源11からの交流電力を直流電力に変換する」ことは、本件補正発明の「第1の交流電圧を直流電圧に変換する」ことに相当する。
b 上記aの検討を踏まえると、引用発明1の「複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のものである、商用交流電源11からの交流電力を直流電力に変換するコンバータ1」と本件補正発明の「第1のIGBT素子を含み、第1の交流電圧を直流電圧に変換する複数の第1の半導体モジュール」とは、“第1の交流電圧を直流電圧に変換する交直変換手段”である点で共通する。
(イ)a 引用発明1の「前記コンバータ1から供給される直流電力」は、本件補正発明の「複数の第1の半導体モジュール」(コンバータCNV)によって変換された「前記直流電圧」に対応するものであるから、上記(ア)aの検討を踏まえると、引用発明1の「前記コンバータ1から供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換する」ことは、本件補正発明の「前記直流電圧を第2の交流電圧に変換する」ことに相当する。
b 上記aの検討を踏まえると、引用発明1の「複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のものである、前記コンバータ1から供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換するインバータ5」と本件補正発明の「第2のIGBT素子を含み、前記直流電圧を第2の交流電圧に変換する複数の第2の半導体モジュール」とは、“前記直流電圧を第2の交流電圧に変換する直交変換手段”である点で共通する。
(ウ)コンバータ1及びインバータ5で発生する熱を空気中に放散させることはすなわちコンバータ1及びインバータ5を“冷却する”ことであるから、引用発明1の「前記コンバータ1及び前記インバータ5で発生する熱を空気中に放散させる冷却器6」と本件発明の「前記複数の第1および第2の半導体モジュールを冷却するためのヒートシンク」とは、上記(ア)、(イ)の検討も踏まえると、“前記交直変換手段及び前記直交変換手段を冷却するためのヒートシンク”である点で共通する。
(エ)引用発明1の「前記冷却器6の平板部6aの表面」は、「冷却器6」上であるといえ、上記(ウ)の検討から、引用発明1の「冷却器6」は本件補正発明の「ヒートシンク」に相当するから、引用発明1は、“前記ヒートシンク上に前記交直変換手段及び前記直交変換手段を配置”する点で、本件補正発明と共通する。
(オ)上記(ア)~(エ)の検討を踏まえれば、引用発明1の「無停電電源装置」は、本件補正発明の「無停電電源装置」に対応する。
イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
第1の交流電圧を直流電圧に変換する交直変換手段と、
前記直流電圧を第2の交流電圧に変換する直交変換手段と、
前記交直変換手段及び前記直交変換手段を冷却するためのヒートシンクとを備え、
前記ヒートシンク上に前記交直変換手段及び前記直交変換手段を配置する、無停電電源装置。
[相違点1]
交直変換手段に関し、本件補正発明は、「第1のIGBT素子」を含む「複数の第1の半導体モジュール」であるのに対して、引用発明1は、そのようなものであるとは特定されていない点。
[相違点2]
直交変換手段に関し、本件補正発明は、「第2のIGBT素子」を含む「複数の第2の半導体モジュール」であるのに対して、引用発明1は、そのようなものであるとは特定されていない点。
[相違点3]
ヒートシンクに関し、本件補正発明は、「前記複数の第1および第2の半導体モジュールを冷却するためのヒートシンク」であるのに対して、引用発明1は、そのようなものであるとは特定されていない点。
[相違点4]
前記交直変換手段及び前記直交変換手段のヒートシンク上の配置に関し、本件補正発明は、「前記ヒートシンク上に前記複数の第1および第2の半導体モジュールの第1のIGBT素子および第2のIGBT素子をそれぞれ交互に配置し、前記第1および第2のIGBT素子は所定方向に沿って一列に配置される」のに対して、引用発明1は、そのようなものではない点。
(4)判断
事案に鑑み、上記相違点1~4についてまとめて検討する。
ア 周知文献A記載事項における「電力用半導体素子」は、W相、V相、U相の各相に対応して「放熱板22」の上に配置されるものであり、周知文献B記載事項における「半導体素子6」は組合せによりインバータの1相又はコンバータの1相を構成するものであって「ヒートシンク11」上に配置されるものであり、引用発明2の「半導体素子」は相回路を構成するものであって「冷却体5」上に配置されるものである。このように、ヒートシンク(周知文献Aに記載された「放熱板22」、周知文献Bに記載された「ヒートシンク11」、引用発明2の「冷却体5」)上に配置され、それ単独あるいは複数の組合せにより1相に対応する回路が構成される、1組以上のIGBT及びダイオードを含む半導体素子(周知文献Aに記載された「電力用半導体素子」、周知文献Bに記載された「半導体素子6」、引用発明2の「半導体素子」)は周知技術である。
イ ここで、本件補正発明の「IGBT素子」は、「交互に配置」するものであり、また、「一列に配置される」ものであるから、本願明細書の段落0033の「電力変換ユニット200は、複数の半導体素子(IGBT)QC1~QC3,QIU1,QIU2,QIV1,QIV2・・・を含む。各半導体素子(IGBT)の構成は同様である」との記載、同じく段落0043の「複数の半導体素子(IGBT)が所定方向に沿って一列に配列されている」との記載、同じく段落0047の「コンバータCNVとインバータINVを構成する半導体素子(IGBT)を交互に配置する」との記載、同じく段落0081の「コンバータCNVとインバータINVを構成する半導体素子(IGBT)を交互に配置する」との記載、及び図2の記載を参酌すると、例えば、図2に記載されている“2組のIGBT及びダイオードを含むQC1、QC2、・・・QIV2等の半導体素子(IGBT)”のことであると認められる。ただし、本願明細書には「IGBT素子」の定義は記載されていない。そして、上記アのとおり、1組以上のIGBT及びダイオードを含む半導体素子が周知技術であることを勘案すれば、本件補正発明の「IGBT素子」をIGBT及びダイオードを2組含むものに限定して解釈すべき理由はない。
更に、本願明細書の段落0010の「好ましくは、各第2の半導体モジュールは、複数のIGBT素子を含む」との記載、同じく段落0044の「図4(A)に示されるようにヒートシンク100上には、コンバータCNVおよびインバータINVを構成する複数の半導体素子(IGBT)が配置される」との記載、同じく段落0048の「具体的には、3相のR,S,T入力端子とそれぞれ接続されるコンバータCNVを構成する半導体素子(IGBT)の間にU、Vの出力端子とそれぞれ接続されるインバータINVを構成する半導体素子(IGBT)を配置する」との記載及び図4(A)に示されるINV(U)とINV(V)がそれぞれ二つの半導体素子(IGBT)を含むこと並びに同じく段落0010の「好ましくは、複数の第1および第2の半導体モジュールのそれぞれは、1つずつIGBT素子を含む」との記載、同じく段落0080の「図9(A)に示されるようにヒートシンク100A上には、コンバータCNVおよびインバータINVを構成する複数の半導体素子(IGBT)が配置される」との記載、同じく段落0082の「具体的には、3相のR,S,T入力端子とそれぞれ接続されるコンバータCNVを構成する半導体素子(IGBT)の間にU、V、Wの出力端子とそれぞれ接続されるインバータINVを構成する半導体素子(IGBT)を配置する」との記載及び図9(A)に示されるCNV(R)、INV(U)、CONV(S)、INV(V)、CNV(T)、INV(W)のそれぞれが一つずつ半導体素子(IGBT)を含むことから、本件補正発明の「IGBT素子」は、それ単独あるいは複数の組合せによりR,S,T入力端子又はU、V(、W)の出力端子に対応する回路(以下「相回路」という。)を構成するものであって、ヒートシンク上に配置されるものを含意する用語である。
そして、複数の半導体素子等を組み合わせて一つのパッケージにパッケージングしたものを「モジュール」と呼称することが一般的ではあるものの、図4(A)のINV(U)(INV(V))は一つのパッケージにパッケージングされたものではないことから、本件補正発明の「半導体モジュール」は、相回路を含意する用語であるものの、パッケージングまでは含意しない。
ウ 上記ア、イの検討を踏まえると、周知文献Aに記載された「電力用半導体素子」、周知文献Bに記載された「半導体素子6」、引用発明2の「半導体素子」などの、1組以上のIGBT及びダイオードを含み、それ単独あるいは複数の組合せにより相回路を構成する半導体素子は、本件補正発明の「IGBT素子」に相当する。また、上記相回路は、本件補正発明の「半導体モジュール」に相当する。
エ コンバータやインバータ等の電源回路を、前記周知技術の半導体素子(上記ウのとおり本件補正発明の「IGBT素子」に相当する。)を用いて構成することは、一般的に行われていることであるから、引用発明1の複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のものであるコンバータ1及びインバータ5の構成として、そのような半導体素子(IGBT素子)を用いた一般的な構成を採用してよいことは当業者にとって明らかである。
オ そして、引用発明2は、コンバータの相回路(半導体モジュール)を構成する半導体素子(IGBT素子)とインバータの相回路(半導体モジュール)を構成する半導体素子(IGBT素子)を冷却体5上に並べて配置する際に、それらを交互に、かつ所定方向に沿って一列に配置することで、冷却体5の温度分布を均等化し、冷却体5の冷却効果を高めて、冷却体5を小型化することができるというものである一方、引用発明1も、コンバータとインバータを冷却器6上に並べて配置するものであって、冷却器6の小型化を図る([0067])という、引用発明2と同様の課題を有するものである。
また、引用発明1は、コンバータ1とインバータ5の発熱特性が過負荷時とそれ以外とで相違するものである([0058])。また、引用発明1は、コンバータ1及びインバータ5の温度が過度に上昇して破損されることを防止するものである([0028])が、コンバータやインバータは、その動作環境が高温であるほど寿命が短くなることは技術常識である。更に、熱源の偏りにより局部的に温度が上昇すると、冷却効率が悪化することは技術常識である。このような、破損や寿命、冷却効率に影響する局部的な温度上昇は広く知られている一般的な課題であるが、引用発明1のコンバータ1及びインバータ5の発熱特性の相違が、そのような局部的な温度上昇をもたらし得ることは当業者にとって明らかである。よって、引用発明1が、コンバータとインバータの発熱特性の相違という課題を有することは当業者にとって明らかである。一方、引用発明2は、コンバータ2とインバータ3の発熱特性が相違していても冷却体5の全体における温度分布がより均等化されることにより、冷却体5の冷却効果を高めるものである(段落0041)から、引用発明1及び引用発明2は、コンバータとインバータで発熱特性が相違するという共通の課題を有する。
そうすると、上記エの検討を踏まえれば、引用発明1においてコンバータ1及びインバータ5を前記周知技術の半導体素子(IGBT素子)により構成することとし、その際に、発熱特性が相違するコンバータとインバータの冷却効果を高め、コンバータとインバータを冷却するための冷却器6を小型化するために、引用発明2を適用し、引用発明1の「複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のコンバータ」を「複数の第1の相回路(複数の第1の半導体モジュール)」で構成するとともに、「複数組のIGBT及びダイオードを含む周知のインバータ」を「複数の第2の相回路(複数の第2の半導体モジュール)」で構成し、冷却器6を、前記複数の第1および第2の相回路(半導体モジュール)を冷却するためのヒートシンクとし、前記ヒートシンク上に前記複数の第1および第2の相回路(半導体モジュール)の第1の半導体素子(IGBT素子)および第2の半導体素子(IGBT素子)をそれぞれ交互に、かつ所定方向に沿って一列に配置するように構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。
カ そして、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明1、引用発明2及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
キ したがって、本件補正発明は、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書で、
「また、引用文献2には、図3にそれぞれの交流相を単位とするモジュールを交互に混合配置する構成が示されておりますが、請求項1に係る発明が求める複数の第1および第2の半導体モジュールの第1のIGBT素子および第2のIGBT素子をそれぞれ交互に所定方向に沿って一列に配置する構成については開示も示唆もされておりません。」
と主張している。
しかしながら、上記2(4)ウの検討を踏まえれば、上記2(2)イ(ウ)のとおり、引用文献2には、コンバータ2の各相回路(「第1」「の半導体モジュール」)の半導体素子(「第1のIGBT素子」)及びインバータ3の各相回路(「第2の半導体モジュール」)の半導体素子(「第2のIGBT素子」)を交互に並ぶように所定方向に沿って一列に配置する構成が記載されている。
したがって、審判請求人の上記主張を採用することはできない。
4 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 本願発明について
1 本願発明
令和5年5月23日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和4年12月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-2に係る発明は、本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1、2に記載された発明及び引用文献3、4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:国際公開第2019/180784号
引用文献2:特開2018-19599号公報
引用文献3:特開平09-247960号公報
引用文献4:特開2013-85477号公報
3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2、4及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第1のIGBT素子および第2のIGBT素子をそれぞれ」交互に配置するという「配置」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1、引用発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-008397