特許異議申立
2020-700494
防湿化粧板および建具
- 審判番号
- 2020-700494
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-208336
- 登録番号
- 6645120
- 請求日
- 2020年07月15日
- 審決日
- 2022年04月28日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】凸版印刷株式会社
- 【権利者代理人】廣瀬 一
- 【権利者代理人】宮坂 徹
- 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 藤井 眞吾
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1651.121-YAA(B32B) / P1651.113-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6645120号発明「防湿化粧板および建具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6645120号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
特許第6645120号の請求項1、3、4、6、7、9に係る特許を維持する。
特許第6645120号の請求項2、5、8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6645120号の請求項1~9に係る特許についての出願は、平成27年10月22日の出願であって、令和2年1月14日にその特許権の設定登録がされ、令和2年2月12日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立て以降の経緯は、次のとおりである。
令和2年 7月15日 :特許異議申立人藤江桂子(以下「申立人」という。)による請求項1~9に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年11月 6日付け:取消理由通知書
令和2年12月24日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 4月 1日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和3年 5月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年 5月31日付け:訂正拒絶理由通知書
令和3年 6月11日 :特許権者による意見書及び手続補正書の提出
令和3年 6月21日 :申立人による上申書の提出
令和3年 7月26日 :申立人による意見書の提出
令和4年 1月19日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和4年 3月 9日 :特許権者による意見書の提出
なお、令和3年5月17日に訂正請求がされたことにより、上記令和2年12月24日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
令和3年6月11日提出の手続補正書による補正後の訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)により、特許権者が求める訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された「木質基材と、
前記木質基材の一方の面側に設けられた化粧シートと、
前記木質基材の他方の面側に設けられた防湿シートと、を備え、
前記防湿シートの前記木質基材側の面には接着用プライマー層が設けられており、
前記木質基材と前記防湿シートとを接着する接着層は、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を含み、
前記接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されていることを特徴とする」を、
「木質基材と、
前記木質基材の一方の面側に設けられた化粧シートと、
前記木質基材の他方の面側に設けられた防湿シートと、を備え、
前記木質基材と前記防湿シートとを接着する接着層は、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を含み、
前記防湿シートは、
ポリエチレンテレフタレートを含む基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられた無機酸化物を含む蒸着層と、
前記蒸着層上に設けられたポリビニルアルコールを含む樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられた第1の接着用プライマー層と、
前記基材層の他方の面に設けられた第2の接着用プライマー層と、を備え、
前記第1の接着用プライマー層及び前記第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成され、
前記基材層の他方の面が前記木質基材側の面であり、
該防湿シートの水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つ、該防湿シートの一方の面側から他方の面側を透視可能な透明度を有することを特徴とする」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、6、7、9も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
本件訂正前の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項3に記載された「請求項1又は請求項2に記載の」を、「請求項1に記載の」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4、6、7、9も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項4に記載された「請求項1から請求項3の何れか一項に」を、「請求項1又は3に」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、7、9も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
本件訂正前の請求項5を削除する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項6に記載された「請求項1から請求項5の何れか一項に」を、「請求項1、3及び4の何れか一項に」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、9も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項7に記載された「前記防湿シートは熱可塑性であることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の防湿化粧板。」を、「前記防湿シートの前記基材層は熱可塑性であることを特徴とする請求項1、3、4及び6の何れか一項に記載の防湿化粧板。」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項8を削除する。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項9に記載された「請求項1から請求項8の何れか一項に」を、「請求項1、3、4、6及び7の何れか一項に」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~9は、請求項2~9が、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「防湿シート」について限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、本件訂正前の請求項5及び請求項8の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2、5、8について
訂正事項2、5、8は、それぞれ請求項2、5、8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2、5、8は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3、4、6、9について
訂正事項3、4、6、9は、訂正事項2、5、8により請求項2、5、8を削除する訂正に伴って引用する請求項を整理するための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3、4、6、9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項7のうち、「前記防湿シートは熱可塑性である」とあるのを、「前記防湿シートの前記基材層は熱可塑性である」とした点は、「無機酸化物を含む蒸着層」を発明特定事項に含んでいる請求項5を引用する請求項7が、無機酸化物を含めて防湿シートを「熱可塑性」とするものであって技術的に矛盾していたところ、「熱可塑性」であるものを「防湿シートの基材層」と限定したものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項7のうち、「請求項1から請求項6の何れか一項に記載」を、「請求項1、3、4及び6の何れか一項に記載」とした点は、訂正事項2、5により請求項2、5を削除する訂正に伴って引用する請求項を整理するための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無について
訂正事項7は、本件特許の明細書の【0023】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ 特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項7は、本件訂正前の請求項7に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~9〕について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1、3、4、6、7、9に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1、3、4、6、7、9に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
木質基材と、
前記木質基材の一方の面側に設けられた化粧シートと、
前記木質基材の他方の面側に設けられた防湿シートと、を備え、
前記木質基材と前記防湿シートとを接着する接着層は、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を含み、
前記防湿シートは、
ポリエチレンテレフタレートを含む基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられた無機酸化物を含む蒸着層と、
前記蒸着層上に設けられたポリビニルアルコールを含む樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられた第1の接着用プライマー層と、
前記基材層の他方の面に設けられた第2の接着用プライマー層と、を備え、
前記第1の接着用プライマー層及び前記第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成され、
前記基材層の他方の面が前記木質基材側の面であり、
該防湿シートの水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つ、該防湿シートの一方の面側から他方の面側を透視可能な透明度を有することを特徴とする防湿化粧板。」
「【請求項3】
前記化粧シートは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤のうち少なくとも一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の防湿化粧板。
【請求項4】
前記化粧シートの表面に凹凸からなる模様が設けられていることを特徴とする請求項1又は3に記載の防湿化粧板。」
「【請求項6】
前記木質基材と前記化粧シートとを接着する接着層は、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を含むことを特徴とする請求項1、3及び4の何れか一項に記載の防湿化粧板。
【請求項7】
前記防湿シートの前記基材層は熱可塑性であることを特徴とする請求項1、3、4及び6の何れか一項に記載の防湿化粧板。」
「【請求項9】
請求項1、3、4、6及び7の何れか一項に記載の防湿化粧板と、
芯材とを備え、
前記芯材の少なくとも一方の面側に前記防湿化粧板が貼り付けられていることを特徴とする建具。」
第3 令和4年1月19日付け取消理由の通知(決定の予告)について
1 取消理由の概要
当審が令和4年1月19日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1、3、4、6、7、9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第1号証:特開2009-255499号公報
甲第2号証:特開2014-237288号公報
甲第3号証:特開2001-248364号公報
甲第4号証:特開平10-264347号公報
甲第5号証:特許第4296794号公報
甲第6号証:特許第2997286号公報
甲第7号証:特開平5-320370号公報
甲第8号証:特開2000-326450号公報
甲第9号証:特開2011-42041号公報
甲第10号証:特開2013-67099号公報
甲第11号証:特開2004-174738号公報
参考資料5:特開2009-196288号公報
参考資料6:特開平9-300524号公報
参考資料8:特開2006-123383号公報
以下、甲第1号証等の証拠を「甲1」等と略記する。
2 当審の判断
(1)証拠の記載
ア 甲1
甲1には次の事項が記載されている。
「【請求項1】
合成樹脂製基材層の一方の面側に蒸着層が積層され、前記合成樹脂製基材層の他方の面ないし蒸着層面の少なくともいずれかの面に接着用プライマー層を設けてなる防湿シートであって、該接着用プライマー層がカップリング剤が添加されてなる層であることを特徴とする防湿シート。」
「【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系基材に積層する防湿シートおよびそれを用いる反り防止木質板並びに化粧板に関し、さらに詳しくは、環境温湿度の変化による木質系基材の吸湿や放湿によって生じる反りを防止する機能を有することは元より、木質系基材からの防湿シートの剥がれや浮きを防止することができる防湿シートおよびそれを用いる反り防止木質板並びに化粧板に関するものである。」
「【0007】
この防湿シートは、透湿度(JIS Z 0280)が2.0g/m2・24hr以下であるために、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シートあるいは紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シートに比べて格段に優れた防湿性能を有し、また、上記防湿シートを用いた化粧板は、ドア、引き戸、間仕切りなど、両側の環境温湿度に大きな差がある場所で用いても、反りを生じることが殆どなく、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合などにも剥離する虞が殆どないというものである。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、フルハイトドアといわれるようなドアに代表されるような長尺な建具において、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、防湿シートの剥がれや浮きの生じることがない防湿シートおよびそれを用いた反り防止木質板並びに化粧板を提供することである。」
「【0015】
また、請求項6記載の本発明の化粧板は、請求項5記載の反り防止木質板の木質系基材の他方の面に接着剤層を介して請求項2記載の防湿シートを積層してなることを特徴とするものである。」
「【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳しく説明する。
図1は本発明にかかる防湿シートの第1実施形態を図解的に示す層構成図、図2は本発明にかかる防湿シートの第2実施形態を図解的に示す層構成図、図3は本発明の防湿シートを用いた反り防止木質板の一実施例を図解的に示す層構成図、図4は本発明の防湿シートを用いた化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図であり、図中の1(a),1(b)は防湿シート、2(a)は反り防止木質板、2(b)は化粧板、10は合成樹脂製基材層、11は蒸着層、12,19は接着剤層、15,16は接着用プライマー層、20は木質系基材、30は化粧シートをそれぞれ示す。
【0018】
図1は本発明にかかる防湿シートの第1実施形態を図解的に示す層構成図であって、防湿シート1(a)は合成樹脂製基材層10の一方の面にプライマー層(図示しない)、蒸着層11と接着用プライマー層15とを形成し、前記合成樹脂製基材層10の他方の面に接着用プライマー層16を形成したものである。なお、前記接着用プライマー層15は後述する反り防止木質板2(a)さらには化粧板2(b)とするための木質系基材に接着剤層を介して積層すると共に、強固に接着させて積層するために設けるものであり、前記接着用プライマー層16は最終的に、たとえば、ドアとする際に、ドアの芯材に接着剤層を介して強固に接着させて積層するために設けるものである。」
「【0020】
また、図3は本発明の防湿シートを用いた反り防止木質板の一実施例を図解的に示す層構成図であって、反り防止木質板2(a)は木質系基材20の一方の面に上記した図1に示す防湿シート1(a)を前記接着用プライマー層16が表出するように接着剤層19を介して積層したものである。このように構成した反り防止木質板2(a)は前記防湿シート1(a)を木質系基材20の一方の面に設けたことにより、一方の面側からの木質系基材20に対する吸放湿を防止することができる。
【0021】
また、図4は本発明の防湿シートを用いた化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図であって、化粧板2(b)は図3に示した反り防止木質板2(a)の前記木質系基材20の他方の面に上記した図2に示す防湿シート1(b)を前記化粧シート30が表出するように接着剤層19を介して積層したものである。このように構成した化粧板2(b)は前記防湿シート1(a)および1(b)により、いずれの面からの木質系基材に対する吸放湿をも防止することができる。
【0022】
次に、防湿シート1(a)、1(b)および反り防止木質板2(a)および化粧板2(b)を構成する諸材料について説明する。まず、前記合成樹脂製基材層10としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-プロピレン共重合体,エチレン-ビニルアルコール共重合体,あるいは、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等のエステル系熱可塑性樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、あるいは、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記合成樹脂製基材層10は、一軸ないし二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよいが、後述する蒸着層11が少なくとも一方の面に形成される基材となることから、機械的強度が強く、寸法安定性に優れるなどの理由から二軸方向に延伸したシートが好ましい。前記合成樹脂製基材層10の厚さとしては、概ね9~25μmが適当である。また、前記合成樹脂製基材層10の必要な面には必要に応じてコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の易接着処理が施されているものである。
【0023】
また、蒸着層11としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる無機物の蒸着層、あるいは、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物の薄膜からなる無機酸化物蒸着層であり、この蒸着層11は真空蒸着法、プラズマ活性化化学反応蒸着法等の周知の蒸着法で、上記した合成樹脂製基材層10の少なくとも一方の面に薄膜形成される。なお、前記蒸着層11としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる蒸着層は金属光沢があるために、意匠によっては金属光沢を隠蔽しなければならないという問題、また、フラッシュドア加工の際に高周波を使用して接着を行う場合などがあり、より好ましくは、蒸着層が透明である無機酸化物蒸着層である。また、前記蒸着層11のガスバリアー性を一層向上させる目的で、前記蒸着層11上(前記接着用プライマー層15が当接する側の面)にポリビニルアルコールあるいはポリビニルアルコールに酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物を添加した組成物をロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布方法でポリビニルアルコール層あるいは前記組成物層を塗布形成してもよいものである。
【0024】
また、本発明では合成樹脂製基材層10と蒸着層11との密着性を高めるために、合成樹脂製基材層10と蒸着層11の間に更にプライマー層を設けてもよい。
このようなプライマー層に用いる樹脂としては、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニルー酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独又は混合して使用できる。プライマー層の形成は、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて行える。
この中でも、プライマー層はアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体とイソシアネートから形成するのが好ましい。
【0025】
なお、前記プライマー層の乾燥後の塗布量としては、1~20g/m2であり、好ましくは1~5g/m2である。また、前記プライマー層は、必要に応じてシリカ粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加した層としてもよいのである。
【0026】
次に、接着用プライマー層15,16および接着剤層12について説明する。前記接着用プライマー層15,16および接着剤層12としては、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独ないし混合して接着組成物としたものを主剤とし、これに硬化剤としてイソシアネートを添加したものを用い、ロールコート法やグラビアコート法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。そして、本発明においては、特に前記接着用プライマー層15は、前記蒸着層11と前記木質系基材20との間の接着強度を高め、フルハイトドアといわれるようなドアに代表されるような長尺な建具において、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、防湿シート1(a)および1(b)の剥がれや浮きを防止するために、カップリング剤を添加した層とするものである。
【0027】
前記接着用プライマー層15に添加するカップリング剤としては、テトラアルコキシチタン,チタンアシレート,チタンキレート等の有機チタン系カップリング剤、あるいは、トリアルキシアルミニウム,アルミニウムキシレート,アルミニウムアシレート等の有機アルミニウム系カップリング剤、あるいは、有機反応性基含有オルガノアルコキシシランであるシラン系カップリング剤を挙げることができるが、本発明においては、シラン系カップリング剤が好ましく、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、たとえば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、あるいは、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。このようなシラン系カップリング剤は、1種ないし2種以上を混合して用いてもよいものであり、その配合量としては、前記接着用プライマー層15を形成する樹脂100重量部に対して、樹脂分として0.1~10重量部の範囲内が適当である。また、前記接着用プライマー層15,16および前記接着剤層12の乾燥後の塗布量としては、1~20g/m2であり、好ましくは1~5g/m2である。また、前記接着用プライマー層15,16および前記接着剤層12は、必要に応じてシリカ粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加した層としてもよいものである。また、今までの説明では、前記防湿シート1(a)において前記接着用プライマー層15を木質系基材20側に位置するようにした反り防止木質板2(a)および化粧板2(b)としてきたが、前記接着用プライマー層16が木質系基材20側に位置するようにした反り防止木質板あるいは化粧板としてもよいのであって、その場合には、少なくとも木質系基材20側に位置する前記接着用プライマー層16にシラン系カップリング剤を添加すればよいものである。また、カップリング剤の添加は、接着用プライマー層15、16のいずれにも添加して、いずれの層間も接着強度を高めたものとしてもよいものである。
【0028】
次に、接着剤層19について説明する。前記接着剤層19は、防湿シート1(a)および1(b)と木質系基材20とを積層するために用いる層であり、前記接着剤層19を形成する接着剤としては、たとえば、熱可塑性樹脂系、熱硬化型樹脂系、ゴム(エラストマー)系等のいずれのタイプの接着剤であってもよいものである。これらは公知のもの、ないし、市販品を適宜選択して使用することができる。熱可塑性樹脂系接着剤としては、たとえば、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、シアノアクリレート、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリメタクリル酸メチル、ニトロセルロース、酢酸セルロース、熱可塑性エポキシ、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体等を挙げることができる。また、熱硬化型樹脂系接着剤としては、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド、ポリベンツイミダゾール、ポリベンゾチアゾール等を挙げることができる。また、ゴム系接着剤としては、天然ゴム、再生ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、ステレオゴム(合成天然ゴム)、エチレンプロピレンゴム、ブロックコポリマーゴム(SBS、SIS、SEBS等)等を挙げることができる。特に、化粧シートが設けられる防湿シート1(b)と木質系基材20とを積層する前記接着剤層19は木質系基材20の表面色を隠蔽して意匠性を向上させるために、顔料等により着色してもよいものである。」
「【実施例1】
【0031】
一方の面にアルミナ蒸着層が形成されると共に、蒸着層面にポリビニルアルコールが塗布形成された12μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、12μm厚さの蒸着PETフィルムと呼称する)のPET面にコロナ放電処理を施した後、主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第1接着用プライマー層を形成し、次に蒸着面側に主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂100重量部に対して0.4重量部のシラン系カップリング剤を添加すると共に、硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第2接着用プライマー層を形成した防湿シートを作製した。3mm厚さの中密度繊維板(MDF)に酢酸ビニル系接着剤をウエット状態で7~8g/尺2塗布し、乾燥した後に、該塗布面に前記防湿シートを前記蒸着層側が位置するようにロールラミネート機で積層して本発明の反り防止木質板を作製した。」
「【0033】
上記で作製した実施例1、および、比較例1の反り防止木質板について、透湿度、平面引張強度、基材ピーリング強度を下記する評価方法で評価し、その結果を表1に纏めて示した。
【0034】
【表1】
[図:0001386082000001.jpg]
【0035】
〔評価方法〕
・透湿度:
JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して実施例1、および、比較例1の防湿シートを測定して透湿度を算出した。なお、透湿度の単位は、g/m2・24hrである。
・・・
【0036】
表1からも明らかなように、本発明の防湿シートはアルミナ蒸着層を設けたことにより、透湿度性能の向上が見られ、環境温湿度の変化により発生する化粧板の反りを防止することができるという効果が期待できるのみならず、防湿シートの蒸着層側の接着用プライマー層にシラン系カップリング剤を添加することにより、防湿シートとMDFとの間の接着強度を向上させることができ、フルハイトドアといわれるようなドアに代表されるような長尺な建具において、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、防湿シートの剥がれや浮きの生じることがないという優れた効果が期待できる。」
「【図1】
[図:0001386082000002.jpg]
」
「【図3】
[図:0001386082000003.jpg]
」
「【図4】
[図:0001386082000004.jpg]
」
上記甲1の記載事項から、甲1に記載された化粧板2(b)は、防湿シート1(a)を木質系基材20の一方の面に積層し、防湿シート1(b)を木質系基材20の一方の面に積層したものである(上記【0020】、【0021】)ことを踏まえつつ、防湿シート1(a)として実施例1(上記【0031】)に記載されたものに着目すると、甲1には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
「木質系基材20の一方の面に防湿シート1(a)を第1接着用プライマー層16が表出するように接着剤層19を介して積層し、
木質系基材20の他方の面に防湿シート1(b)を化粧シート30が表出するように接着剤層19を介して積層し、
防湿シート1(a)は、一方の面にアルミナ蒸着層が形成されると共に、蒸着層面にポリビニルアルコールが塗布形成された12μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムのPET面にコロナ放電処理を施した後、主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第1接着用プライマー層を形成し、次に蒸着面側に主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂100重量部に対して0.4重量部のシラン系カップリング剤を添加すると共に、硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第2接着用プライマー層を形成したものであり、
防湿シート1(a)は、順に、第2接着用プライマー層15/ポリビニルアルコール層/蒸着層/二軸延伸ポリエチレンテレフタレート層/第1接着用プライマー層16として形成され、
木質系基材20に酢酸ビニル系接着剤を塗布し、乾燥した後に、塗布面に防湿シート1(a)を蒸着層側が位置するように積層して反り防止木質板とし、
反り防止木質板の透湿度が1.5g/m2・24hrである化粧板2(b)。」
イ 甲2
甲2には次の事項が記載されている。
「【0041】
(実施例1)
延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムA-4100(東洋紡(株))に、1m2当たり4g(乾燥質量)となるように接着剤を塗工した。接着剤は、主剤としてポリエステル-ウレタン系樹脂、硬化剤としてイソシアネートを含む、ディックシールA970/ディックシールA970FP-8/W-AH(80/20/3)(DICグラフィックス(株)製)を使用した。塗工後、35℃で2日間養生し、表面層10を得た。表面層10は巻取って巻取体とし、化粧シート1の作製時に、その巻取体を表面層送出手段51に取付けた。
また、透明PETG(GN071(イーストマンケミカル(株)))を主成分とする樹脂フィルムに、SXインク(昭和インク工業(株))で印刷を施し、意匠層20を得た。意匠層20は巻取って巻取体とし、化粧シート1の作製時に、その巻取体を意匠層送出手段52に取付けた。
・・・
【0043】
(実施例2)
実施例1で用いた接着剤に替えて、主剤としてウレタン-塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系樹脂、硬化剤としてイソシアネートを含む接着剤である、THFプライマー(S)/XEL硬化剤(D)(100/5)(インクテック(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、化粧シート1を作製した。」
ウ 甲3
甲3には次の事項が記載されている。
「【0019】さらに、第2易接着処理としての接着助長層の形成は、コロナ放電処理が施された前記合成樹脂製防湿シートの少なくとも一方の面に、塩酢ビ・ウレタン樹脂(プレポリマーとして塩化ビニルと酢酸ビニルとビニルアルコールとのコポリマーを用い、イソシアネートと反応してウレタン結合を形成させる2液反応型樹脂、ないし、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とポリエステルポリオールの混合物を用い、イソシアネートと反応してウレタン結合を形成させる2液反応型樹脂をいう)、あるいは、アクリル・ウレタン樹脂(プレポリマーとしてアクリルポリオールを用い、イソシアネートと反応してウレタン結合を形成する2液反応型樹脂をいう)等を塗工法、塗工量(乾燥後の)を考慮して適当な溶剤を用いて必要な粘度に調製した塗工液となし、たとえば、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗工法で塗工することにより形成することができる。この接着助長層の乾燥後の塗工量としては1~20g/m2、好ましくは1~5g/m2である。このようにして形成された接着助長層は、特にフラッシュパネル製造時に木工用接着剤(酢酸ビニル系接着剤)で枠組み芯材と接着可能となり、フラッシュパネル製造時の利便性が向上する。また、この接着助長層を前記合成樹脂製防湿シートの両面に形成することにより、面材を構成する木質基材との接着についても木工用接着剤(酢酸ビニル系接着剤)を用いることができるようになり、面材製造時の利便性も向上する。特に、塩酢ビ・ウレタン樹脂が、オレフィン系樹脂シートとの接着性に優れ、好適なものである。」
エ 甲8
甲8には次の事項が記載されている。
「【0026】その他、基材シート1や表面樹脂層4を構成する熱可塑性樹脂には、目的とする化粧シートの用途により必要に応じて、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤等の従来公知の各種の添加剤の1種以上が添加されていても良い。
【0027】・・・紫外線吸収剤としては例えばベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリシレート系、シアノアクリレート系、ホルムアミジン系、オキザニリド系等、・・・から選ばれる1種又は2種以上の混合系で使用される。」
「【0053】表面樹脂層4の表面には、従来公知の如く、必要に応じて所望の適宜の模様のエンボスを設けることもできる。エンボスの模様の種類にも特に制限はなく、例えば木目調(特に導管模様状)、石目調、布目調、和紙調、幾何学模様状等の各種模様状であっても良いし、或いは例えば単なる艶消状や砂目状、ヘアライン状、スウェード調等であっても良い。また、これらのエンボスの模様を絵柄層2の絵柄と同調させることによって更なる意匠性の向上を図ることも出来るが、その必要がなければ非同調であっても良く、また絵柄層2の絵柄と同調した模様と同調しない模様との両者を含む模様のエンボスを設けることもできる。」
オ 甲9
甲9には次の事項が記載されている。
「【0034】
化粧シートの耐候性をより向上させるため、表面保護層5には紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤等の耐候剤の添加が一般的に用いられる。紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、ヒドロキシフェニルトリアジン系、ベンゾフェノン系など公知のものが使用できるが、なかでもヒドロキシフェニルトリアジン系の紫外線吸収剤を選定すれば、トリアジン骨格がブリードを抑制する事、またトリアジン骨格がベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系の骨格と比較して化学的に安定である事などにより、長期に亘る紫外線吸収性能を保持することが可能となる。」
「【0044】
透明樹脂層4は、絵柄模様層2を保護するために必要に応じて設けることができ、絵柄を活かせるものであれば透明でも半透明でもよい。あるいは適宜艶消し模様やエンボス付与により表面凹凸を設けたものであっても良い。あるいはこの凹凸に着色剤を充填したものであってもよい。透明樹脂層4としてはポリオレフィン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合ゴム、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴムなどが挙げられるが、その中でも特に、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、の単独重合あるいはこれら2種以上の共重合樹脂、もしくはそれらの混合樹脂からなるものが好ましい。またこれらの樹脂中には、必要に応じて、紫外線吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、加工安定剤、などの各種添加剤を添加しても良い。」
「【図1】
[図:0001386082000005.jpg]
」
カ 甲10
甲10には次の事項が記載されている。
「【0035】
・・・
また、樹脂組成物には、後述する賦型シートからの離型性を向上させるために、シリコーンを含有させることもできる。さらには、得られる化粧板に耐候性を付与するため、必要に応じて、紫外線吸収剤及び/又はヒンダードアミン系などの光安定剤(HALS)を含有させることもできる。」
「【0037】
≪賦型シート≫
本発明の化粧板は、表面保護層上に、該保護層表面に所定形状の賦型を施すために用いられる賦型シートを有していてもよい。
賦型シートとしては、通常、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルシート、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンシートなどのプラスチックシートが挙げられる。この賦型シートの厚さについては特に制限はないが、通常12~200μm程度である。
賦型シートは、その表面にシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し、剥離層を設けたものであってもよい。また、賦型シートは、剥離層面が所望により鏡面仕様であってもよいし、マット仕様やエンボスタイプ(木目、抽象柄などの意匠)などの凹凸状であってもよい。賦型シートの剥離層面の凹凸形状をコントロールすることにより、前述の表面保護層の表面状態を自由に制御することが可能である。
また、上記賦型シートは、本発明の化粧板の表面保護フィルム(マスキングフィルム)としての機能をも有しており、別途保護フィルムを用いる必要がないことから、材料削減、工程簡略化を図ることができ、コスト削減、環境配慮の点で有利である。」
「【図2】
[図:0001386082000006.jpg]
」
キ 甲11
甲11には次の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建築物や車両等の内装に使用される突板シートに関するものである。」
「【0058】
実施例1
厚さ12μmの透明なセラミック蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:エコシアール、透湿度1g/m2・24hr以下、酸素透過度1cm3/m2・24hr・atm以下)(セラミック蒸着フィルム)の蒸着面にプライマー処理後、透明性の高い印刷インキを使用して透視性の木目柄模様を印刷した。」
「【0060】
次いで、該突板の裏面に、厚さ12μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(透湿度1g/m2・24hr以下、酸素透過度1cm3/m2・24hr・atm以下)(アルミ蒸着フィルム)の蒸着面を、淡褐色不透明に着色したポリエステル系接着剤(乾燥後の塗布量30g/m2)を用いて貼り合わせた。」
ク 参考資料5
参考資料5には次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建築物の内外装材や、造作材、建具等の建築資材、家具什器類、住設機器や家電製品などの表面化粧等に使用する化粧シートに関するものであり、特には住宅等の建築物の床材、浴室や厨房等のタイル、ステンレス板などのように、水(冷水または温水)や湿気(水蒸気)に曝される機会が多く、反りや膨れや腐食などの問題が発生し易い箇所に用いる、耐水性、耐湿性に優れた化粧シートに関する。
なおかつ、植物由来のポリ乳酸樹脂、ポリエステル系樹脂を主原料として地球環境と人体に優しい化粧シートに関する。」
「【0054】
前記透明熱可塑性樹脂層6の上に、表面保護層7として乾燥硬化後の厚みが9μmとなるように紫外線吸収剤と光安定剤が添加された2液ウレタン樹脂をグラビアコーティングにて塗工した。また前記隠蔽層の側に、プライマー層8として乾燥後の塗布量が2g/m2になるように2液ウレタン樹脂を塗工し、図2に示すような構成の化粧シートを得た。
水蒸気透過率は1.0g/(m2・24h)であった。」
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「木質系基材20」は、本件発明1の「木質基材」に相当し、以下同様に「防湿シート1(a)」は「防湿シート」に、「第2接着用プライマー層」は「第2の接着用プライマー層」に、「蒸着層」は「蒸着層」に、「ポリビニルアルコール層」は「樹脂層」に、「防湿シート1(b)」は、「化粧シート30」が表出するものであるから、「防湿シート1(b)」全体でみると、「化粧シート」に相当する。また、甲1発明の「第1接着用プライマー層」は、本件発明1の「第1の接着用プライマー層」に、「化粧板2(b)」は「防湿化粧板」に相当する。
甲1発明の「木質系基材20の一方の面」と「防湿シート1(a)」との間に介する「接着剤層19」は、本件発明1の「接着層」に相当する。
甲1発明の「木質系基材20の一方の面に防湿シート1(a)を接着用プライマー層16が表出するように接着剤層19を介して積層し、木質系基剤20の他方の面に防湿シート1(b)を化粧シート30が表出するように接着剤層19を介して積層」することは、本件発明1の「木質基材と、前記木質基材の一方の面側に設けられた化粧シートと、前記木質基材の他方の面側に設けられた防湿シート6、を備え」ることに相当する。
甲1発明の「蒸着層面にポリビニルアルコールが塗布形成され」ていることは、本件発明1の「蒸着層上に設けられたポリビニルアルコールを含む樹脂層」を備えることに相当する。
甲1の「・・・防湿シート1(a)、1(b)および反り防止木質板2(a)および化粧板2(b)を構成する諸材料について説明する。まず、前記合成樹脂製基材層10としては、・・・ポリエチレンテレフタレート・・・等のエステル系熱可塑性樹脂、・・・などを挙げることができる。前記合成樹脂製基材層10は、一軸ないし二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよいが、後述する蒸着層11が少なくとも一方の面に形成される基材となることから、機械的強度が強く、寸法安定性に優れるなどの理由から二軸方向に延伸したシートが好ましい。」(上記(1)ア【0022】)の記載を踏まえると、甲1発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」からなる「二軸延伸ポリエチレンテレフタレート層」は、「合成樹脂製基材層10」として設けられているものといえるから、本件発明1の「ポリエチレンテレフタレートを含む基材層」及び「基材層」に相当する。
甲1発明の「PET面」に「コロナ放電処理を施した後、主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第1接着用プライマー層を形成し」たことは、本件発明1の「樹脂層上に設けられた第1の接着用プライマー層を備える」ことに相当する。
甲1の「・・・防湿シート1(a)は合成樹脂製基材層10の一方の面にプライマー層、蒸着層11と接着用プライマー層15とを形成し、前記合成樹脂製基材層10の他方の面に接着用プライマー層16を形成したものである。なお、前記接着用プライマー層15は後述する反り防止木質板2(a)さらには化粧板2(b)とするための木質系基材に接着剤層を介して積層すると共に、強固に接着させて積層するために設けるものであり、・・・」(上記(1)ア【0018】)の記載を参照すると、甲1発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」の「蒸着面側」に「第2接着用プライマー層を形成し」たことは、本件発明1の「前記基材層の前記木質基材側の面に設けられ、前記防湿シートの表層を構成する接着用プライマー層」を備えていることに相当する。
甲1発明の「木質基材20に酢酸ビニル系接着剤を塗布し、乾燥した後に、塗布面に防湿シート1(a)を蒸着層側が位置するように積層」することは、「木質基材と前記防湿シートとを接着する接着層は、酢酸ビニル系樹脂を含」むことである限りで、本件発明1の「木質基材と前記防湿シートとを接着する接着層は、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を含」むことに一致する。
甲1発明の「主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第1接着用プライマー層を形成し」、「主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂100重量部に対して0.4重量部のシラン系カップリング剤を添加すると共に、硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第2接着用プライマー層を形成した」ことは、「第1の接着用プライマー層及び第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂を含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成され」ている限りで、本件発明1の「前記第1の接着用プライマー層及び前記第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成され」ていることに一致する。
したがって、本件発明1と甲1発明は、次の点で一致し、相違点で相違する。
<一致点1>
「木質基材と、
前記木質基材の一方の面側に設けられた化粧シートと、
前記木質基材の他方の面側に設けられた防湿シートと、を備え、
前記木質基材と前記防湿シートとを接着する接着層は、酢酸ビニル共重合樹脂を含み、
前記防湿シートは、
ポリエチレンテレフタレートを含む基材層と、
前記基材層の一方の面側に設けられた無機酸化物を含む蒸着層と、
前記蒸着層上に設けられたポリビニルアルコールを含む樹脂層と、
前記樹脂層上に設けられた第1の接着用プライマー層と、
前記基材層の他方の面に設けられた第2の接着用プライマー層と、を備え、
前記第1の接着用プライマー層及び前記第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂を含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている防湿化粧板。」
<相違点1>
「木質基材と前記防湿シートとを接着する接着層は、酢酸ビニル系樹脂を含」むことに関して、本件発明1は、「木質基材と前記防湿シートとを接着する接着層は、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂を含」むのに対して、甲1発明は、「木質基材20に酢酸ビニル系接着剤を塗布し、乾燥した後に、塗布面に防湿シート1(a)を蒸着層側が位置するように積層」する点。
<相違点2>
「第1の接着用プライマー層及び第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂を含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成され」ていることに関して、本件発明1は、「前記第1の接着用プライマー層及び前記第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成され」ているのに対して、甲1発明は、「主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第1接着用プライマー層を形成し」、「主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂100重量部に対して0.4重量部のシラン系カップリング剤を添加すると共に、硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第2接着用プライマー層を形成した」点。
<相違点3>
本件発明1は、「前記基材層の他方の面が前記木質基材側の面であ」るのに対して、甲1発明は、「木質系基材20に酢酸ビニル系接着剤を塗布し、乾燥した後に、塗布面に防湿シート1(a)を蒸着層側が位置するように積層した」点。
<相違点4>
本件発明1は、「該防湿シートの水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つ、該防湿シートの一方の面側から他方の面側を透視可能な透明度を有する」るのに対して、甲1発明は、「反り防止木質板の透湿度が1.5g/m2・24hrである」点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
甲1には、「防湿シート」を「透湿度(JIS Z 0280)が2.0g/m2・24hr以下」とすることで、「塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シートあるいは紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シートに比べて格段に優れた防湿性能を有」するものとすることが記載されており(上記(1)ア【0007】)、実施例1として「透湿度(JIS Z 0280)」を「1.5g/m2・24hr」として、透湿度を下げることにより、防湿能力を向上させたものが記載されている(上記(1)ア【0034】)。
また、甲1には、接着用プライマー層について、「着色剤等の添加剤を添加した層としてもよい」(上記(1)ア【0025】)、「前記蒸着層11としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる蒸着層は金属光沢があるために、意匠によっては金属光沢を隠蔽しなければならないという問題、また、フラッシュドア加工の際に高周波を使用して接着を行う場合などがあり、より好ましくは、蒸着層が透明である無機酸化物蒸着層である。」(上記(1)ア【0023】)と記載されている。
しかしながら、甲1には、「該防湿シートの水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つ、該防湿シートの一方の面側から他方の面側を透視可能な透明度を有する」ものとすることが記載されていないし、そのようにすることの示唆もない。
また、「防湿シート」の透湿度を下げ、防湿能力を向上するために、防湿シートを厚くすることが考えられるが、このことは、防湿シート全体として表面側から裏面側までの視認性を向上させることと相反することといえる。
そうしてみると、蒸着層としてアルミナ蒸着層が採用されていて、透湿度が1.5g/m2・dayである甲1発明の防湿シートにおいて、「シート全体の水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つ、シート表面側からシート裏面側が視認可能な透明度を有する」ものとすることが当業者にとって容易に想到し得たといえるものではない。この判断は他の証拠を考慮しても変わるものではない。
したがって、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項は、当業者が甲1発明に基づいて容易に想到し得たものではない。
そうすると、相違点1~3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)本件発明3、4、6、7、9について
本件発明3、4、6、7、9は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記(2)と同じ理由により、当業者が甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(4)小括
以上のとおり、本件発明1、3、4、6、7、9は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当せず、したがって、請求項1、3、4、6、7、9に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
第4 取消理由の通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 新規性について
上記第3で示したとおり、上記相違点5は実質的なものであり、申立人の主張する新規性欠如について、取消理由があるとすることはできない。
2 明確性について
申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明は「前記接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている」と製造方法で特定されている結果、物としてどのような構成を特定しているのか不明確であり、発明の範囲を不明確にしている、と指摘する(特許異議申立書32ページ6~9行)。
しかし、本件訂正後の請求項1は、「第1の接着用プライマー層」が「ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂」で形成されたものであることを特定し、第1の接着用プライマー層及び第2の接着用プライマー層の組成を特定するもので、製造方法を特定したものには当たらない。
したがって、申立人のこの点の指摘にしたがって取消理由があるとすることはできない。
3 実施可能要件について
申立人は、請求項2における「前記化粧シートは、酸化チタンを含む樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面に形成された塗布膜である酸化チタン層と、を備え、前記酸化チタン層及び前記樹脂基材の全体に対して、前記酸化チタン層における酸化チタンの含有量と、前記樹脂基材における酸化チタンの含有量との合計は、23質量部以上である」の記載に関して、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件訂正前の請求項2に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない旨を述べている(特許異議申立書32ページ14~24行)。
上記訂正事項2により、請求項2が削除されたから、実施可能要件に係る特許異議申立理由は、対象となる請求項が存在しないものとなった。
第5 むすび
以上のとおり、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1、3、4、6、7、9に係る特許を取り消すことはできない。また、他に請求項1、3、4、6、7、9に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、本件特許の請求項2、5、8は、本件訂正により削除されたため、請求項2、5、8に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700494