特許異議申立
2020-700493
建材用防湿シートおよび化粧板
- 審判番号
- 2020-700493
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-208333
- 登録番号
- 6645119
- 請求日
- 2020年07月15日
- 審決日
- 2021年12月24日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】凸版印刷株式会社
- 【権利者代理人】廣瀬 一
- 【権利者代理人】宮坂 徹
- 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 藤原 直欣
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6645119号発明「化粧板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6645119号の明細書及び特許請求の範囲を、令和3年5月17日に提出された訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第6645119号の請求項6に係る特許を維持する。
特許第6645119号の請求項1~5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6645119号の請求項1~6に係る特許(以下「本件特許」という)についての出願は、平成27年10月22日の特許出願であって、令和2年1月14日に特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報発行日:同年2月12日)。
本件特許異議の申立てに係る主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和2年7月15日 : 特許異議申立人 藤江桂子(以下「申立人」という。)による本件特許の請求項1~6に係る特許に対する特許異議の申立て
同年11月11日 : 取消理由の通知(令和2年11月6日付け取消理由通知書)
同年12月24日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和3年3月31日 : 取消理由の通知(決定の予告)
(令和3年3月26日付け取消理由通知書(決定の予告))
同年5月17日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年7月19日 : 申立人による意見書の提出
なお、特許権者が令和2年12月24日に提出した訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の請求についての判断
1 訂正の内容
令和3年5月17日提出の訂正請求書による訂正の請求は、「特許第6645119号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項6に「上記建材用防湿シートが、エチレン・酢ビ系接着剤を介して、上記木質系基材の面に貼り付けられたことを特徴とする請求項5に記載した化粧板。」とあるうち、引用する請求項5のうちさらに請求項1~4を引用するものについて、独立形式に改め、
「合成樹脂製からなる透明な基材層と、
上記基材層の一方の面側に設けられた無機酸化物からなる透明な蒸着層と、
上記蒸着層の上に設けられ主成分をポリビニルアルコールとした透明な樹脂層と、
上記樹脂層の表面に設けられた透明な第1の接着用プライマー層と、
上記基材層の他方の面に形成され表面濡れ性が改質されている表面濡れ性改質部と、
上記表面濡れ性改質部の上記基材層側とは反対側の面に設けられた透明な第2の接着用プライマー層と、
を有し、
上記第1及び第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている建材用防湿シート、並びに、
上記建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、エチレン・酢ビ系接着剤を介して貼り付けられた木質系基材を備えた粧板であって、
上記建材用防湿シートが、シート全体の水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つシート表面側からシート裏面側が視認可能な透明度を有することを特徴とする化粧板。」に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(7)訂正事項7
明細書の[発明の名称]に記載された「建材用防湿シートおよび化粧板」を「化粧板」に訂正する。
2 一群の請求項
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が請求項1を引用しているものであって、訂正事項2によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項1~6について、請求されたものである。
3 本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項6の記載が請求項1~4の記載を引用した請求項5の記載を引用していたところ、訂正事項2~6で請求項1~5が削除されたことに伴い、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものである。したがって、訂正事項1は、明瞭でない記載の釈明又は他の請求項を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。
また、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載された「基材層」、「蒸着層」、「第1の接着用プライマー層」、請求項2に記載された「第2の接着用プライマー層」を、それぞれ、「透明な基材層」、「透明な蒸着層」、「透明な第1の接着用プライマー層」、「透明な第2の接着用プライマー層」とするものでもあり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものにも該当する。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1の「透明な基材層」、「透明な蒸着層」、「透明な第1の接着用プライマー層」、「透明な第2の接着用プライマー層」は、願書に添付した明細書の段落【0011】及び【0030】の記載に基づくものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと
訂正事項1により発明のカテゴリー、対象、目的が変更されるものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2~6について
訂正事項2~6は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項2~6は、いずれも、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)訂正事項7について
訂正事項7は、特許請求の範囲において訂正事項2~5によって「建材用防湿シート」の発明が全て削除されたことに伴うものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項7は、新規事項を追加するものではなく、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、訂正事項7は、一群の請求項の全てについて行われるものである。
4 小括
以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~6〕についての訂正を認める。
第3 本件発明
令和3年5月17日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項6の記載において、「上記建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、エチレン・酢ビ系接着剤を介して貼り付けられた木質系基材を備えた粧板であって、」は、請求項6の他の記載事項(特に末尾が「化粧板」となっている点)並びに明細書(特に【0030】)及び図面の記載に照らして「上記建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、エチレン・酢ビ系接着剤を介して貼り付けられた木質系基材を備えた化粧板であって、」の明らかな誤記と認める。
このことを考慮して、本件特許の請求項6に係る発明は、次のものと認める(以下、この発明を「本件発明」という。)。
「【請求項6】
合成樹脂製からなる透明な基材層と、
上記基材層の一方の面側に設けられた無機酸化物からなる透明な蒸着層と、
上記蒸着層の上に設けられ主成分をポリビニルアルコールとした透明な樹脂層と、
上記樹脂層の表面に設けられた透明な第1の接着用プライマー層と、
上記基材層の他方の面に形成され表面濡れ性が改質されている表面濡れ性改質部と、
上記表面濡れ性改質部の上記基材層側とは反対側の面に設けられた透明な第2の接着用プライマー層と、
を有し、
上記第1及び第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている建材用防湿シート、並びに、
上記建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、エチレン・酢ビ系接着剤を介して貼り付けられた木質系基材を備えた化粧板であって、
上記建材用防湿シートが、シート全体の水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つシート表面側からシート裏面側が視認可能な透明度を有することを特徴とする化粧板。」
第4 取消理由の概要
本件訂正前の本件特許の請求項1~6に係る特許に対して、当審から特許権者に対して令和3年3月31日に通知した取消理由(決定の予告。令和3年3月26日付け取消理由通知書(決定の予告)参照。)の概要は、次のとおりである。
本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明及び周知技術、又は甲第9号証に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
甲第1号証:特開2009-255499号公報
甲第2号証:特開2014-237288号公報
甲第3号証:特開2001-248364号公報
甲第4号証:特開平10-264347号公報
甲第5号証:特許第4296794号公報
甲第6号証:特許第2997286号公報
甲第7号証:特開平5-320370号公報
甲第8号証:特開2004-174738号公報
甲第9号証:特開2015-77710号公報
以下、甲第1号証等の証拠を「甲1」等と略記し、甲1に記載された事項を「甲1記載事項」等という。
第5 当審の判断
1 甲1を主引用例とする特許法第29条第2項の理由について
(1)各証拠の記載事項等
ア 甲1について
(ア)甲1には、図面とともに次の記載がある。なお、下線は、当審が付した(他の証拠についても同様)。
a「【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製基材層の一方の面側に蒸着層が積層され、前記合成樹脂製基材層の他方の面ないし蒸着層面の少なくともいずれかの面に接着用プライマー層を設けてなる防湿シートであって、該接着用プライマー層がカップリング剤が添加されてなる層であることを特徴とする防湿シート。
・・・
【請求項5】
請求項1記載の防湿シートを木質系基材の一方の面に接着剤層を介して前記接着用プライマー層が前記木質系基材側に位置するように積層してなることを特徴とする反り防止木質板。・・・」
b「【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系基材に積層する防湿シートおよびそれを用いる反り防止木質板並びに化粧板に関し、さらに詳しくは、環境温湿度の変化による木質系基材の吸湿や放湿によって生じる反りを防止する機能を有することは元より、木質系基材からの防湿シートの剥がれや浮きを防止することができる防湿シートおよびそれを用いる反り防止木質板並びに化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、・・・
【0007】
この防湿シートは、透湿度(JIS Z 0280)が2.0g/m2・24hr以下であるために、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シートあるいは紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シートに比べて格段に優れた防湿性能を有し、また、上記防湿シートを用いた化粧板は、ドア、引き戸、間仕切りなど、両側の環境温湿度に大きな差がある場所で用いても、反りを生じることが殆どなく、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合などにも剥離する虞が殆どないというものである。」
c「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、フルハイトドアといわれるようなドアに代表されるような長尺な建具において、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、防湿シートの剥がれや浮きの生じることがない防湿シートおよびそれを用いた反り防止木質板並びに化粧板を提供することである。」
d「【発明の効果】
【0016】
本発明の防湿シートは、合成樹脂製基材層と蒸着層とからなるシートであり、防湿性に優れ、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂製シートあるいは紙/ポリエチレン/紙からなる防湿シートに比べて格段に優れた防湿性能を有し、フルハイトドアといわれるようなドアに代表されるような長尺な建具において、両側の温湿度環境に大きな差がある場所に用いても、また、長期間使用された場合や、不可抗力的に外力が加わった場合にも、反りを防止すると共に、接着用プライマー層に添加したカップリング剤の効果により、防湿シートの剥がれや浮きの生じることがないという優れた効果を奏するものである。」
e「【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳しく説明する。
図1は本発明にかかる防湿シートの第1実施形態を図解的に示す層構成図、図2は本発明にかかる防湿シートの第2実施形態を図解的に示す層構成図、図3は本発明の防湿シートを用いた反り防止木質板の一実施例を図解的に示す層構成図、図4は本発明の防湿シートを用いた化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図であり、図中の1(a),1(b)は防湿シート、2(a)は反り防止木質板、2(b)は化粧板、10は合成樹脂製基材層、11は蒸着層、12,19は接着剤層、15,16は接着用プライマー層、20は木質系基材、30は化粧シートをそれぞれ示す。
【0018】
図1は本発明にかかる防湿シートの第1実施形態を図解的に示す層構成図であって、防湿シート1(a)は合成樹脂製基材層10の一方の面にプライマー層(図示しない)、蒸着層11と接着用プライマー層15とを形成し、前記合成樹脂製基材層10の他方の面に接着用プライマー層16を形成したものである。なお、前記接着用プライマー層15は後述する反り防止木質板2(a)さらには化粧板2(b)とするための木質系基材に接着剤層を介して積層すると共に、強固に接着させて積層するために設けるものであり、前記接着用プライマー層16は最終的に、たとえば、ドアとする際に、ドアの芯材に接着剤層を介して強固に接着させて積層するために設けるものである。
【0019】
また、図2は本発明にかかる防湿シートの第2実施形態を図解的に示す層構成図であって、防湿シート1(b)は合成樹脂製基材層10の一方の面に蒸着層を11と接着用プライマー層15を形成し、合成樹脂製基材層10の他方の面に接着剤層12を介して化粧シート30を積層したものである。また、前記化粧シート30としては、前記化粧シート30の基材シートが紙からなる仕様、あるいは、熱可塑性樹脂からなる仕様の周知のものを用いることができ、たとえば、特公昭63-052580号公報、特開平06-016832号公報、特開平11-207879号公報、特開2001-009972号公報、特開2003-276133号公報等に開示されている化粧紙や化粧シートを用いることができる。
【0020】
また、図3は本発明の防湿シートを用いた反り防止木質板の一実施例を図解的に示す層構成図であって、反り防止木質板2(a)は木質系基材20の一方の面に上記した図1に示す防湿シート1(a)を前記接着用プライマー層16が表出するように接着剤層19を介して積層したものである。このように構成した反り防止木質板2(a)は前記防湿シート1(a)を木質系基材20の一方の面に設けたことにより、一方の面側からの木質系基材20に対する吸放湿を防止することができる。
【0021】
また、図4は本発明の防湿シートを用いた化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図であって、化粧板2(b)は図3に示した反り防止木質板2(a)の前記木質系基材20の他方の面に上記した図2に示す防湿シート1(b)を前記化粧シート30が表出するように接着剤層19を介して積層したものである。このように構成した化粧板2(b)は前記防湿シート1(a)および1(b)により、いずれの面からの木質系基材に対する吸放湿をも防止することができる。」
f「【0022】
次に、防湿シート1(a)、1(b)および反り防止木質板2(a)および化粧板2(b)を構成する諸材料について説明する。まず、前記合成樹脂製基材層10としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン-プロピレン共重合体,エチレン-ビニルアルコール共重合体,あるいは、これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート-イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等のエステル系熱可塑性樹脂、ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂、あるいは、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。前記合成樹脂製基材層10は、一軸ないし二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよいが、後述する蒸着層11が少なくとも一方の面に形成される基材となることから、機械的強度が強く、寸法安定性に優れるなどの理由から二軸方向に延伸したシートが好ましい。前記合成樹脂製基材層10の厚さとしては、概ね9~25μmが適当である。また、前記合成樹脂製基材層10の必要な面には必要に応じてコロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理等の易接着処理が施されているものである。
【0023】
また、蒸着層11としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる無機物の蒸着層、あるいは、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物の薄膜からなる無機酸化物蒸着層であり、この蒸着層11は真空蒸着法、プラズマ活性化化学反応蒸着法等の周知の蒸着法で、上記した合成樹脂製基材層10の少なくとも一方の面に薄膜形成される。なお、前記蒸着層11としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる蒸着層は金属光沢があるために、意匠によっては金属光沢を隠蔽しなければならないという問題、また、フラッシュドア加工の際に高周波を使用して接着を行う場合などがあり、より好ましくは、蒸着層が透明である無機酸化物蒸着層である。・・・」
g「【0025】
なお、前記プライマー層の乾燥後の塗布量としては、1~20g/m2であり、好ましくは1~5g/m2である。また、前記プライマー層は、必要に応じてシリカ粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加した層としてもよいのである。
【0026】
次に、接着用プライマー層15,16および接着剤層12について説明する。前記接着用プライマー層15,16および接着剤層12としては、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独ないし混合して接着組成物としたものを主剤とし、これに硬化剤としてイソシアネートを添加したものを用い、ロールコート法やグラビアコート法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。・・・」
h「【0028】
次に、接着剤層19について説明する。前記接着剤層19は、防湿シート1(a)および1(b)と木質系基材20とを積層するために用いる層であり、前記接着剤層19を形成する接着剤としては、たとえば、熱可塑性樹脂系、熱硬化型樹脂系、ゴム(エラストマー)系等のいずれのタイプの接着剤であってもよいものである。これらは公知のもの、ないし、市販品を適宜選択して使用することができる。熱可塑性樹脂系接着剤としては、たとえば、ポリ酢酸ビニル樹脂、・・・エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体等を挙げることができる。・・・特に、化粧シートが設けられる防湿シート1(b)と木質系基材20とを積層する前記接着剤層19は木質系基材20の表面色を隠蔽して意匠性を向上させるために、顔料等により着色してもよいものである。」
i「【実施例1】
【0031】
一方の面にアルミナ蒸着層が形成されると共に、蒸着層面にポリビニルアルコールが塗布形成された12μm厚さの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、12μm厚さの蒸着PETフィルムと呼称する)のPET面にコロナ放電処理を施した後、主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第1接着用プライマー層を形成し、次に蒸着面側に主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂100重量部に対して0.4重量部のシラン系カップリング剤を添加すると共に、硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して2μm厚さの第2接着用プライマー層を形成した防湿シートを作製した。3mm厚さの中密度繊維板(MDF)に酢酸ビニル系接着剤をウエット状態で7~8g/尺2塗布し、乾燥した後に、該塗布面に前記防湿シートを前記蒸着層側が位置するようにロールラミネート機で積層して本発明の反り防止木質板を作製した。」
j「【0034】
【表1】
[図:0001384020000001.jpg]
【0035】
〔評価方法〕
・透湿度:
JIS Z 0208「防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)」に準拠して実施例1、および、比較例1の防湿シートを測定して透湿度を算出した。なお 、透湿度の単位は、g/m2・24hrである。・・・」
k「【図1】
[図:0001384020000002.jpg]
」
l「【図2】
[図:0001384020000003.jpg]
」
m「【図3】
[図:0001384020000004.jpg]
」
n「【図4】
[図:0001384020000005.jpg]
」
(イ)上記a~nを踏まえ、特にその実施例1に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの一方の面にアルミナ蒸着層が形成されると共に、
上記蒸着層の面にポリビニルアルコールが塗布形成された蒸着PETフィルムを有し、
上記蒸着PETフィルムの蒸着面側に、主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して第2接着用プライマー層を形成し、
上記蒸着PETフィルムのPET面にコロナ放電処理を施した後、主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して第1接着用プライマー層を形成した防湿シート、及び、
中密度繊維板(MDF)に酢酸ビニル系接着剤を塗布し、乾燥した後に該塗布面に防湿シートを蒸着層側が位置するように積層して作製した反り防止木質板であって、
上記防湿シートのJIS Z 0208に準拠した透湿度が1.5g/m2・24hrである反り防止木質板。」
イ 甲2について
甲2には、次の記載がある。
「【0043】
(実施例2)
実施例1で用いた接着剤に替えて、主剤としてウレタン-塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体系樹脂、硬化剤としてイソシアネートを含む接着剤である、THFプライマー(S)/XEL硬化剤(D)(100/5)(インクテック(株)製)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、化粧シート1を作製した。」
ウ 甲3について
甲3には、次の記載がある。
(ア)「【0018】次に、合成樹脂製防湿シートに施す易接着処理について説明する。・・・
【0019】さらに、第2易接着処理としての接着助長層の形成は、コロナ放電処理が施された前記合成樹脂製防湿シートの少なくとも一方の面に、塩酢ビ・ウレタン樹脂(プレポリマーとして塩化ビニルと酢酸ビニルとビニルアルコールとのコポリマーを用い、イソシアネートと反応してウレタン結合を形成させる2液反応型樹脂、ないし、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とポリエステルポリオールの混合物を用い、イソシアネートと反応してウレタン結合を形成させる2液反応型樹脂をいう)、あるいは、・・・等を塗工法、塗工量(乾燥後の)を考慮して適当な溶剤を用いて必要な粘度に調製した塗工液となし、たとえば、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗工法で塗工することにより形成することができる。・・・このようにして形成された接着助長層は、特にフラッシュパネル製造時に木工用接着剤(酢酸ビニル系接着剤)で枠組み芯材と接着可能となり、フラッシュパネル製造時の利便性が向上する。・・・特に、塩酢ビ・ウレタン樹脂が、オレフィン系樹脂シートとの接着性に優れ、好適なものである。
【0020】
【実施例】次に、本発明について、図面等を用いて以下に実施例を説明する。まず、図1は本発明にかかるフラッシュパネルに用いる合成樹脂製防湿シートの層構成図、図2は本発明にかかるフラッシュパネルの一実施例の構造を示す断面図、図3はフラッシュパネルの一つの構造を示す断面図、図4はフラッシュパネルの他の構造を示す断面図であり、図中の1,90,90’はフラッシュパネル、10は合成樹脂製防湿シート、11は高密度ポリエチレンシート、12はコロナ放電処理面、13は接着助長層、20,93,96は面材、21,91は木質基材、30,94は枠組み芯材、31は枠材、32は芯材、40,92は化粧シート、95は防湿シートをそれぞれ示す。」
(イ)「【図1】
[図:0001384020000006.jpg]
」
エ 甲4について
甲4には、次の記載がある。
「【0010】本発明における印刷層に用いる透明インキとしては、透明プラスチックシートと後述する電子線硬化型接着剤の双方に密着性が良いものが好ましく、あわせて適宜選択すればよい。例えば、固形分25%のウレタン/塩酢ビ共重合樹脂=1/2を100重量部に、固形分30%のポリイソシアナートを5重量部添加したインキ等が好適に用いられる。・・・」
オ 甲5について
甲5には、次の記載がある。
「【0047】
上記印刷インキ層が、動的貯蔵弾性率をE′と表したとき、加振周波数10Hz、昇温速度2.0℃/min.にて25℃におけるlogE′の値が9.0Pa以上となるように、インキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキを構成する材料の配合を調整する。上記の条件を満たす印刷インキ層としては、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体/ウレタン共重合体の混合物に対して、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどのポリイソシアネート化合物単体もしくはこれらの混合物を1~10wt%添加したインキ組成物を主成分としたインキからなる。」
カ 甲6について
甲6には、次の記載がある。
「ポリウレタン系二液反応タイプインキは、ポリウレタン系樹脂と塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体とを混合し、これを溶剤に溶解したものであって、印刷インとして使用する際に、イソシアネート系硬化剤を添加することにより、硬化剤と反応し、エチレン・プロピレン系フイルムとの接着性、耐熱性、滑性が付与される。」(2ページ右欄1~6行)
キ 甲7について
甲7には、次の記載がある。
「【0012】本発明に関わるラミネート用接着剤の主剤として上記の部分ケン化塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂と共に用いられるポリオール成分はこれと相容性があれば従来公知の二液反応型ウレタン系接着剤に使用されているもので差し支えない。例えば、・・・ポリエステルポリオールとジイソシアネートのウレタン化反応で得られるポリエステルポリウレタンポリオール、及びポリエーテルポリオールとジイソシアネートのウレタン化反応で得られるポリエーテルポリウレタンポリオール等を挙げることができる。これらのポリオール成分は1種類または2種類以上を上記の部分ケン化塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂と混合して使用する。
【0013】一方、硬化剤としては、これも従来公知の二液反応型ウレタン系接着剤に使用されているポリイソシアネートを使用することができる。・・・」
ク 甲8について
甲8には、次の記載がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、住宅等の建築物や車両等の内装に使用される突板シートに関するものである。」
(イ)「【0058】
実施例1
厚さ12μmの透明なセラミック蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績株式会社製、商品名:エコシアール、透湿度1g/m2・24hr以下、酸素透過度1cm3/m2・24hr・atm以下)(セラミック蒸着フィルム)の蒸着面にプライマー処理後、透明性の高い印刷インキを使用して透視性の木目柄模様を印刷した。」
(ウ)「【0060】
次いで、該突板の裏面に、厚さ12μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム(透湿度1g/m2・24hr以下、酸素透過度1cm3/m2・24hr・atm以下)(アルミ蒸着フィルム)の蒸着面を、淡褐色不透明に着色したポリエステル系接着剤(乾燥後の塗布量30g/m2)を用いて貼り合わせた。」
(エ)「【0063】
実施例3
上記実施例1において、アルミ蒸着フィルムの代わりに、厚さ15μmのアルミニウム箔(透湿度1g/m2・24hr以下、酸素透過度1cm3/m2・24hr・atm以下)を使用し、その他は上記実施例1と同一の要領で本発明の突板シートを作製した。
【0064】
実施例4
上記実施例2において、アルミ蒸着フィルムの代わりに、厚さ15μmのアルミニウム箔(透湿度1g/m2・24hr以下、酸素透過度1cm3/m2・24hr・atm以下)を使用し、その他は上記実施例2と同一の要領で本発明の突板シートを作製した。」
(2)対比・判断
ア 本件発明と甲1発明を対比する。
・甲1発明(以下「後者」ということがある)の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明(以下「前者」ということがある)の「合成樹脂製からなる」「基材層」に相当し、以下同様に「アルミナ蒸着層」は「無機酸化物からなる」「蒸着層」に、「第2接着用プライマー層」は「第1の接着用プライマー層」に、「第1接着用プライマー層」は「第2の接着用プライマー層」に、「中密度繊維板(MDF)」は「木質系基材」に、それぞれ相当する。
・後者で「ポリビニルアルコールが塗布形成され」ていることにより、前者の「主成分をポリビニルアルコールとした」「樹脂層」に相当するものが形成されていることになる。
・後者の「蒸着PETフィルムのPET面にコロナ放電処理を施」した部分は、蒸着PETフィルムの蒸着層とは反対側のPET面にコロナ放電処理を施した部分であるから、前者の「上記基材層の他方の面に形成され表面濡れ性が改質されている表面濡れ性改質部」に相当する。
・後者の「蒸着PETフィルムのPET面にコロナ放電処理を施した後、主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂をグラビア印刷法にて塗布乾燥して第1接着用プライマー層を形成」することは、前者の「上記表面濡れ性改質部の上記基材層側とは反対側の面に設けられた」「第2の接着用プライマー層をさらに有すること」に相当する。
・後者の「主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂」と前者の「ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂」とは、「ウレタン樹脂を含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂」である点で一致する。
・後者の「防湿シート」は、ドア等に用いられることを念頭に置いたものであるから(上記(1)ア(ア)c参照)、前者の「建材用防湿シート」に相当する。
・後者の「中密度繊維板(MDF)に酢酸ビニル系接着剤を塗布し、乾燥した後に該塗布面に防湿シート蒸着層側が位置するように積層」していることは、「防湿シート」の「蒸着層面側」に設けられた「第2接着用プライマー層」が「酢酸ビニル系接着剤」を介して「中密度繊維板(MDF)」と接着・貼り付けされて「積層」されることを意味するから、後者の「中密度繊維板(MDF)に酢酸ビニル系接着剤を塗布し、乾燥した後に該塗布面に防湿シートを蒸着層側が位置するように積層して作製した反り防止木質板」と前者の「建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、エチレン・酢ビ系接着剤を介して貼り付けられた木質系基材を備えた化粧板」は、「建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、接着剤を介して貼り付けられた木質系基材を備えた化粧板」である点で一致する。
以上を踏まえると、両発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「合成樹脂製からなる基材層と、
上記基材層の一方の面側に設けられた無機酸化物からなる蒸着層と、
上記蒸着層の上に設けられ主成分をポリビニルアルコールとした樹脂層と、
上記樹脂層の表面に設けられた第1の接着用プライマー層と、
上記基材層の他方の面に形成され表面濡れ性が改質されている表面濡れ性改質部と、
上記表面濡れ性改質部の上記基材層側とは反対側の面に設けられた第2の接着用プライマー層と、
を有し、
上記第1及び第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂を含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている建材用防湿シート、並びに、
上記建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、接着剤を介して貼り付けられた木質系基材を備えた化粧板。」
<相違点1>
第1及び第2の接着用プライマー層を形成するウレタン樹脂を含む主剤と硬化剤とからなる2液硬化型樹脂について、本件発明では「ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂」であるのに対して、甲1発明では主剤としてのウレタン樹脂/硝化綿系樹脂に硬化剤としてのイソシアネートを添加した2液硬化型樹脂である点。
<相違点2>
接着剤について、本件発明は、「エチレン・酢ビ系接着剤」であるのに対して、甲1発明は、酢酸ビニル系接着剤である点。
<相違点3>
本件発明は、「基材層」、「蒸着層」、「樹脂層」、「第1の接着用プライマー層」、「第2の接着用プライマー層」が透明であって、「建材用防湿シートが、シート全体の水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つシート表面側からシート裏面側が視認可能な透明度を有する」ものであるのに対して、甲1発明の建材用防湿シートは、その「JIS Z 0208に準拠した透湿度」が「1.5g/m2・24hr」であるが、その透明度は明らかでない点。
イ 上記相違点について、事案に鑑み、相違点3から検討していく。
(ア)二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリビニルアルコールが塗布形成された層は、技術常識からすれば、特に着色されなければ透明である。
また、甲1発明を開示する甲1には、接着用プライマー層について「着色剤等の添加剤を添加した層としてもよい」ものである(上記(1)ア(ア)g)から、着色剤を添加しない場合には透明であることが明らかである。
さらに、甲1には、「蒸着層11としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる蒸着層は金属光沢があるために、意匠によっては金属光沢を隠蔽しなければならないという問題、また、フラッシュドア加工の際に高周波を使用して接着を行う場合などがあり、より好ましくは、蒸着層が透明である無機酸化物蒸着層である。」(上記(1)ア(ア)f)と記載されている。
(イ)甲1発明は、防湿シートの剥がれや浮きの発生防止を課題としているものであって、背景技術(上記(1)ア(ア)b)では2.0g/m2・24hr以下であった透湿度(JIS Z 0280)を1.5g/m2・24hrに向上させたものである。(以下「24hr」を「day」という。)
また、甲8には、建具用の防湿フィルムの透湿度を1.0g/m2・dayにしたことが記載されている(上記(1)ク.)。
(ウ)上記(ア)からすると、甲1発明の「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」、「蒸着層」、「ポリビニルアルコール」(の塗布層)、「第1接着用プライマー層」、「第2接着用プライマー層」のそれぞれにつき、“透明”なものとすることが可能である。
そして、「アルミナ蒸着層」は、透明でないが、甲1には、これを透明なものに替える示唆が存在する。
しかし、この示唆は、金属光沢が呈されること等を回避するためであって、甲1発明のアルミナ蒸着層を含んだ防湿シート全体として表面側から裏面側まで視認可能とすることまでが示唆されるものではない。
また、甲1発明の防湿シートの透湿度は、1.5g/m2・dayになっているが、これを「1.0g/m2・day」以上にまで向上させようとする明示的な示唆はない。さらに、仮に甲8記載事項を考慮して甲1発明の防湿シートの透湿度を1.0g/m2・dayにしようとすれば、防湿シートを構成する層を厚くすることが考えられるが、このことは、防湿シート全体として表面側から裏面側までの視認性を向上させることと相反することといえる。
そうしてみると、蒸着層としてアルミナ蒸着層が採用されていて、透湿度が1.5g/m2・dayである甲1発明の防湿シートにおいて、“シート全体の水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つシート表面側からシート裏面側が視認可能な透明度を有する”ものとすることが当業者にとって容易に想到し得たといえるものではない。この判断は、甲2~甲7記載事項により例示される2液硬化型樹脂に係る周知技術並びに甲8記載事項に例示される透湿度の値に係る周知技術を考慮しても変わるものではない。
したがって、相違点3に係る本件発明の発明特定事項は、当業者が甲1発明及び周知技術に基いて容易に想到し得たものではない。
しかも、本件発明の実施例としてMDFの表面の板目がはっきり視認できるかという観点から“透明度”が確認されたものが示されており、本件発明は、相違点3に係る発明特定事項を備えたことにより、「基材の割れなどが防湿シートを貼り付けた後でも視認可能となる。」(段落【0008】)という、甲1発明及び周知技術から予期されない効果を奏するものである。
ウ そうすると、相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明は、甲1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当せず、したがって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
2 甲9を主引用例とする理由について
(1)各証拠の記載事項等
ア 甲1~8の記載事項は、上記1(1)に示したとおりである。
イ 甲9について
(ア)甲9には、次の記載がある。
a「【請求項1】
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に無機酸化物蒸着層を設け、その上にポリビニルアルコールを含む樹脂層を設けてなる防湿シートにおいて、前記樹脂層の表出面に接着用プライマー層を設け、前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの前記無機酸化物蒸着層を設けた面とは反対側の面にプラズマを利用したリアクティブエッチング処理を施してなることを特徴とする防湿シート。」
b「【技術分野】
【0001】
本発明は、室内のドアパネルなどに用いる化粧板に、室内での温度や湿度の変化による吸湿・放湿などが原因で発生する反りを防止するために、化粧板の裏面に貼り合わせて用いる防湿シートに関する。」
c「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこの課題を解決するためになされたものであり、すなわちその課題とするところは、温度や湿度の変化による影響にも耐えて化粧板との接着性を維持できる防湿シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に無機酸化物蒸着層を設け、その上にポリビニルアルコールを含む樹脂層を設けてなる防湿シートにおいて、前記樹脂層の表出面に接着用プライマー層を設け、前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの前記無機酸化物蒸着層を設けた面とは反対側の面にプラズマを利用したリアクティブエッチング処理を施してなることを特徴とする防湿シートである。
【発明の効果】
【0007】
本発明はその請求項1記載の発明により、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面に施したリアクティブエッチング処理により、通常の接着剤を用いても、時間経過後であっても、化粧板との良好な接着強度を維持することを可能とした。」
d「【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の防湿シートの一実施例の断面の形状を示す。2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム1の上に無機酸化物蒸着層2、ポリビニルアルコールを含む樹脂層3、接着用プライマー層4を設けてなる。前記接着用プライマー層4には裏面用化粧シートなど(図示せず)を適宜接着し、前記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム1の前記無機酸化物蒸着層を設けた面とは反対側の面にはプラズマを利用したリアクティブエッチング処理を施してなり、化粧板基材の裏面側など(図示せず)へ接着してなる。
【0010】
本発明における2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム1としては、フィルムあるいはシート状のものであり、厚みは巻き取り加工適性、印刷適性などを考慮して10~100μm程度であればよい。本発明の防湿シートは化粧板の裏面に設けるものであるから、フィルムの色等は特に重要視されない場合が多い。着色でも、透明でも適宜使用可能となる。」
e「【0015】
本発明におけるプライマー層4は、前記ポリビニルアルコールを含む樹脂層3と貼着される木質系ボードなどの基材(図示せず)との十分な密着強度を得るために設けるものであり、例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種ラミネート用接着剤との接着性を十分確保できれば、特に規定されるものではないが、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等のプライマーを上げることが出来る。中でもポリエステルポリオールとイソシアネート化合物の配合による2液硬化型ウレタン樹脂系のプライマーが有効である。プライマー層を設ける方法としては、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて形成することができる。
【0016】
適宜設ける裏面化粧紙としては、本発明の防湿シートを貼り合せた化粧板の裏面側に意匠性を持たせるために用いられる。・・・」
f「【0021】
<評価>
以上のようにして得た防湿シートの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム1の酸化物蒸着層2を設けた側とは反対側の面に、接着剤(コニシ(株)製エチレン酢酸ビニル系接着剤2液タイプ)を65g/m2で塗布し、MDF基材(ホクシン(株)製2.5mm)と貼りあわせた。そして24時間養生後、25mm幅の試験片を引っ張り速度200mm/分で180°剥離試験を行ない、接着強度を測定した。結果を表1に示す。」
g「【図1】
[図:0001384020000007.jpg]
」
(イ)上記a~gを踏まえれば、甲9には、次の発明(以下「甲9発明」という)が記載されていると認められる。
「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上に無機酸化物蒸着層を設け、その上にポリビニルアルコールを含む樹脂層を設けてなる防湿シートであって、
上記樹脂層の表出面に接着用プライマー層を設け、
上記接着用プライマー層は、例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種ラミネート用接着剤と、木質系ボードなどの基材との接着性を十分確保できるものであり、
上記2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの上記無機酸化物蒸着層を設けた面とは反対側の面にプラズマを利用したリアクティブエッチング処理を施してなる、ドアパネルなどに用いる化粧板に用いる防湿シート、及び、
上記防湿シートの上記接着用プライマー層に例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種ラミネート用接着剤により接着された木質系ボードなどの基材を備えた化粧板。」
(2)対比・判断
ア 本件発明と甲9発明を対比する。
・甲9発明(以下「後者」ということがある)の「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、本件発明(以下「前者」ということがある)の「合成樹脂製からなる」「基材層」に相当し、以下同様に、「無機酸化物蒸着層」は「無機酸化物からなる」「蒸着層」に、「ポリビニルアルコールを含む樹脂層」は「主成分をポリビニルアルコールとした」「樹脂層」に、「接着用プライマー層」は「第1の接着用プライマー層」に、「ドアパネルなどに用いる化粧板に用いる防湿シート」は「建材用防湿シート」に、「木質系基材」は「木質系ボードなどの基材」に、それぞれ相当する。
・後者の「プラズマを利用したリアクティブエッチング処理」をした部分は、前者の「表面濡れ性が改質されている表面濡れ性改質部」に相当する。
・後者の「木質系ボードなどの基材」は、「接着用プライマー層」が、「例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種ラミネート用接着剤により接着された」ものであるから、前者の「建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、」「接着剤を介して貼り付けられた木質系基材」に相当する。
以上を踏まえると、両発明の一致点及び相違点は次のとおりである。
<一致点>
「合成樹脂製からなる基材層と、
上記基材層の一方の面側に設けられた無機酸化物からなる蒸着層と、
上記蒸着層の上に設けられ主成分をポリビニルアルコールとした樹脂層と、
上記樹脂層の表面に設けられた第1の接着用プライマー層と、
上記基材層の他方の面に形成され表面濡れ性が改質されている表面濡れ性改質部と、
を有する建材用防湿シート、並びに、
上記建材用防湿シートの上記第1の接着用プライマー層側の面に、接着剤を介して貼り付けられた木質系基材を備えた化粧板。」
<相違点A>
第1の接着用プライマー層について、本件発明では「ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている」のに対して、甲9発明では「例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種ラミネート用接着剤と、木質系ボードなどの基材との接着性を十分確保できるもの」である点。
<相違点B>
本件発明は、「上記表面濡れ性改質部の上記基材層側とは反対側の面に設けられた」「第2の接着用プライマー層」を有し、当該第2の接着用プライマー層は、「ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている」ものであるのに対して、甲9発明は、そのような接着用プライマー層が備わっていない点。
<相違点C>
接着剤について、本件発明は、「エチレン・酢ビ系接着剤」であるのに対して、甲9発明は、例えばイソシアネート硬化型ウレタン樹脂系や変性酢酸ビニル樹脂エマルジョン系等の各種ラミネート用接着剤である点。
<相違点D>
本件発明は、「基材層」、「蒸着層」、「樹脂層」、「第1の接着用プライマー層」、「第2の接着用プライマー層」が透明であって、「建材用防湿シートが、シート全体の水蒸気透過度が1.0g/m2・day以下であり、且つシート表面側からシート裏面側が視認可能な透明度を有する」ものであるのに対して、甲9発明の防湿シートは、その水蒸気透過度及び透明度が明らかでない点。
イ 上記相違点について、事案に鑑み、相違点Dから検討していく。
2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリビニルアルコールの層は、技術常識からすれば、特に着色されなければ透明である。
また、甲9発明を開示する甲9には、「本発明の防湿シートは化粧板の裏面に設けるものであるから、フィルムの色等は特に重要視されない場合が多い。着色でも、透明でも適宜使用可能となる。」(上記(1)イ(ア)d)と記載されている。
しかし、無機酸化物は、透明な物も不透明な物も存在しているが、甲9発明において無機酸化物蒸着層を透明とする示唆があるものではない。また、甲9発明の防湿シートとして表面側から裏面側まで視認可能とすることまでが示唆されるものではない。
そうしてみると、甲9発明において、無機酸化物蒸着層が含まれた防湿シートとして表面側から裏面側まで視認可能とすることが、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。この判断は、甲2~甲7記載事項により例示される2液硬化型樹脂に係る周知技術並びに甲8記載事項に例示される透湿度の値に係る周知技術を考慮しても変わるものではない。
したがって、相違点Dに係る本件発明の発明特定事項は、その水蒸気透過度について検討するまでもなく、当業者が甲9発明及び周知技術に基いて容易に想到し得たものとはいえない。
しかも、本件発明の実施例としてMDFの表面の板目がはっきり視認できるかという観点から“透明度”が確認されたものが示されており、本件発明は、相違点Dに係る発明特定事項を備えたことにより、「基材の割れなどが防湿シートを貼り付けた後でも視認可能となる。」(段落【0008】)という、甲9発明及び周知技術から予期されない効果を奏するものである。
ウ そうすると、相違点A~Cについて検討するまでもなく、本件発明は、甲9発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)小括
以上のとおり、本件発明は、甲9発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定に該当せず、したがって、本件発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
第6 取消理由の通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について
1 新規性欠如について
上記第5で示したとおり、上記各相違点は実質的なものであり、申立人の主張する新規性欠如について、取消理由があるとすることはできない。
2 明確性要件について
申立人は、本件訂正前の請求項1に係る発明は「上記第1の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている」と製造方法で特定されている結果、物としてどのような構成を特定しているのか不明確であり、発明の範囲を不明確にしている、と指摘する(令和2年7月15日付け特許異議申立書36頁)。
しかし、本件訂正後の請求項6は、「上記第1及び第2の接着用プライマー層は、ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂で形成されている」という記載から、本件請求項6に係る発明の「第1の接着用プライマー層」が「ウレタン樹脂と塩酢ビ系樹脂とを含む主剤と、硬化剤とからなる2液硬化型樹脂」で形成されたものであることを特定したものであることは明らかであって、第三者に不測の不利益を生じさせるものであるとまではいえない。
そして、上記事項は、第1及び第2の接着用プライマー層の材料的な組成を特定するもので、製造方法を特定したものには当たらない。
したがって、申立人のこの点の指摘にしたがって取消理由があるとすることはできない。
第7 むすび
以上のとおり、本件請求項6に係る特許は、特許権者に通知した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことができない。
また、本件請求項1~5は、本件訂正により削除された。このことにより、それら請求項1~5に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700493