特許異議申立
2020-700332
有機溶剤系グラビアインキおよび印刷物
- 審判番号
- 2020-700332
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-170463
- 登録番号
- 6604408
- 請求日
- 2020年05月12日
- 審決日
- 2021年10月13日
- 公報発行日
- 2022年02月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東洋インキSCホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【権利者】東洋インキ株式会社
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【異議申立人】阿部 治美
- 審判長/審判官
- 審判長 川端 修
- 審判官 木村 敏康
- 審判官 亀ヶ谷 明久
- 分類
- P1651.121-YAA(C09D) / P1651.536-YAA(C09D) / P1651.537-YAA(C09D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6604408号発明「有機溶剤系グラビアインキおよび印刷物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6604408号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正することを認める。
特許第6604408号の請求項1及び3~7に係る特許を維持する。
特許第6604408号の請求項2に係る特許についての特許異議申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6604408号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、平成30年9月12日〔優先権主張 平成29年9月22日(JP)日本国〕の出願であって、令和元年10月25日に特許権の設定登録がされ、令和元年11月13日に特許掲載公報が発行され、その請求項1~7に係る発明の特許に対し、令和2年5月12日に阿部治美(以下「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
特許異議の申立て以後の手続の経緯は次のとおりである。
令和2年 7月28日付け 取消理由通知
同年 9月30日(受理日) 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年10月 6日付け 訂正請求があった旨の通知
同年11月10日 意見書(特許異議申立人)
令和3年 1月27日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 4月14日 面接
同年 4月28日(受理日) 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年 5月12日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 6月15日 意見書(特許異議申立人)
なお、令和2年9月30日提出の訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取下げされたものとみなされる。
第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和3年4月28日提出の訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は「特許第6604408号の明細書及び特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、以下の訂正事項1~12からなるものである(なお、訂正箇所に下線を付す。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「顔料、バインダー樹脂、炭化水素系ワックスおよび塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、下記(1)、(2)および(3)を満たす、有機溶剤系グラビアインキ。」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「顔料、バインダー樹脂、炭化水素系ワックスおよび塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、下記(1)、(2)および(3)を満たす、有機溶剤系グラビアインキであって、包装材料に用いられる基材の表刷り印刷用である有機溶剤系グラビアインキ(ただし、導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラックを、熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする導電性インキ組成物を除く。)。」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項1の「(1)炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~12であり、」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「(1)炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項1の「(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂、並びに、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂およびロジン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する。」との記載部分を、
訂正後の請求項1の「(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する(ただし、ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する場合を除く。)。」との記載に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~7も同様に訂正する。)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項3の「請求項1または2に記載の有機溶剤系グラビアインキ。」との記載部分を、
訂正後の請求項3の「請求項1に記載の有機溶剤系グラビアインキ。」との記載に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
訂正前の請求項5の「請求項1~3いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ」との記載部分を、
訂正後の請求項5の「請求項1又は3いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ」との記載に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~7も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
訂正前の請求項5の「請求項1~4いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ。」との記載部分を、
訂正後の請求項5の「請求項1又は3~4いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ。」との記載に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~7も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
訂正前の請求項6の「請求項1~5いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ。」との記載部分を、
訂正後の請求項6の「請求項1又は3~5いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ。」との記載に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。
(9)訂正事項9
訂正前の請求項7の「請求項1~6いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキからなる印刷層を有する印刷物。」との記載部分を、
訂正後の請求項7の「請求項1又は3~6いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキからなる印刷層を有する印刷物。」との記載に訂正する。
(10)訂正事項10
本件特許明細書の段落0008の記載について、訂正前の「下記(1)、(2)および(3)を満たす、有機溶剤系グラビアインキに関する。」との記載部分を、訂正後の「下記(1)、(2)および(3)を満たす、有機溶剤系グラビアインキであって、包装材料に用いられる基材の表刷り印刷用である有機溶剤系グラビアインキ(ただし、導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラックを、熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする導電性インキ組成物を除く。)に関する。」との記載に訂正し、
訂正前の「(1)炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、」との記載部分を、訂正後の「(1)炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、」との記載に訂正し、
訂正前の「(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂、並びに、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂およびロジン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含有する。」との記載部分を、訂正後の「(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する」との記載に訂正する。
(11)訂正事項11
本件特許明細書の段落0009を削除する。
(12)訂正事項12
本件特許明細書の段落0067について、訂正前の「なお、実施例1~20、27は参考例である。」との記載部分を訂正後の「なお、実施例1~20、27および実施例28~47、54は参考例である。」との記載に訂正する。
2.本件訂正による訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の範囲から、取消理由通知において引用された甲第1号証に記載された事項を除外することを明示して、その範囲を限定するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項1は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)」の数値範囲の上限を「12」から「9.5」に下方修正するものであって、本件特許明細書の段落0086の【表1】には「9.5」との記載があるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項2は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項1の範囲から、取消理由通知において引用された参考文献Bに記載された事項を除外することを明示して、その範囲を限定するとともに、訂正前の請求項1の「ポリアミド樹脂、並びに、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂およびロジン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂」を、本件特許明細書の段落0023の「ポリアミド樹脂/セルロース樹脂は…質量比で95/5~30/70であることが好ましい。」との記載を根拠に「ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する」に限定するものであって、本件特許明細書の段落0087の【表2】の実施例21~26(並びに参考例1~20及び27)で「ポリアミド樹脂」と「セルロース系樹脂」が併用されていることから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項3は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4~9について
訂正事項4は、訂正前の請求項2を削除するものであり、訂正事項5~9は、訂正前の請求項3~7のうち請求項2を引用する場合のものを削除するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内において「特許請求の範囲の減縮」を目的として訂正するものに該当する。
そして、訂正事項4~9は「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項4~9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項10~12について
訂正事項10~12は、訂正事項1~9に係る訂正後の特許請求の範囲の記載に、明細書の記載の整合させるためのものであるから「明瞭でない記載の釈明」を目的として訂正するものに該当し、訂正事項1~9に示した理由と同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてなされているものと認められる。
そして、訂正事項10~12は、明細書の内容を訂正するものであって、発明特定事項の用語の定義を拡張ないし変更するものでもないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項10~12は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当し、なおかつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6)一群の請求項について
訂正事項1~9に係る訂正前の請求項1~7について、その請求項2~7はいずれも直接又は間接的に請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~7に対応する訂正後の請求項1~7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正事項10~12による明細書の訂正に係る請求項は、訂正前の請求項1~7であって、訂正事項1~9に関係する一群の請求項が請求の対象とされているから、訂正事項10~12による訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項に適合するものである。
したがって、訂正事項1~12による本件訂正は、特許法第120条の5第4項に適合するものである。
3.まとめ
以上総括するに、訂正事項1~12による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、なおかつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1~7〕について訂正を認める。
第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1及び3~7に係る発明(以下「本1発明」及び「本3発明」~「本7発明」ともいう。)は、令和3年4月28日提出の訂正特許請求の範囲の請求項1及び3~7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
顔料、バインダー樹脂、炭化水素系ワックスおよび塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、下記(1)、(2)および(3)を満たす、有機溶剤系グラビアインキであって、包装材料に用いられる基材の表刷り印刷用である有機溶剤系グラビアインキ(ただし、導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラックを、熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする導電性インキ組成物を除く。)。
(1)炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、炭化水素系ワックスをグラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有する。
(2)塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であり、グラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有する。
(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する(ただし、ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する場合を除く。)。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂を含み、セルロース系樹脂は、窒素分10.5~12.5のニトロセルロース樹脂を含有する、請求項1に記載の有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項4】
ポリアミド樹脂の軟化点は、80~140℃であり、ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、2,000~50,000である、請求項1又は3いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項5】
ポリアミド樹脂は、ダイマー酸あるいは重合脂肪酸に由来する構造をポリアミド樹脂中に50質量%以上含有する、請求項1又は3~4いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項6】
更に、金属キレートを含有する、請求項1又は3~5いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキ。
【請求項7】
基材上に、請求項1又は3~6いずれかに記載の有機溶剤系グラビアインキからなる印刷層を有する印刷物。」
第4 取消理由通知の概要
令和3年1月27日付けの取消理由通知(決定の予告)で通知された取消理由は、次の理由1からなるものである。
〔理由1〕本件特許の請求項1~7に係る発明は、本件優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明に基いて、本件優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第1号証:特開2009-46522号公報
甲第2号証:特許第5487492号公報
甲第3号証:特開2002-294128号公報
甲第4号証:特開2002-20668号公報
甲第5号証:特開平7-258593号公報
甲第6号証:社団法人日本印刷学会編、「印刷工学便覧」、第1版、技報堂出版株式会社、1987年7月20日、第811~815頁
甲第7号証:「色材用ポリマーの設計と応用」、株式会社シーエムシー出版、2002年3月29日、第262~264頁
甲第8号証:相原次郎著、「印刷インキ入門」、初版、印刷学会出版部、昭和63年7月20日、第35、38~40、46~47及び104~107頁
甲第9号証:浦田啓司、“塩素化ポリオレフィン「スーパークロン低塩素化銘柄」の特徴”、JETI、株式会社ジェティ、平成9年9月1日、第45巻、第10号、第131~133頁
参考文献A:特開2005-154493号公報
参考文献B:特開2017-25256号公報
参考文献C:特開平6-65534号公報
第5 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
甲第1号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記1a:請求項1~2
「【請求項1】
導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラックを、熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする導電性インキ組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂が、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、アクリル樹脂、変性ポリオレフィンから選ばれる少なくとも1つの樹脂であることを特徴とする請求項1記載の導電性インキ組成物。」
摘記1b:段落0001、0008、0014、0017~0018、0026、0028及び0029
「【0001】
本発明は、各種プラスチックフィルム、プラスチックシート、合成樹脂成形品、又は紙上に被覆させることにより各種基材の表面抵抗値を制御できる溶剤型印刷用導電性インキに関する。更に本発明は、基材表面に被覆させることで導電性を発現させることができ、ICや電子部品を搬送するトレーなどの用途に使用することができる導電性インキに関する。…
【0008】
本発明は、グラビア印刷方式などの薄膜塗工印刷機により印刷された基材表面の表面抵抗値を107Ω/□以下にすることが可能なインキであり、かつ印刷適性、印刷効果に優れる導電性インキを提供することを目的とする。又、樹脂系の選定により耐アルコール性を付与することが可能である導電インキ組成物を提供することを目的とする。…
【発明の効果】
【0014】
本発明により、グラビア印刷方式等の薄膜塗工印刷機により印刷された基材表面の表面抵抗値を107Ω/□以下にすることが可能であり、かつ印刷適性、印刷効果に優れる導電性インキを提供することができた。又、樹脂系の選定により耐アルコール性を付与することが可能である導電インキを提供することができた。…
【0017】
本発明の導電性インキ組成物は、上記カーボンブラックを熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする。熱可塑性樹脂は、本発明の導電性インキ組成物のバインダー成分として使用し、各種基材との密着性などから選ばれる。
【0018】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、変性ポリオレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド、アクリル樹脂、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース誘導体、ポリイミド等を挙げることができ、単独又は2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、ポリウレタン、ポリエステルウレタン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、アクリル樹脂、変性ポリオレフィンから選ばれる少なくとも1つの樹脂を使用することが、カーボンブラックの分散性やインキの安定性を向上させることから好ましい。…
【0026】
インキ組成物として必要とされる機能を有するため、…ワックス、…などの添加剤を使用することもできる。…
【0028】 基材としては、各種プラスチックフィルム、プラスチックシート、合成樹脂成形品又は紙などが用いられる。又、成型加工可能なプラスチックシート、例えばHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、A-PET(非晶質ポリエチレンテレフタレート)、PP、ポリカーボネート等が使用できる。
【0029】
インキ組成物の塗工方法としては、特に限定されず、リバースコーター、ドクターナイフコーターやグラビアコーターなどの公知の塗工法が使用できる。」
摘記1c:段落0030、0033~0034
「【0030】
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。尚、実施例における「部」は、「重量部」を表す。…
【0033】
(製造例3)
<ポリアミドワニスの調製>
ポリアミド樹脂(アミン価3mgKOH/g、酸価5mgKOH/g、軟化点115℃)35部を、酢酸エチル部15、イソプロピルアルコール25部、メチルシクロヘキサン25部に混合溶解させて、ワニスCを得た。
【0034】
(製造例4)
<ニトロセルロースワニスの調製>
ニトロセルロース(NC RS-2 KCNC、KOREA CNC LTD製)20部を、酢酸エチル26部とイソプロピルアルコール20部、メチルシクロヘキサン34部に混合溶解させて、ワニスDを得た。」
摘記1d:段落0046、0061、0063、0066、0075及び0076
「【0046】
[実施例4]
ワニスC 26.5部、ワニスD 28.5部、カーボン[ケッチェンブラックEC600JD、ケッッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製]2.9部、混合溶剤(酢酸エチル/N-プロピルアセテート/イソプロピルアルコール/メチルシクロヘキサン=20/20/20/40)39.22部、ベンズイミダゾロン塩基性誘導体0.28部の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、アイガーミルで10分練肉後、塩素化ポリオレフィン:スーパークロンC[日本製紙(株)製]1部、テトライソプロポキシチタン[三菱瓦斯化学(株)製]1.6部を混合し印刷インキ4を得た。…
【0061】
[比較例2]
ワニスC 29.5部、ワニスD 26.5部、カーボン(リーガル99R、キャボット社製)11部、混合溶剤(酢酸エチル/N-プロピルアセテート/イソプロピルアルコール/メチルシクロヘキサン=20/20/20/40)30部の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、アイガーミルで10分練肉後、塩素化ポリオレフィン:スーパークロンC[日本製紙(株)製]1部、テトライソプロポキシチタン[三菱瓦斯化学(株)製]2部を混合し印刷インキ19を得た。…
【0063】
印刷インキ4、19は、印刷時の粘度に調整するため、メチルシクロヘキサン40部、n-プロピルアセテート20部、酢酸エチル20部、イソプロピルアルコール20部からなる混合溶剤を用いて、25℃においてザーンカップNo.3で測定した粘度が16秒となるようにそれぞれ希釈し希釈印刷インキ4’、19’を得た。…
【0066】
希釈印刷インキ1’~4’、18’、19’を、グラビア校正機を利用して版深30ミクロンの腐蝕版を用い厚さ25μmのコロナ放電処理ポリエチレンテレクタレートフィルム「E5100」(東洋紡績社製)のコロナ放電処理面に印刷し印刷物(1)~(4)、(18)、(19)を得た。…
【0075】
【表1】
[図:0001381633000001.jpg]
【0076】 表1に示すように、実施例1~17の導電性インキ組成物は、比較例1、2に比べて低い表面抵抗値を示し、導電性に優れていることがわかった。更に、実施例5~13、17の導電性インキ組成物は、耐アルコール性やインキの安定性も優れていることがわかった。」
甲第2号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記2a:段落0053及び0059
「【0053】
本発明に使用する印刷インキ組成物には、凝集力向上剤としてチタンキレート用いることができる。…
【0059】
また、表刷り用グラビア印刷インキでは、耐熱性、耐油性や耐摩擦性の向上を目的として、架橋剤やワックス成分を含有させることができる。ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知の各種ワックスが利用できる。」
甲第3号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記3a:段落0037~0039及び0041
「【0037】さらに、本発明では、接着性や耐性の向上を目的として、各種ハードレジン、架橋剤、ワックスを添加する事ができる。
【0038】ここで、ハードレジンとしては、…塩素化ポリプロピレン…が挙げられる。これらハードレジンを利用すると、特に表面処理の行われていないプラスチックフィルムに対して、接着性の向上効果が期待できる。
【0039】また、表刷り用グラビア印刷インキでは、耐熱性や耐摩擦性の向上を目的として、架橋剤やワックス成分を含有させることができる。…
【0041】一方、ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知の各種ワックスが利用できる。」
甲第4号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記4a:段落0015及び0022
「【0015】…本発明の印刷インキに使用する結着樹脂は、従来のグラビアインキ…に通常使われているものを使用することができる。具体的には…ポリアミド、ポリウレタン…等を挙げることができる。…
【0022】
<グラビアインキ-1の調製>
アルミニウム蒸着膜細片スラリー-1 30部
ウレタン樹脂(大日本インキ化学製「ハ゛ーノックL7-617」) 30部
塩素化ポリプロピレン(日本製紙製「スーハ゜ークロン803M」) 2部
下記組成ポリエチレンワックスコンパウンド 3部
三井化学製「ハイワックス210P」 20%
ニトロセルロース(HIG7) 10%
酢酸エチル 70%
酢酸エチル 30部
上記を混合し、グラビアインキ-1を調製した」
甲第5号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記5a:段落0018
「【0018】実施例1
温度計、攪拌機、窒素導入管を備えた反応槽に、重合脂肪酸〔一塩基酸:6~8%、二塩基酸:74~77%、三塩基酸:17~18%;ハリマ化成(株)製「ハリダイマー200」〕276.5部、トール油脂肪酸〔ハリマ化成(株)製「ハートールFA-1」〕11.2部、エチレンジアミン30部、両末端カルボキシル変性ポリジメチルシロキサン〔信越化学工業(株)製「X-22-162A」〕4部を仕込み、窒素ガス雰囲気中、210℃で2時間反応させた後、ロジンエステル〔酸価:10~16,軟化点:155~170℃,荒川化学工業(株)製「ペンセルD-160」〕80部を仕込み,更に210℃で3時間反応させ淡褐色固体のポリアミド樹脂組成物(PA1)を得た。該PA1の分析値および物性値を表1に示す。」
甲第6号証の刊行物には、次の記載がある(当審注:要部を抜粋した)。
摘記6a:第814~815頁
「 表-4.6 被印刷基材,インキタイプ,用途の関係
───────┬───────────────┬─┬────────
被印刷基材 │インキタイプおよび主なバインダ│…│ 用 途
───────┼───────────────┼─┼────────
… │ … │…│ …
───────┼───────────────┼─┼────────
ポリオレフィン│ポリアミド,塩素化PP │…│表刷り(処理用)
───────┼───────────────┼─┼────────
… │ … │…│ …
───────┴───────────────┴─┴────────
」
甲第7号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記7a:第262~264頁
「1.4 グラビアインキに用いられる樹脂の種類
樹脂は着色剤をインキ中に分散,安定させ基材に固着させる機能を担うとともに,インキ皮膜の機械的強度や後加工適性,印刷適性を決定づける重要な要素であり,樹脂の選択がインキ設計上で大きなウエイトを占める。グラビアインキ用として使用可能な樹脂は,ロジンおよびその誘導体,ニトロセルロースおよびセルロース誘導体などの天然樹脂系,ゴム系樹脂,塩酢ビ樹脂,ポリアミド樹脂,塩素化ポリオレフィン樹脂,ポリウレタン樹脂等の合成樹脂が挙げられ,グラビアインキで使用される溶剤に溶ける全ての樹脂がその対象となる。…
1.4.2 ポリアミド樹脂1)
グラビアインキには多塩基酸と多価アミンとを重縮合して得られる熱可塑性ポリアミドが使用される。…
グラビアインキに使用されるポリアミド樹脂には,重量平均分子量が5,000~50,000のものが好適に用いられる。分子量が5,000未満では皮膜強度が十分でないために,印刷された際に耐摩擦性,耐引っ掻き性の低下を招く可能性がある。また分子量が50,000より大きい場合はインキの安定性が低下することがある。
またグラビアインキに使用されるポリアミド樹脂の軟化点は80~150℃の範囲が好ましく,軟化点が80℃未満の場合は,印刷後のインキ皮膜が硬くなり,接着性や揉み性の低下を招くので好ましくない。ポリアミド樹脂は柔軟性があり各種プラスチックフィルムに対して接着性が良い。また顔料分散性が良く,グロスのあるインキが得られることから,プラスチックフィルム用表刷りインキに用いられる。一方で,耐熱性,低温安定性が悪く,また樹脂皮膜にタック感があるため,これらの欠点を補うためにニトロセルロースと併用される。…
1.4.4 塩素化ポリプロピレン
ポリプロピレンを塩素化したもので,グラビアインキには塩素化度が15~45のものが用いられる。…さらに,塩素化ポリプロピレンの重量平均分子量は5,000~100,000の範囲のものが用いられる。重量平均分子量が3,000未満では耐ブロッキング性および基材への密着性が低下し,100,000以上では他の併用樹脂との相溶性が悪くなる。塩素化ポリプロピレンも塩酢ビ樹脂と同様に脱塩素化の方向にある。」
甲第8号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記8a:第35頁
「(まる8(当審注:「○」の中に「8」))塩素化ポリプロピレン
低塩素化ポリプロピレンは,耐油性,耐熱性,耐薬品性,ラミネート適性などがすぐれ,処理および未処理のポリプロピレンフィルムに対する密着性が良好なため,ラミネート用ポリプロピレンフィルムのグラビアインキの樹脂として使用される。」
摘記8b:第106頁
「〔処理ポリエチレン用インキの処方例〕
有機顔料 14
ポリアミド樹脂 20
ニトロセルロース(L型,1/2秒または1/4秒) 3
イソプロピルアルコール(IPA) 46
酢酸エチル 5
トルエン 10
ポリエチレンワックス 2
100 」
甲第9号証の刊行物には、次の記載がある。
摘記9a:第132頁の第3図
「
[図:0001381633000002.jpg]
」
摘記9b:第133頁の第2表
「
[図:0001381633000003.jpg]
」
参考文献Aには、次の記載がある。
摘記A1:段落0019及び0023~0024
「【0019】本発明におけるポリエチレンワックス(A)の60℃における針入度が5以下であるものが良好な耐摩擦性を与えるため好ましい。ワックスがこれより柔らかい(針入度の値が大きい)と耐摩擦性が低下する。尚、針入度の測定はASTM D1321の方法により行う。…
【0023】本発明の水性インキ用添加剤はフレキソインキ、グラビアインキ、オーバープリンティングニス等特に限定はなく全ての水性インキに用いることができる。
【0024】本発明の水性インキ用添加剤は水性インキに対して、0.1~10重量%好ましくは1~5重量%の範囲で添加される。」
参考文献Bには、次の記載がある。
摘記B1:請求項1
「【請求項1】顔料、バインダー樹脂、キレート剤および有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキ組成物であって、上記バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂(A)及びセルロース誘導体(B)及び/又は塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(C)を、(A):((B)+(C))=95:5~5:95の固形分質
量比率で含有し、上記キレート剤の含有量が、表刷り用グラビア印刷インキ組成物中、0.1~8.0質量%であり、さらに、質量平均分子量500~10,000のポリアミド樹脂を表刷り用グラビア印刷インキ組成物中に0.1~3.0質量%含有させることを特徴とする表刷り用グラビア印刷インキ組成物。」
摘記B2:段落0033~0034及び0037
「【技術分野】
【0001】
本発明は、高速印刷適性、プラスチックフィルムへの接着性、および耐アルコール性、耐熱性、耐油性、延伸性、耐ブロッキング性等の皮膜物性に優れ、とりわけ、ポリウレタン樹脂とセルロース誘導体及び/又は塩化ビニル酢酸ビニル共重合体とを含むバインダー樹脂からなるインキでは困難な、軟質透明抗菌等の特殊な塩化ビニルシートに対する高温高湿における耐ブロッキング性においても、特定の質量分子量を有するポリアミドを含有させることによって高い効果を発揮させた、表刷り用グラビア印刷インキ組成物及びそれを印刷した表刷りグラビア印刷物に関する。…
【0033】…本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物に必要に応じて使用するハードレジンとしては…塩素化ポリプロピレン…等が挙げられる。これらハードレジンを利用すると、特に表面処理の行なわれていないプラスチックフィルムに対して、接着性の向上を期待できる。そして、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物中におけるハードレジンを含有させる際の含有量は、5.0質量%未満が適量である。
【0034】…さらに、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物には、耐摩擦性の向上を目的として、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の性能が低下しない範囲で、ワックスを添加することができる。ワックスとしては、ポリオレフィンワックス、パラフィンワックスなどの既知の各種ワックスが利用できる。…
【0037】…印刷される基材としては、金属、木材、紙及びプラスチックのいずれでも良いが、中でもプラスチックフィルムが好ましい。このようなプラスチックフィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの延伸および無延伸ポリオレフィンフィルム、ポリエステル、ナイロン、セロファン、ビニロン等のフィルムを挙げることができる。…そして、ポリアミド樹脂を含有しながら、高速印刷が可能という特長から、短時間のうちに多量の印刷物を得ることができ、日配食品を個包装するための印刷物の製造に好適に利用されるものである。」
摘記B3:段落0039、0044、0046及び0060
「【0039】…ポリウレタン樹脂ワニス2(固形分30%)を得た。…
【0044】…ポリマイド-S300(三洋化成工業社製、質量平均分子量5,000)…
【0046】(実施例1~25、及び比較例1~10の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の調製)
表1に示す材料をペイントコンディショナーで混練し、実施例1~18、比較例1~5の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の白色インキ組成物、実施例19~25、比較例6~10の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の藍インキ組成物を調製した。なお、表1に記載の数値は質量%である。また、(ジイソシアネート化合物のモル当量/ジオール化合物のモル当量)をイソシアネート比率とした。…
【0060】【表1】…
[図:0001381633000004.jpg]
」
参考文献Cには、次の記載がある。
摘記C1:段落0008及び0015
「【0008】本発明に係わるグラビア印刷インキの構成材料は次の通りである。バインダ-としてはポリアミド樹脂、ニトロセルローズ樹脂を使用する。ポリアミド樹脂は、分子量が3,000~20,000のものが好ましい。ニトロセルローズ樹脂は、窒素分が10~13、平均置換度が1.5~3.0のものが好ましい。…
【0015】実施例1
二酸化チタン 0.0 重量パ-セント
ファイカ-ブH 0.5 重量パ-セント
バインダ- 20.0 重量パ-セント
有機溶剤 49.0 重量パ-セント
ポリエチレンワックス 0.5 重量パ-セント
上記混合物をビーズミルで練肉し、本発明に係わるグラビア印刷インキを得た。」
2.刊行物に記載された発明
(1)甲第1号証に記載された発明(甲1発明)
摘記1cの「実施例における「部」は、「重量部」を表す。…ポリアミドワニスの調製…ポリアミド樹脂(アミン価3mgKOH/g、酸価5mgKOH/g、軟化点115℃)35部を、酢酸エチル部15、イソプロピルアルコール25部、メチルシクロヘキサン25部に混合溶解させて、ワニスCを得た。…ニトロセルロースワニスの調製…ニトロセルロース(NC RS-2 KCNC、KOREA CNC LTD製)20部を、酢酸エチル26部とイソプロピルアルコール20部、メチルシクロヘキサン34部に混合溶解させて、ワニスDを得た。」との記載、及び
摘記1dの「比較例2…ワニスC 29.5部、ワニスD 26.5部、カーボン(リーガル99R、キャボット社製)11部、混合溶剤(酢酸エチル/N-プロピルアセテート/イソプロピルアルコール/メチルシクロヘキサン=20/20/20/40)30部の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、アイガーミルで10分練肉後、塩素化ポリオレフィン:スーパークロンC[日本製紙(株)製]1部、テトライソプロポキシチタン[三菱瓦斯化学(株)製]2部を混合し印刷インキ19を得た。…印刷インキ4、19は、印刷時の粘度に調整するため、…希釈し希釈印刷インキ4’、19’を得た。…希釈印刷インキ…4’…19’を、グラビア校正機を利用して…印刷し印刷物…(4)…(19)を得た。」との記載からみて、甲第1号証には、比較例2について、次のようなグラビア校正機に用いられる希釈印刷インキ19’が記載されていると認められる。
「ポリアミド樹脂(アミン価3mgKOH/g、酸価5mgKOH/g、軟化点115℃)35重量部を、酢酸エチル15重量部、イソプロピルアルコール25重量部、メチルシクロヘキサン25重量部に混合溶解させたワニスC 29.5重量部、
ニトロセルロース20重量部(NC RS-2 KCNC、KOREA CNC LTD製)を、酢酸エチル26重量部、イソプロピルアルコール20重量部、メチルシクロヘキサン34重量部に混合溶解させたワニス D26.5重量部
カーボン(商品名:リーガル99R、キャボット製)11重量部、及び、
混合溶剤(酢酸エチル/N-プロピルアセテート/イソプロピルアルコール/メチルシクロヘキサン=20/20/20/40)30重量部の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、アイガーミルで10分練肉後、塩素化ポリオレフィン(商品名:スーパークロンC)1重量部、及び、テトライソプロポキシチタン(三菱瓦斯化学(株)製)2重量部を混合して印刷インキ19を得て、
上記印刷インキ19を、メチルシクロヘキサン40部、n-プロピルアセテート20部、酢酸エチル20部、イソプロピルアルコール20部からなる混合溶剤を用いて、25℃においてザーンカップNo.3で測定した粘度が16秒となるように希釈して得られた、グラビア校正機に用いられる希釈印刷インキ19’。」(以下「甲1発明」という。)
(2)参考文献Bに記載された発明(参B発明)
参考文献Bの請求項1(摘記B1)には、
「顔料、バインダー樹脂、キレート剤および有機溶剤を含有する表刷り用グラビア印刷インキ組成物であって、上記バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂(A)及びセルロース誘導体(B)及び/又は塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(C)を、(A):((B)+(C))=95:5~5:95の固形分質量比率で含有し、上記キレート剤の含有量が、表刷り用グラビア印刷インキ組成物中、0.1~8.0質量%であり、さらに、質量平均分子量500~10,000のポリアミド樹脂を表刷り用グラビア印刷インキ組成物中に0.1~3.0質量%含有させた表刷り用グラビア印刷インキ組成物。」についての発明(以下「参B発明」という。)が記載されているといえる。
3.甲第1号証を主引用例とした場合の検討
(1)対比
本1発明と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ワニスC」における「ポリアミド樹脂(アミン価3mgKOH/g、酸価5mgKOH/g、軟化点115℃)」(以下、単に「ポリアミド樹脂」ということもある。)と「ワニスD」における「ニトロセルロース(NC RS-2 KCNC、KOREA CNC LTD製)」(以下、単に「ニトロセルロース」ということもある。)は、甲第1号証の段落0017~0018(摘記1b)の「熱可塑性樹脂は、本発明の導電性インキ組成物のバインダー成分として使用し、…ポリアミド、…セルロース誘導体、…等を挙げることができ」との記載にあるように、甲1発明においては「バインダー成分」として用いられるものである。そして、その質量比は、1032.5:530(=[35重量部(ポリアミド樹脂)×29.5重量部(ワニスC)]:[20重量部(ニトロセルロース)×26.5重量部(ワニスC)])と求められ、この質量比は、本1発明で規定する「ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂」の質量比である「95:5~30:70」の範囲内のものである。
また、甲1発明のインク組成物の組成には、「ポリウレタン樹脂」は含有されていない。
そうすると、甲1発明の「ポリアミド樹脂」及び「ニトロセルロース」は、本1発明の「バインダー樹脂」に相当し、しかも、「(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する(ただし、ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する場合を除く。)」構成を充足する。
甲1発明の「カーボン(商品名:リーガル99R、キャボット製)」は、甲第1号証の段落0075(摘記1d)の表1の見出し欄の「顔料/樹脂(W/W%)」の数値からみて、「顔料」として用いられていることが明らかであり、本1発明の「顔料」に相当する。
甲1発明の「塩素化ポリオレフィン(商品名:スーパークロンC)」は、本1発明の「塩素化ポリオレフィン樹脂」に相当する。
甲1発明の「グラビア校正機に用いられる希釈印刷インキ19’」は、「導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラック」が含まれておらず、「メチルシクロヘキサン40部、n-プロピルアセテート20部、酢酸エチル20部、イソプロピルアルコール20部からなる混合溶剤」で希釈され、「グラビア校正機に用いられる」ものであるからグラビアインキといえるものであって、本1発明の「有機溶剤系グラビアインキ(ただし、導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラックを、熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする導電性インキ組成物を除く。」に相当する。
してみると、本1発明と甲1発明は「顔料、バインダー樹脂および塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、下記(3)を満たす有機溶剤系グラビアインキ(ただし、導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラックを、熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする導電性インキ組成物を除く。)。
(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する(ただし、ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する場合を除く。)。」という点で一致し、次の(α)、(x1)及び(x2)の点において相違する。
(α)本1発明は、「炭化水素系ワックス」を含み、「(1)炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、炭化水素系ワックスをグラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有する。」という条件を満たすのに対して、甲1発明は「炭化水素系ワックス」を含まない点。
(x1)用途について、本1発明は「包装材料に用いられる基材の表刷り印刷用」であるのに対して、甲1発明の用途は規定されていない点。
(x2)塩素化ポリオレフィン樹脂について、本1発明は「(2)塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であり、グラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有する」ものであるのに対し、甲1発明の「塩素化ポリオレフィン(商品名:スーパークロンC)」の重量平均分子量及び含有量は不明な点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点(x1)、相違点(α)について順に検討する。
ア.相違点(x1)について
甲第1号証の【0008】には、「本発明は、グラビア印刷方式などの薄膜塗工印刷機により印刷された基材表面の表面抵抗値を107Ω/□以下にすることが可能なインキであり、かつ印刷適性、印刷効果に優れる導電性インキを提供することを目的とする。」と記載されているところ、【0075】の【表1】には、比較例2の表面抵抗値は「8.80E+09」(=8.80×108)Ω/□と記載され、この値は107Ω/□より大きいことから、甲1発明は、上記【0008】に記載されたような「印刷適性、印刷効果に優れる導電性インキ」ではない。
そうすると、甲1発明は、甲第1号証においては、実施例に対する比較対照のために示された具体例というべきであり、その用途は明らかではなく、どのような用途に用いることができるのかは不明というほかない。
してみると、甲1発明を包装材料に用いられる基材の表刷り印刷用に使用することは想定されているとはいえず、また、そのような用途に用いることの動機付けは見出すことはできない。
したがって、相違点(x1)に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。
イ.相違点(α)について
甲1発明は、上述したように比較例であって、どのような特性が必要なのかは明らかではないことから、甲1発明にさらに「炭化水素系ワックス」を配合すること、及びその硬度と配合量として、本1発明の範囲のものを選択することが、当業者において動機づけられないことは明らかである。
したがって、相違点(α)に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。
ウ.本1発明の効果について
本1発明は、接着性及び耐摩擦性のみならずインキの経時安定性や印刷適性も十分に確保して、産業上利用できるインキを提供することができるという効果を奏するものであって、その作用効果は、実施例48~53において示されている。特に、一般的に接着性及び耐摩擦性が劣る基材であるコロナ処理されていない未延伸ポリプロピレン(CPP)に対しても、本1発明は、優れた接着性及び耐摩擦性を奏することが確認されている。
したがって、本1発明の上記効果が当業者にとって容易に予測できるといえる根拠は存在しない。
エ.特許異議申立人の主張について
令和3年6月15日付けの意見書の第1~3頁において、特許異議申立人は「(1-1)…上記意見書において特許権者が提示した参考例1~9は…「(1)、(2)および(3)の条件にある数値範囲の臨界的な意義を理解できる比較実験データ」に該当しないことが明らかである。よって、本1発明に対応する本件発明1の全てに格別の効果があるとは認められず、本件発明1は依然として進歩性を有さず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」と主張する。
しかしながら、上記参考例1及び6~7では、(2)の塩素化ポリオレフィンに関して、本1発明の重量平均分子量の上限値(10万)の近傍の「16万」である場合に(分子量が10万の追試例2に比して)経時安定性と接着性の性能が極端に悪化し、本1発明の含有量の下限値(0.1質量%)の近傍の「0質量%」と上限値(2.5質量%)の近傍の「3質量%」で(0.2質量%の追試例8及び2.3質量%の追試例9に比して)接着性又は経時安定性の性能が極端に悪化することが示されており、
上記参考例2~5では、(1)の炭化水素系ワックスに関して、本1発明の硬度(針入度)の上限値(9.5)の近傍の「17」及び下限値(0.5)の近傍の「0.1」で(硬度9.5の追試例3に比して)耐擦傷性などの性能が極端に悪化し、本1発明の含有量の上限値(2.5質量%)の近傍の「3質量%」と下限値(0.1質量%)の近傍の「0質量%」で(0.1質量%の追試例4及び2.5質量%の追試例5に比して)経時安定性又は耐擦傷性の性能が極端に悪化することが示されており、
上記参考例8及び9では、(3)のバインダー樹脂の質量比に関して、本1発明の上限値(95:5)の近傍の「100:0」と下限値(30:70)の近傍の「0:100」で耐擦傷性又は接着性の性能が極端に悪化することが示されているので、
本1発明の数値範囲内のものに顕著な作用効果があることは明らかであり、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
また、同意見書の第3~4頁において、特許異議申立人は「(1-2)…グラビアインキを扱う当業者が、甲第1号証に記載されたグラビア印刷に適した具体的なインキ組成物に接すれば、かかるインキ組成物の特性を改良すべく試行錯誤することは容易であると言わざるを得ず、インキ組成物が比較例であるか実施例であるかについては関係がなく、炭化水素系ワックスを添加したことによって得られる効果が自明であることからすれば、試行錯誤を阻害する要因にもなりえない。」と主張する。
しかしながら、甲第1号証の【0028】には、「基材としては、各種プラスチックフィルム、プラスチックシート、合成樹脂成形品又は紙などが用いられる。又、成型加工可能なプラスチックシート、例えばHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、A-PET(非晶質ポリエチレンテレフタレート)、PP、ポリカーボネート等が使用できる。」と記載されており、基材は様々な材質のものに亘ることが示され、ポリカーボネートといった包装材料に用いられる基材としては用いられない基材も示されており、甲1発明をどのような特性を有するものに改良すればいいのかは明らかではない。また、甲1発明に、炭化水素系ワックスを添加することが望ましいかどうかも不明である。
したがって、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
オ.まとめ
以上総括するに、甲第1~9号証及び参考文献A~Cに記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、上記(x1)及び(α)の相違点に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえず、本1発明は、上記(x1)及び(α)の相違点に係る構成を具備することにより格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、相違点(x2)について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1~9号証及び参考文献A~Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4.参考文献Bを主引用例とした場合の検討
(1)対比
本1発明と参B発明とを対比する。
参B発明の「顔料」、「セルロース誘導体(B)」、「ポリアミド樹脂」及び「表刷り用グラビア印刷インキ組成物」は、本1発明の「顔料」、「セルロース系樹脂」、「ポリアミド樹脂」及び「表刷り印刷用である有機溶剤系グラビアインキ」にそれぞれ相当する。
また、参B発明の組成に「導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラック」が含まれていない。
そして、本1発明と参B発明とは、バインダー樹脂にポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂が含まれる点で共通する。
そうすると、本1発明と参B発明は「顔料、バインダー樹脂、を含有する有機溶剤系グラビアインキであり、
(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を含有する、表刷り印刷用である有機溶剤系グラビアインキ(ただし、導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラックを、熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする導電性インキ組成物を除く。)」である点で一致し、次の(β)、(γ)、(y)の点で相違が認められる。
(β)本1発明は「炭化水素系ワックス」を含有し、「(1)炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、炭化水素系ワックスをグラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有する。」のに対して、参B発明は「炭化水素系ワックス」を含有しない点。
(γ)本1発明は「塩素化ポリオレフィン樹脂」を含有し、「(2)塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であり、グラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有する。」のに対して、参B発明は「塩素化ポリオレフィン樹脂」を含有するものではない点。
(y)バインダー樹脂について、本1発明は「(ただし、ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する場合を除く。)」としているのに対して、参B発明は「バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂(A)及びセルロース誘導体(B)及び/又は塩化ビニル酢酸ビニル共重合体(C)を、(A):((B)+(C))=95:5~5:95の固形分質量比率で含有」するものである点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点(β)及び(γ)について順に検討する。
ア.相違点(β)について
参考文献Bには、ワックスに関し、「耐摩擦性の向上を目的として、本発明の表刷り用グラビア印刷インキ組成物の性能が低下しない範囲で、ワックスを添加することができる」(段落0034)と記載されているものの、耐摩擦性の向上を目的として、表刷り用グラビア印刷インキ組成物の性能が低下しない範囲で、どのようなワックスを添加できるかは明らかではない。また、参考文献Bには、その硬度や配合量の選択に関して記載も示唆もない。
さらに、取消理由通知で引用したいずれの文献にも、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を95:5~30:70の質量比で含有するバインダー樹脂を含む表刷り用グラビア印刷インキ組成物において、炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、炭化水素系ワックスをグラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有させることで、耐摩擦性が向上することを示すことは示されていない。
したがって、相違点(β)に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。
イ.相違点(γ)について
参考文献Bには、塩化ポリプロピレンを含む様々な種類のハードレジンを配合することにより「特に表面処理の行われていないプラスチックフィルムに対して、接着性の向上を規定できる。」との記載はあるが、特定の重量平均分子量の塩素化ポリオレフィンを選択することに関し記載も示唆もない。
さらに、取消理由通知で引用したいずれの文献にも、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を95:5~30:70の質量比で含有するバインダー樹脂を含む表刷り用グラビア印刷インキ組成物において、塩素化ポリオレフィン樹脂を含有させ、その重量平均分子量は、5,000~100,000であり、グラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%とすることで、接着性が向上することは示されていない。
したがって、相違点(γ)に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。
ウ.本1発明の効果について
上述したように、本1発明は、接着性及び耐摩擦性のみならずインキの経時安定性や印刷適性も十分に確保して、産業上利用できるインキを提供することができるという効果を奏するものである。
エ.特許異議申立人の主張について
令和3年6月15日付けの意見書の第4~5頁において、特許異議申立人は「『除くクレーム』とすることによって進歩性欠如の拒絶理由が解消されることはほとんどないと考えられ…上記訂正後の本件発明1は依然として進歩性を有さず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」と主張する。
しかしながら、引用発明としての甲1発明は「ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する」という技術的思想に立脚したものであるのに対して、本1発明は「ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する」という技術的思想のものを除くものであるから、本1発明と甲1発明の両者は「技術的思想としては顕著に異なる発明」といえるので、上記特許異議申立人の主張は採用できない。
オ.まとめ
以上総括するに、甲第1~9号証及び参考文献A~Cに記載された技術事項を、どのように組み合わせたとしても、上記(β)及び(γ)の相違点に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえず、本1発明は、上記(β)及び(γ)の相違点に係る構成を具備することにより格別顕著な効果を奏するものである。
したがって、相違点(y)について検討するまでもなく、本1発明は、甲第1~9号証及び参考文献A~Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
5.本件特許の請求項3~7に係る発明について
本件特許の請求項2に係る発明は、本件訂正により削除されたところ、本件特許の請求項3~7に係る発明は、本1発明を引用し、さらに限定したものであるから、本1発明の進歩性が甲第1~9号証及び参考文献A~Cによって否定できない以上、本件特許の請求項3~7に係る発明が、甲第1~9号証及び参考文献A~Cに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものに該当するとはいえない。
6.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由について
(1)申立理由1(進歩性)について
特許異議申立人が主張する申立理由1(進歩性)は、本件特許発明1は、甲第1号証の実施例4及び比較例2、甲第2号証、甲第3号証、甲第4号証、及び甲第8号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明2~7は、甲第1号証~甲第8号証に記載の発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項(同法113条第2号)の規定により、本件特許は取り消されるべきであるというものであるところ、甲第1号証の比較例2については、上記第4〔理由1〕において採用されているから、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由に該当しない。
そこで、甲第1号証の実施例4を主たる引用発明とした場合について検討する。
甲第1号証には、上記実施例4として、甲1A発明の認定と同様にして、次のものが記載されていると認められる。
「ポリアミド樹脂(アミン価3mgKOH/g、酸価5mgKOH/g、軟化点115℃)35重量部を、酢酸エチル15重量部、イソプロピルアルコール25重量部、メチルシクロヘキサン25重量部に混合溶解させたワニスC 26.5部、
ニトロセルロース(NC RS-2 KCNC、KOREA CNC LTD製)20重量部を、酢酸エチル26重量部、イソプロピルアルコール20重量部、メチルシクロヘキサン34重量部に混合溶解させたワニスD 28.5部、
カーボン(ケッチェンブラックEC600JD、ケッッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製)11部、及び、
混合溶剤(酢酸エチル/N-プロピルアセテート/イソプロピルアルコール/メチルシクロヘキサン=20/20/20/40)39.22部、ベンズイミダゾロン塩基性誘導体0.28部の混合物を均一に撹拌混合した後、直径1mmのガラスビーズを用いて、アイガーミルで10分練肉後、
塩素化ポリオレフィン(商品名:スーパークロンC[日本製紙(株)製])1部、
テトライソプロポキシチタン(三菱瓦斯化学(株)製)1.6部を混合して印刷インキ4を得て、
印刷インキ4を、メチルシクロヘキサン40部、n-プロピルアセテート20部、酢酸エチル20部、イソプロピルアルコール20部からなる混合溶剤を用いて、25℃においてザーンカップNo.3で測定した粘度が16秒となるように希釈して得られた、グラビア校正機に用いられる希釈印刷インキ4’。」(以下「甲1A発明」という。)
ここで、本1発明と甲1A発明とを対比する。
甲1A発明のポリアミド樹脂とニトロセルロースの質量比は、927.5:570(=[35重量部(ポリアミド樹脂)×26.5重量部(ワニスC)]:[20重量部(ニトロセルロース)×28.5重量部(ワニスC)])と求められ、この質量比は、本1発明で規定する「ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂」の質量比である「95:5~30:70」の範囲内のものである。
また、甲1A発明のインク組成物の組成には、「ポリウレタン樹脂」は含有されていない。
そうすると、甲1A発明の「ポリアミド樹脂」及び「ニトロセルロース」は、本1発明の「バインダー樹脂」に相当し、しかも、「(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する(ただし、ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する場合を除く。)」構成を充足する。
甲1A発明の「カーボン(商品名:リーガル99R、キャボット製)」は、甲第1号証の段落0075(摘記1d)の表1の見出し欄の「顔料/樹脂(W/W%)」の数値からみて、「顔料」として用いられていることが明らかであり、本1発明の「顔料」に相当する。
甲1A発明の「塩素化ポリオレフィン(商品名:スーパークロンC)」は、本1発明の「塩素化ポリオレフィン樹脂」に相当する。
甲1A発明の「グラビア校正機に用いられる希釈印刷インキ4’」は、「メチルシクロヘキサン40部、n?プロピルアセテート20部、酢酸エチル20部、イソプロピルアルコール20部からなる混合溶剤」で希釈され、「グラビア校正機に用いられる」ものであるからグラビアインキといえるものであって、本1発明の「有機溶剤系グラビアインキ」に相当する。
してみると、本1発明と甲1A発明は「顔料、バインダー樹脂および塩素化ポリオレフィン樹脂を含有し、下記(3)を満たす有機溶剤系グラビアインキ。
(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する(ただし、ポリウレタン樹脂及びセルロース誘導体を95:5~5:95の固形分量比率で含有する場合を除く。)。」という点で一致し、次の(α’)、(x1’)、(x2’)及び(x3’)の点において相違する。
(α’)本1発明は、「炭化水素系ワックス」を含み、「(1)炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、炭化水素系ワックスをグラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有する。」という条件を満たすのに対して、甲1A発明は「炭化水素系ワックス」を含まない点。
(x1’)用途について、本1発明は「包装材料に用いられる基材の表刷り印刷用」であるのに対して、甲1A発明の用途は規定されていない点。
(x2’)塩素化ポリオレフィン樹脂について、本1発明は「(2)塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量は、5,000~100,000であり、グラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有する」ものであるのに対し、甲1A発明の「塩素化ポリオレフィン(商品名:スーパークロンC)」の重量平均分子量及び含有量は不明な点。
(x3’)本1発明は、「(ただし、導電成分としてBET比表面積800~1500m2/gでありDBP吸油量300~600ml/100gであるカーボンブラックを、熱可塑性樹脂に分散してなることを特徴とする導電性インキ組成物を除く。)」ことが規定されているのに対し、甲1A発明は、このようなことは規定されていない点。
ここで、事案に鑑み、相違点(x1’)、相違点(α’)について順に検討する。
相違点(x1’)について
甲第1号証の【0008】には、「本発明は、グラビア印刷方式などの薄膜塗工印刷機により印刷された基材表面の表面抵抗値を107Ω/□以下にすることが可能なインキであり、かつ印刷適性、印刷効果に優れる導電性インキを提供することを目的とする。」と記載されており、甲1A発明は、導電性インキとして使用されるものであることが理解される。
また、甲第1号証の【0028】には、「基材としては、各種プラスチックフィルム、プラスチックシート、合成樹脂成形品又は紙などが用いられる。又、成型加工可能なプラスチックシート、例えばHIPS(耐衝撃性ポリスチレン)、A-PET(非晶質ポリエチレンテレフタレート)、PP、ポリカーボネート等が使用できる。」と記載されており、基材は様々な材質のものに亘ることが示され、ポリカーボネートといった包装材料に用いられる基材としては用いられない基材も示されている。
そして、一般に、包装材料に用いられる基材として導電性インキが用いられるものではないことから、甲1A発明を包装材料に用いられる基材として用いることの動機付けは見出すことはできない。
したがって、相違点(x1’)に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。
相違点(α’)について
甲1A発明は、上述したように包装材料に用いられる基材として用いることの動機付けは見出すことはできず、包装材料に用いられる基材に適した特性が必要となるのかどうかは明らかではないことから、甲1A発明にさらに「炭化水素系ワックス」を配合すること、及びその硬度と配合量として、本1発明の範囲のものを選択することが、当業者において動機づけられないことは明らかである。
また、特許異議申立書において提示されたいずれの文献にも、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を95:5~30:70の質量比で含有するバインダー樹脂を含む表刷り用グラビア印刷インキ組成物において、炭化水素系ワックスのJISK2207で規定された25℃における硬度(針入度)が、0.5~9.5であり、炭化水素系ワックスをグラビアインキ総量中に0.1~2.5質量%含有させることで、耐摩擦性が向上することを示すことは示されていない。
したがって、相違点(α’)に係る構成を導き出すことが当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本1発明は甲1A発明から当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。本3~7発明についても同様である。
よって、特許異議申立人の甲第1号証の実施例4を主たる引用例とする、本件発明の進歩性欠如の主張は採用することができない。
(2)申立理由2(実施可能要件、サポート要件)について
ア.申立理由2の概要
特許異議申立人が主張する申立理由2は、本件明細書の実施例に具体的に開示された内容を、本件特許発明1~7の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえず、本件特許発明7の全てにわたって本件発明の効果を達成できるともいえないから、特許法第36条第4項第1号(同法113条第4号)、特許法第36条第6項第1号(同様113条第4号)の規定により、本件特許は取り消されるべきである、というものである。
そして、(4-4-1)本件明細書において実施例をもって「炭化水素系ワックスの硬度(針入度)」が具体的に開示されているのは、「1.0」(実施例25、26)、「2.0」(実施例22、24)、及び「7.0」〔実施例21、23)の3点に限られ、
(4-4-2)本件明細書において実施例をもって「炭化水素系ワックスの含有量」が具体的に開示されるのは、「0.5質量%」(実施例25、26)及び「0.8質量%」(実施例21-24)の2点に限られ、
(4-4-3)本件明細書において実施例をもって「塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量」が具体的に開示されるのは、「10,000」(実施例21-24)及び「18,000」(実施例25、26)の2点に限られ、
(4-4-4)本件明細書において実施例をもって「塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量」が具体的に開示されるのは、「0.5質量%」(実施例21-26)の1点に限られ、
(4-4-5)本件明細書において実施例をもって「バインダー樹脂の種類」が具体的に開示されるのは、「ポリアミド樹脂とセルロース系樹脂の組み合わせ」(実施例21-26)の1点に限られ、さらに、「バインダー樹脂中のセルロース系樹脂の含有量」が具体的に開示されるのは、「25質量%」(実施例21、22、25、26)及び「26.7質量%」(実施例23、24)の2点に限られ、
(4-4-6)本件明細書において実施例をもって「ポリアミド樹脂の軟化点」が具体的に開示されるのは、「116℃」(実施例21-26)の1点に限られ、
(4-4-7)本件明細書において実施例をもって「ポリアミド樹脂の重量平均分子量」が具体的に開示されているのは、「6,000」(実施例21-26)の1点に限られ、
本件明細書の実施例に具体的に開示された内容を、本件特許発明1(又は4)の範囲まで拡張ないし一般化できるとはいえず、本件特許発明1(又は4)の全てにわたって本件発明の効果を達成できるともいえない、と主張する。
イ.判断
(ア)本件特許発明の解決しようとする課題について
本件特許明細書の段落0007を含む発明の詳細な説明の記載からみて、本件特許の請求項1及び3~7に係る発明の解決しようとする課題は「基材の表面処理の有無や延伸の有無が異なる基材においても耐擦傷性および接着性を両立することができ、かつ印刷適性の優れた有機溶剤系グラビアインキの提供」にあるものと認められる。
(イ)炭化水素系ワックスの硬度(針入度)について
本件特許明細書の段落0044には「炭化水素系ワックスの硬度(針入度)…の値が0.5~12…の範囲内の場合、バインダー樹脂との親和性・相溶性が良好となり、更に塩素化ポリオレフィン樹脂との相乗効果で、各種基材に対する接着性および耐擦傷性が双方向上する。」と記載され、同段落0087及び0089には、その下限値近傍の1.0の実施例25及び26、並びにその上限値近傍の7.0の実施例21及び23のものが、経時安定性、ドクタースジ、耐擦傷性、及び接着性の評価において、全て「5」となっていることから、炭化水素系ワックスの硬度(針入度)が0.5~9.5であれば同様の効果が得られることを、十分に認識することができる。
(ウ)炭化水素系ワックスの含有量について
本件特許明細書の段落0043には「炭化水素系ワックスはグラビアインキ中に0.1~2.5質量%含有する。基材への接着性、耐擦傷性およびインキの経時安定性が両立するため0.3~2.5質量%で含有することが好ましい。」と記載され、同段落0087及び0089には、その下限値近傍の0.5質量%の実施例25及び26、並びにその上限値近傍の0.8質量%の実施例21~24(及びその上限値近傍の2.5質量%の参考例12)のものが、経時安定性、ドクタースジ、耐擦傷性、及び接着性の評価において、全て「5」となっていることから、炭化水素系ワックスの含有量が0.1~2.5質量%であれば同様の効果が得られることを、十分に認識することができる。
(エ)塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量について
本件特許明細書の段落0049には「塩素化ポリオレフィンの重量平均分子量は、5,000~100,000であるとバインダー樹脂との相溶性および炭化水素系ワックスとの親和性が良好である。」と記載され、同段落0087及び0089には、その下限値近傍の10,000の実施例21~24、並びにその上限値近傍の18,000の実施例25及び26(及びその上限値近傍の55,000の参考例4)のものが、経時安定性、ドクタースジ、耐擦傷性、及び接着性の評価において、全て「5」となっており(ただし、参考例12を使用した参考例31のCPPに対する接着性のみ「4」となっている)、令和2年9月29日付けの意見書の第7頁第7~8行では「本件発明1は、塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量の数値限定に臨界的な意義がある発明ではなく、好ましい数値範囲を特定したものである。」とされていることから、塩素化ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が5,000~100,000であれば同様の効果が得られることを、十分に認識することができる。
(オ)塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量について
本件特許明細書の段落0049には「耐ブロッキング性とのバランスの観点から、塩素化ポリオレフィン樹脂はインキ100質量%中に0.1~2.5質量%含有し、好ましくは0.2~2.3質量%である。」と記載され、同段落0087及び0089には、その下限値近傍の0.2質量%の参考例13、及びその上限値近傍の2.3質量%の参考例14のものが、経時安定性、ドクタースジ、耐擦傷性、及び接着性の評価において、「5」又は「4」となっていることから、塩素化ポリオレフィン樹脂の含有量が0.1~2.5質量%であれば同様の効果が得られることを、十分に認識することができる。
(カ)バインダー樹脂の種類及び含有量について
本件訂正により、訂正後の請求項1及びその従属項に係る発明は「(3)バインダー樹脂は、ポリアミド樹脂及びセルロース系樹脂を、95:5~30:70の質量比で含有する」ものに限定されており、本件特許明細書の段落0023には「ポリアミド樹脂/セルロース系樹脂は、それぞれ質量比で95/5~30/70であることが好ましい。…この配合比および組み合わせのとき、後述する炭化水素系ワックスを併用することにより、印刷層の耐ブロッキング性および接着性が向上する。」と記載されていることから、バインダー樹脂の種類及び含有量についてサポート要件及び実施可能要件を満たさないとはいえない。
(カ)ポリアミド樹脂の軟化点及び重量平均分子量について
令和2年9月29日付けの意見書の第10頁第1~2行では「本件発明4は、ポリアミド樹脂の軟化点と重量平均分子量の数値限定に臨界的な意義がある発明ではなく、好ましい数値範囲を特定したものである」とされており、ポリアミド樹脂の軟化点及び重量平均分子量は、本件特許の請求項1に「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項」として記載されていないので、本件特許発明の解決しようとする課題は、ポリアミド樹脂の軟化点及び重量平均分子量の範囲の如何によらず、解決できると認識することができる。
(キ)サポート要件と実施可能要件のまとめ
以上総括するに、本件特許の請求項1及びその従属項に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることは明らかなので、本件特許の請求項1及びその従属項の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合しないとはいえない。
また、本件特許明細書の実施例に具体的に開示された内容を、本件特許の請求項1及びその従属項の範囲まで拡張ないし一般化できるか否か、及び本件特許の請求項1及びその従属項の全てにわたって本件特許発明の効果を達成できるか否かは、当業者が当該請求項に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されているか否かと関係がないので、本件特許の発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に適合しないとはいえない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、訂正後の本件特許の請求項1及び3~7に記載された発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の本件特許の請求項1及び3~7に記載された発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、訂正前の請求項2は削除されているので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2020-700332