2020-700244
皮膚覚提示システム
- 審判番号
- 2020-700244
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-070338外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年04月07日
- 審決日
- 2020年12月15日
- 公報発行日
- 2021年04月30日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第120条の5第9項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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特許第6591924号の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成28年3月31日に出願され、令和元年9月27日にその特許権の設定登録がされ、令和元年10月16日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和2年4月7日に特許異議申立人梅田明子により特許異議の申立てがされ、当審は、令和2年6月30日付で取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年8月31日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、特許異議申立人梅田明子は、令和2年10月15日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の(1)、(2)のとおりである。
(1)請求項1に係る「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、」を「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含み、」に訂正するとともに、「前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置に対応する前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報を少なくとも含み、」を「前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、」と訂正し、さらに、「前記表示情報制御手段は、前記表示情報により、ユーザーが身に付けた状態の前記ウェアラブル機器の画像を前記表示装置に表示させることを特徴とする皮膚覚提示システム。」を「前記表示情報制御手段は、前記表示情報により、ユーザーが身に付けた状態の前記ウェアラブル機器の画像を前記表示装置に表示させ、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可することを特徴とする皮膚覚提示システム。」に訂正する。
(2)発明の詳細な説明の段落【0010】の「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置に対応する前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報を少なくとも含み、前記表示情報制御手段は、前記表示情報により、ユーザーが身に付けた状態の前記ウェアラブル機器の画像を前記表示装置に表示させることを特徴とするものである。」という記載を、「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う変化とを含み、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、前記表示情報制御手段は、前記表示情報により、ユーザーが身に付けた状態の前記ウェアラブル機器の画像を前記表示装置に表示させ、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれる前記時間指定情報で指定される継続時間だけユーザーに皮膚刺激を与えるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可することを特徴とするものである。」に訂正する。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-6〕に対して請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1-6〕に対して請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び独立特許要件について
(1)請求項1に係る訂正について
請求項1に係る訂正は、
ア 「ユーザーの操作情報」について、「前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含」むとの限定を加え、
イ 「信号パターン」について、「ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含」むと限定し、
ウ 「制御装置」について、「前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可する」との限定を加える
ものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
次に、明細書の発明の詳細な説明には、
ア 「ユーザーの操作情報」について、
「マイクロコンピュータ23は、ユーザーのタッチパネル21に対する操作から得られた操作情報(位置、方向、速度、接触時間など)をタッチパネル制御部22から取得することができる。」(段落【0030】)、「上記のとおり、電子装置2のマイクロコンピュータ23は、ユーザーのタッチパネル21に対する操作から得られた操作情報(位置、方向、速度、接触時間など)をタッチパネル制御部22から取得する。ユーザーがタッチパネル21上で“揉む”という操作をする場合には、ユーザーの複数本の指がタッチパネル21に接触している状態で接近したり離れたりすることになる。したがって、マイクロコンピュータ23は、ユーザーの複数本の指がタッチパネル21に接触している位置と、その位置の時間に伴う変化とを検出することができる。」(段落【0065】)と記載され、
イ 「信号パターン」について、
「信号パターンは、例えばウェアラブル機器1上の特定の位置を指定する位置指定情報と、この特定の位置に皮膚覚を与える継続時間を指定する時間指定情報とからなり、これら位置指定情報と時間指定情報の組が時系列で記述された情報である。」(段落【0037】)、「信号パターンでは、ユーザーの指が触れたタッチパネル21上の位置の情報が、対応するウェアラブル機器1上の位置を指定する位置指定情報に変換され、ユーザーがタッチパネル21上の同一の位置に触れていた継続時間の情報が、位置指定情報で指定されるウェアラブル機器1上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報に変換される。」(段落【0066】)と記載され、
ウ 「制御装置」について、
「ウェアラブル機器1の制御装置12のCPU121は、通信インターフェース部120を介して電子装置2から信号パターンを受信すると、信号パターンに含まれる位置指定情報で指定されるウェアラブル機器1上の位置に存在する刺激提示部11を選択し、この刺激提示部11が信号パターンに含まれる時間指定情報で指定される継続時間だけユーザーに皮膚覚刺激を与えるよう刺激制御部123に指令を出力する。」(段落【0070】)と記載されている。
よって、ア 「ユーザーの操作情報」について、「前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含」むこと、イ 「信号パターン」について、「ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含」むこと、及び、ウ 「制御装置」について、「前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可する」ことを含む発明は、明細書に記載されており、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないと認められる。
(2)段落【0010】の訂正について
発明の詳細な説明の段落【0010】の「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置に対応する前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報を少なくとも含み、前記表示情報制御手段は、前記表示情報により、ユーザーが身に付けた状態の前記ウェアラブル機器の画像を前記表示装置に表示させることを特徴とするものである。」という記載を、「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う変化とを含み、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、前記表示情報制御手段は、前記表示情報により、ユーザーが身に付けた状態の前記ウェアラブル機器の画像を前記表示装置に表示させ、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれる前記時間指定情報で指定される継続時間だけユーザーに皮膚刺激を与えるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可することを特徴とするものである。」とする訂正は、上記1(1)の特許請求の範囲の訂正に伴う明細書の訂正である。
そうすると、上記1(2)の訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)独立特許要件について
訂正前の請求項1ないし4に対して、特許異議の申立てがされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する、いわゆる独立特許要件は課されない。
一方、訂正前の請求項5及び6に対しては、特許異議の申立てがされていないので、以下、訂正後における、これらの特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでるか検討する。
訂正後の請求項5及び6に係る発明は、「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含み、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可する」との特定事項を有する。
そして、上記特定事項に関し、後記第4の2及び3で検討するように、特許異議申立人梅田明子が特許異議申立書において提示した甲第1ないし5号証のいずれにも記載及び示唆がされておらず、本件特許出願前において周知技術であるともいえない。
そうすると、訂正後の請求項5及び6に係る発明は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
よって、訂正後の請求項5及び6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。そして、その他の特許を受けることができない理由もない。
したがって、訂正後の請求項5及び6に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
本件発明1
「電子装置とウェアラブル機器を備える皮膚覚提示システムであって、前記電子装置は、ユーザーの操作を受け付ける入力手段と、ユーザーの操作に対応する信号パターンを生成する信号パターン生成手段と、続きを表示(全17行)前記信号パターンを前記ウェアラブル機器に送信する通信手段とを有し、前記ウェアラブル機器は、ユーザーの体表面に接触するように衣類に取り付けられた複数の刺激提示手段と、前記衣類に装着され、少なくとも1つの前記刺激提示手段に、前記電子装置から送信された信号パターンに応じた駆動信号を印加することによりユーザーに皮膚覚刺激を与える制御装置とを有し、前記電子装置は、さらに、表示装置と、表示情報に応じた画像を前記表示装置に表示させる表示情報制御手段とを有し、前記入力手段は、前記表示装置と組み合わせて配置されるタッチパネルであり、前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含み、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、前記表示情報制御手段は、前記表示情報により、ユーザーが身に付けた状態の前記ウェアラブル機器の画像を前記表示装置に表示させ、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可することを特徴とする皮膚覚提示システム。」
本件発明2
「請求項1記載の皮膚覚提示システムにおいて、さらに、サーバー装置を備え、前記電子装置の信号パターン生成手段は、前記表示情報と、表示情報およびユーザーの操作情報と関連付けされた信号パターンとを含むアプリケーションプログラムを前記サーバー装置から受信して、このアプリケーションプログラムを基に前記信号パターンを生成することを特徴とする皮膚覚提示システム。」
本件発明3
「請求項1または2記載の皮膚覚提示システムにおいて、前記ウェアラブル機器の複数の刺激提示手段の各々は、ユーザーの体表面に接触するように衣類に取り付けられた1対の電極を少なくとも含み、前記ウェアラブル機器の制御装置は、前記複数の刺激提示手段のうち前記信号パターンに応じた刺激提示手段を選択し、選択した刺激提示手段の前記1対の電極間に前記駆動信号を印加することを特徴とする皮膚覚提示システム。」
本件発明4
「請求項3記載の皮膚覚提示システムにおいて、
前記ウェアラブル機器の複数の刺激提示手段の各々は、
さらに、前記衣類と前記1対の電極との間に配置され、保湿性を有する絶縁性の材料からなる第1の絶縁部材と、
前記1対の電極間に配置され、保湿性を有する絶縁性の材料からなる第2の絶縁部材とを有することを特徴とする皮膚覚提示システム。
本件発明5
「請求項3または4記載の皮膚覚提示システムにおいて、前記1対の電極の各々は、PEDOT-PSSを含浸させた布帛からなることを特徴とする皮膚覚提示システム。」
本件発明6
「請求項1乃至5のいずれか1項に記載の皮膚覚提示システムにおいて、複数のユーザーが所持する複数の前記電子装置と、複数のユーザーが身に付ける複数の前記ウェアラブル機器とを備え、各電子装置の前記通信手段は、さらに、電子装置間で直接に双方向通信する機能もしくは通信網を介して電子装置間で双方向通信する機能を備え、前記信号パターンを送信する送信元の電子装置の通信手段は、自装置の前記信号パターン生成手段が生成した信号パターンを、予め定められた送信先の電子装置もしくは自装置のユーザーが指定した送信先の電子装置に送信し、前記送信先の電子装置の通信手段は、前記送信元の電子装置から受信した信号パターンを、自装置に対応する前記ウェアラブル機器に送信することを特徴とする皮膚覚提示システム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし4に係る特許に対して、当審が令和2年6月30日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
よって、請求項1ないし4に係る特許は、取り消されるべきものである。
2 甲号証の記載
(1)甲第1号証について
甲第1号証(特開2015-196006号公報)には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審が付した。以下、同様。)。
「【特許請求の範囲】【請求項1】設定された周波数及び振幅の信号を発生させる発振器と、前記発振器から出力される前記信号に基づいて錘を一方向に振動させるとともに振動の周波数を維持しながら振幅の大きさを変化させることのできる少なくとも1つのリニア振動アクチュエータを含む振動発生機と、続きを表示(全26行)皮膚反射を誘発させる周波数及び振幅の誘発信号を前記発振器から前記振動発生機に供給する誘発時間及び前記誘発信号を前記振動発生機に供給しない弛緩時間を交互に繰り返して設定できる制御部と、少なくとも前記振動発生機を搭載し、利用者の頭部に当接して前記振動を頭皮に伝播することで前記頭皮に皮膚反射を誘発させる伝達部材と、を備えることを特徴とする皮膚反射誘発装置。(中略)【請求項8】前記振動発生機は、前記錘の振動方向を揃えて配置される複数のリニア振動アクチュエータを含み、前記制御部は、全ての前記リニア振動アクチュエータの前記錘の振動の位相を同期させることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の皮膚反射誘発装置。(中略)【請求項13】前記振動発生機は、前頭部、頭頂部、後頭部及び側頭部の頭蓋部全体に対応する範囲にわたって配置される複数の前記リニア振動アクチュエータを有し、前記制御部は、複数の前記リニア振動アクチュエータを、個別に、または分割された複数の領域に各々対応する群ごとに、前記誘発時間、前記弛緩時間、周波数、振幅、位相、の少なくとも1つを設定可能に設けられることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の皮膚反射誘発装置。【請求項14】前記制御部にインターフェイスで接続される操作端末をさらに備え、前記操作端末は、前記伝達部材に配置された複数の前記リニア振動アクチュエータの配置を平面に展開して示す二次元平面画像を少なくとも表示する画面と、前記画面に表示された情報に対応して操作が可能な入力部と、を備えることを特徴とする請求項13に記載された皮膚反射誘発装置。【請求項15】前記操作端末は、前記画面に表示された前記二次元平面画像に対応する前記入力部の部位に触れられることで、前記伝達部材の対応する位置に配置されたリニア振動アクチュエータの前記錘の振動の周波数、振幅、位相の少なくとも1つを変化させる指令信号を前記制御部に出力することを特徴とする請求項14に記載された皮膚反射誘発装置。【請求項16】前記操作端末に格納され、請求項14に記載された皮膚反射誘発装置の制御部に対して通信をして複数の前記リニア振動アクチュエータの前記誘発時間、前記弛緩時間、前記周波数、前記振幅、前記位相の少なくとも1つを制御することを特徴とする発毛促進アプリケーション。【請求項17】複数の前記リニア振動アクチュエータの前記誘発時間中の振動の周波数、振幅、位相の少なくとも1つを、個別にまたは分割された領域に各々対応する群ごとに、変化させる複数の振動パターンを含むことを特徴とする請求項16に記載された発毛促進アプリケーション。【請求項18】前記振動パターンは、前頭部から後頭部に向けて、頭頂部から前頭部及び後頭部に向けて、頭頂部から両側頭部に向けて、両側頭部から頭頂部に向けて、頭頂部を上から見て右回り、または、頭頂部を上から見て左回り、の少なくともいずれか1つの順序で、振動の周波数、振幅、位相の異なる範囲を移動させるように、複数の前記リニア振動アクチュエータを制御することを特徴とする請求項17に記載された発毛促進アプリケーション。」
「【技術分野】【0001】本発明は、皮膚反射を引き起こす振動を頭皮に加える皮膚反射誘発装置に関する。」
「【0043】振動発生機12は、少なくとも1つのリニア振動アクチュエータ、本実施形態では1つのリニア振動アクチュエータ121を有している。このリニア振動アクチュエータ121は、図1(A)~(C)に示すように利用者の頭部Hの頭頂部HMの中央に配置される。リニア振動アクチュエータ121は、発振器11から出力される信号に基づいて、内蔵している錘を一方向に往復駆動させることで、振動を発生させる。具体的には、リニア振動アクチュエータ121は、スピーカのコイルと磁石が逆に配置された構造、すなわち錘となる磁石が一方向に移動可能に支持されてその近傍にコイルが固定された構造を有している。リニア振動アクチュエータ121は、モータの回転軸に偏心した錘を取り付けた振動装置では容易に実現できない、振動の周波数及び振幅を個別に調整することが可能であり、振動させたい一方向に振動するので、エネルギー変換効率もよい。本実施形態では、リニア振動アクチュエータ121の場合、錘の振動方向は、頭皮に対して垂直になるよう、配置される。したがって、発生する振動の伝達効率が良い。」
「【0096】本実施形態において、皮膚反射誘発装置1は、図17に示すように伝達部材15としてスカルキャップ15Eを採用している。スカルキャップ15Eは、伝達部材15として利用者の頭蓋部(前頭部HF、頭頂部HM、後頭部HR、および側頭部HSr,HSl)を覆う硬質の外殻15E0と、利用者の頭蓋部の形状に合わせて作られる内壁パッド15E1を有している。皮膚反射誘発装置1の振動発生機12は、外殻15E0と内壁パッド15E1との間に、頭蓋部に対応する範囲の全体にわたって隙間なく配置された複数のリニア振動アクチュエータ121を有している。【0097】発振器11、制御部13、バッテリ14は、後頭部HRから後頸部側へ延びた外殻15E0と内壁パッド15E1との間に配置される。十分な容積を確保するために、外殻15E0を後方へ隆起させてもよい。操作部16は、発振器11などが配置された後頭部HRの外殻15E0に表示部161及びボタン162を露出した状態に組み込まれる。利用者の頭部Hに当接して個々のリニア振動アクチュエータ121の振動を頭皮に伝達する内壁パッド15E1の接触面151が利用者の一人一人の頭部Hの外形にフィットするように、3Dスキャナで頭部Hの形状を読み取り、その形状を基に外殻15E0内面と個々のリニア振動アクチュエータ121との間に挿入するスペーサを3Dプリンタで造形するとよい。」
「【0100】さらに、第5の実施形態の皮膚反射誘発装置1は、図17に示すように制御部13にインターフェイスで接続される操作端末2を含むとともに、操作端末2と通信するために操作部16の周辺の外殻15E0に組み込まれている通信モジュール18を備える。本実施形態では、インターフェイスとして無線(赤外線や近距離無線を含む)接続される場合を例に説明する。ただしインターフェイスとして一般的なコネクタとジャックを設けて有線接続されてもよい。【0101】図17に示す操作端末2は、伝達部材15に配置された複数のリニア振動アクチュエータ121の配置を平面に展開して示す二次元平面画像Gを少なくとも表示する画面21と、この画面21に表示された情報に対応して操作が可能な入力部22と、を備える。そして、操作端末2は、画面21に表示された二次元平面画像Gに対応する入力部22の部位に触れられることで、伝達部材15の対応する位置に配置されたリニア振動アクチュエータ121を選択し、振動パターンV1~V13や、誘発時間t1、弛緩時間t2、運転時間t3、振動の周波数、振動の強度(振幅)などを設定できるほか、任意の振動パターンを実行中である場合には、選択したリニア振動アクチュエータ121を振動パターンによる誘発時間t1とは異なるタイミングで振動させたり、振幅の大きさを変化させたりする、優先的な指令信号を制御部13に送信する。【0102】上記機能を備えるこの操作端末2は、専用のリモートコントローラであってもよいし、携帯電話やスマートフォン、無線通信機能を有したタブレット型端末やノートブック型ポータブルコンピュータあるいはデスクトップコンピュータであってもよい。図17の本実施形態では、スマートフォンを利用し、専用のアプリケーションである発毛促進アプリケーションをダウンロードして使用している一例を示している。この場合、入力部22は、タッチパネルとして、画面21に対して積層されているので、画面21に表示された情報の位置にそのまま触れることで、入力部22を操作できる。操作端末2がデスクトップコンピュータである場合、モニタに表示された情報や二次元平面画像Gに対してかマウスやタッチパッドでカーソルの位置を移動させて入力操作される。操作端末2は、無線通信機能によって無線接続される以外に、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)や他の規格のインターフェイスによる通信ケーブルによって伝達部材15であるスカルキャップ15Eに搭載された制御部13に接続されてもよい。【0103】次に、操作端末2に格納された発毛促進アプリケーションの機能について説明する。この発毛促進アプリケーションは、本実施形態では操作端末2となるスマートフォンに格納され、皮膚反射誘発装置1の伝達部材15であるスカルキャップ15Eに搭載された制御部13に対してインターフェイスを介して通信を行う。つまり、発毛促進アプリケーションは、皮膚反射誘発装置1の電源が入っている状態で起動されることで、または、発毛促進アプリケーションが先に起動している場合は皮膚反射誘発装置1の電源が入れられたのち設定情報の取得操作をすることで、操作端末2の通信機能を利用して皮膚反射誘発装置1の制御部13と通信モジュール18を介して無線で通信し、現在の皮膚反射誘発装置1の設定情報等を取得する。そして、操作端末2とスカルキャップ15Eの間の通信が確立されると、制御部13は、スカルキャップ15Eに設けられた操作部16を無効化する。操作端末2と通信モジュール18の間の通信が一定の時間以上、途絶えると、制御部13は、操作部16の機能を回復させる。【0104】この発毛促進アプリケーションは、通信状態にあるスカルキャップ15Eの複数のリニア振動アクチュエータ121の誘発時間t1、弛緩時間t2、振動の周波数、振幅、位相を制御するための指令信号(運転プログラム)を制御部13に提供する。さらにこの発毛促進アプリケーションは、制御部13が備えていない複数の振動パターンを実施する振動プログラムを含んでいてもよい。例えば、複数のリニア振動アクチュエータ121の誘発時間t1中の振幅を、個別に、または分割された複数の領域に対応するリニア振動アクチュエータ121の群(例えば、前頭部の群12GF,頭頂部の群12GM,後頭部の群12GR,左右の側頭部の群12GSr,12GSl)ごとに変化させるなど、複数の振動パターンを含む。」
「【0112】 以上のように、図18から図21の振動パターンV10~V13をスカルキャップ15Eの制御部13に提供し、リニア振動アクチュエータ121を制御することで、異なる振動を体感することができるとともに、体感の違いによる異なる効果も得られる。例えば、これらの振動パターンV10~V12を図3から図7に示す基本的な振動パターンV1~V5と組み合わせた運転プログラムにすることによって、振動の強さを感じる位置が移動することによるマッサージ的効果を加えることができる。」
【図17】
以上によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が開示されていると認められる。
「設定された周波数及び振幅の信号を発生させる発振器と、前記発振器から出力される前記信号に基づいて錘を一方向に振動させるとともに振動の周波数を維持しながら振幅の大きさを変化させることのできる少なくとも1つのリニア振動アクチュエータを含む振動発生機と、皮膚反射を誘発させる周波数及び振幅の誘発信号を前記発振器から前記振動発生機に供給する誘発時間及び前記誘発信号を前記振動発生機に供給しない弛緩時間を交互に繰り返して設定できる制御部と、少なくとも前記振動発生機を搭載し、利用者の頭部に当接して前記振動を頭皮に伝播することで前記頭皮に皮膚反射を誘発させる伝達部材と、続きを表示(全17行)を備えることを特徴とする皮膚反射誘発装置において、上記伝達部材としてスカルキャップ15Eを採用し、スカルキャップ15Eは、伝達部材として利用者の頭蓋部(前頭部HF、頭頂部HM、後頭部HR、および側頭部HSr,HSl)を覆う硬質の外殻15E0と、利用者の頭蓋部の形状に合わせて作られる内壁パッド15E1を有し、皮膚反射誘発装置1の振動発生機は、外殻15E0と内壁パッド15E1との間に、頭蓋部に対応する範囲の全体にわたって隙間なく配置された複数のリニア振動アクチュエータを有し、利用者の頭部Hに当接して個々のリニア振動アクチュエータの振動を頭皮に伝達する内壁パッド15E1の接触面151が利用者の一人一人の頭部Hの外形にフィットするように造形するとよく、前記振動発生機は、前記錘の振動方向を揃えて配置される複数のリニア振動アクチュエータを含み、これにより、発生する振動の伝達効率を良くし、前記振動発生機は、前頭部、頭頂部、後頭部及び側頭部の頭蓋部全体に対応する範囲にわたって配置される複数の前記リニア振動アクチュエータを有し、前記制御部は、複数の前記リニア振動アクチュエータを、個別に、または分割された複数の領域に各々対応する群ごとに、前記誘発時間、前記弛緩時間、周波数、振幅、位相、の少なくとも1つを設定可能に設けられ、後頭部HRから後頸部側へ延びた外殻15E0と内壁パッド15E1との間に配置され、前記制御部にインターフェイスで接続される操作端末をさらに備え、操作端末2と通信するために操作部16の周辺の外殻15E0に組み込まれている通信モジュール18を備え、インターフェイスとして無線接続され、前記操作端末は、前記伝達部材に配置された複数の前記リニア振動アクチュエータの配置を平面に展開して示す二次元平面画像を少なくとも表示する画面と、前記画面に表示された情報に対応して操作が可能な入力部と、を備え、前記操作端末に格納され、前記制御部に対して通信をして複数の前記リニア振動アクチュエータの前記誘発時間、前記弛緩時間、前記周波数、前記振幅、前記位相の少なくとも1つを制御することを特徴とする発毛促進アプリケーションを設け、発毛促進アプリケーションはダウンロードして使用され、発毛促進アプリケーションを使用する例において、入力部は、タッチパネルとして、画面に対して積層されており、画面に表示された情報の位置にそのまま触れることで入力部を操作でき、前記操作端末は、前記画面に表示された前記二次元平面画像に対応する前記入力部の部位に触れられることで、伝達部材の対応する位置に配置されたリニア振動アクチュエータを選択し、振動パターンV1~V13や、誘発時間t1、弛緩時間t2、運転時間t3、振動の周波数、振動の強度(振幅)などを設定できるほか、任意の振動パターンを実行中である場合には、選択したリニア振動アクチュエータを振動パターンによる誘発時間t1とは異なるタイミングで振動させたり、振幅の大きさを変化させたりする、指令信号を制御部13に送信し、前記指令信号は、発毛促進アプリケーションは、複数のリニア振動アクチュエータ121の誘発時間t1、弛緩時間t2、振動の周波数、振幅、位相を制御するための指令信号を制御部に提供でき、前記発毛促進アプリケーションは、複数の前記リニア振動アクチュエータの前記誘発時間中の振動の周波数、振幅、位相の少なくとも1つを、個別にまたは分割された領域に各々対応する群ごとに、変化させる複数の振動パターンを含み、前記振動パターンは、前頭部から後頭部に向けて、の少なくともいずれか1つの順序で、振動の周波数、振幅、位相の異なる範囲を移動させるように、複数の前記リニア振動アクチュエータを制御する、皮膚反射誘発装置。」
(2)甲第2号証について
甲第2号証(特開2005-342076号公報)には、図面とともに、次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本発明は、低周波治療器に関するものである。」
「【0012】図1は本発明の第1の実施の形態における靴の断面図、図2は本発明の第1の実施の形態における治療器本体部を示す平面図、図3は本発明の第1の実施の形態における治療器制御装置を示すブロック図である。【0013】図において、11は低周波治療器としての、かつ、履物としての靴であり、該靴11は、底部12、前半部(図1において左半部)において足の上面を覆う甲皮部13、前端(図1において左端)から後端(図1において右端)まで延在させて配設され、足の側面を覆う側部14、及び足の後面を覆う後部15を備える。前記底部12には、靴11内において足裏と対向するように、底部12の全体にわたり、一体にプレート状の治療器本体部18が配設される。また、前記底部12のうちの踵(かかと)部21には、制御部としての制御回路・電源ユニット部22及び第1の検出部としての踵センサ23が、底部12のつま先部25には第2の検出部としてのつま先センサ26が配設される。そして、前記後部15にスイッチ28が配設される。なお、本実施の形態において、前記治療器本体部18は、底部12と一体に形成されるが、底部12と別体に形成することができる。その場合、治療器本体部18によって中敷が構成される。【0014】前記制御回路・電源ユニット部22は、操作者の歩行に支障がないように、踵部21に配設されるようになっているが、踵部21に代えて甲皮部13に配設したり、靴11と別体に配設したりすることができる。【0015】前記治療器本体部18は、底部12の全体にわたって延びる絶縁性の樹脂板から成るプレート部31、該プレート部31の各所、すなわち、各足つぼに対応させて設定された位置に配設され、上方に向けて突出させて形成された電極32、及び該各電極32と制御回路・電源ユニット部22とを接続するリード部wrを備える。前記各電極32は導電性及び伸縮性の高い材料、例えば、導電性ゴムによって形成され、各リード部wrには、薄板状の導電性の高い材料が使用される。したがって、操作者が歩行する際に、プレート部31、電極32及びリード部wrは屈曲させられる。また、治療器本体部18によって中敷きが形成される場合、エラストマー等の基台に前記電極32が埋め込まれる。なお、各電極32として、導電性ゴムのほかに、導電性スポンジ、金属薄板、金属箔(はく)、導電性繊維、導電性樹脂、導電性インク、導電性塗料、エッチングパターン等を使用することができる。また、本実施の形態においては、前記制御回路・電源ユニット部22と各電極32とをリード部wrによって接続するようになっているが、前記制御回路・電源ユニット部22と各電極32とを無線によって接続することができる。」
「【0024】また、操作者は、操作部36の図示されない第2のモード選択スイッチを操作することによって、低周波パルスの発生モードを片足モード及び両足モードの中から選択することができ、片足モードが選択されると、前記低周波パルス電圧発生処理手段は、低周波パルスを発生させるに当たり、右足用及び左足用の各靴11それぞれにおいて、所定の各電極32に印加される電圧と、他の電極32に印加される電圧とを異ならせて電位差を形成する。」
以上によれば、甲第2号証は、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が開示されていると認められる。
「低周波治療器としての、かつ、履物としての靴において、前記底部12には、靴11内において足裏と対向するように、底部12の全体にわたり、一体にプレート状の治療器本体部18が配設され、前記治療器本体部18は、底部12の全体にわたって延びる絶縁性の樹脂板から成るプレート部31、該プレート部31の各所、すなわち、各足つぼに対応させて設定された位置に配設され、上方に向けて突出させて形成された電極32を備え、治療器本体部18によって中敷きが形成される場合、エラストマー等の基台に前記電極32が埋め込まれ、各電極32として、導電性ゴムのほかに、導電性スポンジ、金属薄板、金属箔(はく)、導電性繊維、導電性樹脂、導電性インク、導電性塗料、エッチングパターン等を使用することができ、操作者により片足モードが選択されると、低周波パルス電圧発生処理手段は、低周波パルスを発生させるに当たり、右足用及び左足用の各靴11それぞれにおいて、所定の各電極32に印加される電圧と、他の電極32に印加される電圧とを異ならせて電位差を形成する、低周波治療器。」
(3)甲第3号証について
甲第3号証(特開2002-369857号公報)には、図面とともに、次の記載がある。
「【発明の詳細な説明】【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、マッサージ機の操作を行う操作器に関し、詳しくは操作釦以外に施療状態や操作釦の操作に対応する表示を行う液晶表示部を有し、さらに音声を発生するスピーカー部を有する操作器に関するものである。」
「【0008】【発明の実施の形態】マッサージ機は予め設定された複数の動作を自動的に行う自動コースモードと、好みの一定動作を行うお好み動作モードと、体調を入力することにより動作を選んでくれる問診コースモードとを有しており、このマッサージ機を操作する操作器1は図1、図2に示すように構成されている。この操作器1は横長の矩形状に形成されており、この操作器1の中央部には液晶表示部2を設けてある。この液晶表示部2では動作内容、施療子の移動範囲、施療子の位置、設定内容を表示するようになっている。そして操作器1にはこの液晶表示部2を中心に上下左右に操作釦を設けてある。」
「【0010】マッサージ機の基本動作としては、施療子を人体に対して縦方向に上下して動かす指圧動作、ソフト指圧動作、人体を掴む動作の揉み上げ動作、揉み下げ動作、ぐい揉み動作、ソフト揉み動作、また左右の施療子を交互に上下する叩き動作、揉み叩き動作、また背中の首から腰にかけて上下する背すじ伸ばし動作を行えるものであり、全身自動コース用操作釦8を操作して行う4つの全身自動コースはこれらのコースを組み合わせたものである。指圧コース釦8aを操作して行う指圧コースは指圧動作、ソフト指圧動作、ソフト指圧背すじ伸ばしを中心に動作するコースとなっている。コリ改善コース釦8bを操作して行うコリ改善コースは揉み上げ動作、揉み下げ動作、ぐい揉み動作、ソフト揉み動作、揉み背すじ伸ばし動作を中心にする動作となっている。疲労回復コース釦8cを操作して行う疲労回復コースはソフト指圧動作、ソフト指圧背すじ伸ばし動作、ソフト揉み動作、ソフト叩き動作、ソフト叩き背すじ伸ばし動作を中心に動作するコースとなっている。全身活性コース操作釦8dを操作して行う全身活性コースは全ての動作を万遍なく動作するコースとなっている。」
「【0012】上記のように操作器1が構成され、横長の矩形状の操作器1の中心部に動作内容及び施療子の移動範囲、施療子の位置、設定内容を表示する液晶表示部2を配置することで、液晶表示部2を中心に上下左右に操作釦を設けることができ、例えば左側に入/切操作釦4、停止操作釦5等を、上部に全身自動コース用操作釦8等を、右の蓋9の表面に問診コース用操作釦14等を、蓋9が開放されたとき露出する面にお好み操作釦15群等を設けることができ、夫々の操作釦に対応した表示を液晶表示部2で行うことで、操作が切り替えられたことを操作釦に近い位置で液晶表示にて確認することができる。また操作器1を右手、左手または両手で持って液晶表示部2が手で隠れて見えなくなってしまうことを防ぐことができる。」
【図1】
図1によれば、人体がマッサージ機を使用している状態の画像を表示していると認められる。
よって、甲第3号証は、以下の発明(以下、「甲3発明」という。)が開示されていると認められる。
「マッサージ機を操作する操作器1において、操作器1は横長の矩形状に形成されており、この操作器1の中央部に液晶表示部2を設け、液晶表示部2では動作内容、施療子の移動範囲、施療子の位置、設定内容を表示し、人体がマッサージ機を使用している状態の画像を表示し、液晶表示部2を中心に上下左右に操作釦を設け、マッサージ機の基本動作として、施療子を人体に対して縦方向に上下して動かす指圧動作、揉み叩き動作等があり、夫々の操作釦に対応した表示を液晶表示部2で行うことで、操作が切り替えられたことを操作釦に近い位置で液晶表示にて確認することができる、操作器。」
(4)甲第4号証について
甲第4号証(特表2015-521521号公報)には、図面とともに、次の記載がある。
「【技術分野】【0001】本願発明は、独立項の前文に記載されるような医学治療装置に関する。【背景技術】【0002】本願発明は、筋肉リラクゼーションに関し、特に、中枢神経系統(CNS)に損傷をもつ患者の特定の筋肉に対して、少なくとも筋肉刺激を使った筋肉リラクゼーションに関する。」
「【0019】衣服は弾性であり、かつ、患者の体にぴったり合うように意図されている。衣服は、筋肉の外部電気刺激治療のためのユーザフレンドリーな方法で使用することができるようになっている。電極、例えば、シリコン電極は、衣服の内側面に配置されており、その面は患者の皮膚に対向し、患者の皮膚に接触する。電極をコネクションユニットに接続する電気的接続は、フレキシブルかつ弾性である。」
(5)甲第5号証について
甲第5号証(特開平4-138160号公報)には、図面とともに、次の記載がある。
「[産業上の利用分野]本発明は、背もたれて人体の背部のマッサージを行うマッサージ機に関するものである。」(第1頁左下欄13行乃至15行)
「[実施例]以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。第1図はマッサージ機の操作器Aの表示部1の平面図を示し、この表示部1は液晶にて形成されている。第1図に示すように、方向表示部2は、施療子の移動の方向を表示するものであり、コース表示部3は、自動運転か、あるいはマニュアル運転かの選択したコースを表示するものであり、自動運転用の表示部3aとマニュアル運転用の表示部3bが設けられている。位置表示部4は、人体の背部の絵を書いてその部分に多数に表示部が区分けして設けてある。施療表示部5は、もみ上げ,もみ下げ動作、たたき動作、背筋伸ばし動作の各表示部5a~5cからなっている。また、速度表示部6、強さ表示部7が設けられている。これらの各表示部は、それぞれ施療状態に応じて点灯表示するようにしてある。」(第2頁左上欄7行乃至右上欄3行)
3 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「伝達部材」は、「スカルキャップ15E」として利用者の身体の一部(頭蓋部)を覆うものであるから、本件発明1の「衣類」に対応する。
また、甲1発明の「リニア振動アクチュエータ」は、振動により、頭部の皮膚に対して刺激を与える(提示する)手段であり、また、伝達部材に配置された、つまり「衣類」に取り付けられたものである点において、下記の相違点を除いて、本件発明1の「刺激提示手段」と共通する。
(イ)甲1発明の「制御部」は、伝達部材に配置され、操作端末から送信された「指令信号」に応じて、リニア振動アクチュエータを制御して振動させるものであり、また、制御部が、リニア振動アクチュエータを振動させるための信号を送ることは明らかであるから、本件発明1の「制御装置」に相当する。
(ウ)甲1発明の「伝達部材」は、「スカルキャップ15E」として使用者の頭蓋部を覆うものであり、甲1発明の「リニア振動アクチュエータ」、及び「制御部」は「伝達部材」に配置されたものである。よって、甲1発明の「リニア振動アクチュエータ」、「制御部」及び「伝達部材」は、これらを1つにまとめたものとして、本件発明1の「ウェアラブル機器」に対応する。
(エ)甲1発明の操作端末において、「画面」は、本件発明1の「表示装置」に対応する。
また、甲1発明の「二次元平面画像」は、「伝達部材に配置された複数の前記リニア振動アクチュエータの配置」の情報に応じた画像であるといえるから、本件発明1の「画像」に対応する。そして、操作端末が、当該画像を画面に表示する際、所定の表示制御を行っていることは明らかであるから、そのような表示制御を行う「表示情報制御手段」を備えるものでる。よって、本件発明1と甲1発明とは、「表示情報制御手段」を備える点で、共通する。
(オ)甲1発明の「入力部」は、利用者により「画面に表示された情報に対応して操作」できるものであり、「タッチパネルとして、画面に対して積層されてい」るから、本件発明1の、ユーザーの操作を受け付け、表示装置と組み合わせて配置される「入力手段」及び「タッチパネル」に相当する。
(カ)甲1発明の「発毛促進アプリケーション」は、利用者の操作及び画面に表示された情報に対応する「指令信号」によりリニア振動アクチュエータを制御する信号パターンを生成する手段といえるから、本件発明1の「信号パターン生成手段」とユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作に対応する前記信号パターンを生成する点で一致する。
そして、甲1発明の「指令信号」は、「前記画面に表示された前記二次元平面画像に対応する前記入力部の部位に触れられることで、伝達部材の対応する位置に配置されたリニア振動アクチュエータを選択」するための信号を含んでいるから、この信号は、本件発明1の「ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置」に対応する「前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報」を備えていると認められる。
そうすると、本件発明1の「信号パターン」と甲1発明の「指令信号」とは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置に対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報を少なくとも含む「信号パターン」である点で共通する。
(キ)甲1発明の操作端末における「無線通信機能」は、利用者の操作に対応する「指令信号」を無線接続により伝達部材の制御部に送信しているから、本件発明1の「通信手段」に相当する。
(ク)甲1発明の「制御部」は、「発毛促進アプリケーション」から提供された「複数のリニア振動アクチュエータ121の誘発時間t1、弛緩時間t2、振動の周波数、振幅、位相を制御するための指令信号」により複数のリニア振動アクチュエータ121を制御しており、上記(カ)で検討したように「指令信号」には、「位置指定情報」を含んでいるから、甲1発明の「制御部」は、本件発明1の「前記制御装置」の「前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可すること」のうち、「前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、ユーザーに皮膚覚刺激を与えるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可すること」と同様の動作を行っていると認められる。
(ケ)甲1発明の「操作端末」は、利用者の操作を受け付ける電子手段であり、上記のとおり、入力部、画面、表示制御手段、アプリケーション、無線通信機能を有する装置であるから、本件発明1の「電子装置」と共通するといえる。
(コ)甲1発明の「皮膚反射誘発装置」は、上記のとおり、「操作端末」、「リニア振動アクチュエータ」、「制御部」、及び「伝達部材」を有する点で、本件発明1の「皮膚覚提示システム」と共通しているといえる。
(サ)よって、本件発明1と甲1発明とは、下記の一致点・相違点があるといえる。
[一致点]
電子装置とウェアラブル機器を備える皮膚覚提示システムであって、
前記電子装置は、
ユーザーの操作を受け付ける入力手段と、
ユーザーの操作に対応する信号パターンを生成する信号パターン生成手段と、
前記信号パターンを前記ウェアラブル機器に送信する通信手段とを有し、
前記ウェアラブル機器は、
衣類に取り付けられた複数の刺激提示手段と、
前記衣類に装着され、少なくとも1つの前記刺激提示手段に、前記電子装置から送信された信号パターンに応じた駆動信号を印加することによりユーザーに皮膚に対して刺激を与える制御装置とを有し、
前記電子装置は、
さらに、表示装置と、
表示情報に応じた画像を前記表示装置に表示させる表示情報制御手段とを有し、
前記入力手段は、前記表示装置と組み合わせて配置されるタッチパネルであり、
前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作に対応する前記信号パターンを生成し、
前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置に対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報を少なくとも含み、
前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、ユーザーに皮膚覚刺激を与えるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可することを特徴とする皮膚覚提示システム。
[相違点1]
本件発明1では、刺激提示手段が、ユーザーの体表面に接触するように衣類に取り付けられているのに対し、甲1発明では、リニア振動アクチュエータがユーザーの体表面に接触するように衣類に取り付けられていない点。
[相違点2]
本件発明1は、表示情報制御手段が、前記表示情報により、ユーザーが身に付けた状態の前記ウェアラブル機器の画像を前記表示装置に表示させるのに対し、甲1発明では、画面に伝達部材及びリニア振動アクチュエータを展開した画像を表示させている点。
[相違点3]
「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作に対応する前記信号パターンを生成し、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置に対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報を少なくとも含み、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、ユーザーに皮膚覚刺激を与えるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可すること」について、本件発明1は、「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含み、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可すること」を行っているのに対して、甲1発明はそのようになっていない点。
イ 相違点についての当審の判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討すると、相違点3に係る本件発明1の、「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含み、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可すること」は、上記甲第2ないし5号証には記載及び示唆がされておらず、本件特許出願前において周知技術であるともいえない。
したがって、本件発明1は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、本件発明1の「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含み、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可する」との特定事項を有するものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2ないし4は、甲第1ないし5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
第5 特許異議申立人梅田明子の意見について
特許異議申立人梅田明子は、令和2年10月15日に提出された意見書において、
1 訂正請求書の訂正は、訂正の要件を満たさない。
2 訂正後の請求項1ないし4に係る発明は、進歩性を欠いている。
旨主張している。
しかしながら、上記第2で検討したように、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許異議申立人梅田明子の訂正請求書に関する主張は採用できない。
さらに、上記第4の2及び3で検討したように、上記相違点3に係る、「前記信号パターン生成手段は、ユーザーが前記タッチパネルに対して行なった操作に応じて、前記表示情報およびユーザーの操作情報に対応する前記信号パターンを生成し、前記ユーザーの操作情報は、前記ユーザーが前記タッチパネルに接している位置と、その位置の時間に伴う位置とを含み、前記信号パターンは、ユーザーが前記入力手段を操作して指定した位置と、その位置の時間に伴う変化とにそれぞれ対応する、前記ウェアラブル機器上の位置を指定する位置指定情報と、前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に刺激を与える継続時間を指定する時間指定情報とを少なくとも含み、前記制御装置は、前記信号パターンに含まれる前記位置指定情報で指定される前記ウェアラブル機器上の位置に存在する刺激提示手段を選択し、この刺激提示手段が前記信号パターンに含まれるように、前記刺激提示手段に前記駆動信号を印可すること」は、上記甲第1ないし5号証には記載及び示唆がされておらず、本件特許出願前において周知技術であるともいえないから、特許異議申立人梅田明子の進歩性に関する主張は採用できない。
なお、特許異議申立人梅田明子は、周知技術を示す文献として、参考資料1(特開2010-55282号公報)及び参考資料2(特開2006-127010号公報)を提示しているが、
参考資料1に
「【技術分野】【0001】本発明は、タッチパネル式入力装置に関し、特に、ユーザーがタッチ入力操作を行ったときにタッチパネルを振動させることにより、このタッチ入力操作をユーザーにフィードバックして認識させる技術に関する。」
「【0019】まず第1の指でマルチタッチパネル2をタッチする。指接触検出手段3は、ノイズ対策などの所定の時間後にこのタッチを確認すると、それを操作者にフィードバックするために、第1のタッチ検出信号を振動エネルギー変更手段4に対して出力する。振動エネルギー変更手段4は、指接触検出手段3から第1のタッチ検出信号を入力すると、マルチタッチパネル2を第1の振動エネルギーで振動させるための情報を振動手段5に対して出力する。振動手段5は、振動エネルギー変更手段4から上記情報が入力されると、マルチタッチパネル2を第1の振動エネルギーで振動させる。【0020】第1の指がマルチタッチパネル2をタッチしていることが検出されている状態のときに、このマルチタッチパネル2の他の位置が第2の指でタッチされ、指接触検出手段3が、ノイズ対策などの所定の時間後にこの第2の指によるタッチを確認すると、指接触検出手段3は、それを操作者にフィードバックするために、第2のタッチ検出信号を振動エネルギー変更手段4に対して出力する。振動エネルギー変更手段4は、指接触検出手段3から第2のタッチ検出信号を入力すると、マルチタッチパネル2を第1の振動エネルギーよりも大きい第2の振動エネルギーで振動させるための情報を振動手段5に対して出力する。振動手段5は、振動エネルギー変更手段4から上記情報が入力されると、マルチタッチパネル2を第1の振動エネルギーよりも大きい第2の振動エネルギーで振動させる。【0021】その後、第1の指、第2の指によるマルチタッチパネル2のタッチを解除したことが検出された時点で、指接触検出手段3は、第1、第2のタッチ検出信号の解除信号を出力し、この解除信号に応じて、第1、第2の振動エネルギーによるマルチタッチパネル2の振動がそれぞれ停止される。なお、第1、第2の指がマルチタッチパネル2に同時にタッチされた場合には、指接触検出手段3により先に検出されたタッチが第1のタッチ検出信号として出力される。」
と記載され、参考資料2に
「【技術分野】【0001】本発明は、ユーザのタッチ操作を検出して振動する振動素子を備えた振動タッチパネル、及び当該振動タッチパネルを備える電子機器に関する。」
「【0004】この際、タッチが確実に行われたことをユーザに認識させて操作感を持たせるために、タッチしたボタンの色を変化させたり、ボタンをタッチした際に音を出すなどの技術がよく用いられている。また、このような操作感向上技術の一つとして、タッチした際にパネルが振動するように、振動素子を内蔵したタッチパネルも登場している。【0005】この技術は、例えば図4に点線Eで示すようなパネルの端部に振動素子を内蔵し、タッチ操作を検出した際にこの振動素子に電流を流すようにソフトウェア構成することで実現される。なお、振動素子は、マイクロモータや圧電アクチュエータなど様々なものがあり、タッチパネルの大きさや当該電子機器の設置場所などを考慮して、最適なものを使用する。【0006】ところで、この例のように振動素子を端部に備える構造を採用すると、パネルの点線Eと逆の端にあるボタンをタッチしたときなどに、振動がユーザにうまく伝わらないことがある。」
と記載されているように、参考資料1及び2には、ユーザーがタッチ入力操作を行ったときにタッチパネルを振動させることにより、このタッチ入力操作をユーザーにフィードバックして認識させる技術に関する文献であり、タッチパネルが積層された画面に表示された二次元平面画像に対応する入力部の部位に触れられることで、利用者の頭部に当接して振動を頭皮に伝播することで頭皮に皮膚反射を誘発させる伝達部材の対応する位置に配置されたリニア振動アクチュエータを選択し、振動パターンなどを設定することは記載されていない。
そして、甲1発明に上記参考資料1及び2に記載された技術を適用した場合、甲1発明の「タッチパネル」の操作に対するフィードバックを行うために、「タッチパネル」を振動させることにとどまり、上記相違点3に係る構成とすることには至らない。
そうすると、甲第1ないし5号証に記載された発明並びに参考資料1及び2に記載された周知技術に基づいて、訂正後の請求項1ないし4に係る発明は、進歩性を欠いているという、特許異議申立人梅田明子の主張は採用できない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-700244