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特許異議申立

2020-700097

感光性エレメント、感光性エレメントロール、レジストパターンの製造方法及び電子部品

審判番号
2020-700097
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2015-513771
登録番号
6561831
請求日
2020年02月21日
審決日
2021年12月13日
公報発行日
2022年05月27日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】日立化成株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】平野 裕之
  • 【権利者代理人】吉住 和之
  • 【権利者代理人】古下 智也
  • 【権利者代理人】清水 義憲
  • 【異議申立人】井上 暁彦
  • 【異議申立人】協明国際特許業務法人
審判長/審判官
  • 審判長 榎本 吉孝
  • 審判官 里村 利光
  • 審判官 井口 猶二
分類
P1651.121-ZAA(G03F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条、特許法第113条、特許法第120条の5第7項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6561831号発明「感光性エレメント、感光性エレメントロール、レジストパターンの製造方法及び電子部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6561831号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。 特許第6561831号の請求項1ないし9に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続等の経緯 特許第6561831号の請求項1~請求項9に係る特許(以下「本件特許」と総称する。)についての出願(特願2015-513771号)は、2014年(平成26年)4月22日(先の出願に基づく優先権主張 平成25年4月24日)を国際出願日とする出願であって、令和元年8月2日に特許権の設定の登録がされたものである。 本件特許について、令和元年8月21日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である令和2年2月21日に、本件特許のうち請求項1~請求項9に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」~「本件特許9」という。)に対して、特許異議申立人 井上 暁彦 及び 特許異議申立人 協明国際特許業務法人(以下、それぞれ「特許異議申立人1」及び「特許異議申立人2」といい、総称して「特許異議申立人」という。)から、特許異議の申立てがされた(異議2020-700097号、以下「本件事件」という。)。 その後の手続等の概要は、以下のとおりである。 令和2年5月20日付け:取消理由通知書 令和2年8月11日付け:訂正請求書 令和2年8月11日付け:意見書(特許権者) 令和2年9月30日付け:意見書(特許異議申立人1) 令和2年9月30日付け:意見書(特許異議申立人2) 令和3年2月18日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和3年4月30日付け:訂正請求書 令和3年4月30日付け:意見書(特許権者) 令和3年7月12日付け:意見書(特許異議申立人1) 令和3年7月15日付け:意見書(特許異議申立人2) なお、令和2年8月11日付け訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正請求について 令和3年4月30日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。 1 訂正の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、特許第6561831号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを求める、というものである。なお、本件訂正後の一群の請求項は、請求項1~9である。 2 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項を含むものである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記支持フィルム及びポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層」と記載されているのを、 「前記支持フィルム及びポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層(但し、メタクリル酸メチル/スチレン/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸共重合体(質量比:8/30/37/25、質量平均分子量:6万)を含有する感光層、及び、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(質量比:80/20、質量平均分子量:8万)を含有する感光層を除く)」に訂正する。 (上記除かれた感光層のうち、前者及び後者を、それぞれ「特定感光層1」及び「特定感光層2」といい、両者をまとめて「特定感光層」という。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し、」と記載されているのを、 「前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し、前記ポリプロピレンフィルムの厚さが100μm以下であり、」に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記第1の面及び前記第2の面の算術平均粗さRaが0.05μm以下であり、」と記載されているのを、 「前記第1の面及び前記第2の面の算術平均粗さRaが0.05μm以下であり、前記第1の面及び前記第2の面の最大高さRmaxが0.4μm以下であり、」に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記感光層の厚さが20μm未満である、感光性エレメント。」と記載されているのを、 「前記算術平均粗さRa及び前記最大高さRmaxが下記工程(a)~(e)の手順により測定され、前記感光層の厚さが9μm以下である、感光性エレメント(但し、支持体(A)、感光性樹脂層(B)及び保護層(C)からなる感光性樹脂積層体において、前記保護層(C)の膜厚が30μm以上50μmであることを特徴とする感光性樹脂積層体を除く)。 (a)前記ポリプロピレンフィルムから5cm×10cmの測定サンプルを切り出す。 (b)平坦なガラス基板(10cm×10cm)に水を1滴スポイトで垂らした後、気泡が入らないように前記測定サンプルをクリーンローラーで前記ガラス基板に圧着する。 (c)前記測定サンプルの長手方向の両端を重石で固定し、前記測定サンプルにおける測定領域(284.1μm×213.1μmの領域)を任意に10箇所選択する。 (d)形状測定レーザーマイクロスコープを用いて、対物レンズ50倍で測定領域を観察すると共に、算術平均粗さRa及び最大高さRmaxを測定した後、計10箇所の平均値を算出する。 (e)前記工程(a)~(d)を繰り返して測定値を計3回取得し、繰り返し3回の平均値を前記算術平均粗さRa及び前記最大高さRmaxとして採用する。」に訂正する。 (以下、上記除かれた感光性樹脂積層体を、「特定積層体」といい、上記測定手順(a)~(e)を、まとめて「本件測定手順」という。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2に、 「ポリプロピレンフィルムと、」と記載されているのを、 「ポリプロピレンフィルム(但し、厚さ12μmのポリプロピレンフィルム及び厚さ20μmのポリプロピレンフィルムを除く)と、」に訂正する。 (以下、上記除かれたポリプロピレンフィルムを、「特定ポリプロピレンフィルム」という。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項2に、 「前記感光層の厚さが20μm未満である、感光性エレメント。」と記載されているのを、 「前記最大高さRmaxが下記工程(a)~(e)の手順により測定され、前記感光層の厚さが5μm以下である、感光性エレメント。 (a)前記ポリプロピレンフィルムから5cm×10cmの測定サンプルを切り出す。 (b)平坦なガラス基板(10cm×10cm)に水を1滴スポイトで垂らした後、気泡が入らないように前記測定サンプルをクリーンローラーで前記ガラス基板に圧着する。 (c)前記測定サンプルの長手方向の両端を重石で固定し、前記測定サンプルにおける測定領域(284.1μm×213.1μmの領域)を任意に10箇所選択する。 (d)形状測定レーザーマイクロスコープを用いて、対物レンズ50倍で測定領域を観察すると共に、最大高さRmaxを測定した後、計10箇所の平均値を算出する。 (e)前記工程(a)~(d)を繰り返して測定値を計3回取得し、繰り返し3回の平均値を前記最大高さRmaxとして採用する。」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項3に、 「前記感光層の厚さが10μm以下である」と記載されているのを、 「前記感光層の厚さが5μm以下である」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項3に、 「請求項1又は2に記載の感光性エレメント。」と記載されているのを、 「請求項1に記載の感光性エレメント。」と訂正する。 なお、本件訂正請求は、一群の請求項〔1-9〕に対して請求されたものであって、訂正事項1~6に係る訂正により、請求項1又は請求項2を引用する請求項3~請求項9について、訂正事項7~8に係る訂正により、請求項3を引用する請求項4~請求項9について、それぞれ連動して訂正されることとなる。 3 訂正の許否判断 (1)訂正事項1 ア 訂正の目的 訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に係る発明の「感光層」から、特定感光層1及び特定感光層2という特定の態様の感光層を除外する訂正である。 したがって、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 イ 新規事項 訂正事項1の訂正内容及び上記アに示した訂正の目的からみて、この訂正は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 ウ 拡張又は変更 上記訂正内容からみて、この訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2)訂正事項2 ア 訂正の目的 訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1に係る発明の「ポリプロピレンフィルム」の厚さについてその範囲を「100μm以下」と限定するものである。 したがって、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 イ 新規事項 本件特許の明細書の【0064】及び【0070】には、それぞれ「保護フィルム30は、ポリプロピレンフィルムである。」及び「保護フィルム30の厚さは・・・中略・・・100μm以下が好ましく、」と記載されている。訂正事項2による訂正は、これらの記載に基づくものである。 そうしてみると、この訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 ウ 拡張又は変更 上記訂正内容からみて、この訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (3)訂正事項3 ア 訂正の目的 訂正事項3による訂正は、ポリプロピレンフィルムの第1の面及び第2の面について、その最大高さRmaxについてその範囲を「0.4μm以下」と限定するものである。 したがって、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 イ 新規事項 本件特許の明細書の【0064】及び【0068】には、それぞれ「保護フィルム30は、ポリプロピレンフィルムである。」及び「主面30a及び主面30bの最大高さ(Rmax)は・・・中略・・・0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、」と記載されている。訂正事項3による訂正は、これらの記載に基づくものである。 そうしてみると、この訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 ウ 拡張又は変更 上記訂正内容からみて、この訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (4)訂正事項4 ア 訂正の目的 訂正事項4による訂正は、[A]訂正前の請求項1に係る発明の「感光性エレメント」における「算術平均粗さRa」及び(訂正事項3による訂正で付加された)「最大高さRmax」の測定手順を、本件測定手順に限定する訂正、[B]訂正前の請求項1に係る発明の「感光層」の厚さを、訂正前の「20μm未満」から、「9μm以下」に限定する訂正及び[C] 訂正前の請求項1に係る発明の「感光性エレメント層」から、特定積層体を除外する訂正を含む。 上記訂正内容からみて、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 イ 新規事項 訂正事項4のうち上記[A]に係る訂正事項は、本件特許の明細書の【0064】における、「保護フィルム30は、ポリプロピレンフィルムである。」との記載及び【0069】における、「保護フィルム30の両面の算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rmax)は、例えば、下記の手順により測定できる。 (a)保護フィルムから5cm×10cmの測定サンプルを切り出す。 (b)平坦なガラス基板(10cm×10cm)に水を1滴スポイトで垂らした後、気泡が入らないように測定サンプルをクリーンローラーでガラス基板に圧着する。 (c)測定サンプルの長手方向の両端を重石で固定し、測定サンプルにおける測定領域(284.1μm×213.1μmの領域)を任意に10箇所選択する。 (d)形状測定レーザーマイクロスコープ(VK-X200、KEYENCE株式会社製)を用いて、対物レンズ50倍で測定領域を観察すると共に、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rmax)を測定した後、計10箇所の平均値を算出する。 (e)前記工程(a)~(d)を繰り返して測定値を計3回取得し、繰り返し3回の平均値を算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rmax)として採用する。」との記載に基づくものである。 また、訂正事項4のうち上記[B]に係る訂正事項は、本件特許の明細書の【0062】における、「感光層の厚さ(乾燥後の厚さ)は、・・・中略・・・9μm以下が特に好ましく」との記載に基づくものである。 さらに、訂正事項4のうち上記[C]に係る訂正は、その訂正内容からみて、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 以上によれば、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 ウ 拡張又は変更 上記訂正内容からみて、この訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (5)訂正事項5 ア 訂正の目的 訂正事項5よる訂正は、訂正前の請求項2に係る発明の「ポリプロピレンフィルム」のうち、厚さが「12μm」及び「20μm」である特定のポリプロピレンフィルムを除外する訂正である。 したがって、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 イ 新規事項 訂正事項5の訂正内容及び上記アに示した訂正の目的からみて、この訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 ウ 拡張又は変更 上記訂正内容からみて、この訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (6)訂正事項6 ア 訂正の目的 訂正事項6による訂正は、[A]訂正前の請求項2に係る発明の「感光性エレメント」の「最大高さRmax」の測定手順を、本件測定手順に限定する訂正及び[B]「感光層」の厚さを、「20μm未満」から、「5μm以下」に限定するものである。 したがって、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 イ 新規事項 訂正事項6による訂正のうち上記[A]に係る訂正は、訂正事項4と同様の理由により、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 また、本件特許の明細書の【0062】には、「感光層20の厚さ(乾燥後の厚さ)は、20μm未満であることが好ましい。」と記載され、その上限値が示されるとともに、【0111】には、実施例1の感光性エレメントについて「乾燥後の厚さが5μmである感光層を形成した。」と記載されている。 そうしてみると、また、訂正事項6による訂正のうち上記[B]に係る訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 ウ 拡張又は変更 上記訂正内容からみて、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (7)訂正事項7 ア 訂正の目的 訂正事項7よる訂正は、訂正前の請求項3に係る発明の「感光層の厚さ」について、「10μm以下」から、「5μm以下」へと数値範囲を限定するものである。 したがって、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 イ 新規事項 上記「(6)イ」と同様の理由により、この訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。 したがって、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 ウ 拡張又は変更 上記訂正内容からみて、この訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (8)訂正事項8 ア 訂正の目的 訂正事項8による訂正は、訂正前の請求項3が択一的に引用していた請求項1及び請求項2から、請求項2を削除するものである。 したがって、この訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とするものである。 イ 新規事項 上記訂正内容からみて、この訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。 したがって、この訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でしたものである。 ウ 拡張又は変更 上記訂正内容からみて、この訂正により、訂正前の特許請求の範囲には含まれない発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることにならないことは明らかである。 したがって、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (9)訂正の許否判断のまとめ 本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものである。また、同訂正は、同条第9項で準用する同法126条5項~6項の規定に適合する。 よって、結論に記載のとおり、特許第6561831号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~9について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正請求による訂正は認められることとなったことから、本件特許の請求項1~請求項9に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明9」という。)は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1~請求項9に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。 「【請求項1】 支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層(但し、メタクリル酸メチル/スチレン/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸共重合体(質量比:8/30/37/25、質量平均分子量:6万)を含有する感光層、及び、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(質量比:80/20、質量平均分子量:8万)を含有する感光層を除く)と、を備え、 前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し、 前記ポリプロピレンフィルムの厚さが100μm以下であり、 前記第1の面及び前記第2の面の算術平均粗さRaが0.05μm以下であり、 前記第1の面及び前記第2の面の最大高さRmaxが0.4μm以下であり、 前記算術平均粗さRa及び前記最大高さRmaxが下記工程(a)~(e)の手順により測定され、 前記感光層の厚さが9μm以下である、感光性エレメント。(但し、支持体(A)、感光性樹脂層(B)及び保護層(C)からなる感光性樹脂積層体において、前記保護層(C)の膜厚が30μm以上50μmであることを特徴とする感光性樹脂積層体を除く)。 (a)前記ポリプロピレンフィルムから5cm×10cmの測定サンプルを切り出す。 (b)平坦なガラス基板(10cm×10cm)に水を1滴スポイトで垂らした後、気泡が入らないように前記測定サンプルをクリーンローラーで前記ガラス基板に圧着する。 (c)前記測定サンプルの長手方向の両端を重石で固定し、前記測定サンプルにおける測定領域(284.1μm×213.1μmの領域)を任意に10箇所選択する。 (d)形状測定レーザーマイクロスコープを用いて、対物レンズ50倍で測定領域を観察すると共に、算術平均粗さRa及び最大高さRmaxを測定した後、計10箇所の平均値を算出する。 (e)前記工程(a)~(d)を繰り返して測定値を計3回取得し、繰り返し3回の平均値を前記算術平均粗さRa及び前記最大高さRmaxとして採用する。 【請求項2】 支持フィルムと、ポリプロピレンフィルム(但し、厚さ12μmのポリプロピレンフィルム及び厚さ20μmのポリプロピレンフィルムを除く)と、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え、 前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し、 前記第1の面及び前記第2の面の最大高さRmaxが0.5μm以下であり、 前記最大高さRmaxが下記工程(a)~(e)の手順により測定され、 前記感光層の厚さが5μm以下である、感光性エレメント。 (a)前記ポリプロピレンフィルムから5cm×10cmの測定サンプルを切り出す。 (b)平坦なガラス基板(10cm×10cm)に水を1滴スポイトで垂らした後、気泡が入らないように前記測定サンプルをクリーンローラーで前記ガラス基板に圧着する。 (c)前記測定サンプルの長手方向の両端を重石で固定し、前記測定サンプルにおける測定領域(284.1μm×213.1μmの領域)を任意に10箇所選択する。 (d)形状測定レーザーマイクロスコープを用いて、対物レンズ50倍で測定領域を観察すると共に、最大高さRmaxを測定した後、計10箇所の平均値を算出する。 (e)前記工程(a)~(d)を繰り返して測定値を計3回取得し、繰り返し3回の平均値を前記最大高さRmaxとして採用する。 【請求項3】 前記感光層の厚さが5μm以下である、請求項1に記載の感光性エレメント。 【請求項4】 400~700nmの波長域における平均光透過率が80%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の感光性エレメント。 【請求項5】 前記感光層が、バインダーポリマー、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の感光性エレメント。 【請求項6】 透明基材上に硬化物を形成するために用いられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の感光性エレメント。 【請求項7】 巻芯と、当該巻芯に巻回された感光性エレメントと、を備え、 前記感光性エレメントが、請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性エレメントである、感光性エレメントロール。 【請求項8】 請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性エレメントの前記ポリプロピレンフィルムを剥離した後に前記感光層及び前記支持フィルムを基材上に積層する工程と、 前記感光層の所定部分に活性光線を照射して光硬化部を形成する工程と、 前記感光層における前記光硬化部以外の部分を除去する工程と、を備える、レジストパターンの製造方法。 【請求項9】 請求項1~6のいずれか一項に記載の感光性エレメントの前記感光層の硬化物を備える、電子部品。」 第4 取消しの理由の概要及び証拠 1 取消しの理由 令和3年2月18日付け取消理由通知(決定の予告)により、特許権者に対して、当合議体が通知した取消しの理由の概要は、下記のとおりである。 記 (進歩性)本件特許の請求項1~9に係る発明は、先の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 記 甲1A:特開2002-229200号公報 甲2A:特開2000-330290号公報 甲3A:特開2002-268229号公報 甲4A:国際公開第2013/051516号公報 甲5A:特開平10-282655号公報 甲6A:特開2012-198527号公報 甲1B:特開2012-8571号公報 甲2B:特開2005-74632号公報 甲3B:特開平11-153861号公報 参考資料1:特開平11-157235号公報 参考資料2:特開2017-65182号公報 参考資料3:特開2002-229200号公報 (当合議体注1:甲2A、甲1B、甲2B及び甲3Bは、それぞれ主引用例であり、甲3Aは副引用例である。甲1A、甲4A、甲5A、甲6A及び甲1Bは、周知技術を示すための文献である。また、参考資料1~参考資料3は、主引用例に記載された発明における保護フィルムの表面粗さを裏付けるための文献である。なお、参考資料3は、甲1Aと同一の文献である。) 2 その他の証拠について (1)特許異議申立人1が提出した証拠 特許異議申立人1は、上記の他、以下の証拠も提出している。 参考資料4:王子エフテックス株式会社の製品カタログ(2008年3月)アルファン特殊工業用OPPフィルム,2008年3月,王子特殊紙株式会社 参考資料5:特開2012-63376号公報 参考資料6:特開2012-103425号公報 参考資料7:特開2013-141820号公報 参考資料8:特開2000-330291号公報 参考資料9:特開2009-128759号公報 (2)特許異議申立人2が提出した証拠 特許異議申立人2は、上記の他、以下の証拠も提出している。 参考資料A:”ALPHAN アルファン ハイグレードタイプ(工業用)二軸延伸ポリプロピレンフィルム”,王子エフテックス株式会社,[online],、[令和2年9月24日検索],インターネット<http://www.ojif-tex.co.jp/alphan/pdf/pro/function_film.pdf> 参考資料B:特開2013-22803号公報 参考資料C:佐々木信也,”摩擦面の計測と分析|表面試験測定分析BOX|ジュンツウネット21”,1/9~9/9頁,,[online],[令和2年9月24日検索],インターネット<https://www.juntsu.co.jp/surface/surface_kaisetsu01.php> 参考資料D:国際公開第2007/105644号 第5 当合議体の判断 1 甲2Aを主引用例とした場合 (1)甲2Aの記載 取消しの理由で引用された甲2Aには、次の事項が記載されている。 なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。 ア 「【請求項1】 支持フィルム(a)、感光性樹脂組成物層(b)及び保護フィルム(c)から成る感光性エレメントにおいて、感光性樹脂組成物層(b)が、(A)バインダーポリマー、(B)重合可能なエチレン性不飽和基の濃度が、(A)成分及び(B)成分の総量100gに対して、0.12~0.26モルである光重合性化合物並びに(C)光重合開始剤を含有してなり、かつ、保護フィルム(c)中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイの個数が、5個/m2以下である感光性エレメント。【請求項2】 保護フィルム(c)がポリプロピレンフィルムである請求項1記載の感光性エレメント。 【請求項3】 請求項1又は2記載の感光性エレメントを、回路形成用基板上に感光性樹脂組成物層が密着するようにして積層し、活性光線を画像状に照射し、露光部を光硬化させ、未露光部を現像により除去することを特徴とするレジストパターンの製造法。 【請求項4】請求項3記載のレジストパターンの製造法により、レジストパターンの製造された回路形成用基板をエッチング若しくはめっきすることを特徴とするプリント配線板又はリードフレームの製造法。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、感光性エレメント、これを用いたレジストパターンの製造法、プリント配線板の製造法及びリードフレームの製造法に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、半導体素子の軽薄短小化、少量多品種化傾向に伴い、ICチップをプリント基板上に搭載するために用いられるリードフレームの多ピン化、狭小化が急速に進んでいる。リードフレームの製造方法としては、スタンピング法及び、エッチング法があるが、スタンピング法では小型化に伴う狭小品の製造が困難であり、少量多品種化に伴い金型代が高価となるため、少量多品種化には狭小品の製造が可能で金型の不要なエッチング法が有利である。エッチング法で用いられる感光性樹脂組成物には、水溶性液状感光性樹脂組成物、溶剤含有型液状感光性樹脂組成物、感光性エレメント等がある。 ・・・中略・・・ 【0009】 【発明が解決しようとする課題】請求項1又は2記載の発明は、エアーボイドの発生数が低減するため歩留り良く積層することができ、かつ剥離特性、ラミネート性、保存安定性及び作業性が極めて優れる感光性エレメントを提供するものである。請求項3記載の発明は、リードフレームやBGAの多ピン化、狭小化及びこれらの半導体パッケージを搭載するプリント配線の高密度化に極めて有用な、エアーボイドの発生数が低減するため歩留り良く積層することができ、かつ剥離特性、ラミネート性、保存安定性及び作業性が優れたレジストパターンの製造法を提供するものである。請求項4記載の発明は、リードフレームやBGAの多ピン化、狭小化及びこれらの半導体パッケージを搭載するプリント配線の高密度化に極めて有用な、エアーボイドの発生数が低減するため歩留り良く積層することができ、かつ剥離特性、ラミネート性、保存安定性及び作業性が優れたレジストパターンを有するプリント配線板又はリードフレームの製造法を提供するものである。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、支持フィルム(a)、感光性樹脂組成物層(b)及び保護フィルム(c)から成る感光性エレメントにおいて、感光性樹脂組成物層(b)が、(A)バインダーポリマー、(B)重合可能なエチレン性不飽和基の濃度が、(A)成分及び(B)成分の総量100gに対して、0.12~0.26モルである光重合性化合物並びに(C)光重合開始剤を含有してなり、かつ、保護フィルム(c)中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイの個数が、5個/m2以下である感光性エレメントに関する。また、本発明は、保護フィルム(c)がポリプロピレンフィルムである前記感光性エレメントに関する。 【0011】また、本発明は、前記感光性エレメントを、回路形成用基板上に感光性樹脂組成物層が密着するようにして積層し、活性光線を画像状に照射し、露光部を光硬化させ、未露光部を現像により除去することを特徴とするレジストパターンの製造法に関する。また、本発明は、前記レジストパターンの製造法により、レジストパターンの製造された回路形成用基板をエッチング若しくはめっきすることを特徴とするプリント配線板又はリードフレームの製造法に関する。」 ウ 「【0012】 【発明の実施の形態】本発明における支持フィルム(a)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムが挙げられ、透明性の見地からは、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。また、入手可能なものとしては、例えば、帝人(株)製テトロンフィルムGSシリーズ、デュポン社製マイラーフィルムDシリーズ等のポリエステルフィルム等が挙げられる。支持フィルムの膜厚は、1~100μmであることが好ましく、12~25μmであることがより好ましい。この膜厚が1μm未満では機械的強度が低下するため、塗工時の支持フィルムが破れるなどの問題が発生する傾向があり、100μmを超えると解像度の低下及び価格が高くなる傾向がある。これらの支持フィルムは、後に感光性樹脂組成物層から除去可能でなくてはならないため、除去が不可能となるような表面処理が施されたものであったり、材質であったりしてはならない。 ・・・中略・・・ 【0034】本発明の感光性樹脂組成物は、特に制限はないが、金属面、例えば、銅、銅系合金、ニッケル、クロム、鉄、ステンレス等の鉄系合金、好ましくは銅、銅系合金、鉄系合金の表面上に、液状レジストとして塗布して乾燥後、必要に応じて保護フィルムを被覆して用いるか、感光性エレメントの形態で用いられることが好ましい。 【0035】感光性樹脂組成物層(b)の厚みは、1~50μmであることが好ましく、5~30μmであることがより好ましく、10~25μmであることがより好ましい。この厚みが1μm未満では追従性が低下し、欠け、断線が発生する傾向があり、50μmを超えると解像度が悪化する傾向がある。 ・・・中略・・・ 【0038】本発明における保護フィルム(c)は、保護フィルム(c)中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイの個数は5個/m2以下でああることが必要である。また、保護フィルム(c)の表面粗さとしては、中心線平均粗さRaが0.005~0.05μmであることが好ましく、0.01~0.03μmであることがより好ましい。なお、フィシュアイとは、材料を熱溶融、混練し、押し出し延伸又はキャスティング法によりフィルムを製造する際に、材料の異物、未溶解物、酸化劣化物等がフィルム中に取り込まれたものである。なお、本発明における表面粗さは、JIS B0601における表面粗さを表す。また、本発明におけるRaは中心線平均粗さを表し、Rmaxは最大高さを表す。 ・・・中略・・・ 【0040】保護フィルム(c)の厚みは1~100μmであることが好ましく、5~50μmであることがより好ましく、15~50μmであることが特に好ましい。この厚みが1μm未満では保護フィルムの強度が不十分なため、感光性樹脂組成物層に保護フィルムを張り合わせる際に、破断しやすい傾向があり、100μmを超えると価格が高くなり、保護フィルムをラミネートする際にシワが発生しやすい傾向がある。 【0041】このような保護フィルムは市販のものとして、例えば、王子製紙(株)製アルファンMA-410、E-200C、信越フィルム社製等のポリプロピレンフィルム、帝人(株)製PS-25等のPSシリーズなどのポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられるがこれに限られたものではない。また、市販のフィルムをサンドブラスト加工することにより、簡単に製造することが可能である。」 (当合議体注:上記【0038】における「5個/m2以下であある」は、「5個/m2以下である」の誤記である。) エ 「【0052】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。 実施例1~3及び比較例1~2 表1に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分及びその他の成分を混合し、感光性樹脂組成物の溶液を調製した。 【0053】 【表1】 [図:0001384017000001.jpg] 【0054】次いでこの感光性樹脂組成物の溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流乾燥機で約5分間乾燥し、表2に示す各保護フィルムをラミネートし感光性エレメントを得た。感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は17μmであった。上記で作製した感光性エレメントの(B)光重合性化合物の重合可能なエチレン性不飽和基の濃度を前記関係式(1)から算出した結果を表2に示す。 【0055】次いで、厚さ0.15mm厚、20×20cm角の銅合金(ヤマハオーリンメタル社製:MP-7025)を、3重量%水酸化ナトリウム水溶液、50℃に1分間浸漬し、次いで1体積%塩酸水溶液、25℃に1分間浸漬し、その後水洗、乾燥し、得られた基板上に前記感光性エレメントの保護フィルムを除去しながら、ロール温度:110℃、圧力:0.4MPa、速度:2m/分でラミネートした。次いで、このようにして得られた基板を、3kWの超高圧水銀灯((株)オーク製作所製、HMW-201GX)で50mJ/cm2の露光を行い、1重量%の無水炭酸ナトリウム水溶液で30秒間スプレー現像し、水洗、乾燥した。 【0056】露光後の基板を40mm×50mm角にし、その基板を2重量%水酸化ナトリウム水溶液、50℃に浸漬し、感光性樹脂組成物層が基板から剥離する時間を測定し、その結果を表2に示す。 【0057】また、露光時に基板を50mm×100mm角にし、そこにハーフエッチング用ネガを使用し上記露光条件で露光し、上記現像条件で現像する。次いで、塩化第二鉄(45Be、遊離塩酸濃度0.3%、ORP値620mV)、50℃で300秒間エッチングをし、微小径(100~300μm)、深さ60~100μmのハーフエッチング部を作製する。次いで、2重量%水酸化ナトリウム水溶液でハーフエッチング部を作製した基板から感光性樹脂組成物層を剥離し、1重量%の硫酸でスプレー処理し、水洗、乾燥した。その基板のハーフエッチング部に残留した感光性樹脂組成物(以後、剥離残りと称する)を実体顕微鏡100倍にて計測する。その結果を表2に示す。 【0058】 【表2】 [図:0001384017000002.jpg] 【0059】一方、厚さ0.15mm厚、20×20cm角の銅合金(ヤマハオーリンメタル社製:MP-7025)を、3重量%水酸化ナトリウム水溶液、50℃に1分間浸漬し、次いで1体積%塩酸水溶液、25℃に1分間浸漬し、その後水洗、乾燥し、得られた基板上に前記感光性エレメントの保護フィルムを除去しながら、ロール温度:110℃、圧力:0.4MPa、速度:2m/分でラミネートした。次いで、このようにして得られた基板を、3kWの超高圧水銀灯((株)オーク製作所製、HMW-201GX)で50mJ/cm2の露光を行った。 【0060】露光後の基板上のエアーボイド数を100倍の顕微鏡を用いて測定した。また、各保護フィルムのフィッシュアイの大きさ及び数を100倍の顕微鏡を用いて測定した。結果を表3にまとめて示す。 【0061】 【表3】 [図:0001384017000003.jpg] 【0062】表3から明らかなように、保護フィルム(C)として、直径80μm以上のフィッシュアイ個数が5個/m2以下のフィルムを使用することにより、断線、欠けの原因となるエアーボイドの発生数が減少することが分かる。 【0063】 【発明の効果】請求項1又は2記載の感光性エレメントは、エアーボイドの発生数が低減するため歩留り良く積層することができ、かつ剥離特性、ラミネート性、保存安定性及び作業性が極めて優れる。請求項3記載のレジストパターンの製造法は、リードフレームやBGAの多ピン化、狭小化及びこれらの半導体パッケージを搭載するプリント配線の高密度化に極めて有用な、エアーボイドの発生数が低減するため歩留り良く積層することができ、かつ剥離特性、ラミネート性、保存安定性及び作業性が優れる。請求項4記載のプリント配線板又はリードフレームの製造法は、リードフレームやBGAの多ピン化、狭小化及びこれらの半導体パッケージを搭載するプリント配線の高密度化に極めて有用な、エアーボイドの発生数が低減するため歩留り良く積層することができ、かつ剥離特性、ラミネート性、保存安定性及び作業性が優れる。」 (当合議体注:上記【0054】の「表2に示す各保護フィルムをラミネートし感光性エレメントを得た。」の「表2」は、「表3」の誤記である。) (2)甲2Aに記載された発明 ア 甲2A実施例発明 上記(1)によれば、甲2Aの【0052】~【0054】及び【表3】によれば、甲2Aには、実施例1として、以下の感光性エレメントの発明(以下「甲2A実施例発明」という。)が記載されている。 「感光性樹脂組成物の溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流乾燥機で約5分間乾燥し、E-200C:ポリプロピレンフィルム(王子製紙(株)製)の保護フィルムをラミネートして得、感光性樹脂組成物層の乾燥後の膜厚は17μmである、感光性エレメント。 ここで、感光性樹脂組成物は、以下に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分及びその他の成分を混合し、感光性樹脂組成物の溶液を調製したものである。 (A)成分:メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルを重量比25:50:5:20の割合で共重合させた、共重合体をメチルセルソルブ/トルエン(6/4、重量比)に不揮発成分40重量%になるように溶解させた溶液を150g、 (B)成分:2,2-ビス(4-メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンを30gと、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の繰り返し数は4)を10g、 (C)成分:ベンゾフェノンを5.0gと、N,N-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノンを0.3g、 その他の成分:トリブロモメチルフェニルスルホンを1.0gと、ロイコクリスタルバイオレットを1.0gと、マラカイトグリーンを0.1g」 イ 甲2A方法発明 また、甲2Aには、請求項1及び2を引用する請求項3に係る発明として、次のレジストパターンの製造法の発明(以下「甲2A方法発明」という。)が記載されている。 「支持フィルム(a)、感光性樹脂組成物層(b)及び保護フィルム(c)から成る感光性エレメントにおいて、感光性樹脂組成物層(b)が、(A)バインダーポリマー、(B)重合可能なエチレン性不飽和基の濃度が、(A)成分及び(B)成分の総量100gに対して、0.12~0.26モルである光重合性化合物並びに(C)光重合開始剤を含有してなり、かつ、保護フィルム(c)中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイの個数が、5個/m2以下である感光性エレメントにおいて、保護フィルム(c)がポリプロピレンフィルムである、感光性エレメントを、回路形成用基板上に感光性樹脂組成物層が密着するようにして積層し、活性光線を画像状に照射し、露光部を光硬化させ、未露光部を現像により除去するレジストパターンの製造法。」 ウ 甲2A発明 また、甲2Aには、請求項1を引用する請求項2に係る発明として、次の発明(以下「甲2A発明」という。)が記載されている。 「支持フィルム(a)、感光性樹脂組成物層(b)及び保護フィルム(c)から成る感光性エレメントにおいて、感光性樹脂組成物層(b)が、(A)バインダーポリマー、(B)重合可能なエチレン性不飽和基の濃度が、(A)成分及び(B)成分の総量100gに対して、0.12~0.26モルである光重合性化合物並びに(C)光重合開始剤を含有してなり、かつ、保護フィルム(c)中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイの個数が、5個/m2以下であり、保護フィルム(c)がポリプロピレンフィルムである、感光性エレメント。」 (3)甲3Aの記載 取消しの理由で引用された甲3Aには、次の事項が記載されている。 なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。 ア 「【請求項1】 支持体(A)、感光性樹脂層(B)、および保護層(C)からなる感光性樹脂積層体において、前記保護層(C)の膜厚が30μm以上50μm以下であり、かつ中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm未満であることを特徴とする感光性樹脂積層体。 【請求項2】 保護層(C)がポリエチレンフィルムである請求項1記載の感光性樹脂積層体。 【請求項3】 基板上に、請求項1または2記載の感光性樹脂積層体を用いて感光性樹脂層を形成し、露光工程、現像工程によりレジストパターンを形成する方法。 【請求項4】 請求項3記載の方法によりレジストパターンを形成された基板を、エッチングするかまたはめっきすることによりプリント配線板、リードフレーム、パッケージを製造する方法。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はプリント配線板、リードフレームや、BGA、CSP等のパッケージを製造する際に、好適に用いられる感光性樹脂積層体に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、パソコンや携帯電話等の電子機器の軽薄短小化の流れが加速し、これに搭載されるプリント配線板やリードフレームやBGA、CSP等のパッケージには狭ピッチのパターンが要求されている。これらのプリント配線板等の製造用のレジストとして、従来より、支持体と感光性樹脂層と保護層から成る、いわゆるドライフィルムレジスト(以下DFRと略称)が用いられている。DFRは、一般に支持体上に感光性樹脂層を積層し、さらに該感光性樹脂層上に保護層を積層することにより調製される。ここで用いられる感光性樹脂層としては、現在、現像液として弱アルカリ水溶液を用いるアルカリ現像型のものが一般的である。 ・・・中略・・・ 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点を克服し、基板にDFRをラミネートした際にエアーボイドの発生が少なく、露光、現像工程におけるレジストパターンの欠陥や、続くエッチング工程またはめっき工程において形成される回路の欠けや断線、ショートなどの欠陥の低減が可能であり、また、感光性樹脂層上に保護層を積層して感光性樹脂積層体を製造する際に、感光性樹脂層が保護層と密着しやすい感光性樹脂積層体を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、支持体(A)、感光性樹脂層(B)、および保護層(C)からなる感光性樹脂積層体において、前記保護層(C)の膜厚が30μm以上50μm以下であり、かつ中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm未満であることを特徴とする感光性樹脂積層体を提供するものである。 ・・・中略・・・ 【0010】本発明の感光性樹脂層(B)は公知のものを使用することができるが、通常(i)アルカリ可溶性高分子、(ii)エチレン性不飽和付加重合性モノマー、(iii)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物よりなる、感光性樹脂層が用いられる。 (i)成分のアルカリ可溶性高分子としてはカルボン酸含有ビニル共重合体やカルボン酸含有セルロース等が挙げられる。 ・・・中略・・・ 【0025】本発明の感光性樹脂層(B)の膜厚は、5μm以上30μm以下であることが好ましい。5μmより薄い場合基板への充分な追従性が得られないし、30μmより厚いと解像度の点から好ましくない。より好ましい膜厚は6μm以上25μm以下である。本発明の保護層(C)は膜厚が30μm以上50μm以下であり、かつ表面粗さにおいて中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm未満であることが必要である。膜厚が30μmより薄いとエアーボイドが発生しやすくなる。膜厚が50μmより厚いと感光性樹脂積層体をロール状に巻いた場合嵩張るし、保護層の値段も高くなる。また膜厚が30μm以上であると、感光性樹脂積層体のエッジフュージョンが抑制される為好ましい。より好ましい膜厚は、33μm以上45μm以下である。中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm以上であると感光性樹脂層と保護層の充分な密着性が得られないし、エアーボイドが発生しやすくなる。より好ましい中心線平均粗さ(Ra)は0.085μm以下である。 【0026】また、本発明の保護層(C)の表面粗さにおいて最大高さ(Rmax)が1.0μm未満であることが好ましい。ここでいう表面粗さにおける、中心線平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rmax)は、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope)で測定される中心線平均粗さ及び最大高さをいう。本発明の保護層(C)に用いられるフィルムとしては、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルムや、ポリエステルフィルム等が挙げられる。フィルムの剛性が小さい為、フィルムより突き出たフィッシュアイが感光性樹脂層の窪みになりにくい点で、ポリエチレンフィルムがより好ましい。」 ウ 「【0033】 【発明の実施の形態】以下、実施例により本発明の実施の形態をさらに詳しく説明する。実施例及び比較例における評価は次の方法により行った。 【0034】 【実施例1~5および比較例1】(1)基本評価 (感光性樹脂積層体の作成)表1に示す組成の感光性樹脂組成物を混合し、厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムにバーコーターを用いて均一に塗布し、90℃の乾燥機中に2分間乾燥して感光性樹脂層を形成した。感光性樹脂層の厚みは10μmであった。 【0035】感光性樹脂層のポリエチレンテレフタレートフィルムを積層していない表面上に表2に示すポリエチレンフィルムを張り合わせて感光性樹脂積層体を得た。 (基板の前処理)450mm×500mmの大きさで、厚さ0.15mmの銅合金基板(古河電工製 EFTEC 64T)を、50℃の3%NaOH水溶液に60秒浸漬した後、水洗・乾燥した。 (ラミネート)感光性樹脂積層体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、前処理した銅合金基板に2段式ホットロールラミネーター(旭化成製AL-700)により前段ロール100℃、後段ロール100℃でラミネートした。ラミネーターのロール圧力はエアーゲージ表示で0.30MPaとし、ラミネート速度は4.0m/分とした。 ・・・中略・・・ 【0038】 ・・・中略・・・ (5)保護層の中心線平均粗さ(Ra)の測定 原子間力顕微鏡EXPLORER SPM(Thermo Microscopes社製)を使用し、Si3N4製コンタクトAFM用プローブで測定モードをContact AFMに設定した。75μm×75μmの測定エリアをプローブで300回往復させて中心線平均粗さ(Ra)を測定した。 ・・・中略・・・ 【0044】 【発明の効果】本発明の感光性樹脂積層体は、基板にDFRをラミネートした際にエアーボイドの発生が少なく、露光、現像工程におけるレジストパターンの欠陥や、続くエッチング工程またはめっき工程において形成される回路の欠けや断線、ショートなどの欠陥の低減が可能であり、また、感光性樹脂層上に保護層を積層して感光性樹脂積層体を製造する際に、感光性樹脂層が保護層と密着しやすいという効果を有する。」 (4)甲3Aに記載された技術的事項 上記(3)によれば、甲3Aには、特に、保護層(C)の好ましい表面粗さRa及び最大高さRmaxについて、以下の 事項が記載されている。 ア 「本発明の感光性樹脂層(B)の膜厚は、5μm以上30μm以下であることが好ましい。5μmより薄い場合基板への充分な追従性が得られないし、30μmより厚いと解像度の点から好ましくない。より好ましい膜厚は6μm以上25μm以下である。本発明の保護層(C)は膜厚が30μm以上50μm以下であり、かつ表面粗さにおいて中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm未満であることが必要である。・・・中略・・・中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm以上であると感光性樹脂層と保護層の充分な密着性が得られないし、エアーボイドが発生しやすくなる。より好ましい中心線平均粗さ(Ra)は0.085μm以下である。」(【0025】) イ 「本発明の保護層(C)の表面粗さにおいて最大高さ(Rmax)が1.0μm未満であることが好ましい。」(【0026】) (5)対比 本件特許発明1と甲2A実施例発明を対比すると、以下のとおりである。 ア 支持フィルム 甲2A実施例発明の「感光性エレメント」は、「感光性樹脂組成物の溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流乾燥機で約5分間乾燥し、E-200C:ポリプロピレンフィルム(王子製紙(株)製)の保護フィルムをラミネートして得」たものである。 上記積層構造によれば、甲2A実施例発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「感光性樹脂組成物層」及び「保護フィルム」とを支持するフィルムといえる。 そうしてみると、甲2A実施例発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、その機能からみて、本件特許発明1の「支持フィルム」に相当する。 イ 感光層及びポリプロピレンフィルム 甲2A実施例発明の「E-200C:ポリプロピレンフィルム(王子製紙(株)製)の保護フィルム」は、その機能及び材質からみて、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」に相当する。 また、甲2A実施例発明の「感光性樹脂組成物層」は、「(A)成分、(B)成分、(C)成分及びその他の成分を混合し、感光性樹脂組成物の溶液を調製したものである。」 ここで、上記「(A)成分、(B)成分、(C)成分及びその他の成分」は、上記「(2)ア」で示したとおりであるから、特定感光層に該当しない。 そうしてみると、甲2A実施例発明の「感光性樹脂組成物層」は、本件特許発明1の「感光層」に相当し、「メタクリル酸メチル/スチレン/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸共重合体(質量比:8/30/37/25、質量平均分子量:6万)を含有する感光層、及び、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(質量比:80/20、質量平均分子量:8万)を含有する感光層を除く」との要件を満たす。 さらに、上記アの積層構造からみて、甲2A実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」は、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」における、「感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し」との要件を満たす。 加えて、甲2A実施例発明の「感光性樹脂組成物層」は、本件特許発明1の「感光層」における、「前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された」との要件を満たす。 ウ 感光性エレメントの全体構成 甲2A実施例発明の「感光性エレメント」は、技術的にみて、本件特許発明1の「感光性エレメント」に相当する。 そうしてみると、上記アの積層構造及び上記ア~イの対比結果から、甲2A実施例発明の「感光性エレメント」は、本件特許発明1の「感光性エレメント」における、「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え」との要件を満たす。 (6)一致点及び相違点 ア 一致点 上記(5)によれば、本件特許発明1と甲2A実施例発明は、次の構成で一致する。 「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層(但し、メタクリル酸メチル/スチレン/メタクリル酸ベンジル/メタクリル酸共重合体(質量比:8/30/37/25、質量平均分子量:6万)を含有する感光層、及び、メタクリル酸メチル/メタクリル酸共重合体(質量比:80/20、質量平均分子量:8万)を含有する感光層を除く)と、を備え、 前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有する、 感光性エレメント。」 イ 相違点 本件特許発明1と甲2A実施例発明は、次の点で、一応相違する。 (相違点2A-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明1では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.4μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲2A実施例発明では、これらの値が一応不明であって、その測定手順も特定されていない点。 (相違点2A-2) 「感光層」が、本件特許発明1は、「厚さが9μm以下」であるのに対して、甲2A実施例発明は、「膜厚は17μmであ」る点。 (相違点2A-3) 本件特許発明1が、「ポリプロピレンフィルムの厚さが100μm以下であり」という要件及び特定積層体を除くという要件を満たすのに対して、甲2A実施例発明は、上記2つの要件を満たすものか一応明らかでない点。 (7)判断 技術的な関連性に鑑み、(相違点2A-1)~(相違点2A-3)について、まとめて検討する。 ア Ra及びRmaxとエアーボイドの関係 甲3Aには、「本発明の保護層(C)は膜厚が30μm以上50μm以下であり、かつ表面粗さにおいて中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm未満であることが必要である。・・・中略・・・中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm以上であると感光性樹脂層と保護層の充分な密着性が得られないし、エアーボイドが発生しやすくなる。より好ましい中心線平均粗さ(Ra)は0.085μm以下である。」(【0025】)と記載され、さらに続けて、「本発明の保護層(C)の表面粗さにおいて最大高さ(Rmax)が1.0μm未満であることが好ましい。」(【0026】)と記載されている。(上記(4)の「甲3Aに記載された技術的事項」を参照。) 上記記載及び本件出願の明細書の記載(例えば、【0005】~【0007】等)から、保護フィルムのRa及びRmaxが小さいほどエアーボイドの発生が抑制されることは先の出願時における技術常識であるいえる。(当合議体注:Rmaxについては、甲3Aには、最大高さRmaxとエアーボイドの発生についての明示の記載はないものの、技術的にみて自明であるし、例えば、本件出願の明細書の【0005】~【0007】等の記載(保護フィルムにおける感光層との接触面の形状が感光層に転写される場合があることが知られている旨の記載)からも理解できる事項である。) ここで、上記下線部の「小さいほど」という点について、さらに検討する。 甲1Aの【0010】や【0053】【表2】(特に、比較例3及び4)等の記載によれば、保護フィルムの巻き取りしわの発生防止の観点からは、保護フィルムのRaには好ましい下限値が存在することが示唆される。しかしながら、甲2Aに記載された発明(甲2実施例発明及び甲2A発明)や本件特許発明(下限値が請求項において特定されておらず、さらに明細書を参酌しても当該下限値の技術的意義が何ら記載されていないもの)のように、エアーボイドの発生防止に専ら視座を置いた発明においては、下限値を敢えて意識する必要はないのであって、むしろ、前記【表2】(特に、比較例1~4)の記載からは、少なくとも0.02μm程度まではRaを小さくするほど、エアーボイドの発生防止の効果が得られることが、先の出願時の当業者の技術常識であったと認めるのが相当といえる。 イ 感光層の厚さとエアーボイドの関係 また、感光層の厚さが薄いほど、エアーボイドが発生しやすいことも技術常識(必要ならば、甲2Aの【0007】、甲3Aの【0005】及び甲3Bの【0005】等を参照。)であるから、求められる半導体装置における薄型化及び狭小化の要請にしたがって、感光性樹脂組成物層の厚さを薄くすべき場合には、その分、Ra及びRmaxを小さく調整すべきことは当業者が当然に心得ている技術常識といえる。 ウ 先の出願時における保護層(保護フィルム)の取引の実情 さらに、先の出願時における、保護層(保護フィルム)の取引の実情について、次のような事情があったと認められる。 [A]Ra及びRmaxが、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.4μm以下」である保護層(保護フィルム)は、例えば、参考文献3(【0053】に記載された「G2-16」等を参照。)に記載されているように、商業的に入手可能であったこと。 [B]工業用OPP(延伸ポリプロピレン)フィルムについて、厚さ、表面性状(平滑~マット調)及び表面粗さ(Ra)等が異なる種々の製品仕様の異なる代表銘柄が存在し、製品仕様ついては、顧客の要望に応じて提供されていたこと。(参考資料4) エ 感光層の薄膜化への要請 感光性エレメントにおける感光層の厚さが、「9μm以下」のものは、先の出願時(2013年)において周知である(例えば、甲4Aの[0141](製造例1の5μm)及び甲5Aの【0025】(実施例1の1.8μm)等参照。)。 そうしてみると、先の出願時の技術水準からみて、甲2A実施例発明において、求められる半導体装置における薄型化及び狭小化の要請にしたがって、感光性樹脂組成物層の厚さを、甲2Aの公開当時(2000年)において、最も好ましい範囲とされる「10μm~25μm」ではなく、「5~30μm」あるいは「1~50μm」との記載(甲2Aの【0035】)に基づいて、当業者が「9μm以下」へ設計変更する動機は十分に存在するといえる。 上記ア~エの技術常識及び取引の実情等を総合すると、甲2A実施例発明において、半導体装置の薄型化及び狭小化の要請にしたがい、「感光層」を、「厚さが9μm以下」(相違点2A-2)とするとともに、当該「感光層」においてエアーボイドが発生することを防止するために、「E-200C:ポリプロピレンフィルム(王子製紙(株)製)」に換えて、先の出願時に可能な限り小さいRa及びRmax(上記ウ[A]レベルのもの)であって、かつ、甲2Aの【0040】において「特に好ましい」とされる範囲のうち「30μm以上50μm以下」以外の厚さを具備するポリプロピレンフィルムを採用(注文)して、(相違点2A-1)及び(相違点2A-3)に係る本件特許発明1の構成に到ることは当業者が容易になし得たことである。 オ 測定手順について ところで、相違点2A-1に係る「Ra」及び「Rmax」の測定値が、本件特許発明1では、本件測定手順で得られるものであるのに対して、甲2A実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」では、製品型番「E-200C」から推認される「Ra」及び「Rmax」の値(参考資料3の【0053】【表2】比較例4参照)が、少なくとも本件測定手順で得られるものではない点(参考資料3の【0049】参照)で相違するから、一応この点が問題となり得る。 しかしながら、エアーボイドの発生を低減するために、Ra及びRmaxが可能な限り小さいことが好ましいことは、測定手順に関わらず妥当することである。 したがって、測定手順の相違は、上記エの結論を左右しない。 (8)発明の効果について 本件特許の明細書の【0022】の記載からみて、本件特許発明1の効果は、「感光性エレメントが薄型の感光層を有する場合であっても、ラミネートに際して気泡が発生することを抑制することができる。」というものと認められる。 しかしながら、当該効果は、上記(7)で述べたとおりであって当業者に自明なものであって、効果の程度も顕著なものとはいえない。 (9)特許権者の主張について 特許権者は、令和3年4月30日付け意見書の9頁~15頁及び54頁~55頁等において、甲1Bを主引用例とした取消しの理由に対して、概略、次の点を主張する。 ア Ra、Rmax等の表面粗さは、低減を要する程度に応じて調整されるものであり、程度の指針が何ら示されていないにも関わらず際限なく低減されるものではない。例えば、Raに関して、甲2A(【0038】)においては、好ましい下限について0.005μmよりも0.01μmの方が好ましいこと、Rmaxに関して、甲1A(請求項1、【0013】~【0014】)には、Rmaxが0.5μm以上であることが必須事項と位置づけられている点及び実施例及び比較例から、単純にRmaxが低いほど良いわけではない点。 イ 甲2A及び甲3Aには、実施例においてRmaxの具体値や0.4μm以下にまで低減すべき事情は何ら示されていない点。 ウ 本件特許発明1から特定積層体が除かれているため、甲2A実施例発明の設計変更に際して、甲3Aを参照することは当業者といえども困難である点。 エ 甲2A実施例発明の「感光層」の厚さの設計変更にあたっては、甲2Aにおいて、最も好ましい範囲とされる「10μm~25μm」の範囲に調整するのが自然である点。 オ 甲3A等の主張を採用し得たとしても、実施例において有効性が確認されていない9μm以下に感光層の厚さを調整するとともに、ポリプロピレンフィルムの両面のRmaxを0.4μm以下に調整したはずであるという示唆等は存在せず、数多ある保護フィルムの中から上記ポリプロピレンフィルムを敢えて選択し用いるべきと当業者は認識しない点。 上記主張について検討する。 (主張ア及びイについて) 保護層の表面粗さ(数値範囲)の設計思想として、エアーボイドの発生防止や巻き取りしわの発生防止等、種々の観点があり、前者を重視する場合において、下限値を意識する必要がないことは、上記(7)で述べたとおりである。 そうしてみると、エアーボイドの発生防止に専ら視座を置いた、甲2A実施例発明から出発して、その改良を試みる当業者が、「ポリプロピレンフィルム」として、Ra及びRmaxが可能な限り小さい製品の採用を試みることは容易になし得ることである。 したがって、上記主張ア及びイは採用すべき理由がない。 (主張ウについて) 甲3Aの【0025】に記載された、Ra及びRmaxを所定の値以下にしたことによる効果(エアーボイド発生の低減効果)は、保護層の膜厚には依らないことは明らかである。 したがって、本件特許発明1から特定積層体が除かれたことは、甲2A実施例発明の改良を試みる当業者が、甲3Aを参照することはないという理由にはならない。 したがって、上記主張ウは採用すべき理由がない。 (主張エについて) 上記「(7)エ」で述べたとおりである。 したがって、上記主張エは採用すべき理由がない。 (主張オについて) 上記「(7)ア」で述べたとおりである。 したがって、上記主張オは採用すべき理由がない。 (10)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2Aに記載された発明、甲3Aに記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (11)本件特許発明2~7及び9について ア 本件特許発明2について (ア)対比 本件特許発明2は、本件特許発明1において、[A]「ポリプロピレンフィルム」から特定ポリプロピレンフィルムを除外し、「厚さが100μm以下であり」という要件を省いた点、[B]「最大高さRmaxが0.4μm以下」から「最大高さRmaxが0.5μm以下」へ変更された点、[C]「感光層の厚さが9μm以下」から「感光層の厚さが5μm以下」へ変更された点、[D]「感光層」から特定感光層を除くとはされていない点及び[E]「感光層エレメント」から特定積層体を除くとはされていない点においてのみ相違する。 そうしてみると、本件特許発明2と甲2A実施例発明とは、以下の点で相違する。 (相違点2A’-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明2では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.5μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲2A実施例発明では、これらの値が一応不明であって、その測定手順も特定されていない点。 (相違点2A’-2) 「感光層」が、本件特許発明2は、「厚さが5μm以下」であるのに対して、甲2A実施例発明は、「膜厚は17μmであ」る点。 (相違点2A’-3) 本件特許発明2では、「ポリプロピレンフィルム」から、特定ポリプロピレンフィルムが除かれているのに対して、甲2A実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」が特定ポリプロピレンフィルムに該当する蓋然性が高い点。 (当合議体注:甲2A実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」の厚さは、本件出願の明細書の【0118】【表3】(比較例2)の記載から、20μmと推認される。) (イ)判断 上記相違点について検討する。 技術的な関連性に鑑み、(相違点2A’-1)~(相違点2A’-3)について、まとめて検討する。 甲2Aの【0040】には、「保護フィルム(c)の厚みは1~100μmであることが好ましく・・・中略・・・15~50μmであることが特に好ましい。」と記載されている。当該記載及び甲2の他の記載をみても、甲2A実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」が、必ずしも「厚さ20μm」または「厚さ12μm」でなければならない理由はない。 また、ポリプロピレンフィルムの表面粗さRa、最大高さRmax及び感光層の厚さとエアーボイドの関係についての先の出願時の当業者の技術常識については、上記(7)に示したとおりである。 以上、甲2Aの上記記載及び上記(7)の検討結果から、甲2A実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」に換えて、エアーボイドの発生防止を重視する当業者が、「12μm」又は「20μm」以外の厚みであって、可能な限り小さなRa及びRmaxを具備する、「ポリプロピレンフィルム」を採用して、(相違点2A’-1)~(相違点2A’-3)に係る本件特許発明2の構成に到ることは容易である。 イ 本件特許発明3について 相違点2A’-2の判断と同様である。 ウ 本件特許発明4及び6について 本件特許発明4と甲2A実施例発明とは、既に検討した相違点に加えて、次の点で相違する。 (相違点2A-5) 「感光性エレメント」が、本件特許発明4では、「400~700nmの波長域における平均光透過率が80%以上である」のに対して、甲2A実施例発明では、このように特定されていない点。 また、本件特許発明6と甲2A実施例発明とは、既に検討した相違点に加えて、次の点で相違する。 (相違点2A-6) 「感光性エレメント」が、本件特許発明4では、「透明基材上に硬化物を形成するために用いられる」ものであるのに対して、甲2A実施例発明では、このように特定されていない点。 上記相違点について検討する。 (相違点2A-5)及び(相違点2A-6) タッチパネルや表示装置の透明基板上に硬化物のパターンを形成するために、所望の光透過率を備えた感光性フィルムを用いることは、先の出願時における周知技術である。 (必要ならば、甲4Aの[0080]~[0082]、[0143]~[0146]、[0149]~[0151]、【図6】(a)~(b)等及び甲6Aの請求項16、【0001】、【0177】及び【0197】等参照。) そうしてみると、甲2Aの「感光性エレメント」において、相違点2A-5に係る本件特許発明4の構成に想到すること、相違点2A-6に係る本件特許発明6の構成に想到することは、上記周知技術を熟知した当業者が容易になし得たことである。 エ 本件特許発明5について 甲2A実施例発明の「感光性エレメント」における「感光性樹脂組成物層」は、「(A)成分:メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル及びアクリル酸2-エチルヘキシルを重量比25:50:5:20の割合で共重合させた、共重合体をメチルセルソルブ/トルエン(6/4、重量比)に不揮発成分40重量%になるように溶解させた溶液を150g、(B)成分:2,2-ビス(4-メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパンを30gと、ポリエチレングリコールジメタクリレート(エチレングリコール鎖の繰り返し数は4)を10g、(C)成分:ベンゾフェノンを5.0gと、N,N-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノンを0.3g」及び「その他の成分」「を混合し、」「調製した」「感光性樹脂組成物」「を塗布し」「乾燥し」て得たものである。 上記各成分の「感光性樹脂組成物層」における役割から、甲2A実施例発明の「(A)成分」、「(B)成分」及び「(C)成分」は、それぞれ本件特許発明5の「バインダーポリマー」、「光重合性化合物」及び「光重合開始剤」に相当する。 したがって、本件特許発明5と甲2A実施例発明とは、新たな相違点を有しない。 オ 本件特許発明7について 本件特許発明7と甲2A実施例発明とは、既に検討した相違点に加えて、次の点で相違する。 (相違点2A-7) 本件特許発明7が、「巻芯と、当該巻芯に巻回された感光性エレメントを備えた」「感光性エレメントロール」の発明であるのに対して、甲2A実施例発明は、感光性エレメントの発明である点。 上記相違点について検討するに、感光性エレメントを巻芯に巻回してロール状にして保管することは、周知慣用技術である。(必要であれば、甲1Aの【0010】【0053】【表2】及び甲1Bの【0224】等参照。) したがって、上記周知技術を心得た当業者が、甲2A実施例発明の「感光性エレメント」を、相違点2A-7に係る本件特許発明7のような態様で保管することは容易に想到し得ることである。 カ 本件特許発明9について 本件特許発明6についてと同様である。 (12)甲2A発明を主たる引用発明とした場合 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2A発明を対比すると、以下のとおりである。 (ア)支持フィルム 甲2A発明の「感光性エレメント」は、「支持フィルム(a)、感光性樹脂組成物層(b)及び保護フィルム(c)から成る」。 上記積層構造によれば、甲2A発明の「支持フィルム(a)」は、「感光性樹脂組成物層(b)」及び「保護フィルム(c)」とを支持するフィルムである。 そうしてみると、甲2A発明の「支持フィルム(a)」は、本件特許発明1の「支持フィルム」に相当する。 (イ)感光層及びポリプロピレンフィルム 甲2A発明の「ポリプロピレンフィルム」は、「保護フィルム(c)」であり、その機能及び材質からみて、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」に相当する。 また、甲2A発明の「感光性樹脂組成物層(b)」は、その文言が意味するとおり、本件特許発明1の「感光層」に相当する。 そして、甲2A発明の「感光性エレメント」の積層構造を踏まえると、甲2A発明の「ポリプロピレンフィルム」は、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」における、「感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し」との要件を満たすことは明らかである。 さらに、甲2A発明の「感光性樹脂組成物層(b)」は、本件特許発明1の「感光層」における、「前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された」との要件を満たす。 (ウ)感光性エレメントの全体構成 甲2A発明の「感光性エレメント」は、技術的にみて、本件特許発明1の「感光性エレメント」に相当する。 そうしてみると、上記(ア)の積層構造及び上記(ア)~(イ)の対比結果から、甲2A発明の「感光性エレメント」は、本件特許発明1の「感光性エレメント」における、「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え」との要件を満たす。 以上によれば、本件特許発明1と甲2A発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え、 前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有する、 感光性エレメント。」 (相違点2A”-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明1では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.4μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲2A発明では、これらの値が特定されておらず、また、その測定手順も特定されていない点。 (相違点2A”-2) 「感光層」が、本件特許発明1は、「厚さが9μm以下」であって、特定感光層を除くとされているのに対して、甲2A発明では、厚さが特定されておらず、そのため、特定感光層以外のものに該当するか否かも特定されていない点。 (相違点2A”-3) 本件特許発明1が、「ポリプロピレンフィルムの厚さが100μm以下であり」という要件及び特定積層体を除くという要件を満たすのに対して、甲2A発明では、「ポリプロピレンフィルムである」「保護フィルム(c)」の厚さが特定されておらず、そのため、甲2A発明の「感光性エレメント」が、本件特許発明1の「感光性エレメント」から、特定積層体を除いた範囲内のものに該当するか否かも特定されていない点。 上記相違点についての判断は、以下のとおりである。 上記(7)と同様、技術的な関連性に鑑み、相違点をまとめて検討する。 甲2A発明は、感光性エレメントという技術分野に属し、かつ、ラミネートした時のエアーボイドの発生を防止するという共通の技術課題を有している点において、甲2A実施例発明の場合と何ら事情は変わらない。また、保護フィルムの表面粗さRa、最大高さRmax及び感光層の厚さと、感光層のエアーボイドの関係に関する技術常識等は上記(7)に示したとおりである。 そうしてみると、上記(7)と同様の理由により、上記技術常識を熟知する当業者が、甲2A発明の「感光性エレメント」において、半導体装置の薄型化及び狭小化の要請にしたがって、「感光性樹脂組成物層(b)」の厚さを薄くするとともに、エアーボイドの発生を防止するために、甲2A発明の「ポリプロピレンフィルム」における表面粗さRa、最大高さRmax及び厚さや、「感光性樹脂組成物層(b)」の厚さを設計変更して、(相違点2A”-1)~(相違点2A”-3)に係る本件特許発明1の構成に想到することは容易である。 また、甲2A発明の「感光性樹脂組成物層(b)」として、本件特許発明1において除かれた範囲(「特定感光層」以外のもの、例えば、甲2Aの実施例1における感光性樹脂組成物層)を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 また、発明の効果については、上記「(8)」の判断と同様である。 イ 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲2A発明との相違点は、以下のとおりである。 (相違点2A”’-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明2では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.5μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲2A発明では、これらの値が特定されておらず、また、その測定手順も特定されていない点。 (相違点2A”’-2) 「感光層」が、本件特許発明2は、「厚さが5μm以下」であるのに対して、甲2A発明では、厚さが特定されていない点。 (相違点2A”’-3) 本件特許発明2では、「ポリプロピレンフィルム」から、特定ポリプロピレンフィルムが除かれているのに対して、甲2A発明の「ポリプロピレンフィルム」は、特定ポリプロピレンフィルムに該当するか否か不明である点。 そして、上記相違点について検討する。 上記(7)と同様、技術的な関連性に鑑み、(相違点2A”’-1)~(相違点2A”’-3)について、まとめて検討する。 甲2Aの【0040】には、「保護フィルム(c)の厚みは1~100μmであることが好ましく・・・中略・・・15~50μmであることが特に好ましい。」と記載されている。当該記載及び甲2Aの他の記載を参酌しても、甲2A発明の「ポリプロピレンフィルム」が、「厚さ20μm」または「厚さ12μm」でなければならない理由はない。 また、ポリプロピレンフィルムの表面粗さRa、最大高さRmax及び感光層の厚さとエアーボイドの関係についての先の出願時の技術常識については、上記(7)に示したとおりである。 以上、甲2Aの上記記載及び上記(7)の検討結果からみて、当業者が、甲2A発明の「ポリプロピレンフィルム」の厚みを「12μm」又は「20μm」以外のものとし、Ra及びRmaxを可能な限り小さいものへと設計変更して、(相違点2A”’-1)~(相違点2A”’-3)に係る本件特許発明2の構成に想到することは容易である。 ウ 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲2A発明との新たな相違点は、上記「(11)ア(ア)」の(相違点2A’-2)と同様である。 そして、上記相違点についての判断は、上記「(11)ア(イ)」の判断と同様である。 エ 本件特許発明4及び6について 本件特許発明4と甲2A発明との新たな相違点は、上記「(11)ウ」の(相違点2A-5)と同様である。 そして、上記相違点についての判断は、上記「(11)ウ」の判断と同様である。 また、本件特許発明6と甲2A発明との新たな相違点は、上記「(11)ウ」の(相違点2A-6)と同様である。 そして、上記相違点についての判断は、上記「(11)ウ」の判断と同様である。 オ 本件特許発明5について 甲2A発明の「感光性樹脂組成物層」は、「(A)バインダーポリマー、(B)重合可能なエチレン性不飽和基の濃度が、(A)成分及び(B)成分の総量100gに対して、0.12~0.26モルである光重合性化合物並びに(C)光重合開始剤を含有してな」るものである。 上記各成分の「感光性樹脂組成物層」における役割から、甲2A発明の「(A)」成分、「(B)」成分及び「(C)」成分は、それぞれ本件特許発明5の「バインダーポリマー」、「光重合性化合物」及び「光重合開始剤」に相当する。 したがって、本件特許発明5と甲2A発明とは、新たな相違点を有しない。 カ 本件特許発明7について 上記「(11)オ」と同様である。 キ 本件特許発明9について 上記「(11)カ」の判断と同様である。 (13)甲2A方法発明を主たる引用発明とした場合 本件特許発明8と甲2A方法発明とを対比する。 (ア)感光層、支持フィルム及びポリプロピレンフィルム 甲2A方法発明の「感光性樹脂組成物層(b)」、「支持フィルム(a)」、「保護フィルム(c)」「である」とされる「ポリプロピレンフィルム」及び「回路形成基板」は、技術的にみて、それぞれ本件特許発明8の「感光層」、「支持フィルム」、「ポリプロピレンフィルム」及び「基材」に相当する。 (イ)積層する工程 甲2A方法発明は、「感光性エレメントを、回路形成用基板上に感光性樹脂組成物層が密着するようにして積層」する工程を含む。 ここで、「感光性エレメント」の積層構成からみて、甲2A方法発明の上記「積層」する工程では、「感光性エレメント」から、「保護フィルム(c)」である「ポリプロピレンフィルム」を剥離した後、「回路形成基板上に感光性樹脂組成物層が密着するようにして積層」されることは明らかである。 したがって、甲2A方法発明の「積層」する工程は、本件特許発明8において、「ポリプロピレンフィルムを剥離した後に前記感光層及び前記支持フィルムを基材上に積層する」とされる、「積層する工程」に相当する。 (ウ)光硬化部を形成する工程 甲2A方法発明は、「活性光線を画像状に照射し、露光部を光硬化させ」る工程を含む。 そうしてみると、甲2A方法発明の上記「光硬化させ」る工程は、技術的にみて、本件特許発明8において、「感光層の所定部分に活性光線を照射して」とされる、「光硬化部を形成する工程」に相当する。 (エ)光硬化部以外の部分を除去する工程 甲2A方法発明は、「未露光部を現像により除去する」工程を含む。 上記「未露光部」が、「感光性樹脂組成物層(b)」における光硬化していない部分を意味することは技術的にみて明らかである。 そうしてみると、甲2A方法発明の「未露光部を現像により除去する」工程は、本件特許発明8の「感光層における前記光硬化部以外の部分を除去する工程」に相当する。 (オ)レジストパターンの製造方法 上記(ア)~(エ)の対比結果によれば、本件特許発明8の各工程は、いずれも甲2A方法発明が具備する工程である。 そして、本件特許発明8のうち、請求項1~6を引用する部分(「感光性エレメント」に関する構成)については、本件特許発明1~6と甲2A発明との対比結果と同一である。 そうしてみると、本件特許発明8と甲2A方法発明とは、既に検討した点以外の新たに検討すべきな相違点はない。 したがって、本件特許発明8は、甲2Aに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (14)本件特許発明1~9の小括 本件特許発明1~9は、甲2Aに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 甲1Bを主引用例とした場合 (1)甲1Bの記載 取消しの理由で引用された甲1Bには、次の事項が記載されている。 なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。 ア 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、ドライ・フィルム・レジスト(DFR)等に好適なパターン形成材料、並びに該パターン形成材料を備えたパターン形成装置及び前記パターン形成材料を用いたパターン形成方法に関する。 ・・・中略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、感光層の感度低下を抑制でき、かつ、高精細なパターンを形成可能なパターン形成材料、並びに該パターン形成材料を備えたパターン形成装置及び前記パターン形成材料を用いたパターン形成方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。 即ち、<1> 支持体上に感光層を少なくとも有し、該感光層が、重合禁止剤、バインダー、重合性化合物及び光重合開始剤を含み、かつ、該感光層を露光し現像する場合において、該感光層の露光する部分の厚みを該露光・現像後において変化させない前記光の最小エネルギーが、0.1~10mJ/cm2であることを特徴とするパターン形成材料である。該<1>に記載のパターン形成材料においては、前記感光層は、前記重合禁止剤、 バインダー、重合性化合物及び光重合開始剤を含むため、前記感光層を露光し現像する場合において、該感光層の露光する部分の厚みを該露光・現像後において変化させない前記光の最小エネルギーが、所定の範囲となる。この結果、例えば、その後、前記感光層を現像することにより、高精細なパターンが形成される。 ・・・中略・・・ <25> パターン形成材料が、長尺状であり、ロール状に巻かれてなる前記<1>から<24>のいずれかに記載のパターン形成材料である。 ・・・中略・・・ 【発明の効果】 【0016】 本発明によると、従来における問題を解決することができ、高感度の感光層を有し、かつ、高精細なパターンを形成可能なパターン形成材料、並びに該パターン形成材料を備えたパターン形成装置及び前記パターン形成材料を用いたパターン形成方法を提供することができる。」 イ 「【発明を実施するための形態】 【0021】 (パターン形成材料) 本発明のパターン形成材料は、支持体上に感光層を少なくとも有し、必要に応じて適宜選択したその他の層を有していてもよい。 前記感光層は、重合禁止剤、バインダー、重合性化合物及び光重合開始剤を含み、必要に応じて適宜選択した増感剤やその他の成分を含んでいてもよい。 【0022】 <感光層> 前記感光層を露光し現像する場合において、該感光層の露光する部分の厚みを該露光・現像後において変化させない光の最小エネルギーとしては、0.1~10mJ/cm2である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.5~8mJ/cm2が好ましく、1~5mJ/cm2がより好ましい。 ・・・中略・・・ 【0217】 前記感光層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1~100μmが好ましく、2~50μmがより好ましく、4~30μmが特に好ましい。 【0218】 <支持体及び保護フィルム> 前記支持体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記感光層を剥離可能であり、かつ光の透過性が良好であるものが好ましく、更に表面の平滑性が良好であることがより好ましい。 ・・・中略・・・ 【0222】 前記パターン形成材料は、前記感光層上に保護フィルムを形成してもよい。 前記保護フィルムとしては、例えば、前記支持体に使用されるもの、紙、ポリエチレン、ポリプロピレンがラミネートされた紙、などが挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。 前記保護フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5~100μmが好ましく、8~50μmがより好ましく、10~30μmが特に好ましい。」 ウ 「【0234】 (パターン形成装置及びパターン形成方法) 本発明のパターン形成装置は、本発明の前記パターン形成材料を備えており、光照射手段と光変調手段とを少なくとも有する。 【0235】 本発明のパターン形成方法は、露光工程を少なくとも含み、適宜選択したその他の工程を含む。 なお、本発明の前記パターン形成装置は、本発明の前記パターン形成方法の説明を通じて明らかにする。 【0236】 [露光工程] 前記露光工程は、本発明のパターン形成材料における感光層に対し、露光を行う工程である。本発明の前記パターン形成材料については上述の通りである。 【0237】 前記露光の対象としては、前記パターン形成材料における感光層である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、基体上に前記パターン形成材料を形成してなる積層体に対して行われることが好ましい。 【0238】 前記基体としては、特に制限はなく、公知の材料の中から表面平滑性の高いものから凸凹のある表面を有するものまで適宜選択することができるが、板状の基体(基板)が好ましく、具体的には、公知のプリント配線板形成用基板(例えば、銅張積層板)、ガラス板(例えば、ソーダガラス板等)、合成樹脂性のフィルム、紙、金属板などが挙げられる。 【0239】 前記積層体における層構成としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記基体と前記感光層と前記支持体とをこの順有する層構成が好ましい。 ・・・中略・・・ 【0391】 [その他工程] 前記その他の工程としては、特に制限はなく、公知のパターン形成における工程の中から適宜選択することが挙げられるが、例えば、現像工程、エッチング工程、メッキ工程などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 前記現像工程は、前記露光工程により前記パターン形成材料における感光層を露光し、該感光層の露光した領域を硬化させた後、未硬化領域を除去することにより現像し、パターンを形成する工程である。 ・・・中略・・・ 【0398】 〔プリント配線板及びカラーフィルタの製造方法〕 本発明の前記パターン形成方法は、プリント配線板の製造、特にスルーホール又はビアホールなどのホール部を有するプリント配線板の製造、及び、カラーフィルタの製造に好適に使用することができる。 ・・・中略・・・ 【0414】 -カラーフィルタの製造方法- ガラス基板等の基体上に、本発明の前記パターン形成材料における感光層を貼り合わせ、該パターン形成材料から支持体を剥離する場合に、帯電した前記支持体(フィルム)と人体とが不快な電気ショックを受けることがあり、あるいは帯電した前記支持体に塵埃が付着する等の問題がある。このため、前記支持体上に導電層を設けたり、前記支持体自体に導電性を付与する処理を施すことが好ましい。また、前記導電層を前記感光層とは反対側の前記支持体上に設けた場合は、耐傷性を向上させるために疎水性重合体層を設けることが好ましい。」 ウ 「【実施例】 【0420】 以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 (実施例1) -パターン形成材料の製造- 前記支持体としての16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、16FB50)上に下記の組成からなる感光性樹脂組成物溶液を塗布し乾燥させて、前記支持体上に15μm厚の感光層を形成し、前記パターン形成材料を製造した。 【0421】 [感光性樹脂組成物溶液の組成] ・フェノチアジン 0.0049質量部 ・メチルメタクリレート/スチレン/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合体組成(質量比):8/30/37/25、質量平均分子量:60,000、酸価163) 16質量部 ・下記構造式(74)で表される重合性モノマー 7.0質量部 ・ヘキサメチレンジイソシアネートとテトラエチレンオキシドモノメタアクリレートの1/2モル比付加物 7.0質量部 ・2,2-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール 2.17質量部 ・N-メチルアクリドン 0.11質量部 ・2-メルカプトベンズイミダゾール 0.23質量部 ・マラカイトグリーンシュウ酸塩 0.02質量部 ・ロイコクリスタルバイオレット 0.26質量部 ・メチルエチルケトン 40質量部 ・1-メトキシ-2-プロパノール 20質量部 ・フッ素系界面活性剤(大日本インキ社製、F780F) 0.0027質量部 ・・・中略・・・ 【0422】 【化48】 [図:0001384017000004.jpg] 但し、構造式(74)中、m+nは、10を表す。 【0423】 前記パターン形成材料の感光層の上に、前記保護フィルムとして20μm厚のポリプロピレンフィルム(王子製紙社製、E-200C)を積層した。次に、前記基体として、表面を研磨、水洗、乾燥した銅張積層板(スルーホールなし、銅厚み12μm)の表面に、前記パターン形成材料の保護フィルムを剥がしながら、ラミネーター(MODEL8B-720-PH、大成ラミネーター(株)製)を用いて積層させ、前記銅張積層板と、前記感光層と、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)とがこの順に積層された積層体を調製した。 【0424】 ・・・中略・・・ 前記製造した前記積層体について、最短現像時間、感度及び解像度の評価を行った。結果を表3に示した。 【0425】 <最短現像時間> ・・・中略・・・ 【0426】 <感度> 前記積層体におけるパターン形成材料の感光層に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)側から、前記光照射手段としての405nmのレーザ光源を有するパターン形成装置を用いて、0.1mJ/cm2から21/2倍間隔で100mJ/cm2までの光エネルギー量の異なる光を照射して露光し、前記感光層の一部の領域を硬化させた。室温にて10分間静置した後、前記積層体からポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥がし取り、銅張積層板上の感光層の全面に、炭酸ナトリウム水溶液(30℃、1質量%)をスプレー圧0.15MPaにて前記(1)で求めた最短現像時間の2倍の時間スプレーし、未硬化の領域を溶解除去して、現像により除去された部分以外の部分(硬化領域)の厚みを測定した。次いで、光の照射量と、硬化層の厚さとの関係をプロットして感度曲線を得る。こうして得た感度曲線から硬化領域の厚さが15μmとなった時の光エネルギー量を、感光層を硬化させるために必要な最小の光エネルギー量とした。この結果、前記感光層を硬化させるために必要な最小の光エネルギー量は、4.0mJ/cm2であった。なお、前記パターン形成装置は、前記DMDからなる光変調手段を有し、前記パターン形成材料を備えている。 ・・・中略・・・ 【0435】 (実施例9) 実施例1において、前記保護フィルムをポリプロピレンフィルム(王子製紙社製、E-501、厚み:12μm)に代えた以外は実施例1と同様にしてパターン形成材料を製造した。 製造したパターン形成材料について最短現像時間、感度及び解像度の評価を行った。結果を表3に示した。 ・・・中略・・・ 【0453】 【表3】 [図:0001384017000005.jpg] 表3の結果より、実施例1~13のパターン形成材料では、いずれの感度も10(mJ/cm2)以下であり感度低下が抑制され、かつ、高解像度であることが判った。」 (当合議体注:表3のうち、比較例1~比較例3(下3行)は摘記を省略した。) (2)甲1Bに記載された発明 ア 甲1B実施例発明 甲1Bの【0420】に実施例1として記載された、「パターン形成材料」は、「支持体としての16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム」「上に下記の組成からなる感光性樹脂組成物溶液を塗布し乾燥させて、前記支持体上に15μm厚の感光層を形成し、」「製造した」ものであるところ、「下記の組成」は、甲1Bの【0421】に記載されたとおりのものである。 さらに、甲1Bの【0423】によれば、上記「パターン形成材料」は、「前記パターン形成材料の感光層の上に、前記保護フィルムとして20μm厚のポリプロピレンフィルム(王子製紙社製、E-200C)を積層」したものである。 加えて、甲1Bの【0435】によれば、実施例9の「パターン形成材料」は、「実施例1において、前記保護フィルムをポリプロピレンフィルム(王子製紙社製、E-501、厚み:12μm)に代えた以外は実施例1と同様にしてパターン形成材料を製造した」ものと理解される。 以上によれば、甲1Bには、実施例9として、以下のパターン形成材料の発明(以下「甲1B実施例発明」という。)が記載されている。 「支持体としての16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に下記の組成からなる感光性樹脂組成物溶液を塗布し乾燥させて、前記支持体上に15μm厚の感光層を形成し、前記パターン形成材料を製造し、 前記パターン形成材料の感光層の上に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子製紙社製、E-501、厚み:12μm)を積層して、製造された、 パターン形成材料。 [感光性樹脂組成物溶液の組成] ・フェノチアジン 0.0049質量部 ・メチルメタクリレート/スチレン/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(共重合体組成(質量比):8/30/37/25、質量平均分子量:60,000、酸価163) 16質量部 ・下記構造式(74)で表される重合性モノマー 7.0質量部 ・ヘキサメチレンジイソシアネートとテトラエチレンオキシドモノメタアクリレートの1/2モル比付加物 7.0質量部 ・2,2-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール 2.17質量部 ・N-メチルアクリドン 0.11質量部 ・2-メルカプトベンズイミダゾール 0.23質量部 ・マラカイトグリーンシュウ酸塩 0.02質量部 ・ロイコクリスタルバイオレット 0.26質量部 ・メチルエチルケトン 40質量部 ・1-メトキシ-2-プロパノール 20質量部 ・フッ素系界面活性剤(大日本インキ社製、F780F) 0.0027質量部」 イ 甲1B方法発明 甲1Bの【0423】~【0426】によれば、甲1Bには、甲1B実施例発明の「パターン形成材料」を用いて、銅張積層板上に感光層の一部の領域を硬化させ(硬化領域)を形成し、パターン形成材料の感度を評価することが記載されている。 そうしてみると、甲1Bには、以下の硬化領域の形成方法の発明(以下「甲1B方法発明」という。)が記載されていると認められる。 「基体として、表面を研磨、水洗、乾燥した銅張積層板の表面に、甲1B実施例発明のパターン形成材料の保護フィルムを剥がしながら、ラミネーターを用いて積層させ、前記銅張積層板と、前記感光層と、前記ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)とがこの順に積層された積層体を調製し、 前記積層体におけるパターン形成材料の感光層に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)側から、光を照射して露光し、前記感光層の一部の領域を硬化させ、前記積層体からポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を剥がし取り、銅張積層板上の感光層の全面に、炭酸ナトリウム水溶液(30℃、1質量%)をスプレーし、未硬化の領域を溶解除去して、現像により除去された部分以外の部分(硬化領域)を形成する、 硬化領域の形成方法。」 (3)対比 本件特許発明1と甲1B実施例発明とを対比すると、 ア 支持フィルム 甲1B実施例発明の「パターン形成材料」は、「支持体としての16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に下記の組成からなる感光性樹脂組成物溶液を塗布し乾燥させて、前記支持体上に15μm厚の感光層を形成し、前記パターン形成材料を製造し、前記パターン形成材料の感光層の上に、保護フィルムとしてポリプロピレンフィルム(王子製紙社製、E-501、厚み:12μm)を積層して、製造された」ものである。 上記積層構造によれば、甲1B実施例発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、「感光層」及び「保護フィルム」とを支持するフィルムといえる。 そうしてみると、甲1B実施例発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム」は、その機能からみて、本件特許発明1の「支持フィルム」に相当する。 イ 感光層及びポリプロピレンフィルム 甲1B実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」及び「感光層」は、その文言が意味するとおり、それぞれ本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」及び「感光層」に相当する。 また、甲1B実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」は、「(王子製紙社製、E-501、厚み:12μm)」を用いたものである。 以上の点及び上記アで述べた積層構造から、甲1B実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」は、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」における、「ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し、前記ポリプロピレンフィルムがの厚さが100μm以下であり」との要件を満たす。 さらに、甲1B実施例発明の「感光層」は、本件特許発明1の「感光層」における、「前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された」との要件を満たす。 ウ 感光性エレメントの全体構成 甲1B実施例発明の「パターン形成材料」は、構造及び機能からみて、本件特許発明1の「感光性エレメント」に相当する。 そうしてみると、上記アの積層構造及び上記ア~イの対比結果から、甲1B実施例発明の「パターン形成材料」は、本件特許発明1の「感光性エレメント」における、「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え」との要件を満たす。 (4)一致点及び相違点 ア 一致点 上記(3)によれば、本件特許発明1と甲1B実施例発明は、次の構成で一致する。 「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え、 前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し、前記ポリプロピレンフィルムの厚さが100μm以下である、 感光性エレメント。」 イ 相違点 本件特許発明1と甲1B実施例発明は、次の点で、相違ないし一応相違する。 (相違点1B-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明1では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.4μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲1B実施例発明では、これらの値が一応不明であって、その測定手順も特定されていない点。 (相違点1B-2) 「感光層」が、本件特許発明1は、「厚さが9μm以下」であって、特定感光層を除くとされているのに対して、甲1B実施例発明は、「膜厚は15μmであ」って、特定感光層に該当する点。 (相違点1B-4) 本件特許発明1では、「感光性エレメント」から特定積層体を除くとされているのに対して、甲1B実施例発明では、特定積層体を除いた範囲のものに該当するか一応明らかでない点。 (5)判断 上記「1(7)」と同様、技術的な関連性に鑑み、(相違点1B-1)~(相違点1B-2)及び(相違点1B-4)について、まとめて検討する。 ポリプロピレンフィルムの表面粗さRa、最大高さRmax及び感光層の厚さとエアーボイドの関係についての先の出願時の当業者の技術常識については、上記「1(7)」に示したとおりである。 そして、甲1B実施例発明の「感光性エレメント」において、エアーボイドの発生が課題であることは、甲2A実施例発明の場合と事情は変わらない。 そうしてみると、上記「1(7)」と同様の理由により、(相違点1B-1)及び(相違点1B-2)のうち感光層の厚さに係る構成に到ることは当業者にとって容易である。 また、(相違点1B-2)のうち「特定感光層」に関する構成について、甲1Bの【0081】~【0083】等の記載から、甲1B実施例発明の「感光層」に含まれるバインダーに対しては、分子量や官能基の観点から、ある程度の自由度が許容されていることを直ちに理解する。 そうしてみると、そのような理解をした当業者が、甲1B実施例発明の「感光層」に許容される材料についての自由度の範囲内で、当該「感光層」を、本件特許発明1に含まれる構成(特定感光層を除いた範囲の構成)に設計変更することは容易になし得ることである。 さらに、甲1B実施例発明の「ポリプロピレンフィルム(王子製紙社製、E-501、厚み:12μm)」からみて、甲1B実施例発明の「感光性エレメント」が、特定積層体を除いた範囲のものに該当することは明らかであるから、(相違点1B-4)は実質的な相違点ではない。 (6)特許権者の主張について 特許権者は、令和3年4月30日付け意見書の18頁~22頁において、甲1Bを主引用例とした取消しの理由に対して、概略、[A]甲3AにはRmaxの上限値しか記載されておらず、Rmaxを可能な限り小さく設計することが認定できない点、[B]本件特許発明1から、特定積層体が除かれているから、当業者が甲1Bに記載された発明の設計変更に際して、甲3Aを参酌することは困難である点及び[C]本件特許発明1から、特定感光層が除かれている点を主張する。 しかしながら、上記[A]及び[B]については、それぞれ上記「1(9)」における、主張ア及びイ並びに主張ウの判断と同様である。 また、上記[C]については、上記「(5)」で述べたとおりである。 したがって、上記主張[A]~[C]はいずれも採用の限りでない。 (7)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲1Bに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8)本件特許発明2~本件特許発明9について ア 本件特許発明2について (ア)対比 本件特許発明2と甲1B実施例発明とは、以下の点で相違する。 (相違点1B’-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明2では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.5μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲1B実施例発明では、これらの値が一応不明であって、その測定手順も特定されていない点。 (相違点1B’-2) 「感光層」が、本件特許発明2は、「厚さが5μm以下」であるのに対して、甲1B実施例発明は、「膜厚は15μmであ」る点。 (相違点1B’-3) 本件特許発明2においては、「ポリプロピレンフィルム」から、特定ポリプロピレンフィルムが除かれているのに対して、甲1B実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」は、「厚み」が「12μm」であって、特定ポリプロピレンフィルムに該当する点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 (相違点1B’-1)については、上記「(5)」の(相違点1B-1)で検討したとおり、当業者が、甲1B実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「最大高さRmax」が「0.4μm以下」であるとの構成に想到することが容易である以上、「0.5μm以下」であるとの構成に想到することも容易である。 また、上記「1(7)」と同様、半導体装置の薄型化等の要請にしたがって、甲1Bの【0217】の記載に接した当業者が、(相違点1B’-2)の範囲の厚み(5μm以下)を選択することはが容易になし得たことである。 さらに、甲1Bの「保護フィルムの厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば・・・中略・・・10~30μmが特に好ましい。」との記載(【0222】)及び甲1Bの【0006】に記載された発明が解決しようとする課題に照らして、甲1B実施例発明において、「ポリプロピレンフィルム」の厚みが、「12μm」でなければならない事情はない。したがって、当業者が、(相違点1B’-3)に係る本件特許発明2の構成に想到することは容易である。 イ 本件特許発明3について (相違点1B’-2)の判断と同様である。 ウ 本件特許発明4及び6について 本件特許発明4と甲1B実施例発明とは、既に検討した相違点に加えて、次の点で相違する。 (相違点1B-5) 「感光性エレメント」が、本件特許発明4では、「400~700nmの波長域における平均光透過率が80%以上である」のに対して、甲1B実施例発明では、このように特定されていない点。 また、本件特許発明6と甲1B実施例発明とは、既に検討した相違点に加えて、次の点で相違する。 (相違点1B-6) 「感光性エレメント」が、本件特許発明4では、「透明基材上に硬化物を形成するために用いられる」ものであるのに対して、甲1B実施例発明では、このように特定されていない点。 上記各相違点についての判断は、上記「1(11)ウ」と同様である。 エ 本件特許発明5について 上記(5)の(相違点1B-2)で検討した、「感光層」の設計変更が、例えば、平均分子量の調整である場合、設計変更後の「感光層」が、本件特許発明5の「バインダーポリマー、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する」との要件を満たすことは明らかである。 オ 本件特許発明7について 上記「1(11)オ」と同様である。 カ 本件特許発明9について 上記ウと同様である。 キ 本件特許発明8について 本件特許発明8と甲1B方法発明とを対比する。 (ア)感光層、支持フィルム及びポリプロピレンフィルム 甲1B方法発明の「感光層」、「ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)」及び「銅張積層板」(基体)は、技術的にみて、それぞれ本件特許発明8の「感光層」、「支持フィルム」及び「基材」に相当する。 また、甲1B方法発明の「保護フィルム」は、甲1B実施例発明の「保護フィルム」としての「ポリプロピレンフィルム」であるから、本件特許発明8の「ポリプロピレンフィルム」に相当する。 (イ)積層する工程 甲1B方法発明は、「基体として、表面を研磨、水洗、乾燥した銅張積層板の表面に、甲1B実施例発明のパターン形成材料の保護フィルムを剥がしながら、ラミネーターを用いて積層させ」る工程を含む。 したがって、甲1B方法発明の「積層」する工程は、本件特許発明8において、「ポリプロピレンフィルムを剥離した後に前記感光層及び前記支持フィルムを基材上に積層する」とされる、「積層する工程」に相当する。 (ウ)光硬化部を形成する工程 甲1B方法発明は、「積層体におけるパターン形成材料の感光層に対し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)側から、光を照射して露光し、前記感光層の一部の領域を硬化させ」る工程を含む。 そうしてみると、甲1B方法発明の上記「硬化させ」る工程は、技術的にみて、本件特許発明8において、「感光層の所定部分に活性光線を照射して」とされる、「光硬化部を形成する工程」に相当する。 (エ)光硬化部以外の部分を除去する工程 甲1B方法発明は、「銅張積層板上の感光層の全面に、炭酸ナトリウム水溶液(30℃、1質量%)をスプレーし、未硬化の領域を溶解除去」する工程を含む。 そうしてみると、甲1B方法発明の上記「溶解除去」する工程は、本件特許発明8の「感光層における前記光硬化部以外の部分を除去する工程」に相当する。 (オ)レジストパターンの製造方法 上記(ア)~(エ)の対比結果によれば、本件特許発明8の各工程は、いずれも甲1B方法発明が具備する工程である。 そして、本件特許発明8のうち、請求項1~6を引用する部分(「感光性エレメント」に関する構成)については、本件特許発明1~6と甲1B実施例発明のパターン形成材料との対比結果と同様となる。 そうしてみると、本件特許発明8と甲1B方法発明とは、既に検討した点以外の新たな相違点はない。 したがって、本件特許発明8は、甲1Bに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (9)本件特許発明1~9の小括 本件特許発明1~9は、甲1Bに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 甲2Bを主引用例とした場合 (1)甲2Bの記載 取消しの理由で引用された甲2Bには、次の事項が記載されている。 なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 支持フィルム上に感光性樹脂層、保護フィルムを積層してなる感光性ドライフィルムにおいて、上記支持フィルムおよび保護フィルムが、酸素透過量0~200ml/m2/h/atmのポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリプロピレン(PP)からなり、かつ、保護フィルムにおける高さ1μm以上のフィッシュアイの平均個数が0.1個/m2以下である、感光性ドライフィルム。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は感光性ドライフィルムに関する。本発明はプリント基板やプラスチックパッケージ等の半導体素子の製造に好適に適用される。 【0002】 【従来の技術】 ・・・中略・・・ 【0003】 感光性ドライフィルムは、図1に示すように、支持フィルム2、感光性樹脂層3、および保護フィルム4が順次積層された構造をなし、一体化されて形成されている。 【0004】 そして使用時、保護フィルム4を剥がしながら、感光性樹脂層3側を基板(図示せず)にあて、感光性ドライフィルム1を基板上に熱圧着させる。次いで支持フィルム2が積層された状態で感光性樹脂層3を選択的に露光させる。露光後、支持フィルム2を剥がし、現像を行って感光性樹脂層3の未露光部を選択的に除去し、感光性樹脂パターン(ホトレジストパターン)を形成する。 ・・・中略・・・ 【0006】 かかる感光性ドライフィルムは、感光性樹脂層表面に保護フィルムが被着した状態で長期保存されるため、該保護フィルムが感光性樹脂層へ悪影響を及ぼさないよう、高い平滑性が求められる。 【0007】 保護フィルムとしては従来、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂フィルムや、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂フィルムが用いられている。これらフィルムは、通常、材料を熱溶融し押し出す延伸法などにより製造されるが、保護フィルム中に、フィッシュアイと呼ばれる突起状異物(未溶解・熱劣化物)が生じることがある。このフィッシュアイは、感光性樹脂層に転写されて凹部を生じさせ、これがホトレジストパターンへのエアボイド(気泡)を生じさせ、最終的にはパターン形状の不良化、欠陥、ひいては断線をもたらす原因となる。 【0008】 保護フィルムの平滑化については、これまでに種々の技術が提案されている(特許文献1~3参照)。保護フィルムとしてはさらに、平滑化に加えて、長期保存性、密着性がよくかつ剥離が容易である、等の点において、より一層の向上が望まれている。 ・・・中略・・・ 【0010】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、平滑性に優れ、長期保存性(感光性樹脂層の感度向上性)に優れる感光性ドライフィルムを提供することを目的とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するために、本発明は、支持フィルム上に感光性樹脂層、保護フィルムを積層してなる感光性ドライフィルムにおいて、上記支持フィルムおよび保護フィルムが、酸素透過量0~200ml/m2/h/atmのポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリプロピレン(PP)からなり、かつ、保護フィルムにおける高さ1μm以上のフィッシュアイの平均個数が0.1個/m2以下である感光性ドライフィルムを提供する。」 ウ 「【0012】 【発明の実施の形態】 以下に本発明について詳述する。 【0013】 本発明に用いられる支持フィルムおよび保護フィルムは、酸素透過量0~200ml/m2/h/atmのポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリプロピレン(PP)からなる。 ・・・中略・・・ 【0015】 上記本発明範囲内の酸素透過量を有するPET、PPとしては、例えばPETフィルム「G2」(帝人デュポン社製、酸素透過量6ml/m2/h/atm)、離型処理を施したPETフィルムである「ピューレックスフィルムA53」(帝人デュポン社製、酸素透過量6ml/m2/h/atm)、PPフィルム「E-200」(王子製紙社製、酸素透過量125ml/m2/h/atm)などが市販品として好適に用いられる。 ・・・中略・・・ 【0017】 また本発明に用いられる保護フィルムは、高さ1μm以上のフィッシュアイの平均個数が0.1個/m2以下で、好ましくは0個/m2である。ここでフィッシュアイとは、材料を熱溶融し混練、押出し延伸法またはキャスティング法によりフィルムを製造する際に、材料の未溶解および熱劣化物がフィルム中に取り込まれたものをいう。 ・・・中略・・・ 【0018】 保護フィルムおよび支持フィルムが上記条件を満足することにより、本願発明効果を奏することができる。特に酸素透過量が上記本発明範囲内のものを用いることにより、長期間保存した後の感光性樹脂層劣化の防止を図ることができ、形成されるパターン形状が断面矩形の良好なプロフィルを得ることができる。また保護フィルムにおいて高さ1μm以上のフィッシュアイの平均個数を0.1個/m2以下とすることにより、特に平滑性、密着性・剥離容易性の点において特に優れた効果が得られる。さらにPET、PPを用いることにより、作業性の点において優れた効果が得られる。 【0019】 保護フィルム、支持フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、それぞれ5~125μm程度とするのが好ましい。 【0020】 感光性樹脂層は、特に限定されるものでなく、目的に応じて適宜、公知の感光性樹脂組成物を用いて形成することができる。 【0021】 感光性樹脂組成物としては、感光性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、エッチング、めっきによりパターン形成をする際のマスクパターンとして用いる感光性樹脂組成物としては、(a)バインダー樹脂、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有する光重合性単量体、および(c)光重合開始剤を含有するものが、一般に好適に用いられる。ただしこれに限定されるものではない。 ・・・中略・・・ 【0022】 また(a)成分としては、例えば、次に挙げるモノマーを重合あるいは共重合させたものを用いることができる。なお、これらモノマーは(b)成分(後述)として配合することもできる。このようなモノマーとしては・・・中略・・・具体的にはスチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート・・・中略・・・(メタ)アクリル酸・・・中略・・・無水シトラコン酸等を挙げることができる。中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチルが好適に用いられる。 ・・・中略・・・ 【0042】 感光性樹脂層の厚みは、3~100μm程度が好ましく、より好ましくは10~30μmである。感光性樹脂層の厚みが少なすぎると追従性が低下し、欠け、断線が発生する傾向があり、一方厚すぎると解像度が悪化する傾向がある。 【0043】 本発明の感光性ドライフィルムの使用方法としては、例えば以下の例が挙げられる。ただしこれに限定されるものではない。 【0044】 本発明の感光性ドライフィルムから、まず保護フィルムを剥がし、露出した感光性樹脂層側を被処理体(基板)にあてて、基板上に感光性ドライフィルムを被着させる。被着に際しては、通常、基板をあらかじめ加熱しておき、この上に感光性ドライフィルムを置いて押圧する、いわゆる熱圧着方式等が挙げられる。 【0045】 次いで、支持フィルムが積層された感光性樹脂層に、マスクを介して露光、あるいは直接描画露光することにより、感光性樹脂層を選択的に露光させる。 【0046】 上記露光後、支持フィルムを剥がし、現像を行って感光性樹脂層の未露光部を選択的に除去し、露光部の感光性樹脂層が残留したパターンを形成する。 【0047】 次いで、パターン化された残留感光性樹脂層(ホトレジストパターン)をマスクとして、基板をエッチング、あるいはホトレジストパターン非形成部にめっき処理すること等により、金属配線パターンを形成する。」 エ 「【実施例】 ・・・中略・・・ 【0050】 感光性樹脂組成物調製 下記表1に示す組成の感光性樹脂組成物の溶液を調製した。 【0051】 【表1】 [図:0001384017000006.jpg] 【0052】 (実施例1~3、比較例1、対照例1~2) 上記表1に示す感光性樹脂組成物の溶液を、PETフィルム(19μm厚)「G2」(帝人デュポン社製、酸素透過量6ml/m2/h/atm)上に均一に塗布し、100℃の熱風対流乾燥機で約5分間乾燥した後、下記表2に示す各保護フィルムをそれぞれラミネートし、感光性ドライフィルムを得た。感光性樹脂層の乾燥後の膜厚は10μmであった。 ・・・中略・・・ 【0055】 【表2】 [図:0001384017000007.jpg] 」 (当合議体注:【表2】の「比較例1」~「対照例2」の行は摘記を省略した。) (2)甲2Bに記載された発明 ア 甲2B実施例発明 甲2Bの【0050】~【0055】には、実施例1として「感光性ドライフィルム」が記載されている。 そして、甲2Bの【0052】の記載によれば、上記「感光性ドライフィルム」は、【0051】の【表1】に示される組成の感光性樹脂組成物の溶液を用いて、PETフィルム上に均一に塗布し、乾燥した後、【0055】の【表2】(実施例1の行)に示された保護フィルムをラミネートして得たものと理解される。 そうしてみると、甲2Bには、次の感光性ドライフィルムの発明(以下「甲2B実施例発明」という。)が記載されている。 「感光性樹脂組成物の溶液を、PETフィルム(19μm厚)「G2」(帝人デュポン社製、酸素透過量6ml/m2/h/atm)上に均一に塗布し、100℃の熱風対流乾燥機で約5分間乾燥した後、PPフィルム(20μm厚)「E200」(王子製紙社製)からなる保護フィルムをラミネートし、得た、 感光性ドライフィルム。 【0050】~【0051】 ここで、上記感光性樹脂組成物の溶液は、下記表1に示す組成の感光性樹脂組成物の溶液であり、 【表1】 [図:0001384017000008.jpg] 感光性樹脂層の乾燥後の膜厚は10μmである。」 イ 甲2B方法発明 甲2Bの【0043】~【0047】には、甲2Bにおいて「本発明」とされる「感光性ドライフィルム」の使用方法が記載されている。 ここで、甲2Bにおいて、甲2B実施例発明の感光性ドライフィルムが、上記「感光性ドライフィルム」の一例であることは明らかである。 そうしてみると、甲2Bには、以下のホトレジストパターンの形成方法の発明(以下「甲2B方法発明」という。)が記載されている。 「甲2B実施例発明の感光性ドライフィルムから、まず保護フィルムを剥がし、露出した感光性樹脂層側を被処理体(基板)にあてて、基板上に感光性ドライフィルムを被着させ、 次いで、支持フィルムが積層された感光性樹脂層に、マスクを介して露光、あるいは直接描画露光することにより、感光性樹脂層を選択的に露光させ、 上記露光後、支持フィルムを剥がし、現像を行って感光性樹脂層の未露光部を選択的に除去し、露光部の感光性樹脂層が残留したパターンを形成する、 パターン化された残留感光性樹脂層(ホトレジストパターン)の形成方法。」 ウ 甲2B発明 甲2Bの請求項1には、次の感光性ドライフィルムの発明(以下「甲2B発明」という。)が記載されている。 「支持フィルム上に感光性樹脂層、保護フィルムを積層してなる感光性ドライフィルムにおいて、上記支持フィルムおよび保護フィルムが、酸素透過量0~200ml/m2/h/atmのポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリプロピレン(PP)からなり、かつ、保護フィルムにおける高さ1μm以上のフィッシュアイの平均個数が0.1個/m2以下である、感光性ドライフィルム。」 (3)対比 本件特許発明1と甲2B実施例発明とを対比すると、 ア 支持フィルム 甲2B実施例発明の「感光性ドライフィルム」は、「感光性樹脂組成物の溶液を、PETフィルム(19μm厚)「G2」(帝人デュポン社製、酸素透過量6ml/m2/h/atm)上に均一に塗布し、100℃の熱風対流乾燥機で約5分間乾燥した後、PPフィルム(20μm厚)「E200」(王子製紙社製)からなる保護フィルムをラミネートし、得た」ものである。また、甲2B実施例発明の「感光性樹脂層」は、上記「感光性樹脂組成物の溶液」から得られたものである。 上記積層構造からみて、甲2B実施例発明の「PETフィルム」は、「感光性樹脂層」及び「PPフィルム」とを支持するフィルムといえる。 そうしてみると、甲2B実施例発明の「PETフィルム」は、その機能からみて、本件特許発明1の「支持フィルム」に相当する。 イ 感光層及びポリプロピレンフィルム 甲2B実施例発明の「PPフィルム」及び「感光性樹脂層」は、その文言が意味するとおり、それぞれ本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」及び「感光層」に相当する。 また、甲2B実施例発明の「PPフィルム」は、「20μm厚」のものである。 以上の点及び上記アで述べた積層構造から、甲2B実施例発明の「PPフィルム」は、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」における、「ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し、前記ポリプロピレンフィルムがの厚さが100μm以下であり」との要件を満たす。 さらに、甲2B実施例発明の「感光性樹脂層」は、本件特許発明1の「感光層」における、「前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された」との要件を満たす。 ウ 感光性エレメントの全体構成 甲2B実施例発明の「感光性ドライフィルム」は、構造及び機能からみて、本件特許発明1の「感光性エレメント」に相当する。 そうしてみると、上記アの積層構造及び上記ア~イの対比結果から、甲2B実施例発明の「感光性ドライフィルム」は、本件特許発明1の「感光性エレメント」における、「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え」との要件を満たす。 (4)一致点及び相違点 ア 一致点 上記(3)によれば、本件特許発明1と甲2B実施例発明は、次の構成で一致する。 「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え、 前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し、前記ポリプロピレンフィルムの厚さが100μm以下である、 感光性エレメント。」 イ 相違点 本件特許発明1と甲2B実施例発明は、次の点で、相違ないし一応相違する。 (相違点2B-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明1では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.4μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲2B実施例発明では、これらの値が一応不明であって、その測定手順も特定されていない点。 (相違点2B-2) 「感光層」が、本件特許発明1は、「厚さが9μm以下」であって、特定感光層を除くとされているのに対して、甲2B実施例発明は、「膜厚は10μmであ」って、特定感光層に該当する点。 (相違点2B-4) 本件特許発明1では、「感光性エレメント」から特定積層体を除くとされているのに対して、甲2B実施例発明では、特定積層体を除いた範囲内のものに該当するか一応明らかでない点。 (5)判断 上記(7)と同様、技術的な関連性に鑑み、(相違点2B-1)~(相違点2B-2)及び(相違点2B-4)について、まとめて検討する。 ポリプロピレンフィルムの表面粗さRa、最大高さRmax及び感光層の厚さとエアーボイドの関係についての先の出願時の当業者の技術常識については、上記「1(7)」に示したとおりである。 そうしてみると、上記「1(7)」と同様の理由により、(相違点2B-1)及び(相違点2B-2)のうち感光層の厚さに係る構成に到ることは当業者にとって容易である。 また、(相違点2B-2)のうち「特定感光層」に関する構成について、甲2Bの【0021】~【0022】等の記載から、甲2B実施例発明の「感光性樹脂層」に含まれる「(a)成分」(バインダー)の共重合成分として、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸メチルに限らず、その他のモノマー成分(例えば、スチレンやベンジル(メタ)アクリレート等)を含んで良いことを直ちに理解する。 そうしてみると、そのような理解をした当業者が、甲2B実施例発明の「感光性樹脂層」に許容される材料についての自由度の範囲内で、当該「感光性樹脂層」を、本件特許発明1に含まれる構成(特定感光層を除いた範囲の構成)に設計変更することは容易になし得ることである。 さらに、甲2B実施例発明の「保護フィルム」は、「PPフィルム(20μm厚)「E200」(王子製紙社製)からなる」ものであることから、甲1B実施例発明の「感光性エレメント」が、特定積層体を除いた範囲のものに該当することは明らかであるから、(相違点2B-4)は実質的な相違点ではない。 (6)特許権者の主張について 特許権者は、令和3年4月30日付け意見書の22頁~25頁において、甲2Bを主引用例とした取消しの理由に対して反論している。 当該反論の内容は、甲1Bを主引用例とした取消しの理由に対する主張と同様の内容である。 したがって、上記「2(6)」と同様の理由により、上記反論は採用の限りでない。 (7)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1は、甲2Bに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (8)本件特許発明2~本件特許発明9について ア 本件特許発明2について (ア)対比 本件特許発明2と甲2B実施例発明とは、以下の点で相違する。 (相違点2B’-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明2では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.5μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲2B実施例発明では、これらの値が一応不明であって、その測定手順も特定されていない点。 (相違点2B’-2) 「感光層」が、本件特許発明2は、「厚さが5μm以下」であるのに対して、甲2B実施例発明は、「膜厚は10μmであ」る点。 (相違点2B’-3) 本件特許発明2では、「ポリプロピレンフィルム」から、特定ポリプロピレンフィルムが除かれているのに対して、甲2B実施例発明の「PPフィルム」は、「20μm厚」であって、特定ポリプロピレンフィルムに該当する点。 (イ)判断 上記相違点について検討する。 (相違点2B’-1)については、上記「(5)」の(相違点2B-1)で検討したとおり、当業者が、甲2B実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「最大高さRmax」が「0.4μm以下」であるとの構成に想到することが容易である以上、「0.5μm以下」であるとの構成に想到することも容易である。 また、上記「1(7)」と同様、半導体装置の薄型化等の要請にしたがって、甲2B実施例発明の「感光性樹脂層」の厚さをさらに小さくする動機は存在する。ここで、甲2Bの【0042】には、「感光性樹脂層の厚みは、3~100μm程度が好ましく、より好ましくは10~30μmである。」と記載されており、より好ましい範囲は、(相違点2B’-2)に係る「5μm以下」との要件を満たさない。。しかしながら、甲2Bで好ましいと記載された「3~100μm程度」の範囲のうち、「5μm以下」を選択することは、上記「1(9)」の(主張エについて)で検討したとおり、先の出願時の当業者が容易になし得たことである。 さらに、甲2Bの「保護フィルム、支持フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、それぞれ5~125μm程度とするのが好ましい。」との記載(【0019】)及び甲2Bの【0055】の【表2】の記載(特に、実施例2及び実施例3の「保護フィルム」(16μm厚及び19μm厚))、並びに甲2Bの【0006】~【0008】に記載された、発明が解決しようとする課題に照らせば、甲2B実施例発明の「PPフィルム」が、「20μm厚」でなければならない事情はない。 以上によれば、当業者が、(相違点2B’-3)に係る本件特許発明2の構成に想到することは容易である。 イ 本件特許発明3について 相違点2B’-2の判断と同様である。 ウ 本件特許発明4及び6について 本件特許発明4と甲2B実施例発明とは、既に検討した相違点に加えて、次の点で相違する。 (相違点2B-5) 「感光性エレメント」が、本件特許発明4では、「400~700nmの波長域における平均光透過率が80%以上である」のに対して、甲2B実施例発明では、このように特定されていない点。 また、本件特許発明6と甲2B実施例発明とは、既に検討した相違点に加えて、次の点で相違する。 (相違点2B-6) 「感光性エレメント」が、本件特許発明4では、「透明基材上に硬化物を形成するために用いられる」ものであるのに対して、甲2B実施例発明では、このように特定されていない点。 各相違点についての判断は、上記「1(11)ウ」と同様である。 エ 本件特許発明5について 上記(5)の(相違点2B-2)で検討した、「感光層」の設計変更が、例えば、バインダーの共重合成分を変更する場合、設計変更後の「感光層」が、本件特許発明5の「バインダーポリマー、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する」との要件を満たすことは明らかである。 オ 本件特許発明7について 上記「1(11)オ」と同様である。 カ 本件特許発明9について 本件特許発明6についてと同様である。 キ 本件特許発明8について 本件特許発明8と甲2B方法発明とを対比する。 (ア)感光層、支持フィルム及びポリプロピレンフィルム 甲2B方法発明の「感光性樹脂層」、「支持フィルム」及び「被処理体(基板)」は、技術的にみて、それぞれ本件特許発明8の「感光層」、「支持フィルム」及び「基材」に相当する。 また、甲2B方法発明の「保護フィルム」は、甲2B実施例発明の「PPフィルム」であるから、本件特許発明8の「ポリプロピレンフィルム」に相当する。 (イ)積層する工程 甲2B方法発明は、「甲2B実施例発明の感光性ドライフィルムから、まず保護フィルムを剥がし、露出した感光性樹脂層側を被処理体(基板)にあてて、基板上に感光性ドライフィルムを被着させ」る工程を含む。 したがって、甲2B方法発明の上記「被着させ」る工程は、本件特許発明8の「感光性エレメントの前記ポリプロピレンフィルムを剥離した後に前記感光層及び前記支持フィルムを基材上に積層する工程」に相当する。 (ウ)光硬化部を形成する工程、光硬化部以外の部分を除去する工程 甲2B方法発明は、「支持フィルムが積層された感光性樹脂層に、マスクを介して露光、あるいは直接描画露光することにより、感光性樹脂層を選択的に露光させ、上記露光後、支持フィルムを剥がし、現像を行って感光性樹脂層の未露光部を選択的に除去し、露光部の感光性樹脂層が残留したパターンを形成する」工程を含む。 上記「感光性樹脂層が残留したパターンを形成する」部分が、「マスクを介して」選択的に露光されることで光硬化した部分であって、「選択的に除去」される「未露光部」は光硬化部以外の部分であることは、技術的にみて明らかである。 そうしてみると、甲2B方法発明の上記「露光させ」る工程は、本件特許発明8において、「感光層の所定部分に活性光線を照射して」とされる、「光硬化部を形成する工程」に相当する。 また、甲2B方法発明の上記「露光部の感光性樹脂層が残留したパターンを形成する」工程は、本件特許発明8の「感光層における前記光硬化部以外の部分を除去する工程」に相当する。 (エ)レジストパターンの製造方法 上記(ア)~(ウ)の対比結果によれば、本件特許発明8の各工程は、いずれも甲2B方法発明が具備する工程である。 そして、本件特許発明8のうち、請求項1~6を引用する部分(「感光性エレメント」に関する構成)については、本件特許発明1~6と甲2B実施例発明の感光性ドライフィルムとの対比結果と同様となる。 そうしてみると、本件特許発明8と甲2B方法発明とは、既に検討した点以外の新たな相違点はない。 したがって、本件特許発明8は、甲2Bに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (9)甲2B発明を主たる引用発明とした場合 ア 本件特許発明1 本件特許発明1と甲2B発明を対比すると、以下のとおりである。 (ア)支持フィルム 甲2B発明の「感光性ドライフィルム」は、「支持フィルム上に感光性樹脂層、保護フィルムを積層してなる」ものである。 上記積層構造によれば、甲2B発明の「支持フィルム」は、「感光性樹脂組成物層」及び「保護フィルム」とを支持するフィルムである。 そうしてみると、甲2B発明の「支持フィルム」は、本件特許発明1の「支持フィルム」に相当する。 (イ)感光層及びポリプロピレンフィルム 甲2B発明の「ポリプロピレン(PP)からな」る「保護フィルム」は、その機能及び材質からみて、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」に相当する。 また、甲2B発明の「感光性樹脂層」は、その文言が意味するとおり、本件特許発明1の「感光層」に相当する。 そして、甲2B発明の「感光性ドライフィルム」の積層構造を踏まえると、甲2B発明の「ポリプロピレン(PP)からな」る「保護フィルム」は、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」における、「感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し」との要件を満たすことは明らかである。 さらに、甲2B発明の「感光性樹脂層」は、本件特許発明1の「感光層」における、「前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された」との要件を満たす。 (ウ)感光性エレメントの全体構成 甲2B発明の「感光性ドライフィルム」は、技術的にみて、本件特許発明1の「感光性エレメント」に相当する。 そうしてみると、上記アの積層構造及び上記ア~イの対比結果から、甲2B発明の「感光性ドライフィルム」は、本件特許発明1の「感光性エレメント」における、「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え」との要件を満たす。 以上によれば、本件特許発明1と甲2B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え、 前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有する、 感光性エレメント。」 (相違点2B”-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明1では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.4μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲2B発明では、これらの値が特定されておらず、また、その測定手順も特定されていない点。 (相違点2B”-2) 「感光層」が、本件特許発明1は、「厚さが9μm以下」であって、特定感光層を除くとされているのに対して、甲2B発明では、「感光性樹脂層」の厚さが特定されておらず、特定感光層に該当する点。 (相違点2B”-3) 本件特許発明1が、「ポリプロピレンフィルムの厚さが100μm以下であり」という要件及び特定積層体を除くという要件を満たすのに対して、甲2B発明では、「ポリプロピレン(PP)からな」る「保護フィルム」の厚さが特定されておらず、甲2B発明の「感光性ドライフィルム」が、特定積層体を除いた範囲内のものに該当するか不明である点。 上記相違点についての判断は、以下のとおりである。 上記「1(7)」と同様、技術的な関連性に鑑み、相違点をまとめて検討する。 甲2B発明は、感光性エレメントという技術分野に属し、かつ、ラミネートした時のエアーボイドの発生を防止するという共通の技術課題を有している点において、甲2A実施例発明や甲2A発明の場合と何ら事情は変わらない。また、保護フィルムの表面粗さRa、最大高さRmax及び感光層の厚さと、感光層のエアーボイドの関係に関する技術常識等は上記「1(7)」に示したとおりである。 そうしてみると、上記「1(7)」と同様の理由により、上記技術常識を熟知する当業者が、甲2B発明の「感光性エレメント」において、半導体装置の薄型化及び狭小化の要請にしたがって、「感光性樹脂層」の厚さを薄くするとともに、エアーボイドの発生を防止するために、甲2B発明の「ポリプロピレン(PP)からな」る「保護フィルム」における表面粗さRa、最大高さRmax及び厚さや、「感光性樹脂層」の厚さを設計変更して、(相違点2B”-1)~(相違点2B”-3)に係る本件特許発明1の構成に想到することは容易である。 また、(相違点2B”-1)の特定感光層に係る相違点及び(相違点2B”-3)の特定積層体に係る相違点については、上記(5)で検討したとおりである。 加えて、発明の効果については、上記「1(8)」の判断と同様である。 イ 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲2B発明との相違点は、上記「1(12)イ(ア)」の(相違点2A”’-1)~(相違点2A”’-3)と同様である。 そして、当該相違点についての判断は、上記「1(12)イ」で示したとおりである。 ウ 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲2B発明との新たな相違点は、上記「1(11)ア(ア)」の(相違点2A”’-2)と同一である。 そして、上記相違点についての判断は、上記「1(12)イ」の判断と同様である。 エ 本件特許発明4及び6について 本件特許発明4と甲2B発明との新たな相違点は、上記「1(11)ウ」の(相違点2A-5)と同一である。 そして、上記相違点についての判断は、上記「1(11)ウ」の判断と同様である。 また、本件特許発明6と甲2B発明との新たな相違点は、上記「1(11)ウ」の(相違点2A-6)と同一である。 そして、上記相違点についての判断は、上記「1(11)ウ」の判断と同様である。 オ 本件特許発明5について 甲2Bの「感光性樹脂層」の材料の選択にあたり、ある程度の自由度が許容されていることは、甲2Aや甲1Bに記載された発明と同様である。そして、その自由度の範囲内で選択した後の「感光性樹脂層」が、本件特許発明5の「バインダーポリマー、光重合性化合物及び光重合開始剤を含有する」との要件を満たすことは明らかである。 カ 本件特許発明7について 上記「1(11)オ」に示した相違点及び判断と同様である。 キ 本件特許発明9について 上記「1(11)カ」に示した相違点及び判断と同様である。 (10)本件特許発明1~9の小括 本件特許発明1~9は、甲2Bに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 甲3Bを主引用例とした場合 (1)甲3Bの記載 取消しの理由で引用された甲3Bには、次の事項が記載されている。 なお、下線は当合議体が付与したものであって、引用発明の認定及び判断等において活用した箇所を示す。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 支持フィルム(A)上に感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(B)を形成し、さらにその上に保護フィルム(C)を張りあわせた感光性フィルムにおいて、前記保護フィルム(C)中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイ数が5個/m2以下であり、かつ、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(B)の膜厚が5~30μmであることを特徴とする感光性フィルム。 【請求項2】 感光性樹脂層(B)の感光性樹脂組成物が、(a)アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのアルキルエステルを構成モノマーとして共重合してなるバインダーポリマー、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び(c)光重合開始剤を含有してなる組成物である請求項1記載の感光性フィルム。 ・・・中略・・・ 【請求項4】 保護フィルムがポリプロピレンフィルムである請求項1、2又は3記載の感光性フィルム。」 イ 「【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はリードフレームやメタルマスク等のメタルエッチング加工用として好適に用いられる感光性フィルムに関する。 ・・・中略・・・ 【0004】一方、感光性フィルムは、透明な支持フィルム上に感光性樹脂組成物を塗布、乾燥し保護フィルムを貼りあわせたサンドイッチ構造であり、ラミネート時に保護フィルムを除去しながら、感光性樹脂層を下地金属に加熱圧着し、像形成するため、液状感光性樹脂と比較し設備投資が少なく、感度も高く、可使期間が長い等の特徴があり、金属精密加工に優れている。 【0005】一般的に感光性フィルムの支持フィルムとしてはPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等のポリエステルフィルムが用いられ、保護フィルムとしてはPE(ポリエチレン)フィルム等のポリオレフィンフィルムが用いられている。 ・・・中略・・・ 保護フィルムはラミネート時に除去される。また通常保護フィルムとして用いられるポリオレフィンフィルムは、原材料を熱溶融し、混練、押出し、2軸延伸又はキャスティング法によって製造される。一般的にポリオレフィンフィルム等の保護フィルム中にはフィッシュアイとよばれる未溶解及び熱劣化物を含む。フッシュアイの大きさは一般的に直径(φ)が30~600μmで、フィルム表面から2~40μmの高さで突き出ている。このフィッシュアイの凸部が感光性樹脂層に転写し感光性樹脂層に凹みを生じ、ラミネート後の基板上に図1に示すようなエアーボイド6を生じる。すなわち、支持フィルム1と感光性樹脂層2とフィッシュアイ4を有する保護フィルムからなる感光性フィルムを保護フィルムを剥がして基板5にラミネートするとエアーボイド6が生じる。このエアーボイドは感光性樹脂層の膜厚と相関し、感光性樹脂層の膜厚が薄いほど発生しやすく、次工程である露光、現像、エッチングの像形成において、パターン欠けや断線の原因となる。 ・・・中略・・・ 【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、常圧ラミネート法において、金属表面を有する基板表面に感光性フィルムをエアーボイドの発生数を低減して歩留まり良く積層することができる作業性に優れた感光性フィルムを提供することにある。 【0009】本発明の他の目的は上記の発明の効果を奏し、更にラミネート性に優れた感光性フィルムを提供することにある。 【0010】本発明の他の目的は上記の発明の効果を奏し、特にリードフレームやメタルマスク等のメタルエッチング加工用として優れる感光性フィルムを提供することにある。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明は、支持フィルム(A)上に感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(B)を形成し、さらにその上に保護フィルム(C)を張りあわせた感光性フィルムにおいて、前記保護フィルム(C)中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイ数が5個/m2以下であり、かつ、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(B)の膜厚が5~30μmであることを特徴とする感光性フィルムを提供するものである。」 ウ 「【0012】 【発明の実施の形態】 ・・・中略・・・ 【0013】本発明における感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(B)の感光性樹脂組成物は感光性を有するものであれば特に限定されないが、(a)アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのアルキルエステルを構成モノマーとして共重合してなるバインダーポリマー、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び(c)光重合開始剤を含有してなる組成物が好ましく用いられる。 【0014】バインダーポリマー(a)は、単独でも2種以上を組み合わせて用いることもできる。 【0015】アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を組み合わせて使用される。 ・・・中略・・・ 【0017】また前記アクリル酸とメタクリル酸は、併用することもできる。 【0018】バインダーポリマーにはアクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのアルキルエステル以外にもこれらと共重合し得るビニルモノマーを構成モノマーとして用いることができる。 ・・・中略・・・ 【0031】感光性樹脂層の厚みは、5~30μmであることが必要である。5μmより薄い場合、追従性が低下し、欠け、断線が発生し、30μmより厚い場合、解像度が悪化する。好ましい厚みは10~25μmである。 ・・・中略・・・ 【0036】また、保護フィルムの表面粗さとしては、中心線平均粗さRaが0.005~0.05μmであることが好ましく、0.01~0.03μmであることが更に好ましい。表面粗さは、接触型表面粗さ計を用いて測定可能である。 ・・・中略・・・ 【0039】保護フィルム(C)の膜厚は5~50μmであることが好ましく、5~30μmであることが好ましい。5μmより薄い場合、製造が困難となる傾向があり、50μmより厚い場合、価格が高くなる傾向がある。 ・・・中略・・・ 【0041】本発明の感光性フィルムは、リードフレームやメタルマスクなどを製造するのに用いられるメタルエッチング加工用感光性フィルムとして好適である。」 エ 「【0042】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 【0043】実施例1~3及び比較例1~2 表1に示す(a)成分、(b)成分、(c)成分及びその他の成分を混合し、溶液を調製した。 【0044】 【表1】 [図:0001384017000009.jpg] 【0045】次いでこの感光性樹脂組成物の溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃の熱風対流乾燥機で約5分間乾燥し、表2に示す各保護フィルムをラミネートし感光性フィルムを得た。感光性樹脂層の乾燥後の膜厚は15μmであった。 ・・・中略・・・ 【0049】 ・・・中略・・・ また、各支持フィルムのフィッシュアイの大きさ及び数を100倍の顕微鏡を用いて測定した。 【0050】結果を表2にまとめて示す。 【0051】 【表2】 [図:0001384017000010.jpg] 【0052】表2から明らかなように、保護フィルム(C)として、φ≧80μmのフィッシュアイ個数が5個/m2以下のフィルムを使用することにより、断線、欠けの原因となるエアーボイドの発生数が減少することが分かる。 【0053】 【発明の効果】本発明の感光性フィルムは、欠け、断線の原因であるエアーボイドの発生数を低減し、金属精密加工の歩留まり向上に極めて有用である。」 (当合議体注:【表2】の一部の脚注の摘記を省略した。) (2)甲3Bに記載された発明 ア 甲3B実施例発明 甲3Bの【0042】~【0052】には、実施例4(感光性樹脂組成物の溶液のうち配合1’を用いたもの)に係る感光性フィルムが記載されている。前記感光性フィルムは、【0044】の表1に記載された感光性樹脂組成物の溶液を用いて、【0043】~【0045】に記載された工程を経て得たものである。 そうしてみると、甲3Bには、次の感光性フィルムの発明(以下「甲3B実施例発明」という。)が記載されている。 「感光性樹脂組成物の溶液を16μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、乾燥し、保護フィルム(E-200C:ポリプロピレンフィルム)をラミネートし得た、 感光性フィルム。 ここで、上記感光性樹脂組成物の溶液は、以下の(a)成分、(b)成分、(c)成分及びその他の成分を混合し、溶液を調製したものであって、感光性樹脂層の乾燥後の膜厚は15μmである。 (a)成分:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ブチル/アクリル酸2-エチルヘキシル共重合体(25/50/5/20(重量比)、重量平均分子量80,000)の40重量%メチルセロソルブ/トルエン(6/4(重量比))溶液を160g、 (b)成分:2,2-ビス(4-メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学工業(株)製、商品名BPE-500)を36g、 (c)成分:ベンゾフェノンを5gと、N,N-テトラエチル-4,4’-ジアミノベンゾフェノンを0.3g」 (当合議体注:感光性樹脂組成物の溶液の成分における「その他の成分」の摘記は省略した。) イ 甲3B発明 甲3Bには、請求項1及び2を引用する請求項4に係る、以下の感光性フィルムの発明(以下「甲3B発明」という。)が記載されている。 「支持フィルム(A)上に感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(B)を形成し、さらにその上に保護フィルム(C)を張りあわせた感光性フィルムにおいて、前記保護フィルム(C)中に含まれる直径80μm以上のフィッシュアイ数が5個/m2以下であり、かつ、感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(B)の膜厚が5~30μmであり、 感光性樹脂層(B)の感光性樹脂組成物が、(a)アクリル酸又はメタクリル酸及びこれらのアルキルエステルを構成モノマーとして共重合してなるバインダーポリマー、(b)分子内に少なくとも1つの重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び(c)光重合開始剤を含有してなる組成物であり、 保護フィルムがポリプロピレンフィルムである、 感光性フィルム。」 (3)甲3B実施例発明を主たる引用発明とした場合 甲3B実施例発明の「感光性フィルム」の「保護フィルム」である「ポリプロピレンフィルム」は、甲2A実施例発明の「ポリプロピレンフィルム」(「E-200C:ポリプロピレンフィルム(王子製紙(株)製)」)と同一である。 また、甲3B実施例発明の「感光性樹脂層」と、甲2A実施例発明の「感光性樹脂組成物層」とは、[A]厚さが、前者は15μmであるのに対して、後者は17μmである点及び[B]材料(組成)が異なる点でのみ相違する。 ここで、ポリプロピレンフィルムの表面粗さRa、最大高さRmax及び感光層の厚さとエアーボイドの関係についての先の出願時の当業者の技術常識については、上記(7)に示したとおりである。 また、甲3Bの【0008】の「本発明の目的は、常圧ラミネート法において、金属表面を有する基板表面に感光性フィルムをエアーボイドの発生数を低減して歩留まり良く積層することができる作業性に優れた感光性フィルムを提供することにある。」との記載によれば、甲3B実施例発明において、エアーボイドの発生を防止することが課題であることは、甲2Aに記載された各発明(以下、まとめて「引用発明」という。)と同様である。 加えて、甲3B実施例発明の「感光性樹脂組成物」の組成からみて、甲3B実施例発明の「感光性樹脂層」は、本件特許発明1の特定感光層に該当しない。そうすると、上記[B]の相違は、本件特許発明1の特定感光層を除くという構成については、本件特許発明1、3~7及び9と甲2Aに記載された発明との対比結果を左右しない。 そうしてみると、本件特許発明1~7及び9と、甲3B実施例発明との一致点及び相違点、各相違点に対する判断は、上記「1(6)」、「1(7)」及び上記「1(11)」と同様である。 (4)甲3B発明を主たる引用発明とした場合 ア 本件特許発明1 本件特許発明1と甲3B発明を対比すると、以下のとおりである。 (ア)支持フィルム 甲3B発明の「感光性フィルム」は、「支持フィルム(A)上に感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層(B)を形成し、さらにその上に保護フィルム(C)を張りあわせた」ものである。 上記積層構造によれば、甲3B発明の「支持フィルム(A)」は、「感光性樹脂層(B)」及び「保護フィルム(C)」を支持するフィルムである。 そうしてみると、甲3B発明の「支持フィルム(A)」は、本件特許発明1の「支持フィルム」に相当する。 (イ)感光層及びポリプロピレンフィルム 甲3B発明の「ポリプロピレンフィルム」は、「保護フィルム(C)」であり、その機能及び材質からみて、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」に相当する。 また、甲3B発明の「感光性樹脂層(B)」は、その文言が意味するとおり、本件特許発明1の「感光層」に相当する。 そして、甲3B発明の「感光性フィルム」の積層構造を踏まえると、甲3B発明の「ポリプロピレンフィルム」は、本件特許発明1の「ポリプロピレンフィルム」における、「感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有し」との要件を満たすことは明らかである。 さらに、甲3B発明の「感光性樹脂層(B)」は、本件特許発明1の「感光層」における、「前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された」との要件を満たす。 (ウ)感光性エレメントの全体構成 甲3B発明の「感光性フィルム」は、技術的にみて、本件特許発明1の「感光性エレメント」に相当する。 そうしてみると、上記(ア)の積層構造及び上記(ア)~(イ)の対比結果から、甲3B発明の「感光性フィルム」は、本件特許発明1の「感光性エレメント」における、「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え」との要件を満たす。 以上によれば、本件特許発明1と甲3B発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「支持フィルムと、ポリプロピレンフィルムと、前記支持フィルム及び前記ポリプロピレンフィルムの間に配置された感光層と、を備え、 前記ポリプロピレンフィルムが、前記感光層側の第1の面と、当該第1の面の反対側の第2の面と、を有する、 感光性エレメント。」 (相違点3B”-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明1では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.4μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲3B発明では、これらの値が特定されておらず、また、その測定手順も特定されていない点。 (相違点3B”-2) 「感光層」が、本件特許発明1は、「厚さが9μm以下」であって、特定感光層を除くとされているのに対して、甲3B発明では、厚さが特定されておらず、そのため、特定感光層以外のものに該当するか否かも特定されていない点。 (相違点3B”-3) 本件特許発明1が、「ポリプロピレンフィルムの厚さが100μm以下であり」という要件及び特定積層体を除くという要件を満たすのに対して、甲3B発明では、「ポリプロピレンフィルムである」「保護フィルム(C)」の厚さが特定されておらず、そのため、甲3B発明の「感光性フィルム」が、本件特許発明1の「感光層」から、特定積層体を除いた範囲内のものに該当するか否かも特定されていない点。 上記相違点についての判断は、以下のとおりである。 上記「1(7)」と同様、技術的な関連性に鑑み、相違点をまとめて検討する。 甲3B発明は、感光性エレメントという技術分野に属し、かつ、ラミネートした時のエアーボイドの発生を防止するという共通の技術課題を有している点において、甲3B実施例発明の場合と何ら事情は変わらない。また、保護フィルムの表面粗さRa、最大高さRmax及び感光層の厚さと、感光層のエアーボイドの関係に関する技術常識等は上記「1(7)」に示したとおりである。また、この点は、甲3Bの【0036】の記載からも理解できる事項である。 そうしてみると、上記「1(7)」と同様の理由により、上記技術常識を熟知する当業者が、甲3B発明の「感光性フィルム」において、半導体装置の薄型化及び狭小化の要請にしたがって、「感光性樹脂層(B )」の厚さを薄くするとともに、エアーボイドの発生を防止するために、甲3B発明の「ポリプロピレンフィルム」における表面粗さRa、最大高さRmax及び厚さや、「感光性樹脂層(B)」の厚さを設計変更して、(相違点3B”-1)及び(相違点3B”-2)のうち厚さに係る本件特許発明1の構成に想到することは容易である。 また、(相違点3B”-2)のうち特定感光層に係る相違点については、甲3B発明の「感光性樹脂層(B)」として、本件特許発明1において除かれた範囲(「特定感光層」以外のもの、例えば、甲3Aの実施例4(配合1’を用いたもの)における感光性樹脂層)を採用することは、甲3B発明を具体化する当業者が採用を試みる有力な選択枝の1つである。 加えて、(相違点3B”-3)の特定積層体に係る相違点については、甲3Bの「保護フィルム(C)の膜厚は・・・中略・・・5~30μmであることが好ましい。」(【0039】)の記載からみて、上記「1(7)」の判断と同様である。 また、発明の効果については、上記「1(8)」の判断と同様である。 イ 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲3B発明との相違点は、次のとおりである。 (相違点3A”’-1) 「ポリプロピレンフィルム」の「第1の面」及び「第2の面」の「算術平均粗さRa」及び「最大高さRmax」が、本件特許発明2では、それぞれ「0.05μm以下」及び「0.5μm以下」であり、これらの値の測定手順が、本件測定手順とされるのに対して、甲3B発明では、これらの値が特定されておらず、また、その測定手順も特定されていない点。 (相違点3B”’-2) 「感光層」が、本件特許発明2は、「厚さが5μm以下」であるのに対して、甲3B発明では、「膜厚が5~30μm」である点。 (相違点2A”’-3) 本件特許発明2では、「ポリプロピレンフィルム」から、特定ポリプロピレンフィルムが除かれているのに対して、甲3B発明の「ポリプロピレンフィルム」は、特定ポリプロピレンフィルムに該当するか否か不明である点。 上記相違点について検討する。 (相違点3B”’-1)は、(相違点2A”’-1)と同一であって、甲2A発明と事情は異ならないから、その判断も上記「1(12)イ」と同様でなる。 また、甲3Bの【0039】には、「保護フィルム(C)の膜厚は・・・中略・・・5~30μmであることが好ましい。」と記載されていることから、(相違点3B”’-3)の判断も、上記「1(12)イ」の判断と同様である。 さらに、(相違点3B”’-2)に係る構成は、甲3Bの【0031】の「感光性樹脂層の厚みは・・・中略・・・5μmより薄い場合、追従性が低下し、欠け、断線が発生し、30μmより厚い場合、解像度が悪化する。好ましい厚みは10~25μmである。」との記載及び上記「1(7)エ」に示した理由により、当業者が容易に想到し得るものである。 ウ 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲3B発明との新たな相違点は、上記「1(12)ア(ア)」の(相違点2A”’-2)と同一である。 そうしてみると、相違点についての判断は、上記「イ」の判断と同様である。 エ 本件特許発明4及び6について 本件特許発明4と甲3B発明との新たな相違点は、上記「1(11)ウ」の(相違点2A-5)と同一である。 そして、上記相違点についての判断は、上記「1(11)ウ」の判断と同様である。 また、本件特許発明6と甲3B発明との新たな相違点は、上記「1(11)ウ」の(相違点2A-6)と同一である。 そして、上記相違点についての判断は、上記「1(11)ウ」の判断と同様である。 オ 本件特許発明5について 甲3B発明の「感光性樹脂層(B)」は、上記アの(相違点3B-2)の判断で示したとおりである。 そうしてみると、各成分の機能からみて、甲3B発明の「(a)」成分、「(b)」成分及び「(c)」成分は、それぞれ本件特許発明5の「バインダーポリマー」、「光重合性化合物」及び「光重合開始剤」に相当する。 したがって、本件特許発明5と甲3B発明とは、新たな相違点を有しない。 カ 本件特許発明7について 上記「1(11)オ」に示した相違点及び判断と同様である。 キ 本件特許発明9について 本件特許発明6についてと同様である。 (5)特許権者の主張について 特許権者は、令和3年4月30日付け意見書の25頁~29頁において、甲3Bを主引用例とした取消しの理由に対して反論している。 当該反論の内容は、甲2Aを主引用例とした拒絶の理由に対する主張と同様の内容である。 したがって、上記「1(9)」と同様の理由により、上記反論は採用の限りでない。 (6)本件特許発明1~7及び9の小括 本件特許発明1~7及び9は、甲3Bに記載された発明、甲3Aに記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 まとめ 以上のとおり、本件特許発明1~本件特許発明9は、甲2A、甲1B、甲2B及び甲3Bのいずれか1の文献に記載された発明、甲3Aに記載された技術的事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、請求項1~請求項9に係る特許は、特許法29条の規定に違反してされたものであるから、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2020-700097

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