2020-390113
金属積層造形物、金属積層造形用のアルミニウム系粉末およびその製造方法
- 審判番号
- 2020-390113
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2017-514584外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月17日
- 審決日
- 2021年05月31日
- 公報発行日
- 2021年10月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
- 【請求人代理人】加藤 卓士
- 分類
- P141 .852-Y (B22F) / P141 .855-Y (B22F) / P141 .856-Y (B22F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
結論
理由
目次 ▾ 13項目
1 経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第6346992号(以下、「本件特許」という。)は、2016年(平成28年)12月26日を国際出願日とする出願である特願2017-514584号の請求項1~5に係る発明について、平成30年6月1日に特許権の設定登録がされ、その後、令和2年12月17日に本件訂正審判が請求されたものである。
2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、特許第6346992号の明細書及び特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める、との審決を求めるものであり、請求人が求めている訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(審決注:下線部分は訂正箇所であり、請求人が訂正明細書及び訂正特許請求の範囲において示したとおりである。また、「…」は、記載の省略を表す。)。
(1)訂正事項1
本件の願書に添付された明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0029】の【表1】の「単位面積当たりの酸素量(mg/m2)」の全値を、以下に添付の【表1】のように、10分の1の値に訂正する。
【表1】(訂正前)
【表1】(訂正後)
(2)訂正事項2
本件明細書の段落【0005】、【0025】の「単位表面積当りの酸素量が30mg/m2以上100mg/m2以下のアルミニウム系粉末」との記載を、「単位表面積当りの酸素量が3.0mg/m2以上10.0mg/m2以下のアルミニウム系粉末」と、10分の1の値に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の「単位表面積当りの酸素量が30mg/m2以上100mg/m2以下のアルミニウム系粉末」を、「単位表面積当りの酸素量が3.0mg/m2以上10.0mg/m2以下のアルミニウム系粉末」と、10分の1の値になるように訂正する。
3 本件明細書の記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
本件明細書には、次の記載がある。
「【0021】《評価方法》…(3) 酸素量の測定不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法(堀場製作所社製 EMGA-920)により測定した。」
「【0025】《評価結果》(金属積層造形用粉末)本実施形態の金属積層造形用粉末は、レーザー回折・散乱法で粒子径分布測定した場合の体積基準の50%粒子径が10μm以上100μm未満、比表面積が0.5m2/g以下で、かつ、単位表面積当りの酸素量が30mg/m2以上100mg/m2以下のアルミニウム系粉末である。【0026】また、本実施形態の金属積層造形用粉末は、アルミニウム系粉末100g当りの水素量(Xml:標準状態)と比表面積(Ym2/g)との関係、および、前記水素量(Xml:標準状態)と酸素量(Z重量%)との関係が、X/Y < 151、Z/X > 0.0022で示される。特に、X/Y ≦130、Z/X ≧0.003で示される。」
「【0029】本発明に係る実施例1~6および比較例1~6のアルミニウム系合金粉末の製造およびその積層造形物と、その試験結果を、表1に示す。【表1】」
4 参考文献及びその記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
当審が職権で調査して引用する文献及びその記載事項は以下のとおりである。
「【0025】不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法による上記酸素濃度の測定は、以下のようにして行う。測定装置としては、例えば、株式会社堀場製作所製の酸素-窒素分析計(EMGA-920)を用いる。そして、不活性ガス中、触媒粒子をインパルス加熱及び融解することにより、当該粒子中の酸素原子を、一酸化炭素に変換する。そして、この一酸化炭素の濃度を、非分散型赤外線吸収法を用いて検出する。このようにして、触媒粒子が含んでいる酸素量を測定し、これを質量換算する。そして、得られた酸素の質量を、測定に供した触媒粒子の質量で除することにより、上記の酸素濃度を得る。」
5 参考文献の記載事項についての検討
上記4より、参考文献1によれば、株式会社堀場製作所製の酸素-窒素分析計(EMGA-920)により測定した、不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法による酸素量は、試料が含んでいる酸素の質量を測定に供した試料の質量で除することにより得られる値であることが理解される。
6 訂正の適否
以下、訂正事項1、訂正事項2及び訂正事項3について検討する。
(1)訂正の目的について
ア 訂正事項1について
請求人は、審判請求書において、訂正事項1は誤記の訂正を目的とするものであると主張しているので、この主張について検討する。
請求人は、審判請求書4頁の「(3)訂正の理由」の[訂正事項1]の「a 訂正の目的」において、上記3の段落【0025】~【0026】の記載より、本件特許の「単位表面積当りの酸素量(mg/m2)」は、粉末の「酸素量(Z重量%)」を粉末の「比表面積(Ym2/g)」で除算して算出される値であり、単位を考慮すると、以下のように表されるものであることを説明している。
[単位表面積当りの酸素量(mg/m2)]
=(酸素量Z[重量%])/(比表面積Y[m2/g])
=(Zmg/100mg)/(Y/1000[m2/mg])
=(1000×Z/100×Y)[mg/m2])
={(10×Z)/Y}[mg/m2]
上記算出式の妥当性に関して考察する。
アルミニウム合金粉末a(g)について、
当該粉末中の酸素の質量Aは、上記5で検討した粉末酸素量の定義(粉末試料が含んでいる酸素の質量割合)に基づいて、
A=(Z/100)×a(g)=aZ/100(g)=10aZ(mg)
となる。また、当該粉末の表面積Bは、比表面積Yを用いて、
B=Y(m2/g)×a(g)=aY(m2)
となるため、当該粉末の単位表面積あたりの酸素量Cは、
C=A(mg)/B(m2)=10aZ/aY=10Z/Y(mg/m2)
と算出できる。
以上の考察に基づくと、請求人が説明した「単位表面積当りの酸素量(mg/m2)」についてのZとYを用いた算出式は適切であるといえる。
そして、本件明細書全体の記載から、上記3の段落【0029】の【表1】の「単位面積当たりの酸素量(mg/m2)」は上記式中の「単位表面積当りの酸素量(mg/m2)」に該当し、同【表1】の「粉末比表面積Y[m2/g]」は上記式中の「比表面積(Ym2/g)」に該当する。
また、上記5における検討から、同【表1】の「粉末酸素量Z[%]」は、粉末の質量に対する粉末が含んでいる酸素の質量の割合であり、上記式中の「酸素量(Z重量%)」に該当する。
この算出式に従えば、同【表1】における実施例1の「比表面積(Ym2/g)」は0.24、「酸素量(Z重量%)」は0.21であるから、「単位面積当たりの酸素量(mg/m2)」は、(10×0.21/0.24)=8.75≒8.8であり、同【表1】に記載された「88」は桁を誤った誤記であり、本来は10分の1の値であることが正しいことが理解できる。
実施例1と同様に計算すると、【表1】の「単位面積当たりの酸素量(mg/m2)」の全値は、測定値Y、Zから計算される値を10倍大きく記した誤記であり、当業者であれば10分の1の値が正しいことがわかる。
よって、訂正事項1は、誤記の訂正を目的とするものである。
以上より、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。
イ 訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1における【表1】の訂正に対応したものであり、実質的に訂正事項1と同様のものであるから、上記アで検討した理由と同様の理由により、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。
ウ 訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項1における【表1】の訂正に対応したものであり、実質的に訂正事項1と同様のものであるから、上記アで検討した理由と同様の理由により、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものである。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、明細書中の明らかな誤記を本来の正しい記載に訂正するものにすぎず、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第126条第5項に規定する要件を満たすものといえる。
また、訂正事項2及び訂正事項3も同様である。
よって、訂正事項1、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、明細書中の明らかな誤記を本来の正しい記載に訂正するものであり、また、その正しい記載が自明な事項として定まるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
また、訂正事項2及び訂正事項3も同様である。
よって、訂正事項1、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件について
本件訂正後の請求項1~5に係る発明については、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は見いだせない。
よって、訂正事項1、訂正事項2及び訂正事項3は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
7 むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
2020-390113