特許訂正審判
2020-390054
HIVインテグラーゼ阻害活性を有する多環性カルバモイルピリドン誘導体
- 審判番号
- 2020-390054
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2008-509227
- 登録番号
- 特許第4295353号(P4295353)
- 請求日
- 2020年07月01日
- 審決日
- 2020年10月09日
- 公報発行日
- 2021年01月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】ヴィーブ ヘルスケア カンパニー
- 【請求人代理人】大野 聖二
- 【請求人代理人】山口 裕司
- 【請求人代理人】多田 宏文
- 【請求人代理人】盛田 真智子
- 【請求人代理人】森田 裕
- 【請求人代理人】大木 信人
- 【請求人】塩野義製薬 株式会社
- 【請求人代理人】大野 聖二
- 【請求人代理人】山口 裕司
- 【請求人代理人】多田 宏文
- 【請求人代理人】盛田 真智子
- 【請求人代理人】森田 裕
- 【請求人代理人】大木 信人
- 審判長/審判官
- 審判長 大熊 幸治
- 審判官 瀬良 聡機
- 審判官 安孫子 由美
- 分類
- P141 .851-Y (C07D) / P141 .852-Y (C07D) / P141 .853-Y (C07D) / P141 .857-Y (C07D) / P141 .855-Y (C07D) / P141 .856-Y (C07D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項2号特許法126条1項3号特許法126条1項4号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項、特許法第126条第3項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第4295353号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第4295353号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔12~29、37、38、52、53、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68〕について訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第4295353号(以下「本件特許」という。)は、2006年4月28日(優先権主張 2005年4月28日 日本国、2005年10月27日 日本国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1~56に係る発明について平成21年4月17日に特許権の設定登録がなされたものである。
そして、令和2年7月1日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
第2 請求の趣旨及び内容
本件訂正審判請求の趣旨は、「特許第4295353号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項12~29、37、38、52、53、56~68について訂正することを認める、との審決を求める。」というものであり、すなわち、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を訂正請求書に記載した、下記の訂正事項1-1~1-4(まとめて、[訂正事項1]ともいう。)、訂正事項2-1~2-6(まとめて、[訂正事項2]ともいう。)、訂正事項3、訂正事項4-1~4-6(まとめて、[訂正事項4]ともいう。)、訂正事項5―1~5-5(まとめて、[訂正事項5]ともいう。)、訂正事項6、訂正事項7の訂正を行うことで訂正特許請求の範囲のとおりに訂正することを求めるというものである。
[訂正事項1-1]
特許請求の範囲の請求項12において、訂正前の「置換基群S1(:・・・、ヒドロキシ低級アルキル)」とあるのを「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」と訂正する。
[訂正事項1-2]
特許請求の範囲の請求項12において、R3の定義に関して、訂正前の「・・・アミノ)、その製薬上許容される塩、または」とあるのを「・・・アミノ;」と訂正する。
[訂正事項1-3]
特許請求の範囲の請求項12において、置換基群S1の定義とmの定義の間に「かつ」を挿入し、訂正前に「置換基群S1・・・mは、0~3の整数」とあるのを「置換基群S1・・・かつmは、0~3の整数」と訂正する。
[訂正事項1-4]
特許請求の範囲の請求項12において、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されているのを削除し、A環に関して「置換されていてもよい5~7員の複素環」との記載は残す。
[訂正事項2-1]
特許請求の範囲の請求項17において、訂正前の請求項7を引用する部分を削除する。
[訂正事項2-2]
特許請求の範囲の請求項17において、訂正前の請求項12を引用する部分について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする。
すなわち、「請求項12記載の化合物」の規定を訂正後の請求項17の冒頭にそのまま記載し、「であって」を挿入して、A環の定義部分に接続し、重複する置換基群S2と*で示される不斉炭素の立体化学の規定は、請求項12からの定義を残し、請求項17からの定義を削除する。
[訂正事項2-3]
特許請求の範囲の請求項17において、訂正事項2-2の訂正を行った後の「置換基群S1(:・・・、ヒドロキシ低級アルキル)」とあるのを「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」と訂正する。
[訂正事項2-4]
特許請求の範囲の請求項17において、訂正事項2-2の訂正を行った後のR3の定義に関して、「・・・アミノ)、その製薬上許容される塩、または」とあるのを「・・・アミノ;」と訂正する。
[訂正事項2-5]
特許請求の範囲の請求項17において、訂正事項2-2の訂正を行った後の置換基群S1の定義とmの定義の間に「かつ」を挿入し、「置換基群S1・・・mは、0~3の整数」とあるのを「置換基群S1・・・かつmは、0~3の整数」と訂正する。
[訂正事項2-6]
特許請求の範囲の請求項17において、訂正事項2-2の訂正を行った後の「置換されていてもよい」と記載されているのを削除し、A環に関して「置換されていてもよい5~7員の複素環」との記載は残す。
[訂正事項3]
特許請求の範囲の請求項18~27において、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されているのを削除する。
[訂正事項4-1]
特許請求の範囲の請求項28において、訂正前の請求項12及び請求項17を引用する部分について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする。
すなわち、「請求項12記載の化合物」の規定を訂正後の請求項28の冒頭にそのまま記載し、「であって」を挿入して、RXその他の定義に接続し、A環の定義に関しては請求項17の規定をそのまま記載し、重複する置換基群S2と*で示される不斉炭素の立体化学の規定は、請求項12からの定義を残し、請求項17からの定義を削除する。
[訂正事項4-2]
特許請求の範囲の請求項28において、訂正事項4-1の訂正を行った後の「置換基群S1(:・・・、ヒドロキシ低級アルキル)」とあるのを「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」と訂正する。
[訂正事項4-3]
特許請求の範囲の請求項28において、訂正事項4-1の訂正を行った後のR3の定義に関して、「・・・アミノ)、その製薬上許容される塩、または」とあるのを「・・・アミノ;」と訂正する。
[訂正事項4-4]
特許請求の範囲の請求項28において、訂正事項4-1の訂正を行った後の置換基群S1の定義とmの定義の間に「かつ」を挿入し、「置換基群S1・・・mは、0~3の整数」とあるのを「置換基群S1・・・かつmは、0~3の整数」と訂正する。
[訂正事項4-5]
特許請求の範囲の請求項28において、訂正事項4-1の訂正を行った後の「置換されていてもよい」と記載されているのを削除し、A環に関して「置換されていてもよい5~7員の複素環」との記載は残す。
[訂正事項4-6]
特許請求の範囲の請求項28において、訂正事項4-1及び訂正事項4-5の訂正を行った後のR14の定義について、「R14が水素または低級;」とあるのを「R14が水素または低級アルキル;」と訂正する。
[訂正事項5-1]
特許請求の範囲の請求項29において、訂正前の請求項12及び請求項17を引用する部分について、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする。
すなわち、「請求項12記載の化合物」の規定を訂正後の請求項29の冒頭にそのまま記載し、「であって」を挿入して、RXその他の定義に接続し、A環の定義に関しては請求項17の規定をそのまま記載し、訂正前に請求項17及び請求項29にそれぞれ定義のあるR20~R40については、訂正前の請求項17の規定の後に「但し、」を挿入して訂正前の請求項29の規定を記載し、重複する置換基群S2と*で示される不斉炭素の立体化学の規定は、請求項12からの定義を残し、請求項17からの定義を削除する。
[訂正事項5-2]
特許請求の範囲の請求項29において、訂正事項5-1の訂正を行った後の「置換基群S1(:・・・、ヒドロキシ低級アルキル)」とあるのを「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」と訂正する。
[訂正事項5-3]
特許請求の範囲の請求項29において、訂正事項5-1の訂正を行った後のR3の定義に関して、「・・・アミノ)、その製薬上許容される塩、または」とあるのを「・・・アミノ;」と訂正する。
[訂正事項5-4]
特許請求の範囲の請求項29において、訂正事項5-1の訂正を行った後の置換基群S1の定義とmの定義の間に「かつ」を挿入し、「置換基群S1・・・mは、0~3の整数」とあるのを「置換基群S1・・・かつmは、0~3の整数」と訂正する。
[訂正事項5-5]
特許請求の範囲の請求項29において、訂正事項5-1の訂正を行った後の「置換されていてもよい」と記載されているのを削除し、A環に関して「置換されていてもよい5~7員の複素環」との記載は残し、置換基群S2に関して「置換されていてもよい低級アルキル」は、「置換低級アルキル」に訂正する。
[訂正事項6]
特許請求の範囲の請求項17~27のうち、請求項7を引用する部分をそれぞれ、新たに請求項57~67とすることにより、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする。
[訂正事項7]
特許請求の範囲の請求項37のうち、請求項17~27において請求項7を引用していた部分を新たに請求項68にすることにより、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとする。
第3 当審の判断
1 [訂正事項1-1]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項1-1]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ア)aにおいて、目的の一つとして、[訂正事項1-1]は特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
ア 明瞭でない記載の釈明について
(ア)「明瞭でない記載の釈明」を目的とした訂正が認められる前提
訂正が、明瞭でない記載の釈明を目的としたものとして認められるには、特許請求の範囲自体の不明瞭な記載等の記載上の不備を本来の意味を明らかにするものであることが必要である。
(イ)判断
そこで、上記のことを前提として、[訂正事項1-1]について検討する。
訂正前の本件特許の請求項12に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定されるとおりの以下に記載のものであり(以下、「本件特許発明12」ともいう。)、
「【請求項12】
式:
【化5】
(化学式I-1-1省略)
(式中、
A環は、・・・であり、
A環上の置換基は置換基群S2から選択され、・・・
置換基群S2は、・・・である;
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す;
R14およびRXは、それぞれ独立して・・・、または・・・;
R3は・・・
R1は、水素または低級アルキル;
Rは、独立してハロゲンおよび置換基群S1から選択される;
置換基群S1(:置換されていてもよいリン酸残基、・・・、ヒドロキシ低級アルキル) mは、0~3の整数)で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」(下線は当審にて追加。以下同様。)と記載されている。
化学式I-1-1上の置換基(置換基群)及び記号である、S2、*、R14およびRX、R1、Rに関しては、選択肢または説明を「・・・は・・・;」という表記でセミコロンで区切りを付けて記載しているものの、置換基群S1に関しては、「置換基群S1」のあとに、いきなり「(:置換されていてもよいリン酸残基、・・・、ヒドロキシ低級アルキル)」との記載があり、括弧内でコロンの後に表記されている複数の基の羅列と置換基群S1の関係が不明瞭である。
そして、訂正後の、「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」との表記は、他の置換基(置換基群)及び記号の表記と整合しており、置換基群S1の選択肢を選択的に示すという本来の意味を明らかにしたものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項1-1]は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項1-1]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項12の記載の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項1―1]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項1-1]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項12の記載の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、カテゴリーを変更するものではなく、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
2 [訂正事項1-2]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項1-2]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(イ)aにおいて、目的として、[訂正事項1-2]は特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
ア 誤記の訂正について
(ア)「誤記の訂正」を目的とした訂正が認められる前提
訂正が、誤記の訂正を目的としたものとして認められるには、請求項中の記載がそれ自体で、又は設定登録時の明細書との関係で、誤りであることが明らかであり、かつ、設定登録時の明細書、特許請求の範囲の記載全体から、正しい記載が自明な事項として定まることが必要である。
(イ)判断
そこで、上記のことを前提として、[訂正事項1-2]について検討する。
イ 訂正前の本件特許の請求項12に係る発明は、「【請求項12】
式:
【化5】
(化学式I-1-1省略)
(式中、
A環は、・・・であり、
A環上の置換基は置換基群S2から選択され、・・・
置換基群S2は、・・・である;
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す;
R14およびRXは、それぞれ独立して・・・、または・・・;
R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されていてもよい低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい低級アルケニル、置換されていてもよい低級アルコキシ、置換されていてもよい低級アルケニルオキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよい複素環式基、置換されていてもよい複素環式基オキシ基、または置換されていてもよいアミノ)、その製薬上許容される塩、または
R1は、水素または低級アルキル;
Rは、独立してハロゲンおよび置換基群S1から選択される;
置換基群S1・・・ mは、0~3の整数)で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」と記載されている。
化学式I-1-1上の置換基(置換基群)及び記号である、S2、*、R14およびRX、R1、Rに関しては、選択肢または説明を「・・・は・・・;」という表記を用い、セミコロンで区切りを付けて記載しているものの、R3に関しては、「R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、・・・、または置換されていてもよいアミノ・・・」とR3の選択肢が並んだ後、突然「)、その製薬上許容される塩、または」との前後の記載とつながらない上に、それ自体で意味が完結しない記載が挿入されており、誤りであることは明らかである。
そして、訂正前の本件特許の請求項12に係る発明は、「化学式I-1-1・・・で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」の発明で、末尾に、化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物の表記があるのであるから、上記「)、その製薬上許容される塩、または」との誤りであることが明らかな記載は、誤って一部重複して記載されたことが明らかであるので、削除された記載が正しいものであることは自明なものとして定まるといえる。
したがって、上記[訂正事項1-2]は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項1-2]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項12の記載の誤記の記載を、削除したものに過ぎないので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項1―2]は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項1-2]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項12の記載の誤記の記載について、重複する部分があり削除すべきことが自明な部分を削除したものにすぎないので、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項12に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項1-2]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
3 [訂正事項1-3]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項1-3]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ウ)aにおいて、目的として、[訂正事項1-3]は特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項12に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項12に記載された事項により特定されるとおりの以下に記載のものであり、
「【請求項12】
式:
【化5】
(化学式I-1-1省略)
(式中、
A環は、・・・であり、
A環上の置換基は置換基群S2から選択され、・・・
置換基群S2は、・・・である;
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す;
R14およびRXは、それぞれ独立して・・・、または・・・;
R3は・・・
R1は、水素または低級アルキル;
Rは、独立してハロゲンおよび置換基群S1から選択される;
置換基群S1(:置換されていてもよいリン酸残基、・・・、ヒドロキシ低級アルキル) mは、0~3の整数)で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」と記載されている。
化学式I-1-1の各特定が、[訂正事項1-2]で訂正されるR3以外、セミコロンで連結されているものの、「mは、0~3の整数」との記載との間には何も記載がなく、結果として、各規定の関係が不明瞭である。
そして、「訂正事項1-3」は、訂正後に「置換基群S1・・・」と「mは、0~3の整数」との間に「かつ」を挿入して、各規定をすべて満たすことが要件であるという化合物のI-1-1の規定の本来の意味を明確にしたものである。
したがって、上記[訂正事項1-3]は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項1-3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項12の記載の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項1―3]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項1-3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項12の記載の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、カテゴリーを変更するものではなく、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
4 [訂正事項1-4]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項1-4]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(エ)aにおいて、目的として、[訂正事項1-4]は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項1-4]は、特許請求の範囲の請求項12において、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されている化学構造の特定を、A環に関する「置換されていてもよい5~7員の複素環」との記載以外すべて削除したものである。
訂正前の「置換されていてもよい」という文言が付された化学構造は、「置換された」化学構造と「置換されていない」化学構造それ自体を意味することは自明である。
そして、訂正後の「置換されていてもよい」が削除された化学構造名自体の記載を検討すると、技術常識からみて、何ら特定事項なく化学構造名自体が記載されている場合は、「置換されていない」化学構造それ自体を意味することが通常であるし、【0109】~【0132】の用語の説明記載において、化学構造名自体の定義においては、一切置換された場合の記載はなく、化学構造名自体の具体例を用いて説明されている。
また、【0133】~【0136】の「置換されていてもよい」化学構造の説明においても、置換基を有する場合の置換基の具体例が説明されており、化学構造名自体の場合に置換基を有する場合を含み得るような説明は一切なされていない。
さらに、明細書全体を通しても、訂正後の「置換されていてもよい」が削除された化学構造名自体の記載が、「置換されていない」化学構造それ自体を意味するという上記解釈に反する記載は一切存在しない。
以上のとおり、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されている化学構造の特定を削除した訂正は、係る化学構造において請求人が主張するとおり「置換基を有しないと理解する」(審判請求書10頁15行)ものであり、訂正前「置換された」化学構造及び「置換されていない」化学構造それ自体であったものから訂正後「置換されていない」化学構造それ自体に限定したものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項1-4]は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項1-4]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項12の記載の「置換されていてもよい」との記載を削除し、もともと明細書に記載されていたといえる「置換されていない」化学構造それ自体にしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項1―4]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項1-4]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項12の記載の「置換されていてもよい」との記載を削除し、特許請求の範囲を減縮したものであるので、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項12に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項1-4]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
5 [訂正事項2-1]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項2-1]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(オ)aにおいて、目的として、[訂正事項2-1]は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項2-1]は、特許請求の範囲の請求項17において、訂正前に請求項7および請求項12を引用していたのに対して、訂正後に請求項7を引用する部分を削除し、減縮したものである。
したがって、上記[訂正事項2-1]は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項2-1]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項7および請求項12を引用していたのに対して、訂正後に請求項7を引用する部分を削除し、減縮したものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項2―1]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項2-1]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17の記載の請求項7を引用する部分を削除し、特許請求の範囲を減縮したものであるので、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項17に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項2-1]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
6 [訂正事項2-2]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項2-2]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(カ)aにおいて、目的として、[訂正事項2-2]は特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
ア 他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとする訂正について
(ア)「請求項間の引用関係の解消(他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること)」を目的とした訂正が認められる前提
訂正が、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的としたものとして認められるには、特許請求の範囲の訂正について、訂正対象とされている複数の請求項のうち、ある請求項の記載を他の請求項が引用するような引用関係がある請求項の記載を、その内容を変更することなく当該請求項の記載を引用しない形式へと書き替えるものであることが必要である。
(イ)判断
そこで、上記のことを前提として、[訂正事項2-2]について検討する。
イ 訂正前の本件特許の請求項17に係る発明は、「【請求項17】
A環が以下のいずれかである、請求項7または請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【化6】
((A-1)~(A-3)省略)
(式中、R20 ~ R40 は、 それぞれ独立して置換基群S2から選択される基であるか、または同一炭素原子に結合するR20 ~ R40 のいずれか2個の基は、該炭素原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよく; または (R20 およびR22), ・・・, および (R39 およびR40)の各組合わせは、隣接原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよい。
置換基群S2:水素、置換されていてもよい低級アルキル、・・・)
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す)」と記載されている。
まず、訂正事項[訂正事項2-1]によって、「A環が以下のいずれかである、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【化6】
((A-1)~(A-3)省略)
(式中、R20 ~ R40 は、 それぞれ独立して置換基群S2から選択される基であるか、または同一炭素原子に結合するR20 ~ R40 のいずれか2個の基は、該炭素原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよく;または (R20 およびR22),・・・, および (R39 およびR40)の各組合わせは、隣接原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよい。
置換基群S2:水素、置換されていてもよい低級アルキル、・・・)
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す)」となった請求項12を引用する訂正前の請求項17の部分を、「請求項12記載の化合物」については、訂正後の請求項17の請求項17の冒頭において訂正前の請求項12の化合物の規定をそのまま記載し(「請求項12の化合物」との表現を「化合物」とした。)、該規定の直後に「であって」を挿入した上で、A環の定義部分につないだ。
そして、請求項12の化合物の規定を記載したことによって重複することとなった置換基群S2の定義および*で示される不斉炭素の立体化学の規定については、記載内容が実質的に同じものであり(「S2は、・・・である」と「S2:・・・)」、「を示す;」と「を示す)」といった形式的表現の相違のみである。)、請求項12からの定義を残し、請求項17からの定義を削除する整理がなされた。
上記記載の整理は、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、形式的な整理がなされたといえるので、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とした訂正であるといえる。
したがって、[訂正事項2-2]は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項2-2]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12を引用していたのに対して、訂正後に「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、形式的な整理がなされただけであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項2―2]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項2-2]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12を引用していたのに対して、訂正後に「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
7 [訂正事項2-3]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項2-3]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(キ)aにおいて、目的の一つとして、[訂正事項2-3]は特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項17に係る発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項17に記載された事項により特定されるとおりの以下に記載のものであり(以下、「本件特許発明17」ともいう。)、
「【請求項17】
A環が以下のいずれかである、請求項7または請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【化6】
((A-1)~(A-3)省略)
(式中、R20 ~ R40 は、 それぞれ独立して置換基群S2から選択される基であるか、または同一炭素原子に結合するR20 ~ R40 のいずれか2個の基は、該炭素原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよく;または (R20 およびR22),・・・, および (R39 およびR40)の各組合わせは、隣接原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよい。
置換基群S2:水素、置換されていてもよい低級アルキル、・・・)
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す)」と記載されている。
まず、[訂正事項2-1]によって、「A環が以下のいずれかである、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【化6】
((A-1)~(A-3)省略)
(式中、R20 ~ R40 は、 それぞれ独立して置換基群S2から選択される基であるか、または同一炭素原子に結合するR20 ~ R40 のいずれか2個の基は、該炭素原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよく;または (R20 およびR22),・・・, および (R39 およびR40)の各組合わせは、隣接原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよい。
置換基群S2:水素、置換されていてもよい低級アルキル、・・・)
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す)」となった請求項12を引用する訂正前の請求項17の部分を、さらに[訂正事項2-2]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「置換基群S1(:置換されていてもよいリン酸残基、・・・、ヒドロキシ低級アルキル)」を訂正後に「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」とすることは、上記1で[訂正事項1-1]について検討したのと同様に、化学式I-1-1上の置換基(置換基群)及び記号である、S2、*、R14およびRX、R1、Rに関してする表記とも整合している。
以上のとおり、訂正前に括弧内でコロンの後に表記されている複数の基の羅列と置換基群S1の関係が不明瞭であるところ、訂正後の「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」との表記は、他の置換基(置換基群)及び記号の表記と整合した、置換基群S1の選択肢を選択的に示すという本来の意味を明らかにしたものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項2-3]は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項2-3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17が引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項2―3]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項2-3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17が引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、カテゴリーを変更するものではなく、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
8 [訂正事項2-4]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項2-4]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ク)aにおいて、目的として、[訂正事項2-4]は特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項17に係る発明は、
「【請求項17】
A環が以下のいずれかである、請求項7または請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【化6】
((A-1)~(A-3)省略)
(式中、R20 ~ R40 は、 それぞれ独立して置換基群S2から選択される基であるか、または同一炭素原子に結合するR20 ~ R40 のいずれか2個の基は、該炭素原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよく;または (R20 およびR22),・・・, および (R39 およびR40)の各組合わせは、隣接原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよい。
置換基群S2:水素、置換されていてもよい低級アルキル、・・・)
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す)」と記載されている。
まず、[訂正事項2-1]によって、「A環が以下のいずれかである、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【化6】
((A-1)~(A-3)省略)
(式中、R20 ~ R40 は、 それぞれ独立して置換基群S2から選択される基であるか、または同一炭素原子に結合するR20 ~ R40 のいずれか2個の基は、該炭素原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよく;または (R20 およびR22),・・・, および (R39 およびR40)の各組合わせは、隣接原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよい。
置換基群S2:水素、置換されていてもよい低級アルキル、・・・)
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す)」となった請求項12を引用する訂正前の請求項17の部分を、さらに[訂正事項2-2]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されていてもよい低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい低級アルケニル、置換されていてもよい低級アルコキシ、置換されていてもよい低級アルケニルオキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよい複素環式基、置換されていてもよい複素環式基オキシ基、または置換されていてもよいアミノ)、その製薬上許容される塩、または」を訂正後に「R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されていてもよい低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい低級アルケニル、置換されていてもよい低級アルコキシ、置換されていてもよい低級アルケニルオキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよい複素環式基、置換されていてもよい複素環式基オキシ基、または置換されていてもよいアミノ;」とすることは、上記2で[訂正事項1-2]について検討したのと同様に、化学式I-1-1上の置換基(置換基群)及び記号である、S2、*、R14およびRX、R1、Rに関しては、選択肢または説明を「・・・は・・・;」という表記を用い、セミコロンで区切りを付けて記載しているものの、R3に関しては、「R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、・・・、または置換されていてもよいアミノ・・・」とR3の選択肢が並んだ後、突然「)、その製薬上許容される塩、または」との前後の記載とつながらない上に、それ自体で意味が完結しない記載が挿入されており、誤りであることは明らかである。
そして、訂正前の本件特許の請求項17に係る発明は、「化学式I-1-1・・・で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」の発明で、末尾に、化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物の表記があるのであるから、上記「)、その製薬上許容される塩、または」との誤りであることが明らかな記載は、誤って一部重複して記載されたことが明らかであるので、削除された記載が正しいものであることは自明なものとして定まるといえる。
したがって、上記[訂正事項2-4]は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項2-4]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17の引用する請求項12の誤記の記載を、削除したものに過ぎないので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項2―4]は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項2-4]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17の引用する請求項12の誤記の記載について、重複する部分があり削除すべきことが自明な部分を削除したものにすぎないので、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項17に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項2-4]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
9 [訂正事項2-5]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項2-5]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ケ)aにおいて、目的として、[訂正事項2-5]は特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項17に係る発明は、「【請求項17】
A環が以下のいずれかである、請求項7または請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【化6】
((A-1)~(A-3)省略)
(式中、R20 ~ R40 は、 それぞれ独立して置換基群S2から選択される基であるか、または同一炭素原子に結合するR20 ~ R40 のいずれか2個の基は、該炭素原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよく;または (R20 およびR22),・・・, および (R39 およびR40)の各組合わせは、隣接原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよい。
置換基群S2:水素、置換されていてもよい低級アルキル、・・・)
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す)」と記載されている。
まず、訂正事項[訂正事項2-1]によって、「A環が以下のいずれかである、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。
【化6】
((A-1)~(A-3)省略)
(式中、R20 ~ R40 は、 それぞれ独立して置換基群S2から選択される基であるか、または同一炭素原子に結合するR20 ~ R40 のいずれか2個の基は、該炭素原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよく;または (R20 およびR22),・・・, および (R39 およびR40)の各組合わせは、隣接原子と一緒になって置換されていてもよい炭素環または置換されていてもよい複素環を形成してもよい。
置換基群S2:水素、置換されていてもよい低級アルキル、・・・)
* で示される不斉炭素の立体化学は、R- もしくは S- 配置、またはそれらの混合を示す)」となった請求項12を引用する訂正前の請求項17の部分をさらに[訂正事項2-2]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「置換基群S1・・・ mは、0~3の整数)」を訂正後に「置換基群S1・・・かつmは、0~3の整数)」とすることは、上記3で[訂正事項1-3]について検討したのと同様に、化学式I-1-1の各特定が、[訂正事項2-4]で訂正されるR3以外、セミコロンで連結されているものの、「mは、0~3の整数」との記載との間には何も記載がなく、結果として、各規定の関係が不明瞭であったところ、「訂正事項2-5」によって、訂正後に「置換基群S1・・・」と「mは、0~3の整数」との間に「かつ」を挿入して、各規定をすべて満たすことが要件であるという化合物のI-1-1の規定の本来の意味を明確にしたものである。
したがって、上記[訂正事項2-5]は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項2-5]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17の引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項2―5]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項2-5]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17の引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、カテゴリーを変更するものではなく、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
10 [訂正事項2-6]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項2-6]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(コ)aにおいて、目的として、[訂正事項2-6]は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項2-6]は、[訂正事項2-1]を行った上で、請求項12を引用する訂正前の請求項17の部分をさらに[訂正事項2-2]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分において、「置換されていてもよい」と記載されているのを削除し、A環に関して「置換されていてもよい5~7員の複素環」との記載は残したものである。
上記4で[訂正事項1-4]について検討したように、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されている化学構造の特定を削除した訂正は、訂正前「置換された」化学構造及び「置換されていない」化学構造それ自体であったものから訂正後「置換されていない」化学構造それ自体に限定したものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項2-6]は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項2-6]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17の引用する請求項12の記載の「置換されていてもよい」との記載を削除し、もともと明細書に記載されていたといえる「置換されていない」化学構造それ自体にしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項2―6]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項2-6]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項17の引用する請求項12の記載の「置換されていてもよい」との記載を削除し、特許請求の範囲を減縮したものであるので、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項17に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項2-6]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
11 [訂正事項3]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項3]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(サ)aにおいて、目的として、[訂正事項3]は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項3]は、請求項18~27において、「置換されていてもよい」と記載されているのを削除したものである。
上記4で[訂正事項1-4]について検討したように、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されている化学構造の特定を削除した訂正は、訂正前「置換された」化学構造及び「置換されていない」化学構造それ自体であったものから訂正後「置換されていない」化学構造それ自体に限定したものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項3]は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項18~27の記載の「置換されていてもよい」との記載を削除し、もともと明細書に記載されていたといえる「置換されていない」化学構造それ自体にしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項3]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項18~27の記載の「置換されていてもよい」との記載を削除し、特許請求の範囲を減縮したものであるので、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項18~27に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項3]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
12 [訂正事項4-1]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項4-1]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(シ)aにおいて、目的として、[訂正事項4-1]は特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項28に係る発明は、「【請求項28】
RX が水素; R14 が水素または置換されていてもよい低級; R3 が水素; mが1~3 かつ少なくとも1つのRがハロゲン;A環が請求項17に記載の環である、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」と記載されている。
そして、訂正前の「請求項12記載の化合物」の規定を訂正後の請求項28の冒頭にそのまま記載し、「であって」を挿入して、RXその他の定義に接続し、A環の定義に関しては請求項17の規定をそのまま記載し、請求項12の化合物の規定を記載したことによって重複することとなった置換基群S2の定義および*で示される不斉炭素の立体化学の規定については、記載内容が実質的に同じものであり(「S2は、・・・である」と「S2:・・・)」、「を示す;」と「を示す)」といった形式的表現の相違のみである。)、請求項12からの定義を残し、請求項17からの定義を削除する整理がなされた。
上記記載の整理は、「請求項12記載の化合物」および「A環が請求項17に記載の環」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、形式的な整理がなされたといえるので、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とした訂正であるといえる。
したがって、[訂正事項4-1]は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項4-1]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12および請求項17を引用していたのに対して、訂正後に「請求項12記載の化合物」および「A環が請求項17に記載の環」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、形式的な整理がなされただけであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項4―1]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項4-1]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12および請求項17を引用していたのに対して、訂正後に「請求項12記載の化合物」および「「A環が請求項17に記載の環」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、形式的な整理がなされただけであって、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
12 [訂正事項4-2]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項4-2]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ス)aにおいて、目的として、[訂正事項4-2]は特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項4-1]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「置換基群S1(:置換されていてもよいリン酸残基、・・・、ヒドロキシ低級アルキル)」を訂正後に「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」とすることは、上記1で[訂正事項1-1]について検討したのと同様に、化学式I-1-1上の置換基(置換基群)及び記号である、S2、*、R14およびRX、R1、Rに関してする表記とも整合している。
以上のとおり、訂正前に括弧内でコロンの後に表記されている複数の基の羅列と置換基群S1の関係が不明瞭であるところ、訂正後の「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」との表記は、他の置換基(置換基群)及び記号の表記と整合した、置換基群S1の選択肢を選択的に示すという本来の意味を明らかにしたものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項4-2]は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項4-2]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項28が引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項4―2]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項4-2]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項28が引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、カテゴリーを変更するものではなく、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
13 [訂正事項4-3]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項4-3]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(セ)aにおいて、目的として、[訂正事項4-3]は特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項28に係る発明は、
「【請求項28】
RX が水素; R14 が水素または置換されていてもよい低級; R3 が水素; mが1~3 かつ少なくとも1つのRがハロゲン;A環が請求項17に記載の環である、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」と記載されている。
[訂正事項4-1]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されていてもよい低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい低級アルケニル、置換されていてもよい低級アルコキシ、置換されていてもよい低級アルケニルオキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよい複素環式基、置換されていてもよい複素環式基オキシ基、または置換されていてもよいアミノ)、その製薬上許容される塩、または」を訂正後に「R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されていてもよい低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい低級アルケニル、置換されていてもよい低級アルコキシ、置換されていてもよい低級アルケニルオキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよい複素環式基、置換されていてもよい複素環式基オキシ基、または置換されていてもよいアミノ;」とすることは、上記2で[訂正事項1-2]について検討したのと同様に、訂正前の記載がそれ自体で意味が完結しない記載が挿入されており、誤りであることは明らかであり、誤って一部重複して記載されたことが明らかであるので、削除された記載が正しいものであることは自明なものとして定まるといえる。
したがって、上記[訂正事項4-3]は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項4-3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項28の引用する請求項12の誤記の記載を、削除したものに過ぎないので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項4―3]は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項4-3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項28の引用する請求項12の誤記の記載について、重複する部分があり削除すべきことが自明な部分を削除したものにすぎないので、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項28に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項4-3]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
14 [訂正事項4-4]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項4-4]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ソ)aにおいて、目的として、[訂正事項4-4]は特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項4-4]は、[訂正事項4-1]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「・・・置換基群S1・・・ mは、0~3の整数)で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」を訂正後に「置換基群S1・・・かつmは、0~3の整数)で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」とするものであり、「mは、0~3の整数」と各規定の関係が不明瞭であったところ、訂正後に「かつ」を挿入して、各規定をすべて満たすことが要件であるという化合物のI-1-1の規定の本来の意味を明確にしたものである。
したがって、上記[訂正事項4-4]は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項4-4]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項28の引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項4―4]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項4-4]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項28の引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、カテゴリーを変更するものではなく、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
15 [訂正事項4-5]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項4-5]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(タ)aにおいて、目的として、[訂正事項4-5]は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項4-5]は、[訂正事項4-1]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されている化学構造の特定を、A環に関する「置換されていてもよい5~7員の複素環」以外すべて削除したものである。
上記4で[訂正事項1-4]について検討したように、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されている化学構造の特定を削除した訂正は、訂正前「置換された」化学構造及び「置換されていない」化学構造それ自体であったものから訂正後「置換されていない」化学構造それ自体に限定したものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項4-5]は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項4-5]は、上記(1)で検討したように、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分の「置換されていてもよい」との記載を削除し、もともと明細書に記載されていたといえる「置換されていない」化学構造それ自体にしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項4―5]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項4-5]は、上記(1)で検討したように、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分の記載の「置換されていてもよい」との記載を削除し、特許請求の範囲を減縮したものであるから、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項28に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項4-5]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
16 [訂正事項4-6]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項4-6]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(チ)aにおいて、目的として、[訂正事項4-6]は特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項28に係る発明は、
「【請求項28】
RX が水素; R14 が水素または置換されていてもよい低級; R3 が水素; mが1~3 かつ少なくとも1つのRがハロゲン; A環が請求項17に記載の環である、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」と記載されている。
R14 の選択肢を示している「水素または置換されていてもよい低級;」という記載の「置換されていてもよい低級」との部分は、記載が誤記により欠如していることは明らかである。
そして、願書に添付された明細書からみて、請求項28に対応する記載である、【0042】の「【0042】
(28)RX が水素; R14が水素または置換されていてもよい低級アルキル; R3 が水素; mが1~3 かつ少なくとも1つのRがハロゲン; A環が上記(17)に記載の環である、上記(12)記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」という記載からみて、訂正前の「低級」は、「低級アルキル」が正しい記載であることは自明であるといえる。
したがって、上記[訂正事項4-6]は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項4-6]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項28の記載の誤記の記載を、正しい記載である「低級アルキル」にしたものに過ぎないので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項4―6]は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項4-6]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項28の記載の誤記の記載を、正しい記載である「低級アルキル」としたものにすぎないので、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項28に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項4-6]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
17 [訂正事項5-1]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項5-1]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ツ)aにおいて、目的として、[訂正事項5-1]は特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項29に係る発明は、「RX が水素; R14 が水素; R3が水素; mが0または1~3、かつ少なくとも1つのRがハロゲン; A 環が請求項17に記載の環;R20 ~R40 は、それぞれ独立して水素または置換低級アルキル、または同一炭素原子に結合するR20 ~R40のいずれか2つは、隣接炭素原子と一緒になって置換されていてもよい3~7員炭素環または置換されていてもよい3~7員複素環を形成してもよく;または(R20 およびR22), (R23および R24), (R25 およびR26), (R27 およびR29),(R30 およびR31), (R32 およびR34), (R35 および R36),(R37 およびR38), ならびに (R39およびR40)の各組合せは、隣接炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい5~7員炭素環または置換されていてもよい5~7員複素環を形成してもよい、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」と記載されている。
そして、訂正前の「請求項12記載の化合物」の規定を訂正後の請求項29の冒頭にそのまま記載し、「であって」を挿入して、RXその他の定義に接続し、A環の定義に関しては請求項17の規定をそのまま記載し、訂正前に請求項17及び請求項29にそれぞれ定義のあるR20~R40については、訂正前の請求項17の規定の後に「但し、」を挿入して訂正前の請求項29の規定を記載し、請求項12の化合物の規定を記載したことによって重複することとなった置換基群S2の定義および*で示される不斉炭素の立体化学の規定については、記載内容が実質的に同じものであり(「S2は、・・・である」と「S2:・・・)」、「を示す;」と「を示す)」といった形式的表現の相違のみである。)、請求項12からの定義を残し、請求項17からの定義を削除する整理がなされた。
上記記載の整理は、「請求項12記載の化合物」および「A環が請求項17に記載の環」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、形式的な整理がなされたといえるので、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とした訂正であるといえる。
したがって、[訂正事項5-1]は、特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項5-1]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12および請求項17を引用していたのに対して、訂正後に「請求項12記載の化合物」および「A環が請求項17に記載の環」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、形式的な整理がなされただけであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項5―1]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項5-1]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12および請求項17を引用していたのに対して、訂正後に「請求項12記載の化合物」および「A環が請求項17に記載の環」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたもので、それに伴う接続表現や重複記載を整理したものにすぎず、特許請求の範囲の記載内容は変更されておらず、形式的な整理がなされただけであって、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
18 [訂正事項5-2]について
審判請求人は、[訂正事項5-2]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(テ)aにおいて、目的として、[訂正事項5-2]は特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項5-2]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「置換基群S1(:置換されていてもよいリン酸残基、・・・、ヒドロキシ低級アルキル)」を訂正後に「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」とすることは、上記1で[訂正事項1-1]について検討したのと同様に、化学式I-1-1上の置換基(置換基群)及び記号である、S2、*、R14およびRX、R1、Rに関してする表記とも整合している。
したがって、訂正前に括弧内でコロンの後に表記されている複数の基の羅列と置換基群S1の関係が不明瞭であるところ、訂正後の「置換基群S1は、・・・、またはヒドロキシ低級アルキル;」との表記は、他の置換基(置換基群)及び記号の表記と整合した、置換基群S1の選択肢を選択的に示すという本来の意味を明らかにしたものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項5-2]は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項5-2]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項29が引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項5―2]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項5-2]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項29が引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、カテゴリーを変更するものではなく、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
19 [訂正事項5-3]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項5-3]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ト)aにおいて、目的として、[訂正事項5-3]は特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
訂正前の本件特許の請求項29に係る発明は、
「【請求項29】
RX が水素; R14 が水素; R3が水素; mが0または1~3、かつ少なくとも1つのRがハロゲン; A 環が請求項17に記載の環;R20 ~R40 は、それぞれ独立して水素または置換低級アルキル、または同一炭素原子に結合するR20 ~R40のいずれか2つは、隣接炭素原子と一緒になって置換されていてもよい3~7員炭素環または置換されていてもよい3~7員複素環を形成してもよく;または(R20 およびR22), (R23および R24), (R25 およびR26), (R27 およびR29),(R30 およびR31), (R32 およびR34), (R35 および R36),(R37 およびR38), ならびに (R39およびR40)の各組合せは、隣接炭素原子と一緒になって、置換されていてもよい5~7員炭素環または置換されていてもよい5~7員複素環を形成してもよい、請求項12記載の化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物。」と記載されている。
[訂正事項5-1]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されていてもよい低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい低級アルケニル、置換されていてもよい低級アルコキシ、置換されていてもよい低級アルケニルオキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよい複素環式基、置換されていてもよい複素環式基オキシ基、または置換されていてもよいアミノ)、その製薬上許容される塩、または」を訂正後に「R3は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、置換されていてもよい低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよい低級アルケニル、置換されていてもよい低級アルコキシ、置換されていてもよい低級アルケニルオキシ、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいアリールオキシ、置換されていてもよい複素環式基、置換されていてもよい複素環式基オキシ基、または置換されていてもよいアミノ;」とすることは、上記2で[訂正事項1-2]について検討したのと同様に、訂正前の記載がそれ自体で意味が完結しない記載が挿入されており、誤りであることは明らかであり、誤って一部重複して記載されたことが明らかであるので、削除された記載が正しいものであることは自明なものとして定まるといえる。
したがって、上記[訂正事項5-3]は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項5-3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項29の引用する請求項12の誤記の記載を、削除したものに過ぎないので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項5―3]は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項5-3]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項29の引用する請求項12の誤記の記載について、重複する部分があり削除すべきことが自明な部分を削除したものにすぎないので、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項29に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項5-3]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
20 [訂正事項5-4]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項5-4]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ナ)aにおいて、目的として、[訂正事項5-4]は特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項5-4]は、[訂正事項5-1]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前の「・・・置換基群S1・・・ mは、0~3の整数)で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」を訂正後に「置換基群S1・・・かつmは、0~3の整数)で示される化合物、その製薬上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」とするものであり、「mは、0~3の整数」と各規定の関係が不明瞭であったところ、訂正後に「かつ」を挿入して、各規定をすべて満たすことが要件であるという化合物のI-1-1の規定の本来の意味を明確にしたものである。
したがって、上記[訂正事項5-4]は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項5-4]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項29の引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項5―4]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項5-4]は、上記(1)で検討したように、特許請求の範囲の訂正前の請求項29の引用する請求項12の不明瞭な記載を、その記載自体やその他の請求項12の記載との整合性から本来の意味を明らかにしたものであるので、カテゴリーを変更するものではなく、特許請求の範囲は変わらず、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
21 [訂正事項5-5]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項5-5]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ニ)aにおいて、目的として、[訂正事項5-5]は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項5-5]は、[訂正事項5-1]によって、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分のうち、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されている化学構造の特定を、A環に関する「置換されていてもよい5~7員の複素環」以外すべて削除したものである。
上記4で[訂正事項1-4]について検討したように、訂正前に「置換されていてもよい」と記載されている化学構造の特定を削除した訂正は、訂正前「置換された」化学構造及び「置換されていない」化学構造それ自体であったものから訂正後「置換されていない」化学構造それ自体に限定したものであるといえる。
したがって、上記[訂正事項5-5]は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であると認められる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項5-5]は、上記(1)で検討したように、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分の「置換されていてもよい」との記載を削除し、もともと明細書に記載されていたといえる「置換されていない」化学構造それ自体にしたものであるので、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項5―5]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項5-5]は、上記(1)で検討したように、「請求項12記載の化合物」という他の請求項を引用している請求項の記載部分を、引用しないものとしたものとした記載部分の記載の「置換されていてもよい」との記載を削除し、特許請求の範囲を減縮したものであるから、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項29に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項5-5]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
22 [訂正事項6]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項6]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ヌ)aにおいて、目的として、[訂正事項6]は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、および特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項6]は、請求項17~27に関して、訂正前に「請求項7または請求項12記載の化合物、その薬学上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」であったものを、「請求項12記載の化合物、その薬学上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」の部分を削除し、該「請求項12記載の化合物、その薬学上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」の部分を引用しないものとし、その内容を変更することなく、請求項7を引用する部分を、訂正後に、請求項57~67としたものであるから、[訂正事項6]は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、および特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正であるといえる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項6]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12および請求項17を引用していたのに対して、訂正後に請求項12を引用していた部分を削除し、請求項7を引用していた部分を内容を変更することなく、訂正後に、請求項57~67としたものであるから、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項6]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項6]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12および請求項17を引用していたのに対して、訂正後に請求項12を引用していた部分を削除し、請求項7を引用していた部分を内容を変更することなく、訂正後に、請求項57~67としたものであるから、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項57~67に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項6]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
23 [訂正事項7]について
(1)訂正の目的について
審判請求人は、[訂正事項7]について、審判請求書(3)請求の理由のイ(ネ)aにおいて、目的として、[訂正事項7]は特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、および特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正である旨主張しているので、以下検討する。
[訂正事項7]は、特許請求の範囲の請求項37のうち、請求項17~27を引用する部分に関して、訂正前に「請求項7または請求項12記載の化合物、その薬学上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」であったものを、「請求項12記載の化合物、その薬学上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」の部分を削除し、該「請求項12記載の化合物、その薬学上許容される塩、またはそれらの溶媒和物」の部分を引用しないものとし、その内容を変更することなく、請求項7を引用する部分を、訂正後に、請求項68としたものであるから、[訂正事項7]は、特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正、および特許法第126条第1項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正であるといえる。
(2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるかについて
[訂正事項7]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12および請求項17を引用していたのに対して、訂正後に請求項12を引用していた部分を削除し、請求項7を引用していた部分を内容を変更することなく、訂正後に、請求項68としたものであるから、本件特許明細書に記載された技術的事項からみて、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。
したがって、上記[訂正事項7]は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項に適合するものである。
(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
[訂正事項7]は、上記(1)で検討したように、訂正前に請求項12および請求項17を引用していたのに対して、訂正後に請求項12を引用していた部分を削除し、請求項7を引用していた部分を内容を変更することなく、訂正後に、請求項68としたものであるから、特許請求の範囲を、実質上拡張し、又は変更するものではないので、特許法第126条第6項の規定に適合するといえる。
(4)独立して特許を受けることができるものであることについて
訂正後の請求項68に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができないものであるとする理由は見当たらないので、[訂正事項7]は、特許法第126条第7項の規定に適合する。
24 [訂正事項1]、[訂正事項2]、[訂正事項4]、[訂正事項5]により、連動して訂正されるその他の請求項について
[訂正事項1]、[訂正事項2]、[訂正事項4]、[訂正事項5]により連動して訂正される上記で言及していないその他の請求項である請求項13~16、37、38、52、53および56についても、各訂正事項について判断したのと同様に、特許法第126条第1項ただし書第1号、第2号、第3号および第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項~第7項の規定に適合する。
25 一群の請求項についての判断
訂正前の請求項12~29、37、38、52、53、および56について、請求項13~17、28、29、37、52および53は、請求項12を引用するものであり、請求項18~27、37,52および53は、請求項12を引用する請求項17を引用するものであり、かつ請求項38および56は、請求項12および17を引用する請求項37を引用するものであるから、[訂正事項1]によって記載が訂正される請求項12に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正後の請求項12~29、37、38,52,53および56は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。
訂正前の請求項17~27、37、38、52、53、および56について、請求項18~27、37、52および53は、請求項17を引用するものであり、かつ請求項38および56は、請求項17を引用する請求項37を引用するものであるから、[訂正事項2]によって記載が訂正される請求項17に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正後の請求項17~27、37、38、52、53、および56は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。
訂正前の請求項28、37、38、52、53、および56について、請求項37、52および53は、請求項28を引用するものであり、かつ請求項38および56は、請求項28を引用する請求項37を引用するものであるから、[訂正事項4]によって記載が訂正される請求項28に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正後の請求項28、37、38、52、53、および56は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。
訂正前の請求項29、37、38、52、53、および56について、請求項37、52および53は、請求項29を引用するものであり、かつ請求項38および56は、請求項29を引用する請求項37を引用するものであるから、[訂正事項5]によって記載が訂正される請求項29に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正後の請求項29、37、38、52、53、および56は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項である。
したがって、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第3項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
第5 むすび
以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第2号、第3号および第4号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項~第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-390054