特許拒絶査定不服審判
2023-005944
HIV感染症及びAIDSを治療するためのレジメン
- 審判番号
- 2023-005944
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-502580
- 請求日
- 2023年04月12日
- 審決日
- 2025年07月11日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヴィーブ ヘルスケア カンパニー
- 【請求人代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 前田 佳与子
- 審判官 川口 裕美子
- 審判官 磯貝 香苗
- 分類
- P18 .121-WZ (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-502580「HIV感染症及びAIDSを治療するためのレジメン」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月24日国際公開、WO2019/016760、令和 2年 9月24日国内公表、特表2020-528413〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)7月19日(パリ条約による優先権主張 2017年7月21日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であり、その主な手続の経緯は、以下のとおりである。
令和2年 3月24日 手続補正書の提出
令和4年 5月20日付け 拒絶理由通知
同年 8月30日 手続補正書・意見書の提出
同年12月 9日付け 拒絶査定
令和5年 4月12日 審判請求書・手続補正書の提出
同年 5月18日付け 前置報告
令和6年10月25日付け 拒絶理由通知(当審)
令和7年 4月30日 手続補正書・意見書の提出
第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1~21に係る発明は、令和7年4月30日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~21に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
少なくとも3剤の(3剤+)抗レトロウイルス療法(ART)レジメンを遵守する、ウイルス学的に抑制されているヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した対象を治療する方法において使用するための組合せ物であって、それぞれ治療用量の2種のみの抗レトロウイルス(ARV)薬を含み、2種のARV薬が、(1)ドルテグラビル(DTG)又はその薬学的に許容される塩、及び(2)ラミブジン(3TC)又はその薬学的に許容される塩であり、DTG又はその薬学的に許容される塩の治療用量が約40mg~約60mgの間であり、3TC又はその薬学的に許容される塩の治療用量が約200mg~約400mgの間であり、
治療する方法が、
(a)2種のARV薬それぞれの治療用量を対象に1日1回投与することと、
(b)(a)の21~27、49~55、77~83、161~167、245~251、329~335、又は358~362日後、対象のそれぞれから採取された血漿試料1ミリリットル当たりのHIV RNAのコピー数を得ることと、次いで、
(c)血漿試料1ミリリットル当たり50コピー未満のHIV RNAを有する対象を選択し、2種のARV薬それぞれの別の治療用量を、選択された対象に投与することと
を含み、
DTG又はその薬学的に許容される塩、及び3TC又はその薬学的に許容される塩が共に、2剤医薬組成物中にある、
組合せ物。」
第3 当審拒絶理由
(1)令和5年4月12日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)に対し、当審において令和6年10月25日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の理由2(進歩性)の概要は、次のとおりのものである。
[理由2]
本願の請求項1に係る発明は、優先日前に日本国内又は外国において頒布された引用文献1に記載された発明及び引用文献1及び5~7の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献一覧>
1.BMC Infectious Diseases,2017年03月,Vol.17,Article No.215
5.HIV診療における外来チーム医療マニュアル 第1版改訂版第2刷(平成18年8月),第34頁,第36頁(2006)
6.HIV感染症「治療の手引き」第12版(2008年12月発行),第3頁,第4頁,第6頁(2008)
7.抗HIV治療ガイドライン 2016年3月,第8頁(2016)
(2)本願発明は、補正前の請求項1に係る発明において、
ア 「(3剤+)抗レトロウイルス療法」を「少なくとも3剤の(3剤+)抗レトロウイルス療法」と補正し、
イ 「2種のみのARV薬」を「2種のみの抗レトロウイルス(ARV)薬」と補正し、
ウ 「(c)2種のARV薬それぞれの別の治療用量を血漿試料1ミリリットル当たり50コピー未満のHIV RNAを有するために選択された対象に投与することとを含む、」を「(c)血漿試料1ミリリットル当たり50コピー未満のHIV RNAを有する対象を選択し、2種のARV薬それぞれの別の治療用量を、選択された対象に投与することとを含み、」と補正し、
エ 「を含む、組合せ物。」を「DTG又はその薬学的に許容される塩、及び3TC又はその薬学的に許容される塩が共に、2剤医薬組成物中にある、組合せ物。」と補正したものである(当審注:下線は、補正箇所を強調するために当審にて付与したものである。)。
(3)上記(2)ア~ウは、補正前の請求項1における不明確な記載を明確にしたものであり、上記(2)エの「DTG又はその薬学的に許容される塩、及び3TC又はその薬学的に許容される塩が共に、2剤医薬組成物中にある」という特定事項は、令和5年4月12日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項20(以下、「補正前の請求項20」という。)に記載されていた事項である。
そして、当審拒絶理由の理由2(進歩性)では、補正前の請求項20に係る発明に対し、「引用文献1にはドルテグラビル(DTG)及びラミブジン(3TC)が2剤医薬組成物中にあったものであるかどうか記載されていないが、多剤併用を行う抗レトロウイルス療法において、2剤あるいは3剤が1処方物内に配合された形態で提供することは周知技術に過ぎず、そのように調整することに格別の技術的な困難性もない。」と説示した上で、請求人に対して、意見書及び手続補正書の提出の機会を与えたものである。
第4 引用文献に記載された事項及び引用発明
1 引用文献1に記載された事項、及び引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、「HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者に対するラミブジン/ドルテグラビルの併用療法」について、次の事項が記載されている。
(なお、引用文献1は外国語文献であるため、当審による翻訳文を併記して摘記する。また、下線は当審にて付与したものである。)
(摘記1a)
「Lamivudine/dolutegravir dual therapy in HIV-infected, virologically suppressed patients」(第1頁 タイトル)
(HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者に対するラミブジン/ドルテグラビルの併用療法)
(摘記1b)
「Abstract
Background: Little is known about the applicability of dual treatments based on integrase inhibitors. We explored the combination of lamivudine + dolutegravir as an option when switching from standard cART in virologically suppressed patients.
Methods: In this prospective cohort we enrolled patients previously switched to 3TC + DTG who were 18 years or older, with no previous resistance mutations to the used drugs, having a HIV-RNA <50 copies/ml for 6 months or longer, negative for HBsAg and on a stable (>6 months) cART.
Results: Ninety-four individuals were included. They were mostly men (77.7%) with a mean age of 53 years. They presented 159 co-morbidities including cardiovascular, bone, hepatic, kidney, and CNS diseases. Because of these pathologies, they took 207 non-ARV drugs (mean 2.2 per patient). Median duration of viral suppression was 77.5 months (IQR 61). All subjects were prospectively followed up to week 24 and all remained on dual therapy during the whole period. Neither virological failure, nor viral blip was detected.
The median CD4 count rose from 658 cells/mcl (IQR 403) to 724 cells/mcl (IQR 401) (P = 0.006) without a significant (P = 0.44) change in the CD4/CD8 ratio. A significant (P < 0.0001) increment of median creatinine from 0.87 mg/dl (IQR 0.34) to 0.95 mg/dl (IQR 0.29) was observed in the first 2 months but thereafter leveled on these values (1.00 mg/dl; IQR 0.35) (P = 0.111 compared to 2 months). The lipid profile slightly improved. The daily cost of cART was significantly (P < 0.0001) reduced of 6.89 euros (SD 6.10).」
(第1頁 Abstract欄 第1~17行)
(概要
背景
インテグラーゼ阻害剤に基づく二重治療の適用性についてはほとんど知られていない。我々は、ウイルス学的に抑制された患者において標準的なcARTから切り替える際の選択肢として、ラミブジン+ドルテグラビルの併用を検討した。
方法
この前向きコホートでは、以前に3TC+DTGに切り替えた18歳以上の患者、使用した薬剤に対する耐性変異がなく、6か月以上HIV-RNAが50コピー/ml未満であり、HBsAgが陰性で、安定した(6か月以上)cARTを受けている患者を登録した。
結果
対象は94名で、そのほとんどは男性(77.7%)であり、平均年齢は53歳であった。心血管、骨、肝臓、腎臓、中枢神経系の疾患を含む159の併存疾患があった。これらの病状により、207種類の非抗レトロウイルス薬を服用した(患者1人あたり平均2.2種類)。ウイルス抑制期間の中央値は77.5か月(IQR61)であった。全被験者は24週目まで前向きに追跡され、全期間を通じてデュアル療法を継続した。ウイルス学的失敗もウイルスの異常も検出されなかった。
CD4数の中央値は658個/mcl(IQR403)から724個/mcl(IQR401)(P=0.006)に上昇したが、CD4/CD8比には有意な(P=0.44)変化は認められなかった。クレアチニン値の中央値は、最初の2か月間で0.87mg/dl(IQR0.34)から0.95mg/dl(IQR0.29)に有意に(P<0.0001)増加したが、その後はこれらの値で横ばいになった(1.00mg/dl、IQR0.35)(2か月間と比較してP=0.111)。脂質プロファイルはわずかに改善した。cARTの1日あたりのコストは6.89ユーロ(SD6.10)有意に(P<0.0001)削減された。)
(摘記1c)
「Background
In the first years of HIV epidemic the sequential use of nucleoside reverse transcriptase inhibitors (NRTI) as monotherapy or dual therapies rapidly led to treatment failure because of the emergence of resistance-associated mutations [1]. Later, the use of combination antiretroviral therapy (cART), in which two NRTIs were combined with a third agent from a different therapeutic class, became the standard of care. Current treatment guidelines continue the convention of preferred cART based on combining a dual NRTI backbone with a third “anchor” agent [2, 3] as initial treatment.」(第2頁左欄1~12行)
(背景
HIV流行の最初の数年間、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)を単剤療法又は2剤併用療法として順次使用したところ、耐性関連変異の出現により、急速に治療失敗に陥った。その後、2つのNRTIを異なる治療クラスの第3の薬剤と組み合わせた併用抗レトロウイルス療法(cART)の使用が標準治療となった。現在の治療ガイドラインでは、初期治療としてデュアルNRTIバックボーンと第3の「アンカー」薬剤[2、3]を組み合わせることをベースにしたcARTが推奨されるという慣例が続いている。)
(摘記1d)
「Methods
We considered for inclusion in this cohort only patients that, at the moment of therapeutic switch, had a HIV-RNA <50 copies/ml for 6 months or longer. All were negative for hepatitis B virus surface antigen, and were on a stable (>6 months) cART generally based on a nucleosidic backbone plus a third anchor agent, or, in a few cases on other complex regimens. Further, only patients with no previous resistance mutations to either integrase inhibitors or lamivudine were selected. Resistance had to be determined by genotypic analysis before the start of cART or afterward in the occasion of viral blips before the current regimen was started. Patients were not included if they had a viral failure following their last genotypic test.」(第2頁左欄下から第5行~右欄第10行)
(方法
このコホートに含める対象として、治療切り替え時にHIV-RNAが6か月以上50コピー/ml未満であった患者のみを検討した。全員がB型肝炎ウイルス表面抗原陰性で、一般的にはヌクレオシド骨格と第3アンカー剤をベースにした安定した(6か月以上)cARTを受けていたが、少数のケースでは他の複合レジメンを受けていた。さらに、インテグラーゼ阻害剤又はラミブジンに対する耐性変異が過去になかった患者のみを選択した。耐性はcARTの開始前、又は現在のレジメン開始前のウイルスの急激な増加時にその後に、遺伝子型分析によって判定する必要があった。最後の遺伝子型検査後にウイルスが消失した患者は含めなかった。)
(摘記1e)
「All patients were switched to a dual combination of dolutegravir (50 mg once daily) plus lamivudine (300 mg once daily). The switch was independent from the decision to include the patients in this cohort. Once included, the patients were followed prospectively for at least six months
Patients were followed accordingly to current clinical practice as indicated from Italian guidelines with visits after 2, 4, 6 month and thereafter every 3-4 months. Each visit included a physical examination and blood and urine analysis performed using standard methods.
For the only seek of this analysis, the primary endpoint was the virological response, defined as the proportion of patients with HIV viral load below 50 copies per milliliter 24 weeks after the switch.」(第2頁右欄下から4行~第3頁左欄第11行)
(すべての患者は、ドルテグラビル(1日1回50mg)とラミブジン(1日1回300mg)の2剤併用に切り替えられた。切り替えは、患者をこのコホートに含める決定とは無関係であった。患者は、組み入れ後、少なくとも6か月間前向きに追跡された。
患者はイタリアのガイドラインに示されている現在の臨床慣行に従って、2、4、6か月後、その後は3~4か月ごとに診察を受けた。各診察には、標準的な方法を使用した身体検査と血液及び尿の分析が含まれていた。この分析の唯一の目的は、切り替え後24週間でHIVウイルス量が1ミリリットルあたり50コピー未満の患者の割合として定義されたウイルス学的反応であった。)
(摘記1f)
「Results
Ninety-four individuals switched their regimen. All of them remained on lamivudine + dolutegravir dual therapy for the whole 24 weeks period. Patients continued the dual therapy thereafter and the median follow-up of the cohort was of 17.4 months (IQR 6.6) for 128.5 patient/years at the moment this report was written」(第3頁左欄第25~31行)
(結果
94人が治療計画を変更した。全員が24週間の期間中ずっとラミブジン+ドルテグラビルの二重療法を継続した。患者はその後も二重療法を継続し、この報告書が書かれた時点でのコホートの平均追跡期間は17.4か月(IQR6.6)、128.5人/年であった。)
(摘記1g)
「Patients were mostly men of middle age and of Italian origin. Baseline characteristics are summarized in Table 1. The patients had a long cART history and were on average on their fourth line of therapy. Most of patients (93.6%) were, at baseline, taking a triple-drug regimen, being the most common backbones tenofovir + emtricitabine (52.1%) or abacavir + lamivudine (36.2%). The most common anchor drugs were efavirenz (28.3%) and nevirapine (13.8%) among NNRTIs and either boosted atazanavir (13.8%) or boosted darunavir (12.8%) among PIs. A previous exposure to INI was documented in 14.9% of individuals. Only 6 subjects were on a dual therapy maraviroc + boosted darunavir (2); raltegravir +boosted darunavir (2); etravirine + boosted darunavir and etravirine + raltegravir (1 each).」」(第3頁左欄第32行~下から8行)
(患者は主に中年のイタリア系男性であった。ベースラインの特徴は表1にまとめられている。患者はcARTの長い治療歴があり、平均して4回目の治療を受けていた。患者のほとんど(93.6%)はベースラインで3剤併用療法を受けており、最も一般的なバックボーンはテノホビル+エムトリシタビン(52.1%)又はアバカビル+ラミブジン(36.2%)であった。最も一般的なアンカードラッグは、NNRTIの中ではエファビレンツ(28.3%)とネビラピン(13.8%)、PIの中ではブーストされたアタザナビル(13.8%)又はブーストされたダルナビル(12.8%)であった。個人の14.9%で以前のINIへの曝露が記録されていた。6名の被験者のみが2剤療法、マラビロク+ブーストされたダルナビル(2)、ラルテグラビル+ブーストされたダルナビル(2)、エトラビリン+ブーストされたダルナビル及びエトラビリン+ラルテグラビル(各1)を受けていた。)
(摘記1h)
「At baseline all patients had a viral load < 50 copies/ml. The same HIV-RNA level was detected in all patients after 2 and 6 months from the switch. Neither virological failure, nor viral blip above 50 copies/ml was detected.」(第3頁右欄下から3行~第4頁左欄第1行)
(ベースラインでは、全ての患者のウイルス量は50コピー/ml未満であった。切り替えから2か月後及び6か月後には、すべての患者で同じHIV-RNAレベルが検出された。ウイルス学的失敗も、50コピー/mlを超えるウイルスの急増も検出されなかった。)
(摘記1i)
「
[図:0001429246000001.jpg]
」(第3頁右欄)
(
[図:0001429246000002.jpg]
)
(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、「HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者に対するラミブジン/ドルテグラビルの併用療法」(摘記1a)について、「ウイルス学的に抑制された患者において標準的なcARTから切り替える際の選択肢として、ラミブジン+ドルテグラビルの併用」を検討したことが記載されている(摘記1b)。(当審注:「cART」は、併用抗レトロウイルス療法(combination antiretroviral therapy)である。摘記1cを参照。)
そして、引用文献1には、「標準的なcART」は、「2つの」「ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)」「を異なる治療クラスの第3の薬剤と組み合わせた併用抗レトロウイルス療法(cART)」(摘記1c)であること、及び、「HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者」として、「標準的なcART」から「3TC+DTGに切り替えた18歳以上」である「94名」の「平均年齢は53歳」(摘記1b)であって、「治療切り替え時にHIV-RNAが6か月以上50コピー/ml未満であった」(摘記1d)「安定した(6か月以上)cARTを受けている」(摘記1b)、「インテグラーゼ阻害剤又はラミブジンに対する耐性変異が過去になかった患者のみを選択」して(摘記1d)登録したことが記載されている。
ここで、「3TC」は「ラミブジン」の略語であり、「DTG」は「ドルテグラビル」の略語であり、「3TC+DTG」はラミブジンとドルテグラビルの併用療法を意味するから、「3TC+DTG」では、ドルテグラビルとラミブジンの組合せ物が投与されていると解される。
また、引用文献1には、「HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者」において、治療を「標準的なcART」から切り替えた「3TC+DTG」の具体的な用量・用法が、「ドルテグラビル(1日1回50mg)とラミブジン(1日1回300mg)の2剤併用」であることが記載されている(摘記1e)。
さらに、引用文献1には、治療を「3TC+DTG」に切り替えた後の経過について、「全員が24週間の期間中ずっとラミブジン+ドルテグラビルの二重療法を継続した」(摘記1f)ところ、「切り替えから2か月後及び6か月後には、すべての患者で同じHIV-RNAレベルが検出され」「ウイルス学的失敗も、50コピー/mlを超えるウイルスの急増も検出され」ず(摘記1h)、「HIV検出限界以下の期間(月)の中央値が77.5%」(摘記1i)であったことが記載されている。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認める。
<引用発明>
「2つのヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)を異なる治療クラスの第3の薬剤と組み合わせた併用抗レトロウイルス療法(cART)において、HIV-RNAが6か月以上50コピー/ml未満であり、安定した(6か月以上)cARTを受けている、インテグラーゼ阻害剤又はラミブジンに対する耐性変異が過去になかった、HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者を治療する方法において、
上記cARTから切り替える、ドルテグラビル(1日1回50mg)とラミブジン(1日1回300mg)の2剤併用療法で使用するための、ドルテグラビルとラミブジンの組合せ物。」
2 引用文献5に記載された事項
引用文献5には、「HIV診療における外来チーム医療マニュアル」(文献タイトル)として、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与したものである。)
(摘記5a)
「(1)抗HIV療法の原則
(・・・中略・・・)治療の目的は血中のHIV-RNA量を検出限界(50コピー/mL)未満に抑制することである。」(第34頁右欄第7~8行)
(摘記5b)
「コラム 血中HIV-RNA量検査の説明
抗HIV療法の開始時期の判断を正確に行うためには、適切な検査を行って血漿中HIVのRNA量を測定する必要がある事を説明する。HIV-RNA量(VL)が高値の場合は薬剤治療を早く開始して体内のHIV量を検出限界以下に抑えることが患者の予後の改善に寄与し、反対にVLが低い場合には治療しなくとも進行が遅いとの報告もあるが、最近では治療の開始時期(前述)にはCD4値が重要視されている。VLは患者の臨床状態を反映する一つの重要な指標であり、特に治療開始後は治療効果の良い指標になる事を説明する。
服薬開始後に予測されるVLの推移について説明する。服薬治療開始後、100%近いアドヒアラスで内服を継続した場合には、2~8週間でVLが1/10に低下し、24週間以内で400コピー/mL未満、48週以内に50コピー/mL未満になると予測される。
服薬によりVLを検出限界未満に抑え続けられれば、CD4値も上昇しAIDSの発病を遅くできる事を説明し、医師の指示に従って正しく服薬する事が患者の健康を保ちQOLを保つために大切である事を説明する。
治療効果の確認には、服薬開始後3ヶ月頃のVLの検査が有用である事を説明する。血漿中HIV-RNA量が検出限界未満になった後も、定期的に受診し、VLを検査し、長期間にわたって観察する事が、患者の健康維持の上で大切である事を説明する。
服薬によってVLが検出限界未満になっても体内のHIVが消失した訳ではなく、服薬を中止すれば速やか(1~3週間)に元のVLに戻ってしまう事を説明する。」(第36頁中欄)
3 引用文献6に記載された事項
引用文献6には、「HIV感染症 治療の手引き」(文献タイトル)として、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与したものである。)
(摘記6a)
「HIV感染症治療の原則
・治療目標は血中ウイルス量(HIV RNA量)を検出限界以下に抑え続けることである。」(第3頁第1~3行)
(摘記6b)
「
[図:0001429246000003.jpg]
」(第4頁中欄)
(摘記6c)
「
[図:0001429246000004.jpg]
」(第6頁)
4 引用文献7に記載された事項
引用文献7には、「抗HIV治療ガイドライン 2016年3月」(文献タイトル)として、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与したものである。)
(摘記7a)
「2.HIV感染症の病状を把握するためのパラメーター
・・・(中略)・・・
(2)血中HIV RNA量
・・・(中略)・・・血中HIV RNA量が200コピー/mLを超える状態が続くと薬剤耐性ウイルスが生じやすくなるという報告8,9,10)などから、DHHSガイドラインではウイルス学的失敗(virologic failure)を「血中HIV RNA量が200コピー/mL未満を維持できない状態」と定義している11)。
抗HIV療法を行う際には、血中HIV RNA量が治療効果判定のための最も重要な指標になる。また、血中HIV RNA量はHIV感染症の進行の早さ、すなわちCD4数の減少速度とある程度の相関傾向があることがわかっている。」(第8頁)
第5 本願優先日当時の周知技術を示す文献に記載された事項
1 抗HIV薬である配合剤について、本願優先日当時の周知技術(以下「周知技術」という。)を示す文献A(日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)130,147-151(2007))には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付与したものである。
(摘記A1)
「1.はじめに
…(略)…抗HIV薬として逆転写酵素阻害薬とプロテアーゼ阻害薬が開発され,これらの薬剤を用いた多剤併用療法(HAART:Highly active antiretroviral therapy)の導入により,今日ではエイズは必ずしも死の病ではなくなっている.」(第147頁左欄第9~18行)
(摘記A2)
「5.抗HIV薬の課題
HAARTの導入によりエイズの発症は抑制可能となったが,現状の抗HIV薬による治療のみではHIVの完全な除去は不可能であることがわかってきている.HIVはプロウイルスとして細胞に存在し続けるため,ウイルスの供給源となる感染細胞が全て消滅しない限りHIV感染症の完治には至らない.血中ウイルス量が検出限界以下に抑えられている患者でも服薬を中止すればウイルス増殖が再燃してしまうため,抗HIV薬を飲み続けなければならない.…(略)…
一方,治療の有効性を高めるためにはアドヒアランス(adherence)の維持も重要であり,患者の負担を減らすためにも服薬のしやすさが求められる.アドヒアランスが不十分であると耐性の出現を招きやすく,治療効果を制限してしまう可能性がある.初期のHAARTでは大量で複雑かつ多数回の服用が必要であったが,今日では1日1回の服用が可能な薬剤が増え,欧米では1日1回1錠の合剤Atripla(EFV+TDF+FTC)がすでに使用されている.」(第150頁右欄下から10行~第151頁右欄末行)
(摘記A3)
「
[図:0001429246000005.jpg]
」(第149頁の表1からの抜粋、四角囲いは当審にて付した。)
2 抗HIV薬である配合剤についての周知技術を示す文献B(ウイルス 第63巻 第2号,pp.199-208,2013)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付与したものである。
(摘記B1)
「抗HIV治療薬は,逆転写酵素阻害薬,プロテアーゼ阻害薬(PI:protease inhibitor),インテグラーゼ阻害薬(INSTI:integrase strand transfer inhibitor),侵入阻害薬(CCR5阻害薬)に大別され,さらに逆転写酵素阻害薬はヌクレオシド系(NRTI:nucleoside/nucleotide reverse transcriptase inhibitor)と非ヌクレオシド系(NNRTI:non-nucleoside reverse transcriptase inhibitor)に分けられる.異なる作用機序の薬剤を適切に組み合わせれば長期的にHIVの増殖を抑制できる.」(第199頁第4~8行)
(摘記B2)
「2013年10月現在,ジドブジン(Zidovudine:AZT(ZDV,レトロビル(R),当審注:(R)は丸囲みにR、以下同様。),ラミブジン(Lamivudine:3TC,エピビル(R)),サニルブジン(sanilvudine:d4T,ゼリット(R)),ジダノシン(Didanosine:ddI,ヴァイデックス(R)),アバカビル(Abacavir:ABC,ザイアジェン(R)),テノホビル(Tenofovir disoproxil fumarete:TDF,ビリアード(R)),エムトリシタビン(Emtricitabine:FTC,エムトリバ(R))の7剤が国内において承認されている.また,ジドブジン/ラミブジンの合剤(AZT/3TC;コンビビル(R)),アバカビル/ラミブジンの合剤(ABC/3TC;エプジコム(R)),テノホビル/エムトリシタビンの合剤(TDF/FTC;ツルバダ(R))も承認されている.現在は,特別な理由のない限り合剤を用いるのが一般的である.)」(第200頁左欄第7~20行)
3 抗HIV薬である配合剤についての周知技術を示す文献C(ドルテグラビルナトリウム/アバカビル硫酸塩/ラミブジン トリーメク配合剤の審査報告書(平成27年2月10日),独立行政法人医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/drugs/2015/P201500026/340278000_22700AMX00630_A100_1.pdf)には、次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付与したものである。
(摘記C1)
「
[図:0001429246000006.jpg]
」
第6 判断
1 本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における「2つのヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)を異なる治療クラスの第3の薬剤と組み合わせた併用抗レトロウイルス療法(cART)」は、本願発明における「少なくとも3剤の(3剤+)抗レトロウイルス療法(ART)レジメン」に相当する。
そして、引用発明における「HIV-RNAが6か月以上50コピー/ml未満であり、安定した(6か月以上)cARTを受けている」ことは、本願発明におけるレジメンを「遵守する、ウイルス学的に抑制されている」ことに相当するから、引用発明における「HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者」は、本願発明における「ウイルス学的に抑制されているヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した対象」に相当する。
(2)引用発明における「ドルテグラビル」及び「ラミブジン」は、本願発明における「抗レトロウイスル薬(ARV)薬」であって「(1)ドルテグラビル(DTG)又はその薬学的に許容される塩」、及び、本願発明における「抗レトロウイルス(ARV)薬」であって「(2)ラミブジン(3TC)又はその薬学的に許容される塩」に、それぞれ相当する。
引用発明における「ドルテグラビル(1日1回50mg)」は、ドルテグラビルの治療用量が50mgであり、当該50mgを1日1回投与するという意味であると解されるところ、「ドルテグラビルの治療用量が50mg」であることは、本願発明における「DTG又はその薬学的に許容される塩の治療用量が約40mg~薬60mgの間」であることに相当する。
引用発明における「ラミブジン(1日1回300mg)」は、ラミブジンの治療用量が300mgであり、当該300mgを1日1回投与するという意味であると解されるところ、「ラミブジンの治療用量が300mg」であることは、本願発明における「3TC又はその薬学的に許容される塩の治療用量が約200mg~約400mgの間」であることに相当する。
そして、引用発明における「ドルテグラビル(1日1回50mg)とラミブジン(1日1回300mg)の2剤併用療法」は、患者に対して、ドルテグラビルの治療用量50mg1日1回投与と、ラミブジンの治療用量300mg1日1回投与する療法であると解されるから、本願発明において「(a)2種のARV薬それぞれの治療用量を対象に1日1回投与すること」に相当する。
(3)引用発明における「ドルテグラビル(1日1回50mg)とラミブジン(1日1回300mg)の2剤併用療法で使用するための、ドルテグラビルとラミブジンの組合せ物」は、本願発明における「それぞれ治療用量の2種のみの抗レトロウイスル(ARV)薬を含」む、「DTG又はその薬学的に許容される塩、及び3TC又はその薬学的に許容される塩」との組合せ物に相当する。
(4)そうすると、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
<一致点>
「少なくとも3剤の(3剤+)抗レトロウイルス療法(ART)レジメンを遵守する、ウイルス学的に抑制されているヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した対象を治療する方法において使用するための組合せ物であって、それぞれ治療用量の2種のみの抗レトロウイスル(ARV)薬を含み、2種のARV薬が、(1)ドルテグラビル(DTG)又はその薬学的に許容される塩、(2)ラミブジン(3TC)又はその薬学的に許容される塩であり、DTG又はその薬学的に許容される塩の治療用量が約40mg~約60mgの間であり、3TC又はその薬学的に許容される塩の治療用量が約200mg~約400mgの間であり、治療する方法が、
(a)2種のARV薬それぞれの治療用量を対象に1日1回投与すること、を含む、組み合わせ物。」
<相違点1>
本願発明は「(b)(a)の21~27、49~55、77~83、161~167、245~251、329~335、又は358~362日後、対象のそれぞれから採取された血漿試料1ミリリットル当たりのHIV RNAのコピー数を得ることと、次いで、
(c)血漿試料1ミリリットル当たり50コピー未満のHIV RNAを有する対象を選択し、2種のARV薬それぞれの別の治療用量を、選択された対象に投与することと」を含むとの特定を有するのに対し、引用発明はそのような特定がない点。
<相違点2>
本願発明は、組合せ物に関し「DTG又はその薬学的に許容される塩、及び3TC又はその薬学的に許容される塩が共に、2剤医薬組成物中にある」との特定を有するのに対し、引用発明はそのような特定がない点。
2 相違点についての判断
(1)上記相違点1について検討する。
ア 引用文献5には、抗HIV療法において、「治療の目的は血中のHIV-RNA量を検出限界(50コピー/mL)未満に抑制すること」(摘記5a)であり、抗HIV療法の開始時期の判断を正確に行うために、「HIV-RNA量(VL)」は「患者の臨床状態を反映する一つの重要な指標であり、特に治療開始後は治療効果の良い指標」(摘記5b)であり、「服薬によりVLを検出限界未満に抑え続け」(摘記5a,5b)ることが治療指針であって、「HIV-RNA量が検出限界未満になった後も」「定期的に受診し、VLを検査し、長期間にわたって観察する事が、患者の健康維持の上で大切である」こと(摘記5b)が、記載されている。
イ 引用文献6には、HIV感染症治療の原則は「治療目標は血中ウイルス量(HIV RNA量)を検出限界以下に抑え続けること」であり(摘記6a)、最低限確保しなければいけない「血中ウイルス量の測定時期」、「測定の目的」及び「抗HIV療法施行への活用」(摘記6b)、及び「抗HIV療法による血中ウイルス量の変化」(摘記6c)が記載されている。
そして、これらの記載から、「血中ウイルス量(HIV RNA量)を検出限界以下に抑え続ける」ためには、「抗HIV療法による血中ウイルス量」を定期的に測定して、抗HIV療法の施行に活用することが重要であることを、当業者は理解するといえる。
ウ 引用文献7には、「HIV感染症の病状を把握するためのパラメーター」について、「血中HIV RNA量が200コピー/mLを超える状態が続くと薬剤耐性ウイルスが生じやすくなるという報告」があり、「抗HIV療法を行う際には、血中HIV RNA量が治療効果判定のための最も重要な指標」になり、「血中HIV RNA量はHIV感染症の進行の早さ、すなわちCD4数の減少速度とある程度の相関傾向があることがわかっている」ことが記載されている(摘記7a)。
エ 上記アの「血中のHIV-RNA量」と上記イの「血中ウイルス量(HIV RNA量)」は実質的に同義であり、上記アの「治療の目的は血中のHIV-RNA量を検出限界(50コピー/mL)未満に抑制すること」と上記イの「治療目標は血中ウイルス量(HIV RNA量)を検出限界以下に抑え続けること」も実質的に同義であると解される。
また、上記アの「HIV-RNA量が検出限界未満になった後も」「定期的に受診し、VLを検査し、長期間にわたって観察する」ことは、具体的に、上記イのとおり、「血中ウイルス量の測定時期」を考慮しつつ「抗HIV療法による血中ウイルス量の変化」を定期的に測定して、抗HIV療法の施行に活用すること(上記イ)に活用することであると解される。
そして、上記ウのとおり、「抗HIV療法を行う際には、血中HIV RNA量が治療効果判定のための最も重要な指標」になるのであるから、上記「血中ウイルス量(HIV RNA量)」は、上記ウの「HIV感染症の病状を把握するためのパラメーター」に相当すると解される。
このように、抗HIV療法(当審注:「抗レトロウイルス療法」の下位概念に相当する。)において、「血中ウイルス量(HIV RNA量)を検出限界以下に抑え続ける」という治療目標を達成するために、患者の「HIV感染症の病状を把握するためのパラメーター」に相当する「血中ウイルス量(HIV RNA量)」を、「測定時期」を考慮しつつ定期的に測定して、抗HIV療法の施行に活用することは、本願優先日当時に広く知られていた事項であるといえる。
オ そうすると、引用発明において、「(b)」のように所定の日数間隔で「対象のそれぞれから採取された血漿試料1ミリリットル当たりのHIV RNAコピー数」を測定することは、抗レトロウイルス療法において通常行われている事項に過ぎず、HIV RNAコピー数の測定間隔を「21~27、49~55、77~83、161~167、245~251、329~335、又は358~362日後」とすることは、患者におけるHIV感染症の病状に応じて、適宜設定される事項に過ぎない。
そして、上記ア、イのとおり、抗HIV療法において、「治療の目的は血中のHIV-RNA量を検出限界(50コピー/mL)未満に抑制すること」及び「抑え続けること」であるから、引用発明において、上記目的を達成するために、引用発明における「HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者」として「血漿試料1ミリリットル当たり50コピー未満のHIV RNAを有する対象」を選択して、引用発明における「組合せ物」を投与することに、格別の創意工夫を要したとはいえない。
カ 以上のとおりであるから、引用発明を、相違点1に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
(2)上記相違点2について検討する。
周知技術を示す文献A~Cに記載された事項(上記第5の1~3)のとおり、抗HIV療法に用いる医薬組成物を、2種類以上の成分を医薬組成物中に配合した形態、いわゆる配合剤の形態で投与することは周知技術であるところ、具体的に、本願優先日当時、ラミブジン(3TC)を含む2剤又は3剤の配合剤が既に販売されており(摘記A3、摘記B2、摘記C1)、特に、「トリーメク配合錠」(摘記C1)は、ドルテグラビルとして50mg、アバカビルとして600mg及びラミブジンとして300mgを含有する「ドルテグラビルナトリウム/アバカビル硫酸塩/ラミブジン」の3剤の配合剤である。
そうすると、引用発明における「組合せ物」を、ドルテグラビルとラミブジンが「共に、2剤医薬組成物中にある」形態にすることによって、引用発明を、相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、単なる周知技術の適用に過ぎず、格別の困難性は認められない。
3 本願発明の効果について
(1)本願発明の組合せ物について、本願明細書には、「本発明の一実施形態において、…(略)…DTG若しくはその薬学的に供与される塩、及び3TC又はその薬学的に許容される塩は、共に、2剤医薬組成物中にある。本発明の2剤医薬組成物は、固定用量組成物、及び/又は錠剤若しくは液体製剤の形態であってもよい。本発明の2剤医薬組成物は、経口で、又は注射によって投与されてもよい。本発明の2剤医薬組成物は、1種以上の非ARV薬を更に含んでもよい。」(【0020】)と記載されており、【図1】には、抗レトロウイルス治療におけるドルテグラビル(DTG)+ラミブジン(3TC)対DTG+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩/エムトリシタビン(TDF/FTC)固定用量配合剤の非劣性の有効性-未処理のHIV-1感染した成体-48週の結果が記載されている(【0031】)。
(2)しかし、上記【図1】に記載の「ドルテグラビル(DTG)+ラミブジン(3TC)」が、「共に、2剤医薬組成物中にある」形態であるのか否かは不明である。
仮に、上記「ドルテグラビル(DTG)+ラミブジン(3TC)」が「共に、2剤医薬組成物中にある」形態であるとしても、本願明細書には、「ドルテグラビル(DTG)+ラミブジン(3TC)」が「共に、2剤医薬組成物中にある」形態である場合と、別々の医薬組成物中にある形態である場合とを比較した実験例の記載はないのであるから、「共に、2剤医薬組成物中にある」形態を採ることに起因する有利な効果があるのか否かは不明である。
(3)また、引用発明は「ドルテグラビルとラミブジンの組合せ物」であるから、上記【図1】に記載されている、「ドルテグラビル(DTG)+ラミブジン(3TC)」と「DTG+テノホビルジソプロキシルフマル酸塩/エムトリシタビン(TDF/FTC)固定用量配合剤」との比較は、引用発明の「ドルテグラビルとラミブジンの組合せ物」と、本願発明の「DTG又はその薬学的に許容される塩、及び3TC又はその薬学的に許容される塩が共に、2剤医薬組成物中にある、組合せ物」との比較を示すものではない。
(4)よって、上記(1)を参酌しても、本願発明によって、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が得られるとはいえない。
4 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和7年4月30日提出の意見書において、以下の(1)及び(2)の趣旨の主張をしている。以下、順次検討する。
(1)拒絶理由通知書における進歩性の判断においては、補正前の本願請求項に係る発明の全ての構成要件に想到するために、幾つかの引用文献の「寄せ集め」が用いられている。よって、いずれの引用文献も本願発明に想到するための十分な知識を当業者に提供していないことは明らかである。
上記主張(1)について検討する。
上記1(4)のとおり、本願発明は引用発明と相違点1及び相違点2で相違する。
上記2(1)のとおり、相違点1については、抗HIV療法において、「血中ウイルス量(HIV RNA量)を検出限界以下に抑え続ける」という治療目標を達成するために、患者の「HIV感染症の病状を把握するためのパラメーター」に相当する「血中ウイルス量(HIV RNA量)」を、「測定時期」を考慮しつつ定期的に測定して、抗HIV療法の施行に活用することは、本願優先日当時に広く知られていた事項であり、引用発明において、「(b)」のように所定の日数間隔で「対象のそれぞれから採取された血漿試料1ミリリットル当たりのHIV RNAコピー数」を測定することは、抗レトロウイルス療法において通常行われている事項に過ぎず、HIV RNAコピー数の測定間隔を「21~27、49~55、77~83、161~167、245~251、329~335、又は358~362日後」とすることは、患者におけるHIV感染症の病状に応じて、適宜設定される事項に過ぎない。そして、「血中のHIV-RNA量を検出限界(50コピー/mL)未満に抑制する」ために、引用発明における「HIV感染者でウイルス学的に抑制された患者」として「血漿試料1ミリリットル当たり50コピー未満のHIV RNAを有する対象」を選択して、引用発明における「組合せ物」を投与することに、格別の創意工夫を要したとはいえない。
また、上記2(2)のとおり、相違点2については、抗HIV療法に用いる医薬組成物を、2種類以上の成分を医薬組成物中に配合した、いわゆる配合剤の形態で投与することは周知技術であるから、引用発明における「組合せ物」を、ドルテグラビルとラミブジンが「共に、2剤医薬組成物中にある」形態にすることは、単なる周知技術の適用に過ぎず、格別の困難性は認められない。
このように、相違点1及び2の判断は、本願優先日当時に広く知られた事項や適宜設定される事項等に基づくものであって、請求人が主張するような「寄せ集め」に基づくものではない。
そして、本願発明に有利な効果は認められないことは、上記3で検討したとおりである。
よって、審判請求人の主張(1)は採用することはできない。
(2)いずれの引用文献においても、単一組成物の一部である2つの成分について言及も示唆もされていない。これが簡単又は容易なことでないことは、医薬組合せ物を作製する技術分野において周知である。2種以上の薬剤の医薬組合せ物を作製することは技術と努力を要し、良好な組合せが得られるとは限らない。所与の投薬レジメンから2つの薬剤を単一製剤に入れるという問題だけでなく、単一製剤における活性成分の適合性、別々に製剤化された薬剤と比較した安定性及びバイオアベイラビリティの維持、組合せ組成物が安全で有効であることを示すための規制上の困難性等、克服すべき多くの課題がある。したがって、本願請求項に係る2剤医薬組成物である組合せ物は、進歩性を有する。
上記主張(2)について検討する。
上記2(2)のとおり、抗HIV療法に用いる医薬組成物を、2種類以上の成分を医薬組成物中に配合した形態、いわゆる配合剤の形態で投与することは周知技術であり、本願優先日当時、ラミブジン(3TC)を含む2剤又は3剤の配合剤も既に販売されていたものである。
そうすると、引用発明における「組合せ物」を、ドルテグラビルとラミブジンが「共に、2剤医薬組成物中にある」形態にすることによって、引用発明を、相違点2に係る本願発明の構成を備えたものとすることは、単なる周知技術の適用に過ぎず、格別の困難性は認められない。
そして、2剤を単一の2剤医薬組成物中に配合する際に活性成分同士の適合性や薬剤安定性、バイオアベイラビリティの維持等が医薬品製剤技術の当業者において問題として想定されるとしても、上記3のとおり、本願明細書には、「ドルテグラビル(DTG)+ラミブジン(3TC)」が「共に、2剤医薬組成物中にある」形態である場合と、別々の医薬組成物中にある形態である場合とを比較した実験例の記載はないのであるから、「共に、2剤医薬組成物中にある」形態を採ることに起因する有利な効果があるとは認められず、本願発明により、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が得られるとはいえない。
よって、審判請求人の主張(2)は採用することはできない。
5 小括
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)、及び、引用文献1及び5~7に記載された事項、並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第7 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)、及び、引用文献1及び5~7に記載された事項、並びに周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-005944