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特許訂正審判

2020-390049

受信装置

審判番号
2020-390049
法域
特許
審判種別
訂正審判(訂正の審決)
出願番号
特願2019-168364外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2020年06月23日
審決日
2020年09月15日
公報発行日
2020年12月25日
結論
訂正認容
審判長/審判官
分類
P141 .852-Y (H04N)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法126条1項特許法126条5項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6703176号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。

結論

【結 論】
特許第6703176号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

理由

目次 ▾ 8項目
【理 由】

第1 手続の経緯

特許第6703176号は、平成30年1月26日(国内優先権主張 平成29年7月7日)に出願された特願2018-11199号の一部を令和元年9月17日に新たな特許出願として出願し、その請求項1~2に係る発明について、令和2年5月11日に特許権の設定登録がされたものである。

そして、令和2年6月23日に本件訂正審判の請求がされたものである。

第2 請求の趣旨及び訂正の内容

本件訂正審判の請求の趣旨は、

「特許第6703176号の明細書及び特許請求の範囲を本件審判請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲の通り、訂正することを認める、との審決を求める。」

というものであって、その訂正の内容は、次の訂正事項からなる。なお、下線部は訂正箇所を示す。

1 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「前記第2の事業体の前記第1b制御情報(EMM)から、固有の第3bキー(Km)を用いて前記第1bキー(Kw)を取得し、前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)から、取得された前記第1bキー(Kw)を用いて、前記デスクランブラに与えるための前記第2bキー(Ks)を取得する、CASモジュールと、」

とあるのを、

「前記第2の事業体の前記第1b制御情報(EMM)から、固有の第3bキー(Km)を用いて前記第1bキー(Kw)を取得し、前記第2の事業体の前記第2b制御情報(ECM)から、取得された前記第1bキー(Kw)を用いて、前記デスクランブラに与えるための前記第2bキー(Ks)を取得する、CASモジュールと、」

に訂正する(請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。)。

2 訂正事項2

明細書の段落【0015】に

「実施形態によれば、第1の事業体が送出する第1のサービス信号を含む第1デジタルテレビジョン放送を受信し、前記第1のサービス信号に含まれる、暗号化された第1aキー(Kw)を含む前記第1の事業体の第1a制御情報(EMM)、暗号化された第2aキー(Ks)を含む前記第1の事業体の第2a制御情報(ECM)ならびに第1スクランブルコンテンツを受信する第1チューナ部と、第2の事業体が送出する第2のサービス信号を含む第2デジタルテレビジョン放送を受信し、前記第2のサービス信号に含まれる、暗号化された第1bキー(Kw)を含む前記第2の事業体の第1b制御情報(EMM)、暗号化された第2bキー(Ks)を含む前記第2の事業体の第2b制御情報(ECM)ならびに第2スクランブルコンテンツを受信する第2チューナ部と、
前記第1チューナ部及び第2チューナ部から出力された前記第1及び第2スクランブルコンテンツをデスクランブルするデスクランブラと、
前記第1の事業体の前記第1a制御情報(EMM)を格納する第1バッファと前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)を格納する第2バッファと、
前記第1チューナ部、前記第2チューナ部、前記デスクランブラ、前記第1バッファ、前記第2バッファを制御する制御部と、
続きを表示(全11行)
前記制御部により制御され、前記第1の事業体の前記第1a制御情報(EMM)から、固有の第3aキー(Km)を用いて前記第1aキー(Kw)を取得し、前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)から、取得された前記第1aキー(Kw)を用いて、前記デスクランブラに与えるための前記第2aキー(Ks)を取得するとともに、
前記第2の事業体の前記第1b制御情報(EMM)から、固有の第3bキー(Km)を用いて前記第1bキー(Kw)を取得し、前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)から、取得された前記第1bキー(Kw)を用いて、前記デスクランブラに与えるための前記第2bキー(Ks)を取得する、CASモジュールと、
を備え、
前記制御部は、前記第1a制御情報(EMM)を受信してから前記第1a制御情報(EMM)に対応した第1aコマンド送信を前記CASモジュールに対して行う第1の期間と、前記第1の期間とは異なる第2の期間であって、前記第1b制御情報(EMM)を受信してから前記第1b制御情報(EMM)に対応した第1bコマンド送信を前記CASモジュールに対して行う前記第2の期間とを設定し、且つ、前記第1の期間に前記第1a制御情報(EMM)を最小R(1以上の整数)個処理すべきこと、また前記第2の期間に前記第1b制御情報(EMM)を最小R(1以上の整数)個処理すべきことを設定している手段と、
前記第1a制御情報(EMM)に対応した前記第1aコマンド送信を、前記第1a制御情報(EMM)を受信してから前記第1の期間内に前記CASモジュールに対して行うまでの間に、前記第1チューナ部により受信した前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)に対応した第2aコマンド送信を前記CASモジュールに対して行う手段と、
前記第1b制御情報(EMM)に対応した前記第1bコマンド送信を、前記第1b制御情報(EMM)を受信してから前記第2の期間内に前記CASモジュールに対して行うまでの間に、前記第2チューナ部により受信した前記第2の事業体の前記第2b制御情報(ECM)に対応した第2bコマンド送信を前記CASモジュールに対して行う手段と、
前記第1チューナ部により受信した前記第1の事業体の第1a制御情報(EMM)を、30秒以内に複数取り込み前記第1バッファに格納し、前記30秒以内に前記複数取り込んだいずれかの前記第1a制御情報(EMM)に対応した第1aコマンド送信を前記CASモジュールに対して行った場合、前記第1バッファに残っている前記第1a制御情報(EMM)を破棄若しくは抑制する手段を、備えた受信装置が提供される。」

とあるのを、

「実施形態によれば、第1の事業体が送出する第1のサービス信号を含む第1デジタルテレビジョン放送を受信し、前記第1のサービス信号に含まれる、暗号化された第1aキー(Kw)を含む前記第1の事業体の第1a制御情報(EMM)、暗号化された第2aキー(Ks)を含む前記第1の事業体の第2a制御情報(ECM)ならびに第1スクランブルコンテンツを受信する第1チューナ部と、第2の事業体が送出する第2のサービス信号を含む第2デジタルテレビジョン放送を受信し、前記第2のサービス信号に含まれる、暗号化された第1bキー(Kw)を含む前記第2の事業体の第1b制御情報(EMM)、暗号化された第2bキー(Ks)を含む前記第2の事業体の第2b制御情報(ECM)ならびに第2スクランブルコンテンツを受信する第2チューナ部と、
前記第1チューナ部及び第2チューナ部から出力された前記第1及び第2スクランブルコンテンツをデスクランブルするデスクランブラと、
前記第1の事業体の前記第1a制御情報(EMM)を格納する第1バッファと前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)を格納する第2バッファと、
前記第1チューナ部、前記第2チューナ部、前記デスクランブラ、前記第1バッファ、前記第2バッファを制御する制御部と、
続きを表示(全11行)
前記制御部により制御され、前記第1の事業体の前記第1a制御情報(EMM)から、固有の第3aキー(Km)を用いて前記第1aキー(Kw)を取得し、前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)から、取得された前記第1aキー(Kw)を用いて、前記デスクランブラに与えるための前記第2aキー(Ks)を取得するとともに、
前記第2の事業体の前記第1b制御情報(EMM)から、固有の第3bキー(Km)を用いて前記第1bキー(Kw)を取得し、前記第2の事業体の前記第2b制御情報(ECM)から、取得された前記第1bキー(Kw)を用いて、前記デスクランブラに与えるための前記第2bキー(Ks)を取得する、CASモジュールと、
を備え、
前記制御部は、前記第1a制御情報(EMM)を受信してから前記第1a制御情報(EMM)に対応した第1aコマンド送信を前記CASモジュールに対して行う第1の期間と、前記第1の期間とは異なる第2の期間であって、前記第1b制御情報(EMM)を受信してから前記第1b制御情報(EMM)に対応した第1bコマンド送信を前記CASモジュールに対して行う前記第2の期間とを設定し、且つ、前記第1の期間に前記第1a制御情報(EMM)を最小R(1以上の整数)個処理すべきこと、また前記第2の期間に前記第1b制御情報(EMM)を最小R(1以上の整数)個処理すべきことを設定している手段と、
前記第1a制御情報(EMM)に対応した前記第1aコマンド送信を、前記第1a制御情報(EMM)を受信してから前記第1の期間内に前記CASモジュールに対して行うまでの間に、前記第1チューナ部により受信した前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)に対応した第2aコマンド送信を前記CASモジュールに対して行う手段と、
前記第1b制御情報(EMM)に対応した前記第1bコマンド送信を、前記第1b制御情報(EMM)を受信してから前記第2の期間内に前記CASモジュールに対して行うまでの間に、前記第2チューナ部により受信した前記第2の事業体の前記第2b制御情報(ECM)に対応した第2bコマンド送信を前記CASモジュールに対して行う手段と、
前記第1チューナ部により受信した前記第1の事業体の第1a制御情報(EMM)を、30秒以内に複数取り込み前記第1バッファに格納し、前記30秒以内に前記複数取り込んだいずれかの前記第1a制御情報(EMM)に対応した第1aコマンド送信を前記CASモジュールに対して行った場合、前記第1バッファに残っている前記第1a制御情報(EMM)を破棄若しくは抑制する手段を、備えた受信装置が提供される。」

に訂正する。

第3 当審の判断

1 訂正事項1について

(1)訂正の目的について

ア 訂正前の請求項1の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

訂正前の請求項1には、以下の記載がある。なお、記載事項1~4は、訂正前の請求項1に記載された順に必要な箇所を抜粋したものであり、記載事項4が、訂正事項1に係る訂正前の請求項1の記載に該当する。

(ア)記載事項1

「第1の事業体が送出する第1のサービス信号を含む第1デジタルテレビジョン放送を受信し、前記第1のサービス信号に含まれる、暗号化された第1aキー(Kw)を含む前記第1の事業体の第1a制御情報(EMM)、暗号化された第2aキー(Ks)を含む前記第1の事業体の第2a制御情報(ECM)ならびに第1スクランブルコンテンツを受信する第1チューナ部」(第1段落)

(イ)記載事項2

「第2の事業体が送出する第2のサービス信号を含む第2デジタルテレビジョン放送を受信し、前記第2のサービス信号に含まれる、暗号化された第1bキー(Kw)を含む前記第2の事業体の第1b制御情報(EMM)、暗号化された第2bキー(Ks)を含む前記第2の事業体の第2b制御情報(ECM)ならびに第2スクランブルコンテンツを受信する第2チューナ部」(第1段落)

(ウ)記載事項3

「前記制御部により制御され、前記第1の事業体の前記第1a制御情報(EMM)から、固有の第3aキー(Km)を用いて前記第1aキー(Kw)を取得し、前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)から、取得された前記第1aキー(Kw)を用いて、前記デスクランブラに与えるための前記第2aキー(Ks)を取得するとともに、」(第5段落)

(エ)記載事項4

「前記第2の事業体の前記第1b制御情報(EMM)から、固有の第3bキー(Km)を用いて前記第1bキー(Kw)を取得し、前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)から、取得された前記第1bキー(Kw)を用いて、前記デスクランブラに与えるための前記第2bキー(Ks)を取得する、CASモジュールと、」(第6段落)

イ 訂正前の明細書の記載について

(ア)訂正前の明細書の記載事項

折りたたみ中(クリックで表示)

訂正前の明細書及び図面には、以下の記載がある。

a 「【0056】
なお、デスクランブルに必要なスクランブル鍵(Ks)を抽出する過程は、図4A、図4Bを用いて詳細に説明する。
【0057】
図4Aは、非特許文献1に記載の、限定受信方式の概念図を示したものである。
続きを表示(全30行)
【0058】
この方式は一般的には3重鍵方式と称されており、スクランブル鍵(Ks)401、ワーク鍵(Kw)402、マスター鍵(Km)403の3つの鍵が利用される。
【0059】
スクランブル鍵(Ks)401と、ワーク鍵(Kw)402と、マスター鍵(Km)403は、放送局200が管理する鍵である。またワーク鍵402を用いてECMを暗号化する暗号化部405、マスター鍵403を用いてEMMを暗号化する暗号化部406も、放送局200が管理する暗号化部である。
【0060】
一方受信機300に挿入されているCASモジュール303は、ワーク鍵422を用いてECMを復号化する復号化部425、マスター鍵423を用いてEMMを復号化する復号化部426は、受信機300に挿入されているCASモジュール303が管理する復号化部である。またCASモジュール303から入手したスクランブル鍵(Ks)を用いて放送波をデスクランブルするデスクランブラ420は、図3が示す受信機300が管理するデスクランブラ302である。
【0061】
放送局200は、スクランブル鍵(Ks)を含むECM410およびワーク鍵(Kw)を含むEMM411を、各々の必要なタイミングで生成する。放送局200は、生成したECM410およびEMM411を、他の番組コンテンツ等と多重化し、その時点でのし放送波により送出するスクランブル鍵(Ks)401を用いてスクランブラ400によりスクランブルし、放送波により送信する。
【0062】
受信機300は、CASモジュール303より入手したスクランブル鍵(Ks)421を用いて、受信した放送波をデスクランブラ420によりデスクランブルし、放送波に含まれている番組コンテンツをユーザに提供する。
【0063】
限定受信方式の目的は、特定の放送局が放送する番組を視聴する権利を取得した加入者のみが、その放送局が放送する番組を視聴出来るようにすることである。このため、加入者の受信機300のみが、放送波で送られてくるスクランブル鍵(Ks)421を取り出せることが必要である。
【0064】
ECM410は、放送局200が送信する受信機共通の関連情報である。ECM410は、スクランブル鍵(Ks)を含んでいる。このECM410は、ワーク鍵(Kw)402を用いて暗号化部405により暗号化されている。
【0065】
EMM411は、放送局200が送信する受信機識別単位(CASモジュールID単位)の関連情報である。EMM411は、ECM410を暗号化するのに用いるワーク鍵(Kw)402を含んでいる。このEMM411は、マスター鍵(Km)403により暗号化部406により暗号化されている。つまり、受信機300は、放送局200が放送するマスター鍵(Km)と1対1に紐づけられた受信機識別単位(CASモジュールID単位)の関連情報であるEMMの中から、搭載したCASモジュール303から得られるCASモジュールID(カードID)により自分宛てのEMMを認識できれば、CASモジュール(ICカード)に秘匿されたマスター鍵(Km)を用いて暗号化されたEMMを復号し中に含まれるワーク鍵(Kw)を取り出すことができ、その取り出したワーク鍵(Kw)を用いて暗号化されたECMを復号し中に含まれるスクランブル鍵(Ks)を取り出すことができる。
【0066】
マスター鍵(Km)423は、CASモジュール(ICカード)に秘匿された状態で格納されている。加入者は、特定の放送局200が放送する番組の視聴する権利を取得する際にCASモジュール(ICカード)303の識別情報であるCASモジュールID(カードID)を放送局に申請することで、放送局200は、管理する鍵管理システム(図示しない)により、申請されたCASモジュールID(カードID)に相対する加入者のCASモジュール303のマスター鍵(Km)423を判別することが可能となる。このようにして放送局200は、加入者のCASモジュール303のマスター鍵423と同一のマスター鍵403を前述の鍵管理システムから入手することができる。
【0067】
つまり、放送局200は、加入者の申請の際に入手した情報CASモジュールID(カードID)によりマスター鍵(Km)403を用いて、EMM411を暗号化することができる。さらに放送局200は、加入者の申請の際に入手したCASモジュールID(カードID)の情報を、EMM411の非暗号化部分に設定することで、送信するEMM411を加入者ごとに設定することができる。
【0068】
受信機300は、受信したEMM411の非暗号化部分にあるCASモジュールID(カードID)の情報から、自分宛てのEMM411を抽出し、抽出した自分宛てのEMM411をCASモジュール303に送信する。EMM411を受信したCASモジュール303は、内部に秘匿した状態で格納してあるマスター鍵(Km)423を用いてEMM411を復号化部426で復号し、ワーク鍵(Kw)422を抽出する。さらにCASモジュール303は、抽出したワーク鍵(Kw)422を用いて、ECM410を復号化部425で復号化し、中に含まれているスクランブル鍵(Ks)421を抽出する。CASカードモジュール303は、抽出したスクランブル鍵(Ks)421を制御部330に送信する。スクランブル鍵(Ks)421を受信した制御部330は、受信したスクランブル鍵(Ks)をデスクランブラ420に送信する。制御部330からスクランブル鍵(Ks)を受信したデスクランブラ420は、受信したスクランブル鍵(Ks)を内部に設定する。
【0069】
受信機300のデスクランブラ420は、内部に設定しているスクランブル鍵(Ks)421を用いて受信した放送波をデスクランブル420し、放送波に含まれている番組コンテンツをユーザに提供する。
【0070】
先に説明したように放送局200は、デスクランブル対象の映像より先行して、デスクランブル対象の映像のスクランブルキー(Ks)を持つECMを送付する。」
b 「【図4A】
」
c 「【0169】
一方EMMは、ECMに比べて即時処理を必要としない属性のものであるが、場合によってはECMほどの即時性はないものの、可及的速やかな処理を要する場合がある。例えば、(a)特定の放送局(事業体)が放送する番組を視聴する権利を取得したい視聴者Aが、加入に関する手続きや加入時のトラブル対応を、加入する放送局(事業体)のカスタマーセンターに電話して、電話の案内に従って自受信機で当該放送局のチャンネルを選局し、視聴者Aの受信機のカードID番号を告げる(b)視聴者Aは、例えば電話を掛けたままの状態で、放送局(事業体)は、電話で告げられたカードID番号を設定したEMMを即時送信する(c)視聴者Aの受信機がEMMを受信し、スクランブル鍵(Ks)を取り出せれば、当該チャンネルの放送信号をデスクランブルすることが可能となる(いわゆる鍵明けが可能となる)(d)これにより、視聴者Aは、契約手続きの完了を確認できる、 上記(a)から(d)のシーンのような場合は、EMM処理もECMほどの即時性はないものの、可及的速やかな処理を要する場合があることは現実である。」

(イ)訂正前の明細書に記載された技術事項

上記(ア)a及びbには、段落【0063】にあるとおり、「特定の放送局が放送する番組を視聴する権利を取得した加入者のみが、その放送局が放送する番組を視聴出来るようにする」ことを目的とした「限定受信方式」が説明されていることから、技術常識に鑑みれば、これらの記載における「放送局200」は「特定の放送局」であり、つまりは、単一の放送局を示すことは明らかである。

そして、上記(ア)cに「放送局(事業体)」とあるとおり、本件特許において、「放送局」と「事業体」とは同じ概念を指すものとして記載されていると認められるところ、本件特許の明細書には、段落【0068】に記載の「EMM411を受信したCASモジュール303は、内部に秘匿した状態で格納してあるマスター鍵(Km)423を用いてEMM411を復号化部426で復号し、ワーク鍵(Kw)422を抽出する。さらにCASモジュール303は、抽出したワーク鍵(Kw)422を用いて、ECM410を復号化部425で復号化し、中に含まれているスクランブル鍵(Ks)421を抽出する。CASカードモジュール303は、抽出したスクランブル鍵(Ks)421を制御部330に送信する。スクランブル鍵(Ks)421を受信した制御部330は、受信したスクランブル鍵(Ks)をデスクランブラ420に送信する。制御部330からスクランブル鍵(Ks)を受信したデスクランブラ420は、受信したスクランブル鍵(Ks)を内部に設定する。」との処理を行うに当たって、スクランブル鍵(Ks)の取得に用いるEMM及びECMとして、単一の事業体から受信した情報を用いることが記載されているものと認められる。

ウ 訂正前の請求項1の記載事項間の関係

折りたたみ中(クリックで表示)

記載事項4によれば、「第2bキー(Ks)」は「前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)から」取得される。

しかしながら、記載事項1によれば、「前記第1の事業体の第2a制御情報(ECM)」には「暗号化された第2aキー(Ks)」が含まれる一方、「前記第1の事業体の第2a制御情報(ECM)」に「第2bキー(Ks)」が含まれる旨は記載されていない。また、記載事項2によれば、「暗号化された第2bキー(Ks)」は「前記第2の事業体の第2b制御情報(ECM)」に含まれる。

したがって、記載事項4の上記取得に関する記載は、「第2bキー(Ks)」の取得元の情報について、記載事項1及び2と整合しない。

また、記載事項3及び4は、それぞれ、CASモジュールにおける「第2aキー(Ks)」及び「第2bキー(Ks)」の取得処理を規定するものである。

そして、記載事項3の「第2aキー(Ks)」の取得においては「第1の事業体」に関連する、「第1a制御情報(EMM)」及び「第2a制御情報(ECM)」(記載事項1の「第1チューナ部」において受信する情報)のみが用いられるのに対して、記載事項4の「第2bキー(Ks)」の取得においては「第2の事業体」に関連する、「第1b制御情報(EMM)」(記載事項2の「第2チューナ部」において受信する情報)のみならず、「前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)」が用いられる。

エ 訂正前の請求項1及び明細書の記載事項間の関係

折りたたみ中(クリックで表示)

上記イ(イ)における検討によれば、訂正前の明細書には、スクランブル鍵(Ks)の取得に用いるEMM及びECMとして、単一の事業体から受信した情報を用いることが記載されている。

それに対して、記載事項4における「第2bキー(Ks)」の取得においては、「第2の事業体」に関連する、「第1b制御情報(EMM)」のみならず、「前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)」が用いられる。

したがって、記載事項4の上記取得に関する記載は、「第2bキー(Ks)」の取得元の情報について、訂正前の明細書の記載事項と整合しない。

オ 小括

上記ウ及びエにおいて検討した不整合から、記載事項1及び2並びに明細書は正しく記載されており、記載事項4は、単一の事業体から受信した情報のみを用いて記述されるべきものと認められる。

また、CASモジュールにおけるデスクランブラに与えるための第2キー(Ks)の取得については、記載事項3に第1の事業体から受信した情報に関する処理が規定されていることから、記載事項4においては、第2の事業体から受信した情報に関する処理が規定されるべきものと認められる。

以上から、記載事項4にある「前記第1の事業体の前記第2a制御情報(ECM)から」との記載は「前記第2の事業体の前記第2b制御情報(ECM)から」と記載すべきものを誤って記載したものであることが明らかである。

したがって、訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものである。

(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であることについて

上記(1)において検討したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された誤記の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の全てを総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。

したがって、訂正事項1は、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことについて

上記(1)において検討したとおり、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された誤記の訂正を目的とするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件について

上記(3)のとおり、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

そして、本件特許は、拒絶の理由を発見しないとして特許されたものであって、当該事情を変更する新たな事情もない。

したがって、本件特許は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであり、訂正事項1は、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。

2 訂正事項2について

訂正事項2は、請求項1の引き写しが記載された明細書の段落【0015】の記載について、訂正事項1と同様の訂正を行うものである。

したがって、訂正事項2に関する(1)訂正の目的、(2)願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること、(3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないこと及び(4)独立特許要件についての判断は、上記1(1)~(4)において検討したとおりである。

よって、訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第2号に規定する「誤記の訂正」を目的とするものであって、特許法第126条第5項~第7項の規定に適合するものである。

第4 むすび

以上のとおり、本件訂正審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第5項ないし第7項の規定に適合するものである。

よって、結論のとおり審決する。

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2020-390049

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