商標取消審判
2020-300368
ビショージョズカン
- 審判番号
- 2020-300368
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2010-030074
- 登録番号
- 5360897
- 請求日
- 2020年06月01日
- 審決日
- 2021年12月15日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 美少女図鑑
- 【請求人代理人】恩田 俊明
- 【被請求人】株式会社 エムアップホールディングス
- 【被請求人代理人】飛松 純一
- 【被請求人代理人】山本 光洋
- 【被請求人代理人】李 未希
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 松江
- 審判官 平澤 芳行
- 審判官 鈴木 雅也
- 分類
- T131 .1 -Z (X093541)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法50条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第7号、商標法第50条第2項、商標法第50条第1項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5360897号商標の商標登録取消審判事件についてされた令和2年12月8日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(令和3年(行ケ)第10003号,令和3年7月19日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5360897号商標の商標登録を取り消す。
審判費用は,被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5360897号商標(以下「本件商標」という。)は,「美少女図鑑」の文字を標準文字で表してなり,平成22年4月15日に登録出願,第9類「インターネットを利用して受信し、及び保存することができる携帯電話機又は簡易型携帯電話機の着信用音楽又は音声,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる携帯電話機又は簡易型携帯電話機の呼出用音楽又は音声,その他のインターネットを利用して受信し、及び保存することができる音楽ファイル又は音声ファイル,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる静止画像あるいは動画像を記録した画像ファイル,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる携帯電話機又は簡易型携帯電話機の待ち受け画面用の画像ファイル,インターネットを利用して受信し、及び保存することができる壁紙用画像ファイル,その他のインターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,電子応用機械器具及びその部品,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM」,第35類「インターネットを利用して受信し、及び保存することができる画像ファイルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」及び第41類「通信回線を利用した音声又は音楽の提供,音楽の演奏,演芸の上演,演劇の演出又は上演,通信回線を利用した画像の提供,映画の上映・制作又は配給,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,ネガフィルムの貸与,ポジフィルムの貸与,おもちゃの貸与,遊園地用機械器具の貸与,遊戯用器具の貸与」を指定商品及び指定役務として,同年10月15日に設定登録されたものである。
そして本件審判の請求の登録日は,令和2年6月18日である。
なお,本件審判において,商標法第50条第2項に規定する「その審判の請求の登録前3年以内」とは,平成29年(2017年)6月18日ないし令和2年(2020年)6月17日である(以下「要証期間」という場合がある。)。
第2 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第39号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品及び指定役務について,継続して3年以上日本国内において商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の使用者
乙第1号証は,本件商標権者が,「株式会社Fanplus」(以下「ファンプラス社」という。)に対し,本件商標の通常使用権を許諾した旨を記載した単独名義書面であり,ファンプラス社の記名押印やその他同社による何らの意思を表明する記載もない。このような一方当事者の事後的な意思表示のみで,過去の特定の時点における通常使用権付与の事実が証明できてしまうと,証拠に基づく事実認定という立証活動の信頼性が著しく揺らいでしまうから,あってはならない。
したがって,本件審判請求後に,本件商標権者が単独で作成した書面(乙1)は,ファンプラス社について,本件商標の通常使用権者としての地位を証明する根拠たり得ない。
(2)使用時期
乙第9号証は,ファンプラス社が運営するウェブサイトの制作会社が,当該サイトが2015年(平成27年)10月15日にアップロードされ(乙4,乙6,乙7を含む。),それ以降現在に至るまで維持されていることを証明する書証であるが,これは同ウェブサイトが所定の画像を提供可能な状態にて維持されていることを証明しているにすぎない。
したがって,上記時点において「美少女図鑑」と表示されたウェブサイトを作成しアップロードした事実は認められるものの,さらに踏み込んで,要証期間のある時期において,同ウェブサイト中に本件商標の表記がされていたことまで認定できない。
(3)本件ウェブサイトのアーカイブデータの取得
ア 請求人は「Wayback Machine」というウェブサービスを利用して,本件ウェブサイトの過去のアーカイブについて調査したところ,乙第4号証のウェブサイトのアドレスのアーカイブデータ(2017年6月12日,同月30日,同年12月16日,2018年6月5日,同年12月6日,2019年6月1日,2020年2月14日)には,「美少女図鑑」の表記はどこにも表示されていない(甲2~甲9)。
したがって,要証期間において,乙第4号証のアドレスのウェブサイトでは,本件商標に係る「美少女図鑑」の表示がなされていなかった時期が複数存在するから,「本件商標『美少女図鑑』は,」「平成27年3月25日から現在に至るまで,」「使用されている」との主張は,乙第4号証により立証できない。
イ 上記のとおり,乙第4号証のウェブサイトにおける本件商標の使用が立証できない以上,同ウェブサイトからリンクされている乙第6号証のウェブサイトによって,要証期間における使用を立証できない。
また,乙第6号証のウェブサイトのアドレスについて,「Wayback Machine」を利用して過去のアーカイブの調査をしたところ,データ取得可能なのは2015年(平成27年)1月8日が直近(甲10)であるから,本件商標に係る要証期間における使用は,乙第6号証により立証できない。
ウ 上記のとおり,乙第4号証及び乙第6号証のウェブサイトにおける本件商標の使用が立証できない以上,同ウェブサイトからリンクされている乙第7号証のウェブサイトによって,要証期間における使用を立証できない。
また,乙第7号証のウェブサイトのアドレスについて,「Wayback Machine」を利用して過去のアーカイブを調査したところ,取得可能なデータが見つからない(甲11)から,本件商標に係る要証期間における使用は,乙第7号証により立証できない。
エ 以上のとおり,被請求人提出の書証(乙4,乙6,乙7)は,いずれも成立経緯が不明で,それら書証に立脚する被請求人の主張は成り立たない。
3 回答書(令和3年10月4日付け)の要旨
(1)被請求人又はファンプラス社による本件使用商標の使用の事実の不存在
被請求人は,本件使用商標の使用の事実に関し,被請求人が,平成28年頃から,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能なウェブサイト(http://(以下省略)。以下「本件ウェブサイト」という。乙14)のトップページ(http://(以下省略)。以下「本件トップページ」という。乙第4号証に本件使用商標が表示されたバナー(以下「本件バナー」という。)を,本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件ウェブページ(乙6)に本件使用商標が表示された本件バナーの画像(本件バナーに使用された画像を一部加工したもの。以下同じ。)を掲載したこと,令和2年4月1月以降は,本件商標の通常使用権者であるファンプラス社が,本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像を継続的に掲載したことにより,被請求人又はファンプラス社が本件使用商標を使用した旨を主張する。
ア しかし,被請求人又はファンプラス社が平成28年頃から要証期間の末日である令和2年6月17日までの間に本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像を掲載したことを客観的に裏付ける証拠は存在しない。
本件トップページを印刷した乙第4号証及び本件ウェブページを印刷した乙第6号証は,いずれも本件審判請求後に印刷されたものであるから,要証期間内に本件トップページ及び本件ウェブページが閲覧可能な状況にあったことを示すものではない。
また,株式会社友ミュージック(以下「友ミュージック社」という。)代表取締役C(以下「C」という。)作成の令和2年9月23日付け証明書(乙9)には,2015年(平成27年)3月25日に本件トップページ及び本件ウェブページに本件使用商標の表示部分をアップロードした旨の記載があるが,この記載は,被請求人主張の本件バナー及びその画像を掲載した時期である平成28年頃と齟齬している。C作成の令和3年4月14日付け陳述書(乙15)の記載も,その内容が客観的事実と整合せず,不自然な点が多々見受けられるものであって,信用できない。
そうすると,要証期間内に,被請求人又はファンプラス社によって本件トップページ及び本件ウェブページに本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像が掲載された事実は存在しない。
イ 次に,被請求人がファンプラス社に対し本件商標の通常使用権を許諾したことの根拠として挙げる,被請求人及びファンプラス社間の2019年5月15日付け吸収分割契約書(以下「本件分割契約書」という。甲31)によって分割された事業は,「ファンクラブサイト事業」であって,被請求人が主張する本件サービスを含む「電子書籍事業」ではないから,本件分割契約書は,ファンプラス社が本件商標の通常使用権者であることの根拠にならない。
ウ したがって,被請求人の前記主張は,失当である。
(2)小括
以上によれば,被請求人は,要証期間内に,日本国内において,被請求人又は本件商標の通常使用権者が,本件商標の指定商品及び指定役務に本件商標を使用していたことを証明したとはいえない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は,本件審判の請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第23号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用者
ア 乙第1号証は,本件商標権者が,本件商標について,ファンプラス社に対し,その設定登録日である平成22年10月15日に通常使用権を許諾したことを示す証明書である。これより,ファンプラス社は,本件商標の通常使用権者といえる。
イ 乙第2号証は,ファンプラス社のホームページを印刷したものであり,沿革に示すとおり,ファンプラス社は,2018年9月に本件商標権者の完全子会社となり,2020年4月に現社名となったもので,本件商標権者のグループ会社である。また,乙第3号証は,本件商標権者のホームページを印刷したものである。
ウ 乙第4号証は,ファンプラス社が運営,管理する,電子写真集を提供するウェブサイト「月刊DIGITAL FACTORY」を印刷したもので,電子写真集「美少女図鑑」のサムネイルが表示されている。
エ 乙第5号証は,「月間DIGITAL FACTORY」のウェブサイト(乙4)の「特定商取引法に基づく表示」をクリックして表示される画面を印刷したものである。そこに表示された「販売業者 株式会社Fanplus」の記載から,ファンプラス社が,乙第4号証の電子写真集を販売,提供していることが分かる。
(2)使用に係る役務
ア 乙第6号証は,乙第4号証のサムネイルにリンクする会員登録者専用の電子写真集「美少女図鑑」のウェブサイトのトップページを印刷したものであり,乙第7号証は,商標「美少女図鑑」を表示した会員登録者専用の画像提供ページを印刷したものである。
ログインした会員登録者が,「美少女図鑑」のサムネイル(乙4)をクリックすると,「美少女図鑑」のトップページ(乙6)に移動し,さらに写真集表示部分(サムネイル)をクリックすると,画像提供ページ(乙7)に移動し,「写真集を見る」をクリックすると,電子化された写真(静止画像)を閲覧できる。
イ 乙第8号証は,「月間DIGITAL FACTORY」の「会員登録」のページを印刷したものであり,会員登録者は,「美少女図鑑」電子写真集を含むコンテンツを閲覧できる。
ウ 以上のとおり,「美少女図鑑」を表示して電子写真集をインターネットにより提供する行為(乙4,乙6,乙7)は,電磁的方法により映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に商標「美少女図鑑」を表示して役務を提供する行為であり,商標法第2条第3項第7号に該当する。
さらに,乙第4号証の「美少女図鑑」のサムネイルは,乙第6号証及び乙第7号証のウェブサイトに誘導するためのもので,バナー広告として作用するから,役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為であり,商標法第2条第3項第8号に該当する。
したがって,ファンプラス社は,本件商標を,第41類「通信回線を利用した画像の提供」について使用している。
(3)使用に係る商標
乙第7号証に表示された「美少女図鑑」の商標は,標準的字体の黒色文字により横一列等間隔で表される。したがって,当該文字の使用は,本件商標の使用に該当する。
また,乙第4号証及び乙第6号証に表示された「美少女図鑑」の商標は,白色縁取りされた桃色明朝体太字で表されている。同商標は,本件商標に類似する商標であって,色彩を登録商標と同一にすれば,登録商標と同一の商標であり,具体的な性状に応じ適宜変更を加えたものであるから,本件商標と社会通念上同一の商標と認められる。
(4)使用時期
乙第9号証は,ホームページ制作会社である友ミュージック社による,本件商標の使用時期を示す証明書である。
友ミュージック社は,上記ウェブサイト(乙4,乙6,乙7)を含む,ファンプラス社のホームページを作成し,2015年(平成27年)3月25日にアップロードし,それ以降現在に至るまで,それらウェブサイトを,会員登録者により画像提供可能な状態で維持している(乙9)。
したがって,ファンプラス社は,本件商標を,2015年(平成27年)3月25日から現在まで継続的に使用している。
2 回答書(令和3年10月14日付け)の要旨
(1)被請求人及びファンプラス社による本件使用商標の使用
ア(ア)被請求人は,平成25年,被請求人の電子書籍事業として,本件サービスを提供する本件ウェブサイト(乙14)を開設し,その運営を開始した。
(イ)ファンプラス社は,令和2年4月1日,被請求人及びファンプラス社間の2019年5月15日付け本件分割契約書(甲31)に基づく会社分割により,被請求人の電子書籍事業を承継し,本件ウェブサイトを運営するようになった。
被請求人は,本件分割契約書に基づいて,ファンプラス社に対し,本件商標の通常使用権を許諾した。
イ(ア)被請求人は,平成28年頃,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件ウェブサイトの本件トップページ(乙4)に本件バナーを,本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件ウェブページ(乙6)に本件バナーの画像を掲載した。
本件バナーには,女性を被写体とする3枚の写真(以下,左の写真を「本件写真1」,中央の写真を「本件写真2」,右の写真を「本件写真3」という。)を背景に,白く縁取りされたピンク色の書体の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。
本件サービスの会員が,本件トップページの本件バナーをクリックすると,本件ウェブページに移動し,さらに,本件ウェブページのサムネイルをクリックすると,画像提供ページ(乙7)に移動し,電子コンテンツを閲覧できる。
(イ)本件バナーの作成及びアップロードの経緯は,次のとおりである。
本件写真1は,平成28年(2016年)5月27日に販売が開始された電子写真集「女子校生 秘密の多い委員長 B」(以下「電子写真集1」という。乙20),本件写真2は,平成26年(2014年)7月18日に販売が開始された電子写真集「女子校生 ここでいいからしたいの D」(以下「電子写真集2」という。乙21),本件写真3は,平成27年(2015年)3月27日に販売が開始された電子写真集「女子校生 いけない妹 E」(以下「電子写真集3」という。乙22)にそれぞれ所収された写真である。
被請求人は,電子写真集1ないし3の販売開始日のそれぞれ2,3か月前頃,所収の写真データを版権元から提供を受けた。
被請求人の担当者は,平成28年頃,電子写真集1ないし3の中から本件写真1ないし3を選択し,本件バナーを作成した。
友ミュージック社は,同年頃,被請求人の担当者から,本件バナーの電子データの送信を受けて,本件ウェブサイトの本件トップページに本件バナーを,本件ウェブページに本件バナーの画像をアップロードした。もっとも,本件バナーの作成に使用されたパソコン端末は既に廃棄され,本件ウェブサイトのサーバーに係る同年頃のログは既に消滅しているため,本件バナーのアップロード時のログ等の電子記録は,現在存在しない。
しかし,本件ウェブページのサムネイルには,具体的なアップロードの日付が表示されており(2018年9月1日等),これらの日付から,本件ウェブページが要証期間内に作成されたことは明らかである。
(2)本件商標の使用該当性
ア 前記(1)イのとおり,被請求人又はファンプラス社は,平成28年頃以降,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件トップページ及び本件ウェブページにおいて本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像をそれぞれ掲載した。
被請求人又はファンプラス社による上記行為は,本件サービスに係る電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に本件使用商標を表示して役務を提供する行為(商標法第2条第3項第7号)に該当し,また,かかる行為は,「美少女図鑑」のコーナーに集約される電子コンテンツの広告としても作用するから,本件サービスに係る役務に関する広告を内容とする情報に本件使用商標を付して電磁的方法により提供する行為(同項第8号)に該当する。
イ 本件使用商標は,本件商標と社会通念上同一の商標であり,また,本件サービスは,本件商標の指定役務中,「通信回線を利用した画像の提供」に該当する。
ウ したがって,被請求人又はファンプラス社による本件トップページ及び本件ウェブページにおける本件使用商標の使用は,要証期間内に,本件商標の指定役務中,「通信回線を利用した画像の提供」に本件商標を使用していたことに該当する。
(3)小括
以上によれば,被請求人は,要証期間内に,日本国内において,被請求人又は本件商標の通常使用権者であるファンプラス社が,本件商標の指定役務中,「通信回線を利用した画像の提供」に本件商標を使用していたことを証明したものといえる。
第4 当審の判断
1 前提事実
証拠及び当事者の主張によれば,次の事実が認められる。
(1)ア 被請求人(旧商号「株式会社エムアップ」)は,平成16年12月14日に設立された,インターネットのホームページの企画立案,インターネットを利用した各種情報の提供サービス,デジタルコンテンツの企画,立案,制作,配信及び販売等を目的とする株式会社である。
イ ファンプラス社は,平成19年3月に設立された,ファンサイト,ファンクラブの企画,開発,運営等を事業内容とする株式会社であり,被請求人の完全子会社である(乙2)。
ウ 被請求人は,令和元年5月15日,ファンプラス社との間で,被請求人を「吸収分割会社」,ファンプラス社を「吸収分割承継会社」とする同日付け本件分割契約書(甲31)を作成し,被請求人がファンクラブサイト事業に関して有する権利義務をファンプラス社に承継させる旨の吸収分割契約を締結した。
ファンプラス社は,令和2年4月1日,上記吸収分割契約に基づく会社分割により,被請求人のファンクラブサイト事業を承継した。
(2)被請求人は,平成25年5月頃,「月刊デジタルファクトリー」の名称で,月額制で会員に向けて,デジタル書籍等をストリーム形式で閲覧させる本件サービスを提供する本件ウェブサイト(乙14)を開設し,その運営を開始した。
その後,ファンプラス社は,令和2年9月16日当時には,本件ウェブサイトを運営管理していた(乙5)。
本件ウェブサイトでは,株式会社新潮社から発刊されていた女性タレントのグラビア雑誌である「月刊シリーズ」のバックナンバーや「月刊シリーズ」の制作に関わった写真家やクリエイターによる新作の写真集等が,電子コンテンツとして扱われている。
2 本件トップページ及び本件ウェブページにおける本件使用商標の使用の有無について
被請求人は,平成28年頃,本件サービスの有料会員のみが閲覧可能な本件ウェブサイトの本件トップページ(乙4)に本件使用商標が表示された本件バナーを,本件バナーのリンク先の「美少女図鑑 作品一覧」の見出しがある本件ウェブページ(乙6)に本件バナーの画像をそれぞれアップロードして,本件バナー及びその画像を掲載したこと,ファンプラス社が,令和2年4月1月以降,本件トップページ及び本件ウェブページにそれぞれ本件バナー及びその画像を継続的に掲載したことにより,被請求人又はファンプラス社が要証期間内に本件使用商標を使用した旨を主張するので,以下において判断する。
(1)乙第4号証は,本件トップページを印刷した書証であり,乙第4号証には,「Fのぶらり商店街」の見出しの下に,本件バナーを含む複数のバナーが表示されている。また,乙第6号証は,本件ウェブページを印刷した書証であり,乙第6号証には,「美少女図鑑 作品一覧」の見出しの下に,本件バナーの画像が表示され,その画像の下には,複数の電子写真集のサムネイルが表示されている。本件バナーには,女性を被写体とする3枚の写真(本件写真1ないし3)を背景に,白く縁取りされたピンク色の書体の「美少女図鑑」の文字からなる本件使用商標が表示されている。
そして,証拠(乙4,乙6,甲26)及び当事者の主張によれば,本件トップページに表示された本件バナーのリンク先が本件ウェブページであること,本件ウェブページに表示された各サムネイルの横には,例えば,「女子校生 先輩は僕のいいなり A 2018-09-01」,「女子校生 純白 B 2018-09-01」等の記載があることが認められる。
しかしながら,乙第4号証及び乙第6号証は,いずれも要証期間経過後の本件審判請求後に印刷されたものであるから,乙第4号証及び乙第6号証が存在するからといって,要証期間(平成29年6月18日から令和2年6月17日までの間)に,本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像が表示されていたものと直ちに認めることはできない。
また,本件バナーのアップロード時のログ等の電子記録は提出されておらず,平成28年頃,本件トップページ及び本件ウェブページに本件バナー及びその画像がアップロードされて掲載されたことを客観的に裏付ける証拠は存在しない。
もっとも,乙第6号証には,本件ウェブページに表示された各サムネイルに係る「2018-09-01」等の日付の記載があるが,これらの日付は,当該サムネイルに係る電子写真集の販売開始日等を示したものとうかがわれ,また,本件バナーのアップロード時期とサムネイルのアップロード時期が当然に同じ時期になるものとはいえないから,これらの日付から,本件バナーが平成28年頃にアップロードされたものと認めることはできない。
(2)次に,C作成の令和3年4月14日付け陳述書(乙15)中には,<1>Cが代表取締役を務める友ミュージック社は,およそ5,6年前に,被請求人の依頼を受け,本件ウェブサイトの会員限定ページに本件バナーをアップロードした,<2>同ページの本件バナーとリンクさせる形で,美少女図鑑のコンテンツ用ページをアップロードした,<3>その後,本件バナーはアップロード時と同じ状態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで本件バナーに変更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,上記記載部分は,本件使用商標を表示する本件トップページ及び本件ウェブページをアップロードした時期が「2015年3月25日」であることを証明する旨のC作成の令和2年9月23日付け証明書(乙9)の記載部分と齟齬するものであるから,措信することができない。
また,G(以下「G」という。)作成の令和3年6月11日付け陳述書(乙23)には,<1>Gは,被請求人に在籍していた,今から5,6年前,被請求人が保有するコンテンツ(乙20~乙22)から女性3名の写真と本件使用商標を使用して,本件バナーを作成し,友ミュージック社に依頼して,本件ウェブサイトの有料会員のみが閲覧できる本件トップページに本件バナーを掲載し,本件バナーのリンク先において,年齢の若い女性を被写体とするコンテンツを一覧化した本件ウェブページを作成した,<2>本件バナーに表示された女性3名の写真は,直近1,2年前に出版された,女子高生シリーズの中で比較的新しい3冊の写真集から選んだものである,<3>その後,本件バナーはアップロード時と同じ状態で会員限定ページに掲載され続けており,現在に至るまで本件バナーに変更を加えていない旨の記載部分がある。
しかし,上記記載部分によっても,本件バナーのアップロードの時期は,およそ5,6年前とあいまいであるのみならず,本件バナーの背景の本件写真1ないし3は,Cが挙げる乙第20号証ないし乙第22号証(電子写真集1~3)記載の写真と異なる構図の写真であるから,乙第20号証ないし乙第22号証は,本件バナーのアップロードが平成28年頃にされたことを直ちに裏付けるものでないことからすると,上記記載部分は措信することができない。
したがって,陳述書(乙15,乙23)から,本件トップページ及び本件ウェブページにそれぞれ本件バナー及びその画像が掲載されたことを認めることはできない。
他に本件使用商標が表示された本件バナー及びその画像が要証期間内に本件トップページ及び本件ウェブページに掲載されていたことを認めるに足りる証拠はない。
(3)小括
以上のとおり,本件商標権者又は本件商標の通常使用権者が,要証期間内に,日本国内において,本件商標の指定役務中,「通信回線を利用した画像の提供」について本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
3 むすび
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが,本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務のいずれかについて,本件商標の使用をしていた事実を証明したものとは認められない。
また,被請求人は,本件審判の請求に係る指定商品及び指定役務について,本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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