特許拒絶査定不服審判
2020-017739
容器洗浄設備及び容器洗浄方法
- 審判番号
- 2020-017739
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-238679外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年12月25日
- 審決日
- 2021年10月20日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】サントリーホールディングス株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人R&C
- 分類
- P18 .121-WZ (B08B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2016-238679「容器洗浄設備及び容器洗浄方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月21日出願公開、特開2018- 94462〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年12月8日の出願であって、令和2年1月14日付けで拒絶理由が通知され、令和2年3月19日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年9月23日付けで拒絶査定がされ、これに対して、令和2年12月25日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出され、当審により令和3年6月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、令和3年8月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1-6に係る発明は、令和3年8月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるとおりのものであるが、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】
内容物を充填する前の容器の少なくとも内面を洗浄する容器洗浄設備であって、
前記容器を、当該容器の周囲を囲むように配置され、前記容器の搬送経路を構成する複数の案内棒から構成され、前記案内棒は少なくとも前記容器の開口部に接する部分が前記搬送経路に沿って不連続に構成されており、前記開口部が下方を向いた倒立状態で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記容器の搬送経路に沿って、前記開口部を介して前記容器の内面に洗浄空気を噴射する洗浄空気供給手段と、前記開口部を介して前記容器の内面に洗浄水を噴射する洗浄水供給手段と、を有し、
前記洗浄水供給手段に、前記洗浄水として、洗浄用水に周囲の空気を吸引混合させて噴射する気液混合ノズルのみが備えられており、
前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の周囲が筐体に覆われており、前記搬送手段が前記筐体に貫通するように配置され、少なくとも前記筐体からの出口部には、水切りカバーが備えられている容器洗浄設備。
第3 拒絶理由の概要
当審にて令和3年6月9日付けで通知した拒絶理由の概要は次のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(引用文献)
1 特開2001-187369号公報
2 実願昭58-45193号(実開昭59-150797号)のマイクロフィルム
第4 引用文献に記載された事項
1 引用文献1
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付した。以下同様。)。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種の缶に内容物を充填する過程において、内容物を充填する前の缶の内面を高速で洗浄するための缶洗浄装置に関するものである。」
イ 「【0005】本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、缶の充填システムにおいて、一層の高速搬送においても、当該缶を、円滑かつ確実に一定値以下の異物残留数および残水量となるように洗浄することができる缶洗浄装置を提供することを目的とするものである。」
ウ 「【0015】
【発明の実施の形態】図1~図10は、本発明の缶洗浄装置を飲料缶の洗浄装置に適用した一実施形態を示すものである。この飲料缶洗浄装置は、水平に対して約25°傾斜したシュート1と、このシュート1に沿って上方から下方に向けて順次設けられたエアリンスユニット2、ウオ-タリンスユニット3、および水切りユニット4とから概略構成されたものである。ここで、エアリンスユニット2の上流側は、飲料缶の充填システムの後段に配設され、開口部を上方に向けた飲料缶を当該飲料缶洗浄装置へ単列で連続的に排出する搬送装置5に接続されており、他方水切りユニット4の下流側は、洗浄後の飲料缶を飲料の充填装置へ送る排出ライン6に接続されている。
【0016】上記シュート1は、本実施形態においては約10φの8本のバー7によって構成されており、これらバー7は、内部に1つの飲料缶(缶)50が納まるように、当該飲料缶50の両側部51、底部52および開口部53に沿って、各々2本ずつ互いに平行になるように、所定間隔をおいて設けられた方形の取付枠7aに支持されている。そして、このシュート1には、バー7の平行を保ちながら、エアリンスユニット2の前段において、開口部53を上方に向けて送られてくる飲料缶50を155°反転させる第1のねじれ部8と、水切りユニット4の後段において、開口部53を下方に向けた飲料缶50を再び155°反転させて開口部53を上方に向けさせる第2のねじれ部9とが形成されている。
【0017】また、エアリンスユニット2およびウオータリンスユニット3は、それぞれ底板、天板および両側板によって外部と区切られたボックス型に形成されている。さらに、水切りユニット4は、ウオータリンスユニット3の出口側に連続して設けられており、底板と両側板とにより、上方が開口したU字状に形成されるとともに、ウオータリンスユニット3との接続部には、水切りカバー3aが設けられている。そして、これらエアリンスユニット2、ウオータリンスユニット3および水切りユニット4内に、シュート1が挿通されている。なお、これらユニット2、3、4内においては、シュート1のバー7およびその取付枠7aが、図7に示すように、下方を向けた飲料缶50の開口部53が鉛直線に対して一側方に25°傾斜するように設けられている。」
エ 「【0019】また、エアリンスユニット2には、バランス用ノズル10の反対側に位置して飲料缶50の開口部53から内部に向けて清浄な空気を噴射する複数本のエアノズル14がシュート1に沿って一定の間隔をおいて配設されている。さらに、ウオ-タリンスユニット3には、飲料缶50の開口部53から内部に向けて洗浄水を噴射する複数本の洗浄ノズル15が同様に一定の間隔をおいて配設されている。なお、これらエアノズル14および洗浄ノズル15は、いずれも飲料缶50の流れ方向に約5°傾斜して設けられている。
【0020】他方、水切りユニット4内のシュート1には、図9に示すように、全てのバー7が不連続になる水切り部16が設けられている。この水切り部16は、上記バー7の上流側および下流側の端部7b、7b同士が、互いに飲料缶の流れ方向と直交する周方向に重複されることにより、飲料缶を連続して搬送可能に形成されているとともに、上記端部7bの重複部は、飲料缶との干渉を避けるために外方に屈曲されている。」
オ 「【0023】以上の構成からなる缶洗浄装置においては、搬送工程を経て搬出装置5から開口部53を上方に向けて単列で排出された飲料缶50が、傾斜したシュート1のバー7内に収められた状態で、順次連続的に上方から下方に向けて送り出されて行く。次いで、これら飲料缶50は、先ずシュート1における第1のねじり部8において、約155°反転されることにより、開口部53を略下側に向けた状態でエアリンスユニット2内に導入される。そして、このエアリンスユニット2内において、エアノズル14から噴射される清浄な空気によって、内部の塵埃等が吹き飛ばされて除去された後に、ウオータリンスユニット3に送られ、ここで洗浄ノズル15から噴射される洗浄水によって残存していた塵埃などが取り除かれる。」
カ 「【0028】また、シュート1の第1のねじれ部8および第2のねじれ部9によって、飲料缶50の開口部53を下側に向けた状態でエアリンスユニット2から水切りユニット4まで通過させているので、缶の自重を利用してバランス用ノズル10から噴射させる空気あるいは液体の圧力を、より低圧にすることができ、さらに開口部53を鉛直線に対して一側方にも約25°傾斜させているので、内部の洗浄水を飲料缶50の内面を伝って円滑に落下させることができる。」
キ 「【0030】ちなみに、本発明者等の実験によれば、図1~図10に示す飲料缶洗浄装置において、エアリンスユニット2に、それぞれ40mmピッチで、4本のバランス用ノズル10と、5本の駆動用ノズル11およびエアノズル14とを設け、ウオータリンスユニット3に、50mmピッチで22本のバランス用ノズル10と、40mmピッチで27本の洗浄ノズル15と、85mmピッチで14本の駆動用ノズル11とを設けて、350ml飲料缶および500ml飲料缶について洗浄を行ったところ、350ml飲料缶の場合に2000缶/分(=140m/min)、500ml飲料缶の場合に1600缶/分(=110m/min)の高速度による洗浄を行うことができ、かつ異物残数も良好であるとともに、残水量のについても350ml飲料缶で平均0.45g、500ml飲料缶で平均0.40mlといった良好な結果が得られた。」
ク 引用文献1には、下に示す【図4】(左上の図)、【図7】(右上の図)及び【図6】(下側の図)が記載されている。
[図:0001380655000001.jpg]
[図:0001380655000002.jpg]
ケ 上記ウの【0016】、上記エの【0020】及び上記オの記載から、シュート1は、飲料缶50の周囲を囲むように配置され、飲料缶50の搬送経路を構成する8本のバー7から構成され、8本のバー7は飲料缶50の開口部53に沿った2本を含めて全てが、飲料缶50の流れ方向に沿って不連続に構成されていることが理解できる。
コ 上記ウの【0015】、上記オ及び上記カの記載から、飲料缶洗浄装置は、シュート1と、飲料缶50が順次連続的に送り出されて行くシュート1に沿って上方から下方に向けて順次設けられた、エアリンスユニット2とウオ-タリンスユニット3と、を有すること、及び、シュート1は、飲料缶50を、飲料缶50の開口部53を下側に向けた状態で搬送することが理解できる。
サ 上記エの【0019】及び上記キの記載から、ウオータリンスユニット3に、洗浄水を噴射するノズルとして複数本の洗浄ノズル15のみが備えられていることが理解できる。
シ 上記ウの【0017】の記載、上記クに示す引用文献1の【図6】及び【図7】の図示内容から、エアリンスユニット2のエアノズル14及び空気配管の少なくとも一部と、ウオータリンスユニット3の洗浄ノズル15及び水配管の少なくとも一部は、それぞれの周囲がボックス型の外殻により覆われており、シュート1がエアリンスユニット2のボックス型の外殻及びウオータリンスユニット3のボックス型の外殻に挿通されており、ウオータリンスユニット3のボックス型の外殻と水切りユニット4との接続部には、水切りカバー3aが設けられていることが理解できる。
(2)引用発明
上記(1)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明)
「内容物を充填する前の飲料缶50の内面を高速で洗浄するための飲料缶洗浄装置であって、
飲料缶50を、飲料缶50の周囲を囲むように配置され、飲料缶50の搬送経路を構成する8本のバー7から構成され、8本のバー7は飲料缶50の開口部53に沿った2本を含めて全てが、飲料缶50の流れ方向に沿って不連続に構成されており、飲料缶50の開口部53を下側に向けた状態で搬送するシュート1と、
飲料缶50が順次連続的に送り出されて行くシュート1に沿って上方から下方に向けて順次設けられた、飲料缶50の開口部53から内部に向けて清浄な空気を噴射するエアリンスユニット2と、飲料缶50の開口部53から内部に向けて洗浄水を噴射するウオータリンスユニット3と、を有し、
ウオータリンスユニット3に、洗浄水を噴射するノズルとして複数本の洗浄ノズル15のみが備えられており、
エアリンスユニット2のエアノズル14及び空気配管の少なくとも一部と、ウオータリンスユニット3の洗浄ノズル15及び水配管の少なくとも一部は、それぞれの周囲がボックス型の外殻により覆われており、シュート1がエアリンスユニット2のボックス型の外殻及びウオータリンスユニット3のボックス型の外殻に挿通されており、ウオータリンスユニット3のボックス型の外殻と水切りユニット4との接続部には、水切りカバー3aが設けられている飲料缶洗浄装置。」
2 引用文献2
(1)引用文献2には、以下の事項が記載されている。
ア 「・・・そこで、本考案では瓶内の洗浄を迅速且つ確実に行い、洗浄に使用する水量を減らし、中和処理排水総量を減少させ公害対策を容易とし、且つ高圧水に使用するポンプエネルギーを減少させることを目的として、瓶の洗浄に空気混入高圧水を用いたものである。」(明細書第2ページ第2-7行)
イ 「瓶1を開口を下方に向けて適宜手段にて支持する。瓶1の開口の下方に空気混入高圧水噴射管2を対向して配置する。空気混入高圧水噴射管2内には管内ノズル3を設けポンプPにより高圧水を噴射する。管内ノズル3開口部の高圧水噴射により負圧発生部に空気導入管4を接続する。管内ノズル3より高圧水を噴射すると開口負圧部に空気導入管4より大気中の空気が導入され高圧水内に空気が混入し空気混入高圧水(混気ジェット)となる。この空気混入高圧水を瓶内に噴入させる。」(明細書第2ページ第10-19行)
(2)引用文献2に記載された技術
上記イの記載から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。
(引用文献2に記載された技術)
「瓶の洗浄水を噴射するノズルに、高圧水に周囲の空気を吸引混合させて噴射する空気混入高圧水噴射管2(気液混合ノズル)を用いる技術。」
第5 対比、判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「飲料缶50」は本願発明の「容器」に相当し、同様に、「飲料缶50の内面を高速で洗浄するための」という事項は「容器の少なくとも内面を洗浄する」という事項に、「飲料缶洗浄装置」は「容器洗浄設備」に、それぞれ相当する。
引用発明の「8本のバー7」は本願発明の「複数の案内棒」に相当し、同様に、「開口部53」は「開口部」に、「流れ方向」は「搬送経路」に、「8本のバー7は飲料缶50の開口部53に沿った2本を含めて全てが、飲料缶50の流れ方向に沿って不連続に構成されており」との事項は「前記案内棒は少なくとも前記容器の開口部に接する部分が前記搬送経路に沿って不連続に構成されており」との事項に、「飲料缶50の開口部53を下側に向けた状態」という事項は「前記開口部が下方を向いた倒立状態」という事項に、「シュート1」は「搬送手段」に、それぞれ相当する。
引用発明の「飲料缶50が順次連続的に送り出されて行くシュート1に沿って上方から下方に向けて順次設けられた」との事項は、本願発明の「前記搬送手段による前記容器の搬送経路に沿って」との事項に相当し、同様に、「飲料缶50の開口部53から内部に向けて」という事項は「前記開口部を介して前記容器の内面に」という事項に、「清浄な空気」は「洗浄空気」に、「エアリンスユニット2」は「洗浄空気供給手段」に、「ウオータリンスユニット3」は「洗浄水供給手段」に、それぞれ相当する。
イ 引用発明の「複数本の洗浄ノズル15のみ」と、本願発明の「前記洗浄水として、洗浄用水に周囲の空気を吸引混合させて噴射する気液混合ノズルのみ」とは、「洗浄水を噴射する同じ種類のノズル」という限りにおいて一致する。
引用発明の「ボックス型の外殻」は本願発明の「筐体」に相当し、引用発明の「エアリンスユニット2のエアノズル14及び空気配管の少なくとも一部と、ウオータリンスユニット3の洗浄ノズル15及び水配管の少なくとも一部は、それぞれの周囲がボックス型の外殻により覆われており」との事項と、本願発明の「前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の周囲が筐体に覆われており」との事項とは、「前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の少なくとも一部が筐体に覆われており」との事項という限りにおいて一致する。
引用発明の「挿通されており」との事項は本願発明の「貫通するように配置され」との事項に相当し、同様に、「ボックス型の外殻と水切りユニット4との接続部」は「少なくとも前記筐体からの出口部」に、「水切りカバー3a」は「水切りカバー」に、「設けられている」との事項は「備えられている」との事項に、それぞれ相当する。よって、引用発明の「シュート1がエアリンスユニット2のボックス型の外殻及びウオータリンスユニット3のボックス型の外殻に挿通されており、ウオータリンスユニット3のボックス型の外殻と水切りユニット4との接続部には、水切りカバー3aが設けられている」との事項は、本願発明の「前記搬送手段が前記筐体に貫通するように配置され、少なくとも前記筐体からの出口部には、水切りカバーが備えられている」との事項に相当する。
(2)以上の対比を総合すると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点>
「内容物を充填する前の容器の少なくとも内面を洗浄する容器洗浄設備であって、
前記容器を、当該容器の周囲を囲むように配置され、前記容器の搬送経路を構成する複数の案内棒から構成され、前記案内棒は少なくとも前記容器の開口部に接する部分が前記搬送経路に沿って不連続に構成されており、前記開口部が下方を向いた倒立状態で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記容器の搬送経路に沿って、前記開口部を介して前記容器の内面に洗浄空気を噴射する洗浄空気供給手段と、前記開口部を介して前記容器の内面に洗浄水を噴射する洗浄水供給手段と、を有し、
前記洗浄水供給手段に、洗浄水を噴射する同じ種類のノズルが備えられおり、
前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の少なくとも一部が筐体に覆われており、前記搬送手段が前記筐体に貫通するように配置され、少なくとも前記筐体からの出口部には、水切りカバーが備えられている容器洗浄設備。」
<相違点1>
洗浄水を噴射する同じ種類のノズルに関して、本願発明は、「洗浄水として、洗浄用水に周囲の空気を吸引混合させて噴射する気液混合ノズルのみ」であるのに対して、引用発明は、複数本の洗浄ノズル15のみであるものの洗浄ノズル15の具体的構成が明らかでない点。
<相違点2>
前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の少なくとも一部が筐体に覆われていることに関して、本願発明は、「前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の周囲が筐体に覆われて」いるのに対して、引用発明は、エアリンスユニット2のエアノズル14及び空気配管の少なくとも一部と、ウオータリンスユニット3の洗浄ノズル15及び水配管の少なくとも一部は、それぞれの周囲がボックス型の外殻により覆われている点。
2 判断
以下、相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1の段落【0005】(上記「第4」1(1)イ)には、発明が解決しようとする課題として「缶の充填システムにおいて、一層の高速搬送においても、当該缶を、円滑かつ確実に一定値以下の異物残留数および残水量となるように洗浄することができる缶洗浄装置を提供すること」が記載されている。
一方、引用文献2には、上記「第4」2のとおり、「瓶内の洗浄を迅速且つ確実に行い、洗浄に使用する水量を減らし、中和処理排水総量を減少させ公害対策を容易とし、且つ高圧水に使用するポンプエネルギーを減少させること」を目的として、「瓶の洗浄水を噴射するノズルに、高圧水に周囲の空気を吸引混合させて噴射する空気混入高圧水噴射管2(気液混合ノズル)を用いる技術」(引用文献2に記載された技術)が記載されている。
引用発明と引用文献2に記載された技術とは、容器洗浄設備に関するものであり、技術分野が共通する上、容器内の洗浄を迅速且つ確実に行う点で、解決しようとする課題が共通する。また、節水やエネルギーの節約は広く知られた要請であり、引用発明においてもこのような要請を考慮すべきことは当然である。
してみれば、引用発明において、さらに缶内の洗浄を迅速且つ確実に行い、あわせて節水やエネルギーの節約を図るために、引用文献2に記載された技術を適用し、ウオータリンスユニット3に設ける洗浄ノズル15を、高圧水に周囲の空気を吸引混合させて噴射する空気混入高圧水噴射管(気液混合ノズル)として、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点2について
本願発明における「前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の周囲が筐体に覆われており」との事項は、「洗浄空気供給手段」や「洗浄水供給手段」がいかなる要素により構成されているのかが不明であることにより、「前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の周囲」が具体的にどのような空間領域を表すのか必ずしも明確でない。
そこで、明細書の段落【0035】の記載「洗浄空気供給手段10は、空気の供給源(図示せず)と、空気配管12と、缶2の開口部2aを介して缶2の内面に洗浄空気を噴射する空気ノズル13と、空気ノズル13から噴射しようとする空気に電荷を印加しイオン化させるイオナイザ14とを備えている。・・・」、及び段落【0040】の記載「洗浄水供給手段11は、洗浄用水の供給源(図示せず)と、水配管15と、搬送経路から一定の距離を維持しながら設置されたヘッダ管16と、ヘッダ管16に所定間隔ごとに備えられた複数の気液混合ノズル17とを備えている。・・・」を参酌すると、「前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の周囲」とは、洗浄空気供給手段における空気の供給源、空気配管12、空気ノズル13及びイオナイザ14、並びに洗浄水供給手段における洗浄用水の供給源、水配管15、ヘッダ管16及び複数の気液混合ノズル17を取り囲む空間領域を意味すると解されるものの、段落【0048】に「洗浄空気供給手段10及び洗浄水供給手段11の周囲は、筐体に覆われていることが好ましく、その際、筐体の内部は陽圧に維持されると、新たな異物の混入が防止できる点で好ましい。・・・」との記載があることを勘案すると、缶2の比較的近傍に位置する洗浄空気供給手段の空気ノズル13及び空気配管12の少なくとも一部、並びに洗浄水供給手段の複数の気液混合ノズル17、ヘッダ管16及び水配管15の少なくとも一部のみを取り囲む空間領域を意味するとの解釈もできる。
よって、本願発明における「前記洗浄空気供給手段及び前記洗浄水供給手段の周囲が筐体に覆われており」との事項は、洗浄空気供給手段の空気ノズル及び配管(空気配管)の少なくとも一部、及び洗浄水供給手段の気液混合ノズル及び配管(ヘッダ管、水配管)の少なくとも一部の周囲が筐体に覆われている構成も含むものである。
そうすると、引用発明も、上記相違点2に係る本願発明の構成を備えているといえるから、上記相違点2は実質的な相違点ではない。
仮に本願発明の「筐体」が、上記の缶の比較的近傍に位置する空間ではなく、洗浄空気供給手段及び洗浄水供給手段の構成要素の大部分もしくは全てを内包するような広い空間領域を覆うものであったとしても、引用発明において、エアリンスユニット2とウオータリンスユニット3をそれぞれ覆うボックス型の外殻(筐体)を、これらユニットを空気や水の供給ラインも含めて覆うような大きさのものとして作製することは、当業者が必要に応じて適宜なし得た程度の事項にすぎない。また、仮に本願発明が一つの「筐体」のみを備えるものであったとしても、引用発明において、エアリンスユニット2とウオータリンスユニット3とにそれぞれ設けられたボックス型の外殻(筐体)を一体とした構成とすることも、当業者が適宜行い得た単なる設計上の事項にすぎない。
(3)請求人の主張について
請求人は、令和3年8月12日提出の意見書において、「本願発明は、洗浄水供給手段に気液混合ノズルのみが備えられ、搬送手段が、容器の周囲を囲むように配置され、前記容器の搬送経路を構成する複数の案内棒から構成され、前記案内棒は少なくとも前記容器の開口部に接する部分が前記搬送経路に沿って不連続に構成されており、さらに当該不連続な案内棒と水切りカバーとを組み合わせることによって、洗浄水の使用量を低減しながら、その低減された洗浄水を、さらにより効率的に水切りできるため、充填設備5に到達するまでの搬送中に素早く自然乾燥させることができます。」と主張している。
しかしながら、引用発明は「飲料缶50を、飲料缶50の周囲を囲むように配置され、飲料缶50の搬送経路を構成する8本のバー7から構成され、8本のバー7は飲料缶50の開口部53に沿った2本を含めて全てが、飲料缶50の流れ方向に沿って不連続に構成されて」いる「シュート1」を有しており、かかる構成により「・・・バー7を伝わって流れる洗浄水についても、当該水切り部16において遮断して、水切りユニット4の底部の排水口13から排水することができる。・・・」(引用文献1の段落【0029】)との作用効果、すなわち洗浄水を効率的に水切りするという作用効果が奏されるものである。
また、引用文献2には、上記(1)のとおり、「瓶の洗浄水を噴射するノズルに、高圧水に周囲の空気を吸引混合させて噴射する空気混入高圧水噴射管2(気液混合ノズル)を用いる」技術により、「洗浄に使用する水量を減ら」すという作用効果が奏されることが記載されている。
さらに、本願発明が、「水切りカバー」により「さらに効率的に水切りできる」作用効果を奏することは、明細書のいずれの箇所にも記載されておらず、かかる主張は明細書の記載に基づく主張ではないが、仮に当該主張を受け容れたとしても、引用発明においても、ウオータリンスユニット3のボックス型の外殻と水切りユニット4との接続部に水切りカバー3aが設けられており、水切りユニット4にシュート1には、全てのバー7が不連続になる水切り部16が設けられている(引用文献1の段落【0020】)ことから、水切り部16と水切りカバー3a(不連続な案内棒と水切りカバーとを組み合わせること)によって、本願発明と同様に「洗浄水を、さらにより効率的に水切りできる」という作用効果が奏されるものである。
そうすると、請求人の主張する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された技術から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものではない。
(4)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2020-017739