特許拒絶査定不服審判
2020-014272
湾曲したカバーガラスとディスプレイまたはタッチパネルを有する乗り物内装システムおよびその形成方法
- 審判番号
- 2020-014272
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-518105
- 請求日
- 2020年10月12日
- 審決日
- 2022年03月23日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コーニング インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】柳田 征史
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 尚之
- 審判官 河本 充雄
- 審判官 後藤 政博
- 分類
- P18 .121-Z (B60K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-518105「湾曲したカバーガラスとディスプレイまたはタッチパネルを有する乗り物内装システムおよびその形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 7月12日国際公開、WO2018/129065、令和 2年 6月25日国内公表、特表2020-518495〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は,2018年(平成30年)1月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2017年1月3日,米国(US) 2017年7月7日,米国(US) 2017年7月10日,米国(US) 2017年8月21日,米国(US) 2017年12月18日,米国(US))を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 6月27日 :翻訳文提出
同年10月23日 :手続補正書の提出
同年12月25日付け:拒絶理由通知書
令和2年 4月 8日 :意見書,手続補正書の提出
同年 6月 8日付け:拒絶査定
同年10月12日 :審判請求書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1~30に係る発明は,令和2年4月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~30に記載された事項により特定されるものであり,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】
乗り物内装システムにおいて,
曲面を有する基部と;
ディスプレイであって,
第1の主面,該第1の主面と反対の第2の主面,および該第1の主面と第2の主面を接続する副面,該第1の主面と第2の主面との間の距離として定義される厚さ,該厚さに対して垂直な該第1または第2の主面の一方の第1の寸法として定義される幅,および該厚さと該幅の両方に対して垂直な該第1または第2の主面の一方の第2の寸法として定義される長さを有する湾曲した冷間曲げされたガラス基板であり,前記厚さは1.5mm以下であり,前記幅は約5cmから約250cmの範囲にあり,前記長さは約5cmから約250cmであり,前記第2の主面は,20mm以上の第1の曲率半径を有する湾曲した冷間曲げされたガラス基板,および
前記第2の主面に取り付けられ,第2の曲率半径を有するディスプレイモジュール,を含むディスプレイと;
を備え,
前記曲面が前記ディスプレイを含み,
前記湾曲した冷間曲げされたガラス基板が,前記曲面に組み込まれており,
前記第1の曲率半径が,前記曲面の曲率半径および前記第2の曲率半径の内の一方または両方の10%以内の差を有する,乗り物内装システム。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1~3,11~15及び18に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明に基づいて,請求項4~8,19~22及び25に係る発明は,以下の引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,請求項9,16,26~28及び30に係る発明は,以下の引用文献1及び3に記載された発明に基づいて,請求項10及び17に係る発明は,以下の引用文献1及び4に記載された発明に基づいて,請求項23に係る発明は,以下の引用文献1,2及び3に記載された発明に基づいて,請求項24に係る発明は,以下の引用文献1,2及び4に記載された発明に基づいて,請求項29に係る発明は,以下の引用文献1,3及び4に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
1.国際公開第2016/196531号
2.特開2007-188035号公報(周知技術を示す文献)
3.国際公開第2016/069113号
4.特表2016-500458号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には,次の記載がある(なお,引用文献1の記載事項は,当審の訳文で示す。また,訳文の作成にあたっては,日本語ファミリーである特表2018-526302号公報を参照した。)。
「[0009] いくつかの実施の形態において,第1と第2の基板のいずれか一方又は両方の厚さは,約1.5mm以下である。基板が強化されている場合,そのような基板の厚さは約1.0mm以下である。
[0010] 1つ以上の実施の形態の積層体は,乗り物,建築建具,建築構造,電化製品,家庭用電子機器,家具,案内所,及び売店などの物品に組み込まれることがある。」
「[0035] 1つ以上の実施の形態において,前記積層体は,第1と第2の基板の間に配置されたディスプレイユニットを備えることがある。ある場合には,そのディスプレイユニットは,中間層と第2の基板の間,又は第1の基板と中間層の間に配置されることがある。他の実施の形態において,そのディスプレイユニットは,基板の一方又は両方と一体成形されている。さらに他の実施の形態において,そのディスプレイユニットは,視聴者に対して,積層体の背面,又は積層体の前面に配置されている。そのディスプレイユニットは,マイクロLEDアレイ,OLEDアレイ,LCDアレイ,プラズマセルアレイ,及びエレクトロルミネセント(EL)セルアレイのいずれか1つ以上を備えた画像パネルを備えることがある。いくつかの実施の形態において,そのディスプレイユニットは,ここに記載されるような,光応答性材料又は他の層によって形成された散乱表面を利用する投影源であることがある。」
「[0037] 様々な例示の非限定的実施の形態において,第1と第2の基板の1つ以上が,ガラス材料(例えば,ソーダ石灰ガラス,アルカリアルミノケイ酸塩ガラス,アルカリ含有ホウケイ酸ガラス,及び/又はアルカリアルミノホウケイ酸塩ガラス),ガラスセラミック材料,高分子材料,及び/又はポリセラミック材料から作られることがある。その基板は,様々な実施の形態において,1枚のシート又は積層体又は積重構造の一部として設けられることがある。その基板に積層体又は積重構造が用いられる例示の実施の形態において,その基板の各層は同じ又は異なる材料から選択されてよく,その基板の各層は,互いに直接物理的に接触しても,又は介在層(接着層など)又は間隙(例えば,空隙)により互いから隔てられてもよい。」
「[0058] 1つ以上の実施の形態において,前記積層体は,複雑に湾曲した形状を有することがある。ここに用いたように,「複雑な曲線」,「複雑に湾曲した」,「複雑な湾曲基板」,及び「複雑に湾曲した基板」は,非可展形状とも称される,複合曲線を有する非平面形状を意味し,それには,以下に限られないが,球面,非球面,及び2つの直交軸(水平軸と垂直軸)の曲率が異なる(例えば,トロイダル形状,偏球,扁平楕円体,長球,長楕円体であることがある),又は2つの直交面に沿った面の主曲率が反対である(例えば,馬や猿の鞍などの鞍形状又は面),トロイダル面が挙げられる。複雑な曲線の他の例としては,以下に限られないが,楕円双曲面,双曲放物面,及び複雑な曲線が一定又は変動する曲率半径を有することがある,球面円柱表面が挙げられる。前記複雑な曲線は,そのような表面のセグメント又は部分を含んでも,そのような曲線及び表面の組合せから構成されてもよい。・・・
[0060] 1つ以上の実施の形態において,前記曲率半径は,1000mm未満,又は750mm未満,又は500mm未満,又は300mm未満であることがある。様々な実施の形態において,その積層体は,積層体のエッジでのものを含む,しわ又は光学的歪みを実質的に含まない。
[0061] 1つ以上の実施の形態において,前記積層体は,冷間成形積層体として特徴付けられることがある。そのような実施の形態において,その積層体は,第1の湾曲基板及び実質的に平面の第2の基板を備え,その第2の基板は,第1の基板の曲率に合わせて冷間成形される。
[0062] ここに用いたように,冷間成形は,基板及び/又は積層体が,複雑に湾曲した積層体を提供するために,第1と第2の基板の軟化温度より低い温度で形成される成形過程を含む。
・・・
[0065] ここに記載された積層体は,自動車,ボート,及び航空機などの乗り物(例えば,風防,窓又は側部窓(sidelite),鏡,支柱,ドアのサイドパネル,ヘッドレスト,ダッシュボード,コンソール,又は乗り物の椅子,もしくはそのいずれかの部分),建築建具又は構造(例えば,建物の内壁又は外壁,及びフロアリング),電化製品(例えば,冷蔵庫,オーブン,ストーブ,洗濯機,乾燥機,又は別の電化製品),家庭用電子機器(例えば,テレビ,ラップトップコンピュータ,コンピュータのモニタ,並びに携帯電話,タブレット,及び音楽プレーヤーなどの携帯型電子機器),家具,案内所,売店などに使用することができる。」
「特許請求の範囲
1.第1の基板,
第1の基板上に配置された中間層,及び,
中間層上に配置された第2の基板,
を備え,
積層体が,複雑に湾曲しており,光応答性材料を含む,積層体。
・・・
4.ディスプレイユニットをさらに備え,
ディスプレイユニットが,
第1の基板及び第2の基板の間に配置されている,
第1の基板及び第2の基板の一方又は両方と一体である,又は,
ユーザに対して積層体の背後に配置されている,
前記請求項のいずれかに記載の積層体。」
以上から,特許請求の範囲1には,特定構造の積層体について記載されている。そして,特許請求の範囲4及び[0035]には,積層体がディスプレイユニットをさらに備え,当該ディスプレイユニットが中間層及び第2の基板との間に配置されること,[0010],[0065]には,積層体が乗り物のダッシュボードに組み込まれること,[0009]には,第1と第2の基板の両方の厚さが約1.5mm以下であること,[0037]には,第1と第2の基板がガラス材料から作られること,[0058],[0060]には,積層体が一定の曲率半径を有し,当該曲率半径が1000mm未満であること,[0061],[0062]には,積層体が冷間成形積層体として特徴付けられ,当該冷間成形は基板が,複雑に湾曲した積層体を提供するために,第1と第2の基板の軟化点温度より低い温度で形成される成形過程を含むことが,それぞれ記載されているといえる。
(2)引用文献1に記載された発明
したがって,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「積層体が組み込まれる乗り物のダッシュボードであって,
前記積層体は,
第1の基板,
前記第1の基板上に配置された中間層,及び,
前記中間層上に配置された第2の基板,
を備え,
前記積層体が,複雑に湾曲しており,光応答性材料を含み,
ディスプレイユニットをさらに備え,
前記ディスプレイユニットが,
前記中間層及び第2の基板の間に配置されており,
前記第1と第2の基板の両方の厚さは,約1.5mm以下であり,
前記第1と第2の基板が,ガラス材料から作られており,
前記積層体は,一定の曲率半径を有し,
前記曲率半径は,1000mm未満であり,
前記積層体は,冷間成形積層体として特徴付けられ,
前記冷間成形は,基板が,複雑に湾曲した積層体を提供するために,前記第1と第2の基板の軟化温度より低い温度で形成される成形過程を含む,
積層体が組み込まれる乗り物のダッシュボード。」
2 周知技術
(1)周知例1:国際公開第2012/085981号
周知例1には,次の記載がある。
「[0011] また,ダッシュボード等の形状に合わせて液晶画面を湾曲させ美観を向上させた場合にも,視聴者に正常な画像を見せることのできる車載情報機器を提供することができる。」
「[0038] また例えば,視聴者が複数組の補正係数テーブルを切り替えて,所望の色補正がされた画像を選び,液晶表示部4に表示させるように構成してもよい。図13に,液晶表示装置を自動車のダッシュボード10に嵌め込んだ場合の一例を示す。図中の液晶画面11が,液晶表示部4の液晶画面に相当する。この液晶画面11は,ダッシュボード10の曲面形状に合わせて垂直方向に湾曲した形状になっており,曲面形状を統一することで美観の向上を図っている。視聴者(運転者)によって視聴位置が異なるので,複数の視聴位置それぞれの補正係数テーブル(例えば,図12の補正係数CVna,CVnb)を予め補正データ記憶部2aに記憶しておき,補正データ切替部5が,視聴者が指示する切替信号に応じて補正係数テーブルを切り替える指示を出し,画像補正部1aがその指示に応じた補正係数テーブルを補正データ記憶部2aから取得して色補正に用いる。」
「[0044]
以上のように,この発明に係る液晶表示装置は,湾曲した形状の液晶画面において視野角の違いに起因して生じる色シフトを補正するようにしたので,ダッシュボードの形状に合わせて湾曲する車載用ディスプレイ,車載用オーディオ・ビデオ機器,車載用ナビゲーション機器等の車載情報機器に用いるのに適している。」
「[図13]
[図:0001396554000001.jpg]
」
(2)周知例2:国際公開第2016/038832号
周知例2には,次の記載がある。
「[0017] 透明カバー7は、液晶表示装置1の表面に配置され、液晶パネル18、および、タッチパネル5を保護し、液晶表示装置1の強度を保つ。透明カバー7は、ポリカーボネート、アクリル、または、飛散防止フィルムが貼られたガラスなどにより構成される。透明カバー7の裏面には、第1位相差作用付き偏光板6が接着される。詳細は後述するが、第1位相差作用付き偏光板6は、透明接着層としてOCA層8を有し、OCA層8によって、透明カバー7に接着される。」
「[0031] 図3は,液晶表示装置が車両のダッシュボードに配置される一例を示す図である。
[0032] 本実施形態にかかる液晶表示装置1は,例えば,車両の前部座席周辺のダッシュボード100に配置される。液晶表示装置1の外面は,ダッシュボード100の表面と連続するように曲面形状を有するデザインとなっている。このようなデザイン上の制約により,液晶表示装置1は,多種多様な形状および大きさに成形しやすい透明カバー7を必要としている。」
「[図3]
[図:0001396554000002.jpg]
」
(3)以上によれば,ダッシュボードが曲面を有すること,及び,当該曲面に合わせて液晶表示装置等のディスプレイを組み込むことは,本願の優先権主張の日(以下,「優先日」という。)前において周知技術である。
第5 対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 本願の請求項11には,「前記基部が,センターコンソール,ダッシュボード,アームレスト,ピラー,シートバック,床板,ヘッドレスト,ドアパネル,およびハンドルの内のいずれか1つを含む,請求項1から10いずれか1項記載の乗り物内装システム。」と記載されているから,本願発明1の「基部」は,「ダッシュボード」を含んでいる。
そうすると,引用発明の「乗り物のダッシュボード」は,本願発明1の「基部」に相当する。
イ 引用発明において,「第1の基板,前記第1の基板上に配置された中間層,及び,前記中間層上に配置された第2の基板,を備え」る「積層体」は,「一定の曲率半径を有し,前記曲率半径は,1000mm未満であり」,「前記積層体は,冷間成形積層体として特徴付けられ」,また,「前記第1と第2の基板の両方の厚さは,約1.5mm以下であり,前記第1と第2の基板が,ガラス材料から作られて」いるから,上記「第2の基板」は,厚さは約1.5mm以下であり,1000mm未満の曲率半径を有する湾曲した冷間曲げされたガラス基板である。
また,ガラス基板が,第1の主面,該第1の主面と反対の第2の主面,および該第1の主面と第2の主面を接続する副面,該第1の主面と第2の主面との間の距離として定義される厚さ,該厚さに対して垂直な該第1または第2の主面の一方の第1の寸法として定義される幅,および該厚さと該幅の両方に対して垂直な該第1または第2の主面の一方の第2の寸法として定義される長さを有することは技術常識である。
そうすると,引用発明の「第2の基板」の第2の主面(ディスプレイユニットに対向する面)は,1000mm未満の曲率半径を有しているといえ,当該曲率半径は,本願発明1の「第2の主面」が有している「20mm以上の第1の曲率半径」と重複している。
したがって,引用発明の「第2の基板」は,本願発明1の「第1の主面,該第1の主面と反対の第2の主面,および該第1の主面と第2の主面を接続する副面,該第1の主面と第2の主面との間の距離として定義される厚さ,該厚さに対して垂直な該第1または第2の主面の一方の第1の寸法として定義される幅,および該厚さと該幅の両方に対して垂直な該第1または第2の主面の一方の第2の寸法として定義される長さを有する湾曲した冷間曲げされたガラス基板であり,前記厚さは1.5mm以下であり」,「前記第2の主面は,20mm以上の第1の曲率半径を有する湾曲した冷間曲げされたガラス基板」に相当する。
ウ 引用発明の「前記ディスプレイユニット」は,「前記中間層及び第2の基板の間に配置されている」から,「第2の基板」と同じ曲率半径を有しているといえる。
そうすると,引用発明の「前記中間層及び第2の基板の間に配置されている」「前記ディスプレイユニット」は,上記「第2の基板」の第2の主面に取り付けられ,上記第2の基板の曲率半径(第1の曲率半径)と同じ曲率半径(第2の曲率半径)を有しているといえるから,本願発明1の「前記第2の主面に取り付けられ,第2の曲率半径を有するディスプレイモジュール」に相当する。
また,上記のとおり,引用発明の「前記ディスプレイユニット」は,「第2の基板」と同じ曲率半径を有していることから,引用発明の「第2の基板」の曲率半径(第1の曲率半径)は,「前記ディスプレイユニット」の曲率半径(第2の曲率半径)と10%以内の差を有するといえる。
したがって,引用発明の「前記ディスプレイユニット」が,「第2の基板」と同じ曲率半径を有していることは,本願発明1の「前記第1の曲率半径」が,「前記第2の曲率半径」の「10%以内の差を有する」ことに相当する。
エ 引用発明の「ディスプレイユニットをさらに備え」る「積層体」は,本願発明1の「ディスプレイモジュール」に相当する。
オ 引用発明の「積層体が組み込まれる乗り物のダッシュボード」は,本願発明1の「乗り物内装システム」に相当する。
カ 以上から,本願発明1と引用発明の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「乗り物内装システムにおいて,
基部と;
ディスプレイであって,
第1の主面,該第1の主面と反対の第2の主面,および該第1の主面と第2の主面を接続する副面,該第1の主面と第2の主面との間の距離として定義される厚さ,該厚さに対して垂直な該第1または第2の主面の一方の第1の寸法として定義される幅,および該厚さと該幅の両方に対して垂直な該第1または第2の主面の一方の第2の寸法として定義される長さを有する湾曲した冷間曲げされたガラス基板であり,前記厚さは1.5mm以下であり,前記第2の主面は,20mm以上の第1の曲率半径を有する湾曲した冷間曲げされたガラス基板,および
前記第2の主面に取り付けられ,第2の曲率半径を有するディスプレイモジュール,を含むディスプレイと;
を備え,
前記第1の曲率半径が,前記第2の曲率半径の10%以内の差を有する,乗り物内装システム。」
<相違点>
相違点1:「ガラス基板」について,本願発明1は,「前記幅は約5cmから約250cmの範囲にあり,前記長さは約5cmから約250cmであ」るのに対し,引用発明は,そのような構成を備えているか不明である点。
相違点2:「基部」について,本願発明1は,「曲面を有」し,「前記曲面が前記ディスプレイを含み」,「ガラス基板が,前記曲面に組み込まれて」いるのに対し,引用発明は,そのような構成を備えているか不明である点。
第6 判断
1 相違点1について
引用発明において,「ディスプレイユニット」の「第2の基板」について所望する長さ及び幅を設定することは当業者の通常の創作能力の発揮にすぎず,当該「第2の基板」について,相違点1に係る本願発明1の構成である,幅を約5cmから約250cmの範囲とし,長さを約5cmから約250cmとすることは,当業者であれば必要に応じて適宜設定し得るものである。
2 相違点2について
上記第4 2で示したとおり,ダッシュボードが曲面を有すること,及び,当該曲面に含まれるように液晶表示装置等のディスプレイを組み込むことは,本願の優先日前において周知技術であるから,引用発明において,「ダッシュボード」に,「ディスプレイユニットをさらに備え」る「積層体」を「組み込」む際に,上記周知技術を適用して,曲面を有する「ダッシュボード」に,当該曲面が「ディスプレイ」を含み,「ガラス材料から作られて」いる「第2の基板」が,上記曲面に組み込まれるようにして,相違点2に係る本願発明1の構成とすることは,当業者であれば容易になし得たことである。
3 効果について
(1)請求人は,本願発明1の効果について,審判請求書の【本願発明が特許されるべき理由】の「(a)本願発明の説明」において,本願発明では,基板(当審注:当該「基板」は「基部」の誤記と認められる。以下,同様である。)とディスプレイは,乗り物内装システムに亘って実質的に連続した局面を画定しており,さらに,基板とディスプレイとの間に連続しているこの曲面は,この曲面に組み込まれているガラス基板を有しており,乗り物内装システムをこのように形成することにより,及び湾曲した冷間曲げされたガラス基板を用いることにより,ディスプレイは,基板の美的デザインにマッチするという作用効果を有する旨主張している。
しかし,請求人が主張する本願発明1の効果は,上記周知例1及び周知例2の記載から予測される範囲内のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
(2)また,請求人は,上記主張に続けて,例えば,もしダッシュボード基板が,木目,皮,あるいはモノクローム仕上げを有しているなら,湾曲した冷間曲げされたガラス基板は,ディスプレイがオフであってもオンであっても,ダッシュボードが1つの連続した表面に見えるよう,それにマッチした仕上げを有するようにペイントされる(本願明細書【0095】)旨主張している。
しかし,本願明細書【0089】の「1つ以上の実施の形態において,前記ガラス基板の第1の主面142および第2の主面144のいずれか一方または両方は,表面処理を含む。その表面処理は,第1の主面142および第2の主面144の少なくとも一部を覆うことがある。例示の表面処理としては,簡単に洗浄できる表面,防眩表面,反射防止表面,触覚表面,および装飾表面が挙げられる。」との記載によれば,同【0095】は,ガラス基板に表面処理した装飾表面についての記載であるといえる。
しかし,本願発明1には,ガラス基板が装飾表面処理されていることは特定されていないから,請求人が主張する上記効果は,本願発明1の効果であるとはいえない。
(3)したがって,請求人の効果についての上記主張はいずれも採用できない。
第7 むすび
以上のとおり,本願発明1は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
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2020-014272