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特許拒絶査定不服審判

2021-013136

ハイブリッド車両用駆動装置

審判番号
2021-013136
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-003878
請求日
2021年09月29日
審決日
2022年06月14日
公報発行日
2022年09月30日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】株式会社アルテミス
  • 【請求人代理人】友野 英三
審判長/審判官
  • 審判長 佐々木 正章
  • 審判官 沼生 泰伸
  • 審判官 山本 信平
分類
P18 .121-Z (B60K) / P18 .572-Z (B60K) / P18 .575-Z (B60K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第5項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-3878「ハイブリッド車両用駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔令和3年8月2日出願公開、特開2021-109599〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 この出願(以下「本願」という。)は、令和2年1月14日の出願であって、同年10月2日付け(発送日:同年10月6日)で拒絶理由が通知され、同年12月15日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年1月7日付け(発送日:同年1月19日)で拒絶理由が通知され、同年5月20日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月23日付け(発送日:同年6月29日)で拒絶査定がされ、これに対して、同年9月29日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 令和3年9月29日の手続補正についての補正の却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 令和3年9月29日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理由〕 1 本件補正発明 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正前(令和3年5月20日の手続補正書)の請求項1に、 「【請求項1】 内燃機関と、前記内燃機関のクランク軸の回転を利用して発電するジェネレータと、前記ジェネレータで発電する電力を利用し車輪を駆動回転するためのモータと、前記クランク軸の回転を前記ジェネレータに伝達する発電用動力伝達部と、前記モータと前記内燃機関の内、少なくとも前記モータの回転を車輪に伝達する車輪駆動用動力伝達部と、ECUと、バッテリとを有するハイブリッド車両用駆動装置において、 前記発電用動力伝達部が、前記クランク軸の出力端と前記ジェネレータのロータの入力軸との間を前記内燃機関のクランク軸の出力回転を歯車列を介して該出力回転とは逆回転で前記ジェネレータに伝達され、前記ロータの質量がバランサーとして機能できる数値に設定されること、前記歯車列の従歯車の厚みが調整されること、はずみ車が設けられること、の少なくともいずれか一つを備えることにより前記ジェネレータがクランク系全体の角運動量をほぼゼロになるように構成されている ことを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置。」 とあったものを、 「【請求項1】 内燃機関と、前記内燃機関のクランク軸の回転を利用して発電するジェネレータと、前記ジェネレータで発電する電力を利用し車輪を駆動回転するためのモータと、前記クランク軸の回転を前記ジェネレータに伝達する発電用動力伝達部と、前記モータと前記内燃機関の内、少なくとも前記モータの回転を車輪に伝達する車輪駆動用動力伝達部と、ECUと、バッテリとを有するハイブリッド車両用駆動装置において、 前記発電用動力伝達部が、前記クランク軸の出力端と前記ジェネレータのロータの入力軸との間を前記内燃機関のクランク軸の出力回転を歯車列を介して該出力回転とは逆回転で前記ジェネレータに伝達され、前記ロータの質量がバランサーとして機能できる数値に設定されること、前記歯車列の従歯車の厚みが調整されること、はずみ車が設けられること、の少なくともいずれか一つを備えることにより前記ジェネレータがクランク系全体の角運動量をほぼゼロになることで前記内燃機関の始動時、停止時、及び運転中の車両室内振動が有意に低減されるように構成されている ことを特徴とするハイブリッド車両用駆動装置。」 と補正することを含むものである(下線は補正箇所を示すために当審で付与した。)。 上記補正は、本件補正前の請求項1に記載される発明の発明特定事項である「発電用動力伝達部」に関して、「内燃機関の始動時、停止時、及び運転中の車両室内振動が有意に低減される」との限定を付したものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)否かについて検討する。 2 引用文献、引用発明 (1)引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された特開2011-122566号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審で付与した。)。 ア 「【0001】 本発明は、エンジンの振動低減装置に係り、特にトルク変動によるローリング振動を低減する技術に関するものである。」 イ 「【0017】 図1において、1は例えば自動車のエンジンであり、気筒数の少ない例えば3気筒以下のレシプロエンジンである。このエンジン1は、ピストンロッドを接続する複数のクランク部2を有するクランク軸3を備えており、このクランク軸3にスタータジェネレータ4が接続されている。 【0018】 このスタータジェネレータ4は、ハウジング5内に回転自在に設けられた回転軸6と、この回転軸6に設けられたロータ7と、このロータ7を囲繞するようにハウジング5内に設けられたステータ8とを備えている。スタータジェネレータ4は、電動機の機能と発電機の機能を有し、エンジン1の始動時には電動機として機能し、エンジン1の始動後は発電機として機能する。 【0019】 そして、前記スタータジェネレータ4を、クランク軸回りに生じるトルク反力を打ち消してエンジン1のローリング振動を低減するヘロン・バランサないし振動低減装置として用いるために、前記クランク軸2(「クランク軸2」とあるのは、「クランク軸3」の誤記であると認める。以下同じ。)の一端にはクランク軸2の回転方向とは逆の回転方向にクランク軸2の回転数よりも速い回転数で回転を伝えるための増速歯車機構9を介してスタータジェネレータ4が接続されている。 【0020】 前記増速歯車機構9は、クランク軸3の一端に設けられた駆動歯車(第1歯車)10と、スタータジェネレータ4の回転軸6の一端に設けられ、前記駆動歯車10と噛合する従動歯車(第2歯車)11とからなっている。また、前記増速歯車機構9は、スタータジェネレータ4がエンジン1のローリング振動を低減する有効な慣性モーメントを発揮するように適切なギア比に設定されている。 【0021】 ところで、スタータジェネレータ4は常時エンジンに接続されているため、特にエンジン1の加速時にはスタータジェネレータ4が大きな負荷になり、エンジン1の加速性能や燃費を悪化させてしまう。加速時にジェネレータの発電を停止して燃費を向上させることは知られているが、大型化することで慣性モーメントの影響も無視できない。そこで、スタータジェネレータ4を備えたエンジン1の加速性能の向上及び燃費の向上を図るために、前記エンジン1は、前記クランク軸3と前記スタータジェネレータ4との間に介設されて動力を断接するためのクラッチ12と、前記エンジン1の加速時に前記クラッチ12を断にし、前記エンジン1の加速が終了して定速度運転になった時に前記クラッチ12を接にするための制御装置13とを備えている。 【0022】 この場合、スタータジェネレータ4の回転軸6には前記従動歯車11が軸受(例えばボールベアリング)14を介して回転自在に設けられ、該従動歯車11と前記スタータジェネレータ4の回転軸6との間に前記クラッチ12が介設されていることが好ましい。また、前記回転軸6には回転板15が一体的に設けられ、この回転板15と前記従動歯車11との間にクラッチ12が設けられていることが好ましい。」 上記記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 〔引用発明〕 「エンジン1と、前記エンジン1の始動後は発電機として機能するスタータジェネレータ4と、増速歯車機構9と、を有する自動車用の装置において、 前記増速歯車機構9が、前記エンジン1のクランク軸3の一端に設けられた駆動歯車(第1歯車)10と、前記スタータジェネレータ4の回転軸6の一端に軸受(例えばボールベアリング)14を介して回転自在に設けられ前記駆動歯車10と噛合する従動歯車(第2歯車)11とからなり、 前記スタータジェネレータ4を、前記クランク軸3回りに生じるトルク反力を打ち消して前記エンジン1のローリング振動を低減するヘロン・バランサないし振動低減装置として用いるために、前記増速歯車機構9が、前記スタータジェネレータ4が前記エンジン1のローリング振動を低減する有効な慣性モーメントを発揮するように適切なギア比に設定され、 前記従動歯車11と前記回転軸6との間にクラッチ12が介設されている、 自動車用の装置。」 (2)引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された特開2019-89392号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審で付与した。)。 ア 「【0007】 前記の目的を達成するため、本発明に係るハイブリッドシステムは、車両に搭載されるハイブリッドシステムであって、エンジンと、エンジンの動力を電力に変換する発電機と、発電機の発電電力を使用して駆動され、車両の走行のための動力を出力する駆動モータと、駆動モータに接続され、ハイギヤードとローギヤードとに選択的に設定される変速機とを含む。」 イ「【0014】 <ハイブリッドシステムの構成> 図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッドシステム1の断面図である。図2は、ハイブリッドシステム1の構成を示すスケルトン図である。 【0015】 ハイブリッドシステム1は、エンジン2(図2参照)、発電機3および駆動モータ4を含む。」 ウ 「【0017】 発電機3は、モータジェネレータ(MG1)からなる。発電機3には、インバータなどを内蔵する発電機コントローラが接続されている。発電機コントローラには、複数の二次電池を組み合わせた組電池からなる電池が接続されている。発電機3から出力される交流電力は、発電機コントローラにより直流電力に変換されて、その直流電力が電池に供給されることにより、電池が充電される。 【0018】 駆動モータ4は、モータジェネレータ(MG2)からなる。駆動モータ4には、インバータなどを内蔵するモータコントローラが接続されている。モータコントローラには、電池が接続されている。電池から出力される直流電力がモータコントローラに供給され、その直流電力がモータコントローラにより交流電力に変換されて、交流電力が駆動モータ4に供給されることにより、駆動モータ4が駆動される。 【0019】 エンジン2のクランクシャフト11と一体回転するように、エンジンギヤ12が設けられている。また、発電機3の回転軸13と一体回転するように、発電機ギヤ14が設けられている。エンジンギヤ12と発電機ギヤ14とは、噛合している。発電機ギヤ14は、エンジンギヤ12よりもギヤ径が小さい。そのため、エンジン2の動力は、エンジンギヤ12から発電機ギヤ14に増速して伝達される。」 エ 「【0026】 駆動モータ4の動力は、遊星歯車機構16を介してキャリヤ軸25に伝達される。キャリヤ軸25に伝達された動力は、キャリヤギヤ27、カウンタギヤ32および出力ギヤ34を介して、デファレンシャルギヤ33のリングギヤ36に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト37を介して、ハイブリッドシステム1が搭載された車両の駆動輪38に伝達される。これにより、駆動輪38が回転し、車両が走行する。」 オ 「【0033】 <作用効果> 以上のように、エンジン2の動力が発電機3で電力に変換され、発電機3で発生する電力が駆動モータ4の駆動に使用される。駆動モータ4には、ローギヤードとハイギヤードとに選択的に設定される遊星歯車機構16が接続されている。遊星歯車機構16がローギヤードに設定されることにより、駆動モータ4の動力が減速されて、その減速された動力が車両のデファレンシャルギヤ33に伝達される。これにより、駆動モータ4のトルクが増大されてデファレンシャルギヤ33に伝達されるので、最大出力が小さい小型の駆動モータ4であっても、大きな加速力を得ることができる。一方、遊星歯車機構16がハイギヤードに設定されているときには、駆動モータ4の動力がローギヤードに設定されているときよりも小さい変速比で変速されるので、最高回転数が低い小型の駆動モータ4であっても、駆動輪38を高速回転させることができる。」 また、段落【0019】の「エンジン2のクランクシャフト11と一体回転するように、エンジンギヤ12が設けられている。また、発電機3の回転軸13と一体回転するように、発電機ギヤ14が設けられている。エンジンギヤ12と発電機ギヤ14とは、噛合している」との記載及び図2の図示内容を参照すると、エンジンギヤ12及び発電機ギヤ14が、クランクシャフト11の回転を、その回転とは逆回転で発電機3に伝達しているものと認められる。 そして、エンジンにおいてECUを備えることは、エンジンの分野における技術常識であり、引用文献2に記載のエンジン2がECUを備えていることは、当業者にとって自明である。 上記記載事項、認定事項及び図面の図示内容(特に、図2においていわゆるシリーズハイブリッドシステムが示されている点)を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。 〔引用文献2記載事項〕 「エンジン2と、モータジェネレータ(MG1)からなる発電機3と、前記発電機3から出力される交流電力が直流電力に変換されて供給されることにより充電される電池と、前記エンジン2のクランクシャフト11と一体回転するエンジンギヤ12と、前記エンジンギヤ12と噛合し、前記発電機3の回転軸13と一体回転する発電機ギヤ14と、前記電池から出力される直流電力が交流電力に変換されて供給されることにより駆動される駆動モータ4と、前記駆動モータ4の動力を駆動輪38に伝達するデファレンシャルギヤ33等と、ECUとを有する、シリーズハイブリッドシステムを備えた車両用の駆動装置において、 前記エンジンギヤ12及び前記発電機ギヤ14が、前記クランクシャフト11の回転を、その回転とは逆回転で前記発電機3に伝達するように構成されていること。」 3 対比及び判断 本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「エンジン1」は、その機能、構成又は技術的意義からみて本件補正発明における「内燃機関」に相当し、同様に、「スタータジェネレータ4の回転軸6」は「ジェネレータのロータの入力軸」に相当する。 また、引用発明において「前記エンジン1の始動後は発電機として機能するスタータジェネレータ4と、増速歯車機構9と、を有」し、「前記増速歯車機構9が、前記エンジン1のクランク軸3の一端に設けられた駆動歯車(第1歯車)10と、前記スタータジェネレータ4の回転軸6の一端に軸受(例えばボールベアリング)14を介して回転自在に設けられ前記駆動歯車10と噛合する従動歯車(第2歯車)11とからなり、」「前記従動歯車11と前記回転軸6との間にクラッチ12が介設されている」ことは、クランク軸3が回転するとスタータジェネレータ4の回転軸6が回転するように増速歯車機構9が回転を伝達することであるから、本件補正発明において「前記内燃機関のクランク軸の回転を利用して発電するジェネレータ」を有すること及び「前記クランク軸の回転を前記ジェネレータに伝達する発電用動力伝達部」を有することに相当する。 そして、引用発明の「前記増速歯車機構9が、前記エンジン1のクランク軸3の一端に設けられた駆動歯車(第1歯車)10と、前記スタータジェネレータ4の回転軸6の一端に軸受(例えばボールベアリング)14を介して回転自在に設けられ前記駆動歯車10と噛合する従動歯車(第2歯車)11とからなり、前記スタータジェネレータ4を、前記クランク軸3回りに生じるトルク反力を打ち消して前記エンジン1のローリング振動を低減するヘロン・バランサないし振動低減装置として用いるために、前記増速歯車機構9が、前記スタータジェネレータ4が前記エンジン1のローリング振動を低減する有効な慣性モーメントを発揮するように適切なギア比に設定され」ていることは、駆動歯車10と従動歯車11とが噛合しており互いに逆方向に回転するものであるから、引用発明の当該事項と、本件補正発明の「前記発電用動力伝達部が、前記クランク軸の出力端と前記ジェネレータのロータの入力軸との間を前記内燃機関のクランク軸の出力回転を歯車列を介して該出力回転とは逆回転で前記ジェネレータに伝達され、前記ロータの質量がバランサーとして機能できる数値に設定されること、前記歯車列の従歯車の厚みが調整されること、はずみ車が設けられること、の少なくともいずれか一つを備えることにより前記ジェネレータがクランク系全体の角運動量をほぼゼロになることで前記内燃機関の始動時、停止時、及び運転中の車両室内振動が有意に低減されるように構成されている」とは、「前記発電用動力伝達部が、前記クランク軸の出力端と前記ジェネレータのロータの入力軸との間を前記内燃機関のクランク軸の出力回転を歯車列を介して該出力回転とは逆回転で前記ジェネレータに伝達され、前記内燃機関の振動が有意に低減されるように構成されている」という限りにおいて一致する。 さらに、引用発明の「自動車用の装置」は、本件補正発明の「ハイブリッド車両用駆動装置」と「車両用装置」という限りにおいて一致する。 そうすると、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点がある。 〔一致点〕 「内燃機関と、前記内燃機関のクランク軸の回転を利用して発電するジェネレータと、前記クランク軸の回転を前記ジェネレータに伝達する発電用動力伝達部とを有する車両用装置において、 前記発電用動力伝達部が、前記クランク軸の出力端と前記ジェネレータのロータの入力軸との間を前記内燃機関のクランク軸の出力回転を歯車列を介して該出力回転とは逆回転で前記ジェネレータに伝達され、前記内燃機関の振動が有意に低減されるように構成されている 車両用装置。」 〔相違点1〕 車両用装置において、本件補正発明は、「ジェネレータで発電する電力を利用し車輪を駆動回転するためのモータと」、「前記モータと内燃機関の内、少なくとも前記モータの回転を車輪に伝達する車輪駆動用動力伝達部と、ECUと、バッテリと」を有する「ハイブリッド車両用駆動装置」であるのに対し、引用発明は、「自動車用の装置」である点。 〔相違点2〕 本件補正発明は、「前記ロータの質量がバランサーとして機能できる数値に設定されること、前記歯車列の従歯車の厚みが調整されること、はずみ車が設けられること、の少なくともいずれか一つを備えることにより前記ジェネレータがクランク系全体の角運動量をほぼゼロになることで前記内燃機関の始動時、停止時、及び運転中の車両室内振動が有意に低減される」のに対し、 引用発明は、「前記スタータジェネレータ4を、前記クランク軸3回りに生じるトルク反力を打ち消して前記エンジン1のローリング振動を低減するヘロン・バランサないし振動低減装置として用いるために、前記増速歯車機構9が、前記スタータジェネレータ4が前記エンジン1のローリング振動を低減する有効な慣性モーメントを発揮するように適切なギア比に設定され」ている点。 まず、上記相違点1について検討する。 引用文献2記載事項として例示されるような、いわゆるシリーズハイブリッドシステムは従来周知のものである(以下「周知技術1」という。)。 したがって、シリーズハイブリッドシステムのエンジン及び発電機に引用発明のエンジン1及びスタータジェネレータ4を備えた装置を適用し、上記相違点1に係る本件補正発明の構成を備えることは、当業者が容易になし得たことである。 次に、上記相違点2について検討する。 エンジンのクランク系と逆回転することで振動を低減する回転体の設計手法として、該回転体とクランク系全体の角運動量が打ち消し合うように(0になるように)、それぞれの系における慣性モーメントを調整すること、及び、慣性モーメントを調整するためにフライホイール(はずみ車)を設けることは、当業者にとって従来周知の技術にすぎない(以下「周知技術2」という。例えば、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3の第2頁右上欄第1行-左下欄第11行等、及び、同引用文献4の第4頁左上欄第4行-左下欄第10行等を参照。)から、引用発明を周知技術1に適用した際に、周知技術2を適用することは、当業者が適宜なし得たことである。 また、引用発明は、スタータジェネレータ4により、エンジン1のローリング振動を低減するものであるから、そのためにロータや歯車の質量をその厚み等により調整することは、当業者が適宜なし得たことにすぎない。 そして、その結果として、内燃機関の始動時、停止時、及び運転中の車両室内振動が有意に低減されることは、明らかである。 したがって、上記相違点2に係る本件補正発明の構成を備えることも、当業者が容易になし得たことである。 また、本件補正発明は、「内燃機関の」「運転中の車両室内の振動が有意に低減される」ものであるところ、引用文献1の段落【0021】には、「エンジン1は、前記クランク軸3と前記スタータジェネレータ4との間に介設されて動力を断接するためのクラッチ12と、前記エンジン1の加速時に前記クラッチ12を断にし、前記エンジン1の加速が終了して定速度運転になった時に前記クラッチ12を接にするための制御装置13とを備えている」と記載されており、クラッチ12を断にした場合には、クランク軸3の回転がスタータジェネレータ4のロータ7には伝達されなくなるものと解されるが、クラッチ12を断にしている場合においても従動歯車11はクランク軸と逆方向に回転しており、振動が低減される効果を奏するものと認められ、さらには、引用文献1の段落【0002】-【0006】には、クラッチを有しない装置も記載されており、当該クラッチを有しない装置を周知技術1に適用するとともに周知技術2を用いて本件補正発明とすることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、全体としてみても、本件補正発明が奏する効果は、引用発明並びに周知技術1及び2から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別なものでない。 したがって、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4 請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、つまるところ「引用文献1-4を組み合わせたとしても、「前記発電用動力伝達部が、前記クランク軸の出力端と前記ジェネレータのロータの入力軸との間を前記内燃機関のクランク軸の出力回転を歯車列を介して該出力回転とは逆回転で前記ジェネレータに伝達され、前記ロータの質量がバランサーとして機能できる数値に設定されること、前記歯車列の従歯車の厚みが調整されること、はずみ車が設けられること、の少なくともいずれか一つを備えることにより前記ジェネレータがクランク系全体の角運動量をほぼゼロになることで前記内燃機関の始動時、停止時、及び運転中の車両室内振動が有意に低減されるように構成されている」との発明特定事項を有する補正後請求項1に係る発明には想到し得ない。」と主張しているが、上記「3 対比及び判断」において示したとおり、本件補正発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求人の主張は採用することができない。 5 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、令和3年5月20日付けの手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕の1に補正前の請求項1として記載したとおりのものである。 2 原査定における拒絶の理由の概要 原査定における拒絶の理由の概要は次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ・請求項1-2 ・引用文献1-4 <引用文献等一覧> 1.特開2011-122566号公報 2.特開2019-089392号公報 3.特開昭62-35130号公報(周知技術を示す文献) 4.特開平4-39443号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献、引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及び2の記載事項並びに引用発明は、上記第2〔理由〕の2に記載したとおりである。 4 当審の判断 本件補正発明は、上記第2〔理由〕の1で述べたように、本願発明における「発電用動力伝達部」に関して、「内燃機関の始動時、停止時、及び運転中の車両室内振動が有意に低減される」との限定を付したものであるから、本願発明の発明特定事項をすべて含んでいる。 そして、本願発明の発明特定事項をすべて含んでいる本件補正発明が、上記第2〔理由〕の3に記載したとおり、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、実質的に同様の理由により、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 まとめ したがって、本願発明は、引用発明並びに周知技術1及び2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-013136

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