2020-014168
ハライドシラン化合物及び組成物並びにそれを使用してケイ素含有膜を堆積するためのプロセス
- 審判番号
- 2020-014168
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-564891外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年10月08日
- 審決日
- 2021年08月23日
- 公報発行日
- 2021年10月29日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 分類
- P18 .121-WY (H01L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 19項目
第1 手続の経緯
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本願は,2016年(平成28年)6月14日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年6月16日,米国(US) 2015年6月18日,米国(US))を国際出願日とする出願であって,平成30年2月6日付けで上申書が提出されるとともに手続補正がされ,平成31年1月24日付けで拒絶理由通知がされ,令和元年6月20日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年11月22日付けで拒絶理由通知がされ,令和2年4月2日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ,同年5月29日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年10月8日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,同年11月24日に前置報告がされ,令和3年4月13日に審判請求人から前置報告に対する上申がされ,同年4月28日付けで当審より拒絶理由通知がされ,同年6月24日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。
第2 本願発明
本願請求項1~4に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」~「本願発明4」という。)は,令和3年6月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】化学気相堆積プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスにより,基材の少なくとも1つの表面上に金属ドープ窒化ケイ素の膜を形成するための方法であって,反応器中に前記基材の少なくとも1つの表面を提供する工程と,前記反応器中にモノクロロジシラン(MCDS),及びモノクロロトリシラン(MCTS)からなる群から選択される少なくとも1つのハライドシラン前駆体を導入する工程と,前記反応器中に窒素含有源を導入する工程とを含み,前記少なくとも1つのハライドシラン前駆体と前記窒素含有源とが反応して,前記少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素の膜を形成し,金属含有前駆体を前記反応器中に導入して,金属ドープ窒化ケイ素の膜を形成することをさらに含み,前記金属含有前駆体が,トリス(ジメチルアミノ)アルミニウム,トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム,トリエチルガリウム,トリス(ジメチルアミノ)ガリウム,トリス(ジエチルアミノ)ガリウムからなる群より選択される,方法。」
なお,本願発明2~4は,本願発明1を減縮した発明である。
第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2015-097255号公報)には,次の事項が記載されている(下線は当審が付した。以下,同様である。)。
「【0022】(第1の実施形態)<成膜方法>図1はこの発明の第1の実施形態に係るシリコン窒化物膜の成膜方法の一例を示す流れ図,図2A~図2Nはその成膜方法の主要な工程を示す断面図である。続きを表示(全95行)【0023】第1の実施形態においては,シリコン基板(シリコンウエハ=シリコン単結晶)1を,シリコン窒化物膜を成膜する下地の一例として用いる(図2A参照)。下地は,シリコン基板1に限られるものではなく,シリコン酸化物膜などの絶縁膜,金属膜などの導電体膜であってもよい。第1の実施形態においては,シリコン窒化物膜を,シリコン基板1の被処理面上に成膜する。【0024】次に,シリコン基板1を成膜装置の処理室内に搬入し,第1ステップとして“シリコン膜の形成処理”を行う。このために,処理室内において,シリコン基板1の被処理面に向け,シリコンを含むシリコン原料ガスを供給する(図1のステップ1)。第1の実施形態においては,シリコン原料ガスとしてモノシラン(SiH4)ガスを用いた。【0025】ステップ1における処理条件の一例は,モノシラン流量: 1000sccm処 理 時 間: 30sec処 理 温 度: 200℃処 理 圧 力: 133Pa(1Torr)(本明細書では,1Torrを133Paと定義する。)である。【0026】これにより,SiH4ガスが熱分解され,シリコン基板1の被処理面上にSiH4が吸着され,薄い第1層シリコン層2-1が形成される(図2B)。第1層シリコン層2-1の膜厚は,例えば,数十原子層の厚さである。【0027】シリコン原料ガスは,SiH4ガスに限られるものではなく,シリコンを含むシリコン化合物ガスであればよい。例えば,シラン系ガスとしては,SiH4ガスの他,Si2H6ガスSi3H8ガスなどのシリコン数が2以上の,いわゆる高次シランガスを用いるようにしてもよい。本明細書においては,シラン系ガスを,シリコン数が1のモノシランガス,およびシリコン数が2以上の高次シランガスの双方を含むもの,と定義する。【0028】また,シリコン原料ガスは,シラン系ガスの水素原子を,水素以外の原子に置換したシリコン化合物ガスなども用いることができる。例えば,シラン系ガスの水素原子を塩素原子に置換した,SiH3ClガスSiH2Cl2ガスSiHCl3ガスSi2H5ClガスSi2H4Cl2ガスSi2H3Cl3ガスSi2H2Cl4ガスSi2HCl5ガスなどのガスも用いることができる。【0029】次に,処理室内を排気しつつ処理室内に不活性ガスを供給し,処理室内をパージする(図1のステップ2)。不活性ガスとしては窒素(N2)ガスや,アルゴン(Ar)ガスなどの希ガスを用いることができる。【0030】次に,処理室内において,シリコン基板1の被処理面に向け,シリコン原料ガスの分解を促進させる物質を含む分解促進ガスを供給する(図1のステップ3)。シリコン原料ガスの分解を促進させる物質の一例は,ボロン(B)である。第1の実施形態においては,分解促進ガスとしてジボラン(B2H6)ガスを用いた。【0031】ステップ3における処理条件の一例は,ジボラン流 量: 200sccm処 理 時 間: 30sec処 理 温 度: 200℃処 理 圧 力: 133Pa(1Torr)である。【0032】これにより,第1層シリコン層2-1上には,ボロン原子3が吸着される(図2C)。第1層シリコン層2-1上に吸着されたボロン原子3には,シリコン化合物ガス,第1の実施形態においてはSiH4ガスの分解を促進させる触媒作用がある。このため,例えば,100℃以上400℃未満の低い温度帯であっても,ボロン原子3を吸着させない場合に比較して,例えば,SiH4ガスの分解をより急速に進めることが可能となる。【0033】分解促進ガスは,B2H6ガスに限られるものではなく,ボロンを含むボロン化合物ガスであればよい。例えば,ボラン系ガスとしては,B2H6ガスの他,BH3(モノボラン)ガスなどを用いることも可能である。また,ボロン数が2以上の,いわゆる高次ボランガスについても,B2H6ガスに限られるものではない。本明細書においては,ボラン系ガスを,ボロン数が1のモノボランガス,およびボロン数が2以上の高次ボランガスの双方を含むもの,と定義する。【0034】また,ボラン系ガスの水素原子を,水素以外の原子に置換したボロン化合物ガスなども用いることができる。例えば,ボラン系ガスのボロン原子を塩素原子に置換したBCl3ガス(B(C2H5))3ガスなども用いることができる。【0035】次に,処理室内を排気しつつ処理室内に不活性ガスを供給し,処理室内をパージする(図1のステップ4)。用いる不活性ガスはステップ2と同様のものでよい。【0036】次に,図1のステップ5に示すように,ステップ1~ステップ4の繰り返し回数が,設定値n回(ただし,nは2以上)に達したか否かを判断する。達していない(NO),と判断された場合には,ステップ1~ステップ4を再度繰り返す。反対に達した(YES),と判断された場合にはステップ6に進む。【0037】このようにステップ1~ステップ4を2回以上繰り返すことで,第1層シリコン膜4-1が,シリコン基板1の被処理面上に形成される。図2Dには,設定値nを“3”とし,ステップ1~ステップ4を3回繰り返すことで,第1層シリコン層2-1,第2層シリコン層2-2および第3層シリコン層2-3を含んで構成された第1層シリコン膜4-1の例が示されている。なお,図2Dにおいては,ステップ4において第3層シリコン層2-3上に吸着されるであろうボロン原子3の図示は省略している。【0038】次に,第2ステップとして“シリコン膜の窒化処理”を,“シリコン膜の形成処理”を行った処理室内において行う。このために,処理室内において,第1層シリコン膜4-1が形成されたシリコン基板1の被処理面に向け,窒素を含む窒化ガスを供給する(図1のステップ6)。第1の実施形態においては,窒化ガスとしてアンモニア(NH3)ガスを用いた。また,第1の実施形態においては,NH3ガスにはエネルギーを印加して,例えば,窒素ラジカルN*やアンモニアラジカルNH*など含む活性な窒素を生成し,この活性な窒素をシリコン基板1の被処理面に向け,供給するようにした。NH3ガスに印加するエネルギーの一例は,高周波電界である。高周波電界の発生手法(生成機構)としては,例えば,2枚の電極板を対向させ,2枚の電極板間に高周波電界を発生させる平行平板型RFプラズマ生成機構を用いた。【0039】ステップ6における処理条件の一例は,アンモニア流量: 1000sccm処 理 時 間: 10sec処理温度:200℃処 理 圧 力: 133Pa(1Torr)高周波電界 : オンである。【0040】これにより,第1層シリコン膜4-1は,例えば,ラジカル窒化され,第1層シリコン窒化物膜5-1が形成される(図2E)。【0041】窒化ガスは,NH3ガスに限られるものではなく,窒素を含む窒素化合物ガスであればよい。例えば,ヒドラジン(N2H4)ヒドラジン誘導体などを用いることも可能である。もちろん窒素ガス単体でもよい。【0042】また,高周波電界の発生手法(生成機構)も,平行平板型に限られるものではない。例えば,無声放電ラジアルロッドスロットアンテナなどを用いてもよい。【0043】次に,高周波電界をオフし,処理室内を排気しつつ処理室内に不活性ガスを供給し,処理室内をパージする(図1のステップ7)。用いる不活性ガスはステップ2と同様のものでよい。【0044】次に,図1のステップ8に示すように,ステップ6およびステップ7の回数が,設定値p回(ただし,pは1以上)に達したか否かを判断する。達していない(NO),と判断された場合には,ステップ6およびステップ7を再度行う。反対に達した(YES),と判断された場合にはステップ9に進む。【0045】このようにステップ6およびステップ7を1回以上行うことで,第1層シリコン膜4-1が窒化され,第1層シリコン窒化物膜5-1がシリコン基板1の被処理面上に形成される。図2Eには,設定値pを“1”とし,ステップ6およびステップ7を1回行うことで,第1層シリコン膜4-1を窒化した例が示されている。【0046】なお,第1の実施形態においては,窒化の回数を1回以上の有限値に設定可能な例を示している。しかし,窒化の回数を1回に特定する場合には,シリコン窒化物膜の成膜レシピからステップ8を省略し,ステップ7の次に,ステップ9を実行するように成膜レシピを構成してもよい。【0047】第1の実施形態においては,ここまでのステップ1~ステップ8(あるいはステップ7)まで,即ち,複数回のシリコン層の形成を含むシリコン膜の形成処理(ステップ1~ステップ5)から,シリコン膜の窒化処理(ステップ6~ステップ8(あるいはステップ7))までのシーケンスを1サイクルとする。【0048】次に,図1のステップ9に示すように,上記1サイクルの回数が,設定値m(ただし,mは1以上)に達したか否かを判断する。達していない(NO),と判断された場合には,ステップ1~ステップ8(あるいはステップ7)を再度行う。反対に達した(YES)と判断された場合には,第1の実施形態に係るシリコン窒化物膜の成膜方法にしたがった成膜処理を終了する。」
「【図1】」
以上によれば,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「シリコン窒化物膜を,シリコン基板1の被処理面上に成膜する方法であって,シリコン基板1を成膜装置の処理室内に搬入し,シリコン基板1の被処理面に向け,シリコンを含むシリコン原料ガスとしてSi2H5Clガスを供給するステップ1と,処理室内を排気しつつ処理室内に不活性ガスを供給し,処理室内をパージするステップ2と,続きを表示(全11行)処理室内において,シリコン基板1の被処理面に向け,シリコン原料ガスの分解を促進させる物質を含む分解促進ガスを供給するステップ3と,処理室内を排気しつつ処理室内に不活性ガスを供給し,処理室内をパージするステップ4と,前記ステップ1~ステップ4を2回以上繰り返すことで,第1層シリコン膜4-1を,シリコン基板1の被処理面上に形成するステップ5と,処理室内において,第1層シリコン膜4-1が形成されたシリコン基板1の被処理面に向け,窒素を含む窒化ガスを供給して,シリコン膜の窒化処理を行うステップ6と,処理室内を排気しつつ処理室内に不活性ガスを供給し,処理室内をパージするステップ7と,ステップ6およびステップ7を1回以上行うことで,第1層シリコン膜4-1を窒化し,第1層シリコン窒化物膜5-1をシリコン基板1の被処理面上に形成するステップ8と,前記ステップ1~ステップ8までのシーケンスを1サイクルとし,前記1サイクルの回数が,規定値m(ただし,mは1以上)に達するまで行うシリコン窒化物膜の成膜方法。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2015-096489号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0045】いくつかの態様において,ケイ素含有膜はケイ素と窒素とを含む。これらの態様では,本明細書に記載の方法を使用して堆積されるケイ素含有膜は,窒素含有源の存在下で形成される。窒素含有源は,少なくとも1つの窒素含有源の形で反応器に導入され,および/または堆積プロセスで使用される他の前駆体中に付随して存在してもよい。適切な窒素含有源ガスは,例えば,アンモニア,ヒドラジン,モノアルキルヒドラジン,ジアルキルヒドラジン,窒素,窒素/水素,アンモニアプラズマ,窒素プラズマ,窒素/アルゴンプラズマ,窒素/ヘリウムプラズマ,窒素/水素プラズマ,およびそれらの混合物を含んでもよい。いくつかの態様において,窒素含有源は,約1~約2000標準立方センチメートル(sccm)または約1~約1000sccmの範囲の流速で反応器に導入される,アンモニアプラズマまたは水素/窒素プラズマまたは窒素/アルゴンプラズマまたは窒素/ヘリウムプラズマ源ガスを含む。窒素含有源は,約0.01~約100秒の範囲の時間で導入することができる。膜がALDまたはサイクリックCVDプロセスにより堆積される態様において,前駆体パルスは,0.01秒超のパルス持続時間を有することができ,窒素含有源は,0.01秒未満のパルス持続時間を有することができるが,一方水パルス持続時間は,0.01秒未満のパルス持続時間を有することができる。さらに別の態様において,0秒と小さくてもよいパルス間のパージ持続は,途中にパージ無しで連続的にパルスされる。」
3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2015-054853号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0043】上記の必要に応じて用いられる反応性ガスとしては,例えば,酸化性のものとしては酸素,オゾン,二酸化窒素,一酸化窒素,水蒸気,過酸化水素,ギ酸,酢酸,無水酢酸等が挙げられ,還元性のものとしては水素が挙げられ,また,窒化物を製造するものとしては,モノアルキルアミン,ジアルキルアミン,トリアルキルアミン,アルキレンジアミン等の有機アミン化合物,ヒドラジン,アンモニア等が挙げられ,これらは1種類又は2種類以上使用することができる。なかでも,本発明の薄膜形成用原料はオゾンとの反応性が特に良好である。」
4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2009-260151号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0018】また例えば請求項15に記載したように,前記絶縁層は,シリコン窒化膜(SiN)又はシリコン酸化膜(SiO2 )よりなる。また例えば請求項16に記載したように,前記金属層原料ガスは,TMA(トリメチルアルミニウム),Cu(hfac)TMVS(ヘキサフルオロアセチルアセトナト-トリメチルビニルシリル銅),Cu(EDMDD)2 ,TBTDET(ターシャリーブチルイミド-トリ-ジエチルアミドタンタル),PET(ペンタエトキシタンタル),TiCl4 (四塩化チタン),AlCl3 (塩化アルミニウム),TEH(テトラキスエトキシハフニウム),Zr(OtBt)4 ,HTTB(ハフニウムテトラターシャリーブトキシド),TDMAH(テトラキスジメチルアミノハフニウム),TDEAH(テトラキスジエチルアミノハフニウム),TEMAH(テトラキスエチルメチルアミノハフニウム),Hf(MMP)4 (ジルコニウムテトラターシャリーブトキシド),TDMAZ(テトラキスジメチルアミノジルコニウム),TDEAZ(テトラキスジエチルアミノジルコニウム),TEMAZ(テトラキスエチルメチルアミノジルコニウム),Zr(MMP)4 (テトラキスメトキシメチルプロポキシジルコニウム),TEA(テトラエチルアルミニウム),Al(MMP)3 (トリスメトキシメチルプロポキシアルミニウム)よりなる群より選択される1以上のガスである。」
「【0051】次に,具体的に本発明方法の金属ドープ層の形成方法について説明する。本発明では,図3に示すように,絶縁層原料ガスを用いて絶縁層を形成する絶縁層形成工程と,上記金属を含む金属層原料ガスを用いて金属層を形成する金属層形成工程とを,上記金属層形成工程が少なくとも1回含まれるように交互にこの順序で順次繰り返し行うようにしている。」
5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2013-100262号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0073】幾つかの実施形態では,本明細書で記載される式Iを有するハロゲン化オルガノアミノシラン前駆体は同様に,例えば限定されないが金属酸化物膜又は金属窒化物膜などの金属含有膜のためのドーパントとしても使用され得る。これらの実施形態では,金属含有膜は,金属アルコキシド,金属アミド又は揮発性有機金属前駆体を用いて,本明細書で記載されるプロセスなどのALD又はCVDプロセスを用いて堆積される。本明細書中で開示されている方法とともに使用されてよい適切な金属アルコキシド前駆体の例としては,第3族乃至第6族金属アルコキシド,アルコキシとアルキル置換シクロペンタジエニルリガンドの両方を有する第3族乃至第6族金属錯体,アルコキシとアルキル置換ピロリルリガンドの両方を有する第3族乃至第6族金属錯体,アルコキシとジケトネートリガンドの両方を有する第3族乃至第6族金属錯体,アルコキシとケトエステルリガンドの両方を有する第3族乃至第6金属錯体が挙げられるがそれらに限定されない。本明細書中で開示されている方法とともに使用されてよい適切な金属アミド前駆体の例としては,テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(TDMAZ),テトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム(TDEAZ),テトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム(TEMAZ),テトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム(TDMAH),テトラキス(ジエチルアミノ)ハフニウム(TDEAH)及びテトラキス(エチルメチルアミノ)ハフニウム(TEMAH),テトラキス(ジメチルアミノ)チタン(TDMAT),テトラキス(ジエチルアミノ)チタン(TDEAT),テトラキス(エチルメチルアミノ)チタン(TEMAT),tert-ブチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(TBTDET),tert-ブチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TBTDMT),tert-ブチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(TBTEMT),エチルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル(EITDET),エチルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(EITDMT),エチルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル(EITEMT),tert-アミルイミノトリ(ジメチルアミノ)タンタル(TAIMAT),tert-アミルイミノトリ(ジエチルアミノ)タンタル,ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル,tert-アミルイミノトリ(エチルメチルアミノ)タンタル,ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(BTBMW),ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジエチルアミノ)タングステン,ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(エチルメチルアミノ)タングステン及びそれらの組み合わせが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書中で開示されている方法とともに使用されてよい適切な有機金属前駆体の例としては,第3族金属シクロペンタジエニル又はアルキルシクロペンタジエニルが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書中の例示的な第3族乃至第6族金属としては,Y,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Er,Yb,Lu,Ti,Hf,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo及びWが挙げられるがそれらに限定されない。他の揮発性有機金属前駆体としては,金属アルキル前駆体,例えば限定されないがトリエチルアルミニウム(TEA),トリメチルアルミニウム(TMA)が挙げられるがそれらに限定されない。」
6 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特表2014-532304号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0155】工程の数箇所で,誘電体堆積のサイクルが,例えばジボラン等のドーパント前駆体種の導入で中断される。これは,図面で操作Fとして説明されている。誘電体ソース膜に提供されることができるドーパントの例としては,ホウ素,ガリウム,リン,ヒ素等の原子価III及びIV元素,及び他のドーパントが挙げられる。ドーパント前駆体の例としては,ジボランの他に,ホスフィン及び他の水素化物ソースが挙げられる。また,アルキル前駆体(例えば,トリメチルガリウム),ハロ前駆体(例えば,塩化ガリウム)等の非水素化物ドーパントも,使用可能である。」
7 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特表2005-534181号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0060】図3は,本発明の好ましい実施形態に従う一般的なプロセスシーケンスを示す。基板は,プロセスチャンバー中に提供され,全てのシーケンスステップは,好ましくは,そのプロセスチャンバー中でインサイチュで実施される。【0061】好ましくは,プロセスチャンバーは,Phoenix,ArizonaのASM America, Inc.より市販され,図1および2に関して上に記載される,EpsilonTMシリーズの単一ウェハリアクターのような,単一ウェハの,水平ガスフローリアクターであり,好ましくは,放射加熱される。結果として,図3に示されるプロセスがまた,シャワーヘッドの配置を有するもののような,代替的なリアクター中で使用され得るが,増加した均一性および堆積速度における利益は,回転基板を使用する,EpsilonTMチャンバーの,水平単一パス層ガスフロー配置において特に効果的であることが見出された。続きを表示(全36行)【0062】図3を参照すると,ステップ100において,シリコン層は,基板上に形成される。「基板」は,シリコン含有物質が本発明の好ましい実施形態に従って堆積されるかまたは適用される,任意の基礎をなす表面を含むように,その通常の意味で,本明細書中で使用される。好ましい基板は,金属,シリコン,ゲルマニウム,プラスチック,および/またはガラス,好ましくは,シリコン化合物(Si-O-C-H低誘電率の膜を含む)およびケイ素合金を含むがこれらに限定されない,実質上任意の物質からなり得る。基板はまた,トレンチまたはステップのような物理的構造上にそれらを有し得る。特に好ましい基板は,その上にインターフェーシャル・レイヤーを有するシリコン基板を含む。さらに,約480℃以上の加工温度で,水素で不動態化したSi<100>表面は,シリコン基板として有利に使用され得る。【0063】ポリシランは,好ましくは,シリコン層100を形成するためにシリコン供給源として使用される。本明細書中で使用される場合,「ポリシラン」は,化学式SinH2n+2(ここで,n=2~4)を有する。好ましくは,ポリシランは,ジシランまたはトリシランである。最も好ましくは,ポリシランはトリシランである。結果として,本発明は,トリシランと共にCVDサイクルを使用する特に好ましい実施形態の文脈において記載されるが,当業者は,本発明の開示を考慮して,記載されるプロセスの特定の利点が他の前駆体および/または他の堆積技術で得られ得ることを理解するであろう。【0064】シリコン層100を形成する際に,シリコン前駆体の堆積は,当業者に公知の種々の堆積方法に従って適切に行われ得るが,最も大きい利益は,堆積が本明細書中に教示されるCVD法に従って行われる場合に得られる。開示される方法は,プラズマ・エンハンスト化学気相成長法(PECVD)または熱CVD(気体のトリシランを利用して,CVDチャンバー内に含まれる基板上にシリコン含有化合物膜を堆積させる)を含む,CVDを使用することによって適切に実践され得る。熱CVDは,プロセスのシリコン堆積相について好ましい。【0065】ポリシランは,好ましくは,供給ガスの形態でまたは供給ガスの成分として,プロセスチャンバー12(図1)に導入される。供給ガスは,ポリシラン以外のガス(例えば,不活性キャリアガス)を含み得る。キャリアガスは,当該分野で公知のキャリアガス(例えば,窒素,水素,ヘリウム,アルゴン,またはその種々の組み合わせ)を含み得る。好ましくは,窒素は,本明細書中に使用される方法についてキャリアガスとして使用される。【0066】ポリシランがトリシランである場合,トリシランは,好ましくは,トリシラン蒸気を同伴するキャリアガスと共に使用されるバブラー,より好ましくは温度制御バブラーによりチャンバーに導入される。好ましくは,バブラーからのトリシランフロー速度は,約1sccm~1slmまで,より好ましくは,約50sccm~500sccmまで変化する。好ましくは,キャリアガスは,約2slm~20slmで変化するフロー速度を有する。【0067】反応チャンバー12(図1)における全圧は,好ましくは,約0.001Torr~約780Torrの範囲,より好ましくは,約0.001Torr~約100Torrの範囲,最も好ましくは,約0.001Torr~約10Torrの範囲である。トリシランの分圧は,好ましくは,全圧の約0.0001%~約100%の範囲,より好ましくは,全圧の約0.001%~約50%の範囲である。供給ガスのポリシランおよび他の成分の相対的な分圧は,好ましくは,シリコン含有化合物膜を堆積する過程にわたり比較的一定に維持される。しかし,シリコン層形成100および他のステップは,必ずしも等圧的に行われる必要はない。例えば,ステップ100は,ステップ120よりも高い圧力で行われ得,逆も行われ得る。【0068】有利には,0.001Torr~10Torrの範囲の圧力での堆積が,優れた均一性を生じることが見出されている。さらに,低分圧が,一般的に,プロセスの間により低い水素含量を維持するために所望である。しかし,より多くのケイ素原子数を有するシランにおける固有の低いH:Si比に起因して,例えばトリシランについての分圧は,より低次のシラン(例えば,ジシランおよびシラン)についてのそれよりも高くあり得る。【0069】好ましくは,シリコン層形成100およびサイクル140は,一般的に,等熱的に行われる。熱CVDについて,好ましい堆積温度は,約400℃~約800℃,好ましくは,約450℃~約750℃,より好ましくは,約450℃~約650℃の範囲である。好ましくは,これらの温度は,基板についての温度設定に対応する。【0070】好ましくは,熱い基板表面でシリコン前駆体を熱分解または分解するのに十分なエネルギーを供給し,そして,基板表面に送達される速度によって主に制御される速度でシリコンを堆積するために,堆積条件は創られる。従って,トリシランのような前駆体について,堆積はまた,好ましくは,質量輸送制限レジーム(mass transport limited regime)中またはそれに近い化学気相成長堆積条件化で行われる。質量輸送制限レジームにおいて,堆積速度は,本質的に温度と無関係である。これは,基板の表面全体にわたる小さい温度バリエーションが堆積速度にほとんどまたは全く影響しないことを意味する。質量輸送制限レジームにおける堆積は,厚みおよび組成バリエーションを非常に最小化し,そして本明細書中に記載される好ましいシリコン含有化合物膜の製造を可能にすることが見出された。従って,有利には,このような条件は,最小の負荷効果またはパターン感受性を有する堆積を可能にする。【0071】好ましいシリコン含有化合物層の形成において,ステップ100で形成される膜の厚みは,当該分野で公知のように,所定の一連の堆積パラメーター(例えば,全圧および温度)について堆積時間および/またはガスフロー速度を変化させることによって,意図される適用に従って変化され得る。特定の一連の堆積条件について,シリコン層形成100のシリコン堆積の期間は,薄いシリコン層が形成されるように選択されるべきである。薄くかつ均一なシリコン層を形成することにより,層は容易に十分に反応され得,例えば,窒化または酸化され得,以下に記載される,薄くかつ均一なシリコン含有化合物層の形成を可能にする。結果として,約650℃未満で,シリコン層の厚みは,約3Åと25Åとの間であり,より好ましくは,約3Åと15Åとの間であり,最も好ましくは,約3Åと8Åとの間である。しかし,好ましい厚みの範囲は,温度のようなプロセス条件に依存して変化し得ることが理解される。より高い温度において,より厚いシリコン層が,依然として堆積され得るが,依然として,層が十分に反応されることを可能にする。例えば,約900℃以上の温度において,約20~50Åのシリコン層が使用され得る。【0072】シリコン層形成100後,任意の過剰なシリコン供給源および副産物は,プロセスチャンバーから除去110され得る。シリコン供給源除去110は,以下を含む除去プロセスのいずれか1つまたは任意の組み合わせによって生じ得る:不活性ガスでのプロセスチャンバーのパージ,シリコン供給源の排気,または反応種を運ぶガスによるシリコン供給源ガスの置換。しかし,シリコン供給源ガス除去110が,反応種を運ぶガスとの供給源ガスの置換によって達成される場合,プロセスチャンバーは,好ましくは,上に記載され図1に示される,ASM EpsilonTMシリーズの単一ウェハリアクターのような,単一基板層流チャンバーである。さらに,シリコン供給源ガス除去110がパージによって行われる場合,プロセスチャンバー12は,好ましくは,数秒間パージされる。【0073】シリコン供給源ガス除去110は,好ましくは,チャンバー12(図1)中の特定の反応物の量がチャンバー12に入る次の反応物との所望でない副反応を最小化するために十分に低いレベルにあるように行われることが理解される。これは,次いで,形成されるシリコン含有化合物層中の不純物の所望でない混入を最小化する。このような低いレベルの反応物は,例えば,チャンバー12のパージまたは排気の期間を最適化することによって,達成され得る。このようなレベルにおいて,プロセスチャンバーは,特定の反応物が実質的にないと言われ得る。【0074】シリコン供給源ガス除去110後,シリコン層を,シリコン含有化合物層120の形成のために反応種と反応され得る。このような反応種は,例えば,シリコンナイトライド層を形成するための窒素供給源,またはシリコンオキサイド層を形成するための酸素供給源を含み得る。好ましくは,ステップ100で形成されるシリコン層は,化学量論的に完全に反応種と反応するのに十分な期間,流入する(inflowing)反応種に暴露される。より好ましくは,反応条件は,シリコンナイトライド層の形成に関して以下により詳細に議論されるように,形成されるシリコン層と完全に反応するように,そして基礎をなす構造への損傷を避けるように選択される。【0075】シリコン含有化合物層120の形成後,反応物除去130は,シリコン供給源除去110について上に記載される方法のいずれかを使用して,実施され得る。しかし,ステップ110および130は,正確に同じ方法によって起きる必要はない。例えば,1つのステップは,パージを包含し得るが,他のプロセスは,排気を含み得る。【0076】ステップ100,110,120および130の実施は,1つのサイクル140を含み,そして基板上に1つの層のシリコン含有化合物を堆積する。次いで,サイクル140は,シリコン含有化合物層が所望の厚さに構築されるまで,連続して繰り返され得る。【0077】結果として,当業者は,本発明が種々の厚みの層の形成を可能にし,厚みは,例えば,特定の適用の要求に基づいて選択されることを理解する。例えば,ゲート誘電体としての使用のために,十分なサイクルが,好ましくは,約3Åと20Åとの間の厚みのシリコンナイトライド層を成長するために行われる。別の実施例において,トランジスタ側壁スペーサーとしての使用のために,実施される多数のサイクルが,好ましくは,約150Åと400Åとの間の厚みのシリコンナイトライド層を形成するように選択され得る。しかし,より大きい厚みが可能である;例えば,5000Åまでの厚みが十分な数のサイクルを実施した後に形成され得ることが理解され得る。」
「【図3】」
以上によれば,引用文献7には,以下の発明(以下,「引用発明7」という。)が記載されていると認められる。
「基板上にシリコンナイトライド層を形成する方法であって,基板を,プロセスチャンバー中に提供するステップと,プロセスチャンバーにシリコン供給源としてトリシランを導入し,CVD法により,基板上にシリコン層を形成するステップ100と,シリコン層形成後,任意の過剰なシリコン供給源および副産物をプロセスチャンバーから除去するステップ110と,シリコン供給源ガス除去後,シリコン層を窒素供給源と反応させてシリコン含有化合物としてシリコンナイトライド層を形成するステップ120と,シリコン含有化合物層形成後,反応物除去を実施するステップ130と,前記ステップ100,110,120および130の実施は,1つのサイクル140を含み,サイクル140は,シリコン含有化合物層が所定の厚さに構築されるまで,連続して繰り返す方法。」
8 引用文献8について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献8(特表2006-515955号公報)には,次の事項が記載されている。
「【0024】・・・[0018]シリコン源は,Cl3SiSiCl2H,Cl3SiSiClH2,Cl3SiSiH3,HCl2SiSiH3,H2ClSiSiH3,HCl2SiSiCl2H,H2ClSiSiClH2のような式を有する。他のシリコン源は,少なくとも1つのH原子及び/又は少なくとも1つのCl原子をフッ素のような他のハロゲンで置換することによって得られる。従って,シリコン源は,Cl3SiSiF2H,F3SiSiClH2,F3SiSiH3,F3SiSiCl3,HFClSiSiF3,H2ClSiSiH3,FCl2SiSiF2H,H2ClSiSiClF2のような化学式を有してもよい。同様にハロゲン化した他のシリコン源も本方法を可能にする。」
「【0031】[0023]他のシリコン化合物は,分子内に含まれるシリコンモチーフ(例えば,Rがシリコン,ゲルマニウム又はカーボンである場合にはSi-Si-R又はSi-R-Si)を堆積させるために用いられる。シリコン源は,H3SiSiH2SiH2Cl,H3SiSiH2SiHCl2,H3SiSiH2SiCl3,H3SiSiHClSiH2Cl,H3SiSiHClSiHCl2,H3SiSiHClSiCl3,H3SiSiCl2SiH2Cl,H3SiSiCl2SiHCl2,H3SiSiCl2SiCl3,HCl2SiSiH2SiH2Cl,HCl2SiSiH2SiHCl2,Cl3SiSiH2SiCl3,HCl2SiSiCl2SiH2Cl,H2ClSiSiHClSiHCl2,Cl3SiSiH2SiCl3,Cl3SiSiHClSiCl3,HCl2SiSiCl2SiHCl2,H3SiSiCl2SiH3のような式を有してもよい。他のシリコン源は,少なくとも1つのH原子及び/又は少なくとも1つのCl原子をフッ素のようなほかのハロゲンで置換することによって得られる。それ故,シリコン源は,F3SiSiH2SiH3,F3SiSiH2SiCl3,H3SiSiH2SiH2F,H3SiSiH2SiHF2,H3SiSiH2SiF3,H3SiSiHFSiH2Cl,F3SiSiHClSiHF2,H3SiSiFHSiCl3,H3SiSiF2SiH2F,H3SiSiCl2SiFCl2,H3SiSiF2SiCl3のような式を有してもよい。他の同様にハロゲン化されたシリコン源も本方法を可能にする。更に,環状トリシランや環状ハロトリシランも本発明の範囲内で用いられる。」
第4 対比・判断
1 引用発明1を主引用発明とする容易想到性について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「シリコン基板1」は,本願発明1の「基材」,「窒化ケイ素の膜」に相当し,引用発明1の「シリコン窒化物膜」と,本願発明1の「金属ドープ窒化ケイ素の膜」とは,「窒化ケイ素の膜」である点で共通する。
そして,引用発明1は,「シリコン基板1の被処理面に向け,シリコンを含むシリコン原料ガスとしてSi2H5Clガス供給するステップ1」及び「処理室内において,シリコン基板1の被処理面に向け,シリコン原料ガスの分解を促進させる物質を含む分解促進ガスを供給するステップ3」を「2回以上繰り返すことで,第1層シリコン膜4-1を,シリコン基板1の被処理面上に形成」しているから,化学気相堆積プロセス又は原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスを用いているといえる。
また,引用発明1において,「シリコン窒化物膜」は,「シリコン基板1」の少なくとも1つの表面上に形成されることは明らかである。
以上から,引用発明1と本願発明1とは,「化学気相堆積プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスにより,基材の少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素の膜を形成するための方法」である点で共通する。
(イ)引用発明1の「成膜装置の処理室内」は,本願発明1の「反応器中」に相当し,引用発明1の「シリコン基板1を成膜装置の処理室内に搬入」することは,成膜装置の処理室内にシリコン基板1の少なくとも1つの表面を提供しているといえる。
したがって,引用発明1の「シリコン基板1を成膜装置の処理室内に搬入し」は,本願発明1の「反応器中に前記基材の少なくとも1つの表面を提供する工程」に相当する。
(ウ)引用発明1の「Si2H5Clガス」は,本願発明1の「モノクロロジシラン(MCDS)」に相当し,当該「Si2H5Clガス」は,「シリコン基板1の被処理面に向け」て「供給する」ものであるから,「成膜装置の処理室内」に導入されることは明らかである。
したがって,引用発明1の「シリコン基板1の被処理面に向け,シリコンを含むシリコン原料ガスとしてSi2H5Clガスを供給するステップ1」は,本願発明1の「前記反応器中にモノクロロジシラン(MCDS),及びモノクロロトリシラン(MCTS)からなる群から選択される少なくとも1つのハライドシラン前駆体を導入する工程」に相当する。
(エ)引用発明1の「窒素を含む窒化ガス」は,本願発明1の「窒素含有源」に相当するから,引用発明1の「処理室内において,第1層シリコン膜4-1が形成されたシリコン基板1の被処理面に向け,窒素を含む窒化ガスを供給して,シリコン膜の窒化処理を行うステップ6」は,本願発明1の「前記反応器中に窒素含有源を導入する工程」に相当する。
(オ)以上から,本願発明1と引用発明1との一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「化学気相堆積プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスにより,基材の少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素の膜を形成するための方法であって,反応器中に前記基材の少なくとも1つの表面を提供する工程と,前記反応器中にモノクロロジシラン(MCDS),及びモノクロロトリシラン(MCTS)からなる群から選択される少なくとも1つのハライドシラン前駆体を導入する工程と,前記反応器中に窒素含有源を導入する工程とを含む,方法。」
<相違点>
相違点1-1:本願発明1は,「前記少なくとも1つのハライドシラン前駆体と前記窒素含有源とが反応して,前記少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素の膜を形成し」ているのに対し,引用発明1は,「処理室内において,シリコン基板1の被処理面に向け,シリコン原料ガスの分解を促進させる物質を含む分解促進ガスを供給」することで「第1層シリコン膜4-1」を形成し,「処理室内において,第1層シリコン膜4-1が形成されたシリコン基板1の被処理面に向け,窒素を含む窒化ガスを供給して,シリコン膜の窒化処理を行う」ことにより,「第1層シリコン膜4-1を窒化し,第1層シリコン窒化物膜5-1をシリコン基板1の被処理面上に形成」している点。
前記金属含有前駆体が,トリス(ジメチルアミノ)アルミニウム,トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム,トリエチルガリウム,トリス(ジメチルアミノ)ガリウム,トリス(ジエチルアミノ)ガリウムからなる群より選択される」のに対して,引用発明1は,そのような事項を備えていない点。
イ 判断
事案に鑑み,相違点1-2から検討する。
引用文献1には,相違点1-2に係る本願発明1の構成である,「窒化ケイ素の膜」は,「金属ドープ窒化ケイ素の膜」であって,「金属含有前駆体を前記反応器中に導入して,金属ドープ窒化ケイ素の膜を形成することをさらに含み,
前記金属含有前駆体が,トリス(ジメチルアミノ)アルミニウム,トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム,トリエチルガリウム,トリス(ジメチルアミノ)ガリウム,トリス(ジエチルアミノ)ガリウムからなる群より選択される」ことは,何ら記載も示唆もされていない。
そして,引用文献2~6にも,前記相違点1―2に係る本願発明1の構成,特に,「前記金属含有前駆体が,トリス(ジメチルアミノ)アルミニウム,トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム,トリエチルガリウム,トリス(ジメチルアミノ)ガリウム,トリス(ジエチルアミノ)ガリウムからなる群より選択される」ことについては,何ら記載も示唆もされていない。また,前記相違点1―2に係る本願発明1の構成が,本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明1及び引用文献2~6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(2)本願発明2~4について
本願発明2~4は,本願発明1を減縮した発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明1及び引用文献2~6に記載され発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
2 引用発明7を主引用発明とする容易想到性について
(1)本願発明1について
ア 対比
(ア)本願発明1と引用発明7とを対比する。
引用発明7の「基板」,「シリコンナイトライド層」は,本願発明1の「基材」,「窒化ケイ素の膜」に相当し,引用発明7の「シリコンナイトライド層」と,本願発明1の「金属ドープ窒化ケイ素の膜」とは,「窒化ケイ素の膜」である点で共通する。
そして,引用発明7は,「CVD法により,基板上にシリコン層を形成するステップ100」を含んでいるから,CVDプロセス,すなわち,化学気相堆積プロセスによる堆積プロセスにより,「基板上にシリコンナイトライド層を形成する方法」であるといえる。
また,引用発明7において,「シリコンナイトライド層」は,「基板」の少なくとも1つの表面上に形成されることは明らかである。
以上から,引用発明7と本願発明1とは,「化学気相堆積プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスにより,基材の少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素の膜を形成するための方法」である点で共通する。
(イ)引用発明7の「プロセスチャンバー中」は,本願発明1の「反応器中」に相当し,引用発明7の「基板を,プロセスチャンバー中に提供する」することは,プロセスチャンバー中に基板の少なくとも1つの表面を提供しているといえる。
したがって,引用発明7の「基板を,プロセスチャンバー中に提供するステップ」は,本願発明1の「反応器中に前記基材の少なくとも1つの表面を提供する工程」に相当する。
(ウ)引用発明7の「トリシラン」は,シラン前駆体であるから,引用発明7と本願発明1とは,「前記反応器中にシラン前駆体を導入する工程」を含んでいる点で共通する。
(エ)引用発明7の「窒素供給源」は,本願発明1の「窒素含有源」に相当する。
そして,引用発明7の「シリコン供給源ガス除去後,シリコン層を窒素供給源と反応させてシリコン含有化合物としてシリコンナイトライド層を形成するステップ120」は,プロセスチャンバー中に窒素含有源を導入しているといえるから,本願発明1の「前記反応器中に窒素含有源を導入する工程」に相当する。
(オ)以上から,本願発明1と引用発明7の一致点と相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「化学気相堆積プロセス及び原子層堆積プロセスから選択される堆積プロセスにより,基材の少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素の膜を形成するための方法であって,反応器中に前記基材の少なくとも1つの表面を提供する工程と,前記反応器中にシラン前駆体を導入する工程と,前記反応器中に窒素含有源を導入する工程とを含む,方法。」
<相違点>
相違点2-1:本願発明1は,「前記少なくとも1つのハライドシラン前駆体と前記窒素含有源とが反応して,前記少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素の膜を形成し」ているのに対し,引用発明7は,「プロセスチャンバーにシリコン供給源としてトリシランを導入し,CVD法により,基板上にシリコン層を形成」し,「シリコン層を窒素供給源と反応させてシリコン含有化合物としてシリコンナイトライド層を形成」している点。
前記金属含有前駆体が,トリス(ジメチルアミノ)アルミニウム,トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム,トリエチルガリウム,トリス(ジメチルアミノ)ガリウム,トリス(ジエチルアミノ)ガリウムからなる群より選択される」のに対して,引用発明7は,そのような事項を備えていない点。
イ 判断
事案に鑑み,相違点2-3から検討する。
引用文献7には,相違点2-3に係る本願発明1の構成である,本願発明1の「窒化ケイ素の膜」は,「金属ドープ窒化ケイ素の膜」であって,「金属含有前駆体を前記反応器中に導入して,金属ドープ窒化ケイ素の膜を形成することをさらに含み,
前記金属含有前駆体が,トリス(ジメチルアミノ)アルミニウム,トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム,トリエチルガリウム,トリス(ジメチルアミノ)ガリウム,トリス(ジエチルアミノ)ガリウムからなる群より選択される」ことは,何ら記載も示唆もされていない。
そして,引用文献1~6,8にも,前記相違点2―3に係る本願発明1の構成,特に,「前記金属含有前駆体が,トリス(ジメチルアミノ)アルミニウム,トリス(ジエチルアミノ)アルミニウム,トリエチルガリウム,トリス(ジメチルアミノ)ガリウム,トリス(ジエチルアミノ)ガリウムからなる群より選択される」ことについては,何ら記載も示唆もされていない。また,前記相違点2―3に係る本願発明1の構成が,本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,引用発明7及び引用文献1~6,8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
(2)本願発明2~4について
本願発明2~4は,本願発明1を減縮した発明であり,いずれも本願発明1の全ての発明特定事項を有しているから,前記(1)で検討したのと同様の理由により,引用発明7及び引用文献1~6,8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
第5 原査定の概要及び原査定についての判断
1 原査定(令和2年5月29日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。
(1)理由2(進歩性)
本願の請求項1~4に係る発明は,引用文献1に記載された発明及び引用文献2~6に記載された発明に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)理由2(進歩性)
本願の請求項1~4に係る発明は,引用文献7に記載された発明及び引用文献1~6,8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2 しかしながら,令和2年10月8日付け手続補正により補正された請求項1~4に係る発明は,いずれも前記相違点1-2及び相違点2-3に係る本願発明1の事項を有するものであるから,前記第4 1及び2で検討したのと同様の理由により,引用文献1~6に記載された発明に基づいて,若しくは,引用文献1~8に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定を維持することはできない。
第6 当審拒絶理由について
1 当審では,以下の拒絶の理由(特許法第36条第6項第2号)を通知した。
(1)請求項1には,「窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の膜を形成するための方法であって」と記載されているが,この記載より後には,「金属ドープ窒化ケイ素の膜」を形成するための方法しか記載されておらず,「炭窒化ケイ素の膜を形成するための方法」は記載されていないから,上記「窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の膜を形成するための方法であって」との記載は明確でない。
また,請求項1には,「金属含有前駆体を前記反応器中に導入して,金属ドープ窒化ケイ素の膜を堆積することをさらに含み」と記載されているが,「金属含有前駆体を前記反応器中に導入」することによって,窒化ケイ素の膜に金属がドープされ,金属ドープ窒化ケイ素の膜が形成されるものであるから,上記「金属含有前駆体を前記反応器中に導入して,金属ドープ窒化ケイ素の膜を堆積することをさらに含み」との記載は明確でない。
(2)請求項1に記載の「モノクロロジシラン(MCDS),及びモノクロロトリシラン(MCTS)からなる群から選択される少なくとも1つのハライドシラン前駆体を導入する工程」は,どこに「モノクロロジシラン(MCDS),及びモノクロロトリシラン(MCTS)からなる群から選択される少なくとも1つのハライドシラン前駆体を導入する」のか特定されていないから明確でない。
(3)請求項1には,「(但し,トリシランを用いる前記方法を除く)。」と記載されているが,この記載より前に,トリシランを用いる方法は記載されていないから,上記「(但し,トリシランを用いる前記方法を除く)。」は明確でない。
2 それに対し,令和3年6月24日にした手続補正において,
(1)請求項1の「窒化ケイ素又は炭窒化ケイ素の膜を形成するための方法であって」との記載は,「金属ドープ窒化ケイ素の膜を形成するための方法であって」と補正され,また,請求項1の「前記少なくとも1つのハライドシラン前駆体と前記窒素含有源とが反応して,前記少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素を形成し,
金属含有前駆体を前記反応器中に導入して,金属ドープ窒化ケイ素の膜を堆積することをさらに含み」は,「前記少なくとも1つのハライドシラン前駆体と前記窒素含有源とが反応して,前記少なくとも1つの表面上に窒化ケイ素の膜を形成し,
金属含有前駆体を前記反応器中に導入して,金属ドープ窒化ケイ素の膜を形成することをさらに含み」と補正され,明確になった。
(2)請求項1の「モノクロロジシラン(MCDS),及びモノクロロトリシラン(MCTS)からなる群から選択される少なくとも1つのハライドシラン前駆体を導入する工程」は,「前記反応器中にモノクロロジシラン(MCDS),及びモノクロロトリシラン(MCTS)からなる群から選択される少なくとも1つのハライドシラン前駆体を導入する工程」と補正され,明確になった。
(3)請求項1の「(但し,トリシランを用いる前記方法を除く)。」は削除された。
(4)したがって,前記1(1)~(3)の拒絶の理由は解消した。
第7 むすび
以上のとおりであるから,原査定の理由及び当審拒絶理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-014168