特許拒絶査定不服審判
2022-015666
高温用のコイル変換器
- 審判番号
- 2022-015666
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-563941
- 請求日
- 2022年10月03日
- 審決日
- 2024年02月07日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】マイクロ モーション インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】弁理士法人有古特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 中塚 直樹
- 審判官 濱本 禎広
- 審判官 九鬼 一慶
- 分類
- P18 .537-WZ (G01F) / P18 .113-WZ (G01F) / P18 .121-WZ (G01F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020-563941「高温用のコイル変換器」拒絶査定不服審判事件〔令和 元年11月21日国際公開、WO2019/221699、令和 3年 9月 2日国内公表、特表2021-523377〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、2018年(平成30年)5月15日を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和2年11月12日 :翻訳文の提出
令和3年12月 7日付け:拒絶理由通知書
令和4年 3月14日 :意見書の提出
同年 6月 1日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月 7日 :原査定の謄本の送達)
同年10月 3日 :審判請求書の提出
令和5年 8月30日付け:拒絶理由通知書
同年12月 4日 :意見書、手続補正書の提出
なお、令和5年8月30日付けで当審において通知した拒絶理由通知書を、以下「当審拒絶理由通知書」といい、これに対して、同年12月4日に請求人から提出された意見書を、以下、単に「意見書」という。
第2 本願発明
本願の請求項1~24に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」などという。また、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和5年12月4日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~24に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「【請求項1】
高温用のコイル変換器(200)であって、
導電性ワイヤ(212a)からなるコイル(212)を含むコイル部分(210)と、
導電性ワイヤ(212a)に隣接して配置された電気絶縁体とを備え、
コイル(212)は、少なくとも350℃よりも大きい温度範囲を含む複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するように構成される、コイル変換器(200)。
【請求項2】
少なくとも350℃よりも大きい前記温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するように構成される前記コイル(212)は、
導電性ワイヤ(212a)及び電気絶縁体は、前記温度範囲にて互いに熱膨張が適合すること、
電気絶縁体は少なくとも前記温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて実質的に非導電性であること、及び
導電性ワイヤ(212a)は、少なくとも前記温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて実質的に再現性がある導電性を有すること、の少なくとも1つを有する、請求項1に記載のコイル変換器(200)。
【請求項3】
互いに熱膨張が適合した前記導電性ワイヤ(212a)及び前記電気絶縁体は、実質的に等しい熱膨張係数を有する、請求項2に記載のコイル変換器(200)。
【請求項4】
前記複数の温度サイクルの夫々は、前記温度範囲を含む、請求項1に記載のコイル変換器(200)。
【請求項5】
前記電気絶縁体は、前記導電性ワイヤ(212a)上にセラミック被覆(212b)を有する、請求項1乃至4の何れかに記載のコイル変換器(200)。
【請求項6】
前記電気絶縁体はボビン(214)を備え、前記コイル(212)は前記ボビン(214)の周囲に配置される、請求項5に記載のコイル変換器(200)。
【請求項7】
前記導電性ワイヤ(212a)と、前記ボビン(214)及び前記セラミック被覆(212b)の少なくとも一方は、互いに熱膨張が適合している、請求項5又は6に記載のコイル変換器(200)。
【請求項8】
前記導電性ワイヤ(212a)が磁性材料を含む、請求項1乃至7の何れかに記載のコイル変換器(200)。
【請求項9】
前記導電性ワイヤ(212a)が、ニッケル、ニッケル合金、白金ロジウム合金、白金イリジウム合金、およびニオビウムタンタルタングステン合金のうちの1つを含む材料からなる、請求項1乃至8の何れかに記載のコイル変換器(200)。
【請求項10】
前記温度範囲は、350℃から500℃、350℃から427℃、410℃から500℃、410℃から427℃の何れかである、請求項1乃至9の何れかに記載のコイル変換器(200)。
【請求項11】
マグネット部分(220)をさらに含み、マグネット部分(220)は、コイル部分(210)に対して空間的に変位するように構成される、請求項1乃至10の何れかに記載のコイル変換器(200)。
【請求項12】
高温用のコイル変換器を形成する方法であって、
導電性ワイヤからなるコイルを含むコイル部分を形成する工程と、
導電性ワイヤに隣接して電気絶縁体を配置する工程と、
コイルを、少なくとも350℃よりも大きい温度範囲を含む複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するように構成する工程を備える、方法。
【請求項13】
少なくとも350℃を超える温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するようにコイルを構成する工程が、
前記温度範囲にて互いに熱膨張が適合するように導電性ワイヤ及び電気絶縁体を構成する工程、
電気絶縁体が、少なくとも前記温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて実質的に非導電性であるように構成する工程、
少なくとも前記温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて実質的に再現性がある導電性を有するように導電性ワイヤを構成する工程の、
少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
互いに熱膨張が適合するように導電性ワイヤ及び電気絶縁体を構成する工程は、実質的に等しい熱膨張係数を有するように前記導電性ワイヤ及び前記電気絶縁体を構成する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記複数の温度サイクルの各々が、前記温度範囲を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記導電性ワイヤに隣接して前記電気絶縁体を配置する工程は、前記導電性ワイヤ上にセラミック被覆を配置する工程を含む、請求項12乃至15の何れかに記載の方法。
【請求項17】
前記導電性ワイヤに隣接して前記電気絶縁体を配置する工程は、ボビンを形成する工程と、前記ボビンの周囲に前記コイルを配置する工程とを含む、請求項12乃至16の何れかに記載の方法。
【請求項18】
前記導電性ワイヤと前記電気絶縁体とを互いに熱膨張が適合するように構成する工程は、前記導電性ワイヤと、前記ボビン及び前記セラミック被覆の少なくとも一方とを互いに熱膨張が適合するように構成する工程を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記導電性ワイヤが磁性材料を含む、請求項12乃至18の何れかに記載の方法。
【請求項20】
前記導電性ワイヤが、ニッケル、ニッケル合金、白金ロジウム合金、白金イリジウム合金、およびニオビウムタンタルタングステン合金のうちの1つを含む材料からなる、請求項12乃至19の何れかに記載の方法。
【請求項21】
前記温度範囲は、350℃から500℃、350℃から427℃、410℃から500℃、410℃から427℃の何れかである、請求項12乃至20の何れかに記載の方法。
【請求項22】
マグネット部分を形成する工程と、コイル部分に対して空間的に変位するようにマグネット部分を構成する工程とをさらに含む、請求項12乃至21の何れかに記載の方法。
【請求項23】
高温用の振動式メータ(5)であって、
メータ電子機器(20)と、
メータ電子機器(20)と通信可能に連結されたメータアセンブリ(10)を備え、該メータアセンブリ(10)は、
少なくとも1つの導管(103A、103B)と、
少なくとも1つの導管(103A、103B)に連結されたドライバ(104)と、
少なくとも1つの導管(103A、103B)に連結された少なくとも1つのピックオフ(105、105')とを含み、
前記ドライバ(104)と少なくとも1つのピックオフ(105、105')の少なくとも1つは、コイル変換器(200)を備え、該コイル変換器(200)は、
導電性ワイヤ(212a)からなるコイル(212)を含むコイル部分(210)と、
導電性ワイヤ(212a)に隣接して配置された電気絶縁体とを備え、
コイル(212)は、少なくとも350℃よりも大きい温度範囲を含む複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するように構成される、振動式メータ(5)。
【請求項24】
少なくとも350℃よりも大きい温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するように構成されるコイル(212)は、
導電性ワイヤ(212a)及び電気絶縁体は、前記温度範囲にて互いに熱膨張が適合すること、
電気絶縁体は前記温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて実質的に非導電性であること、及び
導電性ワイヤ(212a)は、前記温度範囲を含む前記複数の温度サイクルにて実質的に再現性がある導電性を有すること、の少なくとも1つを有する、請求項23に記載の振動式メータ(5)。」
第3 当審拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由
当審拒絶理由通知書において通知した拒絶の理由のうち、本件補正前の請求項1に係る発明に対する理由1(新規性の欠如)及び理由2(進歩性の欠如)の概要と、本件補正前の請求項の記載に対する理由3(明確性)の(2)及び(4)は、次のとおりである。
1 理由1(新規性の欠如)
(新規性の欠如)本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において発行された、下記の引用文献に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開平2-150724号公報
2 理由2(進歩性の欠如)
(進歩性の欠如)本件補正前の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において発行された、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開平2-150724号公報
3 理由3(明確性)
(明確性)この出願は、本件補正前の請求項の記載が下記の点で、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
(2) 請求項2には、「導電性ワイヤ(212a)及び電気絶縁体は、前記温度範囲にて互いに熱膨張が適合する」と記載されているところ、「互いに熱膨張が適合する」とは、導電性ワイヤ及び電気絶縁体の熱膨張が、どのような関係にあること(熱膨張係数が同一であることを指すのか、異なる熱膨張係数であればどのような数値範囲内で近似することを含むのか)を特定しようとしているのか明らかでない。
請求項8、14、20、26についても同様である。
よって、請求項2、8、14、20、26に係る発明、及びこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項3~7、9~12、15~19、21~24に係る発明は明確でない。
(4) 請求項4には、「前記温度範囲の少なくとも一部を含む複数の温度サイクル」と記載されているところ、温度サイクルとは、どのようなものか明らかでない。
請求項5、16、17についても同様である。
よって、請求項4、5、16、17に係る発明、及びこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項6~12、18~24に係る発明は明確でない。
第4 理由3(明確性)に関する当審の判断
1 理由3の(4)について
(1) 本件補正後の請求項1には、「コイル(212)は、少なくとも350℃よりも大きい温度範囲を含む複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するように構成される」と記載されているところ、「温度サイクル」とは、どのようなものか明らかでない。
本件補正後の請求項2、4、12、13、15、23、24についても同様である。
よって、請求項1、2、4、12、13、15、23、24に係る発明、及びこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項3、5~11、14、16~22に係る発明は明確でない。
(2)ア これに対して、請求人は意見書において、次のとおり主張している。
「温度サイクル」という用語は、表面的には明らかに明確である。例えば、chat.openai.comに対して「温度サイクルとは何か」との質問を行ったところ、以下の通り回答した。
「温度サイクルとは、特定の期間にわたる温度の反復したパターン又は変動を指す。このパターンは、環境、産業、生物学、技術環境などのさまざまな状況で発生する可能性がある。温度サイクルは、毎日、季節ごと、または長期間にわたって発生する可能性があり、観測されているシステムや環境に応じて、予測可能なパターンまたは予測不可能なパターンを持つ場合がある。例えば
1. 毎日の温度サイクル:これは、24時間以内に発生する予測可能な温度変動を指し、通常は地球の自転と、それに対応する太陽光や暗闇への露出によって影響を受ける。
2. 季節温度サイクル:これには、地軸の傾きと太陽の周りの軌道によって1年を通して起こる予測可能な温度変化が含まれる。
3. 工業プロセス:工業環境では、特定のプロセスに温度サイクルが含まれる場合があり、機器や材料は加熱と冷却を交互に繰り返す。
4. 生物学的システム:生物学的有機体は、人間の体温の日々の変動や、植物の成長及び動物の行動に影響を与える季節の変化など、温度サイクルを頻繁に経験する。
5. 技術的用途:温度サイクルは、材料の温度試験、電子部品の熱サイクル、製品の環境試験など、さまざまな技術的用途においても意図的に誘発されうる。
温度サイクルを理解することは、環境条件の予測と管理、プロセスの最適化、温度変化に耐えられるシステムの設計に役立つため、気候科学、農業、製造、工学などのさまざまな分野にとって重要である。」
イ しかしながら、前記請求人の主張においては「生物学的システム」などの本願発明と明らかに無関係なものが含まれており、「温度サイクル」が、全ての「特定の期間にわたる温度の反復したパターン又は変動」を含むものであるという主張であるのか否かも不明瞭であって、請求人の前記主張により「温度サイクル」の意味が明確になるとは認められない。
2 理由3の(2)について
(1) 本件補正後の請求項2には、「導電性ワイヤ(212a)及び電気絶縁体は、前記温度範囲にて互いに熱膨張が適合する」と記載されているところ、「互いに熱膨張が適合する」とは、導電性ワイヤ及び電気絶縁体の熱膨張が、どのような関係にあること(熱膨張係数が同一であることを指すのか、異なる熱膨張係数であればどのような数値範囲内で近似することを含むのか)を特定しようとしているのか明らかでない。
本件補正後の請求項7、13、18、24についても同様である。
よって、請求項2、7、13、18、24に係る発明、及びこれらの請求項の記載を直接又は間接的に引用する請求項5、6、8~11、16、17、19~22に係る発明は明確でない。
(2) これに対して、請求人は意見書において、本願明細書には、「夫々の形状、寸法、構造などの導電性ワイヤ及び電気絶縁体の構成及び製造方法もまた、熱膨張係数が実質的に等しいかどうかを決定するために考慮され得る」と明記されているから、「互いに熱膨張が適合する」との限定は、明確であると主張している。
しかしながら、そもそも理由3の(2)において明確でないと指摘しているのは「互いに熱膨張が適合する」という記載であって、「熱膨張係数が実質的に等しい」という記載ではないのであるから、請求人の前記主張は失当である。(請求項2、13を引用して限定する請求項3、14に「実質的に等しい熱膨張係数」と記載されていることから、当該限定のなされていない請求項2,13の「互いに熱膨張が適合する」という記載が「熱膨張係数」が「実質的に等しい」ものよりも広い範囲を包含するものであることは明らかである。)
また、請求人の指摘する本願明細書の前記記載を見ても、夫々の形状、寸法、構造などに応じて、熱膨張係数が適合するとする範囲が異なるとしか記載されておらず、具体的な例が何も示されていないから、当該記載があったとしても、依然として、「互いに熱膨張が適合する」とは、導電性ワイヤ及び電気絶縁体の熱膨張が、どのような関係にあることを特定しようとしているのか明らかでない。
よって、請求人の前記主張は認められない。
3 小括
したがって、意見書の内容を考慮しても、依然として、本願の請求項1~24に係る発明は明確でない。
第5 理由1(新規性の欠如)及び理由2(進歩性の欠如)に関する当審の判断
1 引用文献1に記載された事項及び引用発明の認定
(1) 引用文献1に記載された事項
当審拒絶理由通知書において引用した前記引用文献1(特開平2-150724号公報)には、以下の事項が記載されている。下線は、当合議体によるものである。
ア 5頁左上欄10~14行
「〔作 用〕
本発明によれば比較的高温、例えば約260℃ないし427℃(華氏500~800度)で高い信頼性で作動するコリオリ質量流量計が得られる。
この流量計は冷却系統を必要としない。」
イ 5頁左下欄14~17行
「また、用語「高温」は約260℃ないし427℃(華氏500~800度)を意味する。勿論本発明の流量計は常温でも完全に良好に作動するが、高温状態での使用が望ましい。」
ウ 5頁右下欄20行~6頁右上欄4行、第2図、第3A~3D図
「流量計10は速度センサを含む。速度センサは流管11、11′の実際の差動運動を全運動経路について直線的に代表するアナログ信号を与えるアナログ速度センサである。流管11、11′が振動し、流体が内部に流れると、流管は運動する流体によるコリオリ力によりそれぞれ軸線A-A、A’-A’(第2図参照)の周りに偏歪する。この偏歪は速度センサ17、18によって監視される。流量計10の作動、特にコリオリ力の発生と流量率の測定は米国特許第4,491,025号明細書に記載されている。速度センサ17、18と磁気的駆動組立体16との構成について、特に高温での作動についての付加的要求は後述する。
第3A図~第3C図に示すように、速度センサ17、18と磁気的駆動組立体16とは流管11、11′にV字形の2又金属支持クリップ20を介して装架される。クリップは流管11、11′に真空溶着される。速度センサ17、18と磁気的駆動組立体16とを構成する各コイル22および各マグネット24に対して別個の支持クリップが設けられる。構造と取付けとを簡略化するために各支持クリップ20は同等で垂直方向に整合する開口26を両脚を貫通して有し、316Lまたは304Lステンレス鋼から製造する。支持クリップは2つの流管について同等に位置する。」
「
[図:0001411736000001.jpg]
」
「
[図:0001411736000002.jpg]
」
「
[図:0001411736000003.jpg]
」
「
[図:0001411736000004.jpg]
」
「
[図:0001411736000005.jpg]
」
エ 6頁右下欄14行~7頁左上欄11行
「第3A図、第3B図および第3D図に示すコイル22はその長手方向軸線に同軸に延長する開口34を有する円筒形セラミックボビン40から成る組立体を含む。各速度センサのボビンも適当な材料製とする必要があるが、磁気的駆動組立体のボビンはステンレス鋼などの適当な金属物質から製造することができる。コイルマトリックス41がボビン40の外部に且つボビン40の両端の中間位置に設けられる。コイルマトリックスは細い銀線のコイルで各巻回は硬化セラミックスラリによって(第3B図参照)分離されている。銀に代えて金または白金も使用可能であるが、銀は安価である。望ましくはボビン40を射出成型セラミック製とし、金属インサートすなわち取付インサート44と、平坦な金属ワイヤ端子ポスト46とを含む。インサート44とポスト46とはステンレス鋼製とすることが望ましい。射出成型セラミックの使用はボビンの製造を単純化する。」
オ 7頁右上欄16行~右下欄1行
「さらに、本発明によればボビンおよびセラミックスラリの材料は高温で金属酸化物を含まないものとする。詳細には約427℃において自由酸素を含む厳しい還元性雰囲気が存在して大部分の金属酸化物が構成金属に還元される。こうしてボビン内の酸化物内の金属はコイル上に沈積してコイルを電導性とし、過剰な信号、少くとも誤差信号を与える。また、室温でボビン内に金属酸化物があるときはこれら酸化物は化学的に結合したもので高温で還元しないものである必要がある。なお、本発明の用語「コイル」とはセラミックボビン上に巻かれてセラミックスラリで絶縁された金属線を含み、所望の作動温度範囲においてを含む厳しい還元性雰囲気が存在して大部分の金属酸化物が構成金属に還元される。こうしてボビン内の酸化物内の金属はコイル上に沈積してコイルを電導性とし、過剰な信号、少くとも誤差信号を与える。また、室温でボビン内に金属酸化物があるときはこれら酸化物は化学的に結合したもので高温で還元しないものである必要がある。なお、本発明の用語「コイル」とはセラミックボビン上に巻かれてセラミックスラリで絶縁された金属線を含み、所望の作動温度範囲において還元される金属酸化物を含まないものをいう。同様に、用語「駆動組立体」および「速度センサ」は高温マグネットおよびコイルを含む。」
(2) 引用発明の認定
ア 引用文献1の7頁右上欄16行~右下欄1行の記載から、ボビン及びセラミックスラリの材料を、約427℃において自由酸素を含む厳しい還元性雰囲気が存在すると構成金属に還元される金属酸化物を含まないものとすることで、ボビン内の酸化物内の金属がコイル上に沈積してコイルを電導性とし、誤差信号を与えることを防止していることが読み取れる。
イ 前記(1)の記載事項及び前記アの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
<引用発明>
「比較的高温、例えば約260℃ないし427℃(華氏500~800度)で高い信頼性で作動するコリオリ質量流量計に含まれる速度センサを構成するコイル22であって、(5頁左上欄10~14行、5頁右下欄20行~6頁右上欄4行)
「高温」は約260℃ないし427℃(華氏500~800度)を意味し、流量計は常温でも完全に良好に作動するが、高温状態での使用が望ましく、(5頁左下欄14~17行)
速度センサは流管11、11′の実際の差動運動を全運動経路について直線的に代表するアナログ信号を与えるアナログ速度センサであり、(5頁右下欄20行~6頁右上欄4行)
コイル22はその長手方向軸線に同軸に延長する開口34を有する円筒形セラミックボビン40から成る組立体を含み、コイルマトリックス41がボビン40の外部に且つボビン40の両端の中間位置に設けられ、コイルマトリックスは細い銀線のコイルで各巻回は硬化セラミックスラリによって分離されており、(6頁右下欄14行~7頁左上欄11行)
「コイル」とはセラミックボビン上に巻かれてセラミックスラリで絶縁された金属線を含み、(7頁右上欄16行~右下欄1行)
ボビン及びセラミックスラリの材料を、約427℃において自由酸素を含む厳しい還元性雰囲気が存在すると構成金属に還元される金属酸化物を含まないものとすることで、ボビン内の酸化物内の金属がコイル上に沈積してコイルを電導性とし、誤差信号を与えることを防止する、(前記アの認定事項)
コイル22。」
2 対比
(1) 対比分析
本願発明1と引用発明を対比する。
ア(ア) 引用発明の「コイル22」は、高温状態での使用が望ましいコリオリ質量流量計に含まれる速度センサを構成するものであり、速度センサは流管11、11′の実際の差動運動を全運動経路について直線的に代表するアナログ信号を与えるアナログ速度センサである。
(イ) そうすると、引用発明の「コイル22」は、高温状態での使用が望ましいコリオリ質量流量計の流管の差動運動をアナログ信号に変換するものであると認められるから、本願発明1の「高温用のコイル変換器」に相当する。
(ウ) よって、本願発明1と引用発明は、「高温用のコイル変換器」の発明である点において一致する。
イ(ア) 引用発明の「コイルマトリックス41」は、細い銀線のコイルであるところ、この「細い銀線」、「コイル」は、それぞれ本願発明1の「導電性ワイヤ」、「コイル」に相当する。
(イ) したがって、引用発明の「コイルマトリックス41」は、本願発明1の「導電性ワイヤからなるコイルを含むコイル部分」に相当する。
(ウ) よって、本願発明1と引用発明は、「導電性ワイヤからなるコイルを含むコイル部分」を備える点において一致する。
ウ(ア) 引用発明において、「コイル」とはセラミックボビン上に巻かれてセラミックスラリで絶縁された金属線を含むものであるところ、この金属線は前記イ(ア)で示した本願発明1の「導電性ワイヤ」に相当する「細い銀線」であると認められる。
(イ) そうすると、引用発明の「セラミックボビン」及び「セラミックスラリ」は、いずれも本願発明1の「導電性ワイヤに隣接して配置された電気絶縁体」に相当する。
(ウ) よって、本願発明1と引用発明は、「導電性ワイヤに隣接して配置された電気絶縁体」を備える点において一致する。
エ(ア) 本願発明の「温度サイクル」については、前記第4の1に示したとおり明確ではないが、仮に、前記第4の1(2)アにおいて示した意見書の内容を踏まえて、全ての「特定の期間にわたる温度の反復したパターン又は変動」を意味するものとして以下検討する。
(イ) また、請求人は、意見書において、「350℃よりも大きい温度範囲にて再現性がある電気的特性」の意味は、「コイルが破損せず、この温度条件下でコリオリ質量流量計の要素として適正に作動することができるような電気的特性」を意図している」ことが明らかであると主張しているので、当審においても、このような意味であるとして以下検討する。
(ウ) ここで、引用発明においては、コリオリ質量流量計は、約260℃ないし427℃(華氏500~800度)の高温で高い信頼性で作動するものであり、また常温でも良好に作動するものであるところ、流量計が高い信頼性で作動するためには、流量計の速度センサを構成するコイル22もまた、前記高温及び常温のいずれの温度においても、同じ電気的特性を維持していることは明らかであるといえる。
また、コリオリ質量流量計において、温度の変動を伴う測定対象は一般的なものであって、そのような測定対象においても破損せず適正に作動するようになすことは、当業者が通常考慮すべき範囲内のものにすぎない。仮にそうでないとしても、高温でのコリオリ質量流量計による測定を行う際には、測定期間(高温)と休止期間(常温)の繰り返しが生じることが通常であり、それによる「温度サイクル」による破損が生じないようにすることは、当業者が当然に考慮すべきものといえる。
(エ) そうすると、引用発明の「コイル22」は、427℃を含む複数の異なる温度の繰り返しに対しても破損せずコリオリ質量流量計の要素として適正に作動するものであるか、当業者が容易にそのようになし得るものであるところ、このことは、前記(ア)~(ウ)で示した事項を踏まえると、本願発明1の「コイルは、少なくとも350℃よりも大きい温度範囲を含む複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するように構成される」ことに相当する。
(オ) よって、本願発明1と引用発明は、「コイルは、少なくとも350℃よりも大きい温度範囲を含む複数の温度サイクルにて再現性がある電気的特性を有するように構成される」点において一致するか、当業者が容易にそのようになし得たものである。
オ 以上のとおり、本願発明1と引用発明は、全ての点において一致するから、本願発明1は引用文献1に記載された発明である。また、本願発明1は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。
(2) 請求人の主張について
ア 請求人の主張内容
請求人は、意見書において、概略、次の主張をしている。
引用文献1は、非常に高い温度で動作させるために、セラミックスラリ中で使用される珪酸ナトリウムがアルカリ金属酸化物であるにもかかわらず、セラミックスラリは金属酸化物を含まないことが好ましいことを示唆している。
しかしながら、これらの教示にもかかわらず、引用文献1は、スラリにどの珪酸ナトリウム化合物を使用するかを全く説明していない。例えば、スラリに適した珪酸ナトリウムの特定の化合物(すなわち、ナトリウム、ケイ素、および酸素原子の数を含む特定の分子式)は、挙げられていない。さらに、他の化合物をスラリ中の珪酸ナトリウムと混合され得るかどうかについても、議論されていない。引用文献1はまた、珪酸ナトリウムが金属酸化物であるか、または珪酸ナトリウムがどのように「化学的に結合している」かによらず、特定の珪酸酸ナトリウム組成物が260~427℃の間で「還元可能」であるか否かについても、全く述べていない。
当審拒絶理由通知書においては、「円筒形セラミックボビン40」又は「硬化セラミックスラリ」との名前が挙げられているだけであり、引用文献1が主張する「約260℃~427℃で確実に動作するコリオリ質量流量計」を実現するための特定の製造プロセスが、引用文献1又は一般的知識に存在しているか否かについて、何ら指摘されていない。これに対して、本願明細書は特定の化合物を記載しており、特定の化合物が請求項に記載されるように構成された場合に、請求項に記載された温度範囲を達成したことを示す試験データを提供している。
したがって、引用文献1が、せいぜい請求項に記載された温度で機能しうる珪酸ナトリウムの理論的存在を示唆してはいるが、そのような化合物が請求項に記載された温度で機能しない可能性があることも示唆している。引用文献1自体は、そのデバイスが請求項に記載された温度で実際に機能することができないという証拠を提供しているため、引用文献1は、請求項に記載された温度範囲の先行技術とはならない。
イ 請求人の主張についての検討
請求人は、引用文献1は、非常に高い温度で動作させるために、セラミックスラリ中で使用される珪酸ナトリウムがアルカリ金属酸化物であるにもかかわらず、セラミックスラリは金属酸化物を含まないことが好ましいことが示唆されているところ、そのために、どのような珪酸ナトリウムを用いるのかについて記載されていないから、引用文献1は、新規性又は進歩性を否定する先行文献にはならないと主張している。
しかしながら、引用文献1には、約260℃ないし427℃で高い信頼性で作動するコリオリ質量流量計にするために、ボビン及びセラミックスラリの材料を、約427℃において自由酸素を含む厳しい還元性雰囲気が存在して構成金属に還元される金属酸化物を含まないものとすることについて記載されているのであって、珪酸ナトリウムを用いることが特定されてはいない。
また、このような金属酸化物を含まないセラミックスラリ材料として、どの材料を選択するかは、当業者が適宜になし得ることにすぎない。
仮に、珪酸ナトリウムが金属酸化物を含むものであり、ボビン及びセラミックスラリの材料として適切でないとしても、そうであれば、金属酸化物を含まない、珪酸ナトリウム以外の材料を選択すればよいだけであり、そのような材料を選択することが、当業者にとって格別の困難性があるとも認められない。
したがって、請求人の主張は認められない。
3 小括
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるか、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項又は2項の規定により特許を受けることができない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1~24の記載は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。
また、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項又は2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-015666