2020-013600
電池、電池パック、電子機器、電動車両、蓄電装置および電力システム
- 審判番号
- 2020-013600
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2018-536975外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月29日
- 審決日
- 2022年01月06日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 請求不成立
- 分類
- P18 .113-Z (H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 10項目
第1 手続の経緯
本願は、2017年6月22日(優先権主張 平成28年8月31日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
第2 本願発明
本願の請求項1ないし16に係る発明は、令和2年1月31日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】扁平状に巻回された帯状の電極を備え、前記電極は、集電体と、前記集電体の内側面に設けられた活物質層とを備え、前記活物質層は、第1領域と、該第1領域よりも面積密度が低い第2領域とを有し、前記第2領域は、前記活物質層の巻き返し部に設けられており、前記第2領域の活物質層の厚みは、前記第1領域の活物質層の厚みに比して薄く、前記第1領域における前記活物質層の平均面積密度D1と前記第2領域における前記活物質層の平均面積密度D2との面積密度比D2/D1が、0<D2/D1≦0.55の関係を満たす、電池。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、概略次のとおりである。
1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
●理由1(新規性)、理由2(進歩性)について
・請求項 1-3,7,10-11,13
・引用文献等 1
●理由2(進歩性)について
・請求項 4-6,9
・引用文献等 1
・請求項 8
・引用文献等 1-3
・請求項 12,14-16
・引用文献等 1-2
<引用文献等一覧>
1.特開2003-45474号公報
2.国際公開第2014/024425号(周知技術を示す文献)
3.特開2010-80427号公報(周知技術を示す文献)
第4 引用文献の記載及び引用発明
1 原査定の拒絶の理由で引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2003-45474号公報(平成15年2月14日公開、以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
「【0007】【課題を解決するための手段】 ・・・(中略)・・・正極電極と負極電極をセパレータを介して対向させたものを扁平な糸巻き状に巻回した電池要素を有する密閉型電池である。・・・(略)・・・」
「【0008】【発明の実施の形態】 本発明の密閉型電池は、電極に形成される曲面部、折り曲げ部の少なくとも一部を、曲面部または折り曲げ部の内側に位置する活物質層の厚さを、曲面部または折り曲げ部以外の部分の厚みに比べて厚みを小さくすることによって、曲面部あるいは折り曲げ部を形成した場合においても、曲面部または折り曲げ部の活物質層が切断したり、電池電極が切れることがなく、また曲面部に活物質を塗布しない電池のように充放電容量が低下することがない密閉型電池を提供したものである。」
「【0009】・・・(中略)・・・電池要素1は、正極電極2と負極電極3がセパレータ4を介して配置されて巻回されている。正極電極2の両面にセパレータ4を配置して負極電極3とを対向させて糸巻き状に巻回をした後に扁平状に押圧して成形を行ったものである。巻回した電池要素1の中心部に位置し、正極電極2の中心部曲面5の径が小さな弧を描く部分は、内側活物質層12の厚みがその他の部分の厚みに比べて小さく、また、外側活物質層13の厚みに比べて厚みが小さく形成したものである。・・・(略)・・・」
「【0013】図4は、本発明の密閉型電池に用いる電極を説明する図である。図4(A)は、本発明の密閉型電池に用いる正極電極の断面図であり、図4(B)は、従来の電極を説明する断面図である。図4(C)は、製造工程の一例を説明する図である。従来の電極が図4(B)に示すように、正極活物質層21が正極集電体9の表面に一様な厚さで形成されているのに対して、本発明の正極電極は、図4(A)に示すように、本発明の正極電極2には、正極集電体9の両面に形成した正極活物質層21に厚みの薄い部分22が設けられている。厚みの薄い部分と通常の厚みの部分との間には、徐々に厚みが変化するような傾斜部23を設け、急峻な段差が形成されないようにすることが好ましい。このような、厚みが変化した正極電極は、図4(C)に一例を示す塗布装置30によって形成することができる。塗布装置30において回転するバックアップロール31上を走行する集電体9は、正極用の活物質層形成組成物32をドクター33とシャッター34によって形成される塗布ヘッドによって塗布される。ドクター33をカム35の動作によって上下に位置を変化させることによって形成される正極活物質層21に厚みの薄い部分22が形成される。電池電極は、集電体上に活物質層を形成し乾燥を行った後に、活物質層を圧縮して、活物質層の充填密度を高めると共に集電体との導電接触特性を高めることが行われる。一般には、活物質層の厚みに比べて充分に径が大きな金属製のロールによって圧縮が行われている。」
「【0014】・・・(中略)・・・図5(B)に示すように本発明の圧縮装置40では、金属製のロール41の表面には、ゴムなど可撓性部材層42が設けられている。このため、厚みの薄い部分21(当審注:「21」は「22」の誤記と認める。)の形成によって、正極電極2の表面に凹部が生じた部分にも均等に圧縮力が印加される。また、ロール表面に形成する可撓性部材層42は、電極の厚みの薄い部分の形状に合致する形状としたものであっても良い。このようにすることによってより確実な圧縮が可能となる。例えば、集電体上に140μmの厚みで活物質層を形成し、厚みの小さな部分は60μmとした場合には、圧縮によってそれぞれ80μm、40μmの厚さとすることができる。・・・(略)・・・」
図4(A)
[図:0001385583000001.jpg]
図4(C)
[図:0001385583000002.jpg]
図5(B)
[図:0001385583000003.jpg]
2 上記「1」によれば、引用文献1には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
ア 段落【0007】には「電池要素を有する密閉型電池である」と記載され、段落【0009】には「電池要素1は、正極電極2と負極電極3がセパレータ4を介して配置されて巻回されている。正極電極2の両面にセパレータ4を配置して負極電極3とを対向させて糸巻き状に巻回をした後に扁平状に押圧して成形を行ったものである」と記載されている。
よって、密閉型電池は、正極電極の両面にセパレータを配置して負極電極とを対向させて巻回した後に扁平状に押圧して成形を行った電池要素を有したものである。
イ 段落【0013】には「本発明の正極電極は、図4(A)に示すように、本発明の正極電極2には、正極集電体9の両面に形成した正極活物質層21に厚みの薄い部分22が設けられている」と記載されている。
よって、正極電極は正極集電体の両面に活物質層が形成されたものである。
ウ 段落【0008】には「本発明の密閉型電池は、電極に形成される曲面部」を、「曲面部」の「内側に位置する活物質層の厚さを、曲面部」「以外の部分の厚みに比べて厚みを小さくする」ことが記載され、段落【0009】には「巻回した電池要素1の中心部に位置し、正極電極2の中心部曲面5の径が小さな弧を描く部分は、内側活物質層12の厚みがその他の部分の厚みに比べて小さく」「形成したものである」と記載されている。
ここで、段落【0009】に記載された「内側活物質層12」は、段落【0008】に記載された「曲面部」の「内側に位置する活物質層」に対応し、「中心部曲面5」の内側に位置する活物質層を意味すると解される。
してみると、電池要素の中心部に位置し、正極電極の中心部曲面の径が小さな弧を描く部分は、中心部曲面の内側に位置する活物質層の厚みがその他の部分の厚みに比べて小さく形成したものであるといえる。
エ 段落【0013】には「このような、厚みが変化した正極電極は、図4(C)に一例を示す塗布装置30によって形成することができる」、「ドクター33をカム35の動作によって上下に位置を変化させることによって形成される正極活物質層21に厚みの薄い部分22が形成される」と記載されている。また、図4(C)より、「塗布装置30」が「ドクター33」及び「カム35」を備えることが見て取れる。
よって、塗布装置のドクターをカムの動作によって上下に位置を変化させることによって正極電極の活物質層に厚みの薄い部分が形成されるといえる。
オ 段落【0013】には「本発明の正極電極2には、正極集電体9の両面に形成した正極活物質層21に厚みの薄い部分22が設けられている」、「電池電極は」「活物質層を圧縮して、活物質層の充填密度を高めると共に集電体との導電接触特性を高めることが行われる」旨記載され、段落【0014】には「図5(B)に示すように本発明の圧縮装置40では、金属製のロール41の表面には、ゴムなど可撓性部材層42が設けられている。このため、厚みの薄い部分22の形成によって、正極電極2の表面に凹部が生じた部分にも均等に圧縮力が印加される」と記載されている。してみると、段落【0014】に記載された「圧縮装置40」による圧縮力は、段落【0013】に記載された「正極電極2」の「正極集電体9」「に形成した」「厚みの薄い部分22が設けられている」「正極活物質層21」に「均等に」「印加」されるものと認められる。
そして、段落【0014】には「集電体上に140μmの厚みで活物質層を形成し、厚みの小さな部分は60μmとした場合には、圧縮によってそれぞれ80μm、40μmの厚さとすることができる」と記載されている。
以上のことから、正極電極は、正極集電体上に140μmの厚みで活物質層を形成し、厚みの小さな部分は60μmとし、均等な圧縮によってそれぞれ80μm、40μmの厚さとしたものである。
3 上記「2」の「アないしエ」より、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「正極電極の両面にセパレータを配置して負極電極とを対向させて巻回した後に扁平状に押圧して成形を行った電池要素を有し、正極電極は、正極集電体の両面に活物質層が形成されたものであり電池要素の中心部に位置し、正極電極の中心部曲面の径が小さな弧を描く部分は、中心部曲面の内側に位置する活物質層の厚みがその他の部分の厚みに比べて小さく形成し、塗布装置のドクターをカムの動作によって上下に位置を変化させることよって正極電極の活物質層に厚みの薄い部分が形成され、正極電極は、正極集電体上に140μmの厚みで活物質層を形成し、厚みの小さな部分は60μmとし、均等な圧縮によってそれぞれ80μm、40μmの厚さとしたものである、密閉型電池。」
第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「正極電極」は「巻回した後に扁平状に押圧して成形」されるものであるから、本願発明の「扁平状に巻回された」「電極」に相当する。
ただし、本願発明が「帯状の電極」であるのに対し、引用発明は「正極電極」が帯状であることは特定されていない点で相違する。
イ 引用発明の「正極集電体」は本願発明の「集電体」に相当する。また、引用発明の「正極集電体の両面に」「形成された」「活物質層」のうち「中心部曲面の内側に位置する活物質層」は、本願発明の「前記集電体の内側面に設けられた活物質層」に相当する。
してみると、引用発明の「正極電極は、正極集電体の両面に活物質層が形成されたものであ」ることは、本願発明の「前記電極は、集電体と、前記集電体の内側面に設けられた活物質層とを備え」ることを含む。
ウ 本願明細書の段落【0028】には「巻き返し部とは、扁平状かつ渦巻状に巻回された第1正極活物質層21Bの湾曲部26のうちの頂部を意味し」と記載されているから、本願発明の「活物質層の巻き返し部」は「活物質層の湾曲部の頂部」と認められる。
引用発明の「正極電極」は「正極集電体の両面に活物質層が形成されたもの」であり、「巻回した後に扁平状に押圧」され、「中心部曲面の径が小さな弧を描く部分」を有するから、「正極集電体の両面」に形成された「活物質層」のうち「中心部曲面の内側に位置する活物質層」も「巻回した後に扁平状に押圧」され、「中心部曲面の径が小さな弧を描く部分」を有することは明らかである。そして、「中心部曲面の径が小さな弧を描く部分」は湾曲部の頂部であると言えるから、引用発明の「中心部曲面の内側に位置する活物質層」は「中心部曲面の径が小さな弧を描く部分」に活物質層の湾曲部の頂部すなわち本願発明の「活物質層の巻き返し部」に相当する構成を有するといえる。
また、引用発明の「正極電極の中心部曲面の径が小さな弧を描く部分は、中心部曲面の内側に位置する活物質層の厚みがその他の部分の厚みに比べて小さく形成し」は、「中心部曲面の径が小さな弧を描く部分」の「活物質層の厚み」を「その他の部分」の「活物質層」の「厚み」に「比べて小さく形成した」ことである。
してみると、引用発明の「中心部曲面の径が小さな孤を描く部分」、「その他の部分」はそれぞれ、本願発明の「活物質層の巻き返し部に設けられ」た「第2領域」及び「第1領域」に相当し、引用発明の「電池要素の中心部に位置し、正極電極の中心部曲面の径が小さな弧を描く部分は、中心部曲面の内側に位置する活物質層の厚みがその他の部分の厚みに比べて小さく」は、本願発明の「前記第2領域は、前記活物質層の巻き返し部に設けられており、前記第2領域の活物質層の厚みは、前記第1領域の活物質層の厚みに比して薄く」に相当する。
以上のことから、引用発明の「電池要素の中心部に位置し、正極電極の中心部曲面の径が小さな弧を描く部分は、中心部曲面の内側に位置する活物質層の厚みがその他の部分の厚みに比べて小さく形成し」たことは、本願発明の「前記活物質層は、第1領域と」「第2領域とを有し、」「前記第2領域は、前記活物質層の巻き返し部に設けられており、前記第2領域の活物質層の厚みは、前記第1領域の活物質層の厚みに比して薄」いことに相当する。
ただし、本願発明では「前記活物質層は、第1領域と、該第1領域よりも面積密度が低い第2領域とを有し」、「前記第1領域における前記活物質層の平均面積密度D1と前記第2領域における前記活物質層の平均面積密度D2との面積密度比D2/D1が、0<D2/D1≦0.55の関係を満たす」のに対し、引用発明ではその旨特定されていない点で、両者は相違する。
エ 引用発明の「密閉型電池」は、 「正極電極」、「正極集電体」及び「活物質層」を有する点で、本願発明の「電池」に相当する。
2 上記「1」によれば、本願発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「扁平状に巻回された電極を備え、前記電極は、集電体と、前記集電体の内側面に設けられた活物質層とを備え、前記活物質層は、第1領域と、第2領域とを有し、前記第2領域は、前記活物質層の巻き返し部に設けられており、前記第2領域の活物質層の厚みは、前記第1領域の活物質層の厚みに比して薄い電池。」
(相違点1)
本願発明が「帯状の電極」であるのに対し、引用発明は「正極電極」が帯状であることは特定されていない点。
(相違点2)
本願発明では「前記活物質層は、第1領域と、該第1領域よりも面積密度が低い第2領域とを有し」、「前記第1領域における前記活物質層の平均面積密度D1と前記第2領域における前記活物質層の平均面積密度D2との面積密度比D2/D1が、0<D2/D1≦0.55の関係を満たす」のに対し、引用発明ではその旨特定されていない点。
第6 判断
1 相違点1について検討する。
本願明細書の段落【0018】には、「電池素子としての巻回電極体20は、長尺状(帯状)を有する正極21と負極22とを同様に長尺状(帯状)を有するセパレータ23を介して積層し」と記載されており、本願発明の「帯状」は「長尺状」すなわち寸法が長い形状であると解される。
これに対し、引用発明の「正極電極」は「巻回」されるものであり、「巻回」される程度に長い形状である点で、本願明細書に記載された「長尺状」すなわち「帯状」であるといえる。
よって、相違点1に係る構成は実質的な相違ではない。
2 相違点2について検討する。
引用発明の「正極電極の活物質層」の「厚みの薄い部分」は「塗布装置のドクターをカムの動作によって上下に位置を変化させることよって」「形成され」たものである。ここで、塗布装置のドクターが塗布材料の供給量を調整するものである(必要であれば、特開2001-14656号公報、段落【0005】及び段落【0006】参照)から、引用発明の「正極電極の活物質層」の「厚みの薄い部分」は、塗布装置のドクターを上下に位置を変化させ、活物質の供給量を調整することによって形成され、「正極電極の活物質層」の厚みは塗布工程の活物質の供給量に比例する。また、面積密度は単位面積当たりの重量であるから、「正極電極の活物質層」の面積密度が塗布工程における活物質の供給量に比例することは明らかである。してみると、引用発明の「正極電極の活物質層」の「均等な圧縮」前の「厚み」と面積密度は比例するものである。
引用発明の「正極電極の活物質層」は、上記の塗布装置で「140μmの厚みで」「形成し、厚みの小さな部分は60μmとし」、その後「均等な圧縮によってそれぞれ80μm、40μmの厚さ」とするものであるから、「均等な圧縮」後の「40μm」の部分の「80μm」の部分に対する面積密度比は「均等な圧縮」前の「厚み」の比に等しく、60μm/140μm=0.43程度である。ここで、引用発明の「中心部曲面の内側に位置する活物質層」は、「中心部曲面の径が小さな弧を描く部分」で「厚み」が「小さく形成され」たものであるから、「塗布装置のドクターをカムの動作によって上下に位置を変化させることよって」「形成され」る「正極電極の活物質層」の「厚みの薄い部分」は、「中心部曲面の径が小さな弧を描く部分」の「厚み」が「小さく形成され」た部分になる。してみると、引用発明の「その他の部分」と「中心部曲面の径が小さな弧を描く部分」との「中心部曲面の内側に位置する活物質層」の面積密度比は0.43程度であり、引用発明の「中心部曲面の内側に位置する活物質層」は、本願発明の「前記第1領域における前記活物質層の平均面積密度D1と前記第2領域における前記活物質層の平均面積密度D2との面積密度比D2/D1が、0<D2/D1≦0.55の関係を満た」し、本願発明の「第1領域と、該第1領域よりも面積密度が低い第2領域」に相当する構成を有するものである。
よって、相違点2に係る構成は実質的な相違ではない。
この点につき、審判請求人は審判請求書において、「前回提出の意見書において、引用文献1の段落[0011]の記載から面積密度比D2/D1を計算したのは、あくまで電極活物質層を形成したタイミング(塗布工程)において、その厚みを変化させたことが引用文献1には記載されており、同一の電極材料を用いた場合には厚みが異なれば当然に面積密度が異なるということから計算したものである。審査官殿がご指摘の段落[0014]においては、電極活物質層の厚みは圧縮(プレス)によって変化させているのであって、面積密度(単位面積あたりの電極活物質層の重量)は変化していないと考えられる。よって、本願発明における面積密度比D2/D1の数値範囲は引用文献1には記載されていない。」と主張している。
しかし、本願明細書の段落【0013】には「このような、厚みが変化した正極電極は」「塗布装置30によって形成することができる」旨記載され、「ドクター33をカム35の動作によって上下に位置を変化させることによって形成される正極活物質層21に厚みの薄い部分22が形成される」と記載されている。また、本願明細書の段落【0014】には「図5(B)に示すように本発明の圧縮装置40では、金属製のロール41の表面には、ゴムなど可撓性部材層42が設けられている。このため、厚みの薄い部分22の形成によって、正極電極2の表面に凹部が生じた部分にも均等に圧縮力が印加される。」と記載されている。よって、「正極電極」の「正極活物質層21」の「厚みの薄い部分22」は「圧縮」の前に形成されるものである。
そして、「均等な圧縮」の前後で面積密度が変化しないことは明らかであるから、引用発明の「活物質層」の面積密度比は「均等な圧縮」前の厚みの比の0.43であるから、本願発明の「0<D2/D1≦0.55」に含まれ、上記出願人の主張を採用することはできない。
以上のとおりであるから、本願発明の発明特定事項と引用発明の発明特定事項との間に実質的な差異はない。
第7 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-013600