特許拒絶査定不服審判
2020-013158
セラミック複合シートの製造方法
- 審判番号
- 2020-013158
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2016-556365外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年09月18日
- 審決日
- 2021年07月28日
- 公報発行日
- 2021年11月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】戸田工業株式会社
- 【請求人代理人】特許業務法人前田特許事務所
- 分類
- P18 .121-Z (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2016-556365「セラミック複合シートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 6日国際公開、WO2016/067616〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)10月28日(優先権主張 2014年10月31日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年4月26日に手続補正書が提出され、令和1年10月18日付けで拒絶理由が通知され、同年12月20日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年6月18日付けで拒絶査定されたところ、同年9月18日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和1年12月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「 所定形状のセラミックグリーンシートを焼成して、焼成セラミック層を形成する焼成工程と、
前記焼成セラミック層の少なくとも片面に、粘着材層を介して、樹脂材層を貼着して、セラミック複合シートを形成するラミネート工程と、
前記焼成セラミック層と前記樹脂材層とを同時に所望の形状に切断する切断工程と、
前記切断工程において露出した切断面に、粘着性剥離面を有する粘着性剥離部材を押し当てて、該切断面に存在するセラミック破片を除去する除去工程とを備え、
前記粘着性剥離面の粘着力は、前記粘着材層の粘着力よりも強く、
前記除去工程において、該粘着性剥離面は、前記焼成セラミック層、前記樹脂材層及び前記粘着材層に押し当てられることを特徴とするセラミック複合シートの製造方法。」
第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」 というものであり、請求項1に係る発明に対して、以下の引用文献1、2が引用されている。
1.特開2010-45120号公報
2.特開2010-22897号公報
第4 引用発明と引用文献2に記載された技術事項
1 引用発明
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2010-45120号公報、公開日:平成22年2月25日)には、「磁性シート原反」について、図面とともに以下の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のシート片に打ち抜いて使用される磁性シート原反に関するものであり、磁気特性のバラツキが小さな磁性シート原反に関する。」
「【0019】
図1は、磁性シート原反1の基本的な断面構造を模式的に示すものである。本例の場合、磁性シート原反1は、焼結フェライト薄板2の片面に第1の保護層3を貼り合わせるとともに、もう一方の面に第2の保護層4を貼り合わせることにより構成されている。
【0020】
焼結フェライト薄板2の材質としては、軟磁気特性を有するソフトフェライトであれば限定されるものでなく、使用周波数帯域や透磁率等の要求仕様に応じて、Ni-Zn系フェライトやMn-Zn系フェライト等から自由に選択することが可能である。焼結フェライト薄板2は、金属磁性粉を樹脂と混合した金属樹脂複合シートに比べて磁性体が占める割合(有効体積)が大きく、高透磁率を有する。
【0021】
前記焼結フェライト薄板2は、公知の方法で作製することができる。例えば、フェライト仮焼粉末とバインダ樹脂、添加剤(分散剤、可塑剤、消泡剤等)、溶媒を混合した後、脱泡して支持フィルム(例えばポリエチレンテレフタレートフィルム等)上にドクターブレード等を用いて塗布し、フェライトのグリーンシートを作製する。次いで、これを乾燥し、脱脂処理後に所定の温度で焼成処理を行う。焼結フェライト薄板2の厚さは任意であるが、例えば20μm~0.3mm程度である。
【0022】
前記焼結フェライト薄板2の片方の面に貼り合わされる第1の保護層3は、片面に粘着材層5を有するポリエチレンテレフタレートフィルム6であり、他方の面に貼り合わされる第2の保護層4は、両面に粘着材層7,8を有するポリエチレンテレフタレートフィルム9である。前記第1の保護層3や第2の保護層4の構成は、これに限定されるものではなく、フェライト片の粉落ちを防止することができ、適度な屈曲性(柔軟性)を有するものであればよい。例えば支持体として機能するフィルムは、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムに限らず、各種樹脂フィルムが使用可能である。あるいは、前記第1の保護層3や第2の保護層4は、両面粘着テープや接着剤層、樹脂製塗料の層等により形成してもよい。なお、本例では、第2の保護層4の外側の粘着材層8の表面には剥離紙10が貼り付けられており、この剥離紙10を剥離することで、磁性シート1を任意の部材に貼り付けることが可能となっている。」
「【0026】
前述の磁性シート原反1においては、焼結フェライト薄板2の分割後の分割片2cのサイズが小さいほど打ち抜く場所の違いによる特性のバラツキが低減されることになるが、各分割片2cのサイズが小さくなり過ぎると、第1の保護層3や第2の保護層4による分割片2cの保持が不十分となり、または打ち抜き時に端部からの粉落ちの問題が生ずる可能性が高くなる。逆に、各分割片2cのサイズが大き過ぎると、分割線2a,2bの平行な状態からのズレ量が大きくなり、外観不良が生じ易くなり、またはサイズの分布が大きくなって特性のバラツキが大きくなる等の不具合が生ずる可能性がある。
【0027】
前記分割片2cのサイズの最適値は、打ち抜くシート片のサイズにもよるが、一辺の平均長さが0.5mm~5mmである。各分割片2cのサイズが前記範囲内となるように調整して焼結フェライト薄板2を分割することで、磁性シート原反1の面内における特性のバラツキが小さく、3次元曲面形状への密着性に優れた磁性シートとすることができる。例えば、分割された分割片2cの一辺の平均長さを0.5mm以上とすれば、粘着材層による分割片2cの保持が不十分となる問題、または磁性シート原反1の打ち抜き時に端部から粉落ちが生ずる問題を回避することができる。また、分割された分割片2cの一辺の平均長さを3mm以下とすれば、分割線の平行方向からのズレを抑えることができ、外観不良が生じ、または磁気特性のバラツキが大きくなる等の不具合を回避することができる。」
「【0038】
前述の分割処理を行った磁性シート原反1は、例えばRFIDアンテナの形状仕様等に応じてプレス加工機等で打ち抜き加工を行い、アンテナに貼り付けて使用に供される。前述の分割処理を行えば、1枚の磁性シート原反1からアンテナ形状に応じて複数枚のシート片への打ち抜きを行った場合にも、打ち抜く場所の違いによるシート片間の特性のバラツキが極めて小さく、アンテナ特性のバラツキを低減することができることが確認されている。」
図1として以下の図面が記載されている。
【図1】
上記の記載によれば、引用文献1には次の事項が記載されている。
a.段落【0021】によれば、「焼結フェライト薄板2」は「フェライトのグリーンシートを作製」し、「所定の温度で焼成処理を行」って作製している。
b.段落【0019】によれば、「磁性シート原反1は、焼結フェライト薄板2の片面に第1の保護層3を貼り合わせるとともに、もう一方の面に第2の保護層4を貼り合わせることにより構成されている。」
そして、段落【0022】によれば、「焼結フェライト薄板2の片方の面に貼り合わされる第1の保護層3は、片面に粘着材層5を有し当該粘着材層5により焼結フェライト薄板2に貼り合わされるポリエチレンテレフタレートフィルム6であり、他方の面に貼り合わされる第2の保護層4は、両面に粘着材層7、8を有するポリエチレンテレフタレートフィルム9である。」
ここで、図1を併せて参酌すると、他方の面に貼り合わされる第2の保護層4は、片面に粘着材層7を有し当該粘着材層7により焼結フェライト薄板2に貼り合わされるポリエチレンテレフタレートフィルム9であるといえる。
c.段落【0038】によれば、「磁性シート原反1は」、「プレス加工機等で打ち抜き加工を行い、アンテナに貼り付けて使用に供される」ものである。そして「1枚の磁性シート原反1からアンテナ形状に応じて複数枚のシート片への打ち抜きを行った場合」との記載から、磁性シート原反1からアンテナ形状に応じた形状のシート片へ打ち抜き加工しているといえる。
そうしてみると、磁性シート原反1は、磁性シート原反1からアンテナ形状に応じた形状のシート片へプレス加工機等で打ち抜き加工を行っているといえる。
d.段落【0027】から「分割片2cの一辺の平均長さを0.5mm以上」とし「磁性シート原反1の打ち抜き時に端部から粉落ちが生ずる問題を回避」しているといえる。
e.段落【0019】ないし【0022】には、フェライトのグリーンシートを焼成処理し、焼結フェライト薄板2に第1の保護層3と第2の保護層4を貼り合わせる工程が記載されているから、磁性シート原反1の製造方法が記載されているといえる。
(2)引用発明
上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 焼結フェライト薄板2は、フェライトのグリーンシートを作製し、所定の温度で焼成処理を行って作製し、
磁性シート原反1は、前記焼結フェライト薄板2の片面に第1の保護層3を貼り合わせるとともに、もう一方の面に第2の保護層4を貼り合わせることにより構成され、
前記焼結フェライト薄板2の片方の面に貼り合わされる第1の保護層3は、片面に粘着材層5を有し当該粘着材層5により焼結フェライト薄板2に貼り合わされるポリエチレンテレフタレートフィルム6であり、他方の面に貼り合わされる第2の保護層4は、片面に粘着材層7を有し当該粘着材層7により焼結フェライト薄板2に貼り合わされるポリエチレンテレフタレートフィルム9であり、
前記磁性シート原反1は、磁性シート原反1からアンテナ形状に応じた形状のシート片へプレス加工機等で打ち抜き加工を行い、
前記焼結フェライト薄板2の分割片2cの一辺の平均長さを0.5mm以上とし前記磁性シート原反1の打ち抜き時に端部から粉落ちが生ずる問題を回避する
磁性シート原反1の製造方法。」
2 引用文献2の技術事項
(1)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2010-22897号公報、公開日:平成22年2月4日)には、「シート状部材清掃方法」について、図面とともに以下の記載がある。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状部材の側面に付着した異物を除去するためのシート状部材清掃装置およびシート状部材清掃方法、前記シート状部材の製造方法、ならびに前記シート状部材を用いたバックライトユニットの製造方法に関する。」
「【0007】
光学シート110のシート片111a~111dは、たとえば、長尺の帯状のシート原反から所定の形状に切出されることによって、それぞれ形成される。シート片の切断時には、ゴミ等の異物が発生することがある。発生した異物は、切出されたシート片111a~111dの側面に付着する。また前記異物は、積層されたシート片111a~111dのうちの最も外側にあるシート片の主面、すなわち光学シート110の表面および裏面に付着することがある。 」
「【0046】
また本発明によれば、前記シート状部材清掃装置は、転写面を有する転写手段をさらに含む。前記転写面は、前記異物除去手段の除去面に接触可能に構成され、前記除去面よりも高い粘着性を有する。前記除去面よりも前記転写面のほうが粘着性が高いので、前記転写面が前記除去面に接触し離反すれば、前記除去面に付着していた異物が前記転写面に移り、前記除去面が清掃される。これによって、本発明のシート状部材清掃装置は、前記除去面を常に初期化しておくことができるので、異物除去の効率低下を防ぐことができる。 」
「【0065】
シート状部材2は、たとえば、複数のシート片が相互に積層された積層体で実現される。具体的な例としては、シート状部材2は、光学的特性をそれぞれ有する複数のシート片が相互に積層された構成の光学シート積層体で実現され、透過型の液晶表示装置のバックライトユニットに用いられる。また、シート状部材2は、単一のシート片で実現されてもよい。」
「【0102】
図1のシート状部材清掃装置2は、たとえば、複数のシート片の積層体であるシート状部材2の製造工程内で用いられる。積層体状のシート状部材2の製造工程は、基本的には、重合せ工程、打抜き工程、および側面清掃工程の3工程を含む。まず第1工程である重合せ工程において、複数のシート原反が相互に重ね合わせられる。次いで、第2工程である打抜き工程において、重ね合わせたシート原反を所定の形状に一度に打抜くことによって、積層体状のシート状部材2が形成される。形成されたシート状部材2の側面12は、打抜き工程においてシート原反からの切断された切断面に相当し、異物28が付着しやすい。最後に、第3工程である側面清掃工程において、図1のシート状部材清掃装置1が用いられる。すなわち、シート状部材2の側面12に対して、粘着性を有する平面状の除去面11が略平行な状態を保ちつつ移動して接触することによって、側面12が除去面11に対して位置決めされつつ、除去面11が側面12に一度に接触する。接触後に除去面11が側面12から離反すると、側面12に付着していた異物28が除去面11に移ることによって除去され、同時にシート状部材2が所定の位置に位置決めされる。 」
(2)引用文献2の技術事項
段落【0001】【0065】には、「シート状部材」は光学シートに特定されないことが示唆されているといえる。
したがって、引用文献2には次の技術事項(以下、「引用文献2の技術事項」という。)が、記載されているものと認められる。
「重ね合わせたシート原反を所定の形状に一度に打抜く際に発生し側面に付着する異物を、粘着性を有する除去面を接触することによって除去する技術。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「フェライトのグリーンシート」も何らかの形状を有していることは明らかであり、所定の形状を有しているといえるから、本願発明の「所定形状のセラミックグリーンシート」に相当する。
(2)引用発明の「焼結フェライト薄板2」は、フェライトのグリーンシートを所定の温度で焼成処理を行って作製しているから本願発明の「焼成セラミック層」に相当し、また、引用発明の「焼成処理」が本願発明の「焼成工程」に相当する。
(3)引用発明では、「磁性シート原反1は、前記焼結フェライト薄板2の片面に第1の保護層3を貼り合わせるとともに、もう一方の面に第2の保護層4を貼り合わせることにより構成され、前記焼結フェライト薄板2の片方の面に貼り合わされる第1の保護層3は、片面に粘着材層5を有し当該粘着材層5により焼結フェライト薄板2に貼り合わされるポリエチレンテレフタレートフィルム6であり、他方の面に貼り合わされる第2の保護層4は、片面に粘着材層7を有し当該粘着材層7により焼結フェライト薄板2に貼り合わされるポリエチレンテレフタレートフィルム9であ」る。
したがって、磁性シート原反1は、焼結フェライト薄板2の片面に粘着材層5を有するポリエチレンテレフタレートフィルム6である第1の保護層3を貼り合わせるとともに、もう一方の面に片面に粘着材層7を有するポリエチレンテレフタレートフィルム9である第2の保護層4を貼り合わせて構成されている。
ここで、引用発明の「粘着材層5」「粘着材層7」は本願発明の「粘着材層」に相当し、引用発明の「ポリエチレンテレフタレートフィルム6」及び「ポリエチレンテレフタレートフィルム9」は樹脂により構成されるフィルムであるから本願発明の「樹脂材層」に相当する。
そうしてみると、引用発明は焼結フェライト薄板2の両面に粘着材層を介して樹脂により構成されるフィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムが貼り合わされるから、本願発明の「前記焼成セラミック層の少なくとも片面に、粘着材層を介して、樹脂材層を貼着」する構成に相当する構成を有している。
そして、引用発明の「前記焼結フェライト薄板2の片面に第1の保護層3を貼り合わせるとともに、もう一方の面に第2の保護層4を貼り合わせ」た構成は、本願発明の「セラミック複合シート」に相当し、また引用発明の「前記焼結フェライト薄板2の片面に第1の保護層3を貼り合わせるとともに、もう一方の面に第2の保護層4を貼り合わ」せる工程は本願発明の「ラミネート工程」に相当する。
(4)引用発明の「前記磁性シート原反1は、磁性シート原反1からアンテナ形状に応じた形状のシート片へプレス加工機等で打ち抜き加工を行う」構成において、「アンテナ形状に応じた形状」は本願発明の「所望の形状」に相当する。また、焼結フェライト薄板2にポリエチレンテレフタレートフィルム6、9が貼り合わされた磁性シート原反1をプレス加工機等で打ち抜き加工するから、焼結フェライト薄板2とポリエチレンテレフタレートフィルム6、9とは同時に切断されることは明らかである。
そうしてみると、引用発明の「前記磁性シート原反1は、磁性シート原反1からアンテナ形状に応じた形状のシート片へプレス加工機等で打ち抜き加工を行」うことは、本願発明の「前記焼成セラミック層と前記樹脂材層とを同時に所望の形状に切断する切断工程」に相当する。
(5)引用発明は、粉落ちが生じる問題に対処する構成を有する点で本願発明の「除去工程」と共通するものの、本願発明の「前記切断工程において露出した切断面に、粘着性剥離面を有する粘着性剥離部材を押し当てて、該切断面に存在するセラミック破片を除去する除去工程とを備え、前記粘着性剥離面の粘着力は、前記粘着材層の粘着力よりも強く、前記除去工程において、該粘着性剥離面は、前記焼成セラミック層、前記樹脂材層及び前記粘着材層に押し当てられる」構成を引用発明は有しない点で相違する。
(6)引用発明の「磁性シート原反1」は本願発明の「セラミック複合シート」に相当するから、引用発明の「磁性シート原反1の製造方法」は、本願発明の「セラミック複合シートの製造方法」に相当する。
2 一致点・相違点
上記(1)ないし(6)によれば、本願発明と引用発明は以下の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「 所定形状のセラミックグリーンシートを焼成して、焼成セラミック層を形成する焼成工程と、
前記焼成セラミック層の少なくとも片面に、粘着材層を介して、樹脂材層を貼着して、セラミック複合シートを形成するラミネート工程と、
前記焼成セラミック層と前記樹脂材層とを同時に所望の形状に切断する切断工程と、
粉落ちに対処する構成を有するセラミック複合シートの製造方法。」
(相違点)
本願発明は、「前記切断工程において露出した切断面に、粘着性剥離面を有する粘着性剥離部材を押し当てて、該切断面に存在するセラミック破片を除去する除去工程とを備え、前記粘着性剥離面の粘着力は、前記粘着材層の粘着力よりも強く、前記除去工程において、該粘着性剥離面は、前記焼成セラミック層、前記樹脂材層及び前記粘着材層に押し当てられる」構成を有しているのに対して、引用発明はこれを有さない点。
3 相違点についての判断
引用発明は「磁性シート原反1の打ち抜き時に端部から粉落ちが生ずる問題を回避する」ことを課題としている。そして、引用文献1の段落【0026】【0027】には、「焼結フェライト薄板2の分割後の分割片2cのサイズが小さいほど打ち抜く場所の違いによる特性のバラツキが低減されることになるが、各分割片2cのサイズが小さくなり過ぎると、第1の保護層3や第2の保護層4による分割片2cの保持が不十分となり、または打ち抜き時に端部からの粉落ちの問題が生ずる可能性が高くなる。逆に、各分割片2cのサイズが大き過ぎると、分割線2a,2bの平行な状態からのズレ量が大きくなり、外観不良が生じ易くなり、またはサイズの分布が大きくなって特性のバラツキが大きくなる等の不具合が生ずる可能性がある」との問題を、「例えば、分割された分割片2cの一辺の平均長さを0.5mm以上とすれば、粘着材層による分割片2cの保持が不十分となる問題、または磁性シート原反1の打ち抜き時に端部から粉落ちが生ずる問題を回避することができる。また、分割された分割片2cの一辺の平均長さを3mm以下とすれば、分割線の平行方向からのズレを抑えることができ、外観不良が生じ、または磁気特性のバラツキが大きくなる等の不具合を回避」できるとの回避手法が記載されている。しかしながら、要求されるシート片のサイズや形状に対応してより小さいサイズの分割片2cが求められ、粉落ちに対する十分な対策が求められることは容易に予測できる事項にすぎない。一方で、上記「第4」「2(2)」に述べたとおり、「重ね合わせたシート原反を所定の形状に一度に打抜く際に発生し側面に付着する異物を、粘着性を有する除去面を接触することによって除去する技術。」(「引用文献2の技術事項」)は引用文献2に記載されており公知である。そうしてみると、引用文献2の技術事項に触れた当業者であれば、引用発明における粉落ちを回避するため、当該技術事項を異物に相当する引用発明の焼結フェライト薄板2の破片の切断面からの除去に採用することは、格別困難な事項であるとはいえず、引用発明の分割片2cのサイズを規定することに加え、あるいは、これに代えて引用文献2の技術事項を採用することは、当業者が容易になし得た事項である。したがって、本願発明の「前記切断工程において露出した切断面に、粘着性剥離面を有する粘着性剥離部材を押し当てて、該切断面に存在するセラミック破片を除去する除去工程」を設けることは、引用発明に引用文献2の技術事項を適用することにより当業者が容易に想到できた事項である。
そして、引用発明における「磁性シート原反1」には「粘着材層5、7」が含まれるから、引用発明の切断面の「粘着材層5、7」に付着する焼結フェライト薄板2の破片を除去するため、粘着性を有する除去面には「粘着材層5、7」よりも強い粘着力が必要となることは技術常識に照らして明らかである。したがって、本願発明の「前記粘着性剥離面の粘着力は、前記粘着材層の粘着力よりも強く」する構成は、引用発明に引用文献2の技術事項を適用する際に適宜構成できた事項にすぎない。
また、引用発明における「磁性シート原反1」は、「焼結フェライト薄板2」「粘着材層5、7」「ポリエチレンテレフタレートフィルム6、9」から構成されるから、粘着性剥離部材を引用発明における「磁性シート原反1」に押し当てることにより「焼結フェライト薄板2」「粘着材層5、7」「ポリエチレンテレフタレートフィルム6、9」に押し当てることになるから、本願発明の「該粘着性剥離面は、前記焼成セラミック層、前記樹脂材層及び前記粘着材層に押し当てられる」構成は引用発明に引用文献2の技術事項を適用すれば当然採用される構成にすぎず、格別の構成とはいえない。
そして、本願発明のように構成したことによる効果も引用発明及び引用文献2の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。
以上より、上記相違点は引用発明に引用文献2の技術事項を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 請求人の主張について
審判請求人は、令和2年9月18日に提出された審判請求書において、「引用例1~2においては、本願の請求項1に係る発明の『粘着性剥離面の粘着力は、粘着材層の粘着力よりも強く、除去工程において、粘着性剥離面は、焼成セラミック層、樹脂材層及び粘着材層に押し当てられる』という構成について、開示も示唆もされていません。」と主張をしている。
しかしながら、上記「第5」「3 相違点についての判断」において述べたように、引用発明における「磁性シート原反1」は、「焼結フェライト薄板2」「粘着材層5、7」及び「ポリエチレンテレフタレートフィルム6、9」から構成されるから、粘着性剥離部材を引用発明における「磁性シート原反1」に押し当てることにより「焼結フェライト薄板2」「粘着材層5、7」「ポリエチレンテレフタレートフィルム6、9」に押し当てる構成となるものである。そして、粘着材層にも焼結フェライト薄板2の破片が付着することは、粘着層が粘着力を有していることからみて当然予測される事項にすぎず、これを除去するためにより強い粘着力が必要になることは技術常識に照らして明らかである。したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
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2020-013158